
テーマ型投資信託とは?テーマの関連企業に分散投資するアクティブファンドの仕組みを徹底解説
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執筆者:
公開:
2025.02.18
更新:
2025.06.19
生成AIや脱炭素など旬のテーマ銘柄をまとめ買いできる「テーマ型投資信託」が話題です。しかしテーマに集中するゆえの値動きの大きさや信託報酬1%超の高コスト、テーマ終息リスクを見落とすと期待外れに終わる恐れがあります。本稿ではテーマの選定ロジック、実績リターンと最大下落率、為替ヘッジ有無による差も示し、インデックス中心ポートフォリオにどう組み込むかの判断軸を提示します。さらに伝統資産との相関や投資時期によるパフォーマンス格差も検証し、適切な投資比率と出口戦略を考える手がかりを得られます。ぜひ参考にしてください。
サクッとわかる!簡単要約
テーマ型投資信託の仕組み、期待リターンと注意すべき高コスト・集中リスクを、AI・脱炭素など実例データで瞬時に把握できます。信託報酬1.9%が20年複利をどれほど削るか、為替ヘッジの有無が年9ポイント超の差を生んだ事例、最大40%のドローダウン時期を具体的に確認でき、インデックスを核に5〜10%程度をサテライト投入する判断材料と出口戦略のヒントが得られます。さらにテーマと伝統資産の相関係数やリバランス時のスプレッドコスト、テーマ終息時の資金回収策まで学べるため、投資初心者でも短時間でブレない判断軸を獲得できます。
テーマ型投資信託とは?特定のテーマに関連する企業に投資するアクティブファンド
テーマ型投資信託とは、特定のテーマや業界に関連する企業の株式に投資する投資信託です。例えば、AI(人工知能)、ロボティクス(自動化・ロボット技術)、クリーンエネルギー(再生可能エネルギー)といった分野が挙げられます。
テーマ型投資信託の特徴は、ファンドマネージャーが投資対象を選定し、成長が期待できる企業を厳選する点にあります。指数(インデックス)に連動するのではなく、特定分野の成長に賭けるスタイルです。そのため、高いリターンを得られる可能性がある一方で、特定のテーマが失速すると大きな損失が出るリスクもあります。
インデックスについて詳しくは以下の記事で解説しています。
投資信託の基本を押さえたい方はこちらのFAQもご覧ください。
テーマ型投資信託のメリットとデメリット
テーマ型投資信託は、関心のある分野に投資できる手軽さが魅力で、値動きの理由も分かりやすいという利点があります。しかし、特定のテーマに集中するため分散が不十分でリスクが高く、手数料も割高という側面もあります。投資を始める前に、メリットとデメリットの両方をしっかり理解し、自分の投資方針に合っているかを見極めることが重要です。
テーマ型投資信託のメリット
テーマ型投資信託には多くのメリットがあります。本章では、①自分の興味ある分野に投資できる楽しさ、②値動きの理由が分かりやすいこと、③専門知識がなくても手軽に始められる点、そして④少額から分散投資ができる、という4つの利点を解説。投資初心者でも魅力を感じやすいポイントを一つずつ見ていきましょう。
メリット1. 興味・関心のある分野に投資できる
AI、ロボティクス、クリーンエネルギーなど、自分が応援したい、あるいは将来性を感じるテーマを選んで投資できます。自分の好きな分野であれば、情報収集も楽しくなり、投資への関心やモチベーションを高く保ちやすいという利点があります。
メリット2. 値動きの理由を把握しやすい
投資対象が特定のテーマに絞られているため、価格が変動する要因を理解しやすくなります。例えば「半導体」がテーマの投信なら、半導体需要の増減といったニュースが価格に直結するため、初心者でも値動きの背景を掴みやすく、投資判断がしやすくなります。
メリット3. 手軽に投資を始められる
個別株投資のように一社ずつ詳細な企業分析をする必要がなく、「そのテーマが今後成長するか」という大局観で投資判断ができます。銘柄選定は運用の専門家が行ってくれるため、詳しい知識がなくても比較的気軽に始められるのは大きな魅力です。
