バンガード(Vanguard)ETFとは?VT・VTI・VOOなど代表銘柄の仕組みや特徴と世界分散投資への活用法を徹底解説

バンガード(Vanguard)ETFとは?VT・VTI・VOOなど代表銘柄の仕組みや特徴と世界分散投資への活用法を徹底解説
難易度:
執筆者:
公開:
2025.11.07
更新:
2025.11.07
投資を始めたいけれど何から選べばよいか分からない。そんな時選択肢として有力なのがバンガードETFです。バンガードは創業者ジョン・C・ボーグルの「投資家第一主義」と、投資家が間接的に運用会社のオーナーとなる「投資家所有モデル」により、利益を信託報酬の引き下げで還元してきました。さらにNISAなどの非課税制度を活用すれば低コストの強みを一段と活かせます。
本記事では仕組み、買い方、代表ETF、総コストの見方、制度活用、基本ポートフォリオまでをやさしく整理し、見落としがちな「経費率以外のコスト」や指数の違いも押さえて、迷わず最初の一歩を踏み出せるように導きます。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むと、バンガードが選ばれる理由(投資家所有モデルによる低コスト)や、海外ETFの直接購入と国内投信経由の違い、経費率だけでなく為替や税まで含めた総コストの考え方、新NISAやiDeCoの活用の筋道など、必要な知識が整理されます。
また、どの商品が自分にあうか迷った場合に参考となる代表的なポートフォリオ例、VT一本・米国重視・株式+債券を参考に、必要な商品を自分で選べる基準が身につきます。
目次
なぜバンガード(Vanguard)は世界中の投資家に選ばれるのか?
ルート2:国内の投資信託を経由する(楽天・SBIなど手間なく始めたい方向け)
コア株式(全世界・米国の王道):「VT」「VTI」「VOO」
債券で値動きを緩和:米国総合債「BND」・米国外投資適格債「BNDX」
サテライト(インカム強化):高配当株「VYM」連続増配「VIG」
サテライト(成長と分散の追加):新興国株式「VWO」米国REIT「VNQ」
バンガードを新NISA・iDeCoで活用!非課税メリットを最大化する使い方
新NISAの基本:2つの非課税投資枠「つみたて投資枠」と「成長投資枠」
シナリオ1:とにかくシンプルに「VT」1本で全世界におまかせ投資
シナリオ2:米国中心で力強い成長を狙う「VOO/VTI+VXUS」
シナリオ3:値動きをマイルドにする「株式+債券(BND)」のバランス型
本当のコストは経費率だけじゃない!「総コスト」で考えるのが成功の鍵
ETF選びで差がつく「指数との連動性」と「ベンチマーク」の違い
「トータルリターン(配当込み)」で本当の実力をチェックする方法
S&P500とCRSPはどう違う?連動する指数の特徴を理解しよう
バンガードETFと国内投信(SBI・V/楽天V)はどっちがいい?
なぜバンガード(Vanguard)は世界中の投資家に選ばれるのか?
世界最大級の資産運用会社バンガードが、なぜ多くの投資家から支持されるのでしょうか。その理由は、創業者ジョン・C・ボーグルが掲げた「投資家第一主義」の理念と、利益を投資家に還元する独自の企業構造にあります。ここでは、バンガードの哲学と低コストを実現する仕組みを解説します。
利益を投資家に還元する「投資家所有モデル」が低コストの秘密
バンガードの低コストを実現する最大の秘訣は、その独特な企業構造にあります。一般的な運用会社と違い、バンガードはファンドの投資家自身が会社のオーナーとなる「投資家所有モデル」を採用しています。
これは、バンガードのファンドを保有する投資家が、間接的に運用会社であるバンガードの株主でもあることを意味します。そのため、会社の利益は外部の株主ではなく、投資家へ還元される仕組みです。具体的には、運用資産の規模が拡大して得られた利益を、信託報酬(運用コスト)の引き下げという形で投資家に還元します。この構造が、資産の拡大とコストの低下という好循環を生み出しているのです。
この「投資家がオーナー」というモデルにより、バンガードは常に投資家へのコスト還元を最優先でき、業界最低水準の手数料体系を維持しています。
長期・分散・積立を続けたい人に最適な運用会社
バンガードは、1975年の創業時から「すべての投資家に公平な成功の機会を提供する」という使命を掲げてきました。その投資哲学は、短期的な利益追求ではなく、長期的な視点での資産形成を重視します。
世界初の個人投資家向けインデックスファンドを発売して以来、市場全体に低コストで分散投資する機会を提供し続けてきました。そのため、市場の変動に惑わされず、規律ある積立投資をコツコツと続けたい投資家にとって、最適なパートナーと言えるでしょう。
バンガードETFの始め方|2つの購入ルートを徹底比較
日本の投資家がバンガードの商品に投資するには、大きく2つの方法があります。一つはコストを最重視し、海外の証券取引所に上場するETFを直接購入する方法。もう一つは、手間なく円建てで始められる国内の投資信託を経由する方法です。それぞれの特徴とメリット・デメリットを比較します。
