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退職金の運用は、元本保証だけで問題ないですか?

退職金の運用は、元本保証だけで問題ないですか?

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2025/10/20 09:04

退職金
退職金

男性

60代

question

リスクを避けたいため、退職金は元本保証で安全に運用したいと考えています。定期預金や個人向け国債など安全性の高い選択肢もありますが、インフレで実質的な価値が減る心配もあります。老後資金としてどの程度リスクを取るべきか、またどのような運用バランスが適切なのかを知りたいです。


回答

佐々木 辰

株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長

退職金の運用を元本保証のみに限定するのは、安全そうに見えても老後資金の持続性という観点ではリスクがあります。特に長生きやインフレの影響を考えると、預金や個人向け国債などの安全資産だけでは資金の実質的な価値が減少してしまう可能性があります。元本保証商品は価格が減らない反面、金利が低く、物価上昇に追いつけない点が最大の弱点です。

例えば物価が年2%上昇すると、20年後には購買力が約3割も目減りします。退職後は給与収入がないため、こうした実質的な目減りが生活に直接響きます。安全性を重視するのは大切ですが、元本保証だけでは資産を守り切れない可能性があるため、資産を時間軸に分けて運用する考え方が有効です。

まず、5年以内に使う予定の生活費分は普通預金や定期預金、個人向け国債などの安全資産で確保します。6〜15年先に使う資金は債券や債券ファンドなどで運用し、値動きを抑えながら金利収入を得る形にします。そして15年以上先に使う資金には、少しでもインフレに強い世界株式インデックスやバランスファンドを組み入れて、長期的な成長を確保します。

最初の数年分の生活費を安全資産で確保し、相場が安定してから成長資産を取り崩す設計にすれば、資産寿命を延ばすことができます。また、年に一度のリバランスで資産配分を保ち、上昇した資産を利益確定して生活資金に回すと、感情に左右されない安定した運用が可能です。

さらに、新NISAを活用することで、配当や売却益を非課税で運用できます。老後資金のうち長期部分を新NISAで世界株式やバランスファンドに充てることで、税負担を減らしながら成長の機会を得られます。

たとえば退職金が2,000万円あり、年金で不足する分が年120万円なら、まず5年分の600万円を元本保証商品に置き、残りを債券・株式で分散運用します。安全資産を基盤にしつつ、リスク資産を少し取り入れて、「運用しながら取り崩す」という考えを持ってみてはいかがでしょうか。

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関連する専門用語

元本保証

元本保証とは、投資や預金において、満期まで保有すれば最低でも投資した元本が保証される仕組みを指します。銀行預金や一部の保険商品などが該当し、元本が減るリスクを抑えられるため、安全性を重視する人に向いています。しかし、元本保証がある商品は一般的に利回りが低く、インフレによる実質的な購買力の低下を考慮する必要があります。

実質金利

実質金利とは、名目金利からインフレ率を差し引いた後の金利を指します。この金利は、資金の貸借や投資の実際の収益性を測るための重要な指標であり、インフレの影響を考慮に入れた金利の実態を示します。名目金利が投資やローンの表面的な利率であるのに対し、実質金利はその金利から物価上昇の影響を除いた純粋な利益の率を表しています。 実質金利が正の場合、投資のリターンはインフレ率を上回っていることを意味し、投資家の購買力は増加します。逆に、実質金利が負の場合には、投資のリターンがインフレ率に追いついていないため、時間の経過と共に購買力が減少します。これは、実際の利益が期待ほど高くないことを示しており、投資や貯蓄の実質的な価値が減少している状態です。 投資家は実質金利を用いて、異なる金融商品や投資案件の収益性を比較し、インフレの影響を考慮したうえで最も効果的な投資選択を行うことができます。また、中央銀行は実質金利を金融政策の設定において重要な指標として利用し、経済成長や物価安定の目標を支えるための政策利率を調整する際の参考にします。 実質金利の動向は経済全体の健全性を示すバロメーターともなり、経済の過熱や不況のサインを察知する手がかりとなるため、経済分析において非常に重要な役割を果たします。

安全資産

安全資産とは、価格変動が少なく、元本の減少リスクが低い資産のことを指す。代表的なものとして、銀行預金、国債、定期預金、MMF(マネーマーケットファンド)などがある。 これらの資産はリスクが低いため、資産の一部を安全資産に振り分けることで、ポートフォリオ全体のリスクを抑える役割を果たす。特に、短期間で使用する予定の資金や、生活費の予備資金として適している。 インフレの影響を受けるため、長期的に資産を増やす目的ではリスク資産と併用することが一般的である。

インデックス

インデックス(Index)は、市場の動きを把握するための重要な指標です。複数の銘柄を一定の基準で組み合わせることで、市場全体や特定分野の値動きを分かりやすく数値化しています。 代表的なものには、日本の株式市場を代表する日経平均株価やTOPIX、米国市場の代表格であるS&P500などがあります。これらのインデックスは、投資信託などの運用成果を評価する際の基準として広く活用されており、特にパッシブ運用(インデックス運用)では、この指標と同じような値動きを実現することを目標としています。

バランスファンド

バランスファンドとは、株式と債券などの固定収入資産を組み合わせた投資ファンドです。このタイプのファンドは、成長の機会を追求する一方で、リスクを分散し安定した収益を目指します。投資の比率は通常、ファンドの投資方針に基づき、アクティブに管理されます。 バランスファンドの主な魅力は、一つのファンド内で異なる資産クラスへの露出を確保できる点にあります。市場の変動に対する耐性を高めるために、株式の成長性と債券の安定性を兼ね備えています。このため、市場の状況に応じて、ファンドマネージャーは資産配分を調整し、リスクを管理しながらリターンを最適化することが可能です。 投資家にとって、バランスファンドは多様な投資ポートフォリオを持つことなく、一定のリバランスを通じて市場の機会を捉えつつ、下落リスクを抑制できる手段を提供します。特に長期投資や退職資金の積立に適しており、安定した運用成績を求める投資家に人気があります。

リバランス

リバランスとは、ポートフォリオを構築した後、市場の変動によって変化した資産配分比率を当初設定した目標比率に戻す投資手法です。 具体的には、値上がりした資産や銘柄を売却し、値下がりした資産や銘柄を買い増すことで、ポートフォリオ全体の資産構成比率を維持します。これは過剰なリスクを回避し、ポートフォリオの安定性を保つためのリスク管理手法として、定期的に実施されます。 例えば、株式が上昇して目標比率を超えた場合、その一部を売却して債券や現金に再配分するといった調整を行います。なお、近年では自動リバランス機能を提供する投資サービスも登場しています。

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