配当控除とは税金が戻る仕組み!配当金にかかる税負担を軽くする賢い活用法とシミュレーション結果を解説

配当控除とは税金が戻る仕組み!配当金にかかる税負担を軽くする賢い活用法とシミュレーション結果を解説
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公開:
2026.01.29
更新:
2026.01.29
配当金を受け取ったとき、「配当控除で税金が戻る」と聞いても、確定申告すべきか、住民税まで含めると本当に得なのかで迷いがちです。選び方を誤ると、還付どころか税負担が増えることもあります。この記事では、配当控除とは何かを図解で整理し、対象となる配当と控除額の計算、住民税への影響、申告方法(総合・分離・申告不要)の比較をシミュレーションで解説します。
サクッとわかる!簡単要約
読後には配当控除が「どの配当」に「どの申告方式」で効く制度かを整理し、自分のケースで総合課税を選ぶべきか、申告不要・分離課税のままにすべきかを判断できる状態になります。あわせて、確定申告で起こりやすい損益通算・住民税や社保への波及などの注意点まで見通しを持ち、手続きの迷いを減らせます。
配当控除とは配当金に対する「税額控除」
配当控除とは、国内株式などの配当金に対する二重課税を調整するための税額控除です。
企業は法人税を支払った後の利益から配当金を出しており、個人がその配当金を受け取るとさらに所得税がかかります。この二重課税の負担を和らげるために設けられた制度が「配当控除」です。
配当所得と源泉徴収の基本
上場株式の配当金を受け取るとき、証券会社を通じて税金が自動的に差し引かれます。この源泉徴収の税率は合計20.315%で、内訳は以下のとおりです。
| 税目 | 税率 |
|---|---|
| 所得税 | 15% |
| 復興特別所得税 | 0.315%(所得税額の2.1%) |
| 住民税 | 5% |
| 合計 | 20.315% |
特定口座(源泉徴収あり)を利用していれば、この源泉徴収によって納税が「いったん完結」した状態となります。そのため確定申告をしなくても問題ありません。しかし、確定申告をすることで配当控除を使えたり、株式の譲渡損失と損益通算できたりする可能性があります。
配当控除の対象になる配当・ならない配当
配当控除は、すべての配当金に使えるわけではありません。対象になるかどうかは「どこから出た配当か」によって決まります。
| 区分 | 配当の種類 | 配当控除 |
|---|---|---|
| 対象 | 国内の上場株式からの配当金 | ○ |
| 対象 | 国内の非上場株式からの配当金 | ○ |
| 対象 | 株式投資信託の収益分配金(証券投資信託の特定株式投資信託など) | ○ |
| 対象外 | 外国株式(米国株など海外企業の株式)からの配当金 | × |
| 対象外 | J-REIT(不動産投資信託)の分配金 | × |
| 対象外 | 外国籍の投資信託からの分配金 | × |
| 対象外 | 上場株式等の配当等で「申告分離課税」を選んだ場合 | × |
外国株式の配当は配当控除の対象外ですが、外国で課された税金を取り戻す「外国税額控除」を使える場合があります。J-REITの分配金は法人段階で法人税が課されていないため、二重課税の調整という趣旨から配当控除の対象外です。
自分の配当が対象かどうかは、証券会社から届く「配当金計算書」や「年間取引報告書」で確認できます。報告書には配当の種類や銘柄名が記載されているので、国内株式かどうか、投資信託の種類は何かをチェックしましょう。
住民税にも配当控除がある
配当控除は所得税だけでなく住民税にも適用されます。ただし、控除率は所得税より低く設定されています。
| 課税総所得金額等 | 所得税の配当控除率 | 住民税の配当控除率 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下の部分 | 10% | 2.8% |
| 1,000万円超の部分 | 5% | 1.4% |
※上記は一般的な上場株式等の配当の場合。証券投資信託の収益分配金などは控除率が異なります。
総合課税を選ぶと配当控除が使えますが、配当所得が住民税の課税対象に加わります。この場合、税率10%(市区町村民税6%+都道府県民税4%)がかかります。
