不妊治療の費用はいくら?保険適用・助成金・医療費控除まで負担を減らす制度を徹底解説

不妊治療の費用はいくら?保険適用・助成金・医療費控除まで負担を減らす制度を徹底解説
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公開:
2026.01.16
更新:
2026.01.16
不妊治療は、検査から高度治療へ進むにつれて費用が大きく変わり、家計への影響を見通しにくい点が大きな課題です。さらに、保険適用の範囲や自治体の助成金、医療費控除・高額療養費といった制度は複雑で、順序や条件を誤ると本来使える支援を逃してしまうこともあります。この記事では、不妊治療にかかる費用の全体像と、利用できる制度を治療ステップごとに整理し、負担を抑えるための考え方を具体的に解説します。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むことで、不妊治療にかかる費用の全体像を治療ステップ別に整理して理解でき、どの段階で自己負担が増えやすいのかを把握できます。あわせて、保険適用、助成金、高額療養費、医療費控除の違いや使い分けを理解することで、自分の状況では何を優先して確認すべきか判断できるようになります。結果として、制度の取りこぼしを防ぎながら、無理のない資金計画を立てて治療を進められるようになります。
不妊治療の費用と使える制度の全体像|保険適用から助成金まで
不妊治療は治療法により費用が大きく異なります。2022年4月の保険適用拡大で原則3割負担となりましたが、高度な治療では依然としてまとまった費用が必要です。本記事では2025年12月時点の情報をもとに、治療費の相場と、高額療養費制度や医療費控除、自治体の助成金といった経済的支援制度を網羅的に解説します。賢く制度を使いこなすための条件や申請のポイントを押さえましょう。
治療ステップ別の平均費用|検査から体外受精・顕微授精まで
治療は段階的にステップアップし、それに伴い費用も増加します。一般的には、排卵日を指導するタイミング法から始まり、精子を子宮に注入する人工授精、そして卵子と精子を取り出す体外受精や顕微授精へと進みます。ここでは保険適用後の自己負担額を中心に、各ステップの費用目安と、保険外診療である自費診療が発生するケースとの違いを整理します。まずは全体的な相場感を掴んでおきましょう。
負担を減らす4つの制度|保険・助成金・高額療養費・医療費控除
治療費の負担を最小限に抑えるには、公的医療保険、高額療養費制度、医療費控除、自治体の助成金という4つの柱を理解し、フル活用することが重要です。保険で窓口負担を減らし、高額療養費で月ごとの上限を設け、助成金で先進医療の技術料など保険外部分を条件に応じて補填し、最後に確定申告で税金を取り戻す。この一連の流れと優先順位を整理して解説します。
ただし、助成の対象・上限額・回数・対象となる医療機関は自治体ごとに異なるため、必ず最新要項で確認してください。
医療費控除・高額療養費・セルフメディケーションの違いについて以下Q&Aでも説明しています。
不妊治療の平均費用はいくら?お金が続かない不安を解消する目安
不妊治療は「いつ妊娠できるか」「いくらかかるか」という見通しが立ちにくく、経済的な不安を感じる方が多いのが実情です。
2022年の保険適用拡大によって1回あたりの窓口負担は軽減されましたが、治療が長期化すれば総額は大きくなります。ここでは、治療全体の平均的な費用感と、無理なく治療を続けるために知っておくべき資金の目安について解説します。
治療費の平均と内訳|家計に響くポイントとは
治療費の総額は、選択する「治療ステップ」と、妊娠に至るまでの「通院期間」によって大きく変動します。
費用の内訳は主に、日々の診察代、検査代、排卵誘発などの薬剤費、そして採卵や移植にかかる技術料です。保険適用により窓口での支払いは原則3割ですが、回数を重ねれば家計への負担は累積します。ここでは一般的な費用の目安と、管理すべき支出のポイントを整理します。
費用が高額になるケース|高額医療費が発生するタイミング
想定よりも費用が高額になる主な要因は、「先進医療」や「自費診療」を選択するケースです。
例えば、タイムラプス培養などの先進医療の技術料は保険適用外となり、全額自己負担になります。また、PGT-A(着床前胚異数性検査)は実施枠組みや対象要件、実施可能な医療機関が限定される場合があり、費用や利用条件は一律ではありません。希望する場合は、実施可否・対象・費用・位置づけ(先進医療等)を受診先で必ず確認しましょう。
【ステップ別】不妊治療の費用内訳|検査・人工授精・体外受精の相場
不妊治療は一般的に、検査を経てタイミング法、人工授精、そして体外受精などの高度生殖医療へと段階的にステップアップします。治療内容が高度になるにつれて費用も増加するため、事前の資金計画が欠かせません。
ここでは2025年現在の公的医療保険適用後の自己負担額を中心に、各ステップにおける具体的な費用の相場と内訳を解説します。
不妊治療の検査費用|初診・血液・ホルモン検査の相場
不妊の原因を調べる各種検査(ホルモン検査、超音波検査、子宮卵管造影など)は、医師が必要と判断した範囲で公的医療保険の対象となることが一般的です。初期検査一式の自己負担額は、検査項目や通院回数、実施する時期(周期)によって変動するため、概ね「数千円〜数万円程度」を目安に、受診先で見積もりの目安を確認しておくと安心です。
また、卵巣予備能の評価に用いられるAMH検査(抗ミュラー管ホルモン)は保険診療で実施されることがありますが、算定目的・算定要件(治療計画上の必要性など)があるため、すべてのケースで一律に保険適用になるとは限りません。実施の要否や自己負担額は医療機関で事前に確認しましょう。
タイミング法の費用と回数目安|通院回数はどれくらい?
