高齢者雇用継続給付金とは?65歳以上の対象条件・支給額・早見表・デメリットまで徹底解説

高齢者雇用継続給付金とは?65歳以上の対象条件・支給額・早見表・デメリットまで徹底解説
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公開:
2026.01.16
更新:
2026.01.16
定年後の再雇用で賃金が下がったとき、収入の目減りをどう補うかは多くの人に共通する悩みです。高齢者雇用継続給付金は有力な選択肢ですが、65歳以上でも対象になるのか、支給額の上限はいくらか、申請のタイミングを誤らないかで結果が変わります。この記事では制度の基本から早見表による金額の目安、申請手続き、デメリットや年金との関係までを整理し、いまの働き方に合う判断軸を解説します。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むことで、高齢者雇用継続給付金の仕組みや対象条件を体系的に理解し、65歳以上でも受給できるか、支給額はいくらが目安になるかを自分の状況に当てはめて判断できるようになります。さらに、早見表や計算の考え方、申請手続きの流れ、デメリットや年金との関係まで把握できるため、制度を誤解したまま申請漏れや想定外の不利益を招くことを防ぎ、今後の働き方や収入計画を納得感をもって検討できるようになります。
目次
高年齢雇用継続給付金とは?制度の仕組みと目的
高年齢雇用継続給付金は、定年後の賃金低下を補填するために設けられた雇用保険の制度です。60歳以降も働く人の手取り減少を抑え、65歳までの就労継続を金銭面からサポートします。本章では、制度の全体像や目的、似た名称の給付金との違い、そして雇用保険との関係について解説します。
給付金の目的|賃金が低下しても働き続ける人を支援する
高年齢雇用継続給付金は、60歳から64歳までの賃金低下を補うための仕組みです。定年後の再雇用などで、60歳時点に比べて賃金が75%未満に下がった場合に、その低下率に応じて雇用保険から現金が支給されます。
- この制度の主な目的は、急激な収入減による働く意欲の低下を防ぐことです。豊富な経験を持つシニア層が、給与面の不安を軽減しながら65歳まで安定して働き続けられるよう支援しています。
「高年齢雇用継続基本給付金」と「再就職給付金」の違い
この給付金には、大きく分けて2つの種類があります。
一つ目は、失業保険を受け取らずに同じ会社などで働き続ける人を対象とした高年齢雇用継続基本給付金です。二つ目は、一度退職して失業保険を受け取った後に再就職した人を対象とした高年齢再就職給付金です。
一般的に本制度を話題にする際は、前者の基本給付金を指すことがほとんどです。この記事でも、主に多くの人が該当する基本給付金について解説します。
雇用保険との関係|被保険者期間などの加入要件
本制度は雇用保険の一環として運用されています。定年後に同じ会社で再雇用された場合だけでなく、定年退職後に別の会社へ再就職した場合も、要件を満たせば支給の対象となります。
給付金は在職中に納めた雇用保険料を財源としており、会社や本人が受給のために追加費用を負担するものではありません。あくまで公的な支援制度として、国から本人へ支給されます。
受給できる人の5つの条件は?
