
既往症とは?持病や既往歴があっても入れる生命保険の種類と注意点をわかりやすく解説
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公開:
2025.10.01
更新:
2025.10.01
「持病があると生命保険には入れないのでは…」と不安に感じる方は少なくありません。実際には、病歴があっても加入できる保険はいくつも存在し、現在治療中の方でも必要な保障を得られる道があります。大切なのは「自分に合った保険をどう選ぶか」です。
本記事では、既往症とは何を指すのかという基本から、加入可能な保険の種類、そして見落とされがちな告知義務の重要性まで整理します。引受基準緩和型保険、無選択型保険、一時払終身保険など、選択肢ごとの特徴と注意点を理解すれば、これまで難しいと感じていた保険加入も現実的に検討できるようになります。
サクッとわかる!簡単要約
本記事を読むことで、既往症がある方でも生命保険に加入できる仕組みと注意点を理解できます。引受基準緩和型は告知項目が少なく比較的加入しやすい一方で、保険料は通常よりも高めです。無選択型は原則として誰でも加入できる反面、保険料が高く、加入後も保障に制限があります。一時払終身保険や特別条件付き契約なども含め、各タイプの特徴を比較することで、自分に合った選択肢を見つけられるようになります。
目次
既往症とは何か
既往症とは、過去にかかったことがあるものの、現在は完治している病気やケガのことを指します。
ただし、風邪や軽い腹痛など、一時的な症状で後遺症もない病気は既往症には含まれません。
用語 | 定義 | 具体例 |
---|---|---|
既往症 | 過去にかかったことがあるが、現在は完治している病気やケガ | 5年前に完治した胃潰瘍、3年前の骨折、過去の肺炎など |
持病 | 現在も治療中で完治していない病気(基礎疾患・慢性疾患) | 糖尿病、高血圧、ぜんそく、リウマチなど |
病歴(既往歴) | 既往症をまとめた記録や履歴全体を指す | 過去から現在までの病気・ケガの記録すべて |
定期的な通院や入院、手術を必要とした病気が既往症として扱われることが一般的です。なお、保険会社により定義・告知対象が異なる点には留意しましょう。
既往症の定義
既往症は「過去に罹患(りかん)したが、すでに完治した病気」と定義されます。具体的には、継続的に治療を受けていた病気や、入院・手術を伴った病気などが該当します。
たとえば、5年前に胃潰瘍で入院治療を受けたが現在は完治している場合、この胃潰瘍は既往症となります。また、骨折や交通事故での治療、アレルギー症状、出産に関連する処置なども既往症に含まれることがあるため、保険加入時には注意が必要です。
保険会社によって既往症の扱いは異なりますが、基本的には「医師の診察・検査・治療・投薬」のいずれかを受けた経験がある病気やケガは、既往症として申告する必要があります。
既往症と持病の違い
既往症と持病の大きな違いは、現在治療中かどうかという点にあります。既往症は「過去の病気で現在は完治している」ものを指し、持病は「現在も治療が継続している病気」を意味します。
持病は基礎疾患や慢性疾患とも呼ばれ、糖尿病、高血圧、ぜんそく、リウマチなどが代表的な例となります。これらは長期的かつ継続的な治療や服薬が必要で、完治が難しい病気として扱われています。
保険加入の観点から見ると、持病のほうが既往症よりも審査が厳しくなる傾向があります。なぜなら、現在も治療中ということは、今後も医療費がかかる可能性が高いと判断されるためです。
既往歴・病歴との関係
既往歴(きおうれき)や病歴は、既往症をまとめた「記録」や「履歴」を指す言葉です。厳密にいえば、既往症は病気そのものを指し、既往歴は過去の病気の履歴全体を表します。
たとえば、「10年前の肺炎」「5年前の胃潰瘍」という個々の病気が既往症で、これらをまとめた記録が既往歴となります。医療機関や保険会社では、これらの用語をほぼ同じ意味で使用することも多いため、文脈に応じて理解することが大切です。
また、現病歴という言葉もありますが、これは現在治療中の病気の経過や症状を記録したものを指します。保険の告知書では、既往歴と現病歴の両方について正確に申告することが求められています。
既往症があると生命保険に加入できない可能性がある理由