ルート1:海外ETFを直接購入する(コスト最重視の方向け)
この方法では、米国の証券取引所などに上場しているバンガードETFを直接買い付けます。株式と同様に市場価格でリアルタイムに取引できるため、機動的な売買が可能です。
最大の魅力は、信託報酬(経費率)が非常に低い点です。例えば、S&P500に連動するVOOの経費率は年0.03%、全世界株式に連動するVTでも年0.07%と、極めて低コストで運用できます。
ただし、注意点もいくつかあります。まず、購入時には円を米ドルに両替するための為替手数料がかかります。また、ETFから支払われる分配金は米ドルで受け取り、自動で再投資されないため、ご自身で再投資の手続きを行う必要があります。
ルート2:国内の投資信託を経由する(楽天・SBIなど手間なく始めたい方向け)
この方法では、「楽天・バンガード・ファンド」や「SBI・Vシリーズ」のように、バンガードETFに投資する国内の投資信託を購入します。円建てで100円といった少額から積立投資ができ、購入・管理が簡単なため、特に初心者の方に優しいルートです。
近年は信託報酬の引き下げが進み、海外ETFとのコスト差も縮小しています。例えば「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」の信託報酬は年0.0938%程度と、VOOの年0.03%と比較しても差はわずかです。為替の両替手続きが不要で、分配金もファンド内で自動的に再投資されるため、手間をかけずに運用を続けやすい点も大きなメリットです。
注意点として、投資信託の信託報酬に加えて、投資先である海外ETFの経費率も間接的に負担する「二重コスト」構造になっています。ただ、競争の激化により、総コストは年々低下する傾向にあります。
バンガードETFのおすすめ代表銘柄
バンガードには多様なETFがありますが、ここでは資産運用の目的別に「コア」「サブコア」「サテライト」という3つの役割に分けて代表的な銘柄をご紹介します。それぞれの特徴と具体的な活用の考え方を理解し、ご自身のポートフォリオ構築にお役立てください。
※信託報酬は2025年10月時点の目安です。新NISAでは成長投資枠での取扱いが基本となります。
コア株式(全世界・米国の王道):「VT」「VTI」「VOO」
ポートフォリオの中心となるのが、低コストで広範な分散投資を実現するコア株式ETFです。長期保有の土台となり、資産運用の初心者の方はまずここから検討するのが王道です。
| 商品名(ティッカー) | 信託報酬 (目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Vanguard Total World Stock ETF (VT) | 0.07% | ○ (成長枠) | コア | 1本で先進国と新興国の全世界株式に時価総額加重で超広範分散。 |
| Vanguard Total Stock Market ETF (VTI) | 0.03% | ○ (成長枠) | コア | 米国市場の大型〜小型まで網羅する「米国丸ごと」。広さ重視。 |
| Vanguard S&P 500 ETF (VOO) | 0.03% | ○ (成長枠) | コア | 米国大型株500社に分散。代表性・流動性が高い王道コア。 |
まず、VTは「これ一本で世界に投資したい」という方に最もシンプルな選択肢です。国別配分の調整などをバンガードに任せられるため、手間をかけずに長期積立を続けたい場合に適しています。
次に、VTIとVOOは米国経済の成長を主軸に据える場合に選びます。VTIは小型株まで含む米国市場全体に、VOOはS&P500に連動する主要大型株に投資します。市場全体の厚みを取るならVTI、代表性と安定感を重視するならVOOが良いでしょう。
S&P500とVTIの選び方は以下Q&Aでも説明しています。
米国外株式「VXUS」米国除く先進国「VEA」
米国株式を中心にポートフォリオを組む際に、地理的な偏りを緩和し、国際分散を高めるのがサブコア株式ETFの役割です。
| 商品名(ティッカー) | 信託報酬 (目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Vanguard Total International Stock ETF (VXUS) | 0.07% | ○ (成長枠) | サブコア | 米国外株式を一括保有。VTIと組み合わせ、好みの米国比率に調整しやすい。 |
| Vanguard FTSE Developed Markets ETF (VEA) | 0.05% | ○ (成長枠) | サブコア | 米国除く先進国に広く分散。VXUSより対象を先進国に絞りたい場合に。 |
米国株式のVTIと米国外株式のVXUSを組み合わせれば、VTと同じ全世界分散を自分好みの比率で構築できます。例えば「米国70%、米国外30%」といった具体的な目標を持つ方に最適です。一方、VEAは投資対象を米国外の「先進国」に絞りたい場合に用います。