タイミング法(排卵日指導)は、同じ周期内で行う診察回数、超音波やホルモン検査の頻度、排卵誘発の有無(薬・注射)によって自己負担額が変わります。
- 保険適用後も「1周期あたり数千円〜2万円程度」と説明されることが多い一方、個別事情で上下するため、初回の説明時に「1周期で想定される受診回数と検査・薬剤」を前提に見積もりを確認しましょう。
人工授精の費用目安|1回あたりの金額と回数の考え方
人工授精(AIH)は、実施料自体は診療報酬(点数)で定められており、保険診療で行う場合は自己負担3割として計算されます。ただし、実際の支払いは人工授精の実施料だけで完結せず、診察、超音波、ホルモン検査、排卵誘発の薬剤費などが加算されるため、1回あたりの自己負担額は「実施内容の組み合わせ」で上下します。費用感を把握するには、「実施料(点数)」と「同周期で行う検査・薬剤」の両方を含めて、医療機関で説明を受けるのが確実です。
体外受精の費用目安|採卵・凍結などの工程別コスト
体外受精(IVF)は保険適用で自己負担が原則3割となる一方、費用は一律ではありません。採卵・受精・培養・胚移植に加え、採卵数、培養・凍結する胚の数、使用薬剤、凍結胚移植の有無などで点数(費用)が段階的に変わるため、同じ「体外受精」でも自己負担額には幅が出ます。一般論としては「数万円〜十数万円程度」のレンジで説明されることが多いものの、実際の負担額は治療計画によって変動するため、開始前に「その周期で想定される工程」と「追加が発生し得る項目」を確認しておきましょう。
顕微授精の費用目安|体外受精との違いと追加費用
顕微授精(ICSI)は、体外受精の工程に加えて顕微授精の実施に係る技術料が加わります。費用は「受精に供する卵子数」などで変動し、自己負担額は個々の治療内容により幅があります。費用の見通しを立てるには、医療機関で提示される治療計画に沿って、当該周期で想定される点数・薬剤費・凍結の有無を含めて確認することが重要です。
自己注射・薬にかかる費用|治療費が増減する要因
治療費の総額を大きく左右するのが「排卵誘発剤」などの薬剤費です。特に体外受精では、複数の卵子を育てるために高価な薬剤を使用したり、自宅で注射を行う「自己注射」を選択したりするケースがあります。
これらも基本的には保険適用となりますが、自己注射指導管理料やキット代が加算されるため、通院での注射よりも割高になる傾向があります。使用する薬剤の種類や量によって数万円単位で費用が変わるため、治療方針を決める際に医師と費用の見積もりを確認しておくと安心です。
男性不妊治療の費用|検査から治療までの考え方
不妊治療は女性だけでなく、男性側の検査や治療も重要です。男性不妊の基本的な検査である精液検査は保険適用となり、自己負担は数千円程度です。
また、精子が見当たらない無精子症などに対する手術「精巣内精子採取術(TESE)」も、2022年から保険適用の対象となりました。以前は数十万円かかっていた手術が、高額療養費制度などの利用も可能になり、経済的なハードルは大幅に下がっています。夫婦で同時に検査を受けることが、結果的にトータルの費用と時間を節約することにつながります。
不妊治療の保険適用はどこまで?条件・年齢制限・回数を解説
2022年4月から、一般不妊治療から高度生殖医療まで幅広い不妊治療が公的医療保険の対象となりました。これにより、患者さんの窓口負担は原則3割に抑えられています。
ただし、無制限に利用できるわけではなく、女性の年齢や治療回数に上限が設けられています。ここでは保険適用の具体的な範囲と、治療計画に関わる重要な条件について解説します。
保険診療の対象範囲|検査や治療のどこまでカバーされる?
