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財産放棄とは?

財産放棄とは?相続放棄との違いや手続きの仕方・書類の注意点を徹底解説

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執筆者:

公開:

2025.09.26

更新:

2025.09.29

相続

遺産を引き継がない方法には「財産放棄」と「相続放棄」がありますが、名称は似ていても制度の仕組みと結果は大きく異なります。特に注意したいのは、財産放棄では相続人の地位が残り借金を免れないのに対し、相続放棄は家庭裁判所への申述により原則3ヶ月以内に行う必要がある点です。

本記事では、この2つの制度の違いを4つの観点から整理し、ケース別の判断軸や遺産分割協議の流れ、協議書作成の実例まで解説します。さらに、限定承認や相続分の譲渡といった関連制度も含めて位置付けを示し、読者が自分の状況に適した判断を下せるよう道筋を提示します。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読むと、「財産放棄」と「相続放棄」の違いが4つの視点から整理され、借金を避けたいのか特定財産だけ外したいのかといった判断基準が明確になります。相続放棄の期限が「相続開始を知ってから3ヶ月」である点や、遺産分割協議で相続分をゼロにする方法と協議書の文例、贈与税や単純承認などの落とし穴も理解できます。

さらに、必要書類や名義変更の流れ、他の相続人の税務への影響、限定承認や相続分の譲渡・遺留分放棄の位置付けまで押さえることで、自分のケースに応じた最適な選択を判断できるようになります。

目次

そもそも財産放棄とは?相続放棄との決定的な違いを4つのポイントで解説

一般的な「財産放棄」は相続人間の合意であり、法律上の「相続放棄」とは異なる

財産放棄と相続放棄の違いが一目でわかる4つのポイント

よくある誤解:「一部だけ財産放棄」は可能?

ケース別の財産放棄と相続放棄の判断フロー

借金・連帯保証債務を相続したくないなら「相続放棄」一択

特定の相続人(兄弟など)に遺産を譲りたいなら「財産放棄」が有効

不動産や土地など管理が大変な財産だけを避けたい場合

注意:相続人全員が財産放棄・相続放棄をしたい場合の手続き

財産放棄の手続きと進め方:遺産分割協議で「相続分ゼロ」にする全手順

STEP1:相続人と相続財産をすべて調査・確定する

STEP2:相続人全員で遺産分割協議を行い合意を得る

STEP3:遺産分割協議書を作成し全員で署名・押印する

STEP4:作成した協議書に基づき不動産や預金の名義変更を行う

遺産分割協議書の書き方|財産放棄を明記する文例とチェックポイント

財産放棄(相続分ゼロ)を記載する際の書き方3パターン

注意点:協議書作成で失敗しないための3つのチェックポイント

それでも迷う方へ|財産放棄とあわせて知るべき関連制度

相続放棄:家庭裁判所で手続きする最も確実な債務回避方法

限定承認:プラスの財産の範囲内で債務を引き継ぐ方法

相続分の譲渡:自分の相続する権利を他の相続人に譲る方法

遺留分放棄:生前に相続の権利を放棄する全く別の手続き

そもそも財産放棄とは?相続放棄との決定的な違いを4つのポイントで解説

遺産を相続しない方法として「財産放棄」と「相続放棄」がありますが、これらは全く異なる手続きです。特に、借金などの債務を引き継ぐかどうかに決定的な違いがあります。この章では、両者の違いを「相続人の地位」「債務の扱い」「手続き」「期限」の4つの重要なポイントに絞って、誰にでも分かるように解説します。

一般的な「財産放棄」は相続人間の合意であり、法律上の「相続放棄」とは異なる

遺産を相続しないという相続人間の合意を、一般的に「財産放棄」と呼びます。これは当事者間の話し合いで相続分を放棄する方法であり、家庭裁判所で行う法律上の「相続放棄」とは明確に区別されます。財産放棄では相続人としての地位は残るため、プラスの財産を受け取らない代わりに、借金などのマイナスの財産の支払義務からは免れられない点に注意が必要です。

