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相続登記の費用はいくら?内訳と相場、費用を抑えるコツを解説
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執筆者:
公開:
2026.10.02
更新:
2026.10.02
2024年4月から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。放置すると10万円以下の過料の対象となる可能性がある一方、登録免許税や書類取得費、司法書士報酬など、費用の全体像は分かりにくいものです。この記事では、相続登記の費用相場と内訳、評価額別の概算、自分で申請する場合と専門家へ依頼する場合の違い、費用を抑える方法まで具体的に解説します。
目次
相続登記の費用はいくら?総額の目安と早見表
相続登記の費用は「登録免許税+書類の実費+司法書士報酬(依頼した場合のみ)」で決まります。総額は、不動産の固定資産評価額に加え、不動産や相続人の数、専門家に依頼する業務の範囲によって大きく変わります。まずは評価額ごとの総額を早見表で確認し、自分のケースに近い金額をつかみましょう。
費用は「登録免許税+実費+依頼時の報酬」で決まる
3つの費用は、自分で手続きしても必ず発生するものと、依頼した場合だけ発生するものに分かれます。
| 費目 | 内容 | 自分で行う場合 | 司法書士に依頼する場合 |
|---|---|---|---|
| 登録免許税 | 登記を申請するときに国へ納める税金 | 必要(免税措置あり) | 必要(免税措置あり) |
| 書類の実費 | 戸籍謄本・住民票・評価証明書などの手数料、郵送費 | 必要 | 必要(立替精算が一般的) |
| 司法書士報酬 | 書類収集・申請書作成・申請代理の手数料 | 不要 | 必要 |
登録免許税と実費は、誰が手続きしても原則としてかかる費用です。自分で行うか依頼するかで変わるのは、司法書士報酬の部分だけと考えてください。
固定資産評価額別の費用早見表
評価額1,000万円なら、自分で行うと約5万円、司法書士に依頼すると約12.5万円が目安です。試算の前提条件は次のとおりです。
前提条件
- 不動産は土地1筆・建物1棟で、同じ法務局の管轄にある
- 法定相続人は3人で、遺産分割協議により1人が単独で相続する
- 登録免許税の免税措置は適用しない
- 実費は戸籍・住民票・印鑑証明書・評価証明書・登記事項証明書・郵送費で約1万円とする
- 司法書士報酬は、日本司法書士会連合会の2024年調査の平均額をもとに約7.5万円とする
| 固定資産評価額(土地・建物の合計) | 登録免許税 | 自分で行う場合の総額 | 司法書士に依頼する場合の総額 |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 2万円 | 約3万円 | 約10.5万円 |
| 1,000万円 | 4万円 | 約5万円 | 約12.5万円 |
| 3,000万円 | 12万円 | 約13万円 | 約20.5万円 |
| 5,000万円 | 20万円 | 約21万円 | 約28.5万円 |
※この表は一定条件での試算であり、全国一律の相場ではありません。
評価額が上がるほど税額が増えるため、高額な不動産では依頼の有無による差(約7.5万円)より税額の差が大きくなります。報酬を評価額に連動させる事務所では、高額物件ほど依頼時の総額がさらに上がる点にも注意しましょう。
出典:日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(2024年(令和6年)3月実施)」
自分のケースを概算するために確認すること
概算に必要な情報は、固定資産評価額・不動産の数と所在地・相続人の数の3つです。評価額は、毎年春ごろに届く固定資産税の課税明細書か、市区町村で取得する固定資産評価証明書で確認できます。
- 不動産の所在が分からない場合は、名寄帳(その人が所有する不動産を市区町村ごとにまとめた台帳)が役立ちます。2026年2月2日からは、特定の人が登記名義人になっている不動産を全国まとめて一覧にした証明書を法務局で取れる「所有不動産記録証明制度」も始まりました。
相続人の数は、戸籍で確定させるまで正確には分かりません。兄弟姉妹や甥・姪が相続人になるケースでは、集める戸籍が大幅に増える点を想定しておきましょう。
相続登記にかかる費用の内訳
相続登記の費用のうち、金額への影響が最も大きいのは登録免許税です。書類の実費は数千円〜2万円程度に収まることが多く、司法書士報酬は依頼する業務の範囲で変わります。ここでは、3つの費用がそれぞれ何に対する支払いなのかを整理します。
登録免許税|原則として固定資産評価額の0.4%