保険適用の対象は、基本的な検査から高度な手術まで多岐にわたります。
- 一般不妊治療: タイミング法(排卵日予測)、人工授精(AIH)
- 生殖補助医療: 体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)
- 検査・手術: ホルモン検査、超音波検査、子宮卵管造影、ポリープ切除術など
- 男性不妊治療: 精巣内精子採取術(TESE)など
大きなポイントは、従来全額自己負担だった「体外受精」や「顕微授精」、そして男性不妊の手術も保険対象になったことです。例えば、無精子症に対する顕微鏡下精巣内精子採取術(MD-TESE)なども保険適用の対象となり、自己負担は原則3割です。ただし、算定内容や併用する検査・処置により支払額は変動します。具体的な見通しは受診先で確認しましょう。
注意点として、保険診療を行うには、そのクリニックが「保険医療機関」などの指定を受けている必要があります。受診前に保険診療に対応している施設かどうかを確認しておきましょう。
保険適用の条件|年齢制限・回数制限の注意点
保険で高度生殖医療(体外受精・顕微授精)を受けるには、以下の「年齢」と「回数」の条件を満たす必要があります。これらは2025年現在も変わらず適用されている基準です。
年齢制限(治療開始時)
女性の年齢が43歳未満であることが条件です。43歳の誕生日の前日までに治療を開始すれば、その周期は保険が適用されます。なお、タイミング法や人工授精にはこの年齢制限はありません。
回数制限(胚移植1回につき)
- 40歳未満: 子ども1人につき通算6回まで
- 40歳以上43歳未満: 子ども1人につき通算3回まで
この回数は「子ども1人につき」カウントされるため、治療で出産に至った場合、次の子どもの治療時には回数がリセットされます。
条件から外れた場合(43歳以上になった、回数上限を超えた)は、全額自己負担(自費診療)で治療を継続することになります。
保険適用外(自費)になるケース|なぜ保険外診療が発生するのか
基本的には保険が適用されますが、特定のオプションや状況によっては「自費」が発生します。
不妊治療目的ではないサプリメント代や、保険収載されていない新しい検査なども自費となります。先進医療にかかる費用は、自治体の助成制度の対象になることが多いため、全額を負担する前に助成金の利用を検討しましょう。
1.先進医療(技術料は自費)
タイムラプス培養や子宮内膜受容能検査(ERA)など、国が「先進医療」として位置づける技術は、保険診療と併用できる枠組みがあります。ただし、先進医療の「技術料」は原則として全額自己負担(10割)であり、医療機関によって実施可否や費用、対象となる患者要件が異なる点に注意が必要です。
また、着床前検査(例:PGT-Aに関連する検査)は、先進医療として扱われる場合がありますが、実施医療機関が限定される類型(先進医療B等)で運用されることもあり、どの医療機関でも同条件で受けられるわけではありません。利用可否・費用・適用条件は、受診先で必ず事前確認しましょう。
2.特定の胚凍結保存料
治療の一環としての胚凍結は保険適用ですが、「妊娠して治療を卒業した後の保存延長」などは治療とはみなされず、自費になるケースが一般的です。
国・自治体の助成金・補助金で負担減|制度の種類と探し方
かつて国が行っていた「特定不妊治療費助成事業」は、2022年の保険適用開始とともに終了しました。現在は「治療費のベースは保険(3割負担)、上乗せ部分は自治体の独自助成」という住み分けに変わっています。
自治体によって助成の有無や内容に大きな差があるため、自分が住んでいる地域の制度を正確に把握することが、費用負担を減らす鍵となります。
助成金の種類|検査助成と治療助成の違い
自治体の助成金は大きく分けて2つのタイプがあります。1つ目は「検査助成」です。治療を始める前の不妊検査や、初期のタイミング法などにかかる費用を数万円程度補助するもので、これから妊活を始めるカップルを支援します。
2つ目は「先進医療費助成」です。保険適用の体外受精などと併用した「先進医療(タイムラプスなど)」の技術料は全額自己負担となりますが、この部分を補填する制度です。現在は多くの自治体がこの先進医療費助成に力を入れています。
国と自治体の助成金は両方もらえる?併用の仕組み
「国の助成」と「自治体の助成」は二重取りできるものではなく、役割が異なります。国の支援は「公的医療保険(窓口負担3割)」そのものを指します。一方、自治体の助成は、保険がきかない「先進医療の技術料」や「自費検査」の部分をカバーするものです。