財産放棄と相続放棄の違いが一目でわかる4つのポイント

財産放棄と相続放棄には、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、両者を比較するうえで最も重要な「相続人の地位」「債務の扱い」「手続きの方法」「期限の有無」という4つの観点から、それぞれの特徴を明確に解説します。この違いを理解することが、ご自身の状況に合った適切な選択をするための第一歩となります。

相続放棄について詳しくは以下記事で解説しています。

ポイント1. 相続人の地位:残るか、消滅するか

財産放棄では、遺産を受け取らなくても相続人としての地位は残ります。一方、家庭裁判所で行う相続放棄は、初めから相続人ではなかったとみなされる手続きです。そのため、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継ぐことはありません。

ポイント2. 債務(借金)の扱い:引き継ぐか、免れるか

両者の最も大きな違いは、債務の扱いです。財産放棄をしても債務の支払義務は免れられず、債権者から返済を求められた場合は拒否できません。プラスの財産は相続しないのに、借金だけが残る可能性があるため注意が必要です。

ポイント3. 手続きの方法:当事者間の合意か、家庭裁判所への申述か

財産放棄は、相続人全員の合意によって成立します。そのため、話し合いが難しい場合は利用できません。一方、相続放棄は家庭裁判所に対して行う単独の手続きであり、他の相続人の同意や協力は不要です。

ポイント4. 期限の有無:あるか、ないか

財産放棄には、法律上の明確な期限はありません。

一方、相続放棄は原則として「相続の開始を知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があります。この期間を過ぎると相続を承認したとみなされ、原則として相続放棄はできなくなります。

相続放棄の3ヶ月ルールについては以下Q&Aでも説明しています。

よくある誤解:「一部だけ財産放棄」は可能?

相続放棄はすべての財産を放棄する手続きですが、財産放棄では柔軟な対応が可能です。例えば、遺産分割協議の中で「特定の不動産は放棄するが、預貯金は相続する」といったように、一部の財産だけを放棄する合意もできます。これは財産放棄の大きな利点です。

ケース別の財産放棄と相続放棄の判断フロー

遺産を受け取らないと決めたとき、選択肢は主に「財産放棄」と「相続放棄」の2つです。しかし、どちらが最適かは個々の状況によって大きく異なります。ここでは「借金を避けたい」「特定の家族に遺産を譲りたい」といった具体的なケース別に、どちらの手続きを選ぶべきかの判断基準を分かりやすく解説します。

借金・連帯保証債務を相続したくないなら「相続放棄」一択

亡くなった方に借金や連帯保証債務がある場合、その支払義務を免れるためには「相続放棄」の手続きが必須です。財産放棄では債務を放棄できないため、プラスの財産は受け取らないのに借金の返済だけを求められる事態になりかねません。負債の存在が明らかな場合や、資産を上回る可能性がある場合は、迷わず相続放棄を選択しましょう。

一方で、借金などの負債が一切ないと断定できるなら、相続人同士の合意である「財産放棄」で問題ありません。ただし、後から想定外の債務が見つかるリスクも考慮すべきです。財産の全体像が不明な場合や少しでも不安がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。

特定の相続人(兄弟など)に遺産を譲りたいなら「財産放棄」が有効

「全財産を配偶者に相続させたい」「事業を継ぐ長男に遺産を集中させたい」など、特定の相続人に遺産を譲りたい場合は「財産放棄」が適しています。遺産分割協議で自分の取り分をゼロにすることで、他の相続人の取得分を増やすことができます。相続放棄では遺産の行き先を指定できないため、この点が大きな違いです。

また、生前に多額の贈与を受けている方が、他の相続人との公平性を保つために自ら財産放棄を選択するケースもあります。

不動産や土地など管理が大変な財産だけを避けたい場合

遺産の中に、維持管理が難しい不動産や遠方の土地などが含まれる場合、その特定の財産だけを相続しない選択も可能です。財産放棄は相続放棄と異なり、遺産の一部のみを放棄することができます。遺産分割協議で他の相続人の合意を得ることで、「不動産は放棄するが預貯金は相続する」といった柔軟な分割が実現します。