生命保険は健康な方を前提に設計されているため、既往症がある方は加入を断られる場合があります。これは保険会社が意地悪をしているわけではなく、保険制度を維持するために必要な仕組みなのです。
保険は多くの人がお金を出し合い、万が一の時に備える「助け合い」の制度です。この仕組みを公平に保つためには、加入者のリスクを適切に評価する必要があります。
保険の相互扶助の仕組み
生命保険は「相互扶助(そうごふじょ)」という助け合いの精神で成り立っています。相互扶助とは、みんなでお金を出し合って、困った人を助ける仕組みのことです。
たとえば、1万人が月1,000円ずつ保険料を払えば、毎月1,000万円が集まります。この集まったお金から、病気や死亡などの保険事故にあった人に保険金が支払われるという仕組みになっています。
しかし、もし保険金を受け取る可能性が高い人ばかりが加入してしまうと、集めた保険料では保険金の支払いが間に合わなくなってしまいます。そのため、保険会社は加入時に健康状態を確認し、リスクの高さに応じて加入の可否を判断しているのです。
公平性の原則
保険における公平性とは、リスクに応じた適切な保険料負担を意味します。健康な人と既往症がある人では、将来的に保険金を受け取る確率が異なるため、同じ条件で加入させることは不公平になってしまいます。
具体的に説明すると、30歳の健康な方と、30歳で心臓病の既往症がある方を比較した場合、後者のほうが入院や手術のリスクが高くなります。もし両者が同じ保険料を払うとすれば、健康な方が損をすることになってしまうのです。
このような不公平を防ぐため、保険会社は既往症の有無や種類によって、加入条件を変えたり、保険料を調整したりしています。これは差別ではなく、保険制度を維持するために必要な措置となっています。
リスク評価の必要性
保険会社がリスク評価を行うのは、適切な保険料を算出し、安定した保険サービスを提供するためです。リスク評価とは、その人が将来どのくらいの確率で保険金を受け取ることになるかを予測することを指します。
保険会社は膨大な統計データをもとに、年齢、性別、職業、そして健康状態などから、その人のリスクを数値化しています。既往症がある方は、統計的に再発や関連疾患の発生リスクが高いと判断されることが多いのです。
ただし、リスクが高いからといって、すべての既往症がある方が保険に入れないわけではありません。リスクの程度に応じて、条件付きでの加入や、引受基準を緩和した商品への加入など、さまざまな選択肢が用意されています。
なお、医療保険に関してはこちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。
既往症がある方の選択肢①引受基準緩和型保険
引受基準緩和型保険は、通常の生命保険よりも加入条件をゆるくした保険商品です。「限定告知型保険」や「選択緩和型保険」とも呼ばれ、既往症がある方でも比較的加入しやすくなっています。
引受基準緩和型の特徴
引受基準緩和型保険は、通常の保険に比べて健康状態の審査基準を緩和しています。過去に大きな病気をした方や、現在治療中の方でも加入できる可能性が高い保険です。
ただし、加入しやすい分、保険料は通常の保険より1.5〜2倍程度高く設定されています。これは、健康リスクの高い方も加入できるため、保険会社にとってのリスクが大きくなることが理由です。
また、保障内容についても、通常の保険と比べると制限がある場合があります。たとえば、死亡保険金の上限額が低めに設定されていたり、付加できる特約(オプション)が限られていたりすることがあります。
告知項目の具体例
この保険の特徴は、告知項目が3〜5個程度と少なく、その内容も簡単なものになっていることです。
引受基準緩和型保険の告知項目は、保険会社によって異なりますが、一般的には以下のような質問になっています。すべての質問に「いいえ」と答えられれば、原則として加入できる仕組みです。
- 現在、入院中ですか
- 過去3か月以内に、医師から入院・手術・検査をすすめられたことがありますか
- 過去2年以内に、病気やケガで入院したこと、または手術を受けたことがありますか
- 過去5年以内に、がん・肝硬変・統合失調症・認知症・アルコール依存症で医師の診察を受けたことがありますか
