
iシェアーズETFとは?主要銘柄の特徴・コスト・リスク・ NISAでの活用法など徹底解説
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公開:
2025.09.29
更新:
2025.09.29
世界最大級のETFブランド「iシェアーズ」は、日本市場でも数多くのETFを展開しており、低コストで分散投資ができる点から新NISAの投資先として注目されています。ただし、信託報酬だけでなく、売買手数料や為替影響、市場価格と基準価額の乖離など見落としやすい要素もあります。
例えば、東証上場の「iシェアーズS&P500米国株ETF(1655)」は信託報酬0.066%と低水準で、長期保有に適した代表例です。本記事では、全世界株や日本株、債券やREITなど代表的な銘柄の特徴と選び方、NISA・iDeCo活用の考え方まで整理し、初めてのETF投資でも判断できる軸を解説します。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むと、日本で購入できるiシェアーズETFを新NISAでどう活用すべきかが整理できます。例えば「iシェアーズS&P500米国株ETF(1655)」の信託報酬0.066%のように、コストを数値で比較する視点や、売買手数料・為替影響・基準価額との乖離といった実質コストの考え方が理解できます。
さらに、全世界株・日本株・債券・REITなど代表的な銘柄の役割や、テーマ型ETFを少額で取り入れる工夫も紹介。iDeCoではETFの代わりに同指数の投資信託を利用する判断も解説しており、読み終えたときには、自分に合った商品選びと買い方の方向性が見えてきます。
目次
世界最大級のETFブランド「iシェアーズ(iShares)」とは?
iシェアーズはどんな人におすすめ?向いている人・いない人の特徴を解説
iシェアーズの主要ETF一覧|全世界株から債券・ゴールドまで徹底解説
2.米国株(S&P500など)|米国市場の力強い成長を捉える
新NISAは役割分担がカギ!つみたて投資枠は投信、成長投資枠でETFを活用
新NISA成長投資枠の王道は「長期保有」!非課税メリットを最大化するコツ
iDeCoではETFは選択不可!代わりになる低コスト投資信託の選び方
iシェアーズETFおすすめ銘柄は?迷ったらこの3つの王道シナリオ
シナリオ2:「米国株式(S&P500)」集中で高いリターンを狙う
シナリオ3:「株式+債券」のバランス型で安定した運用を目指す
コストで損しない!iシェアーズETFの3つの費用(経費率・売買手数料・為替)
3.隠れコスト「為替手数料」とは?円貨決済と外貨決済どっちがお得?
なぜ?基準価額(NAV)と市場価格のズレ(乖離)が起こる仕組み
分配金は再投資すべき?複利効果を生むトータルリターン思考の重要性
世界最大級のETFブランド「iシェアーズ(iShares)」とは?
iシェアーズ(iShares)とは、世界最大の資産運用会社ブラックロック社が提供するETF(上場投資信託)のブランドです。全世界で1,500本以上のETFを展開し、その運用資産残高は数兆ドルに及び、信頼性と実績において非常に高い評価を得ています。個人投資家から機関投資家まで幅広く利用されており、インデックス運用の代表的な選択肢の一つとなっています。
世界シェアNo.1の実績と信頼性!iシェアーズの3つの特徴
iシェアーズETFは、世界のETF市場で約3割のシェアを占め、全世界で1,500本以上、日本国内でも100本以上が提供(うち東証上場は40本以上)されています(2025年9月時点)。投資対象は国内外の株式、債券、REIT(不動産投資信託)など多岐にわたります。もともと1990年代末から2000年頃に誕生したETFシリーズを、ブラックロック社が2009年に買収・統合し、現在のグローバルブランドに育てました。
世界最大の資産運用会社ブラックロックに関する解説はこちらの記事をご参照ください。
