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投資のリスクコントロールとは?リスクを抑える具体的な方法と見直し方を解説
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公開:
2026.10.16
更新:
2026.10.16
投資を続けていると、相場の急落や含み損をきっかけに、「どこまでの損失なら許容すべきか」「今の資産配分のままでよいのか」と不安を感じることがあります。分散投資をしていても、値上がりによって特定の資産への偏りが大きくなれば、知らないうちにリスクが高まることもあります。この記事では、リスクコントロールの基本的な考え方から、許容損失額の決め方、資産配分・分散、リバランス、暴落時の対応、見直しのタイミングまで具体的に解説します。
リスクコントロールとは
投資におけるリスクコントロールとは、リスクをなくすことではありません。運用目的や資産状況に応じて、資産全体の値動きや損失の可能性を許容できる範囲に管理することです。
ここでいうリスクは「危険」ではなく、運用成果の振れ幅を指します。金融経済教育推進機構(J-FLEC)も、資産運用のリスクを「将来期待される運用成果の振れ幅(不確実性)」と説明しています。
リスクをできるだけ小さくすることが目的ではない
リスクを抑えること自体は、目的ではありません。値動きの小さい資産だけで運用すれば損失は避けやすくなりますが、その分、期待できるリターンも小さくなります。老後資金や教育費など、目標の金額に届かなければ、別の意味で目的を達成できなかったことになるでしょう。
- 重要なのは「最小化」ではなく、「目的の達成に必要な範囲でリスクを取ること」です。たとえば20年後に使う資金なら、途中の値動きをある程度受け入れたほうが、目標に近づける可能性があります。リスクコントロールは、取るリスクと取らないリスクを選ぶ作業ともいえます。
リスクの種類や標準偏差、リターンとの関係については、こちらの記事で解説しています。あわせて参考にしてみてください。
リスク許容度とリスクコントロールは異なる
リスク許容度は「どこまでリスクを受け入れられるか」という、自分自身の側の条件です。年齢、収入、資産額、投資経験、性格などから決まります。一方、リスクコントロールは、その範囲を超えないように実際の運用を調整する行動を指します。
- つまり、リスク許容度が「決める」段階、リスクコントロールが「守る・調整する」段階です。許容度を決めただけで運用を放置すると、値動きによってリスクは勝手に変わっていきます。
リスク許容度の具体的な決め方は、こちらの記事を参考にしてください。
商品ではなく資産全体で考える
リスクコントロールは、投資信託1本や株式1銘柄の値動きだけで考えるものではありません。預貯金、株式、投資信託、債券、企業年金、確定拠出年金などを含めた金融資産全体で考える必要があります。不動産なども投資目的で保有している場合は、それらを含めた保有資産全体のリスクも確認しましょう。
日本銀行の資料によると、2026年3月末時点で日本の家計が持つ金融資産のうち、現金・預金は47.2%、株式等は16.7%、投資信託は6.9%です。預貯金の比率が高い家計では、投資信託の評価額が20%下がっても、金融資産全体への影響は投資信託単体の下落率より小さくなります。
反対に、勤務先の自社株や企業型確定拠出年金で株式に多く投資している人は、気づかないうちに株式への配分が高まっている場合があります。
- 資産全体で見ることで、「どの商品が下がったか」ではなく「家計全体でいくら減ったか」を基準に判断できるようになります。
リスクコントロールは「投資前・運用中・取り崩し前」の3段階で考える
リスクコントロールは、投資を始める前だけの作業ではありません。運用中、そして資金を使う時期が近づいたときにも、それぞれ役割が変わります。全体像を表に整理しました。
| 段階 | 何をするか | 主な目的 |
|---|---|---|
| 投資前 | 使う予定の資金を除外し、運用資金と許容できる損失額、リスク資産の上限を決める | 想定を超える損失を防ぐ |
| 運用中 | 値動きによる配分のズレや、特定の資産への集中を確認し、必要に応じて調整する | リスクが知らないうちに増えるのを防ぐ |
| 取り崩し前 | 使う時期が近い資金を値動きの小さい資産へ移し、取り崩し方を決める | 必要なタイミングで大幅下落に巻き込まれるのを防ぐ |
3つの段階は一方向に進むだけではなく、運用中の見直しで「投資前」の基準に戻って決め直すこともあります。段階ごとの要点を順に見ていきましょう。
