ソフトバンク社債の売れ残りを勧誘されましたがなぜでしょうか?
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2025/08/21 09:08
男性
60代
ソフトバンク社債は当初人気と聞いていたのですが、実際には募集の締め切りが近づいても売れ残っているらしく、証券会社の担当者からかなり強引に勧誘を受けました。なぜこうした状況になるのでしょうか?人気と言われていたにもかかわらず売れ残る理由や、証券会社が積極的に販売を迫る背景について教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
ソフトバンク社債が「当初は人気」と言われながら募集締め切り間際に売れ残り、証券会社の担当者から強い勧誘を受ける背景にはいくつかの要因があります。
まず、人気とされるのは発行直後の宣伝効果や「高い表面利率」といった表面的な魅力が強調されるためです。しかし実際には、発行規模が大きく投資家層に十分行き渡らなかったり、市場環境(金利上昇局面や企業の財務懸念)が変化したりすると、想定ほど需要が伸びずに売れ残ることがあります。
次に、大手証券会社の販売慣行にも理由があります。投資銀行部門がソフトバンク社債の大量発行を引き受けると、その消化責任をリテール部門が担う仕組みになっており、営業担当者には「販売ノルマ」が課されます。特に大型案件ではノルマが重く、期限が迫ると顧客への勧誘が強まるのはこのためです。
つまり、「人気」と言われながらも市場全体の需給や企業の信用評価によって実際の需要は変動し、販売現場ではノルマ達成のために強い営業がかかることがあるのです。投資家としては、勧誘の強さや「残り枠がある」という事実をそのまま鵜呑みにせず、自分のリスク許容度と社債の信用リスクを冷静に比較検討することが大切です。
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関連する専門用語
社債
社債とは、企業が事業資金を調達するために発行する「借金の証書」のようなものです。投資家は社債を購入することで企業にお金を貸し、その見返りとして、あらかじめ決められた利息(クーポン)を一定期間ごとに受け取ることができます。満期が来れば、企業は投資家に元本を返済します。 銀行からの融資とは異なり、社債は不特定多数の投資家から直接資金を集める方法であり、企業にとっては柔軟かつ効率的な資金調達手段です。 投資家にとって社債の魅力は、株式に比べて価格の変動が小さく、定期的な利息収入が得られる点にあります。一方で、発行体である企業が経営破綻した場合、元本が戻らないリスクがあるため、信用格付けや業績などを十分に確認することが重要です。 安定的な収益を目指しつつ、リスク管理も重視する投資家にとって、社債はポートフォリオの中核を担いうる資産クラスのひとつです。
クーポン
クーポンとは、債券を保有している投資家が発行体(国や企業)から定期的に受け取る利息のことです。クーポンの金額は、債券発行時に設定された利率(クーポン利率)に基づき計算されます。通常、半年ごとまたは1年ごとに支払われることが多いです。クーポン収入は安定したキャッシュフローをもたらし、特に長期保有する債券投資家にとって重要な収益源となります。
引受(アンダーライティング)
引受(アンダーライティング)とは、企業が新しく株式や社債を発行するときに、証券会社などの金融機関がそれらを買い取り、投資家に販売する仕組みのことを指します。特に企業が株式を公開して上場する際や資金調達を行うときに使われます。 証券会社は発行される金融商品を事前に引き受けることで、企業に確実な資金提供を約束します。そのため、企業にとっては安心して資金調達ができ、投資家にとっては公開された金融商品を市場で購入する機会が生まれます。引受には「買取引受」と「募集引受」の2種類があり、リスクの負担の仕方が異なります。資産運用においては、引受が行われることで新たな投資対象が市場に登場する重要な過程となります。
信用リスク(クレジットリスク)
信用リスクとは、貸し付けた資金や投資した債券について、契約どおりに元本や利息の支払いを受けられなくなる可能性を指します。具体的には、(1)企業の倒産や国家の債務不履行(いわゆるデフォルト)、(2)利払いや元本返済の遅延、(3)返済条件の不利な変更(債務再編=デット・リストラクチャリング)などが該当します。これらはいずれも投資元本の毀損や収益の減少につながるため、信用リスクの管理は債券投資の基礎として非常に重要です。 この信用リスクを定量的に評価する手段のひとつが、格付会社による信用格付けです。格付は通常、AAA(最上位)からD(デフォルト)までの等級で示され、投資家にとってのリスク水準をわかりやすく表します。たとえば、BBB格付けの5年債であれば、過去の統計に基づく累積デフォルト率はおおよそ1.5%前後とされています(S&Pグローバルのデータより)。ただし、格付はあくまで過去の情報に基づいた「静的な指標」であり、市場環境の急変に即応しにくい側面があります。 そのため、市場ではよりリアルタイムなリスク指標として、同年限の国債利回りとの差であるクレジットスプレッドが重視されます。これは「市場に織り込まれた信用リスク」として機能し、スプレッドが拡大している局面では、投資家がより高いリスクプレミアムを求めていることを意味します。さらに、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保険料率は、債務不履行リスクに加え、流動性やマクロ経済環境を反映した即時性の高い指標として、機関投資家の間で広く活用されています。 こうしたリスクに備えるうえでの基本は、ポートフォリオ全体の分散です。業種や地域、格付けの異なる債券を組み合わせることで、特定の発行体の信用悪化がポートフォリオ全体に与える影響を抑えることができます。なかでも、ハイイールド債や新興国債は高利回りで魅力的に見える一方で、信用力が低いため、景気後退時などには価格が大きく下落するリスクを抱えています。リスクを抑えたい局面では、投資適格債へのシフトやデュレーションの短縮、さらにCDSなどを活用した部分的なヘッジといった対策が有効です。 投資判断においては、「高い利回りは信用リスクの対価である」という原則を常に意識する必要があります。期待されるリターンが、想定される損失(デフォルト確率×損失率)や価格変動リスクに見合っているかどうか。こうした視点で冷静に比較検討を行うことが、長期的に安定した債券運用につながる第一歩となります。
需給バランス
需給バランスとは、株式市場における需要(買い注文)と供給(売り注文)の均衡状態を指します。需給バランスが崩れると、株価の変動要因となります。例えば、買い注文が多ければ株価は上昇し、売り注文が多ければ株価は下落します。
リスク許容度
リスク許容度とは、自分の資産運用において、どれくらいの損失までなら精神的にも経済的にも受け入れられるかという度合いを表す考え方です。 投資には必ずリスクが伴い、時には資産が目減りすることもあります。そのときに、どのくらいの下落まで冷静に対応できるか、また生活に支障が出ないかという観点で、自分のリスク許容度を見極めることが大切です。 年齢、収入、資産の状況、投資経験、投資の目的などによって人それぞれ異なり、リスク許容度が高い人は価格変動の大きい商品にも挑戦できますが、低い人は安定性の高い商品を選ぶほうが安心です。自分のリスク許容度を正しく理解することで、無理のない投資計画を立てることができます。