長年の運用実績と規模の大きさから、「ETFならiシェアーズ」と言われるほど代表的な存在であり、初心者からプロまで幅広い投資家に支持される背景には、主に3つの特徴があります。
1.インデックス運用の象徴的シリーズ
日経平均やS&P500といった代表的な指数に連動する商品から、先進国・新興国株式、債券、コモディティまで多彩なラインナップを持つため、初めてETFを利用する方でも選びやすい商品が揃っています。
2.国内での取引のしやすさ
日本の証券取引所に上場しているiシェアーズETFは、国内株式と同様に円建てで売買でき、取引手数料も国内株式と同水準で利用できます。
3.海外ETFへのアクセスの良さ
海外市場に上場しているETFについても、多くは日本の証券会社で外国株式として購入可能です(一部商品は金融庁への届出が必要)。こちらは外貨建てでの取引となりますが、グローバルで圧倒的な知名度と信頼感を持つブランドのため、安心して投資しやすい点が特徴です。
iシェアーズはどんな人におすすめ?向いている人・いない人の特徴を解説
低コストで多様な資産クラスにアクセスでき、東証上場と海外上場の両方を通じて幅広い選択肢が用意されています。投資信託と同様にインデックス投資を行える一方、取引の仕組みや使い勝手に違いがあるため、投資家のスタイルによって向き不向きが分かれます。
インデックスファンドとETFの違いは以下Q&Aで説明しています。
iシェアーズが向いている人:リアルタイム性やコストを重視する方
市場の動きを見ながら機動的に売買したい方や、ある程度まとまった資金を長期保有することでトータルコストを抑えたい方には、iシェアーズETFが適しています。高い流動性や透明性を活かし、自分の判断で取引したい投資家に向いています。
iシェアーズが向いていない人:手間をかけず少額から積立したい方
投資にあまり時間を割けない方や、毎月少額からコツコツ積み立てたい方は、iシェアーズETFよりも投資信託の方が便利です。自動積立の設定が可能で、日々の売買判断をする必要がないため、シンプルに資産形成を続けられます。
実際の活用スタイル 実際には、長期積立のコア資産として投資信託を使いつつ、相場下落時や追加投資のタイミングでiシェアーズETFをスポット購入する、といった併用スタイルも有効です。両者を補完的に活用することで、投資の効率性と柔軟性を高められます。ご自身の投資スタイルに合わせて、iシェアーズをうまく取り入れることが重要です。
iシェアーズの主要ETF一覧|全世界株から債券・ゴールドまで徹底解説
iシェアーズETFは、低コスト・高い流動性・透明性に加え、その圧倒的な商品ラインナップが大きな魅力です。株式・債券・REIT・コモディティ(金など)といった主要な資産クラスを広く網羅しており、全世界の市場に手軽に分散投資できるため、初心者からプロまで幅広く活用されています。ここでは、代表的な資産クラスごとのETFを紹介します。
1.全世界株式・先進国・新興国|これ一本で国際分散投資
商品名 | 信託報酬(目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
iシェアーズ MSCI ACWI ETF(ACWI) | 0.32% | ○(成長枠/海外ETF) | コア(全世界株式) | MSCI ACWI(先進+新興国)に連動。1本で広範な国・セクターへ分散投資。 |
iシェアーズ・コア MSCI 先進国株(除く日本)ETF | 0.209% | ○(成長枠) | コア(先進国) | 日本を除く先進国株に一括分散。1475(日本)との組合せで世界株の骨格を作れる。 |
iシェアーズ・コア MSCI 新興国株 ETF | 0.253% | ○(成長枠) | サテライト(新興国) | 新興国の大・中・小型(IMI)へ広く投資。成長性とボラティリティの高さを併せ持つ。 |
全世界の株式にまとめて投資できるタイプ(例:ACWIに連動)や、「先進国株式」と「新興国株式」を個別に組み合わせられるタイプなどがあります。特に全世界株式ETFは、これ一本で手軽に国際分散投資が実現できるため、長期的な資産形成の土台(コア)として最適です。
