内縁関係の成立条件と法律婚との権利・義務の違いは?
回答受付中
0
2025/07/28 08:00
男性
30代
婚姻届を出さずに同居し家計を一体化している私たちは、内縁夫婦と呼ばれると聞きました。夫婦同様に扱われる面がある一方で、改姓や相続、税制で差があるとも聞きます。具体的に法律婚とどのような違いがあるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
内縁関係は、将来も夫婦として共同生活を続ける意思(婚姻意思)と、実際に同居・家計共有し社会的に夫婦と認識される実態がそろえば成立します。婚姻届がないため戸籍が作成されず姓も変わらず、配偶者の父母などとは姻族にならず扶養・介護義務や相続権も生じません。もっとも当事者間には貞操義務・協力扶助義務が準用され、別離時の財産分与や慰謝料請求は認められる一方、第三者への効力は限定的です。税制では配偶者控除・贈与税の配偶者特例・相続税の配偶者控除が使えず、財産移転には一般贈与税・相続税が課されます。社会保障も健康保険の被扶養者認定は多くの組合で可能なものの、遺族年金や死亡退職金は原則対象外です。子が生まれた場合、父が認知しなければ非嫡出子となり親権は母のみで、氏を父にするには別途手続きが必要です。内縁は柔軟さが利点である反面、死亡・破局・税務の局面で権利が薄い点を踏まえ、公正証書遺言や任意後見契約、生前贈与計画などで補完策を講じることが重要です。
関連記事
関連する専門用語
内縁関係(事実婚)
内縁関係(事実婚)とは、法律上の婚姻届を提出していないものの、社会的・実質的には夫婦として共同生活を営んでいる関係を指します。お互いに結婚の意思を持ち、継続的に同居し、家計や生活を共にしている場合、一定の法的効果が認められることがあります。裁判所は、その実態に基づいて、内縁関係の成立と効力を判断します。 たとえば、生活費の分担義務や内縁解消時の財産分与、慰謝料請求、さらには労災や生命保険における遺族補償の受給資格など、法律婚に準じた取り扱いを受ける場面もあります。また、健康保険の被扶養者や国民年金の第3号被保険者として認められる場合もあります。 しかし、内縁関係はあくまで法律上の「婚姻」ではないため、相続や税制上の扱いには明確な限界があります。内縁の配偶者には法定相続権がなく、遺産を受け取るには遺言や信託契約などによる明示的な指定が必要です。また、相続税における配偶者控除(最大1億6,000万円)や、所得税の配偶者控除・配偶者特別控除といった優遇措置も原則として適用されません。 このため、内縁関係にある当事者が安心して暮らし続けるには、生前からの明確な財産承継対策が不可欠です。公正証書遺言の作成、信託スキームの活用、生命保険金の指定などを通じて、遺産の受け渡しや税負担への備えを整えておくことが重要です。 なお、同居期間や関係の安定性、家計の一体性などが不十分な場合、内縁としての法的保護が否定されることもあり得るため、形式にとらわれない実質的な関係性の証明が重視されます。内縁関係の権利保全には、専門家の助言を受けながらの対応が望まれます。
姻族(いんぞく)
姻族(いんぞく)とは、結婚によって生じる親族関係のことで、配偶者の血族や、自分の血族にとっての配偶者など、血のつながりはないものの法律上「親族」として扱われる人たちを指します。たとえば、自分の妻の両親(義父母)や夫の兄弟姉妹(義兄弟姉妹)は姻族にあたります。 日本の民法では、配偶者の直系血族や同居する義理の家族は姻族関係として一定の法律的な義務(扶養義務など)を負うことがあります。また、離婚によって姻族関係は原則として終了しますが、ケースによっては関係が続く場合もあります。姻族は血族と区別されつつも、家族法や相続、扶養、介護といった場面で重要な役割を果たすため、初心者にとっても家庭に関わる法制度を理解するうえで押さえておきたい基本用語です。
財産分与
財産分与とは、離婚に際して夫婦が結婚生活中に築いた共有財産を公平に分け合う手続きのことです。たとえば、現金、預貯金、不動産、自動車、退職金、年金分割などが対象となり、名義が夫婦どちらか一方になっている財産であっても、原則として共同で形成されたものであれば分与の対象となります。 財産分与には、単なる「清算的分与」だけでなく、離婚後の生活保障を目的とした「扶養的分与」、不貞行為などに対する「慰謝的分与」も含まれる場合があります。分与の方法は、当事者の話し合い(協議)によって決められますが、合意できない場合は家庭裁判所に調停や審判を申し立てることも可能です。財産分与は、離婚後の経済的安定や公正な清算のために重要な役割を果たす制度です。
非嫡出子
非嫡出子とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子どものことを指します。かつては相続や戸籍上の扱いにおいて、嫡出子(結婚している夫婦の子)と区別されていましたが、現在では法律が改正され、相続に関しては嫡出子と同じ権利が認められるようになっています。ただし、父親との法的な親子関係を成立させるには、「認知」という手続きが必要です。資産運用や相続の場面では、遺産を誰がどのように受け取るのかが重要になるため、非嫡出子である場合は生前にきちんと準備しておくことが必要です。特に遺言書を残すことで、将来のトラブルを防ぐことができます。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証人が本人の意思に基づいて作成する遺言書で、遺言の中でも最も法的な信頼性と実効性が高い形式とされています。作成にあたっては、公証役場にて遺言者が口頭で内容を伝え、それを公証人が文書にまとめ、証人2名の立会いのもとで公正証書として正式に成立します。 この方式の最大の特徴は、家庭裁判所による検認手続きが不要である点です。つまり、相続開始後すぐに法的に効力を持つため、遺族による手続きがスムーズに進むという実務上の大きな利点があります。また、公証人による作成と原本保管によって、遺言の紛失や改ざん、内容不備といったリスクも大幅に軽減されます。 一方で、公正証書遺言の作成には一定の準備が必要です。財産の内容を証明する資料(不動産登記簿謄本や預金通帳の写しなど)や、相続人・受遺者の戸籍情報などが求められます。また、証人2名の同席も必須であり、これには利害関係のない成人が必要とされます。公証役場で証人を紹介してもらえるケースもありますが、費用が別途発生することもあります。 費用面では、遺言に記載する財産の価額に応じた公証人手数料がかかりますが、将来のトラブル回避や手続きの簡素化といったメリットを考えれば、特に財産規模が大きい場合や、遺産分割に不安がある家庭では非常に有効な手段と言えるでしょう。 資産運用や相続対策において、公正証書遺言は重要な役割を果たします。特定の資産を特定の人に確実に引き継がせたい場合や、相続人間の争いを未然に防ぎたい場合には、公正証書遺言を活用することで、遺言者の意思を明確かつ安全に残すことができます。
任意後見
任意後見とは、自分の判断能力が低下する将来に備えて、あらかじめ信頼できる人を後見人として選び、公正証書で契約を結んでおく制度のことをいいます。これは「元気なうち」に本人の意思で準備できる後見制度であり、判断能力が実際に低下したときに、家庭裁判所の監督のもとで任意後見人が正式に活動を開始します。 任意後見人は、本人の財産管理や生活支援などを本人の希望に沿って行うことができるため、自分らしい生活を維持するための手段として注目されています。法定後見と違い、自分で「誰に、何を任せるか」を決めておける点が特徴です。高齢化や認知症のリスクが高まる中で、資産や生活の管理を将来にわたって安心して託すための、重要な準備の一つです。初心者にとっても、「自分の老後を自分で選ぶ」ための有効な制度として知っておく価値があります。