これらすべてに「いいえ」と答えられれば、糖尿病や高血圧などの持病があっても加入できる可能性があります。通常の保険では10項目以上の詳細な告知が必要なことを考えると、かなりハードルが下がっていることがわかります。
保険料と保障内容
引受基準緩和型保険の保険料は、同じ保障内容の通常保険と比べて割高になります。たとえば、
保障内容については、基本的な入院給付金や手術給付金、死亡保険金などは通常の保険と同様に受け取れます。持病の悪化や既往症の再発についても、多くの商品で保障の対象となっています。
ただし、がん診断給付金や先進医療特約など、一部の特約は付加できないことがあります。また、保険金額の上限が通常の保険より低く設定されている場合もあるため、加入前によく確認することが大切です。
たとえば、オリックス生命やメディケア生命では、引受基準緩和型の保険を取り扱っています。
支払削減期間の注意点
引受基準緩和型保険には「支払削減期間」という重要な注意点があります。これは、契約してから一定期間(多くは1年間)は、給付金や保険金が50%に削減される期間のことです。
たとえば、入院給付金日額1万円の契約でも、加入から1年以内の入院では日額5,000円しか受け取れません。この期間中に大きな病気をしてしまうと、期待していた保障額の半分しか受け取れないことになります。
最近では、支払削減期間のない引受基準緩和型保険も登場しています。保険料は若干高くなりますが、加入直後から満額の保障を受けたい方は、こうした商品を選ぶとよいでしょう。
また、支払削減期間にも保険会社や商品によって差があるため、事前に確認することが大切です。
既往症がある方の選択肢②無選択型保険
無選択型保険は、健康状態の告知や医師の診査がまったく必要ない生命保険です。「無告知型保険」とも呼ばれ、既往症や持病に関係なく、原則として誰でも加入できる保険となっています(入院中等は不可の場合あり)。
引受基準緩和型保険でも加入を断られてしまった方にとって、最後の選択肢となることが多い商品です。ただし、加入のハードルが低い分、さまざまな制限があることを理解しておく必要があります。
無選択型保険とは
無選択型保険は、健康状態による選択(審査)を行わない保険という意味で、この名前がついています。年齢などの条件を満たせば、がんの治療中の方や、重い持病がある方でも加入できるのが最大の特徴です。
保険会社にとってはリスクが非常に高い商品のため、取り扱っている会社は限られています。
申込み手続きは簡単で、健康告知がないため、通常の保険のような診断書の提出や健康診断も不要です。ただし、入院中の方は加入できないなど、最低限の条件は設けられてるのが一般的です。
メリット・デメリット
無選択型保険のメリットは、健康状態を理由に加入を断られることがない点です。他の保険にすべて断られた方でも、死亡保障を確保できる可能性があります。
しかし、デメリットも多く存在します。まず、保険料が高額になりやすく、通常の保険の2〜3倍程度、引受基準緩和型と比べても1.5倍程度になるケースが一般的です。また、保険金額の上限も低く、多くの商品で300万円〜500万円程度に制限されています。
さらに、加入後2年間は病気による死亡の場合、保険金が支払われず、払い込んだ保険料相当額しか受け取れません。この期間中に亡くなってしまうと、保険としての意味がほとんどなくなってしまうのです。
引受基準緩和型との違い
無選択型保険と引受基準緩和型保険の大きな違いは、健康告知の有無です。引受基準緩和型は簡単な告知が必要ですが、無選択型は一切の告知が不要となっています。
保険料で比較すると、無選択型のほうが引受基準緩和型より高額です。40歳男性が死亡保険金300万円の保険に加入する場合、引受基準緩和型なら月額8,000円程度のところ、無選択型では月額12,000円以上になることもあります。
保障内容の制限も異なります。引受基準緩和型は加入後1年間は給付金が50%に削減されますが、無選択型は2年間、病気による死亡保障がまったく受けられないという、より厳しい制限があるのです。
保障制限期間の確認
無選択型保険で特に注意すべきは「保障制限期間」です。多くの商品で、契約から2年間は病気による死亡の場合、死亡保険金ではなく、それまでに払い込んだ保険料相当額のみが支払われます。
たとえば、月額1万円の保険料で、加入から1年後に病気で亡くなった場合、本来の死亡保険金300万円ではなく、12万円(1万円×12か月)しか受け取れません。災害(事故)による死亡の場合は、この制限期間中でも保険金が満額支払われるのが一般的です。