2.米国株(S&P500など)|米国市場の力強い成長を捉える
商品名 | 信託報酬(目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
iシェアーズ S&P500 米国株 ETF | 0.066% | ○(成長枠) | コア(米国株) | 米国大型株500社。円建て・為替ヘッジなし(TTM円換算)で米国株の中核に。 |
世界経済の中心である米国市場の成長を効率的に捉えるためのETFも充実しています。
特に代表的な株価指数であるS&P500に連動するiシェアーズS&P500米国株ETF(1655)は、iシェアーズの看板商品の一つとして高い人気を誇ります。
S&P500と他インデックスの比較は以下の記事で詳しく解説しています。
3.日本株(TOPIX・日経平均)|東証で手軽に円建て投資
商品名 | 信託報酬(目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
iシェアーズ・コア TOPIX ETF | 0.0495% | ○(成長枠) | コア(日本株) | 日本株を時価総額加重で広く分散。国内株の王道インデックス。低コストで流動性も高い。 |
iシェアーズ・コア 日経225 ETF | 0.0495% | ○(成長枠) | サブコア(日本大型) | 日経平均に連動。大型株中心で指標性が高い。TOPIXより銘柄数が絞られる。 |
日本の株式市場全体の値動きを示すTOPIXに連動するETFや、日経平均株価に連動するETFなど、国内の主要な指数に連動する商品も提供されています。これらは東京証券取引所に上場しており、円建てで手軽に売買できる点がメリットです。
4.債券(米国総合債券など)|ポートフォリオの守りの要
商品名 | 信託報酬(目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
iシェアーズ 米国総合債券 ETF | 0.088% | ○(成長枠) | コア(債券) | 米国投資適格の総合債券(国債・社債・MBS等)に広く分散。株式のクッションに。 |
iシェアーズ 米国債1–3年 ETF | 0.154% | ○(成長枠) | サテライト(短期債) | 短期米国債中心で金利感応度が小さめ。価格変動を抑えたい場面の安定パーツ。 |
iシェアーズ 米国債20年超 ETF(為替ヘッジあり) | 0.154% | ○(成長枠) | サテライト(長期債) | 超長期米国債×円ヘッジ。金利低下局面の上昇弾性が高いが、金利上昇時は逆も。 |
iシェアーズ・コア 日本国債 ETF | 0.066% | ○(成長枠) | コア(債券) | 日本国債(残存1年以上)。円建てのディフェンシブ資産としてボラティリティ緩和に。 |
全米の投資適格債券市場全体に幅広く分散投資する債券ETFも充実しています。債券は一般的に株式よりも値動きが穏やかなため、ポートフォリオに組み入れることで資産全体の安定性を高める「守り」の役割が期待できます。
5.REIT(不動産)|インフレ対策や分配金狙いで
商品名 | 信託報酬(目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
iシェアーズ・コア Jリート ETF | 0.165% | ○(成長枠) | サテライト(REIT) | 東証REIT指数に連動。不動産セクターの分散・インカム源泉の追加に。 |
iシェアーズ 米国リート ETF | 0.22% | ○(成長枠) | サテライト(REIT) | FTSE Nareit Equity REITs(配当込み、TTM、円建て)に連動。東証上場・円建て、年4回分配。主要投資対象USRT(iShares Core U.S. REIT ETF)を通じて米国上場REITに分散。 |
iシェアーズには、国内外の不動産セクターに投資するREIT ETFのラインナップもあります。REITは株式とは異なる値動きをすることが多く、分散投資の効果を高めます。また、インフレ対策や、比較的高い分配金を狙う目的でも活用されます。
