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医療費はいくらかかる?公的医療保険制度と民間保険の補完性、備える方法を解説
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執筆者:
公開:
2026.03.12
更新:
2026.03.12
病気やケガによる医療費は、年齢を重ねるほど増加し、生涯を通じて大きな支出となります。日本には充実した公的医療保険制度がありますが、「公的保険だけで十分なのか」「民間の医療保険は必要なのか」「いくら備えればよいのか」という疑問を抱える方は少なくありません。備えが不足すれば、突然の入院や手術で家計が圧迫されるリスクがあります。この記事では、生涯医療費の実態から公的医療保険制度・高額療養費制度・医療費控除の仕組みと限界、民間保険の補完的役割、ライフステージ別の具体的な備え方まで、体系的に解説します。
生涯でかかる医療費はどの程度?
私たちは生まれてから亡くなるまで、どのくらいの医療費がかかるのでしょうか。厚生労働省の令和4年度データによると、生涯医療費の平均は約2,900万円にのぼります。
これは1人あたりの金額で、もちろんすべてを自己負担するわけではありません。しかし、公的医療保険の自己負担分だけでも数百万円規模になる可能性があり、計画的な備えが欠かせないといえるでしょう。
男性の生涯医療費
男性の生涯医療費は約2,800万円で、70歳未満が約1,500万円(54%)、70歳以上が約1,300万円(46%)を占めます。60代後半から医療費が急増し、70代後半にピークを迎える傾向があります。以下の表は、年齢階級別の医療費をまとめたものです。
| 区分 | 累積医療費(万円) | 構成割合 |
|---|---|---|
| 生涯医療費(総計) | 2,766 | 100% |
| 70歳未満(累積) | 1,515 | 55% |
| 70歳以上(累積) | 1,251 | 45% |
女性の生涯医療費
女性の生涯医療費は約3,000万円で、男性よりも約200万円多くなっています。内訳は70歳未満が約1,500万円(49%)、70歳以上が約1,500万円(51%)です。女性は平均寿命が長いため、高齢期の医療費がやや多い傾向にあります。また、妊娠・出産など女性特有のライフイベントも医療費に影響を与えます。
| 区分 | 累積医療費(万円) | 構成割合 |
|---|---|---|
| 生涯医療費(総計) | 2,986 | 100% |
| 70歳未満(累積) | 1,510 | 51% |
| 70歳以上(累積) | 1,477 | 49% |
とくに注目すべきは、医療費の約半分が70歳以降に集中している点です。高齢期には病気やケガのリスクが高まるため、医療機関を利用する機会が増えていきます。若いうちから医療費の全体像を把握しておくことで、老後資金の準備や保険選びにも役立てられます。
公的医療保険制度の基本
日本では国民皆保険制度により、すべての人が何らかの公的医療保険に加入しています。この制度があるおかげで、医療機関を受診した際の窓口負担は医療費全体の1割から3割程度で済みます。もし公的保険がなければ、先ほど見た生涯医療費約2,900万円を全額自己負担しなければなりません。
公的医療保険には、会社員が加入する健康保険や自営業者が加入する国民健康保険などがあります。まずは公的保険の基本的な仕組みを理解し、どこまでカバーされるのかを把握しておきましょう。
公的医療保険の仕組み
公的医療保険は、加入者(被保険者)が保険料を出し合い、病気やケガをした人の医療費を支える相互扶助の制度です。私たちが医療機関で保険証を提示すると、窓口では自己負担分のみを支払い、残りは保険者(健康保険組合や市区町村など)が医療機関に支払います。
日本の公的医療保険は、職業や年齢によって加入する制度が異なります。主な制度は以下の3つです。
| 制度名 | 対象者 | 保険者(運営主体) | 保険料の負担 |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 会社員とその扶養家族 | 健康保険組合、全国健康保険協会(協会けんぽ) | 事業主と被保険者が折半 |