このような厳しい制限があるため、無選択型保険は「どうしても保険に入りたい特別な事情がある方」以外にはおすすめできません。まずは通常の保険や引受基準緩和型保険への加入を検討し、それでも難しい場合の最終手段として考えるべきでしょう。
既往症がある方の選択肢③一時払終身保険
一時払終身保険は、契約時に保険料をまとめて1回で支払う終身保険です。既往症がある方にとって注目すべきは、健康告知が不要、または簡易的な告知で加入できる商品が存在することです。
通常、数百万円から1,000万円程度のまとまった資金が必要になりますが、月々の保険料支払いがなく、相続対策としても活用できるため、退職金や預貯金に余裕がある方に適した選択肢となっています。
健康告知が緩い商品
一時払終身保険のなかには、健康告知がまったく不要な商品があります。
告知が不要な理由は、保険会社にとってリスクが比較的低いためです。契約時にまとまった保険料を受け取れることで、運用益が見込めるうえ、保険料の未払いリスクもありません。
ただし、契約から一定期間(多くは5年間)は、死亡保険金が払い込んだ保険料相当額に制限される場合があります。また、特約を付ける場合は別途告知が必要なこともあるため、商品パンフレットで必ず確認しましょう。
相続対策としての活用
一時払終身保険は、相続対策として非常に有効な商品です。死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があり、現金で相続するよりも税負担を軽減できます。
たとえば、配偶者と子ども2人が法定相続人の場合、1,500万円(500万円×3人)までの死亡保険金は相続税がかかりません。1,000万円の現金をそのまま相続すると課税対象になりますが、一時払終身保険にしておけば非課税となるのです。
また、死亡保険金は受取人の固有財産となるため、遺産分割協議の対象になりません。特定の家族に確実に財産を残したい場合や、葬儀費用などすぐに必要なお金を準備しておきたい場合にも適しています。
生命保険を活用した相続対策は、こちらの記事で詳しく解説しています。
注意すべき点
一時払終身保険にはいくつかの注意点があります。まず、加入時にまとまった資金が必要で、一般的には最低でも200万円〜300万円、商品によっては500万円以上必要になることもあります。
解約返戻金(解約時に戻ってくるお金)についても注意が必要です。契約後しばらくは元本割れする期間があり、早期に解約すると損をしてしまいます。特に、契約から10年未満での解約は、払い込んだ保険料を下回ることが多いため、長期的な資金計画が欠かせません。
さらに、生命保険料控除の適用は、保険料を支払った年のみとなります。月払いや年払いの保険なら毎年控除を受けられますが、一時払いは初年度だけしか控除を受けられないため、節税効果は限定的です。
既往症がある方の選択肢④特別条件付き契約
特別条件付き契約は、既往症がある方でも通常の生命保険に加入できる方法のひとつです。保険会社が指定する特定の条件や制限を受け入れることで、標準的な保険商品への加入が可能になります。
ただし、すべての保険会社が必ず対応しているわけではありません。
条件タイプ | 仕組み | 具体例 |
---|---|---|
特定部位不担保 | 体の特定の部位や臓器に関する病気を一定期間(1〜5年)または全期間、保障の対象外とする | 胃潰瘍の既往症がある場合:「胃と十二指腸の病気は5年間保障対象外」期間経過後は通常保障に移行 |
保険料割増(特別保険料) | 通常の保険料に10〜50%程度を上乗せして支払う。保障内容に制限はなし | 通常保険料5,000円の場合:30%割増で月額6,500円、すべての病気・ケガが保障対象 |
保険金削減方式 | 契約から一定期間内の保険事故は、保険金・給付金を段階的に削減して支払う | 死亡保険金1,000万円の契約:1年目50%(500万円)、2年目70%(700万円)、3年目以降100%(1,000万円) |
引受基準緩和型や無選択型保険よりも保険料が安くなる場合が多いため、まずはこの方法での加入を検討してみる価値があります。
特定部位不担保
