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パワーカップルとは?定義・年収基準と割合、手取りや資産形成のポイントを解説
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公開:
2026.04.25
更新:
2026.09.30
共働きで世帯年収が増えると、「自分たちはパワーカップルに当てはまるのか」と気になる人も多いでしょう。ただし、パワーカップルには統一された定義がなく、夫婦それぞれの年収や世帯年収など、基準によって該当範囲が異なります。また、高収入でも税・社会保険料の負担や住宅費、教育費が膨らめば、十分な資産を築けるとは限りません。この記事では、パワーカップルの定義や年収基準、世帯数・年齢・職業・貯蓄額の実像から、手取り、メリット・注意点、NISA・iDeCoを活用した資産形成まで具体的に解説します。
パワーカップルとは?定義と年収基準を比較
パワーカップルは、夫と妻の両方が高い収入を得ている共働き夫婦を指す言葉です。「パワー夫婦」と呼ばれることもあります。統一された基準はないため、まずは代表的な定義を確認しておきましょう。
ニッセイ基礎研究所の定義:夫婦ともに年収700万円以上
ニッセイ基礎研究所は、パワーカップルを「夫婦ともに年収700万円以上の共働き夫婦」と定義しています。一定の裁量を持つ年収水準であることや、所得税の税率区分などを考慮した基準です。
この定義では、世帯年収は少なくとも1,400万円以上になります。同研究所は、総務省「労働力調査」をもとに世帯数を定期的に推計しています。
出典:ニッセイ基礎研究所「パワーカップル世帯の動向(2025年)-49万世帯に増加、うち3分の2はパワーファミリー」
三菱総合研究所の定義:夫600万円以上・妻400万円以上
三菱総合研究所は、2018年11月の報道関係者向け意見交換会で、生活者調査をもとに独自の定義を紹介しました。参議院の調査室がまとめた資料では、その内容は「夫の年収が600万円以上、妻が400万円以上で世帯年収が1,000万円以上」と紹介されています。
ニッセイ基礎研究所の基準より低い水準のため、該当する世帯は大幅に多くなるでしょう。
出典:参議院「パワーカップルなど結婚にまつわる収入の格差について(経済のプリズム第234号)」
出典:三菱総合研究所「2018年生活者調査よりパワーカップルの動向と消費トレンド」
パワーファミリーとは?子どものいるパワーカップル
ニッセイ基礎研究所は、パワーカップルのうち子どものいる世帯をパワーファミリーと呼んでいます。一方、野村総合研究所は「世帯年収1,500万円以上を目安とする共働き世帯」をパワーファミリーとしています。
- さらに野村総合研究所は、都市部に住み世帯年収3,000万円以上の大企業共働き世帯を「スーパーパワーファミリー」と定義しました。50歳前後には富裕層となる可能性がある層と分析しています。
出典:野村総合研究所「日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」
| 呼び方 | 定義した機関 | 基準 | 世帯年収の目安 |
|---|---|---|---|
| パワーカップル | ニッセイ基礎研究所 | 夫婦ともに年収700万円以上 | 1,400万円以上 |
| パワーカップル | 三菱総合研究所 | 夫の年収600万円以上・妻の年収400万円以上 | 1,000万円以上 |
| パワーファミリー | ニッセイ基礎研究所 | パワーカップルのうち子どものいる世帯 | 1,400万円以上 |
| パワーファミリー | 野村総合研究所 | 共働き世帯(夫婦それぞれの年収条件はなし) | 1,500万円以上が目安 |
| スーパーパワーファミリー | 野村総合研究所 | 都市部に住む大企業共働き世帯 | 3,000万円以上 |
定義によって、夫婦それぞれの年収を見るのか、世帯年収だけを見るのかが異なります。どの定義で考えるかによって、自分たちが当てはまるかどうかも変わる点に注意が必要です。
なお、年収1200万円の人の手取り額に関しては、こちらのQ&Aを参考にしてみてください。
定義に年齢や職業の条件はある?