債券で値動きを緩和:米国総合債「BND」・米国外投資適格債「BNDX」
株式の価格変動を和らげ、特に下落相場でのポートフォリオ全体の耐性を高めるのが債券ETFです。
| 商品名(ティッカー) | 信託報酬 (目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Vanguard Total Bond Market ETF (BND) | 0.03% | ○ (成長枠) | コア(債券) | 米国投資適格債を広範分散。株式の値動きを和らげるクッション役。 |
| Vanguard Total International Bond ETF (BNDX) | 0.07% | ○ (成長枠) | サブコア(債券) | 米国外投資適格債を広く分散。一般に対米ドル為替ヘッジを実施。 |
BNDは、株式中心のポートフォリオに安定性をもたらすコア債券です。「株式60%:債券40%」のように目標配分を決め、定期的なリバランスを行う運用が基本となります。
一方、BNDXは米国外の債券に分散する際に活用します。為替ヘッジが行われるため、ドル金利の直接的な影響を抑えたい場合に有効です。
債券ETFのメリットについては以下Q&Aでも説明しています。
サテライト(インカム強化):高配当株「VYM」連続増配「VIG」
ポートフォリオ全体の配当収入を増やしたい場合や、安定成長企業の配当に期待する場合に、味付けとして加えるのがインカム強化目的のサテライトETFです。
| 商品名(ティッカー) | 信託報酬 (目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Vanguard High Dividend Yield ETF (VYM) | 0.06% | ○ (成長枠) | サテライト | 高配当株に広く分散。インカム収入を重視する場合に。 |
| Vanguard Dividend Appreciation ETF (VIG) | 0.06% | ○ (成長枠) | サテライト | 連続増配企業を選別。配当の継続的な成長を重視する場合に。 |
VYMは配当利回りの高い銘柄に幅広く投資し、安定したインカム収入を目指す方に向いています。VIGは「連続増配」の実績がある質の高い企業に投資するため、配当の成長を期待する場合に有効です。サテライト資産の合計は、ポートフォリオ全体の10〜20%程度に留めるのが基本です。
VYMの特徴については以下Q&Aでも説明しています。
サテライト(成長と分散の追加):新興国株式「VWO」米国REIT「VNQ」
新興国の高い成長性や、株式・債券とは異なる値動きをする不動産セクターなど、特定のテーマへの投資でポートフォリオにアクセントを加えるのが、成長・分散目的のサテライトETFです。
| 商品名(ティッカー) | 信託報酬 (目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Vanguard FTSE Emerging Markets ETF (VWO) | 0.08% | ○ (成長枠) | サテライト | 新興国株式に特化。少量ブレンドして成長エクスポージャーを追加。 |
| Vanguard Real Estate ETF (VNQ) | 0.12% | ○ (成長枠) | サテライト | 米国REIT中心。不動産セクターで株・債券と異なる値動きを付与。 |
新興国の成長性を取り込みたい場合はVWOを、不動産セクターを加えたい場合はVNQを、それぞれポートフォリオに少量組み入れます。これらの資産は価格変動も大きいため、時間分散を意識した段階的な買付と、ポートフォリオ全体のごく一部に留める規律ある運用が重要です。
新興国株式投資については以下Q&Aでも説明しています。
バンガードを新NISA・iDeCoで活用!非課税メリットを最大化する使い方
バンガードの低コスト商品は、日本の税制優遇制度である新NISAやiDeCoと非常に相性が良く、非課税メリットを最大限に活かせます。2024年から始まった新NISAの2つの枠とiDeCoをどう使い分ければ効率的なのか、それぞれの制度の特徴と具体的な活用戦略を解説します。
新NISAの基本:2つの非課税投資枠「つみたて投資枠」と「成長投資枠」
2024年に始まった新NISAは、非課税で投資できる金額が大幅に拡大された制度です。年間で最大360万円まで、生涯では合計1,800万円までの投資から得られた利益が非課税になります。
この制度には性格の異なる2つの投資枠があります。一つは「つみたて投資枠」で、年間120万円まで、長期積立に適した一定の基準を満たす投資信託が主な投資対象です。もう一つは「成長投資枠」で、年間240万円まで、投資信託に加えて個別株やETFなど、より幅広い商品に投資できます。
新NISAでバンガード商品をどう活用する?