投資前は「どこまで損失を許容するか」を決める
投資前の役割は、損失の上限を先に決めておくことです。まず、生活費の予備や数年以内に使う予定の資金を運用対象から外します。そのうえで、残った運用資金について「いくらまで減っても生活や計画を変えずにいられるか」を金額で決めます。
この金額が、資産配分を決めるときの出発点になります。先に商品を選び、あとから損失を考える順番では、相場が下がったときに判断の基準がありません。
運用中は「リスクが増えすぎていないか」を管理する
運用中の役割は、投資前に決めた水準を維持することです。資産価格は常に動くため、何もしなくても資産配分は変わっていきます。株式が値上がりすれば株式比率が高まり、結果として当初より大きなリスクを取っている状態になるでしょう。
- また、追加で購入した商品が同じ地域や業種に偏っていないかも確認が必要です。定期的に点検し、決めた範囲を超えていれば元に戻すことで、リスクをコントロールできます。
取り崩しが近づいたらリスクを調整する
住宅購入や教育費、退職後の生活費など、使う時期が近づいた資金は管理の方法を変えます。長期で運用できる資金と同じ配分のままでは、必要な直前に大幅下落に巻き込まれる可能性があるためです。
- たとえば3年後に使途と金額が決まっている資金は、必要な時期の直前に大きく値下がりするリスクを抑えるため、株式などから預貯金や個人向け国債などへ段階的に移すことを検討します。
退職後の資産の取り崩し方については、こちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。
リスクコントロールの基本は「長期・積立・分散」
リスクコントロールの土台になるのが、長期・積立・分散という3つの基本です。金融庁の教材では、1989年以降、国内外の株式と債券に毎月同じ金額を積立投資した場合の結果が示されています。保有期間5年では年率マイナス8%からプラス14%まで結果が分かれたのに対し、保有期間20年では年率2%から8%の範囲に収まりました。
ただし、これは過去の実績であり、将来も同じ結果になるとは限りません。3つの基本はリスクをなくす方法ではなく、振れ幅を抑えるための前提と考えてください。
長期投資で短期的な値動きに左右されにくくする
長期投資のポイントは、「長く持てば必ず利益が出る」ことではありません。短期の相場変動によって売却を迫られない資金で運用することに意味があります。使う予定のない資金であれば、一時的な下落のときに売らずに済み、回復を待つ選択肢が残るでしょう。
積立投資で購入時期を分散する
積立投資は、購入する時期を分けることで、特定のタイミングでまとめて投資する影響を抑える方法です。一定額ずつ購入すると、価格が高いときには少なく、安いときには多く買うことになり、購入単価を平準化する効果が期待できます。
ただし、一括投資より必ず有利になるわけではなく、相場が上昇し続ける局面では一括投資のほうが有利になる場合もあります。
積立投資やドルコスト平均法については、こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。
資産・地域・通貨を分散する
分散投資で大切なのは、保有する商品の「本数」ではなく、値動きの要因を分けることです。株式と債券、国内と海外、円と外貨のように、異なる動きをする資産を組み合わせます。J-FLECも、分散投資を「資産の分散」「地域の分散」「時間の分散」の3つで説明しています。
分散の考え方や資産配分の詳細は、こちらの記事を参考にしてください。
リスクコントロールを実践する5つのステップ
ここからは、リスクコントロールを自分の資産に落とし込む手順を、5つのステップで解説します。「何となく分散する」のではなく、資産の把握、許容損失の金額化、上限の設定、集中度の確認、見直しルールの順に進めると、判断の基準がはっきりします。
STEP1 資産全体と今後使うお金を把握する
最初に、預貯金、株式、投資信託、NISA口座、iDeCo(個人型確定拠出年金)、企業型確定拠出年金、貯蓄性のある保険などを一覧にします。口座や制度ごとに分かれている資産をまとめるのが目的です。
| 区分 | 資産の例 | 金額の例 | 扱い |
|---|---|---|---|
| 生活防衛資金 | 普通預金 | 300万円 | 運用しない |
| 5年以内に使う資金 | 定期預金、個人向け国債 | 500万円 | 値動きの小さい資産で持つ |
| 長期運用資金 | 投資信託、株式、iDeCo、企業型確定拠出年金 | 1,200万円 | リスク資産を持つ対象 |