メリット4. 少額から分散投資ができる
通常、複数の企業の株式を個別に購入するにはまとまった資金が必要ですが、投資信託なら数千円〜数万円程度の少額からでも始められます。1つの投資信託に複数の企業が組み入れられているため、少額で自然と分散投資が実現でき、リスクを抑える効果が期待できます。
テーマ型投資信託のデメリット
魅力的なテーマ型投資信託ですが、注意すべきデメリットも存在します。本章では、①投資が特定の分野に集中するリスク、②価格の変動が大きいこと、③信託報酬が割高であること、そして、④流行に乗ることで「高値掴み」しやすい点という4つの側面を解説。こうした注意点を理解することが賢い投資判断につながります。
デメリット1. 分散が不十分でリスクが集中しやすい
テーマ型投資信託は、特定の業種やテーマに投資対象を絞り込むため、幅広い銘柄に投資するインデックスファンドと比べて分散が効きにくく、リスクが集中しやすいという性質があります。例えば、AI関連のファンドはAI技術の発展期には大きく成長しますが、技術革新の停滞や競争激化などでテーマ自体の成長が鈍化すると、ファンドの価格が全体的に大きく下落する可能性があります。
デメリット2. ボラティリティ(値動き)が大きい
成長が期待される分野に投資するため、価格の上昇も大きいですが、その分急落するリスクもあります。特に、特定のテーマは市場のトレンドやニュースに大きく影響されるため、価格の変動(ボラティリティ)が激しくなりやすい傾向があります。
投資信託のデメリットを整理したい方はこちらのFAQもご参照ください。
デメリット3. 信託報酬(手数料)が割高
テーマ型投資信託の多くは、専門家が銘柄を選定・売買する「アクティブ運用」を行うため、指数に連動する「パッシブ運用」のインデックスファンドに比べて信託報酬(手数料)が割高になる傾向があります。インデックスファンドの信託報酬が年率0.1%台からあるのに対し、テーマ型は年率1.0%以上が一般的です。このコストはリターンを圧迫する要因となり、長期的に運用成績に影響を与える可能性があります。
投資信託の種類 | 信託報酬の目安(年率) |
---|---|
インデックスファンド(パッシブ型) | 0.1%~0.3%程度 |
テーマ型投信(アクティブ型) | 1.0%以上が一般的 |
なぜテーマ型投信の手数料が高いのかというと、ファンドマネージャーが個別銘柄を選定し、積極的に売買を行うため、運用コストが高くなるからです。そのため、運用がうまくいかなかった場合、信託報酬が高い分だけコスト負担が大きくなり、リターンがマイナスになる可能性もあることを理解しておく必要があります。
デメリット4. トレンドに流され「高値掴み」しやすい
さらに、テーマ型投信はトレンドに影響されやすく、高値掴みのリスクがある点にも注意が必要です。例えば、AIが市場で注目を集め、多くの投資家が関連銘柄を購入している時期に、AIテーマ型投信を買ったとします。この場合、すでに多くの投資家が資金を投入しており、投資信託の価格が割高になっている可能性があります。その後、AIブームが落ち着くと、関連株の価格が下がり、テーマ型投信の価値も下落するリスクがあります。
テーマ型投資信託の具体例
テーマ型投資信託は、将来性が見込まれる特定の分野に集中投資する商品です。本章では、その代表例として「AI(人工知能)」と「ロボティクス」という、今まさに注目を集める2つのテーマを取り上げます。NVIDIAやマイクロソフトといった世界的な成長企業に投資し、高いリターンを狙うこれらのファンドについて、その特色や構成銘柄を具体的に見ていきましょう。
グローバルAIファンド:AI市場の成長を取り込むアクティブファンド
「グローバルAIファンド」は三井住友DSアセットマネジメントが運用する投信で、NVIDIAやマイクロソフト、テスラなどのAI関連銘柄で構成されています。ファンドの特色として、「世界の上場株式の中から、AI(人工知能)の進化、応用により高い成長が期待される企業の株式」に投資するとしています。全世界を対象としていますが、現時点でアメリカが約8割を占めます。決算は年1回、信託報酬は年率1.925%です。為替ヘッジ付きの投資信託とヘッジ無しの投資信託の両方が存在します。また、NISA成長投資枠の対象商品となっています。
