退職所得の受給に関する申告書とは?記入例と書き方、提出しない場合の影響を解説

退職所得の受給に関する申告書とは?記入例と書き方、提出しない場合の影響を解説
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公開:
2025.11.13
更新:
2025.11.13
退職金を受け取る際に関わるのが「退職所得の受給に関する申告書」です。この書類を提出することで、勤続年数に応じた退職所得控除が適用され、確定申告の手間を省略できます。この記事では、申告書の入手方法や各欄の書き方、提出先・時期、提出しない場合の影響まで具体的に解説します。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むことで、退職時の手続きを自信を持って進められるようになり、過大な源泉徴収や支給遅延といったトラブルを防ぎながら、安心して退職金を受け取るための実践的な知識と判断力を身につけることができます。「5年ルール」「19年ルール」も把握し、複数の退職所得を受け取るときの最適解も理解できます。
退職所得の受給に関する申告書とは
退職所得の受給に関する申告書は、退職金を受け取る際に退職金の支払者(勤務先や共済組合など)へ提出する書類です。この申告書を提出すると、退職所得控除が適用され、適正な税額で源泉徴収が行われます。
退職所得の受給に関する申告書を提出する目的は、退職所得控除を適用して税負担を軽減することです。この申告書には、退職年月日や勤続期間、過去に受け取った退職手当の有無などを記載します。
提出しない場合は、退職金の全額に対して一律20.42%(所得税および復興特別所得税)の税率で源泉徴収されてしまいます。
退職所得の受給に関する申告書は退職者本人が記入する
退職所得の受給に関する申告書は、退職金を受け取る本人(退職者)が記入・作成しなければなりません。企業の人事部門や総務部門が用紙を用意してくれることはありますが、記入する責任は退職者本人にあります。
勤務先の担当者は、退職者に対してこの申告書の提出を促す役割を担っています。なぜなら、申告書が提出されないと退職者が不利益を被るだけでなく、支払者側も適正な源泉徴収ができないからです。
勤務先からもらうのが一般的
退職所得の受給に関する申告書は、主に3つの方法で入手できます。最も一般的なのは、勤務先の人事部門や総務部門から配布されるケースです。退職手続きの書類一式の中に含まれていることが多いでしょう。
国税庁のホームページからもダウンロードが可能です。「退職所得の受給に関する申告書」で検索すれば、PDFファイルとして入手できます。入力用のPDF様式も用意されているため、パソコンで直接入力することもできます。
中小企業退職金共済(中退共)や企業年金基金など、共済組合から退職金を受け取る場合は、その組合から申告書が提供されます。退職金請求書と一体型になっている様式もあるため、よく確認しましょう。
退職所得の受給に関する申告書の書き方
退職所得の受給に関する申告書は、A欄からE欄まで5つのセクションに分かれています。すべての人がA欄を記入する必要があり、B欄以降は該当する場合のみ記入します。
本人情報の記入方法
申告書の上部には、提出日、退職手当の支払者情報、受給者本人の情報を記入する欄があります。この部分は申告書の基本情報となるため、すべての項目を正確に記入しましょう。

出典:国税庁「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」
退職手当の支払者情報には、会社の所在地、名称、法人番号を記入します。勤務先に記入を依頼するのが一般的です。
受給者本人の情報として、現住所、氏名、個人番号(マイナンバー)を記入します。現住所は住民票に記載されている住所を正確に記入しましょう。
A欄の書き方(全員必須)
A欄は退職所得の受給に関する申告書の中で、すべての人が記入しなければならない欄です。退職年月日、退職の区分、勤続期間などの基本情報を記載します。

出典:国税庁「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」
退職年月日の記入
退職年月日には、実際に退職した日付を記入します。通常は退職日として会社から通知された日付を記入すれば問題ありません。
退職日が月末でない場合でも、実際の退職日を記入してください。たとえば、12月20日に退職した場合は「令和○年12月20日」と記入します。
退職年月日は退職所得控除の計算に直接影響します。年をまたいで退職金を受け取る場合など、複雑なケースでは会社の担当者に確認しながら記入しましょう。