相続登記の登録免許税は、原則として「相続する不動産の固定資産評価額×0.4%」で計算します。使用するのは、相続が発生した年度ではなく、登記を申請する年度の固定資産評価額です。不動産の持分を相続する場合は、不動産全体の評価額に取得する持分割合を掛けて計算します。登録免許税とは登記を受けるときに国へ納める税金で、収入印紙を申請書に貼って納めるのが一般的です。評価額2,000万円の土地・建物なら「2,000万円×0.4%=8万円」です。
計算時は、課税標準額(税額計算の基礎となる金額)の1,000円未満を切り捨て、計算した税額の100円未満も切り捨てます。ただし、免税措置が適用されない場合、計算した税額が1,000円未満であれば、原則として1件の申請につき1,000円となります。
- 複数の不動産を一括して申請できる場合は、その申請に含まれる課税対象の不動産の価額を合算して計算します。なお、法定相続人以外の人が遺贈で取得する場合は、税率が評価額の2%に上がる点に注意が必要です。
税額の基準になるのは、売買価格や相続税評価額(路線価など)ではなく、市区町村が定める固定資産評価額です。課税明細書では「価格」や「評価額」の欄の金額を使います。「課税標準額」の欄は固定資産税の計算用で、住宅用地の特例などで低くなっているため使いません。私道などの非課税の土地は課税明細書に載らないことがあり、算定方法は管轄の法務局に確認が必要です。
必要書類の取得費|戸籍・住民票・評価証明書など
書類の取得費は1通数百円の手数料の積み重ねで、合計は数千円〜2万円程度が目安です。遺産分割協議や法定相続分に基づいて登記する場合は、原則として被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍・除籍謄本などが必要となり、転籍や婚姻の状況によって通数が増えます。
一方、遺言に基づいて相続人が登記する場合は、被相続人の死亡と相続人との関係を確認できる戸籍などで足り、出生まで遡る戸籍が不要なこともあります。
| 書類 | 取得先 | 手数料の目安 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) | 市区町村 | 1通450円 |
| 除籍謄本・改製原戸籍謄本(法改正で様式が変わる前の古い戸籍) | 市区町村 | 1通750円 |
| 住民票・住民票の除票 | 市区町村 | 1通300円前後(自治体で異なる) |
| 印鑑証明書 | 市区町村 | 1通300円前後(自治体で異なる) |
| 固定資産評価証明書 | 市区町村(東京23区は都税事務所) | 1通300〜400円程度(自治体で異なる) |
| 登記事項証明書 | 法務局 | 1通600円(窓口での書面請求) |
| 法定相続情報一覧図の写し | 法務局 | 無料 |
- 必要な書類は、相続の方法で変わります。遺産分割協議で相続する場合は相続人全員の印鑑証明書が必要ですが、遺言で相続する場合は他の相続人の印鑑証明書は原則として不要です。法定相続分どおりに登記する場合も、遺産分割協議書と印鑑証明書は要りません。
なお、遺産分割協議書の作成方法や協議の進め方については、こちらの記事も参考にしてみてください。
出典:e-Gov法令検索「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」
司法書士報酬|依頼する業務の範囲で変わる
司法書士報酬は、登記申請の代理だけでなく、戸籍収集や遺産分割協議書の作成など、依頼する範囲で金額が変わります。報酬の基準は2003年に撤廃されており、現在は各事務所が独自に料金を設定しています。
司法書士に依頼するといくら?報酬相場と見積もりの確認方法
相続登記を司法書士に依頼した場合の報酬は、標準的なケースで平均約7.5万円です。ただし、同じ金額表示でも含まれる業務が事務所ごとに異なるため、総額と対応範囲をセットで比べる必要があります。ここでは、報酬データの読み方と見積もりの確認ポイントを解説します。
報酬相場の目安と調査データの読み方
日本司法書士会連合会が2024年3月に実施したアンケートでは、一般的なケースの相続登記の報酬は平均74,888円でした。モデルケースは、土地1筆・建物1棟(評価額の合計1,000万円)、法定相続人3人で、戸籍収集や書類作成を含む事例です。回答が最も多かった価格帯は5万円台で、6万円台、7万円台、8万円台の順に続きます。
平均値は一部の高額回答に引き上げられやすいため、最も多い価格帯とあわせて見るのがポイントです。この調査の報酬額は消費税込みで、前回の2018年調査と比べると相続登記は平均で約1万円上がっています。不動産や相続人がモデルケースより多い場合は、この金額を超えると考えましょう。