たとえば課税総所得金額が1,000万円以下なら、住民税の配当控除率は2.8%です。源泉徴収での住民税率5%と比べると、総合課税を選ぶと住民税だけで見ると「10%−2.8%=7.2%」となり、源泉徴収の5%より負担が増える計算になります。
所得税で得をしても住民税で損をするケースがあるため、両方を合わせたトータルで損得を判断しなければなりません。
配当所得の課税方式を整理(総合課税・申告分離課税・申告不要)
上場株式等の配当所得には、3つの課税方式があります。「申告不要制度」「総合課税」「申告分離課税」の3つで、どれを選ぶかによって税負担や手続きの手間が変わります。
| 課税方式 | 配当控除 | 損益通算・繰越控除 | 所得への加算 | 手間 |
|---|---|---|---|---|
| 申告不要 | 使えない | できない | されない | 最小 |
| 総合課税 | 使える | できない | される | 中程度 |
| 申告分離課税 | 使えない | できる | される | 中程度 |
どの方式が有利かは、配当額・課税所得・株式の譲渡損益によって異なります。配当控除で税金を取り戻したいなら総合課税、株の売却損と相殺したいなら申告分離課税、手間をかけたくないなら申告不要という目的別の選び方が基本です。
申告不要:源泉徴収だけで完結する
申告不要制度とは、配当金を受け取るときに源泉徴収された20.315%の税金だけで課税関係を完結させる方法です。確定申告をしなくてよいため、手続きの手間が最も少なくなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 確定申告の作業が不要で、書類準備や入力作業の手間がかからない |
| 配当所得が合計所得金額に加算されないため、扶養判定や国民健康保険料に影響しにくい | |
| 所得が高い人は累進税率(最大45%)を避けられ、一律20.315%で済む | |
| 注意点 | 配当控除が使えず、確定申告での税額調整ができない |
| 株式の譲渡損失があっても、配当金との損益通算ができない | |
| 向いている人 | 配当金額が少額で、株の売却損もなく、手間をかけたくない人 |
申告不要では、確定申告の作業そのものが不要です。証券会社で源泉徴収が完了しているため、追加の書類準備や入力作業がありません。
所得が高い人にとっては、総合課税より申告不要のほうが税負担を抑えられるケースがあります。総合課税では累進税率が適用され、所得税率が最大45%になりますが、申告不要なら一律20.315%で済むからです。
一方で、配当控除は使えません。源泉徴収で完結させるため、確定申告での税額調整ができないのです。また、株式の譲渡損失がある場合でも、申告不要を選ぶと配当金との損益通算ができません。
総合課税:配当控除が使える
総合課税とは、配当所得を給与所得や事業所得などの他の所得と合算して税額を計算する方式です。この方式を選んだ場合にのみ、配当控除を適用できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 配当控除が使える(課税総所得1,000万円以下なら配当金額の10%を税額控除) |
| 課税所得が低いほど効果が大きく、330万円以下なら所得税の実質負担率がゼロになる可能性も | |
| 配当金30万円なら最大3万円の税額控除を受けられる | |
| 注意点 | 課税所得900万円超では所得税率33%以上となり、配当控除10%を引いても源泉徴収15%より不利 |
| 配当所得が合計所得金額に加算され、扶養控除の判定や国民健康保険料に影響する場合がある | |
| 住民税の配当控除率は2.8%にとどまり、源泉徴収5%より負担が増えるケースがある | |
| 向いている人 | 課税所得が695万円以下で、株式の譲渡損失がなく、配当控除をフルに活用したい人 |
総合課税を選ぶかどうかは、所得税と住民税の両方を計算して判断する必要があります。所得税だけで判断すると、住民税や国民健康保険料で損をするケースがあるため注意しましょう。
住民税まで含めたトータルの損得も重要です。住民税では配当控除率が2.8%にとどまるため、源泉徴収の5%より負担が増えることがあります。総合課税を選ぶかどうかは、所得税と住民税の両方を計算して判断する必要があるのです。