退職の区分
退職の区分では、「一般」「障害」のいずれかを選択します。さらに、退職する年の1月1日時点で生活保護による生活扶助を受けている場合は「有」に○をつけます。
「障害」に該当するのは、在職中に障害者となり、その障害が直接の原因で退職した場合です。この場合、退職所得控除額が通常よりも100万円増額される優遇措置があります。
「障害」に○をつける場合は、障害者手帳のコピーを添付する必要があります。また、生活扶助の「有」に○をつける場合は、生活保護決定通知書のコピーの添付が必要です。
勤続期間の計算
勤続期間は「自」(開始日)と「至」(終了日)を記入し、勤続年数を計算します。開始日は入社日、終了日は退職日を記入するのが基本です。
勤続年数の計算では、1年未満の端数は切り上げます。たとえば、勤続期間が15年3ヶ月の場合、勤続年数は16年となります。この計算方法は法律で定められています。
以前に同じ支払者から退職手当を受け取っている場合は、その計算の基礎となった勤続期間の末日以前の期間を除きます。この調整により、同じ期間について二重に退職所得控除を受けることを防ぎます。
特定役員等勤続期間
特定役員等勤続期間は、役員等として勤務した期間のうち、勤続年数が5年以下の場合に記入します。該当しない場合は空欄のままで構いません。
特定役員等とは、法人の取締役、執行役、理事、監事、会計参与、監査役などの役員、または国会議員や地方議会の議員を指します。これらの地位にあった期間を記入してください。
該当する場合は「うち特定役員等勤続期間」の欄に、役員等としての勤続期間を記入しましょう。期間の計算方法は通常の勤続期間と同じで、1年未満の端数は切り上げます。
B欄の書き方(該当者のみ)
B欄は、退職する年の1月1日から12月31日までの間に、他の支払者から退職手当を受け取った場合に記入します。該当しない場合は空欄のままで問題ありません。

出典:国税庁「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」
たとえば、同じ年に会社からの退職金と企業年金からの一時金を両方受け取る場合、先に受け取った退職金についてB欄に記入します。これにより、退職所得控除額を正しく計算できます。
本年中に他の退職手当を受け取った場合、その退職手当についての勤続期間と通算勤続期間を記入します。勤続期間は、先に受け取った「退職所得の源泉徴収票」に記載されている情報を転記してください。
通算勤続期間とは、複数の退職手当の勤続期間を合算した期間から、重複する期間を除いた期間です。たとえば、会社での勤続期間が20年、企業年金の加入期間が15年で、両方とも同じ期間であれば、通算勤続期間は20年となります。
C欄の書き方(該当者のみ)
C欄は、退職する年の前年以前4年以内に退職手当を受け取っている場合に記入します。たとえば、2025年に退職する場合、2021年から2024年の間に退職金を受け取っていればC欄への記入が必要です。

出典:国税庁「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」
この欄は、過去に受け取った退職金の勤続期間と、今回の退職金の勤続期間が重複しているかどうかを確認するために使われます。重複期間がある場合、退職所得控除額の計算方法が調整されます。
前年以前4年内に退職手当を受け取っている場合、過去に受け取った「退職所得の源泉徴収票」を参考に、必要な情報を転記してください。
D欄の書き方(該当者のみ)
D欄は、A欄とB欄の勤続期間で、前に受け取った退職手当の勤続期間と一部または全部を通算している場合に記入します。グループ会社間の転籍などで勤続期間を通算するケースが該当します。

出典:国税庁「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」
通算勤続期間とは、複数の会社での勤続期間を合算して計算する期間です。たとえば、親会社で10年勤務後に子会社へ転籍し、子会社で5年勤務した場合、合計15年を通算勤続期間として扱えます。
D欄の記入が必要になるのは、比較的特殊なケースです。一般的な転職では該当しないため、多くの方は空欄のままで問題ありません。
E欄の書き方(該当者のみ)
E欄は、B欄またはC欄に退職手当の記載がある場合に記入します。先に受け取った退職手当の支払者情報を記載する欄です。
具体的には、支払者の所在地(住所)と名称(会社名や組合名)を記入します。この情報は、先に受け取った「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」に記載されているため、そのまま転記すれば問題ありません。