昨今ではAIへの投資が盛んで、関連株の値動きが好調ということもあり、グローバルAIファンドは注目されています。構成銘柄に含まれるNVIDIAの株価は23年当初の20ドル台から、現在では130ドル台と大きく上昇しました。NVIDIAはAIの計算に欠かせない「GPU」を設計・販売しています。
グローバルロボティクス株式ファンド:ロボティクス関連企業(ロボット・AI・半導体関連)に分散投資するアクティブファンド
「グローバル・ロボティクス株式ファンド」は日興アセットマネジメントが運用するテーマ型投信です。世界各国からロボティクス関連企業に投資を行うとしており、NVIDIAやマイクロソフト、TSMC、キーエンスなど、ロボットやAI、半導体関連の銘柄で構成されています。国別では約半分をアメリカ、4分の1を日本が占めます。「年2回決算型」と「毎年決算型」の2種類で、それぞれ為替ヘッジの有無を選択できます。信託報酬は1.936%です。グローバルAIファンドと同様、成長投資枠の対象商品です。
AIと同様にロボティクスは注目されています。人手に代わるロボットとAI、IoTを活用した技術変革は「第4次産業革命」と呼ばれ、主に製造業の分野で自動化が進んでいくことでしょう。
テーマ型投資信託を選択する際の注意事項
テーマ型投資信託を選ぶ際は、そのテーマや業界の将来性を慎重に判断することが重要です。話題性だけで飛びついてしまうと、高値掴みのリスクが高まるため、長期的に成長が期待できるテーマかどうかをしっかりと見極める必要があります。
また、最低でも投資対象となる銘柄の構成を確認し、ファンドの運用方針が適切かをチェックしましょう。「環境」「資源」などの名称がついている投信の中には、実質的にインデックスファンドと大きな違いがないにもかかわらず、手数料(信託報酬)が割高に設定されている商品もあります。 こうした投信は、運用コストの割にパフォーマンスが期待ほど伸びない可能性があるため、手数料に見合う運用成果が得られるかを事前に比較検討することが大切です。
さらに、金融機関にとってテーマ型投信は信託報酬が高く、収益性が高い商品であるため、話題性をもとに積極的に販売されることがあります。オールカントリー型(オルカン)やインデックスファンド以外の補助的な投資先として提案されるケースもありますが、高値掴みやコスト負担のリスクを理解した上で慎重に判断することが求められます。
また、テーマ型投信はインデックスファンドと比較すると、リスクが高く、信託報酬も割高です。例えば、グローバルロボティクス株式ファンドのように、市場全体の平均リターンを下回るケースもあるため、「テーマが成長するから必ず利益が出る」とは限りません。
このような点を踏まえ、特別な関心があるテーマでない限り、投資の中心はインデックスファンドにするのが無難でしょう。テーマ型投信は補助的な投資先として考え、全体の資産配分のバランスを意識しながら活用することが重要です。
よくある質問(FAQ)
この記事のまとめ
テーマ型ファンドは、気になる産業をまとめて手軽に買える反面、銘柄集中・高コスト・為替要因が重なり短期間でパフォーマンスが振れやすい点を忘れてはなりません。本記事で比較した2ファンドのデータが示すように、信託報酬1.9%前後は長期複利を削り、ドローダウン40%超は精神的・資金的耐性を試します。活用するならインデックスを核に5〜10%程度をサテライトに置き、テーマの寿命と資金回収タイミングをシミュレーションしておくことが肝心です。流動性やリバランス時のスプレッドコストも見積もり、実行前に目標リターンと損失許容幅が合致しているか再確認しましょう。必要に応じて専門家に相談するのも選択肢です。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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関連質問