注意:相続人全員が財産放棄・相続放棄をしたい場合の手続き

相続人全員が遺産を相続したくないケースでは、慎重な判断が求められます。全員が家庭裁判所で「相続放棄」をすると、相続権は次順位の親族(例:兄弟姉妹など)に移ります。一方、全員が話し合いで「財産放棄」に合意しただけでは相続人としての地位は残るため、不動産の管理責任や税金の支払義務などが消えません。このような場合は、相続財産管理人の選任といった特別な手続きが必要になるため、専門家への相談が不可欠です。

財産放棄の手続きと進め方:遺産分割協議で「相続分ゼロ」にする全手順

財産放棄は、家庭裁判所での手続きを必要とせず、相続人同士の話し合いで進めることができます。具体的には、遺産分割協議の中で遺産を相続しない意思を伝え、その内容を遺産分割協議書に明記します。ここでは、財産調査から名義変更までの全手順を4つのステップに分け、必要な書類とあわせて具体的に解説します。

STEP1:相続人と相続財産をすべて調査・確定する

手続きの第一歩は、相続の全体像を正確に把握することです。戸籍謄本などを集めて法定相続人を確定させると同時に、預貯金や不動産といったプラスの財産、借入金などのマイナスの財産をすべてリストアップします。特に債務の有無は、財産放棄か相続放棄かを判断する重要なポイントになります。

STEP2:相続人全員で遺産分割協議を行い合意を得る

財産と相続人が確定したら、相続人全員で遺産の分割方法について協議します。この場で、他の相続人に対し「自分は遺産を相続しない」という意思を明確に伝え、全員の合意を得ることが必要です。口頭での意思表示だけでは法的な証明が難しいため、必ず次のステップである書面作成に進むことが重要です。

STEP3:遺産分割協議書を作成し全員で署名・押印する

相続人全員の合意が得られたら、その内容を証明するために「遺産分割協議書」を作成します。この書類には、誰がどの財産を相続するのか、そして誰が財産を相続しないのかを明記します。後々のトラブルを防ぐため、協議内容は必ず書面に残し、相続人全員で署名と実印の押印を行います。

遺産分割協議書については以下Q&Aでも説明しています。

財産放棄に必要な書類は「遺産分割協議書」と印鑑証明書など

財産放棄のための特別な申請書はありません。相続人全員の合意内容を記した「遺産分割協議書」が、財産放棄を証明する正式な書類となります。この協議書には、財産を放棄する人を含む相続人全員が署名し、実印を押印します。押印した実印が本人のものであることを証明するため、全員分の印鑑証明書も添付するのが一般的です。その他、通常の相続手続きで必要となる戸籍謄本なども準備します。

財産放棄する人がいても他の相続人の相続税に影響は?

遺産を放棄した本人に相続税は課税されません。しかし、その人が受け取るはずだった財産は他の相続人が取得するため、他の相続人の納税額が増える可能性があります。なお、相続税の基礎控除額(非課税枠)を計算する際は、財産放棄をした人も法定相続人の人数に含めて計算します。

STEP4:作成した協議書に基づき不動産や預金の名義変更を行う

遺産分割協議書が完成したら、最終ステップとして財産の名義変更手続きを行います。不動産であれば法務局で相続登記を、預貯金であれば金融機関で解約や名義変更の手続きを進めます。これらの手続きの際に、完成した遺産分割協議書と印鑑証明書、戸籍謄本などが必要となります。

遺産分割協議書の書き方|財産放棄を明記する文例とチェックポイント

財産放棄の合意を法的に有効なものにするには、遺産分割協議書の作成が不可欠です。この書類に「誰がどの財産を相続するか」を明確に記載することで、財産放棄の事実を証明します。ここでは、実際の協議書で使える具体的な文例を3つのパターンで紹介するとともに、作成時に失敗しないための重要なチェックポイントを解説します。

財産放棄(相続分ゼロ)を記載する際の書き方3パターン

遺産分割協議書に財産放棄の旨を記載する方法は、状況によって異なります。誰が何を相続するかを明記すれば、必ずしも「放棄する」と書く必要はありません。ここでは、相続財産の内容や分割方法に応じた代表的な3つのケースについて、具体的な文例を紹介します。ご自身の状況に近いものを参考にしてください。

