任意後見契約の締結方法と開始手続きは?
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2025/07/29 06:58
男性
50代
最近親が高齢になり、認知症などのリスクを考え、任意後見契約が気になっています。ただ、実際にどのように契約すればよいか分かりません。どのような手続きが必要なのか教えて下さい。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
任意後見制度の利用は「契約を結ぶ段階」と「契約を発効させる段階」に分かれています。
最初に、ご本人が十分な判断能力を有している間に任意後見人となる人物(受任者)を決定します。その後、ご本人と後見人候補者が公証役場に赴き、公正証書で任意後見契約を締結します。具体的な手続きとしては、印鑑登録証明書や戸籍謄本など必要書類を準備し、公証役場で契約内容を確定します。このときの費用は、公証人の手数料と登記にかかる費用を合わせて約1万5,000円前後となります。この契約内容は法務局に登記され、締結と同時に登記が完了します。
契約が締結された時点では、まだ任意後見制度の利用は始まりません。この時期は「見守り期間」と呼ばれ、契約が休眠状態のまま維持されます。将来、ご本人の判断能力が低下した時点で、ご本人や親族、あるいは後見人候補者が家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申立てます。この手続きでは診断書や資産目録などを裁判所へ提出します。申立費用は約5,000円前後で、鑑定費用が必要な場合は追加で数万円かかります。
家庭裁判所は申立を受けて審理を行い、通常、弁護士や司法書士など専門家を任意後見監督人として選任します。監督人が選任されると契約が正式に効力を持ち、任意後見人が財産管理や生活面の支援をスタートします。
実務的には、契約締結後の見守り期間に、資産目録の定期的な更新や運用方針の文書化、家族間の意思決定記録の保管をしておくと、発効後の手続きがスムーズになります。
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任意後見
任意後見とは、自分の判断能力が低下する将来に備えて、あらかじめ信頼できる人を後見人として選び、公正証書で契約を結んでおく制度のことをいいます。これは「元気なうち」に本人の意思で準備できる後見制度であり、判断能力が実際に低下したときに、家庭裁判所の監督のもとで任意後見人が正式に活動を開始します。 任意後見人は、本人の財産管理や生活支援などを本人の希望に沿って行うことができるため、自分らしい生活を維持するための手段として注目されています。法定後見と違い、自分で「誰に、何を任せるか」を決めておける点が特徴です。高齢化や認知症のリスクが高まる中で、資産や生活の管理を将来にわたって安心して託すための、重要な準備の一つです。初心者にとっても、「自分の老後を自分で選ぶ」ための有効な制度として知っておく価値があります。
任意後見人
任意後見人とは、本人が将来判断能力を失った場合に備えて、あらかじめ信頼できる相手と結んでおいた「任意後見契約」に基づき、本人の財産管理や生活支援などを代わりに行う人のことです。この契約は、本人がまだ判断能力のあるうちに公正証書で結ばれ、実際に判断能力が不十分になったと家庭裁判所が判断し、任意後見監督人が選任された段階で効力が発生します。 任意後見人の業務は、日常の金銭管理や契約手続き、介護サービスの手配、不動産の管理など多岐にわたり、本人の意思を尊重しつつ、その権利や生活を守ることが求められます。家族や専門職(司法書士・弁護士など)が任命されることが多く、安心して老後を迎えるための備えとして注目されている制度です。
公正証書
公正証書とは、公証人という法律の専門家が法律に基づいて作成する公式な文書のことをいいます。これは、契約内容や遺言などを法的に強い効力をもって証明するために用いられ、文書の信頼性を高める役割を果たします。たとえば、金銭の貸し借りに関する契約を公正証書にしておくと、返済が滞った場合に裁判を経ずに強制執行(差し押さえなど)を行うことができるようになります。 このように、公正証書には「証明力」と「執行力」があり、将来のトラブルを防ぐために非常に有効です。資産運用や相続、離婚時の財産分与、贈与契約など、法的な取り決めを明確にしておきたい場面で利用されます。初心者にとっても、「書面で約束を残す」ことの重要性を理解するうえで、知っておくと安心な制度です。
任意後見監督人
任意後見監督人とは、将来に備えてあらかじめ結んでおいた「任意後見契約」が実際に発効されたときに、任意後見人の業務が適正に行われているかを監督する立場として、家庭裁判所により選任される第三者のことです。本人の判断能力が低下し、任意後見契約の内容に基づいて後見が開始された場合、任意後見人だけでは不正やミスが起きるおそれがあるため、それをチェックする役割を担います。 任意後見監督人は通常、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれ、定期的に家庭裁判所へ報告を行いながら、任意後見人の活動を見守ります。資産管理や生活支援を本人に代わって行う制度を円滑かつ安全に機能させるための重要な存在であり、任意後見制度の信頼性を支える柱となります。
公証役場(こうしょうやくば)
公証役場(こうしょうやくば)とは、公証人が法律に基づいて文書の作成や認証を行う場所で、公的に証明された文書(公正証書など)を作成するための機関です。公証人は法務大臣から任命された法律の専門家で、私文書に法的な効力や証明力を持たせる役割を果たします。 たとえば、金銭の貸し借りに関する契約を公正証書にしておくと、万が一返済が滞った場合には裁判を経ずに強制執行が可能になるなど、トラブルを未然に防ぐ手段として活用されます。また、遺言、公正証書遺言、任意後見契約、会社設立時の定款認証など、個人や法人の重要な法的手続きに広く利用されており、契約や証明の信頼性を高めるうえで欠かせない存在です。