相続が発生したとき、とりあえず限定承認をしておけば安心ですか?
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2025/09/08 09:09
男性
60代
親が亡くなり相続が発生したのですが、まだ財産の全体像を把握できていません。とりあえず限定承認をしておけば借金を背負わずに済むと聞きました。限定承認の仕組みや注意すべき点、また実際に手続きを行う際の負担について教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
限定承認をすれば、相続によって引き継ぐ負債の範囲を相続財産の中に限定できるため、借金を自分の預貯金や給与収入などから返済するリスクを防ぐことができます。
たとえば、プラスの財産が500万円、不動産が700万円、マイナスの借金が800万円ある場合、単純承認では相続人が自分の財産から300万円の借金を補てんしなければなりません。
しかし限定承認をすれば、プラスの1,200万円の範囲内で負債を精算し、相続人が自己資金を出す必要はありません。
ただし、この制度を利用するには家庭裁判所への「限定承認の申立て」が必要です。相続発生を知った日から3か月以内に、相続人全員で申立書と財産目録を提出しなければなりません。
財産目録には、現金・預貯金・不動産・株式などのプラス財産だけでなく、借入金や未払いの税金・医療費などのマイナス財産も記載する必要があります。財産調査を怠ると、申立てが認められなかったり、後日債権者とのトラブルに発展したりする可能性があります。
また、限定承認は相続人全員が共同で行う必要があるため、一人でも反対すると手続きが進められません。相続人間で意見が分かれた場合、相続放棄を選ばざるを得なくなるケースもあります。
さらに、限定承認を選んだ場合は、公告や債権者への弁済などの手続きが追加で発生するため、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することが一般的です。依頼費用はかかりますが、手続きの煩雑さを考えると現実的な選択といえます。
このように限定承認は「とりあえずやっておけば安心」という単純なものではなく、期限の厳しさ、相続人全員の合意、専門的な手続きといった条件が重なります。したがって、実際に検討する際は、相続財産の調査を早めに行い、弁護士や税理士などの専門家に相談して進めることが安全です。
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相続放棄
相続放棄とは、亡くなった人の財産を一切受け取らないという意思を家庭裁判所に申し立てて、正式に相続人の立場を放棄する手続きのことです。相続には、プラスの財産(預貯金や不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金や未払い金など)も含まれるため、全体を見て相続すると損になると判断した場合に選ばれることがあります。 相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとみなされるため、借金の返済義務も一切負わなくて済みます。ただし、相続があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があり、その期限を過ぎると原則として相続を受け入れたとみなされてしまいます。したがって、放棄を検討する場合は早めの判断と手続きが重要です。
財産目録
財産目録とは、自分や家族が所有している財産の内容を一覧にした書類のことです。現金や預金、不動産、有価証券(株式や債券)、自動車、貴金属などの資産のほか、住宅ローンや借金といった負債も含めて記載されます。遺言書に添付されたり、相続や贈与の際の準備資料として作成されたりすることが多く、遺族が財産の全体像を把握しやすくするために役立ちます。 資産運用の観点からも、自分の財産を整理し、どこに何があるかを明確にすることは、資産形成や老後の生活設計、相続対策などにおいて非常に重要です。財産目録を作っておくことで、将来のトラブルを未然に防ぎ、家族への安心にもつながります。
相続債務
相続債務とは、亡くなった人(被相続人)が生前に負っていた借金や未払い金など、金銭的な負債のことです。相続が発生すると、原則として相続人がその債務を引き継ぐことになります。これは預金や不動産などの財産と同じく、負の財産も相続の対象となるためです。 ただし、相続人には相続放棄や限定承認といった選択肢があり、負債の返済を回避したり、資産の範囲内でのみ返済する方法を取ることもできます。資産運用の観点では、相続債務の存在を事前に把握しておくことが、家計や投資計画への影響を最小限に抑えるために重要です。
限定承認
限定承認とは、相続人が引き継ぐ財産について、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産(借金など)を支払うことを条件に、相続を受ける方法のことです。つまり、相続によって得られる資産が借金を上回っている場合にはその差額を受け取ることができますが、もし借金が多くても、自分の財産を使ってまで返済する必要はありません。 この方法を使えば、相続することで損をするリスクを減らすことができます。ただし、限定承認を行うには、相続の開始を知ってから原則として3か月以内に、他の相続人全員と一緒に家庭裁判所に申立てをする必要があるため、手続きがやや複雑です。
相続財産
相続財産とは、被相続人(亡くなった方)が死亡時点で保有していた財産のうち、法律上相続の対象となるものを指します。 具体的には、現金や預貯金、不動産、株式、車、貴金属などのプラスの財産だけでなく、借金やローン、保証債務といったマイナスの財産も含まれます。 相続人は、これらの財産すべてを一括して引き継ぐ「単純承認」だけでなく、財産の範囲内で債務を引き継ぐ「限定承認」や、相続自体を放棄する「相続放棄」などの選択も可能です。 なお、生命保険金や死亡退職金など、一定の財産は「相続財産」に含まれず、相続税の計算上も特別な扱いになることがあります。 相続財産を正しく把握することは、遺産分割協議や相続税申告を円滑に進めるうえで、最初の重要なステップとなります。