文例1:特定の相続人がすべての遺産を相続する場合

「相続人A(長男)は本件遺産の一切を相続しないものとし、相続人B(妻)が本件遺産の全部を相続する。」

文例2:特定の財産(不動産など)のみを放棄する場合

「相続人Xは、下記不動産についてその相続分を放棄し、これを相続人Yが取得する。Xは当該不動産以外の遺産については法定相続分どおり相続する。」

文例3:後から見つかった財産や債務の扱いを定める場合

「本協議書に記載なき一切の遺産(後日判明した財産を含む)および債務については、相続人B(妻)がこれを承継する。」

注意点:協議書作成で失敗しないための3つのチェックポイント

遺産分割協議書は、一度作成すると原則としてやり直しができない重要な書類です。後々のトラブルを未然に防ぐため、内容を慎重に検討する必要があります。ここでは、協議書を作成する際に特に注意すべき「ひな形のリスク」「税務上の問題」「他の相続人への影響」という3つのポイントについて解説します。

ひな形をそのまま使うのは危険!事案に合わせ必ず内容を確認

遺産分割協議書には厳格な書式の決まりはありませんが、インターネット上のひな形をそのまま使用するのは危険です。各家庭の状況に合わせて、誰が何を相続するのか、誰が相続しないのかを具体的かつ明確に記載する必要があります。口頭の約束はトラブルの原因となるため、合意内容は必ず書面に残し、曖昧な表現は避けるようにしましょう。

贈与税の対象に?極端に偏った財産配分のリスク

特定の相続人に財産を集中させるなど、法定相続分と大きく異なる内容の遺産分割を行うと、贈与税の課税対象となる可能性があります。ただし、相続人全員の合意に基づく遺産分割協議によるものであれば、原則として贈与税は課税されません。とはいえ、判断が難しいケースもあるため、不安な場合は税理士などの専門家に事前に相談することをお勧めします。

自分の放棄が他の相続人や次順-順位の相続人に与える影響

自分が財産放棄をすると、その分の遺産は他の相続人の取得分となります。一方、家庭裁判所で相続放棄をした場合は、その人は初めから相続人ではなかったことになるため、相続権が次順位の親族(例:亡くなった人の親や兄弟姉妹)へ移ることがあります。誰に影響が及ぶのか、その違いを理解した上で判断することが大切です。

それでも迷う方へ|財産放棄とあわせて知るべき関連制度

財産放棄や相続放棄の他にも、遺産への関わり方を調整する制度はいくつか存在します。どちらを選ぶべきかまだ迷っている方のために、ここでは「限定承認」や「相続分の譲渡」など、状況によってはより良い選択肢となり得る関連制度を解説します。それぞれの特徴を理解し、ご自身のケースに最適な方法を見つけましょう。

相続放棄:家庭裁判所で手続きする最も確実な債務回避方法

これまでの章でも触れた通り、相続放棄は家庭裁判所で行う法的な手続きです。借金などの債務を確実に免れたい場合に最も有効な手段です。原則として相続開始を知ってから3ヶ月以内に申述する必要があり、受理されるとプラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がず、初めから相続人ではなかったことになります。

限定承認:プラスの財産の範囲内で債務を引き継ぐ方法

限定承認は、相続したプラスの財産の価値を上限として、借金などのマイナスの財産を引き継ぐ制度です。財産と負債のどちらが多いか不明な場合に有効で、最悪でも資産を上回る借金を背負うリスクを避けられます。この手続きも相続放棄と同様、原則3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があり、相続人全員で行わなければなりません。

相続の限定承認については以下記事で詳しく解説しています。

相続分の譲渡:自分の相続する権利を他の相続人に譲る方法

自分の相続分(遺産を受け取る権利)を、他の相続人や第三者に譲渡する方法です。相続分の譲渡を行うと、遺産分割協議に参加する必要がなくなり、相続手続きから離脱できる点が特徴です。ただし、財産放棄と同様に相続人としての地位は残るため、債務の支払義務を免れることはできません。相続放棄の期限を過ぎてしまった場合の選択肢の一つとなります。

