法定相続人と相続人の違いは?
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2025/08/15 08:42
男性
30代
法定相続人と相続人は、どのような定義や範囲の違いがあるのでしょうか?遺言がある場合や、養子縁組・離婚・内縁関係などの特殊なケースでは、どちらの扱いが優先されるのかも知りたいです。相続税の計算や遺産分割協議において、この違いがどのような影響を与えるのか、具体例を交えて教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
「法定相続人」と「相続人」は似ていますが、法律上の意味と使われ方に違いがあります。
まず、相続人は、被相続人(亡くなった人)の財産や権利義務を引き継ぐ人の総称です。遺言書で特定の人に財産を相続させると記載があれば、その人も相続人になります。つまり、相続人には法律で定められた人だけでなく、遺言によって指定された人も含まれます。
一方、法定相続人は、民法で定められた相続順位・範囲に基づき、自動的に相続する権利を持つ人を指します。例えば、配偶者や子、直系尊属(父母など)、兄弟姉妹がこれにあたります。養子縁組をした子も法定相続人に含まれますが、内縁関係や離婚した元配偶者は含まれません。
相続税の計算や基礎控除額は法定相続人の数で決まります。そのため、たとえ遺言で相続させると指定された人でも、法定相続人でなければ相続税の基礎控除にはカウントされません。また、遺産分割協議に参加できるのも、原則として法定相続人です。
例えば、子のいない夫婦で夫が亡くなった場合、妻と夫の両親が法定相続人になります。遺言で妻だけに全財産を渡すと書けば、妻は相続人ですが、両親は法定相続人として遺留分(最低限の取り分)を請求できます。このように、両者の違いは相続の実務に大きく関わります。
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相続人(法定相続人)
相続人(法定相続人)とは、民法で定められた相続権を持つ人のことを指します。被相続人が亡くなった際に、配偶者や子ども、親、兄弟姉妹などが法律上の順位に従って財産を相続する権利を持ちます。配偶者は常に相続人となり、子がいない場合は直系尊属(親や祖父母)、それもいない場合は兄弟姉妹が相続人になります。相続税の基礎控除額の計算や遺産分割の際に重要な概念であり、相続対策を検討する上で欠かせない要素となります。
相続人順位
相続人の順位とは、被相続人(亡くなった方)の財産を、法律上誰がどの順番で引き継ぐ権利を持つかを定めた制度です。日本の民法では、一定の優先順位に基づいて相続人が決まっており、上位の人がいる場合は下位の人に相続権は原則として発生しません。ただし、配偶者については特別で、順位に関係なく常に相続人になります。 まず、配偶者は常に相続人となります。その上で、配偶者とともに相続する「血族相続人(子や親、兄弟姉妹)」の順位は以下の通りです。 第1順位は子どもです。実子・養子・非嫡出子を含みます。子がすでに亡くなっている場合、その子(被相続人にとっての孫)が代わって相続する「代襲相続」が認められます。複数人いる場合は均等に分け合います。 第2順位は直系尊属、つまり父母や祖父母です。第1順位の相続人がいない場合に限り相続権を持ちます。両親が存命であれば通常は両親が相続し、すでに亡くなっていれば祖父母がその代わりになります。直系尊属には代襲相続は認められていません。 第3順位は兄弟姉妹です。第1順位にも第2順位にも相続人がいない場合に限り、兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その子である甥や姪が代襲相続人となることが可能です。ただし、甥や姪に対しては再代襲(孫甥など)は認められていません。 このように、相続順位は「子 → 親 → 兄弟姉妹」の順であり、上位の相続人がいる場合には下位の相続人には相続権がないという原則が適用されます。配偶者はこの順位に関係なく常に相続人となり、その割合や具体的な相続分は誰と一緒に相続するかによって異なります。 さらに実務上は、相続開始時に相続人がすでに亡くなっていたり、相続放棄をしていたりする場合もあるため、代襲相続や再代襲の可否、法定相続分の計算にも注意が必要です。相続人の範囲を正確に把握することは、遺産分割協議や相続税の申告、遺言書の効力確認などにおいて極めて重要です。