6.金(ゴールド)|有事の際の資産の避難先
商品名 | 信託報酬(目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
iシェアーズ ゴールド ETF | 0.22% | ○(成長枠) | サテライト(コモディティ) | LBMA金価格(円換算)連動。インフレ・有事ヘッジ。分配は原則なし。 |
国内の投資信託では選択肢が少ない金(ゴールド)価格に連動するETFも、iシェアーズなら手軽に投資できます。金は株式や債券とは値動きが異なるため、ポートフォリオの安定性を高める効果が期待でき、特に経済が不安定な局面で価値が下がりにくい「安全資産」の一つとされています。
国内で買えるコモディティETFについては以下記事で詳しく解説しています。
補足:近年はアクティブ運用型ETFも登場
商品名 | 信託報酬(目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
iシェアーズ AI グローバル・イノベーション アクティブ ETF | 年0.847%(2026/6/30以降 年0.99%予定) | ○(成長枠) | サテライト(テーマ型・アクティブ) | 東証上場のアクティブETF。AI/テック関連のグローバル株へボトムアップで集中投資。円建て売買可。 |
従来、iシェアーズは指数に連動するパッシブ運用が中心でしたが、近年ではアクティブ運用のETFにも力を入れています。これは、運用担当者が独自の調査に基づき銘柄を選定するタイプの商品です。特定の成長テーマに集中投資するものなどがあり、新たな選択肢として注目されています。ただし、指数連動型に比べて信託報酬が高めに設定されている点には注意が必要です。
新NISAでiシェアーズを活用!成長投資枠での賢い使い方
iシェアーズETFは、新NISAの「成長投資枠」を活用して非課税で保有できます。成長投資枠では年間最大240万円まで国内外の株式やETFを自由に購入できるため、iシェアーズは有力な選択肢です。ここでは、新NISAでiシェアーズETFを賢く使うためのポイントを解説します。
新NISAは役割分担がカギ!つみたて投資枠は投信、成長投資枠でETFを活用
新NISAの非課税枠を最大限に活用するには、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の役割分担が鍵となります。
「つみたて投資枠」は、金融庁が定めた要件を満たす投資信託が主な対象であり、ETFは原則として利用できません。そのため、こちらはeMAXIS Slimシリーズなどの低コスト投資信託で毎月コツコツ積み立てるのが基本です。
一方、「成長投資枠」ではiシェアーズETFを自由に売買できます。つみたて投資枠で着実に資産形成を行いつつ、成長投資枠でiシェアーズETFをスポット購入する、といった併用も効果的です。
新NISA成長投資枠の王道は「長期保有」!非課税メリットを最大化するコツ
成長投資枠で購入したiシェアーズETFは、長期で保有することで値上がり益と分配金の両方が非課税になるメリットを最大限に享受できます。
S&P500や全世界株式などに連動する王道のETFを成長投資枠のコア資産としてじっくり保有するのが基本戦略です。
新NISAの大きな利点は、保有商品を売却した場合、その商品の取得価額分の非課税枠が翌年以降に復活し、再利用できる点にあります。このため、ライフイベントなどで資金が必要になった際も柔軟に対応できます。長期的な視点で、腰を据えて保有したい銘柄こそNISA口座に入れるのが良いでしょう。
iDeCoではETFは選択不可!代わりになる低コスト投資信託の選び方
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金準備に特化した強力な非課税制度ですが、残念ながらETFを直接購入することはできません。iDeCoの運用商品は投資信託が中心です。