つまり、基本治療は保険制度を利用し、そこでカバーしきれない追加費用を自治体の助成金で補う、という形で併用するのが正解です。両方の制度を組み合わせることで、自己負担を最小限に抑えることができます。
助成金の対象条件|所得制限・年収・年齢の壁
助成の要件は自治体によって異なります。近年は国の旧制度にあった一律の所得制限が見直され、所得要件を設けない自治体も増えていますが、いまも所得制限を設ける自治体が存在する可能性があります。
一般に重視されやすいのは、申請時点での住所要件(住民票)、婚姻関係(法律婚・事実婚の扱い)、年齢要件、治療内容(先進医療に該当するか)などです。具体的な条件は自治体の最新要項で確認しましょう。
東京都などの自治体事例|5万円助成などの探し方
自治体の助成制度は、内容(対象となる治療・上限額・回数・申請期限・必要書類)が自治体ごとに異なり、年度途中でも見直されることがあります。
以下は制度設計の代表例として整理するもので、実際の適用可否や金額は、必ず居住自治体の最新の募集要項・公式ページで確認してください。
東京都の助成制度
東京都は全国でも特に手厚い支援を行っています。「不妊検査等助成事業」では、検査や一般不妊治療にかかった費用を上限5万円まで助成します(夫婦1組につき1回限り)。
さらに「先進医療費助成」では、保険診療と併用した先進医療費の7割を、1回につき上限15万円まで助成します。回数制限は保険適用の回数(最大6回など)に準じます。
このほか、不育症検査への助成や、健康な女性の卵子凍結への助成も実施しており、対象となる場合はこれらの制度の活用を検討すると、自己負担の平準化に役立ちます。
大阪市の助成制度
大阪市も独自の制度を持っています。「不妊検査費助成」では、夫婦で受けた検査費用の自己負担分を上限5万円まで助成します。
「先進医療費助成」については、費用の7割を助成しますが、1回の上限は5万円です。東京都(15万円)と比較すると上限額は低めですが、数万円の先進医療オプションを利用する際には十分な支えになります。申請は郵送やオンラインで可能です。
名古屋市の助成制度
名古屋市では、体外受精や顕微授精そのものに対する独自の費用助成は行っていません(2025年現在)。一般不妊治療への助成もないため、基本的には国の保険制度と高額療養費制度を利用することになります。
ただし、「不育症検査」については、費用の7割(上限6万円)を助成する制度があります。愛知県内の近隣市町村(豊田市など)では独自の助成を行っている場合があるため、転居などを検討する際は周辺自治体の情報も確認すると良いでしょう。
横浜市の助成制度
横浜市も名古屋市と同様、体外受精など治療費そのものへの独自助成は実施していません。現在は専門相談による心理的サポートや、「不育症検査費助成」(上限6万円)が中心です。
横浜市民の方は、まずは保険診療の枠内で治療を進め、高額療養費制度で月々の支払いを抑えるのが基本戦略となります。なお、神奈川県内の一部市町村では独自助成があるため、県と市の制度の違いに注意してください。
兵庫県の助成制度
兵庫県はユニークな制度を展開しています。「先進医療費助成」は、かかった費用に関わらず1回あたり定額3万円(治療内容により変動あり)を支援する仕組みです。特徴的なのは、保険診療と併用しない「全額自費の治療」で先進医療を行った場合も対象になる点です。
また、「通院交通費助成」があり、治療1クールの交通費から5,000円を引いた額の半額を助成してくれます。遠方のクリニックに通う場合や、通院回数が多い場合には非常に助かる制度です。
助成金の申請方法|タイミング・期限・必要書類の段取り
助成金の申請は、治療が終了した後に書類を提出する「事後申請」が基本です。しかし、自治体ごとに締め切りのルールは厳格で、1日でも遅れると受理されないケースがほとんどです。
せっかく対象となる治療を受けても、手続きのミスでお金を受け取れない事態は避けなければなりません。ここでは申請の一般的な流れと、期限に遅れないためのスケジュール管理、書類準備のポイントを解説します。
申請タイミングはいつ?まとめて申請か都度申請か
申請を行うタイミングは、原則として「1回の治療(1クール)が終了するごと」に行うのが確実です。
多くの自治体では、採卵から妊娠判定(または胚移植)までを1回の治療と定義し、その終了日から一定期間内に申請することを求めています。複数の治療分をまとめて申請しようとして領収書を溜め込んでいると、最初の治療分の申請期限が過ぎてしまうリスクがあります。