この給付金は60歳になれば誰でも自動的に受け取れるわけではありません。年齢だけでなく、雇用保険の加入期間や賃金の下がり幅など、複数の条件をすべてクリアする必要があります。本章では、申請前に必ず確認しておきたい5つの必須条件と、特に勘違いしやすい年齢の区切りや賃金計算のルールについて解説します。
5つの主要受給要件|年齢・雇用保険・賃金低下率を確認
高年齢雇用継続給付金(基本給付金)を受け取るためには、まず満たすべき主要要件は5つ。加えて、支給限度額・最低限度額の範囲内に収まる必要があります。一つでも該当しない場合は支給の対象外となりますので、ご自身の状況と照らし合わせて確認してください。
要件1: 年齢が60歳以上65歳未満であること
支給の対象となるのは、60歳に達した月から65歳に達する月までの期間です。65歳以上の方は対象になりません。
要件2: 雇用保険の被保険者であること
現在働いている職場で、雇用保険に加入している(一般被保険者である)必要があります。重要なのは、その月の初日から末日まで途切れなく在籍していることです。月の途中で退職したり、雇用保険の資格を失ったりした月は、給付金を受け取れません。
要件3: 雇用保険の加入期間(被保険者期間)が通算5年以上あること
60歳になった時点で、雇用保険に通算して5年以上加入していることが条件です。もし定年前の加入期間が5年に満たない場合でも、そのまま働き続け、加入期間が5年に達した時点から受給資格が発生します。過去に未加入の期間があっても、一定期間内であれば通算することができます。
要件4: 賃金が60歳到達時と比べて75%未満に低下していること
60歳時点の賃金を基準とし、現在の賃金が75%未満に下がっている必要があります。賃金の低下率が緩やかで75%以上の水準を維持している場合や、まったく下がっていない場合は支給されません。
要件5: 基本手当(失業給付)を受給していないこと
この制度は、失業保険を受け取らずに働き続けている人を支援するものです。一度退職して失業手当をもらった後に再就職した場合は、この「基本給付金」ではなく「高年齢再就職給付金」の要件に該当するかどうかを確認することになります。
年金と失業保険の併給可否については以下Q&Aでも説明しています。
65歳以上でも受給できる?年齢制限と支給終了のタイミング
給付金がもらえる期間は、65歳になる誕生月までです。65歳を超えて働き続ける場合でも、誕生月の翌月分からは支給されなくなります。65歳以降は雇用保険上の区分が変わり、本制度の対象から外れるためです。
なお、2025年4月からは法改正の経過措置が終了し、企業には希望者全員を65歳まで雇用することが義務付けられます。しかし、65歳を超えた雇用の確保は努力義務にとどまっているため、現状では65歳以上を対象とした同様の継続給付金制度はありません。
65歳以上の高年齢雇用継続給付金については以下Q&Aでも説明しています。
賃金低下の判定|60歳到達時と再雇用後の賃金比較
給付金の判定に使う賃金は、手取り額ではなく「総支給額」で比較します。基本給に加え、通勤手当、役職手当、残業代などの各種手当も含めて計算します。ただし、賞与(ボーナス)は計算に含みません。
判定基準は、60歳時点の賃金を100としたときに、現在の賃金が75%未満になっていることです。たとえば60歳時の月給が40万円だった場合、再雇用後の月給が30万円未満(25%以上のダウン)であれば支給対象となります。
支給額はいくら?計算式と基準賃金の考え方を確認
高年齢雇用継続給付金の支給額は、一律ではなく個人の賃金状況によって毎月変動します。「いくら下がったか」という低下率をもとに計算されますが、その計算式は複雑です。ここでは、支給額が決まる基本的な仕組みや、そして支給されなくなる上限額のルールについて解説します。
支給額の計算方法と「基準賃金」の考え方
支給額の算定では、60歳到達時等の賃金月額(基準となる賃金)と、各月に支払われた賃金額を比べ、賃金の低下率に応じて給付率が決まります。なお、賃金の扱いには例外(減額がある場合の加算等)があるため、会社の賃金台帳を前提に確認します。