もしiDeCoでiシェアーズETFと同様の投資を行いたい場合は、同じ指数(例:S&P500)に連動する低コストの投資信託を選ぶことで、代替が可能です。iDeCoの非課税メリットを活かしながら、ご自身の運用方針に合った商品を選びましょう。
iシェアーズETFおすすめ銘柄は?迷ったらこの3つの王道シナリオ
iシェアーズの豊富なラインナップから何を選べばよいか迷う方のために、初心者でも始めやすい3つの王道シナリオを紹介します。まずはご自身の資産の中核(コア)となる部分を、これらのシナリオから選んでみましょう。
シナリオ1:「全世界株式」一本化で手間なく市場の成長に乗る
全世界の株式にまとめて投資できるiシェアーズの「ACWI」などが代表例です。これ一本で世界中の株式市場に分散投資でき、市場全体の平均的なリターンを低コストで狙えます。どの国が成長するかを予測することなく、手間をかけずにコツコツと資産を育てたい方に向いています。
シナリオ2:「米国株式(S&P500)」集中で高いリターンを狙う
世界経済を牽引する米国の成長に期待するなら、S&P500に連動する「IVV」などが選択肢になります。全世界株式に比べて投資対象が集中するためリスクは高まりますが、より大きなリターンを狙える可能性があります。近年の力強い米国市場の成長を効率的に取り込みたい方におすすめです。
シナリオ3:「株式+債券」のバランス型で安定した運用を目指す
株式だけでなく債券を組み合わせることで、市場が下落した際の値動きを穏やかにする「バランス型」のポートフォリオも有効です。例えば、株式ETFと、値動きが比較的安定している債券ETFなどを組み合わせることで、安定性を重視した運用が目指せます。
さらに、この王道の組み合わせを「コア(中核)」とし、ご自身の関心が高い特定のテーマ(AI関連など)や成長が期待できるセクターのETFを「サテライト(衛星)」として少量加える「コア・サテライト戦略」も応用の一つです。ただし、サテライト部分は値動きが大きくなる傾向があるため、全体のバランスを見ながら慎重に配分を決めることが重要です。
コストで損しない!iシェアーズETFの3つの費用(経費率・売買手数料・為替)
iシェアーズETFを選ぶ上で重要なのが、投資にかかるコストの全体像を把握することです。ETFのコストは、保有中にかかる「経費率(信託報酬)」だけでなく、売買時に発生する「売買手数料」や海外ETF投資に伴う「為替手数料」も考慮する必要があります。これら3つの費用を正しく理解し、トータルコストを抑える方法を解説します。
1.経費率(信託報酬)は業界最低水準!長期投資で差がつく
iシェアーズETF最大の魅力の一つが、運用コストである経費率(信託報酬)の低さです。代表的なインデックス連動型ETFでは年率0.03〜0.10%程度に設定されており、一般的な投資信託より低水準です。例えば、S&P500に連動するETF「IVV」の経費率は0.03%と極めて安価です。このわずかな差も、長期的に見ると複利効果に影響し、将来のリターンに大きな違いを生むため、コストを重視する投資家にとって大きなメリットとなります。
2.売買手数料とスプレッドを安く抑える3つのコツ
ETFは株式と同様に売買の都度、手数料が発生します。また、買値と売値の差である「スプレッド」も実質的なコストになります。これらを抑えるには、以下の3つのコツを意識すると良いでしょう。
1.手数料の安い証券会社を選ぶ
ネット証券を中心に、ETFの売買手数料を無料にしているところもあります。ご自身が利用する証券会社の手数料体系を確認し、有利な条件の会社を選ぶことが基本です。
2.短期的な売買を避ける
売買のたびに手数料がかかるため、頻繁に取引を繰り返すとコストがかさみます。長期保有を前提に、取引回数を抑えることがコスト削減につながります。
3.指値注文を活用する
取引量が少ない銘柄ではスプレッドが広がり、意図せず不利な価格で約定してしまうことがあります。これを避けるため、希望する価格を指定する「指値注文」を活用するのが有効です。
3.隠れコスト「為替手数料」とは?円貨決済と外貨決済どっちがお得?