申告分離課税:配当控除は使えない
申告分離課税とは、配当所得を他の所得と分離し、一律20.315%の税率で計算する方式です。確定申告は必要ですが、配当控除は適用されません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 上場株式等の譲渡損失と配当金を損益通算できる |
| 相殺しきれなかった損失は翌年以降3年間繰り越せる | |
| 損益通算により、源泉徴収された税金の還付を受けられる可能性がある | |
| 注意点 | 配当控除が使えないため、譲渡損失がない人にはメリットが薄い |
| 配当所得が合計所得金額に加算され、国民健康保険料や扶養判定に影響する場合がある | |
| 申告不要と比べて確定申告の手間がかかる | |
| 向いている人 | 当年に株式の譲渡損失が発生した人、または過去3年以内に繰り越した損失がある人 |
たとえば、年間で50万円の譲渡損失があり、30万円の配当金を受け取った場合を考えましょう。申告分離課税で損益通算すると、配当所得30万円から譲渡損失を差し引けるため、配当金にかかる税金がゼロになります。さらに、相殺しきれなかった20万円の損失は翌年以降3年間繰り越せます。
株式の売却損があり、または過去3年以内に繰り越した損失がある人には、申告分離課税が有利になるケースが多いです。一方、譲渡損失がなく配当控除を使いたい人は総合課税を検討したほうがよいでしょう。
株式投資をする方は、総合課税・申告分離課税・源泉分離課税の違いを整理しておきましょう。詳しくは、こちらの記事も参考にしてみてください。
配当控除シミュレーション:有利・不利の分岐は「課税所得金額695万円」
配当控除を使うべきかどうかは、個人の状況によって結論が異なります。配当額・課税所得・譲渡損益の3つの要素で有利不利が分かれるため、自分のケースでシミュレーションすることが欠かせません。
まず確認する3項目(配当額・課税所得・譲渡損益)
シミュレーションの前に、以下の3つの数字を手元に用意してください。
①配当額の確認方法
証券会社から届く「年間取引報告書」または「配当金のお知らせ」で確認できます。複数の証券会社を使っている場合は、すべての配当金を合算してください。特定口座を利用していれば、年間取引報告書の「配当等の額」欄に1年分の合計が記載されています。
②課税所得の確認方法
給与所得者なら、勤務先から届く「源泉徴収票」の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いた金額が課税所得の目安です。前年に確定申告をした人は、確定申告書の控えにある「課税される所得金額」を参照しましょう。
③譲渡損益の確認方法
株式を売却した場合の損益は、年間取引報告書の「譲渡の対価の額」「取得費及び譲渡に要した費用の額等」「差引金額」で確認できます。損失が出ていれば申告分離課税での損益通算が選択肢に入り、利益が出ていれば総合課税か申告不要の二択になります。
申告不要が向きやすいケース
申告不要制度は、以下のような人に向いています。手続きの手間を省きたい場合や、所得を増やしたくない事情がある場合に有効です。
申告不要が向いているパターン
- 配当金額が少額(年間数万円程度)で、節税効果より手間を避けたい人
- 課税所得が900万円を超えており、総合課税を選ぶと税率が上がる人
- 扶養に入っており、合計所得金額を増やしたくない人
- 国民健康保険に加入しており、保険料の増加を避けたい人
- 株式の譲渡損失がなく、損益通算の必要がない人
課税所得が695万円を超えている場合は、申告不要を選んでおけば大きく損をする可能性は低いでしょう。この所得帯では、総合課税の累進税率と配当控除を差し引いても、源泉徴収の税率とほぼ同等か、むしろ不利になるケースが多いからです。
ただし、譲渡損失がある場合は例外です。損益通算で税金を取り戻せる可能性があるため、申告分離課税を検討してください。
総合課税が有利になりやすいケース
総合課税は、課税所得が低めの人に有利になりやすい方式です。配当控除の恩恵を受けられるため、所得税の負担を大きく減らせる可能性があります。
総合課税が有利になるパターン
- 課税所得が330万円以下で、所得税率が10%以下の人