特定部位不担保(とくていぶいふたんぽ)とは、体の特定の部位や臓器に関する病気を、一定期間または全期間にわたって保障の対象外とする条件です。
たとえば、胃潰瘍の既往症がある方が加入する場合、「胃と十二指腸の病気は5年間保障対象外」という条件がつくことがあります。この期間中に胃がんで入院しても給付金は支払われませんが、心臓病や骨折など、他の部位の病気やケガは通常どおり保障されます。
不担保期間は通常1年〜5年程度で設定され、その期間が過ぎれば、不担保だった部位も保障の対象になります。既往症と関連の深い部位だけが制限されるため、それ以外の病気には備えられます。
保険料割増
保険料割増(特別保険料)は、通常の保険料に一定の金額を上乗せして支払う条件です。健康な方よりもリスクが高い分、その差額を保険料で調整する仕組みとなっています。
割増率は既往症の種類や程度によって異なりますが、通常の保険料の10%〜50%程度が上乗せされることが一般的です。40歳男性で月額5,000円の保険料の場合、30%割増なら月額6,500円を支払うことになります。
保険料は高くなってしまいますが、保障内容に制限がない点が大きなメリットです。すべての病気やケガが保障対象となるため、既往症の再発や関連疾患にもしっかり備えることができます。
保険金削減方式
保険金削減方式は、契約から一定期間内に保険事故が発生した場合、受け取れる保険金や給付金を削減する条件です。期間と削減率は、既往症の内容によって決められます。
具体的には、契約から1年目は保険金の50%、2年目は70%、3年目以降は100%といった段階的な設定が一般的です。死亡保険金1,000万円の契約でも、1年目に亡くなった場合は500万円しか受け取れません。
この方式は、時間の経過とともに既往症のリスクが低下することを前提としています。削減期間を過ぎれば満額の保障を受けられるため、長期的な保障を求める方には適した条件といえるでしょう。保険料の割増がない分、経済的負担も抑えられます。
医療保険の審査が厳しい保険会社の特徴は、こちらのQ&Aをご覧ください。
保険タイプ別のメリット・デメリット一覧
既往症がある方でも加入できる保険タイプについて、一覧表でまとめました。
保険タイプ | メリット | デメリット |
---|---|---|
引受基準緩和型保険 | ・告知項目が3〜5個と少ない ・持病の悪化も保障対象 ・通常の保険に近い保障内容 | ・保険料が通常の1.5〜2倍程度 ・加入後1年間は給付金50%削減 ・付加できる特約が限定的 |
無選択型保険 | ・健康告知が一切不要 ・誰でも加入可能 ・手続きが簡単 | ・保険料が非常に高額(通常の2〜3倍程度) ・保険金額の上限が低い(300〜500万円) ・加入後2年間は病気死亡の保障なし |
一時払終身保険 | ・健康告知不要の商品あり ・相続税の非課税枠活用可能 ・月々の保険料支払い不要 | ・まとまった資金が必要(数百万円) ・早期解約で元本割れリスク ・生命保険料控除は初年度のみ |
特別条件付き契約 | ・通常の保険商品に加入可能 ・引受基準緩和型より保険料が安い ・条件期間経過後は通常保障 | ・特定部位や疾病が保障対象外 ・保険料割増の可能性 ・一定期間保険金が削減される場合も |
既往症がある方の保険選びは、段階的なアプローチが重要です。まず通常の保険に「特別条件付き」で加入できないか検討し、難しければ「引受基準緩和型」、それでも加入できない場合に「無選択型」を選ぶという順序が基本となります。
また、退職金などまとまった資金がある方は「一時払終身保険」も有力な選択肢です。特に相続対策を兼ねたい場合は、税制上のメリットも活用できます。
重要なのは、一社で断られてもあきらめないことです。保険会社によって審査基準は異なるため、複数社への相談をおすすめします。既往症があっても、適切な保険で必要な保障を確保することは十分可能なのです。
保険加入時の告知義務
生命保険に加入する際には、必ず「告知義務」というものがあります(無選択型を除く)。告知義務とは、自分の健康状態や病歴について、保険会社に正直に伝えなければならない義務のことです。
この告知は、保険会社が用意した「告知書」という書類に記入するか、保険会社が指定した医師の診察を受けることで行います。営業担当者に口頭で伝えただけでは告知したことにならないため、注意が必要です。
なぜ告知が必要か
