量子コンピュータ関連銘柄はテンバガーが狙えると聞きましたが本当ですか?
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2025/10/27 09:46
男性
30代
最近「量子コンピュータ関連の株は将来大きく成長する」「テンバガー候補が多い」といった話題を耳にしました。ただ、技術的にも難しそうで、本当にそんなに大きなリターンを期待できるのか半信半疑です。どんな企業が有望とされているのか、実際に投資を検討しても良い分野なのかを知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
量子コンピュータ関連株は、長期的な成長余地が非常に大きい分野ですが、現時点ではまだ商用化の初期段階にあり、短期的な値動きは激しくリスクも高い投資対象です。技術革新が進めば巨大市場に化ける可能性はありますが、現状では実用化や収益化が限られており、慎重なスタンスが求められます。したがって、分野としての将来性は魅力的である一方で、投資する場合は「長期」「分散」「少額」を前提にすることが重要です。
現在の量子コンピュータ市場では、誤り耐性や安定動作といった技術的課題がまだ多く、実用レベルに到達している企業はほとんどありません。クラウド経由で試験的に利用できるサービスは増えていますが、まだ研究開発段階の技術が多く、利益を上げている企業はわずかです。ただし、政府や大手企業による研究投資は世界的に拡大しており、長期的には基幹技術として社会実装が進む可能性があります。
有望視される企業の中で、米国のIonQはトラップドイオン方式で先行しており、2025年第2四半期には売上が前年より大きく伸びましたが、依然として赤字が続いています。Rigetti Computingは超伝導方式で開発を進めており、36量子ビット機を発表するなど着実に成果を出しています。D-Wave Quantumはアニーリング型で欧州展開を加速していますが、売上は小規模で損失も拡大しています。いずれの企業も商用化までの道のりが長く、将来の成否は技術進展と市場開拓に大きく左右されます。
一方で、IBMやGoogle、Microsoft、Amazonといった巨大テック企業も量子クラウドや開発基盤の整備を進めています。これらは量子分野だけに依存しないため、安定的に成長を続ける可能性が高いといえます。また、量子冷却装置やレーザー、真空技術などを提供する周辺メーカーも、量子分野以外の収益源を持つためリスクを分散できます。テーマ型ETF(例えばDefiance Quantum ETFやVanEck Quantum Computing ETF)を通じて幅広く投資する方法もあります。
テンバガー(10倍株)を狙うという観点では、量子コンピュータ分野は夢がありますが、現実的にはまだ不確実性が高く、投資家の期待が先行している面があります。株価は決算や提携、政府資金のニュースで大きく動くため、短期での売買にはリスクが伴います。実際にIonQなどは好材料発表後に急騰・急落を繰り返しており、長期的な視野が不可欠です。
現実的な投資方法としては、量子専業企業を少額ずつ複数保有し、周辺産業や大手テックで全体を支える「分散型ポートフォリオ」が有効です。個別株を避けたい場合はETFで分散を図るのが安全です。決算ごとに売上・受注動向や研究の進展をチェックし、増資や赤字拡大による希薄化リスクにも注意する必要があります。
結論として、量子コンピュータ関連株は「短期で稼ぐテーマ」ではなく、「10年以上先を見据えたテクノロジー長期投資」として位置づけるべき分野です。リスクを理解し、少額・長期・分散の原則を守れる投資家にとっては、将来の成長に参加する価値があるテーマといえるでしょう。
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関連する専門用語
量子コンピュータ
量子コンピュータとは、量子力学の原理を利用して情報を処理する新しいタイプのコンピュータです。従来のコンピュータが「0」か「1」のどちらかで情報を表すビットを使うのに対し、量子コンピュータでは「0」と「1」を同時に表現できる「量子ビット(qubit)」を使用します。この特性により、複数の計算を並行して行うことが可能になり、従来のコンピュータでは膨大な時間がかかるような複雑な問題を高速で解くことが期待されています。 特に金融・資産運用の分野では、リスク分析、ポートフォリオの最適化、暗号解読、取引アルゴリズムの最適化などに応用が検討されています。ただし、実用化には技術的な課題が多く、現時点では研究・開発段階にあります。
