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特別支給の老齢厚生年金とは?対象者・もらえない人・計算方法をわかりやすく解説

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Special early old-age pension (paid before the regular pension age)

特別支給の老齢厚生年金とは?対象者・もらえない人・計算方法をわかりやすく解説

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執筆者:

公開:

2025.09.05

更新:

2026.09.08

公的年金資産寿命

特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金の支給開始年齢が65歳へ引き上げられる過程で設けられた経過措置で、生年月日や性別、厚生年金の加入歴によって対象者や受給開始年齢が異なります。対象でも請求しなければ自動的には受け取れず、働き方や失業給付によって支給停止となる場合もあります。この記事では、受給要件や開始年齢、金額の計算方法から、在職中の調整、請求手続きまで具体的に解説します。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読むことで、特別支給の老齢厚生年金の仕組みや対象となる生年月日・加入要件、受給開始年齢、支給額の考え方を体系的に理解できます。また、働きながら受給する場合や失業給付を受ける場合の調整、必要な請求手続きも把握できるため、自分が対象かを確認し、受給漏れや手続きの遅れを防ぎながら、65歳までの働き方と年金受給を判断できるようになります。

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目次

特別支給の老齢厚生年金とは?65歳になるまで受け取れる経過措置の年金

制度ができた背景:支給開始年齢の65歳への引き上げ

65歳からの老齢厚生年金との3つの違い

2026年度に受給できるのは女性のみ:制度は2031年3月で終了

特別支給の老齢厚生年金をもらえる人の4つの要件と生年月日別の開始年齢

生年月日別の受給開始年齢早見表

44年特例と障害者特例:生年月日が遅くても定額部分が受け取れる例外

特別支給の老齢厚生年金がもらえない人・0円になる人の5つの特徴

特徴1:生年月日が対象外である

特徴2:厚生年金の加入期間が1年未満、または受給資格期間が10年未満

特徴3:働いていて在職老齢年金の計算で全額停止になる

特徴4:雇用保険の失業給付(基本手当)を受けている

特徴5:請求しないまま5年が過ぎて時効になった

特別支給の老齢厚生年金の支給額はいくら?計算方法と金額の目安

報酬比例部分の計算式(令和8年度)

平均月収別・加入年数別の支給額シミュレーション

定額部分と加給年金額がつく人

自分の年金見込額を確認する3つの方法

働きながらもらうとどうなる?在職老齢年金と雇用保険の調整【2026年4月改正】

在職老齢年金:基準額が月51万円から65万円へ引き上げ

失業給付との調整:求職申込みの翌月から全額停止

高年齢雇用継続給付との調整:標準報酬月額の最大4%が追加で停止

特別支給の老齢厚生年金のデメリット・注意点と「受け取らない」とどうなるか

デメリット1:繰下げできず「受け取らない」と損になる

デメリット2:請求し忘れると時効で消滅する

デメリット3:課税所得が増えて扶養や保険料に影響することがある

デメリット4:働き方によっては減額や全額停止になる

もらうとどうなる?65歳以降の年金や生活への影響

特別支給の老齢厚生年金を受け取る手続きと必要書類

手続きの流れ:請求書の到着から初回振込までの5ステップ

申請時の必要書類一覧

65歳になったときの切り替え手続き

女性が特別支給の老齢厚生年金を受け取るときの3つの注意点

注意点1:第3号被保険者の期間は厚生年金の加入期間に入らない

注意点2:産休・育休・時短勤務の期間は年金額が下がらない特例がある

注意点3:離婚時の年金分割の請求期限が2年から5年に延長された

特別支給の老齢厚生年金とは?65歳になるまで受け取れる経過措置の年金

特別支給の老齢厚生年金とは、生年月日に応じて定められた60歳から64歳の開始年齢から、65歳になるまでの間に限って支給される老齢厚生年金です。厚生年金保険に加入していた会社員や公務員などが対象で、65歳からの本来の老齢厚生年金とは別の給付として扱われます。