出典:日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(2024年(令和6年)3月実施)」
基本報酬に含まれる業務と別料金になりやすい業務
見積もりで最初に確認したいのは、「基本報酬」に何が含まれているかです。基本料金は10万円前後で書類収集や協議書作成は別料金という事務所もあれば、それらを含めて10万円前後としている事務所もあります。表示額だけでは、どちらが安いか判断できません。
| 業務 | 料金の扱い(一般的な傾向) |
|---|---|
| 登記申請書の作成・申請代理 | 基本報酬に含まれる |
| 戸籍・住民票などの収集 | 基本報酬に含む事務所と、1通ごとに加算する事務所がある |
| 遺産分割協議書の作成 | 基本報酬に含む事務所と、別料金の事務所がある |
| 不動産の数・管轄の追加 | 一定数を超えると加算されることが多い |
| 数次相続・相続人多数への対応 | 難易度に応じて加算されることが多い |
| 実費(税金・書類代・郵送費) | 報酬とは別に請求される |
この表は、見積書を読むときのチェックリストとして使えます。2つの事務所を比べるなら、金額欄ではなく「戸籍収集は含まれるか」「遺産分割協議書の作成は含まれるか」「不動産は何件まで基本報酬の範囲か」の3点を順に確認し、含まれない項目があれば、その業務をいくらで追加できるかまで聞いておきましょう。
- 問い合わせの際は「この金額に戸籍の取り寄せは入っていますか」と具体的に尋ねると、口頭でも齟齬が生じにくくなります。含まれる業務がそろってはじめて、表示額どうしの比較に意味が出てきます。
追加料金が発生しやすいケース
追加料金が発生しやすいのは、手続きの量や難易度が標準より増えるケースです。
追加料金が発生しやすいケース
- 相続人の一部がすでに亡くなっているなど、相続が2回以上重なっている(数次相続)
- 相続人が5人以上など多い
- 兄弟姉妹や甥・姪が相続人になり、集める戸籍が多い
- 不動産の数が多い、または管轄の異なる法務局に不動産がある
- 住宅ローンの抵当権抹消など、相続登記以外の登記も必要
- 未登記の建物がある
未登記建物の表題登記は土地家屋調査士の業務で、司法書士報酬とは別に費用がかかることがあります。複雑な相続関係や複数の登記が重なると、司法書士報酬や実費が増え、総額が早見表を大きく上回る場合があります。見積もり額が高いと感じたときは、登録免許税・実費・司法書士報酬を分けて確認し、追加業務や加算の理由について説明を求めましょう。
見積もりは税込総額・対応範囲・追加料金で比較する
見積もりは「税込の総額」「対応範囲」「追加料金の条件」の3点をそろえて比較します。「相続登記6万円〜」のような表示は最低価格であり、実費や加算を含めた総額は分かりません。
| 確認項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 報酬 | 税込か税抜か、基本報酬に含まれる業務の範囲 |
| 実費 | 登録免許税・書類代・郵送費が報酬と分けて記載されているか |
| 加算 | 不動産・管轄・相続人が増えるといくら上がるか |
| 支払時期 | 着手金の有無、実費の精算方法 |
相見積もりをとるときは、全事務所に同じ資料(課税明細書や家族関係のメモ)を渡すと条件がそろい、比較しやすくなります。
相続登記を自分で行う場合の費用と注意点
相続登記を自分で行えば司法書士報酬がかからず、総額は登録免許税と数千円〜2万円程度の実費に抑えられます。
一方で、戸籍の読み解きや申請書の作成に手間がかかり、不備があれば補正(法務局からの修正指示への対応)が必要です。費用の差額と手間を比べて、自分に合う方法を選びましょう。
司法書士報酬を省けるが、税金と実費は原則必要
自分で行って節約できるのは司法書士報酬の部分で、標準的なケースなら7.5万円前後です。登録免許税と書類代は、自分で行っても原則として同じ金額がかかります。
必要な時間は、戸籍の枚数や役所とのやり取りの回数で大きく変わります。仮に書類収集と申請書作成に合計10時間かかるとすると、1時間あたり約7,500円を節約する計算です。
必要書類の収集から申請までの流れ
遺産分割協議によって不動産を相続し、自分で登記を申請する場合の基本的な流れは次のとおりです。遺言に基づく場合や法定相続分どおりに登記する場合は、必要書類や手順が異なり、遺産分割協議書の作成は不要です。
必要書類の収集から申請までの流れ
- 不動産と評価額を確認する(課税明細書・評価証明書・登記事項証明書)
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍と、相続人の戸籍を集める
- 相続人を確定し、遺産分割協議書を作成して全員が実印を押す