表のように、生活費の予備(生活防衛資金)と、数年以内に使う予定の資金を先に分けます。長期で運用できるのは、それらを除いた残りの部分です。ここで切り分けておくと、相場が下がったときに「この資金は当面使わない」と確認できます。
なお、生活防衛資金の目安は、こちらの記事も参考にしてみてください。
STEP2 許容できる損失を「率」ではなく「金額」で決める
「20%下落しても大丈夫」という感覚だけでは、実際の損失を実感しにくいものです。運用額に掛けて、金額に置き換えてみましょう。たとえば3,000万円を運用して20%下落すると、600万円が減ります。
- 判断の基準は、「その金額まで減っても生活設計を変えず、運用を継続できるか」です。600万円の評価損を見ても積立を止めずにいられるなら、20%の下落は許容範囲といえます。耐えられないと感じるなら、許容できる損失額を下げ、それに合わせて資産配分を考え直してください。
STEP3 リスク資産の上限を決める
許容できる損失額と運用期間を踏まえて、株式などの値動きの大きな資産をどこまで保有するかを決めます。「年齢が○歳なら株式○%」といった目安はありますが、固定的に当てはめる必要はありません。同じ年齢でも、資産額、収入の安定度、使う時期は人によって異なるためです。
- 簡易的なストレステストとして、株式が一時的に50%下落する場面を想定してみましょう。株式以外の資産が変動しないと仮定した場合、許容できる損失額が400万円なら、株式の保有額は800万円までという計算になります。実際には債券や外貨建て資産なども値動きするため、あくまで資産配分を考えるための簡易的な目安です。
STEP4 特定資産への集中度を確認する
株式比率が適切でも、中身が偏っていればリスクは高まります。確認したいのは、「1銘柄」「1地域」「1通貨」「1業種」への集中です。
たとえば、投資信託を3本保有していても、いずれも米国の大型株を中心に運用するファンドであれば、実質的には同じ値動きの資産に集中しています。この場合、本数は3本でも分散の効果は限定的です。保有商品の中身を確認し、重複を把握しましょう。
保有資産の偏りを把握する方法は、こちらの記事で解説しています。
STEP5 見直す条件をあらかじめ決める
最後に、見直しの条件を決めておきます。「相場が下がったら考える」では、下がったときに冷静な判断ができません。年1回など定期的な点検に加えて、「当初の資産配分から一定以上ずれた」「ライフイベントが発生した」といった条件を先に決めておきましょう。
公的年金の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、基本ポートフォリオの各資産に乖離許容幅を設け、その範囲内で管理する方法を取っています。個人でも、「株式比率が目標から5%以上ずれたら調整する」のように、自分なりの幅を決めておくと運用しやすくなります。
出典:年金積立金管理運用独立行政法人「基本ポートフォリオの考え方」
運用中にリスクをコントロールする方法
投資を始めたあとは、決めた水準を維持する段階に入ります。ここでは、運用中に起こりやすいリスクの変化と、その調整方法を解説します。
値上がりによる「リスクの膨張」を確認する
株式が大きく値上がりすると、売買を何もしていなくても株式比率が上昇します。資産全体に対して株式の占める割合が高まるため、当初よりリスクの大きなポートフォリオになっているのです。
- 「利益が増えた=リスクが小さくなった」とは限りません。値上がりによってリスク資産の保有額や資産全体に占める比率が高まれば、同じ下落率でも資産全体で減少する金額は大きくなります。好調なときほど、資産全体の配分を確認する習慣が役立ちます。
リバランスで当初のリスク水準に戻す
リバランスとは、値動きでずれた資産配分を、当初決めた比率に戻す作業です。値上がりした資産を売却し、値下がりした資産や比率が下がった資産を購入して、アセットクラスごとの配分を固定の水準に戻します。
- 具体例で考えてみましょう。国内株式・外国株式・国内債券・外国債券に250万円ずつ、合計1,000万円を「各25%」で運用し始めたとします。その後、国内株式が約2.6倍の640万円、外国株式が約1.9倍の480万円に値上がりし、債券は金利上昇でそれぞれ240万円にやや値下がりしました。資産全体は1,600万円に増えていますが、配分は国内株式40%・外国株式30%・国内債券15%・外国債券15%に変わっています。株式だけで70%を占める、当初よりリスクの大きなポートフォリオです。
ここで、国内株式を240万円分、外国株式を80万円分売却し、その320万円で国内債券と外国債券を160万円ずつ購入します。4資産がそれぞれ400万円になり、配分は再び「各25%」に戻ります。
