がん保険が気になりますが「がん保険はもったいない」という声を聞きます。専門家の意見を聞きたいです。
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2025/08/08 15:35
男性
30代
がん保険は掛け捨てで保険料が無駄になると聞き、加入を迷っています。しかし医療費や仕事への影響も心配です。保険料の「もったいなさ」だけでなく、実際にどのような経済リスクや安心感が得られるのか、専門家の視点から判断材料を教えてもらえますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
がん保険を「掛け捨てで保険料が無駄」と感じる理由は、支払った保険料が戻らない点にあります。しかし保険の本質は、発生確率は低くても起きれば家計に大きな打撃を与える損失を移転することです。がん治療は高額療養費制度で自己負担が一定額に抑えられますが、先進医療の技術料や差額ベッド代は全額自己負担です。
さらに抗がん剤の外来治療が長期化すると、自己負担が累積し、同時に収入減少にも直面します。診断給付金や通院給付金があれば、治療費と生活費を同時にカバーでき、療養に専念しやすくなります。
加入判断の目安は、①生活費1年以上の貯蓄があるか、②会社員で傷病手当金を使えるか、③住宅ローンなど固定支出が多いか、④家族にがんを経験した人がいるかや喫煙習慣があるかといった発症リスクが高いか、です。①②を満たしリスクが低い場合は、保険より資産形成を優先する選択肢もあります。一方、自営業や子育て世帯は収入減と支出増が重なるため、保険によるリスク移転の効果が大きくなります。
保険料を抑えるには、終身型で必要給付額を最小限に設計し、上皮内がんの保障範囲も確認することが重要です。加入前に「医療費+生活費×治療期間−既存の備え」を試算し、保険料が手取り年収の5%以内に収まるかを確認すれば、「もったいないかどうか」を数字で冷静に判断できます。
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がん診断給付金
がん診断給付金とは、がんと医師に診断された際に一時金として受け取れる給付金のことです。まとまった金額が早期に受け取れるため、治療費や入院費のほか、仕事を休むことで減少する収入の補填、家族の生活費など、治療開始前後に発生しやすい経済的な負担をカバーできます。 また、給付金の使い道に制限がない点が特徴で、治療方法の選択肢を広げたり生活環境を整えたりと、柔軟に活用できます。
がん保険
がんと診断されたときや治療を受けたときに給付金が支払われる民間保険です。公的医療保険ではカバーしきれない差額ベッド代や先進医療の自己負担分、就業不能による収入減少など、治療以外の家計リスクも幅広く備えられる点が特徴です。通常は「診断一時金」「入院給付金」「通院給付金」など複数の給付項目がセットされており、加入時の年齢・性別・保障内容によって保険料が決まります。 更新型と終身型があり、更新型は一定年齢で保険料が上がる一方、終身型は加入時の保険料が一生続くため、長期的な負担の見通しを立てることが大切です。がん治療は医療技術の進歩で入院期間が短くなり通院や薬物療法が中心になる傾向があるため、保障内容が現在の治療実態に合っているかを確認し、必要に応じて保険の見直しを行うと安心です。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1ヶ月間に医療機関で支払った自己負担額が一定の上限額を超えた場合、その超過分については後から払い戻しを受けられる公的な医療費助成制度です。日本の公的医療保険制度では、治療費の自己負担割合は原則3割(高齢者等は1〜2割)とされていますが、重い病気や手術、長期入院などで医療費がかさむと、家計への影響が大きくなります。高額療養費制度は、そうした経済的負担を軽減するために設けられており、「所得区分に応じた月ごとの上限額」を超える分について、申請によって払い戻しを受けることができます。 さらに、事前に健康保険の窓口で「限度額適用認定証」を取得して医療機関に提示すれば、病院の窓口で支払う額自体を、最初から自己負担限度額までに抑えることも可能です。これにより、退院後の申請を待たずに、現金の一時的な負担を大きく減らすことができます。 この制度の上限額は、70歳未満・70歳以上で異なり、さらに被保険者の所得区分(年収目安)に応じて細かく設定されています。例えば、年収約370万〜770万円程度の方(一般的な所得区分)であれば、1ヶ月あたりの自己負担限度額は「約8万円+(総医療費−26.7万円)×1%」となり、想定以上の医療費負担が発生しても、上限を超えた分は保険者から還付されます。 資産運用の観点では、この制度の存在によって、突発的な医療費リスクの一部を公的にカバーできるため、「民間医療保険や緊急時資金の準備」を過度に厚くする必要がない可能性があります。 つまり、医療費リスクへの備えを公的制度・民間保険・現金準備のバランスで考える際、この制度の適用範囲を正しく理解しておくことが、保険の選択や生活防衛資金の適切な設定に役立ちます。特に、高所得者層や自営業者は制度上の上限額が比較的高めに設定されている点や、支給までにタイムラグがあることも踏まえ、制度と現金の備えの両面から検討することが重要です。
先進医療特約
先進医療特約とは、民間の医療保険やがん保険に追加して付けられる保障で、厚生労働大臣が承認した先進医療を受けた際にかかる技術料や治療費の自己負担分を所定の限度額まで補填する仕組みです。先進医療は公的医療保険の対象外で、粒子線治療など一回数百万円に上るケースもあるため、特約を付けることで大きな費用負担を回避できます。 一般的に保険料は月数百円程度と比較的低く抑えられており、加入時の年齢や支払方法によって決まります。給付を受けるには治療前に保険会社へ連絡し、指定医療機関で先進医療の実施が確定したことを証明する書類を提出する必要があります。医療技術は日々進化しており、承認される先進医療の数も変動するため、加入後も特約の対象範囲が最新の治療に対応しているか確認しておくと安心です。
傷病手当(しょうびょうてあて)
傷病手当(しょうびょう)とは、会社員などが病気やけがで働けなくなり、給与の支払いを受けられない場合に、健康保険から支給される所得補償の制度です。原則として、連続する3日間の待期期間のあと、4日目以降の働けなかった日から、最長で1年6か月間支給されます。 支給される金額は、休業前の標準報酬日額の約3分の2に相当する額とされており、就労不能による収入減少を一定程度カバーする役割を果たします。対象となるのは健康保険に加入している被保険者(主に会社員など)で、国民健康保険には原則としてこの制度はありません。なお、同時に傷病手当金を受け取りながら、会社から給与が支給された場合は、差額調整が行われることがあります。短期的な就労不能時の生活安定を図るための、大切な公的保障の一つです。
保険料
保険料とは、保険契約者が保険会社に対して支払う対価のことで、保障を受けるために定期的または一括で支払う金額を指します。生命保険や医療保険、損害保険など、さまざまな保険商品に共通する基本的な要素です。保険料は、契約時の年齢・性別・保険金額・保障内容・加入期間・健康状態などに基づいて算出され、一般にリスクが高いほど保険料も高くなります。 また、主契約に加えて特約(オプション)を付加することで、保険料が増えることもあります。保険料は、契約を維持し続けるために必要な支出であり、未納が続くと保障が失効する場合もあるため、支払計画を立てることが大切です。資産運用の観点からも、保険料の支払いが家計に与える影響や、保障と費用のバランスを見極めることは、ライフプラン設計において重要な判断材料となります。