- 登記申請書を作成し、登録免許税分の収入印紙を貼る
- 管轄の法務局に、窓口・郵送・オンラインのいずれかで申請する
- 登記完了後、登記識別情報(権利証に代わる12桁の符号)を受け取る
申請は法務局の窓口だけでなく、郵送やオンラインでも行えます。平日に法務局へ行けない人でも、郵送なら書類をそろえて送るだけで申請できます。オンライン申請には電子証明書(マイナンバーカードなど)や専用ソフトが必要なので、初めての人には郵送のほうが手軽でしょう。
戸籍は、2024年3月に始まった「広域交付」により、本籍地以外の市区町村の窓口でもまとめて請求できるようになりました。広域交付を使えるのは本人・配偶者・父母などの直系尊属・子などの直系卑属で、兄弟姉妹は対象外です。郵送や代理人による請求はできず、窓口で本人確認書類を提示する必要があります。
出典:法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
自分で進めやすいケース・専門家への依頼を検討したいケース
相続関係と不動産がシンプルなら、自分で進めやすいといえます。
| 自分で進めやすいケース | 依頼を検討したいケース |
|---|---|
| 相続人が配偶者と子だけで、人数が少ない | 数次相続があり、相続人が多い |
| 不動産が1〜2件で、同じ法務局の管轄 | 不動産が複数の管轄に散らばっている |
| 遺言書がある、または遺産分割に争いがない | 相続人の中に連絡がとれない人がいる |
| 戸籍の収集や書類の読み込みに時間をとれる | 期限が迫っていて、確実に終わらせたい |
「自分で進めやすいケース」に多く当てはまるのは、たとえば相続人が配偶者と子ども2人で、相続する不動産が実家の土地と建物だけであり、誰が取得するかについて全員が合意しているケースです。
- 必要な戸籍の通数は、被相続人の転籍や婚姻、相続関係などによって異なります。手続きにかかる期間も、書類の収集や相続人間の調整、法務局の処理状況によって変わるため、申請期限から余裕をもって準備しましょう。パソコンで申請書の様式を編集でき、法務局の記載例と自分のケースを読み比べる作業が苦にならない人ほど向いているといえるでしょう。
反対に専門家への依頼を検討したいのは、祖父名義のまま数十年放置されていた土地、面識のない甥や姪が相続人に含まれるケース、実家のほかに遠方の山林や私道の持分がある場合などです。
相続人が多い場合や、連絡を取りにくい相続人がいる場合は、遺産分割協議や書類の取りまとめに時間がかかることがあります。人数だけで判断せず、合意の状況、書類収集の進み具合、申請期限までの余裕を踏まえて、専門家への依頼を検討しましょう。
なお、土地を相続した際の手続きの流れはこちらの記事で解説しています。あわせて参考にしてみてください。
相続登記の費用が高くなるケース
相続登記の費用が早見表より高くなる原因は、「税額が増える」と「報酬・実費が増える」の2つに分けると整理しやすくなります。税額は評価額に比例し、報酬や実費は手続きの量や難易度に比例します。
| ケース | 増える費用 | 増える理由 | 見積もり時に伝える情報 |
|---|---|---|---|
| 評価額が高い | 登録免許税(定率制なら報酬も) | 税額が評価額の0.4%で決まる | 課税明細書の評価額 |
| 不動産・管轄が多い | 報酬・実費 | 物件ごとの確認と管轄ごとの申請が必要 | 物件数と所在地 |
| 数次相続・相続人が多い | 報酬・実費 | 戸籍の量と協議書の署名者が増える | 家族関係、亡くなった相続人の有無 |
| 遺産分割の争い | 弁護士費用 | 司法書士は紛争の交渉を代理できない | 争点と相手方の状況 |
不動産の評価額が高い
都心の物件など評価額が高い不動産ほど、登録免許税が大きくなります。評価額1億円なら、税額だけで40万円です。報酬を評価額に応じて加算する事務所では、報酬も上がる点に注意しましょう。
不動産の数や管轄法務局が多い
不動産が複数の法務局の管轄に分かれていると、管轄ごとに申請書を作るため、報酬と郵送費が増えます。遠方の法務局にも郵送やオンラインで申請できるので、現地へ行く必要はありません。
実家以外に山林や私道の持分があるなど、把握漏れが心配な場合は所有不動産記録証明制度が役立ちます。手数料は検索条件1件・1通あたり、書面請求で1,600円、オンライン請求で郵送受取なら1,500円、窓口受取なら1,470円です。被相続人の過去の氏名や住所も検索条件に加えると、検索漏れを減らせます。
数次相続などで相続関係の確認が複雑
数次相続とは、相続登記をしないうちに相続人も亡くなり、相続が2回以上重なっている状態です。名義を移すには原則として相続の回数分の登記が必要で、戸籍の量も協議書に署名する人も増えます。祖父名義の土地を孫の代で登記する場合、相続人が10人を超えることも珍しくありません。