| 資産 | 運用開始時 | 値動き後 | 売買 | リバランス後 |
|---|---|---|---|---|
| 国内株式 | 250万円(25%) | 640万円(40%) | 240万円売却 | 400万円(25%) |
| 外国株式 | 250万円(25%) | 480万円(30%) | 80万円売却 | 400万円(25%) |
| 国内債券 | 250万円(25%) | 240万円(15%) | 160万円購入 | 400万円(25%) |
| 外国債券 | 250万円(25%) | 240万円(15%) | 160万円購入 | 400万円(25%) |
| 合計 | 1,000万円 | 1,600万円 | 売却320万円=購入320万円 | 1,600万円 |
※値動きは説明のための仮の数値です。実際の売買には税金や手数料がかかる場合があります。

表のとおり、リバランスの前後で資産の合計は変わりません。変わるのは、資産全体の値動きの大きさです。重要なのは、リバランスを「利益確定のため」ではなく、「当初決めたリスク水準に戻すため」に行う点にあります。
値上がりした資産を売り、値下がりした資産を買う作業なので、心理的には抵抗を感じやすいものです。だからこそ、事前にルールとして決めておく意味があります。
リバランスとスイッチングの違いは、こちらの記事で解説しています。
売却だけでなく追加投資でも配分を調整する
リバランスは、必ず売却で行う必要はありません。新しく積み立てる資金を、比率が低下した資産へ振り向ける方法もあります。先の例なら、毎月の積立を一時的に債券へ回せば、時間をかけて配分が戻ります。
課税口座で上場株式や投資信託を売却して利益が出た場合、原則として譲渡益に20.315%の税金がかかります。商品によっては売買手数料もかかるため、追加投資で配分を調整できるのであれば、売却を伴わない方法が効率的な場合があります。
なお、NISA口座の売却益は非課税です。売却した商品の簿価(取得金額)分だけ、翌年以降に非課税保有限度額(総枠)を再利用できますが、年間投資枠が増えるわけではありません。
出典:金融庁「NISAを知る」
出典:国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
資産額が増えたら許容損失額も再確認する
資産形成が進むほど、「割合」だけでリスクを考えないことが大切です。1,000万円の20%は200万円ですが、5,000万円の20%は1,000万円になります。同じ20%でも、金額の意味はまったく違います。
運用を始めた頃は許容できた割合が、資産が増えた今も許容できるとは限りません。資産額が大きく増えたタイミングで、STEP2の許容損失額を見直し、必要なら株式比率を引き下げる判断も選択肢です。
相場急落時のリスクコントロール
相場が急落したときに大切なのは、「何か新しいことをする」のではなく、「事前に決めたルールから外れない」ことです。日経平均株価は2024年8月5日に1日で4,451円(12.40%)下落し、2026年に入ってからも1日で2,500円を超える下落が複数回起きています。急落は珍しい出来事ではなく、運用を続ける限り何度も経験するものと考えておきましょう。
出典:日本経済新聞社「日経平均プロフィル 上昇・下落記録(下落幅上位)」
出典:日本経済新聞社「日経平均プロフィル 上昇・下落記録(下落率上位)」
まず生活資金に影響がないか確認する
最初に確認するのは、相場の下落幅ではなく、近いうちに資金を取り崩す必要があるかどうかです。生活防衛資金と数年以内に使う資金を分けていれば、下落した資産は当面使わないお金だと確認できます。
- 生活に影響がなければ、急いで売る理由はありません。逆に、使う予定の資金まで投資していた場合は、配分そのものに問題があったと考え、相場の回復後に見直す必要があります。
想定していた下落の範囲内か確認する
次に、事前に決めた許容損失額と、現在の評価損を比べます。許容損失額が400万円で、現在の評価損が250万円なら、想定の範囲内です。
- 想定内であれば、値動きだけを理由に運用方針を変える必要があるかを慎重に判断します。下落そのものは、投資を始める前から織り込んでいたはずの出来事です。想定を超えている場合は、許容損失額の見積もりが甘かったか、集中度が高すぎた可能性があります。
下落が一時的なものかどうかを考える視点は、こちらのFAQも参考にしてください。
暴落後に慌ててリスクを下げない