| 共済組合 | 公務員・私立学校教職員とその扶養家族 | 各共済組合 | 事業主(官公庁等)と被保険者が折半 |
| 国民健康保険 | 自営業者、無職の方、退職者など(上記以外) | 市区町村、国民健康保険組合 | 被保険者が全額負担(世帯単位) |
| 後期高齢者医療制度 | 75歳以上の方(一定の障害がある場合は65歳以上) | 後期高齢者医療広域連合 | 被保険者が負担(一部公費) |
会社員や公務員は勤務先を通じて健康保険や共済組合に加入し、自営業者や無職の方は国民健康保険に加入するのが一般的です。75歳以上になると、これまで加入していた保険から後期高齢者医療制度に移行します。どの制度でも、保険診療として認められた医療行為であれば、全国どこの医療機関でも同じ基準で給付を受けられる点が特徴です。
自己負担割合と給付内容
医療機関の窓口で支払う自己負担割合は、年齢と所得によって決まります。義務教育就学前の子どもは2割負担、就学後から69歳までは3割負担が原則です。70歳以上になると2割負担に軽減されますが、現役並みの所得がある方は3割負担となります。
| 年齢 | 自己負担割合 |
|---|---|
| 義務教育就学前 | 2割 |
| 就学後~69歳 | 3割 |
| 70~74歳 | 2割(現役並み所得者は3割) |
| 75歳以上 | 1割(一定所得以上は2割、現役並み所得者は3割) |
公的保険で受けられる給付には、診察・検査・投薬・手術・入院などが含まれます。ただし、保険診療として認められた範囲内に限られるため、すべての医療行為が対象になるわけではありません。
公的保険でカバーできない費用
公的医療保険には給付の対象外となる費用がいくつか存在します。代表的なものが差額ベッド代です。個室や少人数部屋を希望した場合、1日あたり数千円から数万円の追加料金が発生しますが、これは全額自己負担になります。
先進医療も公的保険の適用外です。がん治療で用いられる重粒子線治療などは、技術料が300万円程度かかるケースもあります。
また、保険診療と保険外診療を組み合わせる混合診療は原則として認められておらず、保険外の治療を受けると保険診療部分も含めて全額自己負担になる場合があります。ただし、先進医療など一定のルールの下で「保険外併用療養費制度」として併用が認められるケースもあります。
そのほか、健康診断や予防接種(定期接種を除く)、美容整形、正常分娩の費用なども公的保険の対象外です。こうした費用に備えるために、民間の医療保険やがん保険を検討する方も少なくありません。
高額療養費制度とは
医療費が高額になっても、日本には自己負担を一定額までに抑える仕組みがあります。それが高額療養費制度です。1か月間に支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合、超過分が払い戻される制度で、公的医療保険に加入していれば誰でも利用できます。
たとえば、医療費総額が100万円かかった場合でも、3割負担で30万円を窓口で支払ったあと、所得区分に応じた限度額を超えた分が戻ってきます。
高額療養費制度の概要
高額療養費制度は、同じ月内(1日から末日まで)に同じ医療機関で支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合に適用されます。
払い戻しを受けるには、加入している健康保険組合や市区町村の窓口に申請が必要です。申請から支給まで少なくとも通常3か月程度かかるため、一時的に高額な費用を立て替える必要があります。
事前に高額な医療費がかかるとわかっている場合は、限度額適用認定証の交付を受けておくと便利です。この認定証を医療機関の窓口で提示すれば、最初から自己負担限度額までの支払いで済みます。
入院や手術が予定されている方は、加入している保険者に早めに申請しておきましょう。限度額適用認定証の入手方法については、こちらのQ&Aを参考にしてみてください。
自己負担限度額の計算方法
自己負担限度額は、年齢と所得によって5つの区分に分かれています。69歳以下の一般的な所得区分(年収約370万~770万円)では、月額の自己負担限度額は「80,100円+(医療費総額-267,000円)×1%」で計算されます。