- 課税所得が695万円以下で、所得税率が20%以下の人
- 株式の譲渡損失がなく、配当控除をフルに活用したい人
- 専業主婦(主夫)やパート勤務で所得が少ない人
申告分離が有利になりやすいケース(損益通算あり)
申告分離課税は、株式の譲渡損失がある人に最も向いている方式です。配当金と損失を相殺することで、源泉徴収された税金の還付を受けられます。
申告分離課税が有利になるパターン
- 当年に株式の譲渡損失が発生した人
- 過去3年以内に繰り越した譲渡損失がある人
- 配当金額より譲渡損失のほうが大きい人
たとえば、配当金が50万円あり、株式の譲渡損失が80万円発生したケースを考えます。申告分離課税で損益通算すると、配当金50万円から譲渡損失を差し引けるため、配当所得はゼロになります。源泉徴収されていた約10万円(50万円×20.315%)が還付される計算です。
さらに、相殺しきれなかった30万円の損失は翌年以降3年間繰り越せます。来年以降の配当金や譲渡益と相殺できるため、長期的な節税効果も期待できるでしょう。
配当控除は使えないため、譲渡損失がない場合はメリットがほとんどありません。また、確定申告が必要になるため、申告不要と比べて手間がかかります。損益通算の金額が小さい場合は、手間と節税効果を天秤にかけて判断してください。
損益通算は、投資家が知っておくべき課税ルールの一つです。詳しくは、こちらの記事も参考にしてみてください。
具体的なシミュレーション:課税所得600万円・配当金50万円の場合
課税所得600万円・配当金50万円の場合、申告不要と総合課税でどのような税額が発生するのかを比較してみましょう。
| 項目 | 申告不要 | 総合課税 |
|---|---|---|
| 所得税率 | 15%(源泉) | 20%(累進) |
| 配当控除 | なし | 10%(5万円) |
| 所得税負担 | 7.5万円 | 5万円(税率20%−控除10%) |
| 住民税率 | 5%(源泉) | 7.2%(税率10%−控除2.8%) |
| 住民税負担 | 2.5万円 | 3.6万円 |
| 税負担合計 | 10万円 | 8.6万円 |
この例では、所得税で2.5万円得をする一方、住民税では1.1万円の負担増となります。トータルでは総合課税のほうが約1.4万円有利です。
ただし、課税所得が695万円を超えると所得税率が23%に上がり、配当控除10%を差し引いても実質13%となります。源泉徴収の15%とほぼ同水準になるため、住民税の負担増を考慮するとメリットが薄れるでしょう。
所得税と住民税の両方を計算し、トータルで比較してから判断することが重要です。課税所得が695万円から900万円の間にいる人は、シミュレーションで慎重に確認しましょう。
配当控除のデメリットと注意点
配当控除は節税に有効な制度ですが、使い方を誤ると「節税のつもりが負担増」になるケースがあります。所得税だけを見て判断すると、住民税や国民健康保険料、扶養判定などで思わぬ影響が出ることも少なくありません。
配当控除を活用する前に知っておくべきデメリットと注意点を、税金以外の影響も含めて整理します。
住民税・社会保険・扶養判定に影響する
配当控除を使うために総合課税を選ぶと、配当所得が「合計所得金額」に加算されます。この合計所得金額は税金以外のさまざまな制度の判定基準に使われるため、波及的な影響が生じる可能性があるのです。
住民税への影響
住民税の配当控除率は最大2.8%と低いため、総合課税を選ぶと住民税の負担が増えやすくなります。源泉徴収では住民税5%ですが、総合課税だと税率10%から控除2.8%を引いた実質7.2%となり、2.2%分の負担増です。配当金が100万円なら、住民税だけで約2.2万円多く払う計算になります。
国民健康保険料への影響
国民健康保険に加入している人は要注意です。国保料は前年の所得をもとに計算されるため、総合課税で配当所得を申告すると保険料が上がる可能性があります。自治体によって計算方法は異なりますが、所得割の料率が10%前後の地域も多く、配当控除の節税効果を上回るかもしれません。
扶養判定への影響
配偶者控除や扶養控除の判定には「合計所得金額」が使われます。たとえば配偶者控除を受けるには、配偶者の合計所得金額が58万円以下である必要があります(令和7年度分より)。パート収入に加えて配当所得を申告すると、この基準を超えてしまい、控除が受けられなくなるケースがあるのです。