関連する専門用語
テーマ型投資信託
テーマ型投資信託は、特定のテーマやトレンドに基づいて構築されたポートフォリオを持つ投資ファンドです。これらのファンドは、技術革新、人口動態の変化、環境保護、健康増進など、特定のテーマに焦点を当てた投資を行います。投資対象は、そのテーマに直接関連する企業や業界に限られることが多く、市場全体の動向よりも、選ばれたテーマが持つ成長ポテンシャルを追求します。 テーマ型投資信託は、投資家にとって魅力的な成長セクターへの露出を提供することで、特定の経済的、社会的トレンドから利益を得る機会を提供します。これにより、従来の市場指数に依存することなく、よりダイナミックな投資戦略を展開することが可能になります。ただし、これらのファンドは、特定のテーマに依存することから、そのテーマが市場からの支持を失うとリスクが高まる可能性もあります。そのため、テーマ型投資信託に投資する際には、テーマの選定理由や将来性をよく理解し、リスク管理を徹底することが重要です。
投資信託
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。運用によって得られた成果は、各投資家の投資額に応じて分配される仕組みとなっています。 この商品の特徴は、少額から始められることと分散投資の効果が得やすい点にあります。ただし、運用管理に必要な信託報酬や購入時手数料などのコストが発生することにも注意が必要です。また、投資信託ごとに運用方針やリスクの水準が異なり、運用の専門家がその方針に基づいて投資先を選定し、資金を運用していきます。
アクティブファンド
アクティブファンドとは、運用のプロであるファンドマネージャーが、市場の平均を上回るリターンを目指して積極的に銘柄を選んで運用するタイプの投資信託のことです。 具体的には、独自の分析や調査にもとづいて、将来性があると見込まれる企業や、割安と判断される株式などに投資を行います。こうした運用には高度な専門知識と時間が必要となるため、同じ投資信託でも市場平均への連動を目指す「パッシブファンド」より運用コスト(信託報酬など)が高めになる傾向があります。しかし、その分大きなリターンを狙える可能性もある点が魅力です。 ただし、アクティブファンドだからといって必ずしも市場平均を上回るとは限らないことに注意が必要です。投資判断がうまくいかなかった場合は、損失が出たり、パッシブファンドに劣る成績となったりすることもあります。 投資初心者の方は、ファンドマネージャーの運用実績やファンドの方針、運用コストなどをよく調べたうえで、自分の投資目的やリスク許容度に合った商品を選ぶことが大切です。購入前に「過去の運用成績」や「運用レポート」を確認し、アクティブファンドの特徴を理解してから投資を始めましょう。
インデックスファンド
インデックスファンドとは、特定の株価指数(インデックス)と同じ動きを目指して運用される投資信託のことです。たとえば「日経平均株価」や「TOPIX(東証株価指数)」などの市場全体の動きを示す指数に連動するように設計されています。この仕組みにより、個別の銘柄を選ぶ手間がなく、市場全体に分散投資ができるのが特徴です。また、運用の手間が少ないため、手数料が比較的安いことも魅力の一つです。投資初心者にとっては、安定した長期運用の第一歩として選びやすいファンドの一つです。
パッシブ運用
パッシブ運用とは、投資信託を選ぶ際の運用手法の一つ(対義語:アクティブ運用)。比較のために用いる指標であるベンチマーク(日経平均やNASDAQなど)と同様の動きを目標とする運用手法で、組み入れ銘柄数は多くなる傾向がある。パッシブ運用はアクティブ運用に比べて販売手数料や信託報酬などのコストは安くて済むが、リスクが分散される分、リターンも小さくなるという特徴がある。
インデックス
