孫への生前贈与を行う場合に使える仕組みや注意点はどんなものがありますか?
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2025/09/11 08:55
男性
50代
祖父母から孫に財産を渡す方法として、生前贈与を活用できると聞きました。教育資金の一括贈与や結婚・子育て資金の非課税制度などもあるそうですが、どのような仕組みが利用できるのでしょうか?また、注意点はありますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
孫に遺産を承継させる方法はいくつかありますが、それぞれに仕組みや注意点があります。まず、法律上の原則として孫は直接の法定相続人ではなく、相続人は通常、配偶者や子どもです。ただし、子どもがすでに死亡・欠格・廃除となっている場合には「代襲相続」が適用され、孫が相続人となります(相続放棄では代襲は起こりません)。
子どもが健在のまま孫に遺産を渡したい場合は「遺言書」を作成するのが有効です。遺言によって孫を受遺者に指定すれば財産を承継できますが、配偶者や子どもには「遺留分」という最低限の取り分があるため、侵害しないよう配慮が必要です。
生前贈与を活用する方法もあります。暦年課税では年間110万円まで非課税で贈与できます。2024年以降は相続開始前7年以内の贈与が持ち戻し対象となるため、早めの計画が重要です。加えて、教育資金贈与(上限1,500万円、2026年3月末まで)や結婚・子育て資金贈与(上限1,000万円、うち結婚は300万円、2027年3月末まで)といった非課税制度も活用可能ですが、期限や使途に制限があるため確認が欠かせません。
さらに、「家族信託」を利用することで、信託契約に基づき将来的に孫へ財産を承継させる仕組みを設計できます。柔軟性が高い一方、遺留分に関する争いの余地が残るため、専門家の助言が望ましいです。
また、「普通養子縁組」を行えば孫は法律上の子どもとして法定相続人となります。これにより基礎控除の算定人数に含められるメリットがありますが、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までと人数に制限があります。さらに、孫への相続は原則として相続税が2割加算される点にも注意が必要です。ただし、子の代襲相続人となった孫は「一親等の血族」とみなされ、この2割加算の対象外となります。
このように、孫への承継方法にはそれぞれ利点とリスクがあり、税負担や制度期限、家族関係への影響を総合的に検討することが重要です。孫に財産を託したいと考える場合には、税理士や弁護士など専門家に相談し、遺言・贈与・信託・養子縁組などを組み合わせて計画的に進めることをおすすめします。
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関連する専門用語
生前贈与
生前贈与とは、本人が亡くなる前に、自分の財産を家族や親族などに贈り与えることを指します。たとえば、子どもや孫に現金や不動産などを自分の意思で生きているうちに渡す行為がこれにあたります。生前贈与を活用することで、相続時に財産が一度に多額に移転するのを防ぎ、相続税の負担を軽減する効果が期待できます。ただし、贈与にも贈与税がかかるため、贈与額やタイミング、誰に贈るかによって課税額が大きく変わることがあります。また、一定の条件を満たせば非課税になる特例制度もあるため、計画的に行うことが重要です。資産運用や相続対策として、生前贈与は家族に財産を無理なく引き継がせるための有効な手段のひとつです。
暦年贈与
暦年贈与とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与額を1年ごとに区切って課税する方式をいいます。その年に取得した財産の合計額から基礎控除110万円を差し引いた残額に対して贈与税が計算されるため、同じ贈与者から毎年110万円以内の贈与であれば原則として贈与税はかかりません。 各年の贈与は独立した取引とみなされるため、翌年以降の贈与額や時期をあらかじめ決めてしまうと「定期贈与」と見なされ、一括で課税されるリスクがあります。この回避策として、金額や日付を毎年変えたうえで都度の贈与契約書を作成し、実際に資金を動かした証拠を残すことが推奨されます。 また、2024年以降の税制改正により、生前贈与の持ち戻し期間が死亡前3年から段階的に7年へ延長され、3年超〜7年以内の贈与については合計100万円までが加算免除となる点も踏まえ、相続開始時点での課税影響を見据えた計画が欠かせません。