バンガード商品を活用する場合、この2つの枠を戦略的に使い分けるのがおすすめです。「つみたて投資枠」では、海外ETFは直接購入できないため、「SBI・Vシリーズ」のようなバンガードETFに連動する国内の低コスト投資信託でコツコツと積立投資を行うのが王道です。
一方、「成長投資枠」ではVTやVOOといった海外ETFも非課税で購入できます。つみたて投資枠での積立をベースにしつつ、成長投資枠で海外ETFを機動的に買い増すといった併用も可能です。これにより、投資信託の手軽さとETFの低コスト・柔軟性の両方のメリットを享受できます。
iDeCoでは「実質バンガード」の投資信託を選ぶのが正解
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金形成に特化した制度で、掛金の全額が所得控除されるなど強力な節税メリットがあります。
iDeCoでは海外ETFを直接購入できませんが、金融機関によってはバンガードの指数に連動する低コストの投資信託がラインナップされています。iDeCoは非常に長期間の運用となるため、信託報酬のわずかな差が将来の受取額に大きく影響します。バンガードと同等の低コストな投資信託を選ぶことが、効率的な資産形成の鍵となります。
迷ったらコレ!バンガードETFで組むポートフォリオ例3選
「どれを選べばいいか分からない」という初心者の方へ、バンガードETFで組める代表的なポートフォリオの基本形を3つご紹介します。いずれも長期・分散・低コストの理念に沿った王道スタイルなので、ご自身の考え方やリスク許容度に合うものから検討してみてください。
シナリオ1:とにかくシンプルに「VT」1本で全世界におまかせ投資
最もシンプルなのが、全世界の株式市場にまとめて投資する戦略です。具体的には、全世界株式ETFであるVT一本のみに投資します。世界経済全体の成長を捉えることを目指し、国や地域の配分も自動で調整されるため、手間がかかりません。
この戦略のメリットは、約9,000銘柄への圧倒的な分散効果と、資産配分の見直し(リバランス)が不要な手軽さです。ただし、資産は株式100%になるため価格変動リスクは高く、市場の暴落時には冷静に保有を続ける覚悟が必要です。
シナリオ2:米国中心で力強い成長を狙う「VOO/VTI+VXUS」
次に、世界経済の牽引役である米国の成長をより重視する戦略です。具体的には、ポートフォリオの中核を米国株式ETFであるVOOまたはVTIが占めるように配分します。例えば、資産の7〜8割をVOOやVTIとし、残りを米国を除く全世界株式ETFのVXUSで補うといった形です。
この戦略の狙いは、米国市場の力強い成長を最大限に享受することです。同時にVXUSを組み合わせることで、米国一国への過度な集中を避け、国際的な分散効果も維持します。自分で配分比率を決めるためVT一本より少し手間はかかりますが、より米国経済の成長に期待する方に向いています。
シナリオ3:値動きをマイルドにする「株式+債券(BND)」のバランス型
三つ目は、株式と債券を組み合わせて価格変動リスクを抑えるバランス型の戦略です。例えば、資産の6割をVOOなどの株式ETF、4割を米国総合債券ETFのBNDにするなど、自身のリスク許容度に合わせて比率を決めます。
この戦略は、株式の成長性を追求しつつ、値動きが異なる債券を組み合わせることでポートフォリオ全体の値動きを緩やかにするのが狙いです。株価下落時には債券がクッションの役割を果たします。ただし、債券を組み入れる分、期待リターンは株式100%のポートフォリオより控えめになり、比率を維持するための定期的なリバランスも必要になります。
本当のコストは経費率だけじゃない!「総コスト」で考えるのが成功の鍵
資産運用で確実にリターンを押し下げる要因が「コスト」です。そして投資家が負担するコストは、目につきやすい経費率だけではありません。売買手数料や税金など、あらゆる費用を合わせた「総コスト」で判断することが、長期的な成功の鍵を握ります。
継続的にかかる「経費率(信託報酬)」
投資家が負担するコストの中で最も重要なのが、ETFや投資信託を保有している間、継続的に発生する経費率(信託報酬)です。日々、ファンドの資産から自動的に差し引かれるため意識しにくいですが、長期間ではリターンに大きな差を生みます。
例えば、経費率が年0.1%違うだけで、1,000万円を運用すれば年間1万円の差となり、複利効果でその差は年々拡大していきます。バンガードの商品は経費率が極めて低いことで知られていますが、近年は国内の投資信託も非常に低い水準になっており、可能な限り低コストの商品を選ぶことが運用の基本です。
売買時にかかる「取引手数料」と「為替手数料」
次に、ETFなどを売買する際に一度だけ発生するコストです。国内の投資信託は購入時手数料が無料のものが主流ですが、海外ETFの場合は証券会社ごとに定められた取引手数料がかかることがあります。