紹介した定義には、年齢や職業の条件はありません。年収の基準を満たせば、20代の夫婦でもパワーカップルに当てはまります。夫婦ともに収入がある状態は「ダブルインカム」という言い方もあります。
子どものいない共働き夫婦はDINKS(Double Income No Kids)、子育て中の共働き夫婦はDEWKS(Double Employed With Kids)という呼び方です。ニッセイ基礎研究所の分析では、パワーカップルはDINKSよりもDEWKSのほうが多くなっています。
パワーカップルの割合と世帯数【2025年の最新データ】
パワーカップルは増えているとはいえ、全体から見ればまだ少数です。ニッセイ基礎研究所の最新レポート(2026年4月公表)を中心に確認します。
共働き世帯の2.8%・総世帯の約0.9%
総務省「労働力調査」によると、2025年の共働き世帯は1,722万世帯で、総世帯の31.4%でした。このうち夫婦ともに年収700万円以上の世帯は49万世帯で、共働き世帯の2.8%にあたります。総世帯(5,483万世帯)に対する割合は約0.9%です。
- 共働き夫婦100組のうち3組弱という計算です。また、パワーカップルの65.9%は子どものいるパワーファミリーで、「夫婦と子」の世帯が63.8%、「夫婦のみ」の世帯が31.9%でした。
出典:ニッセイ基礎研究所「パワーカップル世帯の動向(2025年)-49万世帯に増加、うち3分の2はパワーファミリー」
パワーカップル世帯数の推移:10年で2倍超に
パワーカップルの世帯数は、コロナ禍の時期も含めておおむね増加が続いています。2015年の24万世帯から、2025年には49万世帯へと10年で2倍を超えました。
| 年 | 世帯数 | 年 | 世帯数 |
|---|---|---|---|
| 2013年 | 21万世帯 | 2020年 | 34万世帯 |
| 2014年 | 22万世帯 | 2021年 | 31万世帯 |
| 2015年 | 24万世帯 | 2022年 | 37万世帯 |
| 2016年 | 25万世帯 | 2023年 | 40万世帯 |
| 2017年 | 26万世帯 | 2024年 | 45万世帯 |
| 2018年 | 26万世帯 | 2025年 | 49万世帯 |
| 2019年 | 27万世帯 | - | - |
出典:ニッセイ基礎研究所「パワーカップル世帯の動向(2025年)」PDF 図表4
※図表4(総務省「労働力調査」をもとにニッセイ基礎研究所が作成)の数値を編集部が転記。
2021年に一時的に減ったものの、2022年以降は毎年増え、2024年と2025年はそれぞれ5万世帯、4万世帯増えました。
同研究所は、出産・子育て期も働き続ける女性が増えていることを背景に挙げています。夫の年収が1,500万円以上の世帯でも妻の63.8%が就業しており、2015年の52.4%から10%pt以上上昇しました。
三菱総研の基準なら約91万世帯(編集部集計)
参議院の調査室は、総務省「就業構造基本調査」(2022年)をもとに、妻が55歳未満の共働き世帯の世帯数を夫婦の所得階級別にまとめています。
- この資料で夫600万円以上かつ妻400万円以上の世帯を編集部で合計すると、約91.4万世帯でした。妻が55歳未満の共働き世帯(903.8万世帯)の約10.1%にあたります。同じ表で夫婦とも700万円以上の世帯は21.3万世帯(2.36%)なので、基準の違いで世帯数は4倍強の差が生じます。
この集計は「労働力調査」と調査の方法や対象が異なるため、49万世帯とは直接比べられません。「共働き世帯の2〜3%」は、夫婦とも700万円以上という厳しめの基準での値だと理解しておきましょう。
出典:参議院「パワーカップルなど結婚にまつわる収入の格差について(経済のプリズム第234号)」
世帯年収2,000万円以上の共働き世帯は20万世帯
夫婦それぞれの年収ではなく、世帯年収で見るとどうでしょうか。ニッセイ基礎研究所によると、夫婦の合計年収が2,000万円以上の共働き世帯は20万世帯で、共働き世帯の1.16%です。合計年収が1,500万円前後以上の世帯まで広げると、74万〜230万世帯と推計されています。
世帯年収2,000万円や3,000万円は、共働き世帯の中でもごく一部の水準です。ただし、一方の収入が700万円未満なら、ニッセイ基礎研究所の定義には当てはまりません。
パワーカップルの年齢・職業・貯蓄額の実像
ニッセイ基礎研究所は独自のアンケート調査で、年収700万円以上の妻がいる世帯をパワーカップルに近い層として分析しています。夫の年収は条件にしていないため、厳密なパワーカップル以外の世帯も含む点に注意してください。
年齢:40・50歳代が約3分の2