制度ができた背景:支給開始年齢の65歳への引き上げ

かつて厚生年金は60歳から支給されていましたが、1985年の法改正で支給開始年齢が65歳に引き上げられました。急に5年分の年金がなくなると生活設計に大きな影響が出るため、生年月日に応じて段階的に開始年齢を遅らせる経過措置として設けられたのが、特別支給の老齢厚生年金です。

年金は「定額部分(加入期間に応じた部分)」と「報酬比例部分(現役時代の報酬に応じた部分)」で構成され、まず定額部分の開始年齢が引き上げられ、その後に報酬比例部分の開始年齢が引き上げられてきました。

現在受給対象となっている世代は、原則として報酬比例部分のみが支給されます。ただし、44年特例や障害者特例などに該当する場合は、定額部分も受け取れることがあります。

65歳からの老齢厚生年金との3つの違い

特別支給の老齢厚生年金と、65歳から生涯受け取る本来の老齢厚生年金は、名前は似ていても性質が異なります。違いを表で整理します。

比較項目特別支給の老齢厚生年金65歳からの老齢厚生年金
受給期間開始年齢から65歳になるまでの期間限定65歳から生涯
対象者男性1961年4月1日以前・女性1966年4月1日以前生まれで要件を満たす人厚生年金に加入歴があり受給資格期間10年以上の人
繰下げ受給できない(遅らせても増えない)できる(最大84%増額)
老齢基礎年金同時には支給されない同時に支給される
請求書の送付開始年齢の3か月前65歳の3か月前に改めて送付
特別支給の老齢厚生年金と65歳からの老齢厚生年金の違い

出典:日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」日本年金機構「年金の繰下げ受給」

最も重要な違いは、繰下げ制度がない点です。65歳からの年金は受け取りを遅らせるほど増えますが、特別支給の老齢厚生年金は遅らせても1円も増えず、放置すれば時効で消えるだけです。

2026年度に受給できるのは女性のみ:制度は2031年3月で終了

対象となる生年月日には上限があるため、2026年9月時点で受給中または今後受給を始めるのは女性だけです。男性の最終世代である1959年4月2日から1961年4月1日生まれの人は64歳から受給していましたが、2026年3月末までに全員が65歳に達しました。

女性の最終世代である1964年4月2日から1966年4月1日生まれの人は、64歳になる2028年4月から2030年3月にかけて受給を始め、2031年3月末で制度は完全に終了します。つまり、特別支給の老齢厚生年金は「あと数年で姿を消す年金」です。

  1. なお、対象の男性で請求していない人も、権利がなくなったわけではありません。年金の時効は5年なので、たとえば2026年に請求すれば、2021年以降の未払い分は遡って受け取れます。心当たりがある人は、年金事務所に確認してください。

出典:日本年金機構「年金の時効」

特別支給の老齢厚生年金を始め、年金の種類はさまざまです。詳しくは、こちらの記事も参考にしてみてください。

特別支給の老齢厚生年金をもらえる人の4つの要件と生年月日別の開始年齢

特別支給の老齢厚生年金を受け取るには、日本年金機構が定める次の4つの要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると対象外です。

特別支給の老齢厚生年金をもらえる人の要件

  1. 男性は1961年(昭和36年)4月1日以前、女性は1966年(昭和41年)4月1日以前に生まれていること
  2. 老齢基礎年金の受給資格期間(保険料納付済期間や免除期間などの合計)が10年以上あること
  3. 厚生年金保険や共済組合に合計1年以上加入していたこと
  4. 生年月日に応じた受給開始年齢に達していること

出典:日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」

生年月日別の受給開始年齢早見表

受給開始年齢は性別と生年月日で細かく分かれています。一般の厚生年金については、女性は男性より5年遅いスケジュールで引き上げられてきました。ただし、共済組合等から支給される老齢厚生年金は、女性も男性と同じ受給開始年齢となるため注意が必要です。

