退職金の相場はいくら?5年・10年・20年・30年・定年時の目安と手取り額を紹介

退職金の相場はいくら?5年・10年・20年・30年・定年時の目安と手取り額を紹介
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公開:
2025.11.19
更新:
2026.02.19
「退職金はいくらもらえるのか」「手取りはどの程度なのか」は、定年が近い人だけでなく、転職や早期退職を考える人にとっても重要なテーマです。ところが、勤続年数や大企業・中小企業の違い、自己都合か会社都合かによって相場は大きく変わり、「自分の金額が妥当か」「老後資金としてどこまであてにしてよいか」が分かりにくいのが実情です。この記事では、公的データに基づく勤続年数×企業規模別の退職金相場と、自社規程・企業年金の確認ポイント、退職金の税金・受け取り方までを整理し、あなたのケースでの目安と注意点を具体的に解説します。
目次
ひと目で分かる!勤続年数×企業規模別の退職金相場早見表
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」と東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」のデータをもとに、大卒・自己都合退職(定年のみ定年退職)をベースとした退職金相場の目安を一覧にまとめました(単位:万円)。
| 勤続年数 | 大企業(大卒) | 中小企業(大卒) |
|---|---|---|
| 5年(自己都合退職) | 63万円 | 43万円 |
| 10年(自己都合退職) | 182万円 | 89万円 |
| 20年(自己都合退職) | 762万円 | 290万円 |
| 30年(自己都合退職) | 1,772万円 | 654万円 |
| 定年(60歳前後) | 2,858万円 | 1,149万円 |
高卒の場合は、同じ勤続年数でも上記よりやや低い水準となるのが一般的です。続いて、勤続年数ごとの退職金相場を、詳細にみていきましょう。
勤続5年の退職金相場【企業規模・離職理由別】
勤続5年での退職金は、企業規模や退職理由によって大きく異なります。
| 企業規模・学歴 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
|---|---|---|
| 大企業(大卒) | 63万円 | 121万円 |
| 大企業(高卒) | 44万円 | 76万円 |
| 中小企業(大卒) | 43万円 | 57万円 |
| 中小企業(高卒) | 39万円 | 51万円 |
厚生労働省の調査によると、大卒で大企業に5年間勤めた場合の退職金相場は63万円~121万円程度となっています。東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」によると、中小企業における勤続5年の退職金は、大卒で43~57万円程度が相場です。
- 中小企業の場合、退職金額は大企業よりも少ない傾向にあり、企業によっては退職金制度がないケースも珍しくありません。また、勤続5年未満では退職金が支給されない企業も多く、最低勤続年数の規定を確認することが重要です。
なお、中小企業では退職金制度そのものを設けていない企業も多く、事前に就業規則で確認しておくことが大切です。
勤続10年の退職金相場【企業規模・離職理由別】
勤続10年での退職は、転職市場においても一定のキャリアを築いた時期です。
| 企業規模・学歴 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
|---|---|---|
| 大企業(大卒) | 182万円 | 305万円 |
| 大企業(高卒) | 131万円 | 191万円 |
| 中小企業(大卒) | 89万円 | 115万円 |
| 中小企業(高卒) | 75万円 | 101万円 |
大企業における勤続10年の自己都合退職金は、大卒で182万~305万円程度が相場となっています。勤続5年の63万円と比較すると、約3倍近い金額となっており、勤続年数による加算効果が顕著に表れています。
- また、大企業では基本給自体も勤続10年で昇給している場合が多く、退職金の基礎となる金額も増えていることが、支給額の増加につながっています。
中小企業における勤続10年の自己都合退職金は、大卒で89万円~115万円程度が相場です。大企業と比較すると半分程度の水準となっていますが、勤続5年時点と比べると約2倍に増加しています。
勤続20年の退職金相場【企業規模・離職理由別】
勤続20年は、退職金制度において重要な節目となります。
| 企業規模・学歴 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
|---|---|---|
