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公的医療保険制度(健康保険)の種類と仕組み|保険料の計算方法や受けられる給付内容も解説
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執筆者:
公開:
2026.03.12
更新:
2026.03.12
健康保険は誰もが加入する制度ですが、仕組みや保険料の決まり方、給付内容まで正確に理解している人は多くありません。就職・転職・退職・扶養変更などの場面で手続きを誤ると、無保険期間の発生や過大な負担につながる可能性もあります。この記事では、健康保険の基本から制度別の違い、保険料計算、各種給付、退職後の選択肢までを体系的に整理し、ライフイベントごとの対応を具体的に解説します。
目次
そもそも公的医療保険制度(健康保険)とは何か
日本の公的医療保険制度は、「国民皆保険」を原則とし、すべての国民が何らかの医療保険に加入する仕組みです。主な種類として、会社員が加入する健康保険、自営業者や無職の方が加入する国民健康保険、75歳以上が対象の後期高齢者医療制度などがあります。
健康保険は、病気やけがをしたときの医療費負担を軽くするための公的な保険制度です。医療費の自己負担は原則3割(子どもや高齢者は1〜2割)で、残りは保険から賄われます。
健康保険の目的と役割
健康保険の目的は、医療費の自己負担を抑えることです。病気やけがで医療機関を受診すると、かかった医療費の一部だけを支払えばよく、残りは保険から給付されます。
この仕組みの根幹にあるのが「相互扶助」の考え方です。加入者全員が保険料を出し合い、医療が必要な人を支える仕組みになっています。健康なときに保険料を納めることで、いざというときに必要な医療を受けやすくなります。
また、健康保険は医療費の補助だけにとどまりません。仕事を休まざるを得ないときの所得補償や、出産・死亡時の給付金など、生活を多方面で支える社会保障制度としての役割も担っています。
保険証の使い方
保険証(またはマイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」)は、医療機関の窓口で提示するだけで使えます。全国の保険医療機関であれば、住んでいる地域に関わらず同じ保険証で受診が可能です。
近年はオンライン資格確認が普及し、マイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」への移行が進んでいます。従来の健康保険証は2024年12月2日以降、新規発行が停止され、手元の保険証は有効期限まで(最長2025年12月1日まで)利用可能です。以後はマイナ保険証、または保険者から交付される資格確認書で受診します。
自己負担割合の仕組み
医療費の自己負担割合は、年齢や所得によって異なります。
| 対象者 | 自己負担割合 |
|---|---|
| 小学生〜69歳 | 3割 |
| 70〜74歳 | 2割(現役並み所得者は3割) |
| 75歳以上 | 1割(所得状況に応じて2割または3割) |
| 小学校入学前の子ども | 2割 |
窓口では、年齢や所得状況に応じた自己負担分のみを支払います。残りの7割(または8〜9割)は、保険者(健康保険を運営する機関)が医療機関へ直接支払う仕組みです。
公的医療保険制度の加入条件
「国民皆保険制度」により、日本に住所を持つすべての人は、いずれかの公的健康保険に加入する義務があります。加入先は、職業や年齢によって決まります。
会社員や公務員が加入するのは、協会けんぽまたは健康保険組合です。
自営業者・フリーランス・無職の方は、お住まいの市区町村が運営する国民健康保険への加入が必要です。また、会社員や公務員などに扶養されている家族(配偶者や子どもなど)は、被保険者の保険に「被扶養者」として加入できます。
75歳になると、これまで加入していた保険から後期高齢者医療制度へ自動的に切り替わります。
公的医療保険制度の種類と特徴
日本の健康保険は、職業や年齢によって加入先が異なります。
| 保険の種類 | 対象者 | 運営主体 | 保険料の負担 |
|---|---|---|---|
| 協会けんぽ | 中小企業の会社員 | 全国健康保険協会 | 労使折半 |
| 健康保険組合 | 大企業・業界団体の会社員 | 各健康保険組合 | 労使折半(組合ごとに異なる) |
| 共済組合 | 公務員・私立学校教職員 | 各共済組合 | 労使折半 |
| 国民健康保険 | 自営業者・フリーランス・無職など | 市区町村・国保組合 | 全額自己負担 |
| 後期高齢者医療制度 | 75歳以上(一部65歳以上) | 都道府県単位の広域連合 | 原則1割自己負担 |
被用者保険(健康保険)の仕組み
被用者保険とは、会社員・公務員など「雇われて働く人」が加入する健康保険の総称です。特徴は、保険料を会社(雇用主)と従業員が半分ずつ負担する「労使折半」の仕組みにあります。