押印は不要
退職所得の受給に関する申告書には、押印が不要です。2021年4月1日の国税通則法改正により、税務関係書類への押印義務が廃止されました。

出典:国税庁「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」
改正前の申告書様式には押印欄がありましたが、現在の最新様式には押印欄そのものが削除されています。したがって、印鑑を用意する必要はありません。
旧様式を使用する場合でも、押印欄があるからといって押印する必要はありません。押印がなくても申告書は有効に受理されます。
退職金を受け取るときに知っておきたい「5年ルール」「19年ルール」
退職金には「5年ルール」「19年ルール」と呼ばれる税制上の規定があります。
「5年ルール」に関しては、過去5年以内に退職金を受け取り、その勤続期間と今回の勤続期間が重複している場合、重複期間は退職所得控除の計算から除外されます。たとえば、2020年に退職金を受け取り、2024年に再び退職金を受け取る場合、両方の勤続期間が重なっていると、その重複分は控除額の計算に使えません。

この5年ルールは、短期間で転職を繰り返して退職金を複数回受け取る際に、退職所得控除を過大に適用することを防ぐための制度です。該当する場合は、申告書のC欄に前回の退職金情報を記入する必要があります。
退職金の19年ルールとは、勤続年数が20年を超えると退職所得控除額が大幅に増える税制上の優遇措置です。iDeCoや企業型DCの一時金を受け取る際に、過去19年以内に退職金を受け取っていれば、その重複期間分の退職所得控除が減額されます。

退職金を複数回受け取る予定の方やiDeCoで運用している方が注意すべきが「5年ルール」です。詳しくは、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
申告書の提出方法
退職所得の受給に関する申告書は、退職金の支払者に提出します。税務署に提出するものではない点に注意してください。支払者が申告書を保管し、税務署から求められた場合にのみ提示します。
提出先は勤務先
申告書の提出先は、退職金の支払者です。会社から直接支払われる退職一時金であれば、勤務先の人事部門または総務部門に提出します。
企業年金基金から一時金を受け取る場合は、基金が提出先となります。会社ではないため、間違えないように注意しましょう。確定拠出年金の場合は、運営管理機関または会社が提出先となります。
中小企業退職金共済(中退共)からの退職金は、中退共本部が提出先です。退職金請求書と一体型の様式を使用する場合は、申告書部分も含めて中退共に提出します。
ただし、企業年金基金や中小企業退職金共済でも勤務先を経由することもあるため、事前に担当者へ確認しておくとよいでしょう。
提出時期は退職金の支払いを受けるときまで
申告書の提出期限は、退職金の支払いを受けるときです。ただし、実務上は退職日よりも前に提出するのが一般的です。
退職一時金の場合、多くの企業では退職日の1〜2ヶ月前に退職手続き書類を配布します。この際に申告書も一緒に配布されるため、他の退職手続き書類と合わせて提出しましょう。
企業年金や確定拠出年金から一時金を受け取る場合、一時金受取の申請時に申告書を提出します。年金形式で受け取る場合は申告書の提出は不要です。
退職金制度別の比較表
退職金制度ごとの申告書提出に関する違いを、以下の表にまとめました。
| 項目 | 退職一時金制度 | 確定拠出年金(企業型DC) | 確定給付企業年金(DB) | 中小企業退職金共済(中退共) |
|---|---|---|---|---|
| 申告書の提出先 | 勤務先(会社) | 運営管理機関または会社 | 企業年金基金※ | 中退共本部※ |
| 提出タイミング | 退職前 | 一時金受取時 | 一時金受取時 | 退職金請求時 |
| 年金受取の場合 | -(一時金のみ) | 申告書不要(雑所得) | 申告書不要(雑所得) | -(一時金のみ) |
※勤務先を経由することもある
添付書類が必要になる可能性がある
申告書の提出時には、状況に応じて添付書類が必要になります。基本的には申告書のみで問題ありませんが、特定の条件に該当する場合は書類を添付しなければなりません。
添付書類が必要かどうかは、申告書の記入内容によって決まります。該当する項目にチェックを入れた場合は、対応する書類を用意しましょう。
同年中に他の退職手当を受けた場合