遺留分放棄:生前に相続の権利を放棄する全く別の手続き

遺留分とは、法律で定められた相続人の最低限の取り分です。この遺留分を受け取る権利を、相続が始まる前(被相続人の生前)に放棄する手続きが遺留分放棄です。家庭裁判所の許可が必要であり、相続発生後に行う財産放棄や相続放棄とは、手続きを行うタイミングが全く異なる別の制度です。

遺留分を放棄したい場合の手続きについては以下Q&Aでも説明しています。

この記事のまとめ

財産放棄は遺産分割協議による柔軟な合意で進められますが、債務の負担は免れない点に注意が必要です。一方、相続放棄は家庭裁判所への申述で行い、原則3ヶ月以内に手続きすることで借金も含めて相続人の地位から外れます。どちらを選ぶかは負債の有無や譲渡したい財産の有無によって異なり、協議書の作成や期限管理が重要です。不安や迷いがある場合は、税務や法的手続きに詳しい専門家に早めに相談し、リスクを最小限に抑えることが安心につながります。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

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相続放棄

相続放棄とは、亡くなった人の財産を一切受け取らないという意思を家庭裁判所に申し立てて、正式に相続人の立場を放棄する手続きのことです。相続には、プラスの財産(預貯金や不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金や未払い金など)も含まれるため、全体を見て相続すると損になると判断した場合に選ばれることがあります。 相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとみなされるため、借金の返済義務も一切負わなくて済みます。ただし、相続があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があり、その期限を過ぎると原則として相続を受け入れたとみなされてしまいます。したがって、放棄を検討する場合は早めの判断と手続きが重要です。

相続人の地位

相続人の地位とは、ある人が亡くなったときに、その人の財産や権利・義務を法律上引き継ぐ立場にあることを意味します。この地位は、被相続人(亡くなった人)の配偶者や子どもなど、民法で定められた範囲の人が自動的に得るものです。相続人の地位を持つことで、亡くなった人の財産だけでなく、借金などの債務も引き継ぐことになるため、相続放棄などの判断が必要になる場合もあります。 なお、相続人の地位は、相続が発生した時点(通常は死亡時)から法律上自動的に発生するため、遺言書がある場合でも、基本的な権利は保護される仕組みになっています。資産運用の場面では、相続によって株式や不動産などの資産を受け継ぐことがあり、この地位を理解することは、円滑な資産の承継とトラブル防止に役立ちます。

債務

債務とは、ある人が他の人や機関からお金やサービスなどを受け取った代わりに、将来的にそれを返したり、対価を支払ったりしなければならない義務のことです。たとえば、銀行からお金を借りると、その金額と利息を決められた期日までに返済する必要があります。この返す義務が「債務」です。 日常生活では「借金」という言葉の方が馴染み深いですが、資産運用や法律の場面では「債務」と呼ばれることが多いです。相続の際にも、亡くなった人に債務がある場合は、それを相続人が引き継ぐことになります。そのため、相続する資産よりも債務が多い場合は「相続放棄」などの判断が必要になります。資産運用を行ううえでも、債務の存在はリスク要因となるため、自身や家族の債務状況を正確に把握することが大切です。

債権者

債権者とは、契約や法律に基づいて、他人に対してお金の支払いを受け取ったり、サービスの提供を受けたりする権利を持つ人や法人のことです。たとえば、お金を貸した人が、返済期限までに借りた人から返済を受ける権利を持っている場合、この貸した人が債権者にあたります。債権者は、相手がその義務(債務)を果たさない場合には、法的な手段を用いて支払いを求めることができます。金融や不動産、相続の場面では、債権者の存在が資産の処分や分配に影響することがあり、債権の内容や優先順位を把握することが大切です。債務者との関係が一対で成立する概念であり、資産運用やリスク管理において基本的な用語のひとつです。

申述

申述とは、ある意思や主張を正式に申し出ることを意味する法律用語です。特に相続や家庭裁判所に関わる手続きの中でよく使われます。たとえば、相続放棄をしたい場合には「相続放棄の申述」を家庭裁判所に対して行う必要があります。これは、単に口頭や私的に伝えるのではなく、法的に有効な手続きとして、決められた書式や期限に従って行うものです。申述を行うことで、本人の意思が正式に受理され、その内容に基づいた処理が進められます。資産運用の観点では、申述が関わる場面は主に相続の際に集中しますが、法律的な意思表示を確実に行うための重要なステップであり、理解しておくことが必要です。