面倒でも治療が終わるたびに手続きを行うことが、もらい忘れを防ぐ最善策です。
申請期限と管理|「申請忘れ」を防ぐポイント
最も注意すべきは「年度末(3月31日)」の扱いです。
多くの自治体では「治療終了日の属する年度内(3月末まで)」を申請期限としています。例えば、2月から3月にかけて治療が終了した場合、申請までの猶予が極端に短くなることがあります。
自治体によっては「3月末までに治療が終わっていれば、申請は4月以降でも可」とする場合もあれば、「3月31日必着」とする場合もあります。自分の住んでいる地域の締め切りルールを必ず確認し、年度末にかかる治療の場合は、事前に仮申請が必要かなどを窓口に相談しておきましょう。
必要書類と準備|申請書・所得証明書の手配
申請には、自分で用意する書類と、病院に作成してもらう書類の2種類が必要です。
特に時間がかかるのが、医師が作成する「受診等証明書」です。発行までに2週間から1か月程度かかるクリニックも多いため、治療終了が見えた段階で早めに依頼する必要があります。
その他、自治体指定の申請書、領収書の原本、戸籍謄本(婚姻関係の証明)、住民票などが一般的です。所得制限がある自治体の場合は、課税証明書なども必要になります。役所で取得する書類は発行から3か月以内といった有効期限があるため、取得のタイミングにも注意してください。
高額療養費制度の活用|不妊治療の自己負担を上限額に抑える
公的医療保険が適用される不妊治療には、「高額療養費制度」という強力なセーフティーネットがあります。これは、1か月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、所得に応じた上限額を超えた分が払い戻される仕組みです。
この制度のおかげで、たとえ窓口で数十万円の請求が発生するような高度な治療を受けたとしても、実際の家計負担は一定額以下に抑えられます。経済的な不安を和らげるために、必ず押さえておきたい制度です。
高額療養費制度について詳しくは以下記事で解説しています。
制度の対象・対象外|不妊治療で使える費用とは
高額療養費制度の自己負担上限額は、年齢と所得区分で決まります。上限額は計算式で定められており、同じ年収帯でも「標準報酬月額」等により区分が変わることがあります。
記事内の上限額は目安として捉え、正確な上限は加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合等)の案内で確認してください。
なお、この制度の対象は保険診療分に限られ、先進医療の技術料や差額ベッド代などの自費分は合算できません。
申請の流れと限度額適用認定証|事前準備で窓口負担を減らす
高額療養費の支給を受けるには、大きく分けて2つの方法があります。
1つ目は「後から払い戻しを受ける」方法です。窓口で一旦3割負担分を全額支払い、後日加入している健康保険組合(協会けんぽ等)に申請書を提出します。診療月から3か月程度で、上限を超えた金額が口座に振り込まれます。
2つ目は「窓口での支払いを最初から上限額に抑える」方法です。マイナンバーカードを健康保険証として利用し、顔認証付きカードリーダーで情報提供に同意すれば、自動的に高額療養費制度が適用されます。これにより、窓口での支払いが自己負担限度額までで済み、高額な一時立て替えをする必要がなくなります。
マイナンバーカードを利用しない場合は、事前に保険組合へ申請して「限度額適用認定証」を入手し、受付で提示する必要があります。
注意点として、高額療養費は「月単位(1日~月末)」で計算されます。月をまたいで治療が行われると、それぞれの月で計算されるため、合算できず上限額に届かないケースが出てきます。採卵から移植までのスケジュールを組む際は、可能な限り同じ月内に収まるよう医師と相談するのも一つの知恵です。
医療費控除で税金を取り戻す|確定申告のやり方と対象費用
1年間(1月1日から12月31日)に自己負担した医療費が一定額を超えた場合、確定申告を行うことで払いすぎた税金が戻ってくる「医療費控除」という制度があります。
不妊治療は費用が高額になりやすいため、多くの人がこの制度の対象となります。会社員であっても年末調整では手続きできないため、自分で申告する必要があります。少し手間はかかりますが、家計の助けになる重要な制度ですので、仕組みと申請方法を理解しておきましょう。
医療費控除の確定申告については以下記事でも詳しく解説しています。
控除の対象になる費用|検査費用・通院費は入る?