配当控除できない配当がある
すべての配当金に配当控除が使えるわけではありません。対象外の配当を含めて計算してしまうと、想定どおりの節税効果が得られないことがあります。
| 配当の種類 | 配当控除 | 対象外の理由 |
|---|---|---|
| 外国株式の配当 | 対象外 | 国内法人税が課されていないため |
| J-REIT(不動産投資信託)の分配金 | 対象外 | 法人段階で法人税が非課税のため |
| 外貨建てMMFの分配金 | 対象外 | 公社債投資信託に該当するため |
| 上場株式等で申告分離課税を選んだ配当 | 対象外 | 総合課税を選ばないと適用されない |
配当控除は「二重課税の調整」を目的とした制度です。そのため、法人段階で法人税が課されていないJ-REITや、国内の法人税が関係しない外国株式は対象外となっています。
自分の配当が対象か調べる手順
- 証券会社の「年間取引報告書」または「配当金のお知らせ」を用意する
- 銘柄名を確認し、国内株式かどうかをチェックする
- 投資信託の場合は「株式投資信託」か「公社債投資信託」かを確認する
- 不明な場合は証券会社のサポートに問い合わせる
配当控除の対象外であっても、申告方式の選択は可能です。譲渡損失がある場合は申告分離課税で損益通算を検討し、損失がなければ申告不要を選ぶのが無難です。
外国株式の配当は「外国税額控除」との関係に注意する
米国株など外国株式の配当金は、配当控除の対象外です。しかし、外国で課された税は、確定申告で外国税額控除により日本の税負担を軽減できる場合があります(ただし控除限度があり、NISA口座内の配当は対象外)。
外国株式の配当金は、まず現地で税金が引かれます。たとえば米国株の場合、配当金から10%の米国源泉税が差し引かれたうえで、日本でもさらに20.315%が課税されます。この「二重課税」を調整するのが外国税額控除です。
米国株配当の税金の流れ(例)
- 配当金で100ドルを受け取る
- 米国で源泉徴収(10%)され、10ドルが控除される
- 日本での受取額は90ドル相当になる
- 日本で源泉徴収(20.315%)され、約18ドルが控除される
- 最終的な手取りが約72ドル相当になる
このように、配当金100ドルに対して合計約28%の税金がかかる計算です。外国税額控除を使えば、米国で払った10ドル分を日本の所得税から差し引ける可能性があります。
外国税額控除の手続きは、そこまで難しくありません。詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
配当控除の確定申告のやり方
配当控除を受けるには、確定申告で「総合課税」を選んで申告する必要があります。特定口座で源泉徴収されていても、確定申告をすれば配当控除を適用できます。
申告の流れは「書類準備→申告書作成→提出」の3ステップです。ここでは、必要書類から入力時の注意点まで、実務で迷いやすいポイントを順番に解説していきましょう。
必要書類:年間取引報告書など
確定申告の前に、以下の書類を手元に用意してください。書類が揃っていないと、入力の途中で手が止まってしまいます。
| 書類名 | 記載内容 | 入手方法 |
|---|---|---|
| 特定口座年間取引報告書 | 配当金額・源泉徴収税額・譲渡損益 | 1月中旬〜下旬に届く、またはマイページでダウンロード |
| 配当金の支払通知書 | 個別銘柄ごとの配当金額 | 配当金支払時に届く |
年間取引報告書は、証券会社のマイページから電子交付版をダウンロードできます。「電子交付」や「報告書」のメニューを探してみてください。
特定口座を利用している場合、年間取引報告書があれば配当金の申告に必要な情報はほぼ揃います。複数の証券会社を使っている場合は、すべての報告書を用意してください。
| 書類名 | 記載内容 | 入手方法 |
|---|---|---|
| 源泉徴収票 | 給与収入・所得控除・源泉徴収税額 | 12月〜1月に届く |
源泉徴収票の「支払金額」「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」の4つの数字を確定申告書に転記します。