| 大企業(大卒) | 762万円 | 1,092万円 |
| 大企業(高卒) | 524万円 | 618万円 |
| 中小企業(大卒) | 290万円 | 362万円 |
| 中小企業(高卒) | 249万円 | 317万円 |
大企業における勤続20年の自己都合退職金は、大卒で762万円〜1,092万円程度が相場となっています。中小企業における勤続20年の自己都合退職金は、大卒で290万~362万円程度が相場です。
- さらに、勤続20年を超えると退職所得控除の増加ペースが加速するため、できるだけ長く勤続することが税制面では有利となります。転職を検討する際は、この20年という節目を意識した計画が重要です。
勤続30年の退職金相場【企業規模・離職理由別】
勤続30年は、定年退職に近い時期であり、退職金が充実する時期の一つです。
| 企業規模・学歴 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
|---|---|---|
| 大企業(大卒) | 1,772万円 | 2,054万円 |
| 大企業(高卒) | 1,316万円 | 1,451万円 |
| 中小企業(大卒) | 654万円 | 772万円 |
| 中小企業(高卒) | 479万円 | 602万円 |
大企業における勤続30年の自己都合退職金は、大卒で1,772万円〜2,054万円程度が相場となっています。中小企業における勤続30年の退職金は、大卒で654万~772万円程度が相場です。
定年まで勤務した場合の退職金相場【企業規模・離職理由別】
定年まで勤務した場合の退職金は、長年の勤続に対する企業からの評価が最も高く反映される時期です。
| 企業規模・学歴 | 定年退職 |
|---|---|
| 大企業・大卒 | 2,858万円 |
| 大企業・高卒 | 2,162万円 |
| 中小企業・大卒 | 1,149万円 |
| 中小企業・高卒 | 994万円 |
大企業の場合、高卒者と大卒者の両方で2,000万円を超えます。中小企業においても、大卒者の場合は1,000万円を超えるデータとなりました。
- 定年退職の年齢は企業によって異なりますが、従来の60歳定年から65歳定年へと移行する企業が増えています。また、一部の企業では70歳までの雇用延長を実施しているケースもあり、勤続年数の考え方も変化しつつあります。
大企業では退職一時金に加えて、確定給付企業年金(DB)や企業型確定拠出年金(DC)を併用しているケースが多く、総額での受取額がさらに増加する可能性があります。
業種別の退職金相場
東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」によると、業種によって退職金の相場は大きく異なります。
最も高い金融・保険業と最も低い宿泊・飲食サービス業では、3倍以上の差が生じています。
金融・保険業界
金融・保険業界の退職金相場は、全業種の中で最も高い水準となっています。中小企業でも大学卒で約1,940万円、高校卒で約1,497万円と、他業種の大企業に匹敵する金額が支給されています。
この背景には、金融業界特有の事情があります。金融機関では顧客との長期的な信頼関係が重要であり、従業員の定着率を高める必要があるためです。また、金融商品の取り扱いには高度な知識と資格が必要であり、人材育成に多額の投資を行っていることも、手厚い退職金につながっています。
製造業界
製造業界の退職金相場は、大学卒で約1,108万円、高校卒で約1,027万円と、全業種の平均的な水準となっています。日本の基幹産業として長い歴史を持つ製造業では、終身雇用を前提とした退職金制度が確立されているのが特徴です。
特に大手製造業では、技術者や熟練工を大切にする文化があり、現場で長年働いた従業員には手厚い退職金が支給されます。
また、製造業では企業年金制度(DB)を採用している企業が多く、退職後も安定した収入を確保できる仕組みが整っています。技術の継承という観点から、退職後も技術指導員として再雇用されるケースも多く、退職金に加えて継続的な収入を得られる可能性もあります。
建設業界
建設業界の退職金相場は、大学卒で約930万円、高校卒で約991万円と、珍しく高校卒のほうが高い傾向があります。建設業界では現場経験が重視され、早くから実務に携わる高校卒の従業員が、技術や資格の面で優位に立つことが多いためです。
建設業界特有の制度として、建設業退職金共済(建退共)があります。この制度は、建設現場で働く労働者が事業主を変わっても、退職金を積み立て続けられる仕組みです。
その他業種比較
その他の業種では、情報通信業、卸売・小売業、サービス業など、それぞれ特徴的な退職金相場となっています。卸売・小売業では、大学卒で約1,239万円と比較的高い水準ですが、これは大手商社や専門商社が平均を押し上げている影響があります。