インデックス(Index)は、市場の動きを把握するための重要な指標です。複数の銘柄を一定の基準で組み合わせることで、市場全体や特定分野の値動きを分かりやすく数値化しています。 代表的なものには、日本の株式市場を代表する日経平均株価やTOPIX、米国市場の代表格であるS&P500などがあります。これらのインデックスは、投資信託などの運用成果を評価する際の基準として広く活用されており、特にパッシブ運用(インデックス運用)では、この指標と同じような値動きを実現することを目標としています。
ファンドマネージャー
ファンドマネージャーは、投資ファンドの運用を担当する専門家です。彼らは投資家から集めた資金を管理し、株式、債券、不動産など様々な資産に投資してリターンを生み出す責任を持っています。ファンドマネージャーの主な役割は、市場の分析、投資戦略の立案、資産の選定と配置、リスク管理、そしてファンドの全体的なパフォーマンスの最適化です。 ファンドマネージャーは、経済情勢、業界動向、企業の財務健全性など幅広い知識が要求されるため、金融市場に関する深い理解と分析能力が必要です。彼らの投資判断は、ファンドの成績に直接的な影響を及ぼすため、投資家からの信頼を獲得することが非常に重要です。 また、ファンドマネージャーは投資家とのコミュニケーションも担当し、投資戦略の説明、成績報告、市場の見通しの提供などを行います。投資ファンドの成功は、ファンドマネージャーのスキルと経験に大きく依存しており、そのため彼らは投資業界において中心的な役割を果たしています。
信託報酬
信託報酬とは、投資信託やETFの運用・管理にかかる費用として投資家が間接的に負担する手数料であり、運用会社・販売会社・受託銀行の三者に配分されます。 通常は年率〇%と表示され、その割合を基準価額にあたるNAV(Net Asset Value)に日割りで乗じる形で毎日控除されるため、投資家が口座から現金で支払う場面はありません。 したがって運用成績がマイナスでも信託報酬は必ず差し引かれ、長期にわたる複利効果を目減りさせる“見えないコスト”として意識されます。 販売時に一度だけ負担する販売手数料や、法定監査報酬などと異なり、信託報酬は保有期間中ずっと発生するランニングコストです。 実際には運用会社が3〜6割、販売会社が3〜5割、受託銀行が1〜2割前後を受け取る設計が一般的で、アクティブ型ファンドでは1%超、インデックス型では0.1%台まで低下するケースもあります。 同じファンドタイプなら総経費率 TER(Total Expense Ratio)や実質コストを比較し、長期保有ほど差が拡大する点に留意して商品選択を行うことが重要です。
為替ヘッジ
為替ヘッジとは、為替取引をする際に、将来交換する為替レートをあらかじめ予約しておくことによって、為替変動のリスクを抑える仕組み。海外の株や債券に投資する際は、その株や債券の価値が下がるリスクだけでなく、為替の変動により円に換算した時の価値が下がるリスクも負うことになるので、後者のリスクを抑えるために為替ヘッジが行われる。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。
成長投資枠
新NISAにおける成長投資枠とは、個別株や投資信託などの成長性の高い投資商品を購入できる非課税枠のことです。2024年に始まった新NISA制度では、年間最大240万円、累計1,200万円まで投資が可能で、売却しても枠が復活しない「一生涯の上限額」が設定されています。 成長投資枠では、主に上場株式やETF、アクティブ型の投資信託などが対象となり、比較的リスクを取りながら資産を増やしたい投資家向けの仕組みになっています。一方で、レバレッジ型や一部の毎月分配型投資信託など、一部のリスクが高い商品は対象外となるため注意が必要です。 つみたて投資枠と併用でき、両方を活用すれば年間最大360万円の投資が可能です。成長投資枠を活用することで、中長期的な資産形成を非課税で行うことができ、売却益や配当金に税金がかからないため、資産を効率的に増やす手段となります。
ボラティリティ