告知が必要な理由は、保険会社がその人のリスクを正確に把握し、適切な保険料や加入条件を設定するためです。先ほど説明した保険の公平性を保つうえで、告知は欠かせない手続きとなっています。
告知書では「過去5年以内に入院や手術をしたことがありますか」「現在、薬を服用していますか」といった質問に答えていきます。これらの情報をもとに、保険会社は加入の可否や保険料を決定するのです。
また、告知内容によっては、健康診断書や医師の診断書の提出を求められることもあります。面倒に感じるかもしれませんが、これも保険制度を適切に運営するために必要な手続きです。
告知義務違反のリスク
告知義務違反とは、故意または重大な過失により、事実と異なることを告知したり、重要な事実を隠したりすることです。告知義務違反が発覚すると、深刻な結果を招く可能性があります。
もっとも重大な結果は、保険契約の解除です。保険金や給付金の支払い時に告知義務違反が発覚すると、保険金が支払われないばかりか、契約自体が解除されてしまいます。さらに、すでに支払った保険料も原則として返還されません。
たとえば、胃潰瘍の既往症を隠して加入し、その後がんで入院した場合でも、告知義務違反が発覚すれば保険金は支払われない可能性があります。契約から2年以上経過していても、詐欺行為と判断されれば契約は取り消されることもあるのです。
正確な告知の重要性
正確な告知は、自分自身を守るためにも非常に重要です。「このくらいなら言わなくてもいいだろう」という自己判断は避け、聞かれたことには正直に答えるようにしましょう。
告知で迷いやすいのが、軽い症状や短期間の通院歴です。たとえば、頭痛での通院、虫歯の治療、アトピーでの受診なども、告知書の質問に該当する場合は必ず申告する必要があります。
もし告知すべきかどうか迷った場合は、保険会社や代理店に確認することをおすすめします。また、告知後に思い出した病歴があれば、すぐに保険会社に追加告知を行いましょう。正直に申告することが、結果的に自分と家族を守ることにつながります。
医療保険の必要性に関しては、こちらのQ&Aもあわせて参考にしてみてください。
保険会社選びのポイント
既往症がある方の保険選びでは、保険会社の選択が非常に重要になります。同じ既往症でも、A社では加入を断られたのに、B社では条件付きで加入できた、というケースは珍しくありません。
各社で審査基準や商品ラインナップが異なるため、あきらめずに複数の保険会社を比較検討することが大切です。
各社の審査基準の違い
保険会社によって、既往症に対する審査基準は大きく異なります。これは、各社が持つ統計データや、リスク評価の方法、経営方針などが違うためです。
また、引受基準緩和型保険の告知項目も会社によって異なります。「過去2年以内の入院・手術」を聞く会社もあれば、「過去1年以内」としている会社もあるため、自分の状況に合った商品を探すことが重要になります。
生命保険会社を選ぶ際に確認しておきたいのが、「ソルベンシー・マージン比率」です。こちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
複数社への申込み
既往症がある方は、最初から1社に絞らず、複数の保険会社に相談や申込みをすることをおすすめします。審査結果は実際に申し込んでみないと、実際にはわからない部分も多いためです。
ただし、同時期に多数の保険会社に申し込むと、「この人は健康状態に問題があるのでは」と警戒される可能性があります。まずは2〜3社程度に絞って相談し、断られた場合に次の会社を検討するという進め方がよいでしょう。
申込み時は、各社で同じ内容を正確に告知することが大切です。A社には軽く伝えて、B社には詳しく伝えるといった対応は避け、どの会社にも同じ情報を提供するようにしましょう。
ファイナンシャルプランナー(FP)と保険の相談をする際には、いくつか注意点があります。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
この記事のまとめ
既往症があっても生命保険に加入できる可能性は十分にありますが、保険料の割増や保障制限といった条件を理解しておくことが重要です。まずは通常の保険に特別条件付きで加入できないか確認し、難しい場合は引受基準緩和型や無選択型を検討しましょう。