遺産分割協議

遺産分割協議とは、相続人が複数いる場合に、誰がどの財産をどのように受け取るかを話し合って決める手続きのことです。預貯金や不動産、有価証券などすべての遺産が対象になります。原則として相続人全員の合意が必要で、話し合いの結果を「遺産分割協議書」という文書にまとめて、全員が署名・押印します。遺言書がない場合や、遺言があっても一部の財産について分け方が指定されていないときに行われます。もし話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での調停手続きに進むことになります。

遺産分割協議書

遺産分割協議書とは、相続人全員が話し合って決めた遺産の分け方を文書にまとめたものです。被相続人が遺言を残していない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合、相続人同士でどの財産を誰が受け取るかを決める必要があります。 その合意内容を正式に記録し、全員が署名・押印することで作成されるのが遺産分割協議書です。この書類は、相続した不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなど、実際の手続きを進める際に必須となることが多いため、非常に重要な役割を持ちます。作成の際は、相続人全員の同意が必要で、1人でも欠けていると無効になってしまう点に注意が必要です。資産運用においても、円満な財産の承継や手続きのスムーズ化に役立つ書類です。

印鑑証明書

印鑑証明書とは、市区町村の役所にあらかじめ登録された印鑑(実印)が、確かに本人のものであることを証明する公的な書類です。たとえば、不動産の売買や自動車の登録、遺産分割協議書の提出など、法的効力を持つ重要な手続きにおいて、本人確認の一環として利用されます。印鑑そのものは簡単に複製できる可能性があるため、「この印影は確かに本人のものです」と自治体が公的に保証することで、取引や契約の信頼性を高める役割を果たしています。印鑑証明書の取得には、印鑑登録を済ませている必要があり、発行は原則として本人か代理人によって行われます。

戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)

戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)とは、日本における家族関係を公的に証明する書類で、本籍地の市区町村役場で管理・発行されています。 相続手続きでは、誰が法定相続人であるかを確認するために必要不可欠な書類です。被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍をすべて取得することで、配偶者・子ども・親・兄弟姉妹など、関係する相続人を明らかにできます。 戸籍は複数の場所に分かれていることもあるため、「戸籍の取り寄せ」は相続手続きの最初のステップとして重要です。

相続税

相続税とは、人が亡くなった際に、その人の財産を配偶者や子どもなどの相続人が受け継いだときに課される税金です。対象となる財産には、預貯金や不動産、株式、貴金属、事業用資産などが含まれ、相続財産の合計額が一定の基準額を超えると課税対象となります。 相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除があり、この範囲内であれば原則として税金はかかりません。しかし、資産規模が大きい場合や相続人の数が少ない場合には、課税対象となり、10%〜55%の累進税率が適用されます。 さらに、相続税にはさまざまな非課税枠や控除制度が設けられており、これらを適切に活用することで税負担を抑えることが可能です。代表的な制度には以下のようなものがあります。 - 生命保険金の非課税枠:法定相続人1人あたり500万円まで非課税 - 死亡退職金の非課税枠:生命保険と同様に1人あたり500万円まで非課税 - 債務控除:被相続人に借入金などの債務があった場合、その金額を控除可能 - 葬式費用の控除:通夜・葬儀などにかかった費用は、相続財産から差し引くことができる また、配偶者には配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)が認められており、適切に遺産分割を行えば、税額を大幅に減らすことができます。 相続税は、財産の種類や分割の仕方、受け取る人の立場によって税額が大きく変動するため、生前からの対策が非常に重要です。生命保険や不動産の活用、資産の組み替えなどを通じて、相続税評価額をコントロールすることが、家族への負担を減らし、スムーズな資産承継を実現するための鍵となります。

基礎控除額

基礎控除額とは、相続税を計算する際に、遺産のうち課税されない金額のことを指します。つまり、この金額までは相続税がかからず、基礎控除額を超えた部分だけに税金がかかります。基礎控除額は、すべての人に一律で適用される「基本分」と、法定相続人の人数に応じて加算される「人数分」とを合計して決まります。たとえば、法定相続人が2人いる場合、2025年現在では「3,000万円 +(600万円 × 2人)= 4,200万円」が基礎控除額となります。資産運用の観点では、この控除を意識して相続税のかからない範囲での財産形成や分配を考えることが、税金対策やスムーズな資産承継につながります。