たとえば月額の保険料が3万円であれば、従業員の給与から1万5千円が天引きされ、残りの1万5千円は会社が負担します。自営業者と比べると、実質的な保険料負担が軽くなる点が大きなメリットです。
協会けんぽとは
協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)は、主に中小企業で働く従業員とその家族が加入する保険です。全国健康保険協会が運営しており、保険料率は都道府県ごとに異なります。
加入者数は約4,000万人と、被用者保険のなかで最も規模が大きい制度です。
健康保険組合(組合健保)とは
健康保険組合は、主に大企業や同業種の企業が集まって独自に設立・運営する保険です。協会けんぽと比べて財政基盤が安定しているところが多く、保険料率を独自に設定できます。
組合によっては、法定給付に上乗せする「付加給付」を設けているところもあります。たとえば、高額療養費の自己負担限度額をさらに引き下げたり、人間ドックの費用を補助したりする制度を独自に持つ組合もあります。
国民健康保険の仕組み
国民健康保険(国保)は、会社員や公務員以外の、自営業者・フリーランス・無職の方などが加入する保険です。市区町村または国保組合が運営しており、世帯単位で加入します。
被用者保険と大きく異なる点は、保険料を全額自己負担しなければならないことです。また、傷病手当金や出産手当金といった所得補償の給付がないため、働けなくなったときの備えを別途考えておく必要があります。
後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度は、75歳の誕生日を迎えた日から自動的に移行する制度です。それまで加入していた被用者保険や国保からは脱退となります。65歳以上で一定の障害があると認定された方も、申請によって加入できます。
運営主体は都道府県ごとに設置された「後期高齢者医療広域連合」です。自己負担割合は原則1割ですが、現役並みの所得がある方は3割、一定以上の所得がある方は2割となります。
健康保険の加入手続き
健康保険の手続きは、ライフステージの変化ごとに必要になります。手続きの漏れや遅れがあると、医療費を一時的に全額負担するケースもあるため、タイミングを押さえておくことが大切です。
就職時の加入手続き
就職時の加入手続きは、基本的に会社が代行してくれます。従業員は、会社の人事・総務部門の指示に従って必要書類を提出するだけです。主に必要となるのは、マイナンバーが確認できる書類と基礎年金番号(ねんきん手帳など)です。
保険証が手元に届くまでは通常2週間程度かかります。届くまでの間に受診が必要になった場合は、「健康保険資格証明書」を会社に発行してもらうことで、保険適用で受診できます。証明書がない場合は窓口で一時的に10割負担となりますが、後日保険者に申請すれば差額の払い戻しを受けられます。
転職時の切り替え方法
転職の際は、退職日の翌日に前の健康保険の資格を喪失し、新しい会社での加入手続きが始まります。入社日と退職日が連続していれば手続きは会社任せでかまいません。
問題になりやすいのが、退職日と入社日のあいだに空白期間がある場合です。この場合、空白期間中は保険の空白が生じるため、以下のいずれかの対応が必要です。
| 選択肢 | 概要 |
|---|---|
| 任意継続 | 退職前の保険を最大2年間継続できる |
| 国保への一時加入 | 市区町村の国保に加入し、転職先で切り替える |
| 家族の扶養に入る | 収入要件を満たせば被扶養者として加入できる |
扶養に入る手続き
配偶者や親などの健康保険に、被扶養者として加入する手続きは、被保険者(扶養する側)の勤務先を通じて行います。
扶養条件の詳細
扶養に入れる対象は、被保険者の3親等以内の親族です。同居が原則ですが、父母や子どもなど一部の親族は別居でも認められます。収入要件は年収130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)で、被保険者の年収の2分の1未満であることも条件のひとつです。
収入基準と確認方法
収入の判定には「見込み額」が使われます。過去の収入ではなく、これからの収入がどうなるかで判断される点に注意が必要です。収入には給与だけでなく、通勤手当や雇用保険の失業給付(基本手当)も含まれます。失業給付を受給中は、日額3,612円以上(60歳以上は5,000円以上)の場合、扶養に入れないケースがあります。
公的医療保険制度における保険料の計算方法
健康保険料は収入に応じて決まりますが、加入する保険の種類によって計算方法が異なります。自分の保険料がどのように算出されているかを理解しておきましょう。
保険料の決まり方
被用者保険(協会けんぽ・健康保険組合など)では「標準報酬月額」をもとに保険料を計算します。一方、国民健康保険では前年の所得をベースに、複数の要素を組み合わせて算出します。どちらも収入が高いほど保険料が上がる仕組みですが、計算式が大きく異なります。