年収700万円以上の妻の年代は、40歳代が35.1%、50歳代が31.1%で、合わせて約3分の2を占めました。一定のキャリアを積んだ管理職層などが中心になるためと分析されています。
ライフステージ別では、子どものいないDINKS層が23.0%、小中学生を中心とする子育て層が44.6%、子どもが大学生以上か独立したポスト子育て層が32.5%でした。子と同居する世帯では、扶養する子どもが3人以上の多子世帯も20.0%と、全体(11.0%)の約2倍にのぼります。
出典:ニッセイ基礎研究所「パワーカップル世帯の動向(2)家庭と働き方~DINKS・子育て・ポスト子育て、制度と夫婦協働が支える」
職業:大企業の会社員や公務員が中心
同じ調査で、年収700万円以上の妻の勤務先を見ると、民間企業の雇用者・役員の半数(50.0%)が従業員1,000人以上の大企業に勤めていました。職業を公務員と答えた人も12.2%と、年収300万〜700万円未満の層(7.3%)を上回ります。
- 夫は正規雇用者が56.8%で、役員(8.1%)や自営業・自由業(12.2%)も他の層より多い傾向でした。同研究所は、妻の半数が大企業や公務員を中心とした制度の整った職場で正規雇用を続けていると分析しています。
出典:ニッセイ基礎研究所「パワーカップル世帯の動向(2)家庭と働き方~DINKS・子育て・ポスト子育て、制度と夫婦協働が支える」
統計で職種別の年収を見ると、次のとおりです。
| 職種 | 平均年齢 | 年収の目安 |
|---|---|---|
| 航空機操縦士 | 39.7歳 | 約1,632万円 |
| 医師 | 45.7歳 | 約1,512万円 |
| 大学教授(高専含む) | 57.5歳 | 約1,083万円 |
| 歯科医師 | 39.6歳 | 約1,063万円 |
| 法務従事者(弁護士・司法書士など) | 46.5歳 | 約981万円 |
| システムコンサルタント・設計者 | 38.3歳 | 約889万円 |
| 公認会計士・税理士 | 42.2歳 | 約811万円 |
| (参考)全体 | 44.4歳 | 約546万円 |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表」(e-Stat)
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査(一般労働者・産業大分類)第1表」(e-Stat)
※年収の目安=きまって支給する現金給与額×12か月+年間賞与その他特別給与額。男女計・企業規模10人以上の平均値で、国公立病院などの公営事業所は含みません。
医師や航空機操縦士は、平均でも1人で1,000万円を超えます。一方、法務従事者や公認会計士・税理士の平均は1,000万円を下回りました。職業だけで決まるわけではなく、夫婦がともに働き続けて年収を伸ばせるかがポイントです。
公務員夫婦はパワーカップルになれる?
公務員同士の夫婦も、年齢や役職によってはパワーカップルの基準を満たします。2026年8月の人事院勧告では、行政職俸給表(一)の国家公務員の平均年間給与は、勧告どおり改定された場合で739万円と示されました。モデル給与例では、本府省の課長補佐(35歳)が861.0万円、地方機関の係長(35歳)が525.9万円です。
地方公務員の一般行政職の平均給与月額は、41万3,968円(平均42.0歳、2025年4月1日時点)でした。月給だけで年間約497万円となり、夫婦2人なら賞与を除いても約994万円です。共働きを続ければ、世帯年収1,000万円は十分に視野に入ります。
出典:人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」(令和8年8月)
住まいと貯蓄額:金融資産4,000万円以上が35%
年収700万円以上の妻がいる世帯の約6割(59.5%)は首都圏(南関東)に住み、持ち家率は81.1%でした。世帯の金融資産は2,000万円以上が55.4%、4,000万円以上が35.1%と、全体(14.1%)の2倍以上です。
公的な調査でも、世帯年収が高い層の金融資産は多い傾向があります。金融経済教育推進機構(J-FLEC)の2025年調査では、年収1,200万円以上の二人以上世帯の金融資産は平均5,635万円、中央値3,000万円でした。3,000万円以上の世帯も約半数(50.3%)にのぼります。平均値は一部の資産の多い世帯に引き上げられやすいため、比べるときは中央値も確認するとよいでしょう。※
※金融資産を保有していない世帯を含む値(各種分類別データ・年間収入別)
出典:ニッセイ基礎研究所「パワーカップル世帯の動向(3)住まいと資産~首都圏6割、金融資産4,000万円以上が35%」