一方、宿泊・飲食サービス業や生活関連サービス業では、退職金制度そのものがない企業も多く、業界全体の相場が低くなっています。IT業界などの新興産業では、従来型の退職金制度ではなく、ストックオプションや確定拠出年金(DC)を中心とした制度設計が増えています。
業種選択は生涯賃金に大きく影響するため、就職や転職を考える際には、給与だけでなく退職金制度も含めて総合的に判断することが重要といえるでしょう。
税引き後の退職金の手取額早見表
退職金は「額面(税引き前)」から必ず税金が引かれるとは限りません。勤続年数に応じた「退職所得控除」以内なら非課税となり、基本的に額面=手取りになります。
一方、控除を超えた部分は退職所得として課税対象となるため、同じ額面でも勤続年数が長いほど手取りが増えやすい点が特徴です。以下は、添付画像の数値をもとにした税引き後の手取り額の早見表です(単位:万円)。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 額面500 | 額面1,000 | 額面1,200 | 額面1,400 | 額面1,600 | 額面1,800 | 額面2,000 | 額面2,500 | 額面3,000 | 額面3,500 | 額面4,000 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 15 | 600 | 500 | 969 | 1,149 | 1,321 | 1,491 | 1,661 | 1,830 | 2,241 | 2,632 | 3,023 | 3,414 |
| 20 | 800 | 500 | 984 | 1,169 | 1,349 | 1,521 | 1,691 | 1,861 | 2,280 | 2,676 | 3,066 | 3,457 |
| 25 | 1,150 | 500 | 1,000 | 1,196 | 1,381 | 1,564 | 1,744 | 1,914 | 2,338 | 2,752 | 3,143 | 3,534 |
| 30 | 1,500 | 500 | 1,000 | 1,200 | 1,400 | 1,592 | 1,777 | 1,959 | 2,391 | 2,813 | 3,219 | 3,610 |
| 35 | 1,850 | 500 | 1,000 | 1,200 | 1,400 | 1,600 | 1,800 | 1,988 | 2,444 | 2,868 | 3,288 | 3,687 |
| 40 | 2,200 | 500 | 1,000 | 1,200 | 1,400 | 1,600 | 1,800 | 2,000 | 2,477 | 2,921 | 3,345 | 3,763 |
| 45 | 2,550 | 500 | 1,000 | 1,200 | 1,400 | 1,600 | 1,800 | 2,000 | 2,500 | 2,964 | 3,399 | 3,822 |
この表は、横軸が税引き前の退職金(額面)、縦軸が勤続年数で、交点の数値が税引き後の手取り額です。たとえば、額面3,000万円の場合、勤続15年では手取り2,632万円、勤続40年では2,921万円となり、勤続年数が長いほど控除が厚くなり手取りが増えています。
ポイントは、各行にある退職所得控除額です。原則として、額面がこの控除額以下に収まる範囲では退職金に課税されにくく、表でも「500万円は全行で手取り500万円」「勤続30年なら額面1,400万円まで手取り1,400万円」のように、額面=手取りになっている箇所があります。
逆に控除額を超えた部分から課税が始まるため、同じ額面でも勤続年数が短いほど手取りの目減りが大きくなります。
- なお、実際の税額は、退職金の受け取り方(一時金か年金か)、他の所得状況、住民税の計算タイミングなどでも変動し得ます。早見表は「目安」として使い、最終的には会社から交付される源泉徴収票や、退職金規程・支給明細で確認すると確実です。
退職金制度の基本知識と代表的な種類
退職金は、長年の勤務に対する功労金として支給される重要な制度ですが、すべての企業に導入が義務付けられているわけではありません。厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、退職金制度がある企業の割合は全体の74.9%となっており、4社に1社は退職金制度を設けていないのが現状です。
企業規模別にみると、従業員1,000人以上の大企業では90.1%が退職金制度を導入している一方、30〜99人の中小企業では70.1%にとどまっています。このように、企業規模が大きくなるほど退職金制度の導入率が高くなる傾向があることを理解しておきましょう。
| 制度名 | 概要 | 決まり方(主な決定要因) | リスク負担 |