たとえば、医療費総額が100万円で3割負担の場合、窓口では30万円を支払いますが、自己負担限度額は87,430円となり、差額の約21万円が払い戻されます。所得が高い区分ほど限度額も高くなり、住民税非課税世帯では35,400円と低く設定されています。
| 所得区分 | 自己負担限度額(69歳以下) |
|---|---|
| 年収約1,160万円以上 | 252,600円+(医療費総額-842,000円)×1% |
| 年収約770万~1,160万円 | 167,400円+(医療費総額-558,000円)×1% |
| 年収約370万~770万円 | 80,100円+(医療費総額-267,000円)×1% |
| ~年収約370万円 | 57,600円 |
| 住民税非課税 | 35,400円 |
より詳しい計算例や限度額については、詳細な手続きはこちらの記事で解説しています。医療費負担の発生に備えるためにも、詳細な内容を押さえておきましょう。
医療費控除の活用
医療費の負担を軽減する方法として、医療費控除の活用も検討しましょう。これは1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告をすることで所得税や住民税が減額される制度です。高額療養費制度とは別の仕組みで、払い戻しではなく税金の軽減という形で還付されます。
会社員の方は年末調整で税金の手続きが完了しますが、医療費控除を受けるには自分で確定申告をする必要があります。
医療費控除の基本
医療費控除は、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費の合計額が10万円(または総所得金額等の5%のいずれか低い方)を超えた場合に適用されます。
控除できる金額の上限は200万円です。たとえば、年間の医療費が30万円だった場合、「30万円-10万円=20万円」が所得から控除されます。
実際に戻ってくる税金の額は、所得税率によって変わります。所得税率が20%の方なら、20万円×20%=4万円の所得税が減額され、さらに翌年度の住民税も約2万円軽減されるイメージです。所得が高いほど節税効果も大きくなります。
また、セルフメディケーション税制という選択肢もあります。これは特定の市販薬(スイッチOTC医薬品)の購入額が年間12,000円を超えた場合に適用される制度で、上限は88,000円です。通常の医療費控除とは併用できないため、どちらか有利な方を選んで申告しましょう。
医療費控除と高額療養費、セルフメディケーション税制の違いに関しては、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
控除対象になる医療費
医療費控除の対象となるのは、治療や療養のために支払った費用です。具体的には、病院や歯科医院での診療費、処方された薬代、入院時の食事代などが該当します。
見落とされがちなのが、通院のための交通費です。電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合の運賃は控除対象になります。タクシー代は、病状により公共交通機関の利用が困難な場合のみ対象となります。
一方で、美容目的の歯科矯正や予防接種、健康診断(異常が見つからなかった場合)、入院時の差額ベッド代などは対象外です。医療費控除を受けるには領収書やレシートの保管が必須なので、1年間しっかり保存しておきましょう。医療費の明細は、健康保険組合から送られる「医療費のお知らせ」を利用すると便利です。
詳しい申告方法や具体的な計算例については、こちらの記事で解説しています。合わせて参考にしてみてください。
民間の医療保険の役割
公的医療保険があれば安心と考える方もいますが、実際には公的制度だけではカバーしきれない費用が存在します。差額ベッド代や先進医療の技術料、入院中の収入減少など、医療に関連する経済的リスクは多岐にわたります。こうした公的保険の対象外となる部分を補うのが、民間の医療保険です。
民間医療保険とは
民間医療保険は、病気やケガで入院・手術をした際に給付金を受け取れる保険商品です。生命保険会社や損害保険会社が販売しており、保険料を支払うことで万が一の医療費負担に備えられます。入院1日あたり5,000円や10,000円といった定額給付が基本で、手術の種類に応じて給付金額が変わる仕組みが一般的です。