賃金低下率が61%を超えて75%未満の場合
賃金が60歳時点の6割から7割程度まで下がったケースです。この場合、低下率に応じて支給率は0%から15%の間で変動します。賃金と給付金を足して「60歳時点の75%」を超えないように調整されるため、賃金低下が激しい人ほど多くの給付金を受け取れます。逆に、賃金低下率が75%に近い(あまり下がっていない)場合は、支給率は限りなく0%に近づきます。
賃金低下率が61%以下の場合(大幅減収の場合)
賃金が60歳時点の6割以下(低下率61%以下)に激減したケースです。この場合は計算上の上限である「支給率15%」が適用されます。たとえば賃金が半減(50%)してしまった場合でも、その半減した賃金の15%相当額が上乗せされるため、実質的な手取りを増やすことができます。
賃金低下率が75%以上の場合
賃金が60歳時点の7割5分以上ある(低下率75%以上)ケースです。この場合、給付金は支給されません。賃金がある程度の水準(75%以上)確保できているならば、雇用保険による補填は不要という判断になるためです。
支給額計算式のポイント
計算の基本的な考え方は、「賃金と給付金を合わせて、60歳時点の75%水準を目指す」というものです。そのため、賃金低下率が61%~75%の間では、不足分を補うように支給率が細かく設定されます。たとえば賃金低下率が68%なら約6.7%の給付、65%なら約10%の給付といった具合に、賃金が低い人ほど手厚くなるよう設計されています。
支給上限と最低限度額|いくら以上だと貰えないのか
給付金には「高収入なら出さない(支給限度額)」と「少額すぎるなら出さない(最低限度額)」という2つの制限があります。計算上で受給資格があっても、この範囲外になると支給されないため注意が必要です。
高齢者雇用給付金の上限については、以下Q&Aでも説明しています。
支給限度額:高収入だと支給されない
その月に支払われた賃金が一定額を超えると、給付金は支給されません。この上限額は毎年8月に見直されており、2024年度(令和6年前半)は月額376,750円、2025年8月以降は賃金上昇に合わせて386,922円に引き上げられました。再雇用後の賃金だけでこの金額を超えている場合は、どれだけ賃金が下がっていても給付金はゼロになります。
最低限度額(最低支給額):少額すぎると支給されない
計算された給付金額が低すぎる場合も支給されません。この下限額も毎年改定され、2025年8月時点では2,411円となっています。計算結果がこの金額に満たない場合(たとえば月額1,000円程度の給付になる場合など)は、全額切り捨てとなり支給されません。
給付額の上限と下限のルールのクリアが必要
つまり、給付金を受け取るためには「賃金が適度に下がっていること(75%未満)」に加え、「現在の賃金が高すぎず(支給限度額以下)」かつ「計算された給付額が安すぎない(最低限度額以上)」という条件をクリアする必要があります。
支給率の上限に加え、支給限度額・最低限度額による制約があるため、受給額には実質的な上限・下限があります。
申請手続きの流れと期限|必要書類の書き方
高年齢雇用継続給付金は、対象になれば自動的に振り込まれるものではありません。受給するためには、原則として会社を通じてハローワークへ申請書類を提出する必要があります。本章では、申請から支給までの具体的な流れ、初回および2回目以降に必要な書類、厳守すべき申請期限について解説します。
申請から支給までの全体フローと役割分担
給付金を受け取るためには、60歳到達後に賃金が低下した月(支給対象月)が発生したタイミングで、速やかに手続きを開始します。手続きは一度きりではなく、その後も定期的な申請が必要です。
原則は「事業主(会社)」経由での申請
申請手続きは、原則として勤務先の会社(事業主)が行います。一般的には人事や総務の担当者が書類を作成し、本人の同意を得た上でハローワークへ提出します。