中間の相続人が1人だけの場合は、1件の申請で最終の相続人へ直接登記できることもあります。また、一定の数次相続では中間の登記にかかる登録免許税が免除されます。
遺産分割の争いなどで別の専門家費用が必要
遺産分割でもめている場合、交渉や調停の代理は弁護士への依頼が必要になり、費用の水準が大きく変わります。司法書士は、争いのある遺産分割の交渉を代理できません。
弁護士費用は取得を目指す遺産の額に応じて決める事務所が多く、登記費用とは桁が変わることもあります。
相続登記の費用を抑える方法
相続登記の費用を抑えるには、税金・実費・報酬のどこを減らせるかを分けて考えます。まず確認したいのは、登録免許税の免税措置に該当するかどうかです。
要件を満たす土地の登記は免税になりますが、建物や対象外の土地には原則として課税されるため、申請全体の税額がゼロになるとは限りません。一方で、目先の費用だけで共有名義を選ぶと、将来の負担が増える場合がある点にも注意しましょう。
登録免許税の免税措置に該当するか確認する
相続登記の登録免許税には、2027年3月31日までの登記を対象とした2つの免税措置があります。
| 措置 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| 数次相続の中間登記の免税 | 相続で土地を取得した個人が、登記をしないまま亡くなった場合 | 亡くなった人を名義人とする登記の登録免許税が免除 |
| 少額土地の免税 | 評価額100万円以下の土地 | その土地の相続登記の登録免許税が免除 |
少額土地の免税は、個人が2027年3月31日までに土地の相続登記を受ける場合に、課税標準となる価額が100万円以下であれば登録免許税を課さないという特例です。免税の対象は土地だけで、建物には適用されません。
持分を相続する場合は、評価額に持分割合を掛けた金額で100万円以下かどうかを判定します。早見表の500万円のケースでも、土地部分が100万円以下なら土地分の税額はかかりません。
- 免税を受けるには申請書に根拠となる法令の条項を書く必要があり、記載がなければ免税措置は受けられません。令和8年度の税制改正で根拠条文の番号が変わっているため、古い記載例を使わず法務局の最新の案内を確認してください。期間内に申請すれば、それより前に亡くなった人の相続登記にも免税措置が適用されます。
法定相続情報証明制度と戸籍の広域交付で書類の手間を減らす
法定相続情報証明制度を使うと、戸籍の束の代わりに1枚の一覧図を各種の相続手続きで使い回せます。
法定相続情報一覧図とは、法務局が戸籍をもとに相続関係を証明する書類で、写しの交付は無料です。銀行・証券会社・法務局など提出先が多いほど、戸籍を何セットも取る費用と手間を減らせます。戸籍の収集自体は、前述の広域交付を使えば本籍地ごとに郵送で請求する手間を省けます。
出典:法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
書類収集など自分でできる部分を担当する
すべてを依頼せず戸籍収集などを自分で行えば、報酬の加算分を減らせる場合があります。戸籍収集を1通ごとの加算にしている事務所なら、通数が多いほど削減効果は大きくなります。依頼前に「自分で集めた書類を使ってもらえるか」「その場合いくら減るか」を確認しておきましょう。
同じ条件で複数の見積もりを比較する
相見積もりは、同じ資料と同じ依頼範囲で依頼してはじめて意味を持ちます。条件がそろっていないと、安く見えた事務所の対応範囲が狭かっただけ、という結果になりかねません。
預貯金の解約や相続税申告とまとめて依頼する場合も、個別に依頼したときの総額と業務範囲を比べて判断しましょう。
費用を優先して共有名義にする前に確認したいこと
遺産分割協議をせずに法定相続分どおりの共有名義で登記すると、協議書は不要ですが、将来の手続き負担が増えることがあります。法定相続分での登記は相続人の1人からでも申請できますが、登記識別情報は申請した人にしか通知されません。
- 共有者の1人が亡くなると、その持分にさらに相続が発生し、関係者が増えていきます。不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要なため、関係者が増えるほど調整が難しくなる場合があります。
相続登記の費用は誰が払う?支払時期と資金の準備
相続登記の費用は不動産を取得する相続人が負担するのが一般的ですが、法律で負担者が決まっているわけではありません。相続人同士で負担方法を決め、支払時期に合わせて資金を準備しておかないと、手続きが止まりかねません。ここでは、負担のルールと、資金が足りない場合の選択肢を解説します。