保険加入時に必要となる可能性がある書類は、事前に準備しておくとスムーズです。基本的には告知書の記入だけで済むことも多いですが、既往症の内容によっては追加書類を求められることがあります。
複数社の審査基準を比較することで選択肢は広がり、専門家への相談でさらに最適化できます。告知義務を守り、正確な情報を伝えることが、自分と家族の安心につながります。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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関連する専門用語
既往歴
既往歴(きおうれき)とは、これまでにかかった病気やケガ、その治療内容など、過去の健康状態に関する記録や事実を指します。保険の分野ではとくに重要な概念であり、生命保険・医療保険・がん保険などに加入する際の「告知義務」に直結します。 保険会社は、契約者の既往歴を参考にして、リスクの程度を判断します。たとえば、過去に大きな病気を患った場合は、将来的に再発や関連する病気を発症する可能性があると見なされ、保険の引き受けが制限されたり、特定の部位・疾病が保障対象外となる「特定部位不担保」の条件がついたり、場合によっては加入そのものを断られることもあります。一方で、完治から一定の期間が経過しており、再発リスクが低いと判断されれば、通常の条件で加入できるケースもあります。 既往歴は契約者にとって不利に働くことが多いですが、正直に告知することが何より大切です。仮に既往歴を隠して加入した場合、保険会社に発覚すると「告知義務違反」となり、保険金が支払われないリスクがあります。近年では、既往歴があっても加入できる「引受緩和型保険」や「持病があっても入れる医療保険」などの商品も増えており、健康状態に応じた選択肢が広がっています。 したがって、保険加入時には自分の既往歴を正しく整理し、通常の商品がよいのか、緩和型が適しているのかを検討することが重要です。不安があれば専門家に相談し、告知の方法や商品選びについてアドバイスを受けると安心です。
引受基準
引受基準とは、保険会社や金融機関などが、契約の申し込みに対して受け入れるかどうかを判断するために定めた社内基準のことです。たとえば、生命保険に加入しようとする場合、申込者の年齢、健康状態、職業、既往歴などが引受基準に照らして審査され、その結果によって契約が承諾されたり、条件付きで引き受けられたり、あるいはお断りされることもあります。 資産運用に関わる場面では、保険商品や金融商品を扱ううえで、顧客のリスク許容度や属性に基づいた適切な商品提供やリスク管理を行うための判断基準としても活用されます。引受基準は、契約者に対して公平で透明性のあるサービス提供を行うと同時に、保険会社や金融機関自身の経営リスクを抑える役割も果たしています。
特定部位不担保
特定部位不担保とは、医療保険や生命保険に加入する際に、過去に治療歴のある臓器や部位について、一定期間または契約期間中ずっと保障の対象外とする取り決めを指します。たとえば、過去に膝を手術したことがある人が保険に加入する場合、その膝に関する入院や手術は給付の対象外となる、といった条件が付けられることがあります。これは、保険会社がすでにリスクが高いと判断された部位に対する将来的な支払い負担を避けるための仕組みです。 一方で、特定部位不担保という条件が設けられることで、本来なら「既往歴があるため加入できない」と判断される可能性があった人でも、保険に加入できる道が開けるという側面があります。つまり、保障範囲を一部制限する代わりに、その他の部位や病気については通常通りの保障を受けられるため、全く加入できないよりも安心感が得られる仕組みなのです。 実際には、がんや心疾患といった大きなリスク部位が不担保とされる場合もあれば、軽度な既往歴に基づいて限定的に設定される場合もあります。契約時には、不担保の範囲や期間を確認し、自分にとってどの程度実用的な保障になるのかを判断することが大切です。不担保を受け入れてでも広い範囲で保障を確保するのか、あるいは別の商品を検討するのか、選択の基準になります。
既往症