そのため、対象となる従業員は会社からの案内に従って書類への署名や通帳コピーの提出を行うだけで済むケースがほとんどです。現在は電子申請(e-Gov等)も普及しており、マイナンバーを活用して添付書類を省略する企業も増えています。
- この制度の主な目的は、急激な収入減による働く意欲の低下を防ぐことです。豊富な経験を持つシニア層が、給与面の不安を軽減しながら65歳まで安定して働き続けられるよう支援しています。
提出先と受付時間
書類の提出先は、会社の所在地を管轄するハローワークです。窓口の受付時間は通常平日8時30分から17時15分ですが、雇用継続給付の受付時間を16時まで等に短縮している場合もあるため確認が必要です。
「本人申請」も可能
会社が手続きを行わない場合や、本人が希望する場合は、自分で申請することも可能です。その場合、管轄のハローワークへ直接出向いて手続きを行います。ただし、本人申請であっても「賃金台帳」や「出勤簿」など会社側が証明する書類は必須です。事前に人事担当者へ相談し、必要書類を用意してもらう必要があります。
必要書類と「支給申請書」の記入例・注意点
初めて申請する場合と、2回目以降の申請では必要書類が少し異なります。
初回:受給資格確認票・支給申請書
初回の手続きでは「受給資格があるか」の確認と「最初の給付申請」を同時に行います。専用の用紙(受給資格確認票・支給申請書)に、氏名、マイナンバー、60歳時点の賃金、現在の賃金などを記入して提出します。
初回:賃金と出勤状況を証明する書類
申請書の内容が正しいことを証明するために、会社側の資料が必要です。具体的には、60歳到達時の賃金がわかる「賃金台帳(給与明細)」、および申請対象月の「賃金台帳」と「出勤簿(タイムカード)」を提出します。
初回:振込先口座の確認書類
給付金を振り込むための本人名義の口座情報が必要です。通帳やキャッシュカードのコピーを提出します。
初回:本人確認書類ほか
運転免許証のコピーや雇用保険被保険者証など、ハローワークから求められた本人確認書類を添付します。
2回目以降の申請書類(継続申請について)
初回審査が通ると、ハローワークから次回用の「支給申請書」が交付されます。2回目以降は、この申請書に対象月の賃金額を記入し、その月の賃金台帳と出勤簿を添えて提出します。初回に比べて提出書類はシンプルになります。
記入のポイント
申請書には「支払われた賃金の総額」を記入します。基本給だけでなく、残業代や各種手当を含みますが、ボーナスは除外します。注意が必要なのは通勤手当です。6ヶ月定期代などが一括支給されている場合は、その月に対応する金額(6分の1)のみを計算して記入する必要があります。
申請期限はいつまで?遅れた場合のリスク
初回申請の期限
申請期限は、支給対象となる月の初日から4ヶ月以内です。たとえば4月分の給付金を受け取る場合の期限は8月末日となります。この期限を1日でも過ぎると時効となり、その月の給付金は一切受け取れなくなるため注意が必要です。通常は、賃金が下がった最初の月の給与明細が出た段階で速やかに手続きを行います。
継続申請のサイクル
2回目以降は、2ヶ月分をまとめて申請するのが一般的です(例:4月・5月分を6月に申請)。毎月申請することも可能ですが、事務負担を減らすためにハローワークも「偶数月に2ヶ月分まとめて」の申請を推奨しています。会社が手続きする場合もこのサイクルで行われることが多いですが、期限切れを防ぐためにもスケジュール管理は重要です。
支給決定後の確認|受給資格確認通知書と不支給通知
書類提出後、ハローワークでの審査を経て支給が決定すると、「支給決定通知書」が発行されます。会社経由で申請した場合は会社を通じて、本人申請の場合は自宅へ郵送されます。
この通知書には、今回の支給額と振込予定日、そして次回の申請時期が記載されています。給付金は会社を通さず、ハローワークから直接指定口座へ振り込まれます。万が一不支給となった場合も通知が届きますので、必ず内容を確認してください。