出典:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
パワーカップルの手取りはいくら?年収別に試算
年収が高いほど、所得税の税率が上がり、額面と手取りの差は大きくなります。パワーカップルの目安となる年収について、手取り額を編集部で試算しました。
| 年収(額面) | 社会保険料 | 所得税 | 住民税 | 手取り額 | 手取りの割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 59.9万円 | 5.7万円 | 17.6万円 | 316.8万円 | 79.2% |
| 600万円 | 88.1万円 | 14.9万円 | 30.7万円 | 466.2万円 | 77.7% |
| 700万円 | 104.0万円 | 27.6万円 | 37.6万円 | 530.9万円 | 75.8% |
| 1,000万円 | 126.6万円 | 82.2万円 | 63.8万円 | 727.4万円 | 72.7% |
| 1,400万円 | 147.9万円 | 178.4万円 | 101.7万円 | 972.0万円 | 69.4% |
※前提:会社員・東京都・40歳未満・賞与なし(年収÷12を月給)・扶養親族なし、所得控除は社会保険料控除と基礎控除のみ。社会保険料は標準報酬月額の等級に当てはめて計算。協会けんぽ東京支部の令和8年度料率(健康保険9.85%、子ども・子育て支援金0.23%)、厚生年金18.3%の各半分と雇用保険0.5%を1年間適用。所得税は令和8年分(基礎控除引上げ後・復興特別所得税を含む)、住民税は令和8年の所得にかかる額(均等割5,000円を含む)。端数処理のため合計が一致しないことがあります。
- 夫600万円・妻400万円の世帯なら、世帯の手取りは約783万円です。夫婦ともに700万円の世帯では、約1,062万円となります。年収1,000万円を超えると手取りの割合は7割程度まで下がるため、資産形成の計画は額面ではなく手取りで立てることが大切です。
なお、40歳以上の人は介護保険料(1.62%の半分)が加わるため、手取りはさらに数万円少なくなります。社会保険料・介護保険料の計算方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
出典:全国健康保険協会「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)」
出典:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
パワーカップルのメリット
夫婦ともに高い収入があることは、税負担・老後の年金・家計の安定性などの面でメリットにつながります。代表的な3つのメリットを、試算を交えて見ていきましょう。
同じ世帯年収でも税負担が軽くなりやすい
所得税は、所得が高いほど税率が上がる累進課税です。夫婦は別々に課税されるため、同じ世帯年収でも1人で稼ぐより2人で分けて稼ぐほうが、低い税率が適用されやすくなります。世帯年収1,000万円で比べた結果が次の表です。
| 項目 | 片働き(夫1,000万円・妻は専業主婦) | 共働き(夫600万円・妻400万円) | 差(共働き-片働き) |
|---|---|---|---|
| 社会保険料 | 126.6万円 | 148.0万円 | +21.5万円 |
| 所得税 | 74.5万円 | 20.7万円 | -53.8万円 |
| 住民税 | 60.5万円 | 48.3万円 | -12.2万円 |
| 税金の合計 | 135.0万円 | 68.9万円 | -66.0万円 |
| 世帯の手取り額 | 738.5万円 | 783.0万円 | +44.5万円 |
※前提は前の表と同じ。片働き世帯は配偶者控除(所得税38万円・住民税33万円)を適用。
共働き世帯は、税金の合計が片働き世帯より約66万円少なくなりました。社会保険料は約21.5万円多いものの、世帯の手取りは約44.5万円多くなります。社会保険料が多いのは、厚生年金の標準報酬月額に上限(65万円)があり、片働きの高収入の人ほど年収に対する負担割合が低くなるためです。
- 世帯年収1,400万円でも同じ傾向があります。1人で1,400万円を稼ぐ場合の手取りは約972万円、夫婦で700万円ずつ稼ぐ場合は約1,062万円で、約90万円の差となりました。所得税だけで比べると、約178万円と約55万円で120万円以上の差があります。
将来の年金が夫婦それぞれに積み上がる
厚生年金は現役時代の収入と加入期間に応じて増えるため、夫婦ともに会社員や公務員なら老後の年金も2人分積み上がります。