標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、被用者保険で保険料を計算するための基準となる金額のことです。毎年4〜6月の給与(基本給に加え、通勤手当・残業代・家族手当なども含む)の平均額をもとに決定され、1〜50の等級に区分されます。
たとえば、4〜6月の給与平均が28万円であれば標準報酬月額は28万円の等級に区分され、その金額に保険料率をかけて保険料が算出されます。4〜6月の残業が多い月は、翌年の保険料が高くなる可能性があるため注意が必要です。
会社員の保険料計算
会社員の保険料は「標準報酬月額×保険料率」で計算され、その半分を会社が負担します。
協会けんぽの2024年度の東京都の保険料率は9.98%です。標準報酬月額が30万円の場合の計算例は以下のとおりです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 標準報酬月額 | 300,000円 |
| 保険料率(東京都) | 9.98% |
| 月額保険料合計 | 29,940円 |
| 従業員負担分(半額) | 14,970円 |
| 会社負担分(半額) | 14,970円 |
会社員や公務員の健康保険料の計算方法に関しては、こちらの記事でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
自営業の保険料計算
国民健康保険の保険料は、市区町村によって異なりますが、主に以下の4つの要素で構成されます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 所得割 | 前年の所得をもとに計算 |
| 均等割 | 世帯内の加入者数に応じて計算 |
| 平等割 | 世帯ごとに一律で課される |
| 資産割 | 固定資産税額をもとに計算(導入していない自治体もあり) |
所得割の税率や均等割の金額は市区町村ごとに設定されているため、同じ収入でも住んでいる地域によって保険料に差が生じます。おおよその保険料を調べたい場合は、お住まいの市区町村の公式サイトにある試算ツールを活用するのが確実です。
公的医療保険制度で受けられる給付内容
健康保険は医療費の補助だけでなく、働けないときの所得補償や出産・死亡時の給付金など、生活を幅広く支える制度です。給付の種類と条件を正しく把握しておきましょう。
療養の給付と自己負担
医療機関で診察・治療・薬の処方を受けたとき、その費用の一部を保険が負担する「療養の給付」が健康保険の基本的な給付です。自己負担割合は年齢や所得によって異なり、前述のとおり小学生〜69歳は原則3割です。
ただし、保険が適用されるのは「保険診療」の範囲内に限られます。美容整形や差額ベッド代、先進医療など「保険外診療」は全額自己負担となります。保険診療と保険外診療を組み合わせる「混合診療」は原則として認められていない点にも注意が必要です。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1か月の医療費の自己負担額が一定の限度額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。大きな手術や長期入院でも、自己負担が青天井にはならない仕組みになっています。
自己負担限度額は所得に応じて異なります。
| 所得区分 | 自己負担限度額(月額) |
|---|---|
| 年収約1,160万円以上 | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% |
| 年収約770万〜1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% |
| 年収約370万〜770万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
| 年収約370万円以下 | 57,600円 |
| 住民税非課税世帯 | 35,400円 |
また、事前に「限度額適用認定証」を保険者に申請しておくと、窓口での支払いが自己負担限度額までに抑えられます。入院が決まったときなどは、あらかじめ申請しておくと一時的な出費を抑えられます。
高額療養費制度に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
出産育児一時金
子どもが生まれたとき、健康保険から支給される一時金です。妊娠・出産は病気ではないため療養の給付の対象外ですが、出産育児一時金によって経済的な負担を軽減できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給額 | 子ども1人につき50万円(2024年度) |
| 対象 | 妊娠85日(12週)以上の出産(死産・流産を含む) |
| 支払方法 | 直接支払制度(医療機関が保険者から直接受け取る)が主流 |