申告書のB欄に記入がある場合、つまり同じ年に他の支払者から退職手当を受け取っている場合は、先に受け取った退職手当の「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を1部添付する必要があります。
障害による退職の場合
申告書のA欄で退職の区分を「障害」にした場合は、障害者手帳のコピーを添付する必要があります。身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれかのコピーを用意しましょう。
生活扶助を受けている場合
申告書のA欄で生活扶助の有無を「有」にした場合は、生活保護決定通知書のコピーを添付する必要があります。この書類は、福祉事務所から交付されます。
退職金にかかる税金は分離課税で計算する
退職金は退職所得として、給与所得や事業所得とは別に「分離課税」で計算されます。分離課税とは、他の所得と合算せずに独立して税額を計算する方式で、退職金の税負担を軽減するための制度です。
退職金には「退職所得控除」という特別な控除が適用されます。以下のように、勤続年数に応じて控除額が計算される仕組みです。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 勤続20年以下の場合 | 40万円×勤続年数 |
| 勤続20年超の場合 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
受け取った退職金から退職所得控除を差し引いた後の金額を、さらに1/2にした金額が課税対象となります。つまり、課税対象の計算式は「(退職金額-退職所得控除額)×1/2」です。
退職所得控除や退職金にかかる税金に関しては、こちらの記事で解説しています。あわせて参考にしてみてください。
退職所得の受給に関する申告書を提出しない場合の影響
退職所得の受給に関する申告書を提出しないと、退職所得控除が適用されません。具体的に、どのような影響が出るのかを見てみましょう。
20.42%の税率で一律源泉徴収される
申告書を提出しない場合、退職金の支払者は退職金の総額に対して、20.42%の税率で所得税および復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。この税率は、退職金額の大小に関わらず一律です。
通常の計算では、退職所得控除を適用したうえで、その1/2の金額に対して累進税率を適用します。しかし、申告書がないとこの計算ができないため、一律20.42%での源泉徴収となります。
確定申告で還付を受けられる
申告書を提出せずに過大な源泉徴収を受けた場合でも、確定申告を行えば納めすぎた税金を取り戻せます。退職金を受け取った年の翌年2月16日から3月15日までが確定申告の期間です。
退職所得は分離課税のため、確定申告書第一表・第二表に加えて、第三表(分離課税用)も提出する必要があります。第三表には、退職金の金額や勤続年数などを記入します。
確定申告では、退職所得の源泉徴収票が必要です。この書類には退職金の金額や源泉徴収税額が記載されており、支払者から交付されます。紛失した場合は、支払者に再発行を依頼しましょう。
退職金を受け取るときの留意点
企業によって退職金制度の内容は異なるものの、受け取り方次第で最終的な手取り額が変わります。また、必要書類の提出が遅れると支給が遅れる可能性があるため、注意しましょう。
受け取り方次第で手取り収入に差が生まれる
退職金には、主に以下3つの方法があります。
- 一時金として受け取る方法
- 年金として受け取る方法
- 両者を併用する方法
一時金として受け取る場合、退職所得控除という控除が適用されます。この控除額は勤続年数が長いほど増えていき、税負担が軽くなりやすい点が特徴です。
一方、年金として受け取る場合は雑所得として扱われ、公的年金控除が適用されます。毎年の他の収入と合算されて課税され、一時金で受け取る場合と比べて控除額が小さく、さらに累進課税により税率も高くなる傾向があります。
あなたの状況や生活設計次第で、最適な受け取り方法を考えることが重要です。詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
「退職所得の受給に関する申告書」の提出が遅れると支給も遅れることがある
「退職所得の受給に関する申告書」の提出が遅れると、退職金の支給も遅れる可能性があります。書類不備や退職手続きの遅れは支給の遅延につながることがあるため、注意しましょう。
また、社内の承認フローや経理処理のタイミング、担当者不在なども遅延の原因の一つです。退職金は退職後1~2か月以内に支給されることが多いですが、これらの要因で3か月以上遅れることもあります。