|---|---|---|---|
| 退職一時金制度 | 退職時にまとまった金額を一括で受け取る制度 | 退職金規程に基づき、勤続年数・退職時の基本給・役職などで決定 | 記載なし(制度説明上は企業側設計) |
| 企業年金制度(DB)確定給付企業年金 | 企業が従業員に約束した金額を退職時に支給する制度 | あらかじめ受取額が決まっている(企業が給付を約束) | 企業が運用責任(従業員は運用リスクを負わない) |
| 確定拠出年金(DC)企業型確定拠出年金 | 企業が掛金を拠出し、従業員自身が運用する制度 | 掛金は企業が拠出、給付額は運用成果次第 | 従業員が運用リスク |
| 中小企業退職金共済(中退共) | 中小企業が独自に退職金制度を設けにくい場合のための制度 | 記載なし(制度説明では掛金拠出型) | 運用は共済機構(企業は制度運営負担を軽減) |
なお、退職給付と退職金の違いに関してはこちらのQ&Aを参考にしてみてください。
退職一時金制度
退職一時金制度は、退職時にまとまった金額を一括で受け取る制度です。企業が社内で積み立てた資金から支給されるため、企業の財務状況に左右されにくいという特徴があります。
支給額は退職金規程に基づいて計算され、勤続年数や退職時の基本給、役職などによって決定されます。税制面では「退職所得」として扱われ、退職所得控除が適用されるため、税負担が軽減されるメリットがあるのも特徴的です。
企業年金制度(DB)
確定給付企業年金(DB:Defined Benefit)は、企業が従業員に約束した金額を退職時に支給する制度です。資産の運用責任は企業側が負うため、従業員は運用リスクを負わずに済みます。
受取方法は「一時金」「年金」「併用」から選択でき、ライフプランに合わせて柔軟に対応できるのが特徴です。あらかじめ受取額が決まっているため、将来の資金計画が立てやすいというメリットもあります。
確定拠出年金(DC)
企業型確定拠出年金(DC:Defined Contribution)は、企業が掛金を拠出し、従業員自身が運用を行う制度です。運用成果によって将来受け取る金額が変動するため、従業員が運用リスクを負うことになります。
掛金の運用益は非課税となり、受取時にも税制優遇が受けられるため、効率的な資産形成が可能です。転職時には積立金を移管できる「ポータビリティ」があることも、現代の働き方に適した特徴といえるでしょう。
DBと企業型DCに関しては、こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。
中小企業退職金共済
中小企業退職金共済(中退共)は、独自に退職金制度を設けることが困難な中小企業のために設けられた制度です。企業が掛金を拠出し、勤労者退職金共済機構が資産管理・運用を行います。
掛金は全額損金算入でき、新規加入時には国から助成金が受けられるなど、中小企業にとってメリットの大きい制度となっています。退職時には、共済機構から直接従業員に退職金が支払われる仕組みです。
中小企業退職金共済に関しては、こちらの記事で解説しています。あわせて参考にしてみてください。
退職金の計算方法は企業ごとに異なる
退職金の計算方法は企業によって異なりますが、主にポイント制、基本給連動型、定額制の3つの方式が採用されています。
どの計算方法を採用しているかは、就業規則や退職金規程で確認できます。自社の制度を理解しておくことで、将来受け取れる退職金の目安を把握でき、ライフプランの設計にも役立つでしょう。
ポイント制:人事評価が軸になる制度
ポイント制は、勤続年数、職能資格、人事評価などを点数化し、累積ポイントに単価を掛けて退職金を算出する方法です。成果主義的な要素を取り入れやすく、従業員の貢献度を公平に評価できることから、多くの企業で採用されています。
一般的な計算式は「退職金=累積ポイント×ポイント単価×支給率」となります。たとえば、勤続ポイントが年間25ポイント、役職ポイントが課長で年間30ポイント、評価ポイントがA評価で年間10ポイントといった具合に加算されていきます。
- 30年勤続で累積1,500ポイント、ポイント単価1万円、支給率100%の場合、退職金は1,500万円となります。この方式のメリットは、透明性が高く、従業員が自分の退職金を予測しやすいことです。また、人事評価が退職金に反映されるため、モチベーション向上にもつながります。
基本給連動型:退職時の基本給がベースになる制度
基本給連動型は、退職時の基本給に勤続年数に応じた支給率を掛けて計算する伝統的な方法です。「退職金=退職時基本給×勤続年数別支給率」という単純な計算式で、中小企業を中心に広く採用されています。
たとえば、退職時の基本給が40万円、勤続30年の支給率が40ヶ月分の場合、退職金は1,600万円となります。勤続年数が長くなるほど支給率も上がり、20年で20ヶ月分、30年で40ヶ月分、35年で45ヶ月分といった設定が一般的です。