いつ振り込まれる?支給日・振込日とスケジュールの見方
申請手続きを終えた後、いつ口座に入金されるかは最も気になるところです。この給付金は毎月の給与のように決まった日に振り込まれるわけではなく、ハローワークでの審査と支給決定を経て入金される仕組みです。本章では、申請から振込までの標準的な日数や、初回と2回目以降の違い、スケジュール管理のポイントについて解説します。
支給決定から振込日までの目安
給付金が振り込まれる時期は、「支給決定日」から約1週間後が目安です。ハローワークで審査が完了すると支給決定通知書が発行され、そこに決定日が記載されます。
たとえば、通知書に「6月15日支給決定」と記載されていた場合、その1週間後の6月22日前後に指定口座へ入金されます。金融機関の処理状況により多少前後することはありますが、決定から1週間程度を見ておけば間違いありません。
初回の振込
初めて申請を行う場合は、受給資格があるかどうかの審査も行われるため、支給決定までに時間がかかります。
- 目安として、書類提出から支給決定まで1ヶ月程度、そこから振込まで1週間かかるため、申請から入金まではトータルで1ヶ月から2ヶ月ほどかかると考えておきましょう。2回目以降の継続申請については、審査がスムーズに進むため、初回よりも早く処理されることが一般的です。
振込遅延のリスク
通常はスムーズに処理されますが、書類に不備がある場合や、ハローワークが混雑している時期は遅れる可能性があります。特に年度末から新年度にあたる3月から4月は、離職票の発行や失業給付の手続きが集中するため、審査に時間がかかる傾向があります。遅延を防ぐためには、申請書類を正確に記入し、添付書類を漏れなく揃えることが重要です。
支給対象月と「翌月払い」のサイクルを理解する
支給サイクル
2ヶ月分をまとめて申請した場合でも、支給決定処理は月ごとに行われます。そのため、支給決定通知書には対象月ごとの支給額が記載されます。実際の振込は、2ヶ月分が同日にまとめて入金されることもあれば、日付が1日ずれて別々に入金されることもあります。通帳には「ショクギョウアンテイキヨク」などの名義で記載されますので、記帳して確認してください。
定期的な入金の把握
給付金は偶数月に申請すれば奇数月に入金されるといったサイクルができます。年金や給与と同じように「いつ頃入金されるか」を把握しておけば、生活費の計画が立てやすくなります。特に振込日が月末や月初の支払いに間に合うかどうか、ご自身の申請サイクルと照らし合わせて確認しておくと安心です。
支給決定通知書で次回の振込予定を確認する方法
具体的な振込日を知りたい場合でも、労働局やハローワークへ電話で問い合わせることは避けてください。個別の振込状況については、電話では回答できない決まりになっています。
最も確実な確認方法は、お手元の「支給決定通知書」を見ることです。そこに記載された決定日から1週間程度待つのが基本ルールです。もし通知書自体が届かない場合は、まず会社の担当者に申請状況(いつ提出したか)を確認してください。申請済みにもかかわらず長期間通知が来ない場合は、審査中の可能性があるため、会社経由でハローワークへ状況を確認してもらうとよいでしょう。
万が一、決定日から1週間以上過ぎても入金がない場合は、口座情報の誤りなどで振込エラーになっている可能性があります。その場合も会社を通じて訂正等の連絡が来ますので、速やかに対応してください。
年金との併給調整・税金(確定申告)の扱い
60歳以降に働きながら年金を受け取る場合、「在職老齢年金」という仕組みによって年金が減額されることがあります。さらに高年齢雇用継続給付金を受け取ると、そこから追加で年金が調整(一部停止)されるルールがあります。「ダブルで減らされて損をしないか?」「税金の手続きは必要なのか?」といった、お金に関する不安や疑問を解消するための情報を解説します。
在職老齢年金については以下記事で詳しく解説しています。
在職老齢年金との併給シミュレーション|年金はいくら減る?