また、円を米ドルに替える際には為替手数料も必要です。近年は手数料無料化の動きも進んでいますが、売値と買値の差である「スプレッド」も隠れたコストとして存在するため、短期的な売買を繰り返すと負担が大きくなる可能性があります。
利益確定時にかかる「税金」
そして、運用で得た利益にかかる税金も実質的なコストです。日本では通常、売却益や分配金に対して約20%の税金がかかります。
特に海外ETFの分配金には、まず米国で10%が源泉徴収され、その後に国内で課税されるため注意が必要です。一方で、分配金を出さずに内部で再投資する国内の投資信託は、売却するまで課税が繰り延べられる効果があります。NISAなどの非課税制度を最大限に活用することが、手元に残る利益を増やす上で極めて重要になります。
ETF選びで差がつく「指数との連動性」と「ベンチマーク」の違い
インデックス投資の要は、目標とする指数(ベンチマーク)にどれだけ正確に連動できるかです。低コストな商品を選んでも、指数から大きく乖離しては意味がありません。ここでは、ファンドの真の実力を測るための「トータルリターン」という見方と、そもそも連動対象の指数にどんな違いがあるのかを解説します。
「トータルリターン(配当込み)」で本当の実力をチェックする方法
インデックスファンドの実力を評価する上で最も重要なのが、値上がり益だけでなく、分配金も含めた「トータルリターン」で比較することです。分配金を考慮しない指数の値動きだけを見ていても、ファンドの本当の成績は分かりません。
そのため、ファンドの正確な連動性を知るには、受け取った分配金を再投資したと仮定した場合の基準価額の推移と、「配当込み」で算出された指数のトータルリターンを比較する必要があります。例えばVOOの実力を測るなら、S&P500の価格指数ではなく、「S&P500トータルリターン指数」と比較するのが正しい方法です。
S&P500とCRSPはどう違う?連動する指数の特徴を理解しよう
同じ「全世界株式」や「米国株式」という名前のファンドでも、どの指数をベンチマークにしているかで投資対象が微妙に異なる点も理解しておきましょう。この違いが、将来のパフォーマンスの差につながることがあります。
例えば全世界株式指数では、VTが連動する「FTSE」は小型株まで含む約9,000銘柄を対象とする一方、他社ファンドが採用する「MSCI」は大型・中型株が中心です。また米国株式でも、VOOが連動する「S&P500」が主要大型株500社なのに対し、VTIが連動する「CRSP」は小型株まで含んだ市場全体を対象とします。後者の方がより広く分散されますが、その分、価格変動の度合いがやや高くなる傾向があります。どちらが優れているという訳ではなく、どのような範囲に分散投資したいかによって選ぶべき指数は変わります。
バンガードETFと国内投信(SBI・V/楽天V)はどっちがいい?
かつてはコスト面で海外ETFが圧倒的に有利でしたが、現在その差は大きく縮まっています。では、バンガードETFと、SBI・Vシリーズなどの国内投資信託のどちらを選ぶべきか。コスト、手間、税金の3つの観点から両者を徹底比較し、あなたの投資スタイルに合う選択肢を考えます。
コスト・手間・税金を一覧比較|あなたに合うのはETF?投資信託?
海外ETFの最大の強みは、わずかながらも経費率が最も低いこと、そして株式と同じようにリアルタイムで機動的に売買できる点です。取引時間中であれば好きなタイミングで指値注文もできるため、相場の急変時に素早く対応したい方や、コストを極限まで追求したい方に向いています。
一方、国内投資信託の強みは圧倒的な「手軽さ」です。円建てで100円といった少額から自動積立ができ、為替の心配もありません。また、分配金が自動で再投資されるため手間がかからず、売却するまで税金がかからない「課税の繰り延べ」効果も期待でき、複利効果を効率よく活かせます。
手間をなくしたいなら「SBI・V」や「楽天・V」シリーズが有力候補
最終的な選択基準は「自分がより続けやすいのはどちらか」という点になるでしょう。ドル資産を直接持ち、少しでも低コストにこだわりたいなら海外ETF。毎月の積立を自動化し、手間なく運用したいなら国内投資信託が適しています。
| 商品名(愛称) | 信託報酬 (目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| SBI・V・S&P500インデックス・ファンド(SBI・V・S&P500) | 0.0938%(管理費用含む)/0.0638%(信託報酬) | ○(つみたて枠/成長枠) | コア | 米国大型株500社の王道コア。流動性・代表性が高い。 |
| 楽天・プラス・S&P500インデックス・ファンド | 0.077%(管理費用含む) | ○(つみたて枠/成長枠) | コア | S&P500に低コストで連動。“新NISA両枠対応”の設計。 |
| SBI・V・全米株式インデックス・ファンド(SBI・V・全米株式) | 0.0638%(信託報酬)管理費用は販売会社表示を要確認 | ○(つみたて枠/成長枠) | コア | 米国の大型〜小型まで「米国丸ごと」。VTI連動の実質投資。 |