厚生労働省によると、令和8年度の年金額は「厚生年金期間中心の男性」が月17万6,793円、「厚生年金期間中心の女性」が月13万4,640円です。合計は月31万1,433円で、夫が会社員・妻が専業主婦の「標準的な夫婦」の月23万7,279円を約7万円上回ります。
- 編集部で、夫が平均年収600万円・妻が平均年収400万円で40年間厚生年金に加入した場合を試算すると、夫婦の年金は月約32.4万円でした。世帯年収1,000万円の片働き世帯(妻は第3号被保険者)の月約28.4万円より約4万円多く、現役時代に多く払った保険料が年金に反映されます。※
※編集部試算の前提:賞与なし、平均標準報酬額は年収÷12(厚生年金の上限65万円を適用)、報酬比例部分は平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数、老齢基礎年金は令和8年度の満額(年84万7,300円)を夫婦とも受給。賃金の再評価や加給年金は考慮していません。
公的年金を繰下げると、受け取れる金額を増やせます。資産に余裕があるパワーカップルほど、できるだけ繰り下げて将来の月額を増やし、長寿リスクに備えるのが賢明です。
出典:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
収入源が2つあり、家計のリスクに強い
共働き世帯の大きな強みは、収入源が2つに分散していることです。片働き世帯では、稼ぎ手が病気やケガで働けなくなったり失業したりすると、世帯収入がそのまま大きく落ち込みます。共働きなら、一方の収入が減っても、もう一方の給与で住居費や食費などの固定的な支出を払い続けられます。
公的な保障があっても、収入は減ります。たとえば会社員が病気で休職した場合、健康保険の傷病手当金は給与のおよそ3分の2です。育児休業給付金も、休業開始から180日間は賃金の67%、それ以降は50%が目安です。
この不足分をパートナーの収入で埋められるかどうかで、貯蓄を取り崩さずに乗り切れるかが決まります。転職で収入のない期間ができたり、年収が一時的に下がったりする場合も同じです。
- さらに、夫婦が異なる業種・職種で働いていれば、景気の悪化や業界の不振で2人の収入が同時に減る可能性も低くなります。ニッセイ基礎研究所も、夫婦が異なる職業上のリスクを持ち寄ることで世帯全体の経済基盤が安定する、と分析しています。いわば「収入のポートフォリオ」を分散させている状態です。※
出典:ニッセイ基礎研究所「パワーカップル世帯の動向(2)家庭と働き方~DINKS・子育て・ポスト子育て、制度と夫婦協働が支える」
パワーカップルの課題・注意点
メリットが多い一方で、パワーカップルならではの課題も見逃せません。制度面と家計面の注意点を整理しました。
所得制限のある制度は対象外になりやすい
ここ数年で所得制限が撤廃された制度もあるため、2026年9月時点の状況を確認しておきましょう。
| 制度 | 所得制限 | パワーカップルへの影響 |
|---|---|---|
| 児童手当 | なし(2024年10月分から撤廃) | 受給できる(旧制度では所得上限限度額を超えると支給対象外) |
| 高等学校等就学支援金 | なし(2026年4月から) | 私立高校は年45万7,200円まで支給(旧制度は年収約910万円以上が対象外) |
| 高等教育の修学支援新制度 | あり(多子世帯の授業料等減免を除く) | 原則対象外。扶養する子が3人以上なら授業料・入学金の減免を受けられる(上限あり) |
| 住宅ローン控除 | 合計所得2,000万円以下 | 夫婦それぞれの所得で判定 |
| 配偶者控除・配偶者特別控除 | 本人の合計所得1,000万円以下 | 配偶者も高収入のため、通常は対象外 |
児童手当と高校の就学支援金は所得制限がなくなり、パワーカップルも対象となりました。一方、大学などの修学支援新制度は、多子世帯を除いて世帯収入の基準があります。大学進学の費用は、原則として自分たちで準備する前提で考えておくと安心です。
児童手当の金額や活用方法については、こちらの記事も参考にしてみてください。
出典:国土交通省「住宅を新築したとき・建築後使用されたことのない住宅(分譲住宅、建売住宅)を取得したとき」
税・社会保険料の負担が重い
所得税の税率は、課税所得が695万円以上で23%、900万円以上で33%です。年収1,400万円の人の手取りは7割程度で、額面との差は約428万円にのぼります(編集部試算)。
厚生年金の標準報酬月額の上限は、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月には75万円へと段階的に引き上げられる予定です。高収入の人は保険料の負担が増える一方、将来の年金額も増えることになります。