海外の資産に投資するiシェアーズETFの場合、売買時に日本円と外貨を交換するための「為替手数料」が発生します。これは証券会社が定める為替レートに含まれるスプレッドであり、隠れたコストと言えます。
海外ETFの決済方法には、証券会社が代行してくれる「円貨決済」と、自分で外貨を用意する「外貨決済」があります。
- 円貨決済:手間がなく手軽ですが、為替手数料がやや割高に設定されている場合があります。
- 外貨決済:自分で米ドルなどを用意する手間はかかりますが、より有利なレートで両替できれば為替手数料を抑えられます。
どちらがお得かは利用する証券会社や取引額によりますが、コストにこだわるなら外貨決済も検討の価値があるでしょう。
iシェアーズETFのトータルリターンの見方
ETFの真の実力を測るには、表面的な価格変動だけでなく「トータルリターン」で評価することが重要です。トータルリターンとは、値上がり益に加えて、受け取った分配金を再投資したものとして計算した総合的な収益率のことです。ここでは、iシェアーズETFのトータルリターンを正しく理解するために欠かせない3つのポイントを解説します。
なぜ?基準価額(NAV)と市場価格のズレ(乖離)が起こる仕組み
ETFには、投資信託本来の価値である「基準価額(NAV:理論値)」と、証券取引所でリアルタイムに売買される「市場価格(実勢の取引値)」という2つの価格が存在します。
基準価額は1日1回算出されますが、市場価格は投資家からの人気(需要と供給)によって常に変動し、短期的にズレることがあります。
ただし大きなズレは機関投資家の売買(裁定)で縮小しやすいため、流動性の高い時間帯と指値の活用が有効です。
分配金は再投資すべき?複利効果を生むトータルリターン思考の重要性
ETFを保有していると、定期的に分配金が支払われます。この分配金を使ってしまうのではなく、再び同じETFに投資(再投資)することで、元本と利益が雪だるま式に増えていく「複利効果」を最大限に活かすことができます。
長期的な資産形成において、この複利効果は極めて重要です。そのため、ETFの運用成績を評価する際は、単純な値上がり益だけでなく、分配金を再投資した場合のトータルリターンで判断する視点を持ちましょう。ただし、受け取った分配金には税金がかかる点には注意が必要です。
為替ヘッジは必要?あり・なしのメリット・デメリットを解説
海外資産に投資するETFの場合、為替レートの変動がリターンに影響します。この影響を抑える仕組みが「為替ヘッジ」です。
- 為替ヘッジなし(一般的):円安になれば為替差益でリターンが増えますが、円高に振れると為替差損でリターンが目減りするリスクがあります。為替の恩恵もリスクも直接受け入れるスタイルです。
- 為替ヘッジあり:為替変動のリスクを回避できるため、基準価額の動きに集中できます。しかし、ヘッジを行うためのコストがかかるため、その分リターンが低くなる傾向があります。
どちらが良いかは一概には言えず、ご自身の為替相場に対する考え方やリスク許容度に応じて、為替ヘッジの有無を確認し、商品を選ぶことが重要です。
為替ヘッジのメリットや注意点は以下Q&Aでも説明しています。
iシェアーズで始めるテーマ型投資(半導体・インド・金など)
全世界株式などの王道ETFで資産形成の土台を築いた次のステップとして、ご自身の関心や将来予測に基づいた「テーマ型投資」も選択肢になります。
iシェアーズが提供する豊富なテーマ型ETFの中から、特に注目度の高い「半導体」「インド」「金(ゴールド)」について、その魅力と注意点を解説します。
今話題の「半導体」セクターに投資するETFと注意点
AIや自動運転などの成長分野を支える「半導体」は、日本でも注目度が高いテーマです。東証上場の「iシェアーズ・グローバル半導体ETF(2624)」は、米国や台湾を中心とする世界の大手半導体企業に分散投資できる商品です。
NVIDIAやTSMCといった有力企業をまとめて保有できるのが魅力です。 一方で、半導体業界は景気の波を強く受けるため、株価変動が大きくなるリスクがあります。長期的な成長性に期待しつつも、短期的な値動きには注意が必要です。
テーマ型投資に関する基本解説はこちらの記事をご参照ください。
成長著しい「インド株」などに投資する新興国ETFの魅力とリスク
高い経済成長が期待されるインドは、日本の個人投資家からも人気が高まっています。東証上場の「iシェアーズ・インド株ETF(1655)」は、インドを代表する大企業に手軽に分散投資できるETFです。