「退職金はいつもらえるの?」という疑問をお持ちの方は、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
退職金と企業年金は両方受け取れる
企業によっては、退職一時金制度と企業年金制度の両方を用意しています。退職金は退職時に一時金として受け取り、企業年金は年金形式で定期的に受け取る(一時金選択できる場合もある)のが主なパターンです。
ただし、会社によって制度の有無や内容が異なるため、お勤め先の就業規則や退職金規程を確認することをお勧めします。
退職後に安心して生活するためにも、まず自社の制度内容を確認することが大切です。詳しくは、こちらのQ&Aでも解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
退職金を投資に回すときは慎重に
退職金は老後の生活を支える重要な資産です。失っても簡単には取り戻せないため、慎重に扱う必要があります。
定年後は現役時代と違い、働いて補填することが困難です。また投資経験が少ない場合、リスクを過小評価したり詐欺的な商品に騙されやすくなります。また、長期投資で損失を回復する時間的余裕も限られています。
さらに、まとまった金額を手にすると感情的な判断をしがちです。投資する際は全額を一度に投じず、時間分散や資産分散を行い、信頼できる金融機関で低コストの商品を選ぶことが大切です。
実際によくある退職金運用のミスが、リスク許容度を超えた投資をしてしまうことです。詳しくは、こちらのQ&Aをご覧ください。
この記事のまとめ
退職所得の受給に関する申告書は、退職金に関する税額を正しく計算するための重要な書類です。退職日や勤続年数などを正確に記入し、支払日の前日までに勤務先へ提出すれば、退職所得控除が適用され税負担を軽減できます。未提出のままだと一律20.42%の源泉徴収が行われ、本来より多く税金を支払う可能性があるため、注意しましょう。不安がある場合は勤務先の担当者や税理士に早めに相談し、適切な手続きを進めましょう。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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退職所得
退職所得とは、会社などを退職した際に受け取る退職金に対して発生する所得のことを指します。これは給与所得とは区別され、税法上、特別な扱いがされています。退職金は、長年の勤労に対する労いの意味を持つため、課税される際には「退職所得控除」という優遇措置が設けられています。 さらに、退職所得として課税される金額は、通常の給与よりも軽い税率が適用される「1/2課税」という制度があり、これによって税負担が軽減されます。役員が受け取る退職金についても原則として退職所得となりますが、形式的に退職して実態が伴わない場合や、過大とみなされる金額については税務上認められないこともあります。 資産運用や老後の生活設計において、退職金がどのように課税されるのかを知っておくことは、手取り額を見積もる上で非常に重要です。
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退職所得控除とは、退職金を受け取る際に税金を軽くしてくれる制度です。長く働いた人ほど、退職金のうち税金がかからない金額が大きくなり、結果として納める税金が少なくなります。この制度は、長年の勤続に対する国からの優遇措置として設けられています。 控除額は勤続年数によって決まり、たとえば勤続年数が20年以下の場合は1年あたり40万円、20年を超える部分については1年あたり70万円が控除されます。最低でも80万円は控除される仕組みです。たとえば、30年間勤めた場合、最初の20年で800万円(20年×40万円)、残りの10年で700万円(10年×70万円)、合計で1,500万円が控除されます。この金額以下の退職金であれば、原則として税金がかかりません。 さらに、退職所得控除を差し引いた後の金額についても、全額が課税対象になるわけではありません。実際には、その半分の金額が所得とみなされて、そこに所得税や住民税がかかるため、税負担がさらに抑えられる仕組みになっています。 ただし、この退職所得控除の制度は、将来的に変更される可能性もあります。税制は社会情勢や政策の方向性に応じて見直されることがあるため、現在の内容が今後も続くとは限りません。退職金の受け取り方や老後の資産設計を考える際には、最新の制度を確認することが大切です。
源泉徴収