確定申告書のどこに書くか(配当所得・配当控除)
確定申告書には記入欄が多く、どこに何を書けばよいか迷いやすいものです。配当控除を受けるために必要な記入箇所を、入力順に整理します。
| 記入箇所 | 記入内容 |
|---|---|
| 第一表「収入金額等」の配当欄 | 配当金の収入金額(税引前) |
| 第一表「所得金額等」の配当欄 | 配当所得の金額 |
| 第一表「税額控除等」の配当控除欄 | 配当控除の金額 |
| 第二表「所得の内訳」 | 配当金の支払者・金額・源泉徴収税額 |
配当所得は「収入金額=所得金額」となるケースがほとんどです。株式等を取得するための借入金の利子がある場合のみ、収入から差し引いて所得を計算します。
e-Taxや確定申告書等作成コーナーを使う場合は、画面の指示に従って入力すれば自動計算されます。手順としては以下の流れがスムーズです。
- 給与所得など他の所得を入力する
- 「配当所得」の入力画面で、総合課税を選択する
- 年間取引報告書を見ながら配当金額と源泉徴収税額を入力する
- 配当控除は自動計算されるため、金額を確認する
- 最終画面で還付額または納付額を確認する
e-Taxでの入力時に間違えやすい点
e-Taxや確定申告書等作成コーナーは便利ですが、配当所得の入力で初心者がつまずきやすいポイントがいくつかあります。事前に把握しておけば、スムーズに申告を進められるでしょう。
①課税方式の選択を間違える
配当所得の入力画面では、「総合課税」と「申告分離課税」のどちらかを選ぶ必要があります。配当控除を受けるには「総合課税」を選んでください。申告分離課税を選ぶと配当控除は適用されません。
画面によっては「申告する」「申告しない」の選択肢が先に出ることもあります。配当控除を使うなら「申告する」→「総合課税」の順で選択しましょう。
②源泉徴収税額の入力漏れ
年間取引報告書には「源泉徴収税額(所得税)」と「配当割額(住民税)」が別々に記載されています。e-Taxでは所得税分のみを入力する画面と、両方を入力する画面があるため、どの欄にどの数字を入れるか注意が必要です。
入力を間違えると、還付金額が実際より少なく計算されたり、逆に多く計算されたりします。年間取引報告書の数字と画面の項目名をよく照らし合わせてください。
③複数の証券会社の配当を合算し忘れる
証券会社ごとに年間取引報告書が届くため、1社分だけ入力して他社分を忘れるケースがあります。すべての証券会社の配当金を合算して申告しないと、正しい配当控除額が計算されません。
④「特定口座(源泉徴収あり)」の入力画面で迷う
特定口座の配当を総合課税で申告する場合、入力画面の選択肢が複雑に感じることがあります。「配当等を総合課税で申告する」といった選択肢を探し、チェックを入れてから金額を入力してください。
⑤想定と違う結果が出たときの見直し箇所
計算結果が想定と大きく異なる場合は、以下を確認しましょう。
- 配当金額の桁を間違えていないか(万円と円の混同など)
- 課税方式が「総合課税」になっているか
- 源泉徴収税額を正しく入力したか
- 他の所得控除(医療費控除など)を入力し忘れていないか
入力内容は何度でも修正できます。提出前に「申告書等の確認」画面でPDFをダウンロードし、数字を再確認することをおすすめします。
2023年分から「住民税だけ申告不要」の選択ができなくなった
以前は所得税で総合課税(配当控除適用)を選びつつ、住民税で申告不要を選択可能でしたが、金融所得課税の公平性を高めるため統一が義務化されました。この変更で、課税方式は所得税と住民税で同一になります。
申告不要を選択すると配当控除は適用されず、源泉分離課税(所得税15%、住民税5%)となります。一方、総合課税を選べば控除が可能ですが、住民税税率が実質7.2%(10%-2.8%控除)となり、国民健康保険料や扶養控除に影響が出る場合があります。
2023年分以降、確定申告書で住民税申告不要の別選択ができず、所得税の選択が住民税に連動します。事前の課税方式確認が重要です。
この記事のまとめ