国内証券口座から円建てで取引できるため、為替手続きの手間なくインド市場にアクセスできます。 ただし、新興国特有の為替変動や政策リスクは避けられません。長期保有を前提とした分散投資の一部として活用するのが賢明です。
守りの資産「金(ゴールド)」ETFでインフレや有事に備える
インフレや地政学リスクに備える「守りの資産」として、金(ゴールド)は昔から注目されています。東証上場の「iシェアーズ・ゴールドETF(1540)」は、純金価格に連動する代表的なETFで、少額から売買できる利便性が特徴です。
金は株式や債券と異なる値動きをするため、ポートフォリオに少量加えることで資産全体の安定性を高める効果が期待されます。「有事の金」と呼ばれるように、不安定な局面で価値を発揮する資産です。
金投資の基本に関してはこちらの記事もご参照ください。
この記事のまとめ
iシェアーズETFは、低コストで幅広い資産に分散投資でき、新NISAの成長投資枠で活用しやすい商品です。ただし信託報酬以外にも売買手数料や為替影響、市場価格と基準価額の差といった実質コストを理解することが重要です。基本は全世界株やS&P500、日本株などをコアに、必要に応じて債券やREITを加える方法です。長期保有で非課税のメリットを最大化できますが、家計全体のバランスを考えると選択に迷うこともあります。不安があれば投資のコンシェルジュの無料相談で専門家に確認し、安心して一歩を踏み出しましょう。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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ETF(上場投資信託)
ETF(上場投資信託)とは、証券取引所で株式のように売買できる投資信託のことです。日経平均やS&P500といった株価指数、コモディティ(原油や金など)に連動するものが多く、1つのETFを買うだけで幅広い銘柄に分散投資できるのが特徴です。通常の投資信託に比べて手数料が低く、価格がリアルタイムで変動するため、売買のタイミングを柔軟に選べます。コストを抑えながら分散投資をしたい人や、長期運用を考えている投資家にとって便利な選択肢です。
インデックス運用
インデックス運用は、市場全体の動きを示す指標(インデックス)に連動するように設計された運用手法です。例えば、日経平均株価やS&P500などのインデックスに基づき、同様の構成比率で資産を運用します。 市場全体に投資するためリスク分散が図りやすく、運用コストが低いのが特徴です。一方で、大きな利益を狙うというよりも、市場平均と同程度のリターンを目指す保守的な運用スタイルです。
REIT(Real Estate Investment Trust/不動産投資信託)
REIT(Real Estate Investment Trust/不動産投資信託)とは、多くの投資家から集めた資金を使って、オフィスビルや商業施設、マンション、物流施設などの不動産に投資し、そこで得られた賃貸収入や売却益を分配する金融商品です。 REITは証券取引所に上場されており、株式と同じように市場で売買できます。そのため、通常の不動産投資と比べて流動性が高く、少額から手軽に不動産投資を始められるのが大きな特徴です。 投資家は、REITを通じて間接的にさまざまな不動産の「オーナー」となり、不動産運用のプロによる安定した収益(インカムゲイン)を得ることができます。しかも、実物の不動産を所有するわけではないので、物件の管理や修繕といった手間がかからない点も魅力です。また、複数の物件に分散投資しているため、リスクを抑えながら収益を狙える点も人気の理由です。 一方で、REITの価格は、不動産市況や金利の動向、経済環境の変化などの影響を受けます。特に金利が上昇すると、REITの価格が下がる傾向があるため、市場環境を定期的にチェックしながら投資判断を行うことが重要です。 REITは、安定した収益を重視する人や、実物資産への投資に関心があるものの手間やコストを抑えたい人にとって、有力な選択肢となる資産運用手段の一つです。
コモディティ
