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FOMCの利上げや利下げの発表はどのように株価に影響しますか?

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2025/08/18 07:40

株式
株式

男性

30代

question

FOMCで利上げや利下げが決まった際、株価は発表直後とその後の期間でどのように変化する傾向がありますか?また、発表前後の注意点もあれば教えてください。


回答

佐々木 辰

株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長

株価がFOMCで動く主な理由は、金融政策が将来キャッシュフローを割り引く金利、なかでも実質金利に影響し、結果としてバリュエーション(PERなど)が変わるからです。投資家は「結果そのもの」よりも、事前コンセンサスとの差(サプライズ)や、声明・ドットプロット・記者会見を通じた今後の道筋に強く反応します。あわせて、政策見通しを映しやすい米2年債利回り、成長とインフレ観測を反映しやすい10年債実質利回り、そしてドル相場の動きが、株式セクターの強弱を左右します。

発表直後は数分から数時間にわたり解釈が揺れやすく、最初の値動きが逆回転する“フェイクムーブ”も珍しくありません。声明文、ドットプロット、会見と材料が段階的に出るため、30〜90分はノイズ的な値動きになりやすいと考えてください。

利上げやタカ派的な据え置きがサプライズだった場合、株価は弱含みやすく、初動は下方向に走りやすい一方で、その後の戻りは不安定になりがちです。金利は特に2年債が上がりやすく、ドル高方向に振れやすい環境では、長期キャッシュフローの現在価値が下がるため、グロース株が相対的に弱く、ディフェンシブが相対的に堅調になりやすい傾向があります。

市場予想どおりの利上げでトーンが穏当なら、織り込み済みとして「材料出尽くし」の戻りが起きることもあります。この場合、2年債利回りは横ばいか小反落にとどまり、景気敏感株や金融株へ資金が回帰する場面も見られます。

利下げやハト派的据え置きがサプライズで出たときは、初動は上がりやすいのですが、「なぜ利下げしたのか」という背景次第で後続の値動きが大きく変わります。景気悪化の兆しを強く滲ませるメッセージなら乱高下になりやすく、金利は低下しても株は不安定さを引きずることがあります。金利低下はグロース株には追い風ですが、金融株は利ざや縮小懸念で重くなりがちです。

予想通りの利下げで、ソフトランディングの物語が保たれている場合は、リスクオンに傾きやすくなります。2年債は下がり、10年債は横ばいから小幅低下にとどまる展開では、グロースや小型株まで広く資金が波及しやすくなります。

数週間から数か月のスパンでは、インフレと景気の組み合わせが効いてきます。インフレが落ち着きつつ景気は堅調というソフトランディングが見えているなら、10年実質利回りが安定し、グロースや小型を含む広めの上昇が期待しやすくなります。一方でインフレが粘るためタカ派姿勢が長引く場合は、実質金利の高止まりがバリュエーション圧縮を招き、グロース劣位、資源やディフェンシブ優位といった景色に傾きやすくなります。

利下げが急速に進むのが景気悪化のシグナルであるケースでは、短期的に株が持ち上がっても、のちに業績悪化で押し戻されるリスクがあります。この局面ではディフェンシブや高配当が相対的に粘りやすい傾向があります。逆に据え置きが長期化すると、相場はマクロではなく企業決算主導に移り、セクター間のばらつきが大きくなるため、個別の業績見通しがより重要になります。

セクターの感応度を整理すると、グロースやハイテクは実質金利に敏感で、実質金利低下は追い風、上昇は逆風になりがちです。金融は政策金利そのものよりも、長短金利差が拡大するスティープ化がプラス、フラット化や逆イールドがマイナスに働きやすい構造です。エネルギーや素材はインフレ期待や原材料価格、ドル安局面との相性がよく、生活必需品・公益・ヘルスケアなどのディフェンシブは景気不安時の逃避先になりやすい性格があります。高配当株は金利上昇局面では相対的な利回り魅力が薄れやすい一方、景気減速時の下支えとしては機能しやすい面もあります。

発表前はポジションサイズの管理が第一です。イベント勝負は初心者には不向きで、積立は通常運転のまま、裁量ポジションは必要なら縮小するのが無難です。直前は板が薄くスプレッドが広がりやすいため、成行より指値が基本です。オプションのインプライド・ボラティリティは上がりやすく、発表後に剥落しがちなので、短期の保険はコストに見合うか慎重に判断します。事前には市場予想、ドットプロットの焦点、直近の雇用統計やCPIとの整合も押さえておきましょう。

発表直後から数日は、初動を鵜呑みにしない姿勢が有効です。サプライズの源泉が「利上げ回数や利下げ開始時期の見通し」にあるのか、それとも景気認識やインフレ見通しの変更にあるのかを切り分け、2年債、10年債、ドルの動きと株の反応が整合的かを確認します。長期投資では分散・積立・リバランスのルールを崩さず、短期の思いつきで資産配分を大きく変えないことが結果的に有利です。

初心者に適した運用の型としては、まずインデックス中心の長期積立ではタイミングを狙わず、年に数回の定期リバランスで金利上昇期の株安やその逆を機械的に均すことが有効です。株と債券と現金を組み合わせる中期分散では、利上げが続く局面はデュレーションを短めに保ち、ピークアウトが見えたら徐々に伸ばします。外貨資産がある場合は、為替の影響が株の値動きを増幅することがあるため、家計全体で為替ヘッジ比率を設計します。

イベント前に大きく張らないという「やらない決断」も重要です。必要があれば現金比率を軽く高めたり、広く分散されたインバースETFやプットオプションを薄く使って保険をかける方法もありますが、保険料というコストを常に意識してください。