相続登記

相続登記とは、不動産を所有していた人が亡くなったときに、その不動産の名義を相続人へ変更する手続きのことです。この登記を行うことで、相続人が正式な所有者として法的に認められ、売却や担保設定などの権利行使が可能になります。これまでは義務ではありませんでしたが、2024年からは相続登記が法律上の義務となり、正当な理由なく放置すると過料(罰金)が科される可能性があります。 相続登記を行うには、戸籍謄本や遺産分割協議書などの書類を用意し、法務局に申請する必要があります。不動産の相続が発生した場合には、早めに登記を済ませることで、後のトラブルを防ぎ、相続資産を円滑に活用できるようになります。

名義変更

名義変更とは、不動産や預貯金、株式、自動車などの財産について、登記簿や契約書、口座記録などに記載されている所有者の名前を、現在の所有者から新しい所有者へと正式に書き換える手続きのことです。相続が発生した場合には、亡くなった人の名義になっている財産を、相続人の名義に変更する必要があります。この手続きを行わないと、たとえ法的に相続人であっても、その財産を自由に売却したり運用したりすることができません。 名義変更には、それぞれの財産に応じて必要な書類や手続きが異なり、例えば不動産であれば法務局での登記変更が必要になり、銀行口座であれば金融機関への申請が求められます。資産運用の観点では、名義変更を早めに行うことで、相続後の資産の管理や再運用がスムーズに進むため、とても重要なステップです。

贈与税

贈与税とは、個人が他の個人から金銭・不動産・株式などの財産を無償で受け取った際に、その受け取った側(受贈者)に課される税金です。通常、年間110万円の基礎控除を超える贈与に対して課税され、超過分に応じた累進税率が適用されます。 この制度は、資産の無税移転を防ぎ、相続税との整合性を保つことを目的として設けられています。特に、親から子へ計画的に資産を移転する際には活用されることが多く、教育資金や住宅取得資金などに関しては、一定の条件を満たすことで非課税となる特例もあります。 なお、現在は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2制度が併存していますが、政府は近年、相続税と贈与税の一体化を含めた制度改正を検討しており、将来的に制度の選択肢や非課税枠、課税タイミングが見直される可能性があります。 こうした背景からも、贈与税は単なる一時的な贈与の問題にとどまらず、長期的な資産承継や相続対策の設計に深く関わる重要な制度です。税制の動向を踏まえた上で、専門家と連携しながら最適な活用方法を検討することが求められます。

相続権

相続権とは、亡くなった人(被相続人)の財産を、法律に定められた権利として受け継ぐことができる資格を指します。通常は配偶者や子ども、父母、兄弟姉妹などが相続人となり、その範囲や優先順位は民法で定められています。相続権を持つ人は「法定相続人」と呼ばれ、財産を法的に引き継ぐことができます。 また、遺言がある場合には、遺言によって指名された人(遺贈を受ける人)にも一定の財産を受け取る権利が生じることがあります。ただし、相続には権利だけでなく義務(借金などの負債の承継)も含まれるため、相続放棄や限定承認といった選択も可能です。資産運用や相続設計の場面では、誰に相続権があるかを明確にすることが、円滑な財産承継のために非常に重要です。

限定承認

限定承認とは、相続人が引き継ぐ財産について、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産(借金など)を支払うことを条件に、相続を受ける方法のことです。つまり、相続によって得られる資産が借金を上回っている場合にはその差額を受け取ることができますが、もし借金が多くても、自分の財産を使ってまで返済する必要はありません。 この方法を使えば、相続することで損をするリスクを減らすことができます。ただし、限定承認を行うには、相続の開始を知ってから原則として3か月以内に、他の相続人全員と一緒に家庭裁判所に申立てをする必要があるため、手続きがやや複雑です。