この方式の特徴は、昇給が退職金に直接反映されることです。定期昇給や昇進による基本給の上昇が、そのまま退職金の増加につながるため、長期勤続のインセンティブとなります。
定額制:勤続年数に応じて退職金を決定する制度
定額制は、勤続年数ごとに退職金額を定額で定める最もシンプルな方法です。「勤続10年で300万円、20年で800万円、30年で1,500万円」といった形で、あらかじめ金額が決まっているため、従業員にとって分かりやすい制度となっています。
中小企業退職金共済(中退共)も、基本的には定額制の考え方です。掛金月額と納付月数によって退職金額が決まる仕組みで、掛金月額2万円を30年間納付した場合、約870万円の退職金が支給されます。
定額制のメリットは、企業の退職金債務が明確な点です。将来の支払い額が確定しているため、資金計画が立てやすく、中小企業にとって運用しやすい制度といえるでしょう。
退職金をもらった翌年の税金に関しては、こちらのQ&Aをご覧ください。
自分はいくら退職金を受け取れるのかを確認する方法
先ほどの早見表は「日本全体の平均的な目安」にすぎません。実際にあなたが受け取れる退職金は、勤続年数・職種・等級・退職理由・会社ごとの制度設計によって大きく変わります。
就業規則・退職金規程から「自社ルール」を把握する
最初の一歩は、自分の会社にどんな退職金制度があるかを確認することです。多くの企業では、以下のような資料のどこかに退職金のルールが記載されています。
退職金に関する社内資料
- 就業規則
- 退職金規程・賃金規程
- 人事部が配布している人事制度・報酬制度のガイド
就業規則や退職金規程では、まず退職金制度そのものの有無と、正社員のみが対象なのか、契約社員や嘱託社員も含まれるのかといった対象者区分を確認します。あわせて、退職金の支給方式(ポイント制・基本給連動型・定額制など)や、勤続年数・等級ごとにどのような支給係数やポイントが設定されているかも重要なチェックポイントです。
規程を読んでもよく分からない場合は、人事部・総務部に「自分の場合の見込み額や計算方法」を聞いてしまうのが一番早いです。最近はイントラネットにシミュレーションシートや制度説明のPDFが置かれている会社も多いので、社内ポータルも合わせて確認してみましょう。
退職金は、金額だけでなく「いつ受け取れるのか」も重要です。詳しくは、こちらのQ&Aを参考にしてみてください。
企業年金・退職給付制度の「上乗せ分」を確認する
退職金といっても、一時金だけでなく「企業年金」で上乗せされているケースがあります。自分の会社で次のような制度がないかを確認しておきましょう。
企業年金・退職給付制度の「上乗せ分」
- 確定給付企業年金(DB)
- 確定拠出年金(企業型DC)
- 厚生年金基金など
企業年金の内容を確認するときは、まず退職一時金と企業年金が別々に支給されるのか、それとも一体として設計されているのかを押さえることが大切です。あわせて、企業年金の受け取り方法として、一時金・年金形式・その併用のいずれを選べるのかも重要なポイントになります。
企業年金の有無や内容は、入社時にもらったパンフレットや、年に一度届く「残高通知」「加入者向けのお知らせ」に書かれているため、忘れずにチェックしましょう。
退職金の受取方法には、一時金受取り、年金受取り、併用受取りの3つがあり、それぞれ税制上の取り扱いが異なります。損をしない退職金の受け取り方法について、こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。
退職金を受け取ったときの確定申告
退職金については、原則として確定申告は不要です。「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出することで、適正な源泉徴収が行われ、課税関係が完結するためです。
申告書を提出していない場合は、退職金の20.42%が源泉徴収されるため、確定申告により還付を受ける必要があります。
また、同じ年に複数の会社から退職金を受け取った場合や、退職所得控除額の計算に誤りがあった場合も確定申告が必要です。年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合は、確定申告により源泉徴収税額の還付を受けられる可能性があります。
なお、「退職所得の受給に関する申告書」の書き方や手続き時の注意点などは、こちらの記事で解説しています。あわせて参考にしてみてください。
退職金以外の老後資産形成と運用方法
退職金だけでは老後資金が不足する可能性が高まっている現在、自助努力による資産形成が不可欠です。