60歳から64歳までの間、「特別支給の老齢厚生年金」と「高年齢雇用継続給付金」を同時に受け取る場合、給付金を受け取る代わりとして、年金の一部が支給停止(カット)されます。
特別支給の老齢厚生年金との調整
具体的にどれくらい年金が減るかというと、標準報酬月額(月給の目安)の最大4%相当額です(2025年3月以前に60歳に達した方は最大6%)。感覚としては「受け取る給付金額の約40%分」が年金から引かれるイメージです。
たとえば、月額8万円の年金をもらっている人が、月額2万円の給付金を受け取るケースで考えてみましょう。
この場合、給付金2万円の約40%にあたる「約8,000円」が年金から引かれます。
- 年金:8万円-0.8万円=7.2万円
- 給付金:2万円
- 合計収入:9.2万円
本来の年金8万円よりも総収入は1万2千円増えています。つまり、年金と給付金の両方を満額もらうことはできませんが、調整が入ったとしても、給付金を申請したほうが手取りの総額は多くなるように設計されています。
在職老齢年金の仕組みや受給金額については、以下記事で詳しく解説しています。
厚生年金受給者が知っておくべき調整ルール
この併給調整において、絶対に知っておくべき注意点があります。それは「給付金の申請をサボると損をする」というルールです。
一度給付金の受給資格が確認されると、ハローワークと年金機構の間でデータが連携されます。もし「手続きが面倒だから」といって給付金の申請をしなかったとしても、年金機構側は「給付金を受け取れる状態」と判断し、年金の減額(停止)を続けてしまうことがあります。つまり、給付金はもらえないのに年金だけ減らされるという事態になりかねません。
受給資格がある間は、必ず毎月(または隔月)申請を行ってください。もし給付金を受け取らない場合は、ハローワークへ正式に支給終了の手続きを行う必要があります。なお、65歳になると給付金自体が終了するため、この併給調整もなくなります。
給付金に税金はかかる?年末調整と確定申告の要否
この給付金に関する税金や社会保険料の扱いは、給与とは明確に異なります。手取り計算や確定申告で迷わないよう、基本的な扱いを整理しました。
税金
高年齢雇用継続給付金は非課税です。所得税も住民税もかかりません。そのため、受け取った金額について確定申告をする必要はなく、会社の年末調整の書類に記入する必要もありません。
社会保険料
この給付金は「賃金」ではないため、健康保険や厚生年金の保険料を決める計算(標準報酬月額)には含まれません。給付金をもらっても毎月の社会保険料は上がらないので安心してください。ただし、それは裏を返せば「給付金分は将来の年金額を増やすベースにはならない」ことを意味します。あくまで実際に会社から支払われる給与額に基づいて、将来の年金や現在の保険料が計算されます。
デメリット・注意点と制度廃止の可能性
高年齢雇用継続給付金は、収入を補填してくれる心強い制度ですが、受給することによるデメリットや、将来的な制度縮小のリスクも理解しておく必要があります。年金との併給調整で手取りが伸び悩むケースや、煩雑な申請手続き、さらに2025年4月から始まる給付率の引き下げなど、利用前に知っておくべき注意点を解説します。
知っておくべきデメリット|年金減額やボーナス月の扱い
制度を利用するにあたって、金銭的なメリットが薄れてしまうケースや、手続き上の負担について具体的に解説します。
デメリット1: 年金が一部減額される
60代前半で「特別支給の老齢厚生年金」を受け取っている場合、給付金をもらうことで年金の一部がカット(支給停止)されます。減額幅は、受け取った給付金額の約40%相当です。そのため、給付金でプラスになった分の一部が年金カットで相殺され、トータルの手取りは期待したほど増えないことがあります。
だからといって「年金が減るなら給付金は申請しない」と判断するのは危険です。給付金の受給資格があるにもかかわらず申請しなかった場合でも、年金機構側で「給付金を受け取れる状態」とみなされ、年金だけが減額され続けてしまうルールがあるためです。損をしないためには、受給資格がある限りきちんと申請を続ける必要があります。
デメリット2: 申請手続きの手間
原則として2ヶ月に一度、申請書類を提出しなければなりません。会社が代行してくれるケースが大半ですが、その都度、賃金台帳の確認や署名・同意の手続きが発生します。