報酬比例部分の開始年齢定額部分の開始年齢男性の生年月日女性の生年月日
60歳60歳1941年4月1日以前1946年4月1日以前
60歳61歳1941年4月2日〜1943年4月1日1946年4月2日〜1948年4月1日
60歳62歳1943年4月2日〜1945年4月1日1948年4月2日〜1950年4月1日
60歳63歳1945年4月2日〜1947年4月1日1950年4月2日〜1952年4月1日
60歳64歳1947年4月2日〜1949年4月1日1952年4月2日〜1954年4月1日
60歳なし1949年4月2日〜1953年4月1日1954年4月2日〜1958年4月1日
61歳なし1953年4月2日〜1955年4月1日1958年4月2日〜1960年4月1日
62歳なし1955年4月2日〜1957年4月1日1960年4月2日〜1962年4月1日
63歳なし1957年4月2日〜1959年4月1日1962年4月2日〜1964年4月1日
64歳なし1959年4月2日〜1961年4月1日1964年4月2日〜1966年4月1日
対象外対象外1961年4月2日以降1966年4月2日以降
特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢(生年月日別)

出典:日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」

法律上、年齢は誕生日の前日に到達したものとみなされます。たとえば1963年5月10日生まれの女性は、63歳の誕生日の前日である2026年5月9日に受給権が発生します。

44年特例と障害者特例:生年月日が遅くても定額部分が受け取れる例外

本来なら報酬比例部分しか受け取れない世代でも、次のいずれかに該当すると、受給開始年齢から定額部分も合わせて受け取れます。

44年特例と障害者特例

  1. 長期加入者の特例:厚生年金保険の加入期間が44年(528か月)以上あり、厚生年金に加入していない状態であること
  2. 障害者の特例:障害厚生年金の1級から3級に該当する障害の状態にあり、厚生年金に加入していない状態で申し出た人
  3. 坑内員・船員の特例:厚生年金の加入期間のうち坑内員または船員であった期間が15年以上ある人

長期加入者の特例は、一般の厚生年金と公務員共済など複数の種類の期間を合算できず、1つの種類だけで44年以上必要です。定額部分に加えて加給年金額の対象にもなるため、該当しそうな人は年金事務所に確認する価値があります。

出典:日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」

特別支給の老齢厚生年金がもらえない人・0円になる人の5つの特徴

「対象のはずなのにもらえない」という相談は、制度の対象外である場合と、対象ではあるものの支給停止で0円になっている場合の2つに分かれます。代表的な5つの特徴を整理します。

特徴1:生年月日が対象外である

男性は1961年4月2日以降、女性は1966年4月2日以降に生まれた人は、厚生年金の加入期間がどれだけ長くても対象外です。この世代は65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金を受け取ることになります。60歳から年金が欲しい場合は、減額を伴う繰上げ受給を検討することになります。

特徴2:厚生年金の加入期間が1年未満、または受給資格期間が10年未満

厚生年金保険と共済組合の加入期間が合計1年未満の人は、生年月日の要件を満たしていても対象外です。専業主婦だった第3号被保険者の期間は、老齢基礎年金の受給資格期間には算入されますが、厚生年金の加入期間には含まれません。結婚前に1年以上会社勤めをしていたかどうかが分かれ目です。

  1. 受給資格期間が10年に満たない人も対象外です。この場合は、60歳から65歳までの国民年金への任意加入などで期間を満たせば、受給できる可能性があります。

特徴3:働いていて在職老齢年金の計算で全額停止になる

厚生年金に加入しながら働く人は、年金の基本月額と給与・賞与をもとにした総報酬月額相当額の合計が基準額を超えると、年金の一部または全部が支給停止になります。基準額は2026年4月から月65万円に引き上げられました。

年金の基本月額が10万円の人なら、総報酬月額相当額が75万円以上になると全額停止です。基準額の引き上げ前は月51万円だったため、月給60万円前後で全額停止になる人がいましたが、改正後は対象がかなり絞られています。

特徴4:雇用保険の失業給付(基本手当)を受けている

退職してハローワークで求職の申し込みをすると、実際に失業給付を受けたかどうかにかかわらず、申し込みをした月の翌月から年金は全額支給停止になります。失業給付と特別支給の老齢厚生年金は同時に受け取れないため、どちらが有利かを比べて選ぶ必要があります。