源泉徴収とは、給与や報酬、利子、配当などの支払いを受ける人に代わって、支払者があらかじめ所得税を差し引き、税務署に納付する制度です。特に給与所得者の場合、会社が毎月の給与から所得税を控除し、年末調整で過不足を精算します。 この制度の目的は、税金の徴収を確実に行い、納税者の負担を軽減することです。例えば、会社員は確定申告を行わずに納税が完了するケースが多くなります。ただし、個人事業主や一定の副収入がある人は、源泉徴収された金額を基に確定申告が必要になることがあります。 また、配当金や利子の源泉徴収税率は原則20.315%(所得税15.315%+住民税5%)ですが、金融商品によって異なる場合があるため、事前に確認が必要です。
復興特別所得税
復興特別所得税は、2011 年の東日本大震災からの復興財源を確保するために創設された上乗せ課税で、正式名称は「所得税に対する復興特別所得税」です。2013 年1月以降の各年分の所得税額に対し 2.1% を乗じて計算され、課税期間は現行法では 2037 年(令和 19 年)までと定められています。適用対象は給与・事業・年金などの総合課税所得だけでなく、株式譲渡益や配当・利子といった申告分離課税の金融所得も含まれ、源泉徴収時には所得税 15%と合わせて 0.315%(15×2.1%)が控除されるため、住民税 5%と合算した実効税率は 20.315% となります。たとえば所得税額が 10 万円なら復興特別所得税は 2,100 円、金融所得 100 万円であれば 20 万 3,150 円が源泉徴収される計算です。投資の損益計算やキャッシュフローを見積もる際は、この上乗せ分も含めた手取り利回りを把握しておくことが重要です。
退職所得の受給に関する申告書
退職所得の受給に関する申告書とは、会社を退職する際に、退職金などの「退職所得」を受け取る人が税務上の正しい控除を受けるために提出する書類のことです。 通常、この申告書を提出すると、退職金に対して「退職所得控除」が自動的に適用され、源泉徴収時の所得税が軽減されます。逆に、この申告書を提出しない場合は、退職金に対して一律の高い税率で所得税が差し引かれてしまい、後から確定申告で還付を受ける手続きが必要になります。そのため、退職時には必ずこの申告書を会社に提出することが大切です。提出先は勤務先(退職金の支払者)であり、書類の内容には本人の住所、マイナンバー、勤続年数、退職理由などが記載されます。正しく提出することで、退職金に対する税負担を最小限に抑えることができます。
源泉徴収票
源泉徴収票とは、会社などに雇われて働いている人が1年間にどれくらいの給料をもらい、どれだけの税金を払ったのかをまとめた書類です。年末に勤務先から発行され、所得税や住民税の計算、確定申告などに使われます。 この書類を見ることで、自分の年収や天引きされた税金の額を正確に把握できます。資産運用を考えるうえでも、自分の収入や税金の状況を把握することはとても重要です。たとえば、NISAやiDeCoなどの非課税制度を活用する際や、住宅ローン控除を受けるときにもこの書類が必要になることがあります。
分離課税
分離課税(ぶんりかぜい)とは、特定の所得について他の所得と合算せず、その所得単独で税額を計算し、課税する方式です。分離課税には「源泉分離課税」と「申告分離課税」の2種類があります。
マイナンバーカード
マイナンバーカードとは、日本に住民登録しているすべての人に割り振られる「個人番号(マイナンバー)」を記載したプラスチック製のICカードです。このカードには顔写真がついており、本人確認書類としても使えるほか、行政手続きや医療、年金、税金の申告など、さまざまなサービスをオンラインで簡単に利用できるようになる利便性があります。資産運用においても、証券口座を開設する際や、NISAやiDeCoなどの制度を利用する際に、このマイナンバーカードが必要となります。そのため、これから投資を始める方にとっては、まず取得しておくべき重要なカードです。
還付金
還付金とは、給与や年金などから源泉徴収された税額、または自分で納付した税額が、確定申告による再計算の結果、実際に負担すべき税額を上回っている場合に、国や自治体から納税者へ返還されるお金のことです。 医療費控除や住宅ローン控除などを適用すると税額が減り過払いが生じやすく、還付申告や更正の請求を通じて手続きを行うと、指定した金融機関口座に振り込まれます。 振込時期は申告方法や混雑状況によって異なりますが、e-Taxでマイナンバーカードと電子署名を用いて提出すると審査がスムーズになり、受取までの期間を短縮できる傾向があります。
累進税率