価格が大きく下がったあとに株式を一斉に売ると、安値でリスク資産を減らすことになります。下落の損失を確定させたうえで、その後の回復に乗れない状態です。
判断の基準は相場観ではなく、自分の家計や運用目的に変化があったかどうかにあります。収入が減った、使う時期が早まったなどの変化があれば、配分の変更は合理的といえるでしょう。変化がないのに不安だけで売るのは、ルールから外れた行動です。
なお、損切りと狼狽売りの違いや、暴落時にやってはいけない行動は、こちらで解説しています。あわせて参考にしてみてください。
リバランスする場合も事前ルールに従う
急落時は株式比率が下がるため、リバランスでは株式を買い増す判断になります。ただし、「○%下がったから買う」という相場の水準を基準にするのではなく、資産配分のズレを基準に調整してください。
たとえば株式比率が目標の70%から62%まで下がったなら、決めておいた乖離幅を超えたかどうかで買い増しを判断します。買い増しに使う資金も、生活防衛資金ではなく、運用資金の範囲内に限ります。
リスクコントロールでよくある失敗
ここでは、管理方法そのものの失敗を5つ取り上げます。リスク許容度の見誤りについてはリスク許容度の記事で解説しているため、ここでは「決めたあとの運用」で起こりやすい失敗に限定します。
商品数を増やせば分散になると思う
投資信託を5本、10本と増やしても、中身が同じ地域や資産に偏っていれば分散にはなりません。たとえば全世界株式のインデックスファンドと米国株式のインデックスファンドを両方持っても、米国株式の比率が高い点は共通しています。分散の効果は、本数ではなく、値動きの要因がどれだけ異なるかで決まります。
含み益が増えた資産をそのまま放置する
値上がりした資産を「順調だから」と放置すると、その資産への集中度が高まります。評価益が大きいほど、下落時に減る金額も大きくなるでしょう。利益が出ている状態こそ、配分を確認し、必要ならリバランスを検討するタイミングです。
損失率だけ見て損失額を確認しない
「10%の下落なら大丈夫」と考えていても、運用額が増えれば金額は膨らみます。3,000万円の10%は300万円です。率で考えると小さく感じる下落も、金額で見ると生活設計に影響する水準かもしれません。定期的に、率と金額の両方で確認しましょう。
NISA・iDeCo・課税口座を別々に管理する
口座や制度ごとに商品を選んでいると、全体の配分が見えなくなります。NISA口座では株式型の投資信託、iDeCoでも株式型、課税口座でも個別株を保有していれば、合計の株式比率は想定以上に高いかもしれません。
口座をまたいで資産全体を一覧にすることが、リスクコントロールの前提です。夫婦で別々に投資している場合も同じことがいえます。
暴落してから運用ルールを考える
最も避けたい失敗は、相場が荒れてから初めてルールを考えることです。評価損を抱えた状態では、冷静に許容損失額や配分を決めることは難しいでしょう。リスクコントロールは、相場が荒れてから行うものではなく、平常時にルールを決めておくものです。
3,000万円の金融資産でリスクコントロールを考える具体例
ここでは、年齢ではなく、資産額・使う時期・許容損失額から配分を逆算する例を見ていきます。架空のケースとして、次の条件を設定します。
具体例
- 金融資産:3,000万円
- 5年以内に使う予定の資金:500万円(子どもの教育費と住宅の修繕費)
- 長期で運用できる資金:2,500万円(生活防衛資金は別に確保済み)
- 許容できる損失額:400万円
この条件で、どのように配分を決めていくかを順に確認しましょう。
使う予定の500万円を運用資産から分ける
最初に、5年以内に使う500万円を運用資産から切り離します。この部分は、定期預金や個人向け国債など、使う時期に元本が確保されている資産で持ちます。
5年という期間は、株式のような資産が下落から回復するのに十分とは限りません。「使うときに減っていない」ことを優先し、増やす役割は残りの2,500万円に任せます。
2,500万円に対して許容できる損失を確認する
次に、2,500万円に対する許容損失額400万円の意味を確認します。400万円は、2,500万円の16%にあたります。「2,500万円が2,100万円まで減っても、生活設計を変えずに運用を続けられるか」が判断の基準です。
もし「2,100万円は不安」と感じるなら、許容損失額を300万円などに下げます。この金額は、他人と比べる必要のない、自分自身の基準です。
株式などへの集中度を確認する
現在の保有状況を確認したところ、2,500万円のうち株式型の投資信託と個別株が1,250万円(50%)だったとします。さらに、その多くが米国株式を中心とする商品でした。この場合、株式への集中と米国への集中の両方があります。