| 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天・VTI) | 0.162%(管理費用含む)/0.132%(信託報酬) | ○(成長枠) | コア | 米国株の広範分散。少額積立しやすく自動再投資型。 |
| SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド(SBI・V・全世界株式) | 0.1238%(管理費用含む) | ○(つみたて枠/成長枠) | コア | 先進国+新興国の全世界に低コスト分散。VT連動の実質投資。 |
| 楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天・VT) | 0.179%(管理費用含む)/0.132%(信託報酬) | ○(成長枠) | コア | 全世界に一本で分散。放置運用と相性が良い。 |
| SBI・V・米国高配当株式インデックス・ファンド(年1回決算/年4回決算型あり) | 0.1238%(管理費用含む) | ○(成長枠) | サテライト | 米国高配当株に広く分散。インカム強化の味付けに。 |
| 楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド(楽天・VYM) | 0.192%(管理費用含む)/0.132%(信託報酬) | ○(成長枠) | サテライト | 米国高配当株に広く分散。NISAでのインカム効率向上に。 |
「SBI・Vシリーズ」などは実質的にバンガードETFに投資しているため、上乗せされるわずかなコストを手間賃と考えることができるかどうかが判断の分かれ目です。大切なのは、どちらを選んでも長期・分散・低コストという投資の王道は変わらないと理解し、自分が無理なく続けられる方法で資産運用をスタートさせ、継続することです。
この記事のまとめ
バンガードのETFは、長期・分散・低コストを地道に続ける投資に有力な選択肢を与えてくれます。バンガードの強みは投資家に利益を還元する構造と低い手数料。海外ETFの機動性か国内投信の手軽さかは「続けやすさ」で選び、判断は経費率・為替・税まで含む総コストで行います。
新NISAやiDeCoを土台に、小額の積立と目標配分の設定、定期的なリバランスから始めましょう。迷ったらVT、米国重視ならVTI/VOO+VXUS、値動きを抑えたいなら株式+BNDなど、目的に応じた選択をして、資産運用に活かしましょう。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
関連記事
関連する専門用語
バンガード(Vanguard)
バンガード(Vanguard)とは、アメリカに本社を置く世界有数の資産運用会社であり、特にインデックスファンドの普及に大きく貢献した存在として知られています。1975年に創業者のジョン・C・ボーグル氏が世界初の個人向けインデックスファンドを提供したことがきっかけで、「低コスト・長期・分散」の投資哲学が広まりました。バンガードの特徴は、投資家がファンドの“実質的な所有者”であるという独自の構造で、利益を投資家に還元する形で運用コストを抑える仕組みを持っています。また、ETF市場でも「VTI」や「VOO」などの人気商品を展開しており、個人投資家から機関投資家まで幅広く利用されています。長期的で安定した資産形成を支援する運用方針により、初心者にも安心して利用されている運用会社のひとつです。
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。
海外ETF
海外ETFとは、日本市場ではなく、米国や欧州など海外の証券取引所に上場している上場投資信託(ETF)のことを指します。ETFは株式のように取引所で売買できる投資信託であり、特定の株価指数や債券、不動産(REIT)、コモディティなどに幅広く分散投資できます。海外ETFは銘柄数や投資対象が豊富で、低コストで国際分散投資を実現できる点が魅力です。 資産運用の観点では、米国市場のETFが特に人気であり、VOOやQQQ、VTなど世界的に利用される商品があります。ただし、為替リスクや税制の違い、日本の証券会社での取り扱い範囲といった点に注意が必要です。
経費率
経費率(Expense Ratio)は、投資信託やETF(上場投資信託)などの運用にかかる年間コストを、運用資産総額に対する割合で示した指標です。投資家はこの経費率を負担するため、経費率が低いほど投資のコストが抑えられ、リターンが高まりやすくなります。 例えば、あるETFの経費率が0.2%の場合、年間で運用資産の0.2%が管理費用などに充てられます。経費率には、ファンドの管理費用、売買手数料、監査費用などが含まれます。 一般的に、インデックス型ETFは経費率が低く(0.1%~0.5%程度)、アクティブ運用のファンドは高くなる(1%~2%程度)傾向があります。経費率が高すぎると、長期的に資産が目減りする可能性があるため、投資先を選ぶ際は経費率の低い商品を選ぶことが重要です。