累進税率とは、所得が高くなるほど段階的に税率が上がる仕組みを累進税率といいます。一定の所得幅ごとに「税率区分」という階段が設けられており、課税所得がその階段を上がるごとに、超えた部分に対してより高い税率が適用されます。 この方式は所得が多い人ほど税負担能力が高いという考え方に基づいており、税負担の公平性を保ちつつ、低所得者の可処分所得を守ることを目的としています。投資で得た利益や給与収入が増えると、課税所得が上がり累進税率の高い区分に入る可能性があるため、資産運用の計画を立てる際には、控除の活用や課税所得の把握が重要になります。
確定申告
確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を計算して翌年の2月16日から3月15日に申告し、納税する手続き。多くの会社では年末調整を経理部がしてくれるが、確定申告をすると年末調整では受けられない控除を受けることができる場合もある。確定申告をする必要がある人が確定申告をしないと加算税や延滞税が発生する。
退職給付金
退職給付金とは、従業員が会社を退職した際に支給される金銭的な給付のことを指します。これは、長年勤務したことへの功労や、老後の生活資金を補う目的で企業が支払うもので、退職金や企業年金などを総称して「退職給付金」と呼びます。 支給形態には、一時金としてまとめて支払われる「退職一時金」と、年金として分割して支払われる「退職年金(企業年金)」の2種類があります。退職給付金は、従業員の将来の安心につながる重要な制度であり、企業側から見ても人材定着や福利厚生の一環として位置づけられています。また、企業は会計上、将来の支払いに備えて「退職給付引当金」を積み立てる必要があり、これは企業の財務健全性にも影響を与える重要な項目です。
企業型確定拠出年金 (企業型DC)
「企業型確定拠出年金(企業型DC:Corporate Defined Contribution Plan)」とは、企業が従業員のために設ける年金制度の一つです。企業が毎月一定額の掛金を拠出し、そのお金を従業員が自分で運用します。運用商品には、投資信託や定期預金などがあり、選び方によって将来の受取額が変わります。 この制度は、老後資金を準備するためのもので、掛金の拠出時に税制優遇があるというメリットがあります。ただし、運用によっては資産が増えることもあれば、減ることもあります。また、個人型確定拠出年金(iDeCo:Individual Defined Contribution Plan)と異なり、掛金は企業が負担します。企業にとっては福利厚生の一環となり、従業員の定着にも役立つ制度です。
確定給付企業年金 (DB)
確定給付型企業年金(DB)とは、企業が従業員の退職後に受け取る年金額を保証する企業年金制度です。あらかじめ決められた給付額が支払われるため、従業員にとっては将来の見通しが立てやすいのが特徴です。DBには規約型と基金型の2種類があります。規約型は、企業が生命保険会社や信託銀行などの受託機関と契約し、受託機関が年金資産の管理や給付を行う仕組みです。基金型は、企業が企業年金基金を設立し、その基金が資産を運用し、従業員に年金を給付する仕組みです。確定拠出年金(DC)との大きな違いは、DBでは企業が運用リスクを負担する点であり、運用成績にかかわらず従業員は決まった額の年金を受け取ることができます。一方、DCでは従業員自身が運用を行い、将来受け取る年金額は運用成績によって変動します。DBのメリットとして、従業員は退職後の給付額が確定しているため安心感があることが挙げられます。また、企業にとっては従業員の定着率向上につながる点も利点となります。しかし、企業側には年金資産の運用成績が悪化した場合に追加の負担が発生するリスクがあるため、財務的な影響を考慮する必要があります。
中退共(中小企業退職金共済制度)
中退共とは、中小企業の従業員に退職金を支給するための共済制度です。企業が毎月掛金を支払い、従業員が退職する際に積み立てられた退職金が支給されます。国の助成金もあり、企業負担を軽減しながら従業員の退職後の生活を支えます。
運営管理機関
運営管理機関とは、確定拠出年金(DC制度)において、加入者が資産運用を行う際にサポートやサービスを提供する金融機関のことです。たとえば、運用商品を選ぶための情報提供や、資産の管理、スイッチング(商品の変更)手続きなどを行います。 加入者が選べる投資信託のラインアップを整えたり、運用成績を確認するためのシステムを提供したりする役割もあります。主に証券会社、信託銀行、保険会社などが指定され、加入者にとって使いやすく、信頼できる仕組みを提供することが求められます。資産運用を自分で判断して行う確定拠出年金制度においては、運営管理機関の質が、投資の成果や利便性に大きな影響を与えるため、慎重に選ぶことが大切です。