既往症とは、保険に加入する前の時点で、すでにかかったことのある病気や、現在治療中の病気のことを指します。医療保険や生命保険などに申し込む際、保険会社は契約者の健康状態を確認しますが、このとき過去の病歴や現在の治療状況が審査に大きく影響します。 既往症がある場合、保険料が高くなったり、特定の病気に関する保障が制限されたり、最悪の場合は加入を断られることもあります。ただし、最近では持病があっても加入できる「引受基準緩和型保険」などの選択肢も増えており、健康に不安のある方でも保険に入ることが可能になっています。
引受基準緩和型保険
引受基準緩和型保険とは、健康状態に不安がある人や持病のある人でも加入しやすいように、通常の保険よりも加入時の審査基準(引受基準)を緩やかにした保険のことです。一般の保険では健康状態に関する詳しい質問や診査が必要ですが、このタイプでは「過去〇年以内に入院したことがありますか?」など、限定的な質問だけで加入できるケースが多くあります。 ただし、保険料は通常の保険よりも割高に設定されることが一般的で、契約から一定期間(例:1~2年)は保障内容が制限される「免責期間」が設けられることもあります。持病や高齢によって通常の保険に加入できなかった人にとっては、貴重な保障手段となります。加入のハードルは低い一方で、保障内容や費用のバランスをよく理解することが大切です。
無選択型保険
無選択型保険とは、過去の病歴や現在の健康状態について詳細な告知をしなくても加入できる保険のことです。一般的な保険では、加入時に健康診断や告知書の提出が求められ、その内容によっては契約を断られる場合があります。 しかし無選択型保険は、この審査を行わない、または極めて簡素にすることで、持病がある方や高齢の方でも加入しやすくした仕組みです。その分、保険料は通常より高めに設定され、保障額も限定的になるものの、誰でも受け入れられる安心感を提供します。
支払削減期間
支払削減期間とは、保険契約の開始直後に設定される一定期間で、このあいだに発生した入院・手術・死亡などの保険金や給付金は、約款で定められた割合(多くは50%)に減額されて支払われる仕組みです。 とくに持病や既往症があっても加入しやすい「引受基準緩和型」や「無選択型」の医療保険に設けられることが多く、加入者が加入直後に高額な請求をした場合の保険会社のリスクを抑える役割があります。 期間の長さは商品ごとに異なりますが、代表的には契約日から1年間で、以後は満額支払いに切り替わります。資産運用の観点では、この期間中は保障が半減するため、突発的な医療費や葬儀費用を自己資金や他の保険でカバーできるよう流動性資金を確保しておくと、運用計画を崩さずに済みます。
告知義務
告知義務とは、生命保険や医療保険などに加入する際に、契約者が自分の健康状態や既往歴、現在の病気や生活習慣などについて正しく伝える義務のことを指します。この義務を怠ったり、意図的に事実と異なる申告をすると、保険金が支払われなかったり、契約自体が解除されることがあります。告知義務は保険会社が公平にリスクを判断するために欠かせない仕組みであり、契約者にとっても将来の安心を守る大切なルールです。資産運用の観点でも、保険はリスクに備える重要な手段であるため、告知義務を正しく理解しておくことが必要です。
告知義務違反
告知義務違反とは、主に保険契約を結ぶ際に、自分の健康状態や過去の病歴、職業などについて、保険会社から求められた情報を正確に伝えなかったことを指します。 生命保険や医療保険などに加入する際、契約者は申込書などでいくつかの質問に答える必要がありますが、その際に虚偽の申告や重要な事実を意図的に隠すと「告知義務違反」となります。 この違反が発覚した場合、たとえ保険料を払い続けていても、保険金が支払われなかったり、契約が解除されたりする可能性があります。資産運用の一環として保険を利用する人にとっては、信頼性と保障の維持のためにも、正確な告知がとても重要です。
一時払い終身保険
一時払い終身保険とは、契約時に保険料を一括で支払うことで、一生涯にわたる死亡保障を得られる生命保険です。途中で保険料を払い続ける必要がないため、まとまった資金を活用して効率的に保障を確保したい方に向いています。 また、解約返戻金が比較的早い時期から増えやすい設計になっていることが多く、相続対策や資産の一部を安全に運用したいと考える方にも選ばれています。保障は一生続くため、万が一の際には確実に保険金を遺すことができ、残された家族の安心につながります。加入後の保険料の負担がないというシンプルさも、大きな特徴です。