コア資産
コア資産とは、長期的な資産運用の中核を成す安定的な資産のことを指す。主にインデックスファンドや大型株、債券など、リスクが比較的低く、安定したリターンを期待できる資産が含まれる。運用の基本方針として、市場の長期的な成長を享受しながら、大きなリスクを取らずに資産を増やすことを目的とする。ポートフォリオの大部分をこのコア資産で構成し、安定した資産形成を目指す。
サテライト資産
サテライト資産とは、資産運用においてコア資産を補完し、高いリターンを狙うために組み入れる資産のことを指す。具体的には、新興国株式、個別株、テーマ型ファンド、ヘッジファンド、コモディティ、暗号資産など、リスクは高いが成長の可能性がある投資対象が含まれる。サテライト資産は、ポートフォリオの一部に限定して保有し、コア資産の安定性を損なわない範囲で積極的な運用を行うことが推奨されます。
新NISA
新NISAとは、2024年からスタートした日本の新しい少額投資非課税制度のことで、従来のNISA制度を見直して、より長期的で柔軟な資産形成を支援する目的で導入されました。この制度では、投資で得られた利益(配当や売却益)が一定の条件のもとで非課税になるため、税負担を気にせずに投資ができます。新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠が用意されており、年間の投資可能額や総額の上限も大幅に引き上げられました。 また、非課税期間が無期限となったことで、より長期的な運用が可能となっています。投資初心者にも利用しやすい仕組みとなっており、老後資金や将来の資産形成の手段として注目されています。
成長投資枠
新NISAにおける成長投資枠とは、個別株や投資信託などの成長性の高い投資商品を購入できる非課税枠のことです。2024年に始まった新NISA制度では、年間最大240万円、累計1,200万円まで投資が可能で、売却しても枠が復活しない「一生涯の上限額」が設定されています。 成長投資枠では、主に上場株式やETF、アクティブ型の投資信託などが対象となり、比較的リスクを取りながら資産を増やしたい投資家向けの仕組みになっています。一方で、レバレッジ型や一部の毎月分配型投資信託など、一部のリスクが高い商品は対象外となるため注意が必要です。 つみたて投資枠と併用でき、両方を活用すれば年間最大360万円の投資が可能です。成長投資枠を活用することで、中長期的な資産形成を非課税で行うことができ、売却益や配当金に税金がかからないため、資産を効率的に増やす手段となります。
つみたて投資枠
つみたて投資枠とは、2024年から始まった新しいNISA制度の中で、少額から長期的に資産形成を行うことを目的として設けられた非課税投資の枠組みです。 この枠では、一定の条件を満たした投資信託などの商品に対して、年間最大120万円までの投資額が非課税の対象となります。毎月コツコツと積み立てるスタイルの投資に向いており、長期的な資産形成を支援することが狙いです。つみたて投資枠を活用することで、運用益や分配金にかかる税金がかからず、複利の効果を最大限に活かしながら資産を増やしていくことができます。特に投資初心者にとっては、少額から手軽に始められ、長く続けることで将来の資金づくりに役立つ有効な制度です。
投資家所有モデル(Investor-Owned Structure)
投資家所有モデル(Investor-Owned Structure)とは、資産運用会社の所有形態の一つで、外部株主ではなく投資家自身が実質的なオーナーとなる仕組みを指します。最も代表的な事例が米国のバンガード社であり、同社では投資信託(ミューチュアルファンド)が運用会社を所有し、その投資信託の受益者である投資家が間接的にバンガードを保有しています。つまり、運用会社の株主が顧客であるという構造です。 このモデルの最大の特徴は、利益相反の排除にあります。一般的な運用会社では、株主(出資者)の利益最大化と投資家(顧客)の利益最大化が必ずしも一致しません。しかし、投資家所有モデルでは、会社の収益が外部株主に配当されるのではなく、コスト削減や手数料引き下げの形で投資家に還元されます。そのため、経営方針が一貫して「投資家の利益第一(Client First)」に基づいており、長期・低コスト・中立という経営理念を実現できるのです。 実際、バンガード社では、運用報酬などから得られる利益を再投資やコスト削減に回すことで、業界最低水準の信託報酬を実現しています。この構造が同社のインデックス投資戦略を支える根幹であり、長期投資家から高い信頼を得る理由にもなっています。 投資家所有モデルは、株主資本主義に代わる新しいガバナンスモデルとして注目されています。外部株主の短期的な利益ではなく、顧客である投資家の長期的利益を守る構造的仕組みである点で、金融業界の透明性と公正性を高める意義があります。
