老人扶養控除をうける場合、デメリットはなにかありますか?
老人扶養控除をうける場合、デメリットはなにかありますか?
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2025/07/18 08:19
男性
50代
私の母は70代後半で、そろそろ老人扶養控除を利用しようかと考えています。税金が安くなるという話はよく聞きますが、何かデメリットや落とし穴はないでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
老人扶養控除とは、70歳以上の親を扶養親族にすることで最大63万円の所得控除を受けられる制度で、税負担の軽減につながります。ただし、次のようなデメリットや注意点もあります。
一番の注意点は、親御さんが扶養されることで非課税世帯から外れてしまい、介護施設での居住費・食費への補助(補足給付)や高額療養費制度の自己負担限度額引き上げなど、医療・介護費用が増えるケースがあることです。そのため、控除による節税効果以上に年間の支出が増加する可能性があります。
また、親御さんが一定所得(公的年金なら年約158万円)を超えると扶養控除が適用できなくなるため、年金以外の所得(配当や家賃収入など)がある場合は所得管理が複雑化します。健康保険についても、国民健康保険から社会保険の被扶養者へ切り替える際、介護保険料や医療費負担割合が変わり、想定外の負担増につながることもあります。
こうしたことから、単に税金の節約だけでなく、将来的な医療・介護の負担増を含め、総合的な費用対効果を考えて判断することが重要です。
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所得控除
所得控除とは、個人の所得にかかる税金を計算する際に、特定の支出や条件に基づいて課税対象となる所得額を減らす仕組みである。日本では、医療費控除や生命保険料控除、扶養控除などがあり、納税者の生活状況に応じて税負担を軽減する役割を果たす。これにより、所得が同じでも控除を活用することで実際の税額が変わることがある。控除額が大きいほど課税所得が減少し、納税者の手取り額が増えるため、適切な活用が重要である。
扶養控除
扶養控除とは、所得税や住民税を計算する際に、扶養している家族がいる場合にその人数や年齢に応じて課税対象となる所得から一定の金額を差し引くことができる制度です。これにより、税金の負担が軽くなります。対象となるのは、16歳以上の子どもや親などで、生計を共にしており、年間の所得が一定額以下であることが条件です。 子どもが16歳未満の場合は扶養控除の対象にはなりませんが、別途「児童手当」などの支援があります。控除額は扶養親族の年齢や学生かどうかなどによって異なり、たとえば「特定扶養親族(19歳以上23歳未満の子ども)」はより大きな控除額が認められています。税負担を軽減し、家族を支える世帯への配慮を目的とした制度です。
非課税世帯
非課税世帯とは、住民税が課税されない世帯のことを指します。具体的には、その世帯の所得が一定の基準以下である場合に、地方自治体から住民税の非課税と判定されます。非課税世帯に該当すると、税金の軽減だけでなく、さまざまな公的支援や減免措置の対象となることが多く、例えば医療費の自己負担割合の軽減、介護保険料の減額、奨学金の優遇、公共料金の割引などが挙げられます。 高齢者世帯や単身世帯、低所得世帯で該当することが多く、資産運用やライフプランを考えるうえでも、非課税世帯であるかどうかは重要な判断材料となります。ただし、非課税の判定基準は自治体によって細かく異なることがあるため、具体的な制度利用を考える際には確認が必要です。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1か月に医療機関で支払った自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超過分が払い戻される公的な医療費助成制度です。日本では公的医療保険により治療費の自己負担割合は原則3割(高齢者などは1〜2割)に抑えられていますが、手術や長期入院などで医療費が高額になると家計への影響は大きくなります。こうした経済的負担を軽減するために設けられているのが、この高額療養費制度です。 上限額は、70歳未満と70歳以上で異なり、さらに所得区分(年収の目安)によって細かく設定されています。たとえば、年収約370万〜770万円の方(一般的な所得層)では、1か月あたりの自己負担限度額は「約8万円+(総医療費−26.7万円)×1%」となります。これを超えた分は、後から申請によって保険者から払い戻しを受けることができます。 また、事前に健康保険の窓口で「限度額適用認定証」を取得し、医療機関に提示しておけば、病院の窓口で支払う金額そのものを最初から自己負担限度額までに抑えることも可能です。これにより、退院後の払い戻しを待たずに現金の一時的な負担を軽減できます。 同じ月に複数の医療機関を受診した場合や、同一世帯で同じ医療保険に加入している家族がいる場合には、世帯単位で医療費を合算して上限額を適用することもできます。さらに、直近12か月以内に3回以上この制度を利用して上限を超えた場合、4回目以降は「多数回該当」となり、上限額がさらに引き下げられる仕組みもあります。なお、払い戻し申請から実際の支給までには1〜2か月程度かかるのが一般的です。 資産運用の観点から見ると、この制度によって突発的な医療費リスクの一部を公的にカバーできるため、民間の医療保険や緊急時資金を過剰に積み上げる必要がない場合もあります。医療費リスクへの備えは、公的制度・民間保険・現金準備のバランスで考えることが大切です。特に高所得者や自営業者の場合は、上限額が比較的高めに設定されている点や支給までのタイムラグを踏まえ、制度と現金の両面から備えておくと安心です。
介護保険
介護保険とは、将来介護が必要になったときに備えるための保険で、民間の保険会社が提供している商品です。公的介護保険制度とは別に、要介護・要支援と認定された場合に、一時金や年金形式で保険金を受け取れるのが特徴です。 この保険の目的は、公的制度だけではまかないきれない介護費用を補い、自分自身や家族の経済的な負担を軽減することにあります。 特に高齢化が進む現代社会において、老後の安心を支える備えとして注目されている保険のひとつです。 なお、保険の保障内容や保険金の受け取り条件は商品ごとに大きく異なります。加入を検討する際には、補償の範囲や条件をしっかり確認することが重要です。
補足給付
補足給付とは、介護保険施設を利用する際に、利用者の所得や資産が少なく、自己負担が困難な場合に、公的に生活を補う目的で支給される給付金のことです。これは特に、特別養護老人ホームなどの施設サービスを利用する高齢者を対象としており、食費や居住費(滞在費)などの負担軽減を図るために設けられています。 対象となるには、住民税が非課税であることや、預貯金が一定額以下であることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。補足給付を受けることで、経済的な不安が和らぎ、安心して介護サービスを継続的に受けられるようになります。老後の生活設計や施設介護を検討する際に、この制度を活用するかどうかは大きな判断要素となります。