出典:厚生労働省「厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて」
どちらかの収入が減ると家計が崩れやすい
パワーカップルの家計は、2人の収入が続くことを前提に組み立てられがちです。出産・育児による時短勤務や転職、病気などで一方の収入が減ると、住宅ローンや教育費の支払いが重くのしかかります。
夫婦がそれぞれ住宅ローンを組むペアローンでは、離婚時に返済や持分の整理が難しくなる点にも注意が必要です。借入額は「1人の収入でもしばらく返済を続けられるか」を目安に決めるとよいでしょう。
支出が膨らみ、お金の流れが見えにくい
収入が増えると、住居・外食・旅行・家事代行などの支出も増えやすくなります。夫婦がそれぞれの口座で管理していると、世帯全体でいくら貯まっているのか把握しにくい点も課題です。
円満な生活を送るためにも、資産状況の現状認識は欠かせません。夫婦でお金を管理する方法については、こちらの記事も参考にしてみてください。
パワーカップルの資産形成の進め方
パワーカップルは収入が多い分、資産形成の選択肢も広がるでしょう。ただし、収入の多さがそのまま資産の多さにつながるとは限りません。夫婦で取り組みたい5つのポイントを紹介します。
①家計を「見える化」し、先取りで積み立てる
夫婦それぞれに収入があると、相手の貯蓄額が分からないままになりがちです。まずは夫婦の手取り・固定費・貯蓄額を1つの表にまとめましょう。
ニッセイ基礎研究所の調査では、年収700万円以上の妻がいる世帯の23.0%が「夫婦での共同管理」でした。共通口座への定額入金と、給与日の自動積立を組み合わせると、貯蓄を仕組み化できます。
出典:ニッセイ基礎研究所「パワーカップル世帯の動向(3)住まいと資産~首都圏6割、金融資産4,000万円以上が35%」
②NISAは夫婦で年720万円・計3,600万円まで活用できる
NISAは、つみたて投資枠(年120万円)と成長投資枠(年240万円)を合わせて、1人あたり年360万円まで投資が可能です。生涯の非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠1,200万円)で、売却すると翌年以降に枠が復活します。夫婦で毎月の積立額を決めた場合の資産額を試算しました。
| 世帯の毎月の積立額(夫婦合計) | 期間 | 元本 | 年3%で運用 | 年5%で運用 |
|---|---|---|---|---|
| 10万円(1人5万円) | 20年 | 2,400万円 | 約3,283万円 | 約4,110万円 |
| 15万円(1人7.5万円) | 20年 | 3,600万円 | 約4,925万円 | 約6,166万円 |
| 30万円(1人15万円) | 10年 | 3,600万円 | 約4,192万円 | 約4,658万円 |
※毎月末に積み立て、月複利で計算。税金・手数料は考慮せず、運用利回りは一定と仮定した試算であり、将来の成果を約束するものではありません。
- 世帯で毎月15万円を20年間積み立てると、夫婦2人分の生涯枠3,600万円をちょうど使い切ります。毎月30万円なら10年で使い切れるため、パワーカップルは「枠をいつまでに使うか」を夫婦で決めておくと計画を立てやすくなります。
2027年からは、つみたて投資枠が0〜17歳の子どもも利用できるようになる予定です(年60万円・非課税保有限度額600万円)。NISAやこどもNISAについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
出典:財務省「NISAのつみたて投資枠の拡充(令和8年度改正)」
出典:金融庁「NISAを知る」
③iDeCoは夫婦それぞれの節税効果を確認する
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金の全額が所得控除(課税される所得から差し引ける仕組み)の対象です。所得税の税率が高い人ほど節税効果が大きくなります。2026年12月1日からは、会社員・公務員の拠出限度額が月6.2万円(企業年金の掛金と合算)に引き上げられる予定です。
| 年収 | 掛金 月2.3万円(年27.6万円) | 掛金 月6.2万円(年74.4万円) |
|---|---|---|
| 400万円 | 約4.2万円 | 約11.2万円 |
| 600万円 | 約5.6万円 | 約13.7万円 |
| 700万円 | 約7.5万円 | 約17.0万円 |
※所得税(復興特別所得税を含む)と住民税の軽減額の合計で、前提は手取り試算と同じ。企業年金のない会社員の上限(2026年11月まで月2.3万円、12月以降月6.2万円)を1年間拠出したと仮定。