相続人同士で費用負担と立替精算の方法を決める
費用負担は、遺産分割協議書に定めておくと後のトラブルを防げます。例えば「登記費用は不動産を取得する長男が負担する」「代表者が立て替え、預貯金の分割時に精算する」といった定め方です。代表者が立て替える場合は領収書を保管し、精算の方法と時期を全員で共有しておきましょう。
税金・実費・報酬の支払時期を確認する
費用ごとに支払先と支払時期が異なります。
| 費目 | 支払先 | 支払時期の目安 |
|---|---|---|
| 書類の取得費 | 市区町村・法務局 | 書類の請求時 |
| 登録免許税 | 国(収入印紙などで納付) | 登記の申請時 |
| 司法書士報酬 | 司法書士事務所 | 着手金、完了後の一括払いなど事務所により異なる |
| 立替実費 | 司法書士事務所 | 報酬とあわせて精算するのが一般的 |
登録免許税は申請時に全額を納めるため、評価額が高い場合は申請前に資金を用意しておきましょう。司法書士に依頼する場合も、税金分を申請前に預かる事務所があるので、見積もり時に支払時期を確認してください。
手元資金が不足する場合の対応を検討する
手元資金が足りない場合は、預貯金の仮払い制度を使えば、遺産分割の前でも被相続人の預金から一定額を引き出せます。銀行は口座名義人の死亡を知ると口座を凍結し、原則として遺産分割が終わるまで払い戻しに応じません。
仮払い制度で各相続人が引き出せる額は、相続開始時の残高の3分の1に自分の法定相続分を掛けた金額です。上限は金融機関ごとに150万円で、同じ金融機関の複数の支店にある預金は合計して計算します。例えば預金600万円で相続人が子2人なら、1人あたり600万円×1/3×1/2=100万円まで引き出せます。
- 引き出した額は、その相続人が遺産の一部を分割により取得したものとして扱われる点に注意しましょう。相続放棄を考えている人は、払い戻しが単純承認(相続を認めたとみなされること)にあたるリスクがあるため、事前に専門家へ相談してください。
不動産を売って代金を分ける「換価分割」を選ぶ場合も、売却の前提として相続登記が必要です。登記費用は売却代金が入る前に支払うので、立て替える人と精算方法を協議書に定めておくと安心でしょう。
出典:e-Gov法令検索「民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令」
相続登記の期限と、手続きが進まない場合の対応
相続登記は、不動産の取得を知った日から3年以内に申請する義務があります。遺産分割がまとまらない場合でも、相続人申告登記などで期限内に義務を果たす方法があります。困ったときにどこへ相談すればよいか、相談先ごとの対応範囲もあわせて確認しましょう。
申請期限・過料と義務化前の相続の扱い
相続で不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料が科されます。過料とは、刑罰ではない行政上の金銭的な制裁のことです。2024年4月1日より前に発生した相続も対象で、取得を知った日と施行日のいずれか遅い日から3年以内の申請が必要です。
そのため、施行前から相続を知っていたケースでは2027年3月31日が期限になります。遺産分割がまとまって不動産を取得した相続人は、成立した日から3年以内に、その内容を反映した相続登記を申請しなければなりません。
遺産分割がまとまらない場合は相続人申告登記を検討する
期限内に遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記を申し出れば申請義務を果たせます。相続人申告登記とは、登記名義人の相続が始まった旨と、自分がその相続人である旨を法務局に申し出る手続きです。申し出をすると、申請義務を履行したものとみなされます。
相続人が複数いても各相続人が単独で申し出ることができ、添付書類も通常の相続登記より少なくて済みます。
- ただし、申請義務を履行したとみなされるのは、申出の対象となった相続人に限られます。1人が自分の分だけ申し出ても、他の相続人の義務まで履行したことにはなりません。登録免許税はかかりませんが、権利の登記ではないため、これだけでは不動産の売却や担保設定はできません。遺産分割が成立した場合は、その日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
司法書士・法務局・弁護士・税理士の相談範囲
相談先は、「登記の手続き」「争いの解決」「税金」のどれを相談したいかで選びます。
| 相談先 | できること | できないこと・注意点 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 司法書士 | 戸籍収集、遺産分割協議書の作成、登記申請の代理 | 争いのある遺産分割の交渉代理 | 標準的なケースで平均約7.5万円 |