保険のタイプは大きく分けて、掛け捨て型と貯蓄型があります。掛け捨て型は保険料が比較的安く、解約時の返戻金はありませんが、保障に特化したシンプルな設計が特徴です。貯蓄型は保険料が高めですが、満期時や解約時に返戻金を受け取れるため、貯蓄機能も兼ね備えています。
また、保障期間によって定期型と終身型に分類されます。定期型は一定期間のみ保障され更新時に保険料が上がりますが、若いうちの保険料負担を抑えられます。終身型は一生涯保障が続き、保険料も加入時から変わらない点がメリットです。
なお、民間の医療保険の特徴はこちらの記事で詳しく解説しています。
公的制度との補完関係
公的医療保険と民間保険は対立するものではなく、互いを補い合う関係にあります。公的保険は高額療養費制度により医療費の上限を設けてくれますが、限度額までの自己負担分や差額ベッド代などは自分で用意しなければなりません。ここを民間保険の給付金でカバーするイメージです。
さらに、会社員であれば傷病手当金という公的保障があり、病気やケガで働けなくなった場合に給与の約3分の2が最長1年6か月支給されます。しかし、自営業者にはこの制度がありません。民間の医療保険や就業不能保険で収入減少リスクに備える必要性が高くなります。
重要なのは、公的制度で何がどこまで守られているかを正確に把握したうえで、足りない部分を民間保険で補うという考え方です。公的保障を知らずに過剰な保険に加入してしまうと、保険料負担が家計を圧迫する原因にもなります。
保険選びの基本ポイント
民間医療保険を選ぶ際には、保障内容・保険料・保障期間の3つを軸に検討しましょう。
まず保障内容では、入院給付金の日額や支払日数、手術給付金の範囲を確認します。最近は通院治療が増えているため、通院保障や先進医療特約の必要性も考慮が必要です。
保険料については、月々の家計負担と長期的な支払総額のバランスを見極めます。一般的に、年齢が若いほど保険料は安く設定されていますが、終身型の場合は加入時の保険料が一生続くため、慎重に判断しましょう。
保障期間は、子どもが独立するまでの定期型で十分なのか、老後まで保障が必要なのかをライフプランに照らして決めます。
すべての人に民間保険が必要というわけではありません。貯蓄が十分にある方や、家族の扶養義務が少ない方にとっては優先度が低い場合もあります。
一方で、自営業者や貯蓄形成の途中にある子育て世代など、病気やケガによる収入減少のリスクが大きい方には、民間保険が有効な選択肢となるでしょう。自分のライフステージや家計状況を踏まえて、必要性を検討することが大切です。
【医療費以外にも】働けなくなったときの公的保障
ここまで医療費が発生したときの公的制度や民間保険について解説してきましたが、病気やケガで働けなくなった場合の収入減少リスクも見逃せません。日本には医療費負担を軽減する制度だけでなく、所得を補償する公的保障も整備されています。
万が一のときに利用できる制度を知っておくことで、過度な保険加入を避けられる可能性もあります。ここでは代表的な2つの公的保障について、概要を紹介します。
傷病手当金
傷病手当金は、会社員や公務員が病気やケガで働けなくなった場合に支給される制度です。業務外の理由で連続3日以上休業し、給与が支払われない期間について、標準報酬日額の3分の2相当額が最長1年6か月支給されます。
たとえば、月給30万円の方が病気で1か月休んだ場合、約20万円の傷病手当金を受け取れます。ただし、自営業者やフリーランスが加入する国民健康保険には傷病手当金の制度がありません。自営業の方は、収入減少リスクに対して民間の就業不能保険などで備える必要があります。
詳しい支給条件や申請方法については、こちらの記事で解説しています。あわせて参考にしてみてください。
障害年金
障害年金は、病気やケガによって日常生活や仕事に支障が出る状態になった場合に支給される年金制度です。障害の程度により1級から3級に区分され、国民年金加入者は障害基礎年金、厚生年金加入者は障害基礎年金に加えて障害厚生年金を受け取れます。
支給額は障害等級や加入期間、家族構成によって異なりますが、障害基礎年金1級の場合は年額約100万円、2級は約80万円が基本額です。会社員の方はこれに障害厚生年金が上乗せされるため、さらに手厚い保障となります。