iDeCo、新NISA、個人年金保険など、税制優遇を受けながら資産形成できる選択肢が増えています。これらの制度を効果的に活用することで、退職金を補完する老後資金を計画的に準備することが可能です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金準備に特化しており、税制優遇が手厚い制度です。掛金が全額所得控除、運用益が非課税、受取時も退職所得控除または公的年金等控除が適用されるという、3段階の税制メリットがあります。
- 拠出した掛金が全額所得控除の対象となるため、現役時代の税負担を軽減しながら老後資金の用意を進められます。年収500万円の会社員が月額23,000円を拠出した場合、年間約55,000円の節税となります。30年間では165万円の節税効果があり、これだけでも大きなメリットといえるでしょう。
ただし、60歳まで原則引き出しができないという制約があります。また、退職金と同じ年に一時金で受け取ると、退職所得控除を共有することになるため、受取時期の調整が必要です。企業の退職金とiDeCoの受取りを5年以上空けることで、それぞれで控除を最大限活用できます(2026年1月1日以降に支払われる退職金は10年)。
iDeCoに関しては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
また、退職金とiDeCoの一時金での受け取りが退職所得控除に与える影響については、こちらのQ&Aをご覧ください。
NISA(少額投資非課税制度)を活用する
2024年から始まった新NISAは、非課税保有期間が無期限化され、生涯非課税限度額が1,800万円まで拡大されました。年間投資枠は、つみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円の合計360万円となり、老後資金準備を進めるうえで強力なツールとなっています。
- 新NISAの最大の特徴は、売却した分の非課税枠が翌年復活することです。これにより、ライフステージに応じた柔軟な資産管理が可能となりました。退職前は積立投資で資産を増やし、退職後は必要に応じて取り崩すという、一生涯使える制度設計となっています。
つみたて投資枠と成長投資枠の使い分けも重要です。長期的な資産形成にはつみたて投資枠で投資信託を積み立て、まとまった資金がある場合は成長投資枠で個別株やETFに投資するという戦略が効果的でしょう。
新NISAに関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
個人年金保険
個人年金保険は、保険会社と契約して老後の年金を準備する商品で、確実性を重視する人に適しています。個人年金保険料控除により、年間最大4万円(所得税)、2.8万円(住民税)の所得控除が受けられるメリットもあります。
定額個人年金では、契約時に将来の受取額が確定するため、計画的な老後設計が可能です。30歳から月2万円を30年間払い込み、65歳から10年確定年金で受け取る場合、払込総額720万円に対して、受取総額は約800万円となる商品もあります。
変額個人年金は、運用実績により受取額が変動しますが、インフレ対応力があります。ただし、元本割れリスクもあるため、リスク許容度に応じた選択が必要です。最近では、最低保証付きの変額年金も登場し、下振れリスクを抑えながら上振れメリットを享受できる商品も増えています。
個人年金保険に関しては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
退職金運用プラン
多くの金融機関が、退職金受取者向けの特別な運用プランを提供しています。「退職金専用定期預金」をはじめとしたプランは、通常より有利な条件で資産運用を始められるため、効果的に活用することで退職金を増やすことが可能です。
投資信託とのセットプランも人気です。退職金の半分を定期預金、半分を投資信託に振り分けることで、定期預金部分に特別金利が適用されます。リスクを抑えながら、資産運用をスタートできる仕組みとなっており、投資初心者にも取り組みやすいプランです。
退職金専用の定期預金に関しては、注意点もあります。詳細は、こちらの記事をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
2024.08.15
男性
“転職先に企業型DCがありますが加入するべきでしょうか?メリットを教えて下さい”
A. 企業型DCは会社拠出分が社会保険料・所得税も節税できるのが最大の利点です。掛金が不足ならマッチング拠出かiDeCo併用を検討し、老後資金計画と制度詳細を確認して判断しましょう。
2025.09.29
男性
“退職金共済と退職金制度の違いを教えて下さい”
A. 退職金共済は国が関与する外部積立で通算性があり、会社独自制度は設計自由度が高いが内容は企業ごとに異なります。
2025.10.31
男性60代
“早期退職した時の退職金にはどのように税金がかかりますか?”