相続分の譲渡

相続分の譲渡とは、相続人が自分の持っている相続の権利、つまり遺産を受け取る権利を他の人に譲り渡すことを意味します。この譲渡は、他の相続人に対して行う場合もあれば、まったく無関係の第三者に行うことも可能です。たとえば、ある相続人が「遺産はいらないが、現金がほしい」という場合に、自分の相続分を別の人にお金と引き換えで譲ることができます。ただし、譲渡された側が相続人でない場合は、遺産分割協議にその人が加わることになり、協議が複雑になるケースもあります。また、相続分の譲渡は契約であるため、基本的に書面で行い、他の相続人にも通知する必要があります。資産運用の面では、相続財産の整理や争族(相続をめぐる争い)を避けるための手段として使われることがあります。

遺留分

遺留分とは、被相続人が遺言などによって自由に処分できる財産のうち、一定の相続人に保障される最低限の取り分を指す。日本の民法では、配偶者や子、直系尊属(親)などの法定相続人に対して遺留分が認められており、兄弟姉妹には認められていない。遺留分が侵害された場合、相続人は「遺留分侵害額請求」によって不足分の金銭的補填を請求できる。これは相続財産の公平な分配を確保し、特定の相続人が極端に不利にならないようにするための制度である。

遺留分放棄

遺留分放棄とは、本来もらえるはずの最低限の相続分である遺留分を、相続が始まる前に放棄することをいいます。これを有効にするためには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。 遺留分放棄の手続きは、被相続人が生存している間に、相続人となる人が家庭裁判所に対して申立てを行う形で進められます。申立てには、戸籍謄本や財産資料などの書類とともに、なぜ放棄するのかという理由を説明する必要があります。裁判所は、放棄が本人の自由意思に基づいており、著しく不利益にならないかどうかを審査します。 遺留分放棄が許可されやすいのは、たとえば事業承継や不動産の集中承継など、相続財産を特定の人にまとめる必要があり、放棄する人に対して生前贈与やその他の利益が与えられているケースです。相続人間で合意が取れており、放棄が合理的であると判断される場合は、許可される可能性が高くなります。 一方で、無理やり放棄させようとしていたり、放棄する人に著しい不利益が生じたりする場合、または放棄の理由が不明確な場合などは、家庭裁判所が許可しない可能性があります。 遺留分放棄は一度許可されると取り消すことができないため、慎重な検討と十分な準備が必要です。生前の相続対策の一環として有効な手段ですが、家庭裁判所の判断が必要であることから、専門家のサポートを受けながら進めることが望ましいでしょう。

相続財産管理人

相続財産管理人とは、相続人がまったくいない、または全員が相続放棄をした場合に、家庭裁判所が選任する第三者の専門職です。弁護士などが就くことが多く、被相続人の遺産を調査して財産目録を作成し、債権者への弁済や遺産の換価処分、残余財産の国庫帰属といった手続きを公正に進めます。 相続人不在で放置されれば権利関係が不透明になりかねない土地や預貯金などを適切に処理し、利害関係人の保護と社会的な秩序を維持する役割を担う点が大きな特徴です。

単純承認

単純承認とは、相続が発生した際に、被相続人(亡くなった方)の財産をそのまま全て受け継ぐと決める手続きのことをいいます。この場合、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産もすべて引き継ぐことになります。単純承認は特別な手続きをしなくても、相続人が財産を使ったり処分したりすると自動的に成立することが多いため、慎重な判断が必要です。 たとえば、被相続人に多額の借金があった場合、それも自分が返済する責任を負うことになりますので、相続を受ける前には、財産の内容をよく調べることが大切です。

財産放棄

財産放棄とは、相続や贈与などにより本来取得できるはずの財産について、自らその権利を放棄することを指します。特に相続の場面でよく使われる言葉で、たとえば亡くなった人が残した財産に多額の借金が含まれている場合、相続人がそれを受け継がないために財産放棄を選ぶことがあります。正式には「相続放棄」という手続きで行いますが、一般的に「財産放棄」という言い方がされることもあります。資産運用の観点では、不要またはリスクのある資産を意図的に受け取らないという選択肢として捉えられます。誤って負債を抱え込まないためにも、自身が受け取る財産の内容やリスクを理解したうえで、放棄の判断を行うことが大切です。

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