障害年金は高齢者だけでなく、現役世代でも受給できる制度です。がんや心疾患、精神疾患なども対象となるため、該当する可能性がある方は早めに年金事務所や市区町村の窓口に相談しましょう。
障害年金の詳細な受給要件や申請の流れについては、こちらの記事もご確認ください。
ライフステージ別の備え方
医療費への備え方は、年齢や家族構成によって大きく変わります。独身時代と子育て中、そして定年を迎える前後では、抱えるリスクも優先すべき対策も異なるためです。自分の現在のライフステージを見極め、それぞれの状況に応じた備えを考えることが重要になります。
子育て世代の備え方
30代から40代の子育て世代は、一般的に教育費の負担が重くなる時期です。住宅ローンを抱えている家庭も多く、医療費に回せる余裕が限られるケースも少なくありません。そのため、公的制度を最大限活用しながら、貯蓄と保険のバランスを工夫する必要があります。
まず知っておきたいのが、子ども医療費助成制度です。多くの自治体では中学生や高校生まで医療費の自己負担分を助成しており、子どもの医療費はほとんどかからない場合もあります。一方、親が病気で働けなくなった際の収入減少リスクには注意が必要です。
貯蓄がまだ十分でない時期であれば、掛け捨て型の医療保険や収入保障保険で万が一に備えるのも選択肢です。ただし、保険料が家計を圧迫しては本末転倒なので、必要最低限の保障内容に絞り込みましょう。
ライフイベントの変化や子どもが成長するにつれて保険の見直しを行い、ライフステージの変化に合わせて調整していくことが大切です。詳しくは、こちらの記事も参考にしてみてください。
定年前後世代の備え方
50代後半から60代にかけては、医療費が本格的に増加し始める時期です。生活習慣病のリスクが高まり、定期的な通院や投薬が必要になる方も増えてきます。同時に、退職後は収入が年金中心となるため、現役時代とは異なる視点での備えが求められます。
まず確認しておきたいのが、定年退職後の健康保険です。退職後は国民健康保険への加入や任意継続、家族の扶養に入るなどの選択肢があり、それぞれ保険料が異なります。退職金や貯蓄の状況を踏まえ、医療費の自己負担分を賄える資金を確保しておきましょう。
また、75歳以上になると後期高齢者医療制度に移行し、自己負担割合が原則1割になります。ただし、介護が必要になった場合の介護費用も視野に入れる必要があります。民間の医療保険は、既往症があると新規加入が難しくなるため、健康なうちに必要性を検討しておくことが重要です。
医療保障に対する私的準備手段
医療費に備える方法は、民間の医療保険だけではありません。生命保険文化センターの調査によると、約7割の人が生命保険を活用していますが、それ以外にも預貯金や共済、個人年金保険など、さまざまな手段で備えている実態が明らかになっています。
| 準備手段 | 割合 |
|---|---|
| 生命保険 | 70.2% |
| 預貯金 | 44.5% |
| 損害保険 | 19.1% |
| 有価証券 | 10.0% |
| その他 | 0.3% |
出典:公益財団法人生命保険文化センター「医療費に備え、どんな経済的準備をしている?」
預貯金は最も柔軟性の高い備えです。医療費だけでなく、あらゆる用途に使えるため、一定額の貯蓄があれば保険に頼らず対応できる場合もあります。
一方、都道府県民共済やコープ共済などの共済制度は、掛金が手頃で加入しやすい点が魅力です。保障内容は民間保険に比べてシンプルですが、基本的な入院・手術の保障は確保できます。
また、個人年金保険や終身保険といった貯蓄性のある保険商品も、解約返戻金を医療費に充てられるため、間接的な備えとして機能します。投資信託やNISAなどの資産運用で医療費を含めた将来資金を準備する方法も、選択肢の一つです。
どのような手段で備えるかは、年齢や収入、家族構成、リスク許容度など、個人の状況によって異なります。複数の方法を組み合わせながら、自分に合った備え方を見つけていくことが大切です。
この記事のまとめ
この記事では、生涯医療費の実態、公的医療保険制度・高額療養費制度・医療費控除の仕組み、民間保険が果たす補完的役割、そしてライフステージ別の具体的な備え方をお伝えしました。医療費への備えは、公的制度を正しく理解したうえで、民間保険や貯蓄などを組み合わせることが重要です。
