役員退職金の功績倍率の相場はどの程度でしょうか?
役員退職金の功績倍率の相場はどの程度でしょうか?
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2025/09/29 09:07
男性
60代
役員退職金の支給基準について調べる中で「功績倍率」という言葉を知りました。功績倍率は役員の在任期間や企業への貢献度を考慮して退職金額を決める際に用いられると理解していますが、実際にどの程度の倍率が一般的な相場なのかが分かりません。会社規模や業種によって異なることは承知していますが、例えば中小企業と上場企業とで慣例的にどれくらいの差があるのか、また税務上の観点からどの水準であれば妥当とされやすいのかを具体的に知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
役員退職金の功績倍率は、会社の規模や役位、在任期間、功績によって異なりますが、中小企業では代表取締役で2.5〜3.0、専務や常務で2.0〜2.5、取締役で1.5〜2.0、監査役で1.0〜1.5程度が一般的な相場です。上場企業では制度自体を廃止しているケースも多く、存続していても倍率は抑制的で、代表で2.0〜3.0、平取締役で1.0〜2.0程度にとどまります。創業者や特に大きな功績がある場合は上振れもありますが、3.0を超えると税務上の説明責任が重くなり、5.0は極めて例外的と考えるべきです。
算定方法は「退職金=最終報酬月額×在任年数×功績倍率」という式が基本で、例えば月額120万円・在任20年・倍率3.0なら7,200万円になります。ただし税務では「不相当に高額」とされれば損金不算入となるため、退職の経緯、功績の内容、同業他社の水準といった観点から妥当性を説明できることが重要です。そのため、決算資料や業績データ、株主総会での決議記録など、根拠を残すことが欠かせません。
個人側の課税は退職所得として扱われ、退職所得控除を差し引いたうえでさらに1/2に圧縮されます。例えば20年勤続なら控除額は800万円となり、それを差し引いた残額の半分に課税されます。ただし勤続5年以下の特定役員の場合は1/2課税の特例が使えないため注意が必要です。
実務的には、退職金規程を整備し、役位ごとの倍率レンジを明文化しておくことが安心です。加えて、株主総会で個別決議を行い、支給の根拠を明確にすることが求められます。高倍率を設定する場合には、業績向上や事業承継といった具体的な功績を示す資料を準備し、後日の税務調査にも耐えられる形にしておくことが安全です。
結論としては、代表で2.5〜3.0、取締役で1.5〜2.0が目安であり、これを超える場合にはしっかりとした根拠が必要になります。功績倍率は単なる相場ではなく、会社の状況や役員の実績を踏まえて、説明可能な範囲で決定することが大切です。
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関連する専門用語
功績倍率
功績倍率とは、役員退職金を算出する際に用いられる係数で、その役員が企業にどれだけ貢献したかを数値で表すものです。具体的には、最終報酬月額に在任年数をかけ、さらに功績倍率を乗じることで退職金額が決まります。この倍率は一律ではなく、役職の重要度や業績への影響度、企業の規模などによって異なり、社長や会長など経営に深く関与した役員ほど高く設定される傾向があります。 たとえば、社長であれば功績倍率は2.0〜3.0程度が一般的ですが、業種や会社の方針によって違いがあります。税務上は、この倍率が過大であると認定されると、退職金の一部が損金不算入となり、法人税の対象となる可能性があります。そのため、功績倍率は慎重に設定する必要があります。資産設計の場面では、役員自身が将来受け取る退職金の目安を把握するための重要な指標となります。
取締役
取締役とは、株式会社の経営において意思決定を行う役割を担う人のことを指します。会社法に基づき選任され、株主総会で承認されて就任します。取締役は取締役会に参加し、会社の方針や重要な業務を決める立場にあります。 また、日常の業務執行を担当する場合もあり、会社全体の運営に大きな責任を持っています。投資家にとって取締役は、その会社の経営方針やガバナンスを理解するうえで重要な存在です。初心者にとっては「会社の経営を決める人」と覚えておくと分かりやすいでしょう。
監査役
監査役とは、会社の業務執行や財務状況を監督し、経営の健全性を確保する役割を担う役員のことを指す。取締役が適切に職務を遂行しているかをチェックし、必要に応じて意見を述べる。会社法では、監査役の独立性を保つため、一定の権限と義務が定められている。
損金不算入
損金不算入とは、法人が支出した費用であっても、税務上は経費(=損金)として認められず、課税所得の計算には含められない扱いのことをいいます。企業会計上では費用として処理されていても、法人税の計算においては損金として算入できないため、結果的に税金が多くなる要因になります。たとえば、役員に対する過大な退職金や交際費の一部、罰金・加算税などは、損金不算入となる代表的な例です。資産運用や経営判断の面では、損金不算入となる支出を誤って多く計上すると、予想以上の納税負担が生じてしまうため、税務の知識として正しく理解しておくことが重要です。
特定役員
特定役員とは、法人において経営の重要な決定に関与する役職にある人を指し、具体的には取締役、監査役、執行役、理事などが該当します。この区分は、税制上の取り扱いに関係があり、特定役員に対しては、退職金や賞与、一部の報酬などについて通常の従業員とは異なる課税ルールが適用される場合があります。たとえば、役員退職金の損金算入やストックオプションの課税タイミングなどが関係してきます。資産運用の観点から見ると、特定役員として受け取る報酬や退職金は高額になるケースが多く、税負担のコントロールや受け取り方の設計が重要になります。そのため、役員として働く人は、特定役員に関する税制や資産の受け取り方法について正しく理解しておく必要があります。
役員退職金規程
役員退職金規程とは、会社が役員に対して退職金を支給する際のルールや計算方法を定めた社内規程のことです。この規程には、誰が対象となるのか、退職金の算出方法(たとえば功績倍率法など)、支給の時期や手続き、退職事由(通常退職・懲戒退職など)による取り扱いの違いなどが明記されています。 役員退職金は、株主総会の決議を経て支給されるのが一般的ですが、この規程があることで、支給内容の透明性と公平性が保たれ、社内外への説明責任も果たしやすくなります。また、税務上も、この規程が適正に整備されていることで、退職金の損金算入が認められやすくなるというメリットがあります。資産運用や事業承継の場面では、将来の退職金支給計画の根拠として重要な役割を果たします。