医療費控除の対象となるのは、自分と生計を共にする家族のために支払った医療費の合計が、年間で10万円(総所得200万円未満の人は所得の5%)を超えた場合です。
不妊治療において対象となる費用は、診察代、検査代、薬代、手術費、入院費などです。また、通院のために利用した電車やバスなどの公共交通機関の運賃も対象になります。通院費は領収書が出ないことが多いため、乗車区間と運賃を記録したメモを残しておけば認められます。
一方で、医師の処方や指示に基づかないもの(個人的に購入したサプリメントなど)や、自家用車で通院した場合のガソリン代、駐車場代は原則として対象外です。
実際に戻ってくる金額は、支払った医療費そのものではなく、「医療費控除額 × 所得税率」で計算されます。所得税の還付に加え、翌年の住民税も安くなるメリットがあります。
保険適用外(自費診療)でも医療費控除はできる?
結論から言うと、保険適用外の「自費診療」や「先進医療」にかかった費用も、医療費控除の対象になります。
医療費控除は、治療のために必要と認められる費用であれば、保険の有無に関わらず合算できる制度です。不妊治療では、先進医療や薬剤などで自費負担が発生するケースも多いため、これらを漏れなく計上することで控除額が大きくなります。領収書には保険診療分と自費診療分が分かれて記載されていることが多いですが、どちらも大切に保管してください。
申告のやり方と時期|年末調整ではできない点に注意
医療費控除を受けるには、翌年の2月16日から3月15日までの間に、税務署またはオンライン(e-Tax)で確定申告を行う必要があります。会社員の年末調整では処理されないため、必ず自分で手続きを行ってください。
申告の際は、医療費の明細書を作成して提出します。健康保険組合から送られてくる「医療費のお知らせ」を利用すれば、明細の記入を省略できるため便利です。領収書の提出自体は不要になりましたが、自宅で5年間保存する義務があるため、捨てずに管理しておきましょう。
また、通院交通費については「医療費のお知らせ」には記載されないため、自分で記録したメモを基に別途計算して加算する必要があります。
助成金をもらった場合の医療費控除|年またぎの計算方法
医療費控除の計算で最も注意が必要なのは、「補填された金額」の扱いです。
自治体の助成金、高額療養費制度の払い戻し金、民間の医療保険の給付金などを受け取った場合は、その金額を医療費の総額から差し引かなければなりません。これらを引いた上での自己負担額が10万円を超えているかを確認しましょう。
よくある疑問として、治療費を支払ったのが12月で、助成金の決定や入金が翌年1月以降になる「年またぎ」のケースがあります。この場合でも、助成金は「その治療費を支払った年」の医療費から差し引くのがルールです。まだ入金されていなくても、支給される見込額を差し引いて申告を行ってください。
民間の医療保険・生命保険は使える?不妊治療の給付金事情
公的医療保険や自治体の助成金は強力な支えですが、それでもカバーしきれない「先進医療」や「自費診療」の費用を補う手段として、民間の医療保険や生命保険が注目されています。
既に加入している保険が不妊治療に対応しているか、あるいはこれから備えるべきか。ここでは民間の保険商品が不妊治療においてどのような役割を果たすのか、給付の仕組みと注意点を解説します。
給付対象になり得るケース|入院・手術・先進医療特約
民間の医療保険で給付金が受け取れる主なケースは、大きく分けて2つあります。
1つ目は「先進医療特約」を利用する場合です。保険診療と併用可能な「タイムラプス培養」などの先進医療技術を利用した際、その技術料(全額自己負担分)と同額が給付される特約です。自治体の助成金と併用できる場合も多く、経済的メリットが非常に大きいため、加入中の保険にこの特約が付いているか必ず確認しましょう。
2つ目は「手術給付金」や「入院給付金」です。採卵術や胚移植術、ポリープ切除術などは、約款上で「手術」として認められれば給付対象になることがあります。ただし、古いタイプの保険では不妊治療関連の手術が対象外となっているケースも少なくありません。また、近年は不妊治療専用の保険も登場しており、出産後の給付までカバーするものもあります。
治療中の保険加入と告知義務|加入できないリスクとは
これから不妊治療を始めようとする方、あるいは治療中の方が新たに保険に加入する場合、「告知義務」というハードルがあります。
保険に加入する際は現在の健康状態や通院歴を正直に申告しなければなりません。不妊治療も告知事項に含まれるため、治療開始後に通常の医療保険に入ろうとすると、加入を断られたり、「子宮や卵巣の病気は数年間保障しない(部位不担保)」という条件が付いたりすることが一般的です。
そのため、保険での備えを考えるなら、本格的な通院を始める前の加入が鉄則です。すでに治療中の場合は、条件が緩和された「引受基準緩和型」の保険や、不妊治療中でも加入しやすい少額短期保険などを検討する必要がありますが、保険料は割高になる傾向があります。