まずは自分の年齢や家族構成、収入状況を踏まえて、公的制度でカバーされる範囲を確認しましょう。そのうえで、不足する部分を民間保険や貯蓄でどう補うかを検討してください。判断に迷う場合は、ファイナンシャルプランナーなど専門家への相談も有効です。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
公的医療保険制度
公的医療保険制度とは、すべての国民が安心して医療を受けられるように、国が法律で定めた仕組みに基づいて提供される医療保険の制度です。日本では「国民皆保険(こくみんかいほけん)」と呼ばれ、国民全員がいずれかの医療保険に加入することが義務付けられています。 主な保険には、会社員などが加入する「健康保険」、自営業者や無職の人などが加入する「国民健康保険」、75歳以上の高齢者向けの「後期高齢者医療制度」などがあります。この制度により、医療費の一部(たとえば3割)を自己負担するだけで、必要な医療サービスを受けることができます。公的医療保険制度は、社会全体で医療費を支え合う「相互扶助」の仕組みであり、生活の安心を支える基本的な社会保障のひとつです。
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健康保険
健康保険とは、病気やけが、出産などにかかった医療費の自己負担を軽減するための公的な保険制度です。日本では「国民皆保険制度」が採用されており、すべての人が何らかの健康保険に加入する仕組みになっています。 会社員や公務員などは、勤務先を通じて「被用者保険」に加入し、自営業者や無職の人は市区町村が運営する「国民健康保険」に加入します。保険料は収入などに応じて決まり、原則として医療費の自己負担は3割で済みます。また、扶養されている家族(被扶養者)も一定の条件を満たせば保険の対象となり、個別に保険料を支払わなくても医療サービスを受けられる仕組みになっています。健康保険は日常生活の安心を支える基本的な社会保障制度のひとつです。
国民健康保険
国民健康保険とは、自営業者やフリーランス、退職して会社の健康保険を脱退した人、年金生活者などが加入する公的医療保険制度です。日本ではすべての国民が何らかの健康保険に加入する「国民皆保険制度」が採用されており、会社員や公務員が加入する「被用者保険」に対して、それ以外の人が加入するのがこの国民健康保険です。 市区町村が運営主体となっており、加入・脱退の手続きや保険料の納付、医療費の給付などは、住民票のある自治体で行います。保険料は前年の所得や世帯の構成に応じて決まり、原則として医療機関では医療費の3割を自己負担すれば診療を受けられます。病気やけが、出産などの際に医療費の支援を受けるための基本的な仕組みであり、フリーランスや非正規労働者にとっては重要な生活保障となる制度です。
共済組合
共済組合とは、同じ職業や地域、団体に所属する人たちが組合員となり、毎月の掛金を出し合って病気・けが・死亡・退職などのリスクに備える相互扶助の仕組みです。組合は営利を目的とせず、集めた掛金から給付や保険金を支払い、余剰が出れば割戻金として組合員に還元します。 公務員や教職員、自治体職員などを対象にした組合が多く、団体ならではの大口契約効果で掛金が抑えられる点が特徴です。また、組合員向けの融資や福利厚生サービスを行うこともあり、保障に加えて生活支援機能を備える場合があります。
健康保険組合
健康保険組合とは、主に大企業や業界団体が、従業員やその家族の医療費をまかなうために設立・運営している独自の健康保険の運営団体です。一般的な会社員は全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入しますが、一定の条件を満たす企業は、自社や業界内で健康保険組合を設立することができます。 健康保険組合は、保険料の率を独自に決めたり、付加給付と呼ばれる独自の医療費補助や保健事業(健康診断、予防接種補助など)を行ったりすることで、加入者にとってより手厚い保障が受けられる場合があります。運営費は主に事業主と従業員が支払う保険料でまかなわれ、加入者の健康維持や医療費の適正化を目的としています。加入者にとっては、より柔軟で充実した医療支援を受けられる仕組みとなっています。