特徴5:請求しないまま5年が過ぎて時効になった

年金は請求しなければ支払われず、支払日から5年を過ぎた分は時効で受け取れなくなります。「そのうち手続きしよう」と放置して60歳台後半になってから請求すると、初めの数年分が消えてしまいます。請求書が届いたら、受給権の発生後すぐに提出してください。

出典:日本年金機構「雇用保険の給付を受けると年金が止まります!」日本年金機構「年金の時効」

特別支給の老齢厚生年金の支給額はいくら?計算方法と金額の目安

現在受給できる世代の支給額は、報酬比例部分の計算式で決まります。現役時代の平均報酬と厚生年金の加入月数が大きいほど、年金額は増えます。

報酬比例部分の計算式(令和8年度)

報酬比例部分は、2003年3月以前の加入期間と2003年4月以降の加入期間で計算式が異なります。2003年4月以降は賞与も計算に含まれるようになったため、乗率が下がっています。

報酬比例部分の計算式

  1. 2003年3月以前の期間:平均標準報酬月額×7.125/1,000×加入月数
  2. 2003年4月以降の期間:平均標準報酬額×5.481/1,000×加入月数

平均標準報酬額とは、各月の標準報酬月額と標準賞与額を現在の価値に再評価して平均した金額です。おおまかには「賞与を含めた平均月収」と考えて差し支えありません。

基本的には、2003年3月以前と2003年4月以降の期間について計算した額を合計します。ただし、実際の年金額には「従前額保障」という仕組みがあり、従来の計算方法による額の方が高い場合は、その額が報酬比例部分として支給されます。そのため、正確な受給額はねんきんネットや年金事務所で確認するのが確実です。

出典:日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」

平均月収別・加入年数別の支給額シミュレーション

計算式をもとに、全期間を2003年4月以降の乗率で計算した目安を編集部で試算しました。実際の額は加入時期や賞与の有無で前後します。

平均月収(賞与込み)加入20年加入30年加入40年
20万円年約26万円(月約2.2万円)年約39万円(月約3.3万円)年約53万円(月約4.4万円)
30万円年約39万円(月約3.3万円)年約59万円(月約4.9万円)年約79万円(月約6.6万円)
40万円年約53万円(月約4.4万円)年約79万円(月約6.6万円)年約105万円(月約8.8万円)
50万円年約66万円(月約5.5万円)年約99万円(月約8.2万円)年約132万円(月約11.0万円)
特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額・月額の目安(編集部試算)

上表は計算方法を理解するため、全期間に2003年4月以降の乗率を当てはめた単純試算です。現在、特別支給の老齢厚生年金の対象となる世代で加入期間が長い人は2003年3月以前の加入期間を含むため、実際の年金額とは差が生じます。

試算では、65歳までの数年間で合計すると数百万円になるため、請求しない選択は現実的ではありません。なお、個人の見込額は、加入時期や標準報酬、賞与などを反映したねんきんネットで確認してください。

年金にかかる税金や最終的な手取り額については、こちらの記事で詳しく解説しています。

定額部分と加給年金額がつく人

44年特例などに該当して定額部分が支給される場合、定額部分は1,766円×加入月数(上限480か月)で計算されます。1956年4月1日以前に生まれた人の単価は1,761円です。

さらに、定額部分が支給され、厚生年金の加入期間が20年以上あり、生計を維持している65歳未満の配偶者や18歳年度末までの子がいる場合は、加給年金額が加算されます。令和8年度の加給年金額は配偶者と1人目・2人目の子が各243,800円、3人目以降の子が各81,300円で、配偶者には生年月日に応じて36,000円から179,900円の特別加算がつきます。

報酬比例部分のみを受け取る世代には、特別支給の期間中は加給年金額がつきません。65歳になって本来の老齢厚生年金に切り替わった時点で、要件を満たせば加算が始まります。

出典:日本年金機構「加給年金額と振替加算」日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」

加給年金についてくわしく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

自分の年金見込額を確認する3つの方法

正確な金額は加入記録によって異なるため、次の3つの方法で確認しましょう。

年金見込額を確認する方法

  1. ねんきん定期便:50歳以上の人には、特別支給の老齢厚生年金を含む年金見込額が記載されています。毎年誕生月に届きます
  2. ねんきんネット:加入記録をもとに、受給開始年齢を変えた場合の見込額を試算できます。マイナポータルからも利用できます
  3. 年金事務所・街角の年金相談センター:働きながら受け取る場合の停止額など、個別の事情を含めた試算を受けられます