直接支払制度を利用すると、出産費用が50万円以内であれば窓口での支払いが原則不要です。費用が50万円を超えた場合は、差額のみを窓口で支払います。
傷病手当金(健康保険・健康保険組合)
傷病手当金は、病気やけがで仕事を休まざるを得ないときに支給される所得補償の給付です。被用者保険(協会けんぽ・健康保険組合など)にのみある給付で、国民健康保険には原則ありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給額 | 直近12か月の標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2 |
| 支給期間 | 支給開始日から最長1年6か月 |
| 待期期間 | 連続3日間の休業(待期)が完成した後、4日目から支給 |
| 条件 | 療養中で労務不能であること、給与の支払いがないこと |
たとえば、標準報酬月額の平均が30万円の場合、1日あたりの支給額は「300,000円÷30×2/3=6,667円」となります。給与の約3分の2が最長1年6か月にわたって支給されるため、長期療養時の大きな支えになります。
出産手当金(健康保険・健康保険組合)
出産手当金は、産前産後休業中の所得を補償する給付です。被用者保険のみの給付で、国民健康保険には設けられていません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給額 | 直近12か月の標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2 |
| 支給期間 | 産前42日(多胎妊娠は98日)+産後56日 |
| 条件 | 被保険者本人が対象(被扶養者は対象外) |
傷病手当金と支給額の計算式は同じですが、支給期間の計算方法が異なります。産前は出産予定日を基準に計算されるため、実際の出産が予定日より遅れた場合は、その分だけ支給期間が延びます。
出産手当金の受給要件や金額などは、こちらの記事でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
埋葬料・家族埋葬料
被保険者本人が亡くなったとき、埋葬を行った家族に「埋葬料」として5万円が支給されます。生計を維持していた家族がいない場合は、実際に埋葬を行った人に「埋葬費」として実費相当額(上限5万円)が支給されます。
また、被扶養者(家族)が亡くなった場合は「家族埋葬料」として同じく5万円が被保険者に支給されます。
| 種別 | 支給対象 | 支給額 |
|---|---|---|
| 埋葬料 | 被保険者が死亡、家族が埋葬を行う場合 | 5万円 |
| 埋葬費 | 被保険者が死亡、家族以外が埋葬を行う場合 | 実費相当額(上限5万円) |
| 家族埋葬料 | 被扶養者が死亡した場合 | 5万円 |
退職後の公的医療保険制度の選択
退職後は、それまで加入していた健康保険から脱退するため、新たな保険への加入手続きが必要です。選択肢は大きく3つあり、それぞれ保険料や給付内容が異なります。
| 項目 | 任意継続 | 国民健康保険 | 家族の扶養 |
|---|---|---|---|
| 対象者 | 退職前に2か月以上加入していた人 | 他の保険に加入しない人全般 | 年収130万円未満の人 |
| 保険料 | 全額自己負担(上限あり) | 前年所得をもとに算出 | 原則0円 |
| 傷病手当金 | 退職前に受給中の場合のみ継続 | なし | なし |
| 手続き先 | 加入していた保険者 | 市区町村の窓口 | 家族の勤務先 |
| 加入期間 | 最長2年間 | 制限なし | 扶養条件を満たす間 |
保険料の負担が最も少ないのは家族の扶養に入る方法ですが、収入要件を満たす必要があります。任意継続と国保のどちらが有利かは、前年の所得や居住地によって異なるため、両方の保険料を試算したうえで判断することが大切です。
任意継続を選ぶ場合
任意継続とは、退職前に加入していた健康保険を、退職後も最長2年間継続できる制度です。在職中と同じ保険証を使い続けられるため、手続きの手間が少ない点が魅力です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請期限 | 退職日の翌日から20日以内 |
| 加入条件 | 退職日まで継続して2か月以上加入していること |
| 保険料 | 退職時の標準報酬月額×保険料率(全額自己負担) |
| 保険料の上限 | 標準報酬月額の上限(32万円)が適用される |
在職中は会社が保険料の半分を負担していましたが、任意継続では全額を自分で支払うため、保険料は退職前のおよそ2倍になります。ただし、標準報酬月額に上限が設けられているため、退職前の給与が高かった人ほど割安になるケースがあります。
国民健康保険(国保)に切り替える場合