年収700万円の人が月6.2万円を拠出すると、税負担は年約17.0万円軽くなる計算です。一方、iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、教育費や住宅購入の資金には使えません。夫婦のどちらか一方ではなく、それぞれの税率と手元資金のバランスを見て掛金を決めるとよいでしょう。
iDeCoの活用方法については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
④住宅選びは「2人の収入が続く前提」を点検する
ペアローンや収入合算を使うと借入可能額は大きくなりますが、一方の収入が下がっても返済できるかを事前に確認しておきましょう。夫婦それぞれが住宅ローン控除を受ける場合も、効果は収入のバランスで変わります。
- 住宅ローン控除は、各自の所得税と住民税(上限9万7,500円)から差し引かれるため、収入の少ない側は控除を使い切れないことがあります。編集部試算では、年収400万円の人が控除できるのは年約11.2万円までです。年末の借入残高が2,000万円なら控除額は14万円のため、約2.8万円が使い切れない計算になります。
出典:国土交通省「住宅を新築したとき・建築後使用されたことのない住宅(分譲住宅、建売住宅)を取得したとき」
出典:総務省「個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります」
出典:国税庁「共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算」
⑤保険は公的保障を踏まえて最小限に抑える
パワーカップルは、民間の保険を最小限に抑えられるケースが多い傾向です。夫婦それぞれに収入があるため、一方に万一のことがあっても、もう一方の収入で生活を続けやすいからです。
会社員や公務員なら、働けないときは傷病手当金、医療費は高額療養費制度という公的な備えがあります。住宅ローンを借りていれば、団信によって死亡時の返済負担も軽くなるでしょう。
ただし、遺族年金は残された配偶者の前年の収入が850万円以上だと受け取れない可能性があります。子どもが小さい時期は、必要な保障額を夫婦で確認しておくと安心です。
⑥教育費と老後資金を同時に準備する
パワーファミリーは、教育費と老後資金の準備が同じ時期に重なりがちです。教育費は元本の安定した預貯金などで、老後資金はNISA・iDeCoで長期運用するなど、使う時期に合わせて置き場所を分けると整理しやすくなります。
夫婦それぞれの退職金や年金の見込み額も確認しておきましょう。退職金額の相場や年金額の受給額については、こちらの記事でも解説しています。
相談現場で多いパワーカップルの誤解3つ
パワーカップルという言葉のイメージや制度の思い込みから、家計の判断を誤ることもあります。よく見られる誤解を3つ紹介します。
誤解1:「世帯年収1,000万円を超えたらパワーカップル」
世帯年収1,000万円は三菱総合研究所の定義での下限で、ニッセイ基礎研究所の定義では1,400万円以上が必要です。また、夫600万円・妻400万円の世帯の手取りは約783万円にとどまります。支出を増やす前に、手取りで家計を確認することが大切です。
誤解2:「ふるさと納税の上限は2人分なので片働きの倍になる」
ふるさと納税の控除上限額は、税額が多いほど大きくなります。総務省の控除の仕組みにもとづいて試算すると、上限の目安は年収600万円で約7.8万円、400万円で約4.2万円となり、夫婦の合計は約12.0万円でした。一方、年収1,000万円の片働き世帯(配偶者控除あり)は約17.4万円です。共働きは税負担が軽い分、夫婦の上限を合計しても大きくなるとは限りません。※
※住民税所得割額×20%÷(90%-所得税率×1.021)+2,000円で計算。前提は手取り試算と同じで、住宅ローン控除などは考慮していません。
ふるさと納税については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
誤解3:「高収入だから自然に資産が増えていく」
ニッセイ基礎研究所の調査では、年収700万円以上の妻がいる世帯でも、世帯金融資産が300万円未満の世帯が約1割(10.8%)ありました。収入が高くても、住宅・教育・外食や家事代行などの支出が膨らめば、資産は増えません。収入が増えたときこそ、先取りの積立額を見直すタイミングです。
この記事のまとめ