テーマ型ETF
テーマ型ETFとは、特定の社会的・経済的テーマに関連する企業群に投資する上場投資信託(ETF)のことを指します。例えば、「脱炭素」「人工知能(AI)」「再生可能エネルギー」「半導体」「宇宙開発」など、将来の成長が期待される分野に焦点を当てて構成されています。通常のETFが株価指数全体(たとえば日経平均やS&P500)に連動するのに対し、テーマ型ETFは特定のトレンドや分野を狙って投資を行う点が特徴です。 そのため、将来の成長性を享受できる可能性がある一方で、特定のテーマに集中する分リスクも高くなります。投資初心者にとっては、関心のある分野を通じて投資を学びやすい一方、市場動向やテーマの流行に左右されやすい点に注意が必要です。
テンバガー
テンバガーとは、株価が購入時の10倍にまで上昇した銘柄を指す投資用語です。アメリカの著名なファンドマネージャー、ピーター・リンチが著書で使ったことで広まり、野球用語の「ツーベース(two-bagger)」や「ホームラン(four-bagger)」になぞらえて「10倍打(ten-bagger)」と表現されました。 テンバガーとなる銘柄は、しばしば小型株や新興企業など、市場からまだ十分に注目されていない段階で投資された企業が、技術革新や市場拡大によって急成長する中で生まれます。ただし、大型株でも長期的に大きく成長すればテンバガーとなる可能性はあります。 狙って得られる確率は非常に低く、高いリスク許容度と長期目線での投資判断が求められます。それでもテンバガーは、多くの投資家にとって「資産形成の夢」として象徴的な存在であり、成長企業を見極める力を磨くことの重要性を示す概念でもあります。
ポートフォリオ
ポートフォリオとは、資産運用における投資対象の組み合わせを指します。分散投資を目的として、株式、債券、不動産、オルタナティブ資産などの異なる資産クラスを適切な比率で構成します。投資家のリスク許容度や目標に応じてポートフォリオを設計し、リスクとリターンのバランスを最適化します。また、運用期間中に市場状況が変化した場合には、リバランスを通じて当初の配分比率を維持します。ポートフォリオ管理は、リスク管理の重要な手法です。
希薄化(ダイリューション)
希薄化(ダイリューション)とは、企業が新株発行やストックオプションの行使、転換社債の株式転換などを行った結果、発行済株式数が増加し、既存株主が保有する株式の「持ち分比率」や1株当たり指標(EPS・BPS・配当など)が相対的に低下する現象を指します。たとえば、発行済株式が1,000万株の会社で100万株を追加発行すると、株数は1,100万株に増え、従来10%を保有していた株主の持株比率はおよそ9.1%へ下がります。この比率低下だけでなく、利益や純資産が同じまま株数だけ増えるため、1株当たり利益(EPS)や1株当たり純資産(BPS)も薄まる点が既存株主にとっての実質的な影響です。 希薄化は、資金調達やM&A対価の支払いなど経営上の目的で避けられない場合がありますが、次のような視点で注意が必要です。 発行規模と発行価格 既存株主に与える希薄化インパクトは「何株・いくらで」発行するかで大きく変わります。発行株数が多い、あるいは発行価格が市場より著しく低い場合は希薄化が急激に進みやすいです。 資金使途とリターン 調達資金が成長投資や財務改善に使われ、中長期で収益拡大が見込めるなら、希薄化を上回る株価上昇につながる可能性があります。逆に、明確なリターンが見込めない増資は株価を長期的に押し下げることがあります。 潜在株式の規模 ストックオプションや転換社債など、まだ株式化していない潜在株式も将来の希薄化要因です。有価証券報告書の「潜在株式数」や平均行使価格を把握し、完全希薄化後EPSでバリュエーションを確認することが重要です。 ロックアップ・売却制限 発行先にロックアップ(一定期間の売却禁止)が設定されているかで、実際に市場へ売り圧力が出るタイミングが異なります。解除時期が近いと、株価の上値を抑えるオーバーハング要因になります。 まとめると、希薄化は発行済株式数の増加に伴う既存株主の持ち分低下と1株当たり価値の減少を意味します。投資判断を行う際は、新株発行の規模・価格・資金使途に加え、潜在株式の存在やロックアップ条件まで確認し、将来のリターンとリスクを総合的に見極めることが欠かせません。