- 企業型確定拠出年金やiDeCoの中身も含めて、株式比率を計算することがポイントです。制度ごとに見ると株式比率は低く見えても、合算すると高いケースは少なくありません。
想定下落額が400万円を超えるなら配分を調整する
株式が50%下落する場面を想定し、株式比率ごとの想定下落額を計算します。
| 株式比率 | 株式の保有額 | 想定下落額 | 許容損失額400万円との比較 |
|---|---|---|---|
| 50% | 1,250万円 | 625万円 | 超える |
| 40% | 1,000万円 | 500万円 | 超える |
| 30% | 750万円 | 375万円 | 範囲内 |
※株式以外の資産の値動きは、簡略化のため考慮していません。債券も金利の変動で価格が下がることがあるため、実際にはその分も含めて検討します。
この例では、株式比率を30%前後まで引き下げると、想定下落額が許容損失額の範囲内に収まります。1,250万円の株式のうち500万円程度を債券などへ移す方法と、今後の積立を債券に振り向けて時間をかけて調整する方法が考えられます。
ここで示したいのは、「株式30%が正解」という結論ではありません。想定する下落率や許容損失額が変われば、適切な比率も変わります。数字を使ってリスクを調整する、この手順そのものが重要です。
年1回とライフイベント時に見直す
配分を決めたあとは、年1回の定期点検と、ライフイベントが起きたときの臨時点検を行います。点検では、株式比率が目標から大きくずれていないか、使う時期が近づいた資金がないか、許容損失額は今も妥当かを確認します。
5年後に500万円を使い終えたら、次に使う時期が近づく資金を改めて切り分けます。こうして、資産の状況と人生の予定に合わせて配分を調整し続けることが、リスクコントロールの実践です。
年代ごとのライフイベントは、こちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。
リスクコントロールを見直すタイミング
リスクコントロールの見直しは、相場の上下ではなく、自分の側の変化をきっかけに行います。ここでは、見直しのトリガーになる5つの場面を整理します。
| タイミング | 主に見直すこと |
|---|---|
| 結婚・出産・住宅購入など大きな支出予定ができたとき | 使う時期が近い資金の切り分け、運用資金の減額 |
| 転職・退職などで収入が変わったとき | 許容損失額、積立額 |
| 退職金・相続などまとまった資金が入ったとき | 許容損失額、資産全体の配分、一括投資の可否 |
| 資産配分が当初のルールから大きくずれたとき | リバランス |
| 資産を取り崩し始めるとき | 取り崩す順番、値動きの小さい資産への移行 |
いずれも、「相場が上がった・下がった」とは別の理由です。それぞれの場面で何を見直すのかを確認していきましょう。
結婚・出産・住宅購入など大きな支出予定ができたとき
大きな支出の予定ができたら、その資金を運用資産から切り分けます。使う時期までの期間が短ければ、値動きの小さい資産へ移す必要があります。運用に回せる金額も減るため、許容損失額も合わせて見直しましょう。
転職・退職などで収入が変わったとき
収入の金額や安定性は、投資で損失が生じたときに家計がどこまで耐えられるかに影響します。収入が減れば、同じ損失額でも生活への影響は大きくなる可能性があります。収入が増えた場合も、積立額を増やすのか、現在のリスク水準を維持するのかを見直す機会といえるでしょう。
退職金・相続などまとまった資金が入ったとき
まとまった資金が入ると、資産全体の金額が変わり、同じ割合でも損失額が大きくなります。許容損失額を金額で確認し直したうえで、一括で投資するのか、時間を分けて投資するのかを検討してください。
資産配分が当初のルールから大きくずれたとき
値動きによって配分が決めた幅を超えてずれた場合は、リバランスのタイミングです。これは相場の水準ではなく、自分の資産配分を基準にした見直しといえます。上昇相場でも下落相場でも、同じルールで判断します。
資産を取り崩し始めるとき
取り崩しの開始は、運用の目的が「増やす」から「使いながら維持する」に変わる節目です。取り崩す順番や、何年分の生活費を値動きの小さい資産で持つかを決めます。取り崩し期の下落は積立期より影響が大きいため、株式比率を段階的に下げる判断も検討してください。
資産を取り崩す際には、資産寿命を意識することが大切です。詳しくは、こちらの記事やFAQもご覧ください。
「リスクコントロール型投資」「リスクコントロール型ファンド」とは?