この記事では、パワーカップルには統一された定義がなく、夫婦それぞれの年収や世帯年収によって複数の基準があること、また高収入であっても税・社会保険料や住宅費、教育費などを考慮した家計管理が重要であることを解説しました。まずは夫婦の年収だけでなく、手取り、支出、貯蓄、住宅ローン、将来の教育費や老後資金まで整理してみましょう。そのうえでNISAやiDeCoなどの制度を夫婦それぞれでどう活用するかを考えると、収入を将来の資産へつなげやすくなります。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。
医療費控除
医療費控除とは、納税者が1年間に支払った医療費の一部を所得から控除できる税制上の制度を指す。自己や家族のために支払った医療費が一定額を超える場合に適用され、所得税や住民税の負担を軽減できる。対象となる費用には、病院での診療費や処方薬の費用のほか、一定の条件を満たす介護費用なども含まれる。確定申告が必要であり、領収書の保管が重要となる。
ふるさと納税
ふるさと納税とは、あなたが応援したい自治体へ寄附を行い、その寄附額のうち自己負担額2,000円を除いたほぼ全額が所得税や住民税から控除される制度です。自治体によっては地元の特産品やサービスを返礼品として受け取れるため、実質的な税負担を抑えつつ地域貢献もできる仕組みとして人気があります。控除を受けるには、寄附金受領証明書を添付して確定申告を行う方法と、年間5自治体以内で利用できるワンストップ特例申請の2通りがあり、申請手続きの簡便さも魅力です。寄附限度額は所得や家族構成によって異なるため、シミュレーションで上限額を把握してから活用することが大切です。
小規模企業共済
小規模企業共済とは、中小企業の経営者や役員、個人事業主の方のための退職金制度です。「小規模企業」という文言が含まれているとおり、一定の要件を満たす中小企業や個人事業主が対象です。 小規模企業共済制度は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が運営している「小規模企業共済法」という法令に基づいた共済制度です。 掛金は全額所得控除され、加入者は事業資金の借入れも可能です。 加入資格は、従業員が20人以下(商業・サービス業では5人以下)の個人事業主や会社役員などです。ただし、兼業で会社員をしているなど、給与所得を得ている場合は加入資格がないため注意が必要です。
実効税率
実効税率とは、名目上の税率ではなく、実際に支払った税額がどれだけの割合を占めているかを示す割合のことです。たとえば、税率が30%とされていても、各種控除や特例などを適用した結果、実際に支払った税金の割合が20%程度であれば、それが実効税率となります。 この数値は、企業の財務分析や投資判断においてとても重要です。なぜなら、同じ利益でも企業によって支払う税額が異なり、それが収益性やキャッシュフローに大きな影響を与えるからです。個人投資家にとっても、配当や売却益などにかかる税金の実効税率を知ることで、手取りの利益を正確に把握しやすくなります。名目の税率だけを見るのではなく、最終的にいくら税金が差し引かれるかという実態を理解することが、より現実的な資産運用につながります。
可処分所得
可処分所得とは、毎月の給料や事業収入など「入ってくるお金」から、まず国に納める所得税・住民税と社会保険料(年金、健康保険、雇用保険など)を差し引いたあとに残る“手取り額”を指します。言い換えれば、家計が自由に配分できるお金のスタート地点です。計算式は次のとおりです。 可処分所得 = 総所得(額面)-〔所得税+住民税+社会保険料〕 たとえば月収30万円の会社員で、税金と社会保険料が合計5万円差し引かれる場合、可処分所得は25万円です。この25万円のうち家賃や光熱費、食費といった「生活費」を支払った残りが、貯蓄や投資、趣味に回せるお金になります。 投資を始めるときに最初に決めるべきは、可処分所得の中から「生活費」「緊急用の予備資金」「投資・貯蓄」にそれぞれどれだけ配分するか、という割合設定です。たとえば生活費に20万円かかるなら、毎月5万円が積立投資の上限額となります。生活費が膨らめば投資余力は縮小するため、手取りを正確に把握していないと、無理な積立や過度なリスクを抱える原因になりかねません。 似た概念に「自由裁量所得(discretionary income)」があります。これは、可処分所得から必需的な生活費(家賃や食費など)を差し引いた“完全に自由に使える余裕資金”のことで、いわば投資・娯楽・旅行などに回せる実質的なおこづかいです。資産形成を加速したい場合は、固定費の見直しで生活費を圧縮し、自由裁量所得を増やすことが近道になります。 まとめると、可処分所得は家計管理と資産運用の出発点です。額面給与だけでなく手取り額を基準に毎月の予算を組み、自由裁量所得の範囲内でコツコツと投資や貯蓄を進めることで、無理のない長期運用が実現できます。