退職後に任意継続も扶養加入も選ばない場合は、市区町村の国民健康保険への加入が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手続き期限 | 退職日の翌日から14日以内 |
| 手続き場所 | お住まいの市区町村の窓口 |
| 必要書類 | 資格喪失証明書、本人確認書類、マイナンバーが確認できる書類 |
国保の保険料は前年の所得をもとに計算されるため、退職直後は前年の収入が高い場合、保険料が割高になりやすい点に注意が必要です。退職した翌年以降は所得が下がるため、保険料も下がるのが一般的です。
なお、退職理由が会社都合(解雇・倒産など)や特定受給資格者に該当する場合は、国保の保険料が最大2年間軽減される制度があります。該当する場合はハローワークで受け取る「離職票」を市区町村窓口に持参して確認しましょう。
健康保険から国民健康保険への切り替えに関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。
配偶者や親の健康保険に扶養として加入する場合
退職後に収入が見込まれない場合や、収入が年130万円未満に収まる場合は、配偶者や親の健康保険に被扶養者として加入するのが最もコスト負担の少ない選択肢です。手続きは被保険者(扶養する側)の勤務先を通じて行います。
必要書類として、退職証明書や雇用保険受給資格者証(失業給付を受ける場合)、非課税証明書などの提出を求められるケースがあります。失業給付の受給中は収入とみなされ、扶養に入れない場合があるため、給付日額が3,612円未満かどうかを事前に確認しておきましょう。
【ライフイベント別】公的医療保険制度の手続きや対応
結婚・転職・引っ越しなど、人生の節目では健康保険の手続きが必要になります。手続きを怠ると無保険期間が生じる可能性もあるため、各場面での対応を把握しておきましょう。
結婚した時の手続き
結婚によって氏名や住所が変わった場合、健康保険の変更手続きが必要です。被用者保険に加入している場合は、勤務先の人事・総務部門に氏名変更届を提出します。国保の場合は市区町村の窓口での手続きが必要です。
共働きの場合はそれぞれが自分の職場の保険に加入し続けるため、大きな手続きは不要です。一方、どちらかが専業主婦(夫)になる場合や収入が扶養条件を下回る場合は、配偶者の健康保険に被扶養者として加入する手続きを行います。
| ケース | 必要な手続き |
|---|---|
| 氏名・住所変更のみ | 勤務先または市区町村へ変更届を提出 |
| 専業主婦(夫)になる場合 | 配偶者の勤務先を通じて扶養加入手続き |
| 共働きを継続する場合 | 氏名変更届のみ(扶養手続き不要) |
扶養から外れる時
パートやアルバイトの収入増加などで年収130万円以上が見込まれる場合、または就職して自分の健康保険に加入した場合は、速やかに扶養を外れる手続きが必要です。
扶養を外れる手続きを怠った場合、後から保険者に発覚すると、遡って医療費の返還を求められるケースがあります。収入が扶養条件を超えそうな場合は、早めに被保険者(扶養している側)の勤務先に相談することが重要です。
手続きには「健康保険被扶養者(異動)届」を勤務先を通じて保険者に提出します。就職の場合は新しい職場での加入手続きと同時に進めましょう。
なお、扶養に関する手続きは複雑です。こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
引っ越した時の対応
引っ越しの際の手続きは、加入している保険の種類によって異なります。
| 保険の種類 | 必要な手続き |
|---|---|
| 被用者保険(協会けんぽ・健保組合) | 勤務先に住所変更を届け出るのみ |
| 国民健康保険 | 旧住所の市区町村で転出手続き後、新住所の市区町村で転入手続き |
国保の場合、同じ市区町村内での引っ越しであれば転入・転出手続きは不要で、住所変更届のみで対応できます。引っ越し後14日以内に手続きを行う必要があるため、転居の際は忘れずに窓口へ足を運びましょう。
保険証紛失時の対処
保険証を紛失した場合は、速やかに再発行手続きを行います。被用者保険の場合は勤務先を通じて保険者に申請し、国保の場合は市区町村の窓口で手続きします。
悪用を防ぐため、紛失に気づいたら警察への遺失物届の提出も検討しましょう。再発行までのあいだに医療機関を受診する必要がある場合は、窓口でいったん10割負担となりますが、保険証が手元に届いた後に差額の払い戻しを申請できます。マイナ保険証(マイナンバーカードを保険証として利用)を普段から活用していれば、カード自体を紛失しない限り受診に支障をきたすことはありません。
この記事のまとめ
この記事では、健康保険の目的や仕組み、制度ごとの特徴、保険料の決まり方、受けられる給付、そして退職後の選択肢までを整理しました。まずは自分の加入状況と今後のライフイベントを確認し、保険料や手続き期限を具体的にチェックしましょう。不安や判断に迷いがある場合は、勤務先や自治体窓口、専門家への相談も検討することで、より確実な選択につなげられます。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