「リスクコントロール」という言葉は、投資スタイルや投資信託の名称としても使われます。ここでは、この記事で解説してきた「自分で行うリスクコントロール」との関係を整理します。
リスクコントロール型投資とは
リスクコントロール型投資とは、長期・積立・分散によって値動きを抑えながら資産形成を目指す投資スタイルです。J-FLECの用語集では、「投資で安定的な利益を出したい場合に、長期・積立・分散で行う投資スタイルのこと」と説明されています。対になるのが、個別銘柄への集中投資や積極運用で大きな利益を狙う「リスク・テイク型投資」です。
具体例を挙げると、生活防衛資金と5年以内に使う資金を預貯金などで確保したうえで、長期運用する資金を株式ファンドと債券ファンドなどに目標比率を決めて積み立て、年1回程度その配分を点検する方法が挙げられます。
- 使う資金を投資に回さない、資産ごとの目標比率を決めて分散する、購入時期を分ける、見直しのルールを先に決める、という4つの手法を組み合わせた形です。同じ金額でも、1銘柄に集中して投じ、値動きに応じて売買を繰り返すなら、リスク・テイク型投資にあたります。
この記事で解説した5つのステップは、リスクコントロール型投資を自分の資産で具体化する手順そのものです。
出典:金融経済教育推進機構「用語集 リスク・コントロール型投資」
リスクコントロール型ファンドとは
リスクコントロール型ファンドとは、市場環境などに応じて株式などのリスク資産の比率を変更し、基準価額の値動きを一定の範囲に抑えることを目指す投資信託です。
ただし、リスクコントロール型ファンドを買えば、自分自身のリスク管理が不要になるわけではありません。ファンドが管理するのは、そのファンドの中の値動きです。資産全体の配分や、使う時期に合わせた資金の切り分けは、自分で行う必要があります。
資産配分を機動的に変更する運用には、相応の運用コストがかかる点にも注意しましょう。
自分でリスクコントロールするのが難しい場合の相談先
資産全体を一覧にし、許容損失額を決め、配分を調整する作業は、1人では難しい場合もあります。次のような状況に当てはまる方は、専門家に相談する選択肢も検討してください。
保有資産が複数の口座・商品に分散している
証券会社、銀行、iDeCo、企業型確定拠出年金など、口座が複数にわたると、資産全体の配分を把握するだけでも手間がかかります。商品の中身を合算して株式比率を出す作業は、専門家の助けを借りると早く正確に進むでしょう。
個別株や自社株などに資産が集中している
勤務先の自社株や、長く保有してきた個別株に資産が偏っている場合、売却の順番や税金、タイミングの判断が複雑になります。感情的に手放しにくい資産でもあるため、第三者の視点が役立ちます。
退職金・相続資金などまとまった金額を運用する
まとまった資金は、一度の判断で資産全体のリスクが大きく変わります。投資経験が少ない状態で数千万円の配分を決めるのは、負担が大きいものです。許容損失額の設定から一緒に考えてくれる相談先が必要になります。
取り崩しを始める前に資産配分を確認したい
退職後の取り崩しは、積立期とは異なる考え方が求められます。何年分の生活費を値動きの小さい資産で確保し、どの順番で取り崩すかは、年金や退職金の受け取り方とも関係します。取り崩し開始前の点検は、専門家の確認を受ける価値が高い場面です。
どこまでの損失なら許容できるか数字にできない
「いくらまで減っても大丈夫か」を自分で決められない方も多いものです。家計の収支やライフプランを整理したうえで、許容損失額を一緒に数字にしてもらうと、その後の運用判断が安定します。
相談では「何を買えばよいか」だけでなく、「資産全体でどこまでリスクを取るか」を整理することが重要です。投資のコンシェルジュでは、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)などの専門家に無料で相談できます。資産運用の相談先ごとの違いは、こちらの記事を参考にしてください。
この記事のまとめ
リスクコントロールとは、投資のリスクをなくすことではなく、自分が許容できる範囲に管理し続けることです。この記事では、生活資金と運用資金の切り分け、許容損失額の設定、資産配分や集中度の確認、リバランス、暴落時の判断基準まで整理しました。まずは保有資産を口座横断で一覧にし、「いくらまでの損失なら運用を続けられるか」を金額で確認してみましょう。そのうえで資産配分や見直し条件を決めておくことが、相場に左右されにくい運用につながります。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
返戻率