ねんきん定期便やねんきんネットについては、こちらの記事で解説しています。あわせて参考にしてみてください。

働きながらもらうとどうなる?在職老齢年金と雇用保険の調整【2026年4月改正】

60歳台前半は働き続ける人が多く、給与や雇用保険の給付との調整が支給額を大きく左右します。2026年4月の制度改正で在職老齢年金の基準額が引き上げられ、働きながらでも年金を受け取りやすくなりました。

在職老齢年金:基準額が月51万円から65万円へ引き上げ

厚生年金に加入しながら働く場合、年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超えると、超えた分の半分が支給停止になります。総報酬月額相当額は、その月の標準報酬月額に直近1年間の賞与の合計を12で割った額を足したものです。

支給停止後の年金月額は、次の式で計算します。

Old-age pension for people who are still working

総報酬月額相当額合計額支給停止額支給される年金月額
50万円60万円0円10万円(全額支給)
55万円65万円0円10万円(全額支給)
60万円70万円2.5万円7.5万円
65万円75万円5万円5万円
70万円80万円7.5万円2.5万円
75万円以上85万円以上10万円以上0円(全額停止)
基本月額10万円の場合の在職老齢年金の早見表(2026年4月以降・編集部試算)

改正前の基準額51万円では、月給と賞与を合わせた総報酬月額相当額が41万円を超えた時点で減額が始まっていました。改正後は55万円までなら全額受け取れるため、多くの人が減額の心配なく働けます。支給停止額は標準報酬月額が変わった月(退職した場合は翌月)から見直されます。

出典:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」

在職老齢年金に関しては、こちらの記事でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。

失業給付との調整:求職申込みの翌月から全額停止

退職後にハローワークで求職の申し込みをすると、申し込んだ月の翌月から、失業給付の受給期間が終わる月または所定給付日数を受け終わる月まで、年金は加給年金額を含めて全額支給停止されます。給付制限期間中で実際に失業給付を受けていない月も停止の対象です。

ただし、失業給付を1日も受けなかった月の年金は、後から「事後精算」として遡って支払われます。停止が解除された年金の支払いは、手続きから約3か月後です。失業給付を受けている期間は年金が止まるため、退職後にどちらを受けるかは総額で比較して判断してください。

高年齢雇用継続給付との調整:標準報酬月額の最大4%が追加で停止

60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満に下がった人は、雇用保険から高年齢雇用継続給付を受けられます。

2025年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率が見直されました。高年齢雇用継続基本給付金は、2025年4月1日以降に60歳に達した人などについて最大10%となり、年金の追加的な支給停止は標準報酬月額の最大4%です。

この給付を受けると、在職老齢年金による停止に加えて、標準報酬月額の最大4%(給付率15%の人は最大6%)が年金から追加で停止されます。たとえば標準報酬月額20万円で年金月額10万円の人なら、給付2万円を受け取る代わりに年金が8,000円停止され、合計では手取りが増える計算です。

  1. 注意点として、初回の給付申請が認められると、その後に申請をやめても、給付を受けられる期間中は年金の一部停止が解除されません。給付を受けるかどうかは最初に決めておく必要があります。

出典:日本年金機構「雇用保険の給付を受けると年金が止まります!」厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」

高年齢雇用継続給付について詳しく知りたい場合は、こちらの記事を参考にしてみてください。

特別支給の老齢厚生年金のデメリット・注意点と「受け取らない」とどうなるか

特別支給の老齢厚生年金は基本的に受け取って損のない年金ですが、制度の特徴を知らないと不利益を受けることがあります。デメリットとして挙げられる4点を整理します。

デメリット1:繰下げできず「受け取らない」と損になる

65歳からの年金と違い、特別支給の老齢厚生年金には繰下げ制度がありません。受け取りを遅らせても増額はなく、受け取らずに放置しても65歳からの年金が増えるわけではないのです。「もらうと65歳からの年金が減る」という誤解もありますが、両者は別の給付であり、受け取っても将来の年金額は減りません。