コモディティは、世界で標準化された形で売買される原材料・一次産品の総称で、貴金属(金・銀・プラチナ)、エネルギー資源(原油・天然ガス)、農産物(小麦・トウモロコシ・大豆)、産業用金属(銅・アルミニウム)などに分類される。 投資経路は大きく四つある。①現物保有(地金やコイン)、②先物取引、③商品指数連動型ETF・ETN、④コモディティファンド。実務では先物を組み込んだETFが主流で、代表的な指数にブルームバーグ・コモディティ・インデックスや S\&P GSCI がある。 価格は需給バランス、在庫統計、OPEC政策、地政学リスク、天候、為替など多様な要因で変動する。先物運用では限月乗り換え時のロールコスト(コンタンゴ)や信託報酬がリターンを圧迫し、現物保有では保管・保険料、税制(例:金地金の譲渡益は総合課税)が影響するため、コスト構造の把握が欠かせない。 コモディティは株式・債券との相関が相対的に低く、インフレ率と連動しやすいことから、分散投資とインフレヘッジに有効とされる。一方で短期的な価格変動が大きく、資産配分比率や取引手段を目的に合わせて設計し、損失許容度に応じたリスク管理を徹底することが重要となる。
信託報酬
信託報酬とは、投資信託やETFの運用・管理にかかる費用として投資家が間接的に負担する手数料であり、運用会社・販売会社・受託銀行の三者に配分されます。 通常は年率〇%と表示され、その割合を基準価額にあたるNAV(Net Asset Value)に日割りで乗じる形で毎日控除されるため、投資家が口座から現金で支払う場面はありません。 したがって運用成績がマイナスでも信託報酬は必ず差し引かれ、長期にわたる複利効果を目減りさせる“見えないコスト”として意識されます。 販売時に一度だけ負担する販売手数料や、法定監査報酬などと異なり、信託報酬は保有期間中ずっと発生するランニングコストです。 実際には運用会社が3〜6割、販売会社が3〜5割、受託銀行が1〜2割前後を受け取る設計が一般的で、アクティブ型ファンドでは1%超、インデックス型では0.1%台まで低下するケースもあります。 同じファンドタイプなら総経費率 TER(Total Expense Ratio)や実質コストを比較し、長期保有ほど差が拡大する点に留意して商品選択を行うことが重要です。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。
コア・サテライト戦略
コア・サテライト戦略とは、資産運用において「コア資産」と「サテライト資産」を組み合わせることで、リスクとリターンのバランスを最適化する投資手法のことを指す。ポートフォリオの大部分を安定したコア資産で構成し、長期的な市場の成長に連動するリターンを確保する一方で、残りの一部をサテライト資産として運用し、高いリターンの可能性を追求する。これにより、安定性を維持しながら市場環境の変化に柔軟に対応し、資産の成長を図ることができる。
トータルリターン
トータルリターンとは、株式や債券、投資信託などの資産から得られる利益を、値上がり益(キャピタルゲイン)と分配金・利息・配当金などのインカムゲインを合わせて総合的に捉えた指標です。配当や利息をその都度再投資すると仮定して計算するのが一般的であり、単に価格変動だけを追う「価格リターン」と比べ、投資の実質的な運用成果をより正確に示します。このため、長期投資のパフォーマンス評価や異なる資産クラスの比較を行う際には、トータルリターンで見ることが重要です。
基準価額
基準価額とは、主に投資信託の商品価格を表すもので、投資信託1口あたりの価値を示しています。毎営業日に一度計算され、投資信託が保有している株式や債券などの資産の時価総額から、運用にかかる費用を差し引いた金額を、発行済みの総口数で割って算出されます。 投資信託の購入や売却の際には、この基準価額が参考になりますので、価格の動きに注目することが大切です。ただし、基準価額は市場価格とは異なり、リアルタイムで変動するわけではないため、翌営業日の価格になることが多い点にもご注意ください。
為替ヘッジ
為替ヘッジとは、為替取引をする際に、将来交換する為替レートをあらかじめ予約しておくことによって、為替変動のリスクを抑える仕組み。海外の株や債券に投資する際は、その株や債券の価値が下がるリスクだけでなく、為替の変動により円に換算した時の価値が下がるリスクも負うことになるので、後者のリスクを抑えるために為替ヘッジが行われる。
スプレッド(Spread)
スプレッド(Spread)とは、金融商品の売値(ビッド:Bid)と買値(アスク:Ask)の差のことをいいます。主に外国為替市場や債券市場、株式市場などで使われる用語です。 ビッド(Bid)は投資家がその商品を「売るときに受け取れる価格」、アスク(Ask)は「買うときに支払う価格」を指します。スプレッド(Spread)が広いほど、投資家にとっての取引コストが高くなるため、売買のタイミングには注意が必要です。 一般的に、流動性の低い市場や銘柄ではスプレッドが広がりやすく、反対に、取引が活発な市場ではスプレッドが狭くなる傾向があります。そのため、スプレッドの大きさは、市場の流動性や取引コストを判断する一つの指標となります。