返戻率とは、生命保険や学資保険などの貯蓄型保険において、支払った保険料の総額に対して、満期や解約時に受け取れる金額(解約返戻金や満期保険金)がどのくらいの割合で戻ってくるかを示す指標です。たとえば、200万円の保険料を支払って、満期時に220万円を受け取れる場合、返戻率は110%となります。 この数値が100%を上回れば「支払った保険料より多く戻る」、下回れば「元本割れ」ということになります。返戻率は商品選びの際の比較指標としてよく使われ、特に学資保険や個人年金保険など、将来の資金準備を目的とした保険において注目されます。 ただし、返戻率が高い商品は契約条件が厳しかったり、途中解約に弱かったりする場合もあるため、利率だけでなくライフプラン全体を見据えて判断することが大切です。保険を「貯蓄」としても考える初心者にとって、返戻率は理解しておくべき基本的な指標です。
解約返戻金
解約返戻金とは、生命保険などの保険契約を途中で解約したときに、契約者が受け取ることができる払い戻し金のことをいいます。これは、これまでに支払ってきた保険料の一部が積み立てられていたものから、保険会社の手数料や運用実績などを差し引いた金額です。 契約からの経過年数が短いうちに解約すると、解約返戻金が少なかったり、まったく戻らなかったりすることもあるため、注意が必要です。一方で、長期間契約を続けた場合には、返戻金が支払った保険料を上回ることもあり、貯蓄性のある保険商品として活用されることもあります。資産運用やライフプランを考えるうえで、保険の解約によって現金化できる金額がいくらになるかを把握しておくことはとても大切です。
元本割れ
元本割れとは、投資で使ったお金、つまり元本(がんぽん)よりも、最終的に戻ってきた金額が少なくなることをいいます。たとえば、100万円で投資信託を購入したのに、解約時に戻ってきたのが90万円だった場合、この差額10万円が損失であり、「元本割れした」という状態です。 特に、価格が変動する商品、たとえば株式や投資信託、債券などでは、将来の価格や分配金が保証されているわけではないため、元本割れのリスクがあります。「絶対に損をしたくない」と考える方にとっては、このリスクを正しく理解することがとても重要です。金融商品を選ぶときには、利回りだけでなく元本割れの可能性も十分に考慮しましょう。
予定利率
予定利率は、生命保険会社が保険契約者に対してあらかじめ約束する運用利回りのことです。これは保険会社が保険料を計算する際に用いる重要な指標の一つで、契約者から払い込まれた保険料を運用して得られると予想される運用利回りを表します。 予定利率は保険料の設定に大きな影響を与えます。予定利率が高い場合は保険料が安くなり、低い場合は高くなります。これは、高い予定利率では将来の運用によるリターンを多く見込めるため、保険料を低く抑えることができるからです。 予定利率の決定方法は、まず金融庁が国債の利回りなどを参考に「標準利率」を設定し、その後各保険会社が標準利率を基準に自社の状況を反映して決定します。 予定利率には特徴があり、契約時点の率が適用され、基本的には支払い終了時や更新時まで同率で変わりません。バブル経済期には高い予定利率の保険が多く販売され、これらは「お宝保険」と呼ばれています。近年は低金利環境により、予定利率は低下傾向にあります。 保険料の計算には予定利率以外にも、予定死亡率(性別、年齢別に想定される死亡率)や予定事業費率(保険会社の運営に必要な経費の割合)も影響します。これら3つの要因を合わせて「予定基礎率」と呼びます。
満期保険金
満期保険金とは、保険契約で定められた期間が終了したときに、契約者や被保険者に支払われるお金のことをいいます。たとえば、10年や20年などの一定期間保険料を払い続け、満期になったときにその保険が「満了」すると、あらかじめ決められた金額が支払われます。 このお金は、死亡や病気などのリスクに備えるだけでなく、貯蓄のように将来の資金づくりにも役立つという特徴があります。特に学資保険や養老保険などでよく使われる仕組みです。
保険期間
保険期間とは、保険契約が有効であり、保障が適用される期間のことを指します。この期間中に事故や病気などの保険事故が発生した場合に限り、保険会社から保険金や給付金が支払われます。保険期間には「定期型」と「終身型」があり、定期型は一定の期間で保障が終了するのに対し、終身型は一生涯にわたって保障が続きます。 また、医療保険や生命保険、就業不能保険など、それぞれの保険商品によって保険期間の長さや更新の有無が異なるため、自分のライフプランや必要な保障に応じて選ぶことが大切です。保険期間を正しく理解することで、保障が必要なときに備えが切れているといった事態を防ぐことができます。