ボラティリティは、投資商品の価格変動の幅を示す重要な指標であり、投資におけるリスクの大きさを測る目安として使われています。一般的に、値動きが大きい商品ほどそのリスクも高くなります。 具体的には、ボラティリティが大きい商品は価格変動が激しく、逆にボラティリティが小さい商品は価格変動が穏やかであることを示します。現代ポートフォリオ理論などでは、このボラティリティを標準偏差という統計的手法で数値化し、それを商品のリスク度合いとして評価するのが一般的です。このため、投資判断においては、ボラティリティの大きい商品は高リスク、小さい商品は低リスクと判断されます。
分散投資
分散投資とは、資産を安全に増やすための代表的な方法で、株式や債券、不動産、コモディティ(原油や金など)、さらには地域や業種など、複数の異なる投資先に資金を分けて投資する戦略です。 例えば、特定の国の株式市場が大きく下落した場合でも、債券や他の地域の資産が値上がりする可能性があれば、全体としての損失を軽減できます。このように、資金を一カ所に集中させるよりも値動きの影響が分散されるため、長期的にはより安定したリターンが期待できます。 ただし、あらゆるリスクが消えるわけではなく、世界全体の経済状況が悪化すれば同時に下落するケースもあるため、投資を行う際は目標や投資期間、リスク許容度を考慮したうえで、計画的に実行することが大切です。
高値掴み
高値掴みとは、価格が高いときに金融商品を購入してしまい、その後価格が下落することで損失を抱えることを指します。投資のタイミングを誤った場合に起きやすいリスクです。ドルコスト平均法を使えば、定期的に購入するためこのリスクを軽減できます。
運用コスト
運用コストとは、資産運用を行う際に発生する各種費用のことを指し、投資の収益に影響を与える重要な要素です。主な運用コストには、投資信託の信託報酬、売買手数料、管理費用、税金などがあります。 例えば、投資信託を利用する場合、運用会社に支払う信託報酬が発生し、これは資産の一定割合として毎年差し引かれます。また、株式やETFを売買する際には証券会社の取引手数料がかかるほか、為替取引を伴う投資ではスプレッド(売値と買値の差)もコストの一部になります。さらに、運用益に対する税金(例えば、日本の株式や投資信託の利益には約20%の税金がかかる)も考慮する必要があります。 運用コストを抑えることで、長期的な投資パフォーマンスを向上させることができるため、低コストの金融商品を選ぶことや、不要な売買を減らすことが重要です。コストを意識した資産運用を行うことで、資産を効率的に増やすことが可能になります。
オールカントリー(オルカン)
オールカントリー(通称オルカン)は、正式には「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」に連動する投資信託やETFを指します。これは世界中の株式市場に分散投資するインデックスファンドで、日本を含む先進国や新興国の約3000銘柄を対象としています。特定の国や地域に偏らず、世界経済全体の成長を取り込むことを目的としています。 オルカンの最大の特徴は、その分散性の高さです。個別株に投資すると特定の企業や業種の影響を大きく受けますが、オルカンなら世界中の企業に分散投資することでリスクを軽減できます。例えば、ある国の景気が悪化しても、他の地域の成長がカバーする可能性があります。また、特定の業種に依存することなく、テクノロジー、金融、ヘルスケアなど幅広い分野に投資できる点も魅力です。 初心者にとってオルカンは、シンプルかつ効率的な長期投資の手段となります。基本的に積立投資を行うことで、時間をかけてリスクを分散しながら資産を増やすことが期待できます。個別銘柄の選定や市場の動向を細かく分析する必要がないため、投資経験が少ない人でも気軽に始めやすいのが利点です。 ただし、オルカンも株式市場全体の影響を受けるため、短期的には価格が大きく変動することがあります。そのため、長期的な視点で運用し、価格の上下に一喜一憂せず、積立を続けることが大切です。オルカンは、世界経済の成長とともに資産を増やしていきたいと考える投資初心者に適した選択肢の一つと言えるでしょう。