特別支給の老齢厚生年金には繰下げによる増額がないため、対象となった場合は速やかに請求するのが基本です。請求を長期間放置すると、5年の時効により受け取れなくなる部分が生じる可能性があります。

デメリット2:請求し忘れると時効で消滅する

年金を受ける権利は、支払日の翌月初日から5年で時効にかかります。たとえば62歳から受給できる女性が請求を忘れ、68歳で気づいて請求した場合、63歳になるまでの1年分は受け取れません。請求書が届いたら、受給権が発生した日以降にすぐ提出しましょう。

デメリット3:課税所得が増えて扶養や保険料に影響することがある

年金は雑所得として課税されるため、配偶者の扶養に入っている人は、年金額によっては税法上の扶養から外れることがあります。健康保険の被扶養者は60歳以上なら年収180万円未満が目安で、年金も収入に含まれる点に注意が必要です。また、国民健康保険に加入している人は、年金の所得が翌年の保険料に反映されます。

デメリット4:働き方によっては減額や全額停止になる

前述のとおり、厚生年金に加入しながら高い給与を得ている人や、失業給付を受けている人は、年金が減額または全額停止になります。「もらえるはずの年金が0円だった」という事態を避けるには、退職時期や働き方を年金の受給と合わせて設計することが大切です。

もらうとどうなる?65歳以降の年金や生活への影響

特別支給の老齢厚生年金を受け取っても、65歳からの老齢基礎年金と老齢厚生年金には影響しません。65歳になると特別支給の権利は消滅し、改めて本来の年金を請求する形になります。65歳からの年金を繰り下げて増やす選択も、特別支給を受け取ったかどうかに関係なく可能です。

働きながら受け取って一部が支給停止された場合でも、停止された分が65歳以降に上乗せされることはありません。逆に、60歳台前半に厚生年金に加入して働いた期間は、65歳からの老齢厚生年金の計算に加わり、年金額を増やします。

出典:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

なお、公的年金の繰上げ・繰下げに関する損益分岐点に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。

特別支給の老齢厚生年金を受け取る手続きと必要書類

年金は受給権が発生しても自動では振り込まれません。日本年金機構から届く請求書を提出して初めて支給が始まります。手続きの流れと必要書類を確認しましょう。

手続きの流れ:請求書の到着から初回振込までの5ステップ

特別支給の老齢厚生年金は、受給開始年齢に達しても自動的に支給されるわけではなく、年金請求書の提出が必要です。請求書が届いてから実際に年金が振り込まれるまでの流れを、5つのステップで確認しておきましょう。

特別支給の老齢厚生年金を受け取るまでの流れ

  1. 受給開始年齢に達する3か月前に、氏名や年金加入記録があらかじめ印字された「年金請求書(事前送付用)」が届く
  2. 同封の案内に沿って、戸籍謄本や通帳のコピーなどの添付書類を準備する
  3. 受給開始年齢に達した日(誕生日の前日)以降に、年金事務所または街角の年金相談センターへ提出する(到達前に提出しても受け付けられない)
  4. 日本年金機構で審査が行われ、1〜2か月ほどで年金証書と年金決定通知書が届く
  5. 年金証書の到着から1〜2か月後に初回の振込があり、以後は偶数月の15日に前2か月分がまとめて支払われる

厚生年金の加入期間が1年未満で特別支給の対象にならない人には、開始年齢の時点では請求書は届きません。65歳になる3か月前に、本来の老齢年金を請求するための請求書が送付されます。

出典:日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金を受給するときの手続き」日本年金機構「老齢年金の請求手続きの流れ」日本年金機構「老齢年金請求書の事前送付」