要するに、株は結果そのものよりもサプライズとガイダンスに反応します。実質金利、2年債利回り、ドル相場を同時に観察すると、セクターの強弱が読みやすくなります。利下げは常に株高を意味するわけではなく、利下げの理由が景気悪化なのか安定化なのかが決定打です。短期のイベントに振り回されず、分散、積立、リバランスという長期の基本を守ることが、結局はリターンとリスク管理の両面で有利になりやすいと考えてください。

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FOMC(Federal Open Market Committee/連邦公開市場委員会)

FOMC(Federal Open Market Committee、連邦公開市場委員会)は、米国の金融政策を決定する最高意思決定機関です。米連邦準備制度(FRB)が、インフレ抑制・雇用最大化・経済安定化を目的に、政策金利(FF金利)の調整や金融市場の流動性管理を行います。 FOMCは年8回開催され、米国の景気・物価動向・雇用状況を評価し、政策金利の変更や量的緩和・量的引き締めなどの金融政策を決定します。会合後には声明が発表され、議長の記者会見が行われます。 FOMCの決定は、米国経済だけでなく、世界の金融市場にも大きな影響を与えます。市場予想と異なる決定が出た場合、株式市場・債券市場・為替市場が大きく変動することがあります。一般的に、利上げが発表されると株価は下落し、ドル高が進行し、債券価格は下落します(利回りは上昇)。反対に、利下げが発表されると株価は上昇し、ドル安が進行し、債券価格は上昇します(利回りは低下)。 日本では「日銀金融政策決定会合」がFOMCに相当しますが、決定プロセスには違いがあります。FOMCはFRB理事7名と地方連銀総裁5名の計12名による投票で政策を決定し、金融政策の透明性が高いのが特徴です。

利上げ

利上げとは、中央銀行が政策金利を引き上げることを指します。 政策金利が上がると、銀行が企業や個人にお金を貸す際の金利も高くなり、住宅ローンや企業の借り入れコストが上昇します。その結果、消費や投資が抑えられ、経済の過熱を冷ます効果が期待されます。 一般的に、物価上昇(インフレ)が加速しているときや、景気が過熱気味と判断されたときに、インフレを抑制する目的で利上げが行われます。 利上げは金融市場にも大きな影響を与えます。金利が上がることで、預金や債券の利回りが高まり、相対的に株式の魅力が薄れるため、株価が下落する要因となることがあります。また、高金利はその国の通貨の魅力を高めるため、為替市場では通貨高の要因になることが一般的です。 ただし、利上げを急激に行いすぎると、企業や個人の資金繰りが悪化し、景気後退を招くリスクもあります。そのため、中央銀行は物価と景気のバランスを見ながら、段階的かつ慎重に利上げを判断します。

利下げ

利下げとは、中央銀行が政策金利を引き下げることを指します。 政策金利が下がると、銀行が企業や個人にお金を貸す際の金利も低くなり、住宅ローンや企業向け融資などの借り入れがしやすくなります。その結果、消費や投資が活発になり、景気の回復や拡大が期待されます。 一般的に、景気が低迷しているときや、物価上昇(インフレ)の圧力が弱いときに、景気刺激策として利下げが行われます。 また、利下げは金融市場にも大きな影響を与えます。金利が下がることで企業の資金調達コストが減り、利益拡大が期待されるため、株価の上昇要因となることがあります。一方で、金利の魅力が下がることで自国通貨が売られやすくなるため、為替相場では通貨安の要因となることもあります。 ただし、利下げを長期間続けたり過剰に行ったりすると、消費や投資が加熱しすぎて需要が過剰になり、物価が急激に上昇する(インフレが加速する)リスクもあります。そのため、中央銀行は利下げを行う際に、経済全体のバランスや将来のインフレリスクを慎重に見極める必要があります。

実質金利

実質金利とは、名目金利からインフレ率を差し引いた後の金利を指します。この金利は、資金の貸借や投資の実際の収益性を測るための重要な指標であり、インフレの影響を考慮に入れた金利の実態を示します。名目金利が投資やローンの表面的な利率であるのに対し、実質金利はその金利から物価上昇の影響を除いた純粋な利益の率を表しています。 実質金利が正の場合、投資のリターンはインフレ率を上回っていることを意味し、投資家の購買力は増加します。逆に、実質金利が負の場合には、投資のリターンがインフレ率に追いついていないため、時間の経過と共に購買力が減少します。これは、実際の利益が期待ほど高くないことを示しており、投資や貯蓄の実質的な価値が減少している状態です。 投資家は実質金利を用いて、異なる金融商品や投資案件の収益性を比較し、インフレの影響を考慮したうえで最も効果的な投資選択を行うことができます。また、中央銀行は実質金利を金融政策の設定において重要な指標として利用し、経済成長や物価安定の目標を支えるための政策利率を調整する際の参考にします。 実質金利の動向は経済全体の健全性を示すバロメーターともなり、経済の過熱や不況のサインを察知する手がかりとなるため、経済分析において非常に重要な役割を果たします。

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ドットプロットとは、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が公表する経済見通しの一部で、FOMC(連邦公開市場委員会)の参加者が今後の政策金利の見通しを点(ドット)で示した図表のことです。 縦軸に金利水準、横軸に将来の年次が示され、各参加者の予測がドットとして配置されます。中央値や分布の傾向から、FRBが今後どのように金融政策を運営していくかを市場が読み取る手がかりとなります。 ただし、あくまで個々の見通しであり、FRBの公式な約束ではないため、解釈には注意が必要です。投資家や市場参加者にとっては、金利動向を先読みするための重要な指標となっています。

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