この記事では、配当控除とは何か、どの配当が対象になるか、控除額の計算方法、住民税への影響、確定申告(総合・分離・申告不要)の選び方を比較して整理しました。結論は一律ではなく、配当額・課税所得・他の控除状況で有利不利が変わる点が重要です。次の行動として、年間の配当金額と課税所得(源泉徴収票や確定申告書の控え)を確認し、想定ケースでシミュレーションして申告方針を決めましょう。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
配当控除
配当控除とは、上場企業や一部の非上場企業から受け取る配当金に対して適用される税額控除の制度です。日本では、配当金には通常約20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金が源泉徴収されますが、確定申告を行い「総合課税」を選択すると、配当控除を受けることで実際の税負担を軽減できます。 特に、所得税では配当金の最大10%(上場株式の場合)、住民税では最大2.8%が控除されるため、課税所得が一定水準以下の場合、総合課税を選ぶことで税負担が軽くなる可能性があります。ただし、所得が高い場合は累進課税により税率が上がるため、総合課税ではなく「申告分離課税」を選択したほうが有利になることもあります。どの課税方式を選ぶかは、個人の所得状況に応じて慎重に判断することが重要です。
税額控除
税額控除とは、納めるべき税金の金額そのものを直接減らすことができる制度のことです。通常の「所得控除」は課税所得額を減らして税額を下げる間接的な仕組みですが、税額控除は計算された税額から一定の金額を差し引くため、同じ控除額でもより大きな節税効果があります。 たとえば、住宅ローン控除や配当控除、外国税額控除、寄附金控除などが代表的です。適用には一定の条件や手続きが必要ですが、制度を正しく活用することで、家計の負担を軽減することが可能になります。特に資産運用や不動産投資などでも活用される重要な税制上の仕組みです。
二重課税
二重課税とは、同じ所得や資産に対して、二つ以上の国や課税主体から重ねて税金が課されることを指します。たとえば、外国の株式や債券に投資して得た利息や配当金に対して、まず現地の国で源泉徴収され、その後に日本でも課税されるというケースがあります。このような状況では、同じ収益に対して二重に税金がかかってしまい、実質的な手取りが減ることになります。ただし、日本では外国で課税された分を日本の税額から差し引く「外国税額控除」という制度があり、一定の条件を満たせば二重課税の負担を軽減することができます。海外投資を行う際は、このような税制のしくみにも目を向けることが重要です。
配当所得
配当所得とは、株式や投資信託などから得られる配当金に対して課税される所得のことを指します。企業が得た利益の一部を株主に還元するのが配当であり、それを受け取った人にとっては課税対象となります。日本では通常20%強(所得税と住民税を合わせた税率)が源泉徴収され、証券会社を通じて自動的に差し引かれる仕組みが一般的です。ただし、確定申告を行うことで総合課税や申告分離課税を選択でき、所得の状況によっては税負担を軽くできる可能性があります。投資家にとって配当所得は安定した収益源である一方、課税方法の理解が手取りを増やす工夫につながります。
源泉徴収
源泉徴収とは、給与や報酬、利子、配当などの支払いを受ける人に代わって、支払者があらかじめ所得税を差し引き、税務署に納付する制度です。特に給与所得者の場合、会社が毎月の給与から所得税を控除し、年末調整で過不足を精算します。 この制度の目的は、税金の徴収を確実に行い、納税者の負担を軽減することです。例えば、会社員は確定申告を行わずに納税が完了するケースが多くなります。ただし、個人事業主や一定の副収入がある人は、源泉徴収された金額を基に確定申告が必要になることがあります。 また、配当金や利子の源泉徴収税率は原則20.315%(所得税15.315%+住民税5%)ですが、金融商品によって異なる場合があるため、事前に確認が必要です。
所得税
所得税は、個人が1年間に得た所得に対して課される税金です。給与所得や事業所得、不動産所得、投資による利益などが対象となります。日本では累進課税制度が採用されており、所得が高いほど税率が上がります。給与所得者は源泉徴収により毎月の給与から所得税が差し引かれ、年末調整や確定申告で精算されます。控除制度もあり、基礎控除や扶養控除、医療費控除などを活用することで課税所得を減らし、税負担を軽減できます。