申請時の必要書類一覧

請求書に添付する書類は、本人の状況によって異なります。主なものを表にまとめました。

区分書類備考
全員年金請求書、本人の生年月日を確認できる書類(戸籍謄本など)請求書にマイナンバーを記入すれば生年月日の確認書類は省略可
全員受取先金融機関の通帳またはキャッシュカードのコピー公金受取口座を利用する場合は省略できることがある
全員雇用保険被保険者証などのコピー雇用保険との調整に必要(加入歴がない場合は不要)
配偶者・子がいる人戸籍謄本、世帯全員の住民票、配偶者や子の収入確認書類加給年金額の対象になる場合に必要
特別支給の老齢厚生年金の請求に必要な主な書類

戸籍謄本や住民票は、受給権発生日以降に交付されたものを用意します。早めに取得しすぎると再取得が必要になるため、誕生日の前後に取りに行くのが確実です。

65歳になったときの切り替え手続き

特別支給の老齢厚生年金は65歳で終了し、本来の老齢基礎年金と老齢厚生年金に切り替わります。この切り替えも自動ではなく、65歳の誕生月の初め頃に届くハガキ形式の年金請求書を返送する必要があります。

65歳から老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取る場合は、期限までに請求手続きが必要です。提出が遅れると年金の支払いが一時保留されることがあります。なお、老齢基礎年金・老齢厚生年金の両方を66歳以降に繰り下げる場合は、この請求書を提出する必要はありません。

  1. ハガキには繰下げ受給を希望する場合の記入欄もあります。老齢基礎年金と老齢厚生年金のどちらか一方だけを繰り下げることもできるため、65歳以降の働き方や貯蓄に合わせて選びましょう。

出典:日本年金機構「65歳時の年金の手続き」

女性が特別支給の老齢厚生年金を受け取るときの3つの注意点

2026年度以降に受給を始めるのは女性だけです。結婚や出産で働き方が変わった人が多いため、加入記録の見方と年金分割の期限を押さえておきましょう。

注意点1:第3号被保険者の期間は厚生年金の加入期間に入らない

会社員の夫に扶養されていた第3号被保険者の期間は、老齢基礎年金の受給資格期間には算入されますが、厚生年金の加入期間ではありません。特別支給の要件である「厚生年金1年以上」は、自分が会社勤めをして厚生年金に加入していた期間だけで判定されます。

結婚前や子育て後にパートで厚生年金に加入していた期間が合計1年以上あれば、対象になる可能性があります。ねんきん定期便の加入記録で「厚生年金保険」の月数を確認してください。

注意点2:産休・育休・時短勤務の期間は年金額が下がらない特例がある

産前産後休業や育児休業の期間は、申し出により厚生年金保険料が免除され、免除期間も加入期間として年金額に反映されます。また、3歳未満の子を養育するために時短勤務で給与が下がった場合も、申し出をしていれば下がる前の標準報酬月額で年金額が計算されます。

これらの特例が適用されているかどうかは、加入記録の標準報酬月額を見れば確認できます。過去の勤務先で手続き漏れがあった場合は、年金事務所に相談してください。

注意点3:離婚時の年金分割の請求期限が2年から5年に延長された

離婚した場合は、婚姻期間中の厚生年金記録を分ける年金分割の制度があります。合意分割は夫婦の合意または裁判手続きで按分割合を決め、3号分割は2008年4月1日以後の第3号被保険者期間について相手の同意なしに2分の1に分割できます。

請求期限は、2026年4月1日以後に離婚した場合は離婚日の翌日から5年以内です。それ以前に離婚した場合は従来どおり2年以内なので、期限を過ぎていないか確認してください。分割を受けた記録は、特別支給の老齢厚生年金の額にも反映されます。

出典:日本年金機構「離婚時の年金分割」

離婚時の財産分与についてくわしく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

この記事のまとめ

この記事では、特別支給の老齢厚生年金について、対象となる生年月日や受給要件、開始年齢、支給額の計算方法、在職老齢年金や失業給付との調整、請求手続きを整理しました。特に重要なのは、対象者であっても自動的に支給されるわけではなく、自分で請求する必要がある点です。まずはねんきん定期便やねんきんネットで加入記録と見込額を確認し、対象となる場合は受給開始時期や働き方を踏まえて早めに手続きを進めましょう。