A. 早期退職時の退職金は「退職所得」として分離課税され、勤続年数に応じた退職所得控除後の半額に税金がかかるため、通常の給与より税負担が大幅に軽くなります。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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退職所得控除
退職所得控除とは、退職金を受け取る際に税金を軽くしてくれる制度です。長く働いた人ほど、退職金のうち税金がかからない金額が大きくなり、結果として納める税金が少なくなります。この制度は、長年の勤続に対する国からの優遇措置として設けられています。 控除額は勤続年数によって決まり、たとえば勤続年数が20年以下の場合は1年あたり40万円、20年を超える部分については1年あたり70万円が控除されます。最低でも80万円は控除される仕組みです。たとえば、30年間勤めた場合、最初の20年で800万円(20年×40万円)、残りの10年で700万円(10年×70万円)、合計で1,500万円が控除されます。この金額以下の退職金であれば、原則として税金がかかりません。 さらに、退職所得控除を差し引いた後の金額についても、全額が課税対象になるわけではありません。実際には、その半分の金額が所得とみなされて、そこに所得税や住民税がかかるため、税負担がさらに抑えられる仕組みになっています。 ただし、この退職所得控除の制度は、将来的に変更される可能性もあります。税制は社会情勢や政策の方向性に応じて見直されることがあるため、現在の内容が今後も続くとは限りません。退職金の受け取り方や老後の資産設計を考える際には、最新の制度を確認することが大切です。
退職所得
退職所得とは、会社などを退職した際に受け取る退職金に対して発生する所得のことを指します。これは給与所得とは区別され、税法上、特別な扱いがされています。退職金は、長年の勤労に対する労いの意味を持つため、課税される際には「退職所得控除」という優遇措置が設けられています。 さらに、退職所得として課税される金額は、通常の給与よりも軽い税率が適用される「1/2課税」という制度があり、これによって税負担が軽減されます。役員が受け取る退職金についても原則として退職所得となりますが、形式的に退職して実態が伴わない場合や、過大とみなされる金額については税務上認められないこともあります。 資産運用や老後の生活設計において、退職金がどのように課税されるのかを知っておくことは、手取り額を見積もる上で非常に重要です。
確定拠出年金(DC)
確定拠出年金(DC)は、毎月いくら掛金を拠出するかをあらかじめ決め、その掛金を自分で運用して増やし、将来の受取額が運用成績によって変わる年金制度です。会社が導入する企業型と、自分で加入する個人型(iDeCo)の二つがあり、掛金は所得控除の対象になるため節税効果があります。 運用対象は投資信託や定期預金などから選べ、運用益も非課税で再投資される仕組みです。60歳以降に年金や一時金として受け取れますが、途中で自由に引き出せない点に注意が必要です。老後資金を自ら準備し、運用の成果を自分の年金額として受け取る「自助努力型」の代表的な制度となっています。
確定給付企業年金 (DB)
確定給付型企業年金(DB)とは、企業が従業員の退職後に受け取る年金額を保証する企業年金制度です。あらかじめ決められた給付額が支払われるため、従業員にとっては将来の見通しが立てやすいのが特徴です。DBには規約型と基金型の2種類があります。規約型は、企業が生命保険会社や信託銀行などの受託機関と契約し、受託機関が年金資産の管理や給付を行う仕組みです。基金型は、企業が企業年金基金を設立し、その基金が資産を運用し、従業員に年金を給付する仕組みです。確定拠出年金(DC)との大きな違いは、DBでは企業が運用リスクを負担する点であり、運用成績にかかわらず従業員は決まった額の年金を受け取ることができます。一方、DCでは従業員自身が運用を行い、将来受け取る年金額は運用成績によって変動します。DBのメリットとして、従業員は退職後の給付額が確定しているため安心感があることが挙げられます。また、企業にとっては従業員の定着率向上につながる点も利点となります。しかし、企業側には年金資産の運用成績が悪化した場合に追加の負担が発生するリスクがあるため、財務的な影響を考慮する必要があります。
中退共(中小企業退職金共済制度)
中退共とは、中小企業の従業員に退職金を支給するための共済制度です。企業が毎月掛金を支払い、従業員が退職する際に積み立てられた退職金が支給されます。国の助成金もあり、企業負担を軽減しながら従業員の退職後の生活を支えます。
特退共(特定退職金共済制度)
特退共(特定退職金共済制度)とは、商工会議所や商工会などが窓口となって実施している退職金共済制度で、中小企業の事業主が従業員の退職金を計画的に準備するために利用される仕組みです。事業主が掛金を支払い、従業員の退職時にまとまった退職金が支給される形式で、企業が独自に退職金制度を設けなくても、一定の条件のもとで外部積立が可能となります。 掛金は全額損金(法人の場合)または必要経費(個人事業主の場合)として扱われるため、節税効果も期待できます。退職金の支払いは共済会から直接行われるため、企業の財務負担が軽減され、従業員にとっても安心して働ける環境づくりに貢献します。資産運用の視点では、企業の安定した資金計画と、従業員の老後資金の確保を両立させる手段として有効な制度です。