国民皆保険制度
国民皆保険制度とは、日本に住むすべての人が、公的な医療保険に必ず加入しなければならないという仕組みです。この制度のおかげで、誰でも収入や職業に関係なく、病気やけがをしたときに医療サービスを受けることができます。たとえば、病院での診察や治療にかかる費用の多くは保険でカバーされ、自己負担は原則として3割程度に抑えられています。 これは、安心して暮らすための社会的なセーフティネットであり、健康が損なわれたときでも経済的な負担を最小限に抑える役割を果たしています。資産運用を考える上でも、万が一の医療費がある程度予測できるという点で、家計管理における大切な前提のひとつとなります。
公的医療保険制度
公的医療保険制度とは、すべての国民が安心して医療を受けられるように、国が法律で定めた仕組みに基づいて提供される医療保険の制度です。日本では「国民皆保険(こくみんかいほけん)」と呼ばれ、国民全員がいずれかの医療保険に加入することが義務付けられています。 主な保険には、会社員などが加入する「健康保険」、自営業者や無職の人などが加入する「国民健康保険」、75歳以上の高齢者向けの「後期高齢者医療制度」などがあります。この制度により、医療費の一部(たとえば3割)を自己負担するだけで、必要な医療サービスを受けることができます。公的医療保険制度は、社会全体で医療費を支え合う「相互扶助」の仕組みであり、生活の安心を支える基本的な社会保障のひとつです。
被用者保険
被用者保険とは、企業や公的機関に雇われて働いている人が加入する健康保険制度の総称です。主に会社員や公務員が対象となり、給与から保険料が天引きされ、雇用主と被用者が保険料を折半して支払う仕組みになっています。被用者保険に加入していると、病気やけがの際の医療費の一部が給付されるだけでなく、出産手当金や傷病手当金などの保障も受けられる場合があります。 また、高額医療費制度や介護保険などの他の社会保障制度とも連動しており、安心して働きながら生活を支える役割を果たしています。資産運用の観点では、これらの保障を理解しておくことで、無駄な保険の重複加入を避け、効率的にリスク管理を行うことが可能になります。
国民健康保険
国民健康保険とは、自営業者やフリーランス、退職して会社の健康保険を脱退した人、年金生活者などが加入する公的医療保険制度です。日本ではすべての国民が何らかの健康保険に加入する「国民皆保険制度」が採用されており、会社員や公務員が加入する「被用者保険」に対して、それ以外の人が加入するのがこの国民健康保険です。 市区町村が運営主体となっており、加入・脱退の手続きや保険料の納付、医療費の給付などは、住民票のある自治体で行います。保険料は前年の所得や世帯の構成に応じて決まり、原則として医療機関では医療費の3割を自己負担すれば診療を受けられます。病気やけが、出産などの際に医療費の支援を受けるための基本的な仕組みであり、フリーランスや非正規労働者にとっては重要な生活保障となる制度です。
後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度とは、75歳以上の高齢者(および一定の障害がある65歳以上の方)を対象とした日本の公的医療保険制度です。2008年に創設され、それまでの国民健康保険や被用者保険とは別に、医療費の負担をより明確にし、公平な制度運営を目指して導入されました。 この制度では、対象者は個人単位で保険に加入し、原則として年金からの天引きで保険料を納めます。医療機関を受診した場合には、所得に応じて自己負担割合(原則1割、一定以上の所得がある人は2割または3割)で医療費を支払います。 高齢化が進む中で、医療費の増加にどう対応していくかが社会全体の課題となっており、後期高齢者医療制度はその一つの柱として、安定的な医療提供と財源確保のバランスを図る役割を担っています。資産運用においても、老後の医療費を見積もる際に、この制度の仕組みを理解しておくことは重要です。
協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)
協会けんぽとは、正式名称を「全国健康保険協会管掌健康保険」といい、主に中小企業に勤める会社員やその家族が加入する公的医療保険制度です。企業と被保険者が折半で保険料を納めることで、病気やけがの治療費の一部を負担したり、傷病手当金や出産手当金などの給付を受けられる仕組みになっています。 保険料率や給付内容は全国一律ではなく、都道府県ごとの医療費水準に応じて毎年度見直されるため、加入者は自分の居住地の料率やサービスを確認しておくと安心です。大企業が独自に設立する健康保険組合と異なり、規模の小さな事業所でも安定した医療保障を受けられることが特徴で、退職後には任意継続被保険者として最長2年間まで加入を継続できます。