不妊治療を受けている際の生命保険への加入については以下Q&Aでも説明しています。
仕事と治療の両立支援|休暇・休職・傷病手当金と会社制度
不妊治療は頻繁な通院が必要となるため、仕事とのスケジュール調整に悩み、退職を選択してしまうケースも少なくありません。しかし、現在は法改正や社会的な意識の変化により、両立をサポートする環境が整いつつあります。
仕事を辞めずに治療を続けるために知っておきたい、休暇制度や休職時の給付金、そして自社の支援制度の上手な探し方について解説します。使える権利を正しく理解し、キャリアと治療の両立を目指しましょう。
不妊治療休暇・特別休暇|公務員や一般企業の制度導入状況
近年、不妊治療のために利用できる独自の休暇制度を導入する企業が増えています。公務員においては既に「出生サポート休暇」などが導入され、男女ともに利用可能な有給休暇として定着しつつあります。民間企業でも、法律上の義務ではありませんが、優秀な人材の離職を防ぐために専用の休暇制度を設けるケースが加速しています。
制度の内容は企業によって異なり、「年5日から10日」「1時間単位での取得可」「有給扱いまたは無給」など様々です。まずは自分の職場に専用の休暇があるか、あるいは治療に転用できる多目的休暇があるかを確認してみましょう。
休職時の傷病手当金|診断書が必要なケースと支給条件
会社員が病気やケガで働けなくなった際の所得補償である「傷病手当金」。
傷病手当金の支給可否は、医師が医学的に労務不能と判断するかどうかと、加入している健康保険の審査に基づいて決まります。
不妊治療そのものを理由とした休業が直ちに対象になるとは限りませんが、治療に伴う合併症や術後の体調不良などで医師が労務不能と判断した場合は、支給対象となる可能性があります。
しかし、採卵に伴う卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症や、手術後の著しい体調不良などにより、医師が「医学的に労務不能である」と診断した場合は支給対象になり得ます。申請には医師による診断書や、連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいることなどの要件を満たす必要があります。自己判断で休職する前に、必ず医師や健保組合に相談してください。
傷病手当金の受給要件や注意点については以下記事で詳しく解説しています。
会社の制度を確認|福利厚生や両立支援の探し方
勤務先にどのような支援制度があるかは、就業規則や社内イントラネットの福利厚生ページで確認できます。その際、「不妊治療」という名称だけでなく、「ファミリーサポート休暇」「ライフサポート休暇」「失効年次有給休暇の積立制度」といった名称で制度化されている場合もあるため、広く検索することがポイントです。
また、「くるみん認定」や「プラチナくるみん」を取得している企業は、子育てだけでなく不妊治療支援にも積極的な傾向があります。自分だけで探すのが難しいときは、人事担当者や社内の相談窓口、労働組合などに問い合わせてみるのも有効な手段です。
この記事のまとめ
この記事では、不妊治療にかかる費用の全体像を治療ステップ別に整理し、保険適用、助成金、高額療養費、医療費控除といった制度をどの順番で確認すべきかを理解しました。治療が進むほど自己負担が増えやすい一方、制度を正しく把握すれば負担を抑える余地があることがポイントです。次の行動として、まずは現在の治療段階と居住地の助成制度を確認し、使える制度を洗い出してみましょう。不安が残る場合は、投資のコンシェルジュの無料相談で状況を整理するのも一つの選択です。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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関連する専門用語
公的医療保険制度
公的医療保険制度とは、すべての国民が安心して医療を受けられるように、国が法律で定めた仕組みに基づいて提供される医療保険の制度です。日本では「国民皆保険(こくみんかいほけん)」と呼ばれ、国民全員がいずれかの医療保険に加入することが義務付けられています。 主な保険には、会社員などが加入する「健康保険」、自営業者や無職の人などが加入する「国民健康保険」、75歳以上の高齢者向けの「後期高齢者医療制度」などがあります。この制度により、医療費の一部(たとえば3割)を自己負担するだけで、必要な医療サービスを受けることができます。公的医療保険制度は、社会全体で医療費を支え合う「相互扶助」の仕組みであり、生活の安心を支える基本的な社会保障のひとつです。
自由診療
自由診療とは、公的医療保険が適用されない診療や治療の総称で、費用は全額患者さんの自己負担となります。医療機関と患者さんが自由に治療内容や料金を決定できるため、保険診療では受けられない最先端の医療技術や高価な医薬品を利用できる可能性がありますが、その分費用が高額になる傾向があります。また、設定価格や提供されるサービスが医療機関ごとに異なるため、治療前に内容と費用の詳細を十分に確認することが大切です。
