個人事業主の場合、確定申告時に税理士のサポートはいらないでしょうか?
個人事業主の場合、確定申告時に税理士のサポートはいらないでしょうか?
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2025/10/27 09:46
男性
50代
来年に個人事業主として初めて確定申告を行う予定ですが、帳簿付けや経費の仕分け、控除の適用などに不安があります。税理士に依頼すると費用がかかる一方で、自分だけで申告して間違えるリスクも気になります。実際のところ、個人事業主でも税理士のサポートを受けたほうがよいケースや、自力で対応できる範囲について教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
個人事業主が実践しやすい税金対策として、最も効果的なのは「青色申告による65万円控除体制の確立」と「積立型の節税制度の活用」です。まず、複式簿記とe-Taxを導入し、青色申告特別控除の最大65万円を確実に得ることで、所得税と住民税の両方を効率的に軽減できます。
次に、経費計上の工夫が欠かせません。自宅や車、通信費などを事業と私用で按分する「家事按分」は代表的な方法です。使用割合を合理的に算定し、面積や使用時間などの根拠を残しておくことで、税務上の説明が容易になります。また、10万円未満の支出は即時経費化、30万円未満であれば少額減価償却資産の特例を使うことで即時費用化が可能です。
さらに、家族が事業を手伝っている場合には「青色事業専従者給与」を導入することで、給与を経費として計上できます。届出や給与水準の合理性を保つことが重要です。社会保険料控除や医療費控除など、基本的な所得控除も取りこぼしなく活用しましょう。
積立型の節税制度も大きな柱です。小規模企業共済は掛金全額が所得控除となり、退職金や年金形式で受け取ることができます。iDeCoは自営業者なら月68,000円まで掛金が全額控除対象で、国民年金基金との併用も可能です。さらに、倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、掛金を必要経費にできるうえ、資金繰りの備えにもなります。
また、消費税対策としては、インボイス制度導入後の免税・課税の選択や、売上5,000万円以下の場合の簡易課税制度の活用も検討が必要です。制度選択を誤ると、仕入税額控除の損失や取引先対応の不備につながるため、毎年見直すことが望まれます。
具体的な優先順位としては、まず青色申告65万円体制を整え、次に経費整理と家事按分を明確化します。その後、少額減価償却資産の特例や専従者給与を適用し、積立型の節税制度を毎月自動化する流れが現実的です。最後に、消費税の課税区分を年に一度確認し、最適な申告方法を維持します。
一方で、領収書があっても事業関連性を説明できない支出や、届出のない専従者給与、特例の上限超過などは否認リスクが高く注意が必要です。インボイス制度への対応も放置せず、必ず事前に判断しておきましょう。
以上のように、個人事業主にとっての税金対策は「制度を知り、根拠を残すこと」が鍵です。青色申告を軸に、経費の整備と積立制度を組み合わせることで、安定的かつ合法的に節税効果を最大化できます。
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青色申告特別控除
青色申告特別控除とは、個人事業主やフリーランスが青色申告を行う際に受けられる税制上の特典の一つで、一定の要件を満たせば所得から最大65万円(電子申告を行う場合など)の控除を受けられる仕組みです。帳簿を正しく作成し、期限内に申告することが条件で、簡易な場合は10万円の控除も認められています。 この控除を利用することで課税所得を減らすことができ、結果として所得税や住民税の負担を軽くできます。個人で事業を行う人にとっては節税効果が大きいため、資産形成や資金繰りの安定に役立ちます。初心者にとっては「きちんと帳簿をつけて青色申告をすれば、税金が安くなる仕組み」と理解すると分かりやすいでしょう。
複式簿記
複式簿記とは、すべての取引を「お金の動き」と「その原因」の両面から記録する会計の方法です。たとえば、現金で商品を購入した場合、「現金が減った」という記録と同時に「仕入が増えた」という記録を行います。このように、1つの取引を2つの側面から記録することで、資産や負債、収益や費用の変化を正確に把握できる仕組みになっています。複式簿記は、企業会計の基本的な考え方であり、個人事業主でも「青色申告」を行う際に採用することで、税制上の特典を受けられます。具体的には、青色申告特別控除として最大65万円の控除を受けられるため、正確な記帳と節税効果の両方を得られる重要な方法です。
家事按分
家事按分とは、個人事業主やフリーランスが事業と私生活の両方で使っている支出を、事業に使った割合と私的な利用の割合に分けることを指します。たとえば、自宅の一部を仕事場として使っている場合、家賃や光熱費、通信費などはすべてを経費にできませんが、仕事で使った分だけを合理的に按分して経費として計上することができます。 このように、家事按分は事業に関係する支出を正しく経費化するための重要な考え方です。按分割合は、使用面積や使用時間、利用頻度など、客観的な基準に基づいて決める必要があります。また、税務署に説明できるように記録を残しておくことも大切です。正しく家事按分を行うことで、節税につながるだけでなく、経費の信頼性を高めることにもつながります。
少額減価償却資産の特例
少額減価償却資産の特例とは、中小企業や個人事業主が一定の金額以下の資産を購入した場合に、その資産の費用を一度に全額経費として計上できる制度のことです。通常、パソコンや設備などの資産は数年にわたって減価償却(=少しずつ経費化)する必要がありますが、この特例を利用すると、取得した年に一括で経費にすることができます。 対象となるのは、中小企業者や個人事業主で、取得価額が30万円未満の減価償却資産です。ただし、1年間にこの特例を使って経費化できる金額の合計は300万円までと定められています。この制度は、中小企業の設備投資を促進し、税務処理の手間を減らす目的で設けられています。 具体的には、事業用のパソコン、机、椅子、プリンター、工具などが該当します。青色申告をしている事業者が対象となり、確定申告の際には「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」の提出が必要です。
小規模企業共済
小規模企業共済とは、中小企業の経営者や役員、個人事業主の方のための退職金制度です。「小規模企業」という文言が含まれているとおり、一定の要件を満たす中小企業や個人事業主が対象です。 小規模企業共済制度は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が運営している「小規模企業共済法」という法令に基づいた共済制度です。 掛金は全額所得控除され、加入者は事業資金の借入れも可能です。 加入資格は、従業員が20人以下(商業・サービス業では5人以下)の個人事業主や会社役員などです。ただし、兼業で会社員をしているなど、給与所得を得ている場合は加入資格がないため注意が必要です。
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インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を適切に行うために導入された仕組みで、正式には「適格請求書等保存方式」と呼ばれます。事業者が取引を行う際に、消費税額を明記した適格請求書、いわゆるインボイスを発行・保存することで、仕入れにかかった消費税を差し引くことができるようになります。これにより、事業者間の消費税のやり取りがより透明化され、不正や二重控除を防ぐ効果があります。ただし、インボイスを発行できるのは税務署に登録した課税事業者に限られるため、免税事業者は取引先から敬遠される可能性もあります。資産運用や事業運営を考える個人事業主やフリーランスにとって、今後の収益や経費計算に大きな影響を与える制度といえます。