| 法務局(登記手続案内) | 申請書の書き方や必要書類の案内 | 個別の法律判断、書類の作成代行、紛争の相談 | 無料(予約制) |
| 弁護士 | 遺産分割の交渉・調停・審判の代理 | 登記は提携する司法書士に任せる場合もある | 事務所・事案により異なる |
| 税理士 | 相続税の申告、税務の相談 | 登記申請の代理 | 遺産の額などにより異なる |
行政書士は戸籍収集や遺産分割協議書の作成はできますが、登記申請の代理はできません。
銀行の遺産整理業務は窓口を一本化できる一方、登記部分は提携する司法書士が担当するのが一般的です。費用を抑えて相談したい場合は、自治体の無料法律相談や、収入などの条件を満たせば無料相談や費用の立替えを利用できる法テラスも選択肢になります。
なお、相続に関する相談相手の探し方・選び方はこちらの記事も参考にしてみてください。
登記費用とあわせて考えたい相続後の不動産負担
相続登記は名義を変える手続きであり、不動産を持ち続ける限り費用は続きます。登記費用を数万円抑えても、固定資産税や管理費が毎年かかれば、長期の負担はそれを上回ることがあります。資産運用の視点では、登記の時点で「持ち続けるか、売るか、貸すか」を数字で比べておくのが大切です。
共有名義にすると将来の手続き負担が増えることがある
共有名義は登記時の手間を減らせる反面、代替わりのたびに共有者が増え、売却や活用の判断が難しくなることがあります。例えば兄弟3人で共有した実家は、1人が亡くなるとその持分を配偶者や子が相続し、共有者が増えていきます。
売却や建て替えなど共有物全体の変更には、原則として共有者全員の同意が必要です。共有者に認知症の人がいると、成年後見人(本人に代わって財産を管理する人)を選任しなければ手続きを進められない場合があります。
- 2023年4月施行の改正民法では、所在が分からない共有者の持分を、裁判所の手続きを経て取得・譲渡できる制度ができました。ただし費用と時間がかかるため、はじめから単独名義にできないか検討する価値があります。
保有・売却・賃貸を維持費と手取り額で比較する
相続した不動産は、「持ち続けた場合の年間コスト」と「売却や賃貸で得られる手取り」を並べて判断します。
| 選択肢 | 主な費用・リスク | 主な収入・メリット |
|---|---|---|
| 保有(空き家) | 固定資産税・都市計画税、管理費、修繕費、特定空家等に指定されるリスク | 将来の自己利用や値上がりの余地 |
| 売却 | 仲介手数料、譲渡所得税(売却益にかかる税金) | まとまった現金化、管理負担の解消 |
| 賃貸 | 修繕・リフォーム費、空室リスク、管理委託料 | 継続的な家賃収入 |
空き家が特定空家等(倒壊や衛生上の危険がある空き家)に指定されて勧告を受けると、住宅用地の特例が外れ、固定資産税が上がる可能性があります。2023年12月施行の改正法により、放置すれば特定空家等になるおそれがある「管理不全空家」も勧告の対象に加わりました。
売却時は、相続税を納めた人が一定期間内に売ると使える「取得費加算の特例」や、要件を満たす空き家の売却で最大3,000万円を控除できる特例があります。要件と適用期限は改正されることがあるため、売却前に国税庁の最新情報で確認しましょう。
登記後の義務にも注意が必要です。2026年4月1日から、不動産の所有者として登記されている人の住所や氏名の変更登記が義務化されました。変更日から2年以内の申請が必要で、正当な理由なく義務を怠ると5万円以下の過料の対象となります。施行前の変更についても、2028年3月31日までに対応が必要です。
また、検索用情報の申出など所定の手続きを済ませることで、法務局が職権で変更登記を行う無料の「スマート変更登記」を利用できます。相続登記の際に、あわせて手続きを確認しておきましょう。
登記手続きの相談は司法書士、相続した不動産や売却資金をどう運用するかの相談は資産運用の専門家、というように目的に応じて相談先を使い分けましょう。
なお、取得費加算の特例や3,000万円控除の特例については、こちらの記事で解説しています。あわせて参考にしてみてください。
この記事のまとめ
この記事では、相続登記にかかる登録免許税・書類取得費・司法書士報酬の相場と計算方法、高額になりやすいケース、相談先や節約方法を整理しました。まずは固定資産評価額と相続関係を確認し、自分で対応できる範囲と専門家に依頼する範囲を切り分けましょう。費用だけでなく、共有名義による将来負担や登記後の保有・売却も含めて検討し、期限内に早めに手続きを進めることが大切です。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
相続登記