特に、会社が手続きに不慣れな場合や、自分で申請を行う場合は注意が必要です。申請期限(支給対象月から4ヶ月以内)を過ぎると、いかなる理由があってもその月の給付金は受け取れなくなります。定期的な事務作業が発生することは、あらかじめ覚悟しておく必要があります。
デメリット3: 受給額が思ったより少ない場合がある
この給付金には「最低支給額」と「支給限度額」があります。賃金の低下率が75%ギリギリで、計算上の給付額が数千円(約2,500円未満)にしかならない場合は、全額切り捨てとなり1円も支給されません。
また、再雇用後の賃金が比較的高く、支給限度額(約37~38万円)を超えている場合も支給対象外です。「給料が下がったから必ずもらえる」と思い込んで資金計画を立てると、あてが外れる可能性があるため、事前のシミュレーションが重要です。
デメリット4: 65歳到達で給付が終了する
この制度はあくまで60歳から64歳までの限定的な支援です。65歳の誕生月をもって支給は完全に終了します。
65歳以降も働き続ける場合、給付金がなくなることでガクンと収入が減る可能性があります。65歳からは本来の老齢厚生年金や老齢基礎年金が始まりますが、在職中の年金カット(高在老)の基準も変わるため、65歳を境にした収支の変化を事前に計算しておくことをお勧めします。
デメリット5: 賃金や処遇の在り方への影響
一部の企業では、この給付金が出ることを前提にして、再雇用時の賃金を低く設定している場合があります。しかし、後述するように給付率は今後引き下げられる方針です。
給付金頼みで給与本体が低いままだと、将来受け取る厚生年金の額(生涯平均賃金で決まる部分)にも悪影響を及ぼします。今後は給付金に依存せず、自身のスキルや役割に見合った賃金を会社と交渉していく視点も大切になります。
退職や転職をした場合の受給資格はどうなる?
定年後に一度退職してから再就職する場合や、転職をした場合でも、一定の条件を満たせば給付金を受け取ることができます。ただし、退職のタイミングで「失業保険(基本手当)」を受け取ったかどうかによって、申請できる給付金の種類や条件が変わります。それぞれのケースにおける受給資格のルールを整理しました。
失業保険をもらわずに再就職した場合
定年退職などで前の会社を辞めた後、失業保険(基本手当)の手続きをせずに、1年以内に新しい会社へ再就職したケースです。この場合、前の会社での雇用保険加入期間(5年以上)と、新しい会社での加入期間を通算できます。新しい職場での賃金が60歳時点より75%未満に下がっていれば、「高年齢雇用継続基本給付金」を受け取ることができます。
失業保険をもらってから再就職した場合
一度失業保険を受給してから再就職した場合は、基本給付金ではなく「高年齢再就職給付金」の対象になります。ただし、こちらは条件が厳しくなります。「失業保険の給付日数を100日以上残して再就職したこと」や「1年以上の雇用が見込まれること」などが必須条件です。残日数が少ないと支給されませんので注意してください。
制度は廃止される?2025年改正といつまで受給できるか
高年齢雇用継続給付金は、段階的に縮小され、将来的には廃止される方向で議論が進んでいます。その第一段階として、2025年4月から給付率の引き下げが実施されます。
支給率の上限引下げ(2025年4月~)
2025年(令和7年)4月1日以降に60歳を迎える人から、給付率の上限がこれまでの15%から10%に引き下げられます。どんなに賃金が下がっても、給付されるのは賃金の最大10%までとなります。
既存受給者への影響
2025年3月31日までに60歳に達している人は、経過措置として従来の「最大15%」の給付率が維持されます。現在すでに受給している人や、2025年3月までに60歳になる人は、途中で給付率が下げられることはありませんので安心してください。
将来的な更なる縮小・廃止方針
政府は、企業に対して70歳までの就業機会確保を促しており、「給付金で補填するのではなく、企業が適切な賃金を払って雇用すべき」という方針へシフトしています。そのため、この給付金は将来的に給付率が5%になり、最終的には廃止される見通しです。
現在50代前半以下の方は、自分が60歳になる頃には制度がなくなっている、あるいは大幅に縮小されている可能性があります。老後の資金計画を立てる際は、この給付金をあてにしすぎないよう注意が必要です。
この記事のまとめ