被相続人
被相続人とは、亡くなったことにより、その人の財産や権利義務が他の人に引き継がれる対象となる人のことです。つまり、相続が発生したときに、その資産の元々の持ち主だった人を指します。たとえば、父親が亡くなって子どもたちが財産を受け継ぐ場合、その父親が「被相続人」となります。相続は被相続人の死亡と同時に始まり、相続人は法律や遺言の内容にしたがって財産を引き継ぎます。資産運用や相続対策を考える際、この「被相続人」という概念はすべての出発点となる重要な言葉です。
直系尊属
直系尊属とは、自分から見て「直接上の世代」にあたる血縁関係のある人を指します。具体的には、父母、祖父母、曽祖父母などがこれに該当します。たとえば、自分の親や祖父母はすべて直系尊属ですが、叔父や伯父、兄姉などは含まれません。 法律や相続の分野では、この「直系尊属」という関係性が非常に重要です。たとえば、相続税の計算や贈与税の特例などで、直系尊属からの贈与であれば税金が軽くなる制度が用意されていることがあります。また、法定相続の順位や扶養義務などでも、直系尊属であるかどうかが判断の基準になることがあります。資産運用や相続対策を考えるうえで、家族の中の関係性を正確に理解することが大切であり、その基本となるのがこの直系尊属という考え方です。
養子縁組
養子縁組とは、血縁関係のない者同士が、法律上の親子関係を新たに結ぶ制度のことを指します。日本の民法では、養子縁組を行うことで、養子は実子と同じく戸籍上の子となり、相続権や扶養義務などの法的な権利と義務が発生します。 養子縁組には、親子の愛情や生活支援を目的とするケースもありますが、資産承継や相続対策のために活用されることも少なくありません。特に子どもがいない夫婦や、法定相続人以外に財産を引き継がせたい場合などに有効です。また、養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があり、前者は実親との関係が残るのに対し、後者は家庭裁判所の審判によって実親との関係が断たれます。資産運用や相続設計を行う際には、法的な親子関係の有無が大きく影響するため、養子縁組の活用は非常に重要な選択肢となります。
内縁関係(事実婚)
内縁関係(事実婚)とは、法律上の婚姻届を提出していないものの、社会的・実質的には夫婦として共同生活を営んでいる関係を指します。お互いに結婚の意思を持ち、継続的に同居し、家計や生活を共にしている場合、一定の法的効果が認められることがあります。裁判所は、その実態に基づいて、内縁関係の成立と効力を判断します。 たとえば、生活費の分担義務や内縁解消時の財産分与、慰謝料請求、さらには労災や生命保険における遺族補償の受給資格など、法律婚に準じた取り扱いを受ける場面もあります。また、健康保険の被扶養者や国民年金の第3号被保険者として認められる場合もあります。 しかし、内縁関係はあくまで法律上の「婚姻」ではないため、相続や税制上の扱いには明確な限界があります。内縁の配偶者には法定相続権がなく、遺産を受け取るには遺言や信託契約などによる明示的な指定が必要です。また、相続税における配偶者控除(最大1億6,000万円)や、所得税の配偶者控除・配偶者特別控除といった優遇措置も原則として適用されません。 このため、内縁関係にある当事者が安心して暮らし続けるには、生前からの明確な財産承継対策が不可欠です。公正証書遺言の作成、信託スキームの活用、生命保険金の指定などを通じて、遺産の受け渡しや税負担への備えを整えておくことが重要です。 なお、同居期間や関係の安定性、家計の一体性などが不十分な場合、内縁としての法的保護が否定されることもあり得るため、形式にとらわれない実質的な関係性の証明が重視されます。内縁関係の権利保全には、専門家の助言を受けながらの対応が望まれます。