貸株はやめたほうがいいと言われましたが何が問題でしょうか?
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2025/08/18 07:40
男性
60代
信用取引に関心があり調べています。ただ、貸株を使った取引はやめたほうがいいと知人に言われました。具体的に何が問題なのでしょうか
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
貸株は、保有している株式を証券会社に貸し出し、貸株料という金利収入を得る仕組みです。ただし、この取引には複数の注意点があります。まず、貸出中の株式はあなたの名義から外れるため、配当は「配当金相当額」という形で支払われ、通常の配当所得とは異なり雑所得として課税されます。これにより、配当控除や申告不要制度といった税制優遇が使えなくなり、税負担が増える場合があります。
さらに、株主名簿から外れることで株主優待や議決権を失いやすくなります。証券会社の自動返却サービスを利用していても、システムやタイミングのずれで権利を取りこぼすリスクがあります。株式分割や公開買付(TOB)などの企業イベントでも、貸出解除が間に合わず参加できない可能性があります。
カウンターパーティリスクも見逃せません。貸株中の株式は分別保管や投資者保護基金の対象外となる場合が多く、万一証券会社が破綻した場合には返却を受けられない恐れがあります。また、「いつでも返却可能」とされていても、実際には即時に戻らないケースがあり、急な売買やイベント対応の妨げになることもあります。
貸株料は多くの場合、年0.1%前後と低く、受け取れる金額は小さい一方で、失う可能性のあるメリットや被るリスクが相対的に大きくなりやすい点が問題です。さらに、貸した株式は他者の空売りに使われ、株価下落の要因となることもあります。NISA口座では原則として貸株が利用できず、雑所得としての計上も確定申告の手間を増やします。
こうした理由から、配当や優待、議決権を重視する長期保有株には不向きです。もし利用する場合は、短期保有や配当・優待を重視しない銘柄に限定し、イベントや権利確定前には貸出を停止するなど、ルールと管理を徹底することが不可欠です。
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関連する専門用語
貸株
貸株とは、投資家が保有している株式を証券会社に貸し出すこと。証券会社は貸し出しされた株式をまた別の投資家に貸し出す。投資家は証券会社から貸株金利を受け取ることができる。投資家は貸株中でも株式を自由に売買でき、長期保有している株式を有効利用できるというメリットがあるが、株主優待の継続保有特典は得ることができなくなり、貸株金利と配当相当額は雑所得扱いで総合課税の対象であり、場合によっては税が増額されたり控除を受けられなくなるというデメリットがある。また、NISA口座で保有している株式は貸株にできない。
配当(配当金)
配当とは、会社が得た利益の一部を株主に分配するお金のことをいいます。企業は利益を出したあと、その一部を将来の投資に使い、残った分を株主に還元することがあります。このときに支払われるお金が配当金です。株を持っていると、持ち株数に応じて定期的に配当金を受け取ることができます。多くの場合、年に1回または2回支払われ、企業によって金額や支払い時期は異なります。配当は企業からの「お礼」のようなもので、株を長く持ち続ける理由の一つになることがあります。
カウンターパーティリスク
カウンターパーティリスクとは、取引における相手方の金融機関(カウンターパーティ)が経営破綻するなどして取引が完結しないという恐れのこと。これは直接相手と取引する相対取引(対義語:取引所取引)において生じるリスクであり、このリスクを管理するためにカウンターパーティの選別や担保の差し入れをカウンターパーティに求めることができる。
雑所得
雑所得(ざつしょとく)とは、所得税法において定められた10種類の所得のうち、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得を指します。具体的には、公的年金や副業による収入、仮想通貨の売却益、FXの利益、非営業用貸金の利子などが該当します。 経費を差し引いた金額が課税対象となり、総合課税の対象となります。また、雑所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要になります。
配当控除
配当控除とは、上場企業や一部の非上場企業から受け取る配当金に対して適用される税額控除の制度です。日本では、配当金には通常約20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金が源泉徴収されますが、確定申告を行い「総合課税」を選択すると、配当控除を受けることで実際の税負担を軽減できます。 特に、所得税では配当金の最大10%(上場株式の場合)、住民税では最大2.8%が控除されるため、課税所得が一定水準以下の場合、総合課税を選ぶことで税負担が軽くなる可能性があります。ただし、所得が高い場合は累進課税により税率が上がるため、総合課税ではなく「申告分離課税」を選択したほうが有利になることもあります。どの課税方式を選ぶかは、個人の所得状況に応じて慎重に判断することが重要です。
TOB(株式公開買付)
特定の企業の株式を、市場取引ではなく公開の場で株主から直接買い付ける方法です。買付期間や価格、予定株数などを事前に公表し、投資家は提示条件を踏まえて売却を検討します。 通常、市場価格より高めに買付価格が設定されることで既存株主に売却を促すインセンティブが働き、買収成立を目指すのが一般的です。 買収後の経営方針や企業価値向上策などを明確に示すことで、投資家や市場の理解を得やすくなります。ただし、敵対的TOBの場合は経営陣や他の大株主との対立に発展することもあります。