この記事では、高齢者雇用継続給付金について、制度の目的や対象条件、65歳以上の扱い、支給額の目安や上限、申請時の注意点までを整理しました。まずは自分の年齢、再雇用後の賃金、雇用保険の加入状況を確認し、受給対象になるかを見極めることが重要です。そのうえで早見表や計算の考え方を使い、収入への影響を把握しておきましょう。判断に迷う場合や手続きに不安がある場合は、勤務先や専門家に早めに相談することで、制度を活かした納得感のある働き方につなげることができます。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付とは、60歳以降も働き続ける人が、60歳以降に賃金が下がった場合に、その減少分の一部を補うために支給される給付金です。これは雇用保険の制度のひとつで、60歳から65歳までの間に、現役時代よりも賃金が大幅に減少した場合に、一定の条件を満たすと、国から「賃金の補填」として毎月支給されます。 給付の対象となるには、雇用保険に継続して加入していることや、支給対象月に一定の勤務実績があることなどが必要です。年金とは別の制度ですが、老齢厚生年金との関係も深く、受給状況によっては調整が入る場合もあります。高年齢者の就業を支援することで、安心して長く働ける環境をつくるための重要な制度です。
雇用保険
雇用保険とは、労働者が失業した際に一定期間、給付金を受け取ることができる公的保険制度です。日本では、労働者と事業主がそれぞれ保険料を負担しており、失業給付だけでなく、教育訓練給付や育児休業給付なども提供されます。 この制度は、収入が途絶えた際の生活資金を一定期間補う役割を果たし、資産の取り崩しを抑えるという意味でも、資産運用と補完的な関係にあります。雇用の安定を図るとともに、労働市場のセーフティネットとして重要な位置を占めています。
高年齢再就職給付金
高年齢再就職給付金とは、60歳以上65歳未満の人が失業後に再就職し、かつ再就職先での賃金が離職前より大きく下がった場合に、雇用保険からその差額の一部を補うために支給される給付金です。 これは、再就職のハードルが高くなりやすい高年齢者の就業を後押しすることを目的とした制度です。給付を受けるには、雇用保険の基本手当の受給資格を持っていて、基本手当の支給残日数が一定以上ある段階で再就職し、賃金が75%未満に低下しているなどの条件を満たす必要があります。 給付は原則として最長2年間支給され、賃金が一定水準以上に回復すると打ち切られる仕組みです。なお、2025年度末(令和6年度末)をもってこの制度は廃止される予定であり、現在は新規の支給対象者が限られています。
被保険者
被保険者とは、保険の保障対象となる人物。生命保険では被保険者の生存・死亡に関して保険金が支払われる。医療保険では被保険者の入院や手術に対して給付金が支払われる。損害保険では、被保険者は保険の対象物(自動車など)の所有者や使用者となる。被保険者の同意(被保険者同意)は、第三者を被保険者とする生命保険契約において不可欠な要素で、モラルリスク防止の観点から法律で義務付けられている。
被保険者期間
被保険者期間とは、公的な社会保険制度(年金・健康保険・雇用保険など)において、個人が被保険者として加入していた期間のことを指します。この期間は、保険料を納めていた期間や、免除を受けていた期間も含まれる場合があります。特に年金制度では、被保険者期間の長さが将来受け取れる年金額や受給資格の有無を決定する重要な要素となります。たとえば、国民年金では10年以上の被保険者期間が必要であり、厚生年金では勤務期間に応じて給付額が増えます。つまり、被保険者期間は「どれだけ長く社会保険に守られていたか」を示すものであり、老後や失業時の保障に大きく影響する重要な指標です。
基本手当
基本手当とは、雇用保険の制度において、失業中の生活を支えるために支給されるお金のことです。働く意思と能力がありながらも仕事に就けない「失業状態」にある人が、一定の条件を満たすことで受け取ることができます。 支給額は、退職前の賃金や年齢、被保険者としての加入期間などをもとに計算されます。給付は通常、4週間ごとの「失業認定日」にハローワークで認定を受けることで進められます。なお、自己都合退職か会社都合退職かによって、支給が始まるまでの期間や支給日数が変わる点も特徴です。基本手当は生活費の一部として活用されるほか、再就職までの経済的な安心材料ともなります。





