保険の見直しをするにあたって、特に意識すべきポイントはありますか?
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2025/10/17 09:12
男性
30代
最近、家計の見直しや将来の備えを考える中で、自分が加入している保険が本当に今の生活に合っているのか疑問を感じています。特に、結婚や出産、住宅購入などライフステージの変化があったことで、保障内容を見直すべきか気になっています。保険を見直す際に、どんなポイントを意識すれば無駄なく、かつ必要な保障を確保できるのか、専門家の視点で教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
まず大前提として、保険は万が一のリスクに備えるものです。つまり、自分や家族に何かあったときに経済的に困窮しないための「経済的な損失への備え」であり、貯蓄や投資とは目的が異なります。この本質を理解することが、適切な見直しの出発点となります。
保険の見直しは「公的保障の確認、家計リスクの把握、必要保障額の試算、過不足の調整、商品条件の精査、乗り換えの実務」の順で行うのが効率的です。保障と貯蓄の役割を切り分け、合理的な順序で整理することが失敗を防ぐ基本です。
まず現状を把握します。家族構成や収入・支出、貯蓄額、住宅ローンの有無、勤務先の福利厚生を整理し、加入している保険を一覧化します。目的や保険金額、保険料、満期、特約、免責条件などを明確にして見える化することが出発点です。
同時に、公的保障を確認します。会社員なら高額療養費制度や傷病手当金、遺族年金があり、自営業は保障が薄いため民間保険で補う必要があります。どのリスクが、家計にどれだけ影響するかを数値で把握しましょう。
「なんとなく不安だから」という理由で過剰な保険に加入していないか検証しましょう。死亡保障であれば、遺された家族の生活費、教育費、住居費などから、遺族年金や貯蓄などを差し引いた「本当に不足する金額」を算出します。医療保険なら、公的医療保険の高額療養費制度を踏まえた上で、実際の自己負担額がいくらになるかを考えます。
家計の保険料負担は、手取りの3〜5%に収めるのが目安です。金額は必要保障額から逆算し、特約の重複や目的不明の契約がないかを見直します。勤務先の団体保険やクレジットカード付帯の保障などを確認するだけでも、支出を削減できる場合があります。
保険商品は年々進化しており、同じ保障内容でも保険料が安くなっていたり、新しい特約が登場していたりします。特に10年以上前に加入した保険は、現在の商品と比較すると割高な可能性があります。
保険見直しの本質は、限られた家計の中で「本当に必要な保障を、適正な価格で確保すること」です。不安を煽る営業トークではなく、ご自身の経済状況と将来設計に基づいた冷静な判断を心がけてください。
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公的保障
公的保障(こうてきほしょう)とは、国や自治体が税金を財源として、すべての国民に最低限の生活を保障する制度を指します。社会保障制度の柱の一つであり、病気や失業、貧困、子育てなどで生活に困窮した場合に、保険料を支払っていなくても利用できる点が特徴です。 代表的な例として、生活保護があります。これは収入や資産が一定基準を下回る世帯に対し、生活費や医療費を補う制度で、まさに「最後のセーフティネット」とされています。また、児童手当は子どもを養育する家庭に所得に応じて一定額を支給する仕組みであり、子育て世帯の生活支援を目的としています。さらに、基礎年金の一部は国庫からの負担で賄われており、拠出額が少ない人でも一定の年金を受け取れるようになっています。 一方で、公的保険は国民や事業主が保険料を拠出し、相互扶助の仕組みで運営されます。健康保険や雇用保険、介護保険、年金保険などが代表的で、保険料を支払うことでリスク発生時に給付を受けられます。公的保障は税を財源に「無拠出」で提供される点で、公的保険とは性格が異なります。 公的保障は最低限度の生活を維持するための支援にとどまることが多いため、実際には公的保険や私的保険、さらに自助的な資産形成を組み合わせて備えることが現実的で安心といえます。
必要保障額
必要保障額とは、万一の際に残された家族が現在と同等の生活水準を維持しながら、将来の教育費や住宅費といった支出も含めて安心して暮らしていけるよう、生命保険などで準備すべき金額を指します。具体的には、遺族の生活費、子どもの教育資金、住宅ローンの残債、葬儀費用などの「必要資金」から、公的遺族年金、勤務先の死亡退職金、既存の貯蓄や保険などの「準備済み資金」を差し引くことで算出します。 この必要保障額は、家族構成や年齢、子どもの進学予定、住宅ローンの残り期間など、個々のライフプランによって大きく異なります。たとえば、子どもが小さいうちは教育費や生活費の負担が長期にわたるため保障額は大きくなりがちですが、成長とともに必要な保障額は徐々に減少していきます。また、配偶者の就労状況や資産形成の進捗によっても必要な金額は変動します。 そのため、保険を一度加入したら終わりではなく、ライフステージの変化に応じて定期的に見直すことが重要です。保障が過剰であれば保険料の無駄払いになり、逆に不足していればいざというときに家族が困ることになります。こうしたリスクを避けるためにも、保険はライフプラン全体の中での位置づけとして考えることが不可欠です。 保険加入を検討する際には、営業担当者の提案を鵜呑みにせず、自分の生活設計に照らして必要な保障内容を見極めることが大切です。保障の目的や期間、公的制度とのバランス、そして家計や資産運用との整合性を踏まえた設計にすることで、無理なく持続可能な保険の活用が実現できます。必要に応じて、ライフプランニングに精通した中立的な専門家に相談し、現状の見直しと将来設計を行うのも有効な方法です。