さらに、相続時精算課税制度を選択すると暦年贈与とは併用できなくなるため、どちらの制度を使うかは将来の資産移転方針や税負担を比較して判断する必要があります。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫へ財産を贈与する場合に利用できる、特別な贈与税の制度です。この制度を使うと、贈与を受けた年に2,500万円までの金額については贈与税がかからず、それを超えた部分にも一律20%の税率が適用されます。そして、その後贈与者が亡くなったときに、過去の贈与分をすべてまとめて「相続財産」として扱い、最終的に相続税として精算します。 つまり、この制度は「贈与税を一時的に軽くし、あとで相続税の段階でまとめて精算する」という仕組みになっています。将来の相続を見据えて早めに資産を移転したい場合や、大きな金額を一括で贈与したい場合に活用されることが多いです。 ただし、一度この制度を選ぶと、同じ贈与者からの贈与については暦年課税(通常の贈与税制度)には戻せないという制限があるため、利用には慎重な判断が必要です。資産運用や相続対策を計画するうえで、制度の特徴とリスクをよく理解しておくことが大切です。
名義預金
名義預金とは、預金口座の名義人と、実際にそのお金を出した人(出資者)が異なる預金のことを指します。 たとえば、親が自分のお金を子どもの名義で開設した口座に預けているようなケースが代表的です。名義上は子どもの預金でも、実際にお金を出したのが親で、子どもが自由に使えない状態であれば、そのお金は「親の財産」とみなされます。 このような名義預金は、相続の際に「相続財産」として課税対象になる可能性があり、税務署から指摘を受けることもあります。 つまり、「相続対策のつもりで家族名義の口座にお金を移していたつもりが、かえって相続税の対象になってしまう」といったリスクがあるのです。 名義だけでなく、実際にお金を管理・使用しているのは誰なのか?という“実質的な所有者”を明確にしておくことが重要です。 相続や贈与を意識した資産管理を行う際には、形式だけでなく実態をともなった対策が求められます。
非課税枠
非課税枠とは、税金が課されない金額の上限を指し、様々な税制に適用される制度。 例えば相続税では基礎控除額として「3,000万円+600万円×法定相続人数」が非課税枠となる。贈与税では年間110万円までの贈与が非課税。また、NISA(少額投資非課税制度)では年間の投資上限額に対する運用益が非課税となる。 このような非課税枠は、税負担の軽減や特定の政策目的(資産形成促進など)のために設定されており、納税者にとって税金対策の重要な要素となっている。
相続税
相続税とは、人が亡くなった際に、その人の財産を配偶者や子どもなどの相続人が受け継いだときに課される税金です。対象となる財産には、預貯金や不動産、株式、貴金属、事業用資産などが含まれ、相続財産の合計額が一定の基準額を超えると課税対象となります。 相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除があり、この範囲内であれば原則として税金はかかりません。しかし、資産規模が大きい場合や相続人の数が少ない場合には、課税対象となり、10%〜55%の累進税率が適用されます。 さらに、相続税にはさまざまな非課税枠や控除制度が設けられており、これらを適切に活用することで税負担を抑えることが可能です。代表的な制度には以下のようなものがあります。 - 生命保険金の非課税枠:法定相続人1人あたり500万円まで非課税 - 死亡退職金の非課税枠:生命保険と同様に1人あたり500万円まで非課税 - 債務控除:被相続人に借入金などの債務があった場合、その金額を控除可能 - 葬式費用の控除:通夜・葬儀などにかかった費用は、相続財産から差し引くことができる また、配偶者には配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)が認められており、適切に遺産分割を行えば、税額を大幅に減らすことができます。 相続税は、財産の種類や分割の仕方、受け取る人の立場によって税額が大きく変動するため、生前からの対策が非常に重要です。生命保険や不動産の活用、資産の組み替えなどを通じて、相続税評価額をコントロールすることが、家族への負担を減らし、スムーズな資産承継を実現するための鍵となります。