トータルリターン
トータルリターンとは、株式や債券、投資信託などの資産から得られる利益を、値上がり益(キャピタルゲイン)と分配金・利息・配当金などのインカムゲインを合わせて総合的に捉えた指標です。配当や利息をその都度再投資すると仮定して計算するのが一般的であり、単に価格変動だけを追う「価格リターン」と比べ、投資の実質的な運用成果をより正確に示します。このため、長期投資のパフォーマンス評価や異なる資産クラスの比較を行う際には、トータルリターンで見ることが重要です。
ベンチマーク
ベンチマークとは、特定の目標や標準として用いる指標のことを指し、ビジネス、金融、技術など様々な分野で利用されます。この指標を用いて、パフォーマンスの測定や戦略の効果を評価し、改善点を見つけることができます。特に投資分野においては、ベンチマークはポートフォリオのパフォーマンスを評価するための基準点として活用され、特定の市場指数や同業他社の成績などが用いられます。 たとえば、投資ファンドの管理者は、自身のファンドのパフォーマンスをS&P 500やナスダックなどの市場指数と比較して評価することが多いです。この比較によって、ファンドの戦略が市場全体と比べてどの程度効果的であるか、またはリスクが適切に管理されているかを判断します。 ベンチマークは、透明性と目標設定を促進し、継続的な改善を目指すための重要なツールです。しかし、ベンチマークを選定する際には、その適切性や関連性を慎重に評価する必要があります。適切でないベンチマークを選ぶと、誤った方向性を示すことがあり、結果的にパフォーマンスの誤解を招くことになるためです。したがって、目標とする成果と密接に関連する、かつ実現可能なベンチマークを設定することが極めて重要です。
ポートフォリオ
ポートフォリオとは、資産運用における投資対象の組み合わせを指します。分散投資を目的として、株式、債券、不動産、オルタナティブ資産などの異なる資産クラスを適切な比率で構成します。投資家のリスク許容度や目標に応じてポートフォリオを設計し、リスクとリターンのバランスを最適化します。また、運用期間中に市場状況が変化した場合には、リバランスを通じて当初の配分比率を維持します。ポートフォリオ管理は、リスク管理の重要な手法です。
リバランス
リバランスとは、ポートフォリオを構築した後、市場の変動によって変化した資産配分比率を当初設定した目標比率に戻す投資手法です。 具体的には、値上がりした資産や銘柄を売却し、値下がりした資産や銘柄を買い増すことで、ポートフォリオ全体の資産構成比率を維持します。これは過剰なリスクを回避し、ポートフォリオの安定性を保つためのリスク管理手法として、定期的に実施されます。 例えば、株式が上昇して目標比率を超えた場合、その一部を売却して債券や現金に再配分するといった調整を行います。なお、近年では自動リバランス機能を提供する投資サービスも登場しています。
総コスト
総コストとは、投資信託やETFなどの運用商品を保有・運用する際に発生するすべての費用を合計した概念です。購入時、保有中、売却時のそれぞれにかかるコストを含めたもので、投資成果に直接影響する重要な指標です。表面上の運用成績だけでなく、実際にどれだけのコストを負担しているかを把握することで、より正確な運用効率を判断できます。 購入時には、販売手数料(購入時手数料)が発生することがあります。かつては3%前後の手数料が一般的でしたが、近年は「ノーロード型」と呼ばれる手数料無料の投資信託が主流になっています。 保有期間中には、運用管理費用として「信託報酬」がかかります。これは運用会社、販売会社、信託銀行などに日々按分して支払われるもので、実質的なランニングコストです。ETFではこれに加えて、監査費用や売買委託手数料などの諸経費が含まれる場合もあります。 売却時には、信託財産留保額(解約手数料に近いもの)や、ETFであれば証券会社の売買手数料・スプレッド(売買価格の差)などが発生することがあります。これらは投資の出口でのコストとして考慮する必要があります。 一般的に、目論見書などで示される信託報酬は名目上の手数料にすぎず、実際には監査費用や売買コストなどが別途かかります。これらをすべて加味した年間の実際負担率が「実質コスト」と呼ばれ、総コストの中核的な指標となります。運用報告書で確認できる実質コストを基準に、似たようなファンド間で比較することが推奨されます。 同じ指数をベンチマークとする投資信託やETFを比較する際は、信託報酬の低さだけでなく、実質コストやトラッキングエラー(指数との乖離)にも注目することが大切です。コストが低くても運用効率が悪ければリターンは低下しますし、逆にわずか0.1%のコスト差でも、長期投資では複利の効果によって大きな成果の差を生む可能性があります。 総コストは「目に見えないリターンの敵」とも言われます。特に長期運用では、毎年のコスト差が積み重なり、10年・20年後に大きなパフォーマンスの差として現れるため、投資判断において軽視すべきではありません。