特約
特約とは、保険契約や金融契約、不動産契約などにおいて、基本契約に追加される特別な条件や取り決めのことを指します。これは標準的な契約内容とは別に、契約者の希望や状況に応じて付加されるもので、主契約の補足・強化・変更などを目的とします。 たとえば、生命保険では「災害特約」や「払込免除特約」などがあり、基本の保障に加えて追加の保障や条件変更を可能にします。特約は自由度が高い反面、内容や適用条件が複雑になることもあるため、契約時にはその内容を正確に理解しておくことが重要です。資産運用や保険設計においては、特約の有無によって将来のリスク対応力やコスト負担が大きく変わる可能性があるため、戦略的に選ぶべき要素のひとつです。
免責条項
免責条項とは、契約の中で「特定の条件においては責任を負わない」とする内容を記載した条項のことです。たとえば、売買契約で売主が建物の欠陥について一定期間を過ぎた後は責任を負わないとする場合や、自然災害など予見できない事象による損害は責任を負わないと明記する場合などがあります。 この条項は、トラブルが発生した際の責任の範囲をあらかじめ明確にしておくことで、当事者間の紛争を避ける役割を果たします。ただし、法律に反するような内容や、著しく一方的に不利な免責は無効とされることがあります。資産運用や不動産取引の場面では、契約書に記載された免責条項をよく読み、その内容を理解したうえで合意することが、安全な取引のために非常に重要です。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1か月に医療機関で支払った自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超過分が払い戻される公的な医療費助成制度です。日本では公的医療保険により治療費の自己負担割合は原則3割(高齢者などは1〜2割)に抑えられていますが、手術や長期入院などで医療費が高額になると家計への影響は大きくなります。こうした経済的負担を軽減するために設けられているのが、この高額療養費制度です。 上限額は、70歳未満と70歳以上で異なり、さらに所得区分(年収の目安)によって細かく設定されています。たとえば、年収約370万〜770万円の方(一般的な所得層)では、1か月あたりの自己負担限度額は「約8万円+(総医療費−26.7万円)×1%」となります。これを超えた分は、後から申請によって保険者から払い戻しを受けることができます。 また、事前に健康保険の窓口で「限度額適用認定証」を取得し、医療機関に提示しておけば、病院の窓口で支払う金額そのものを最初から自己負担限度額までに抑えることも可能です。これにより、退院後の払い戻しを待たずに現金の一時的な負担を軽減できます。 同じ月に複数の医療機関を受診した場合や、同一世帯で同じ医療保険に加入している家族がいる場合には、世帯単位で医療費を合算して上限額を適用することもできます。さらに、直近12か月以内に3回以上この制度を利用して上限を超えた場合、4回目以降は「多数回該当」となり、上限額がさらに引き下げられる仕組みもあります。なお、払い戻し申請から実際の支給までには1〜2か月程度かかるのが一般的です。 資産運用の観点から見ると、この制度によって突発的な医療費リスクの一部を公的にカバーできるため、民間の医療保険や緊急時資金を過剰に積み上げる必要がない場合もあります。医療費リスクへの備えは、公的制度・民間保険・現金準備のバランスで考えることが大切です。特に高所得者や自営業者の場合は、上限額が比較的高めに設定されている点や支給までのタイムラグを踏まえ、制度と現金の両面から備えておくと安心です。
団体保険
団体保険とは、企業や団体を契約者としてまとめて加入する保険の仕組みを指します。個人が直接契約するのではなく、会社や労働組合、学校などを通じて契約するため、保険会社にとっては大口契約となり、結果的に保険料が割安になるのが大きな特徴です。 保険の内容は、生命保険・医療保険・損害保険など多岐にわたり、従業員やその家族、団体の構成員が対象になります。たとえば、企業の福利厚生として導入される「団体定期保険」や「団体医療保険」は、社員の死亡・病気・ケガに備える基本的な保障を低コストで提供します。学校やPTAを母体とした団体保険では、子どもの事故や通学時のけがに対応するものもあります。 また、団体保険には「団体扱い保険」と「団体契約保険」の2つの形態があります。団体扱い保険は、実際の契約主体は加入者本人ですが、保険料の支払いを給与天引きなどで一括管理する仕組みです。一方、団体契約保険は、企業や団体が保険契約者となり、構成員を被保険者として加入させる方式です。後者の方が割引率や加入条件で優遇されることが多いです。 団体保険のメリットは、①個人契約よりも保険料が安い、②健康状態に関する告知が簡略化される場合がある、③福利厚生として自動的に加入できる、といった点です。一方で、デメリットとしては、④退職や団体脱退とともに保障が終了する、⑤保障内容が画一的で自由度が低い、などがあります。 そのため、団体保険は「ベース保障」として有効ですが、ライフステージや必要保障額に応じて個人保険で補完することが望ましいです。保険選びに迷う際には、団体保険と個人保険の組み合わせを専門家に相談して最適化するのが安心です。