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柴田充輝

金融系ライター

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。

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特別支給の老齢厚生年金

特別支給の老齢厚生年金とは、一定の年齢以上で厚生年金に長く加入していた人が、65歳になる前から受け取ることができる特別な年金制度です。現在の年金制度では、原則として老齢厚生年金の支給開始は65歳からとなっていますが、昭和36年4月1日以前に生まれた方については、60歳から65歳までの間に特別に年金を受け取れる仕組みが設けられています。 これは制度変更の経過措置として設けられたもので、年金制度が65歳支給開始に移行する過程で、不公平が生じないようにするための配慮です。受け取れる金額は、加入期間や報酬額などによって決まり、加給年金や特別加算がつく場合もあります。現在は新たにこの制度の対象になる人はいませんが、過去に対象となった方にとっては大切な収入源となっています。

老齢厚生年金

老齢厚生年金とは、会社員や公務員などが厚生年金保険に加入していた期間に応じて、原則65歳から受け取ることができる公的年金です。この年金は、基礎年金である「老齢基礎年金」に上乗せされる形で支給され、収入に比例して金額が決まる仕組みになっています。つまり、働いていたときの給与が高く、加入期間が長いほど受け取れる年金額も多くなります。また、一定の要件を満たせば、配偶者などに加算される「加給年金」も含まれることがあります。老後の生活をより安定させるための重要な柱となる年金です。

老齢基礎年金

老齢基礎年金とは、日本の公的年金制度の一つで、老後の最低限の生活を支えることを目的とした年金です。一定の加入期間を満たした人が、原則として65歳から受給できます。 受給資格を得るためには、国民年金の保険料納付済期間、免除期間、合算対象期間(カラ期間)を合計して10年以上の加入期間が必要です。年金額は、20歳から60歳までの40年間(480月)にわたる国民年金の加入期間に応じて決まり、満額受給には480月分の保険料納付が必要です。納付期間が不足すると、その分減額されます。 また、年金額は毎年の物価や賃金水準に応じて見直しされます。繰上げ受給(60~64歳)を選択すると減額され、繰下げ受給(66~75歳)を選択すると増額される仕組みになっています。 老齢基礎年金は、自営業者、フリーランス、会社員、公務員を問わず、日本国内に住むすべての人が加入する仕組みとなっており、老後の基本的な生活を支える重要な制度の一つです。

経過措置

経過措置とは、法律や制度が新しく変更・施行されたときに、すぐにすべての人や取引にその新制度を適用するのではなく、一定期間だけ旧制度や特例を認めることで、影響を緩やかにするための対応措置のことです。 資産運用や税制の分野では、例えば税率が上がる場合や控除制度が変わる場合に、それまでのルールで手続きした人に対しては旧ルールをしばらく適用し続ける、という形で使われます。 これにより、投資家や納税者が急な制度変更による不利益や混乱を避けられるようになります。ただし、経過措置には期限があるため、その適用期間や条件をよく確認しておくことが大切です。

加給年金

加給年金とは、厚生年金に加入していた人が老齢厚生年金を受け取る際に、一定の条件を満たしていれば上乗せして支給される年金のことです。主に、年金を受け取る人に扶養している配偶者や子どもがいる場合に支給されます。この制度は、家族の生活を支えることを目的としており、会社員などが退職後に受け取る厚生年金にプラスされるかたちで支給されます。 ただし、配偶者や子どもが一定の年齢や収入要件を超えていると対象外になることがあります。つまり、定年後の生活を家族と一緒に支えていく仕組みの一つといえます。

振替加算

振替加算とは、国民年金の制度において、老齢厚生年金を受け取る配偶者に対して加算される年金の一部です。具体的には、配偶者が一定の要件を満たし、かつ自分自身の基礎年金を満額もらえない(たとえば国民年金の加入期間が短い)場合に、老齢厚生年金に上乗せして支給されるものです。この制度は、年金制度が整備される以前に結婚・子育てをしていた専業主婦(主夫)などが不利にならないように設けられました。受給の条件には、生年月日や配偶者との関係、国民年金の納付状況などが関係します。資産運用や老後の生活設計においては、年金収入の見込みを正しく把握するために、振替加算の有無は重要な確認ポイントの一つです。

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