先進医療
先進医療とは、公的医療保険ではまだ給付対象になっていない最先端の治療法や検査を指し、厚生労働大臣が安全性と有効性を一定程度認めたものとして個別に承認しています。保険診療と同時に受ける場合でも、先進医療にかかる部分の費用は全額自己負担となる一方、その他の一般的な診療費については通常どおり保険が適用されるため、患者さんは高額な最先端技術を必要最小限の自己負担で利用できる可能性があります。 ただし先進医療は提供できる医療機関が限られており、治療の内容や費用、リスクを十分に理解したうえで選択することが大切です。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1か月に医療機関で支払った自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超過分が払い戻される公的な医療費助成制度です。日本では公的医療保険により治療費の自己負担割合は原則3割(高齢者などは1〜2割)に抑えられていますが、手術や長期入院などで医療費が高額になると家計への影響は大きくなります。こうした経済的負担を軽減するために設けられているのが、この高額療養費制度です。 上限額は、70歳未満と70歳以上で異なり、さらに所得区分(年収の目安)によって細かく設定されています。たとえば、年収約370万〜770万円の方(一般的な所得層)では、1か月あたりの自己負担限度額は「約8万円+(総医療費−26.7万円)×1%」となります。これを超えた分は、後から申請によって保険者から払い戻しを受けることができます。 また、事前に健康保険の窓口で「限度額適用認定証」を取得し、医療機関に提示しておけば、病院の窓口で支払う金額そのものを最初から自己負担限度額までに抑えることも可能です。これにより、退院後の払い戻しを待たずに現金の一時的な負担を軽減できます。 同じ月に複数の医療機関を受診した場合や、同一世帯で同じ医療保険に加入している家族がいる場合には、世帯単位で医療費を合算して上限額を適用することもできます。さらに、直近12か月以内に3回以上この制度を利用して上限を超えた場合、4回目以降は「多数回該当」となり、上限額がさらに引き下げられる仕組みもあります。なお、払い戻し申請から実際の支給までには1〜2か月程度かかるのが一般的です。 資産運用の観点から見ると、この制度によって突発的な医療費リスクの一部を公的にカバーできるため、民間の医療保険や緊急時資金を過剰に積み上げる必要がない場合もあります。医療費リスクへの備えは、公的制度・民間保険・現金準備のバランスで考えることが大切です。特に高所得者や自営業者の場合は、上限額が比較的高めに設定されている点や支給までのタイムラグを踏まえ、制度と現金の両面から備えておくと安心です。
自己負担限度額
自己負担限度額とは、公的医療保険で定められた高額療養費制度において、同じ月に患者が支払う医療費の上限を示す金額です。外来受診や入院でかかった費用の自己負担分を合計し、この限度額を超えた分は後から払い戻されるか、限度額適用認定証を提示することで窓口負担を最初から抑えられます。 限度額は年齢と所得区分によって細かく区分され、低所得者ほど上限が低く設定されていますので、家計状況に応じた保護が図られています。慢性疾患で医療費が長期にわたって高くなる場合や、同じ世帯で医療費がかさむときに大きな助けとなる制度であり、事前に手続きをしておくと負担を最小限に抑えやすくなります。
限度額適用認定証
限度額適用認定証とは、高額療養費制度における自己負担限度額を医療機関や薬局の窓口で即時に反映させるため、加入している保険者から交付される認定書を指します。 この用語が登場するのは、手術や入院、継続的な治療などにより高額な医療費が見込まれる場面です。とくに、医療費をいったん全額立て替えるのではなく、窓口での支払いを所得区分ごとの上限額までに抑えたい場合に使われます。 限度額適用認定証について誤解されやすいのは、「これがあれば医療費が無料になる」「後から高額療養費の手続きをしなくてよくなる」と考えてしまう点です。実際には、自己負担がなくなるわけではなく、あくまで高額療養費制度の上限額まで支払いを抑えるための仕組みです。また、医療費の内容によっては、別途申請や精算が必要になることもあります。 また、この認定証は自動的に交付されるものではなく、原則として本人が事前に申請する必要があります。治療が始まってから申請しても、すでに支払った医療費には反映されないケースがあるため、制度の使い方を誤ると期待していた効果が得られないことがあります。 たとえば、入院前に限度額適用認定証を取得して医療機関に提示した場合、窓口での支払いは最初から自己負担限度額までに抑えられます。一方で、取得せずに入院し高額な医療費を支払った場合は、後から高額療養費として払い戻しを受ける形になります。