相続登記とは、不動産を所有していた人が亡くなったときに、その不動産の名義を相続人へ変更する手続きのことです。この登記を行うことで、相続人が正式な所有者として法的に認められ、売却や担保設定などの権利行使が可能になります。これまでは義務ではありませんでしたが、2024年からは相続登記が法律上の義務となり、正当な理由なく放置すると過料(罰金)が科される可能性があります。 相続登記を行うには、戸籍謄本や遺産分割協議書などの書類を用意し、法務局に申請する必要があります。不動産の相続が発生した場合には、早めに登記を済ませることで、後のトラブルを防ぎ、相続資産を円滑に活用できるようになります。
登録免許税
登録免許税(とうろくめんきょぜい)は、土地や建物などの不動産、あるいは会社などに関する「登記」や「登録」の手続きを行うときにかかる税金です。たとえば、不動産を購入したときには、その所有権を自分の名義にするための登記をしますが、このときに登録免許税を支払う必要があります。また、新しく会社を設立する際にも、設立登記をすることで正式な法人として認められますが、そのときにも税金が発生します。 この税金の金額は、登記や登録の内容によって異なります。たとえば、不動産の登記であれば、その不動産の評価額に一定の税率をかけて金額が決まります。不動産の価値が高ければ、それに応じて税金も高くなります。会社の設立登記の場合は、資本金の金額をもとに税額が計算されますが、たとえ資本金が少なくても、最低でも15万円の税金が必要とされています。 なお、登記や登録は、法律上の効力を持たせるために必要な手続きであり、それを行うにはこの税金の支払いが避けられません。ただし、登記の内容によっては、税率が軽減される「軽減措置」が適用されることもあります。これはたとえば、一定の条件を満たした住宅の購入や中小企業の設立などに当てはまることがあります。 このように、登録免許税は何かを「正式に記録する」ために必要な費用であり、不動産取引や会社の設立を考えている場合には、あらかじめかかる費用として意識しておくと安心です。
固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、土地や建物などの不動産に対して課税される固定資産税を計算するために、市区町村が評価して決める金額のことです。この評価額は原則として3年ごとに見直され、土地や建物の状況、周辺の地価などをもとに決定されます。 この金額は市場での売買価格とは異なり、実際の価格よりも低めに設定される傾向があります。また、相続税や不動産取得税など、他の税金の算出にも使われることがあるため、不動産を所有している方にとっては非常に重要な指標となります。納税通知書などで確認することができ、不動産の維持コストを把握する上でも役立ちます。
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書とは、土地や建物などの固定資産について、市区町村がその評価額を証明する書類のことです。固定資産税の計算のもとになる評価額が記載されており、主に不動産の相続や売買、贈与の際に使われます。 特に相続手続きでは、遺産の中に不動産が含まれている場合に、遺産の全体価値を把握するためにこの証明書が必要になります。また、不動産の価格の目安として金融機関に提出したり、登記の手続きの際にも利用されることがあります。各市区町村の役所や窓口で取得することができます。
課税標準額
課税標準額とは、税金を計算する際の基礎となる金額のことで、実際の所得や資産の金額から、必要な控除や非課税分を差し引いた後に残る「課税対象となる金額」を指します。たとえば、所得税であれば収入から各種控除(基礎控除や扶養控除など)を引いた金額が課税標準額となり、この金額に対して税率がかけられて税額が決まります。住民税や固定資産税など、さまざまな税目において課税標準額は使われており、税金を「どれくらい払うか」を判断するうえで最も基本的な要素となります。 資産運用や家計管理においては、課税標準額を把握することで、自分に適用される税率や控除の効果をより正確に理解し、効率的な節税や資産設計につなげることができます。
相続税評価額
相続税評価額とは、亡くなった方の財産を相続する際に、その財産がいくらの価値があるかを税務上で計算した金額のことです。 この金額を基にして、相続税がいくらになるかが決まります。現金や預金はそのままの金額で評価されますが、不動産や株式などは国が定めた評価方法に基づいて計算されるため、実際の市場価格とは異なることがあります。 たとえば、不動産は「路線価」や「固定資産税評価額」を用いて算出されるため、相場よりも低くなる場合もあります。この評価額を正しく把握しておくことで、相続税の対策や資産の分配を円滑に行うことができます。





