土地は生前贈与と相続どちらが得ですか?
土地は生前贈与と相続どちらが得ですか?
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2025/09/22 09:25
男性
60代
両親が所有する土地について、生前贈与にするか相続にするかで悩んでいます。贈与の場合は贈与税が高いと聞きますが、相続の場合にも相続税や手続きの負担があると知りました。どちらを選ぶと総合的に有利になるのか、税金面や将来の資産管理のしやすさなどを含めて具体的に教えていただきたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
土地を生前贈与するか相続で承継するかは、多くの場合、相続のほうが有利です。相続には「小規模宅地等の特例」があり、自宅の敷地であれば330㎡まで評価額を最大80%減額できるため、相続税を大幅に抑えることができます。また、名義変更にかかる登録免許税も相続は0.4%で済み、贈与の2%に比べて軽く、不動産取得税も相続なら課税されません。
一方で、生前贈与が有効になるケースもあります。土地の価値が今後大きく上がる見込みがある場合は、相続時精算課税制度を利用して早めに贈与することで、値上がり分を相続税の対象から外せる可能性があります。さらに、配偶者に自宅の土地を渡す場合には「おしどり贈与」を使えば2,000万円まで贈与税が控除されるため、贈与の選択肢も検討に値します。
ただし、生前贈与には登録免許税や不動産取得税といった負担が発生する点に注意が必要です。また、暦年贈与の非課税枠は相続開始前7年までさかのぼって加算されるルールに変わっており、従来より節税効果は限定的になっています。
結局のところ、自宅や賃貸用など相続時に特例が使える土地は相続が有利であり、値上がりが予想される土地や配偶者への承継など特定のケースでは生前贈与が適する場合があります。どちらが有利かを判断するには、土地の用途や面積、相続税の発生見込み、将来の売却予定などを整理し、シミュレーションを行うことが重要です。
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関連する専門用語
生前贈与
生前贈与とは、本人が亡くなる前に、自分の財産を家族や親族などに贈り与えることを指します。たとえば、子どもや孫に現金や不動産などを自分の意思で生きているうちに渡す行為がこれにあたります。生前贈与を活用することで、相続時に財産が一度に多額に移転するのを防ぎ、相続税の負担を軽減する効果が期待できます。ただし、贈与にも贈与税がかかるため、贈与額やタイミング、誰に贈るかによって課税額が大きく変わることがあります。また、一定の条件を満たせば非課税になる特例制度もあるため、計画的に行うことが重要です。資産運用や相続対策として、生前贈与は家族に財産を無理なく引き継がせるための有効な手段のひとつです。
相続税
相続税とは、人が亡くなった際に、その人の財産を配偶者や子どもなどの相続人が受け継いだときに課される税金です。対象となる財産には、預貯金や不動産、株式、貴金属、事業用資産などが含まれ、相続財産の合計額が一定の基準額を超えると課税対象となります。 相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除があり、この範囲内であれば原則として税金はかかりません。しかし、資産規模が大きい場合や相続人の数が少ない場合には、課税対象となり、10%〜55%の累進税率が適用されます。 さらに、相続税にはさまざまな非課税枠や控除制度が設けられており、これらを適切に活用することで税負担を抑えることが可能です。代表的な制度には以下のようなものがあります。 - 生命保険金の非課税枠:法定相続人1人あたり500万円まで非課税 - 死亡退職金の非課税枠:生命保険と同様に1人あたり500万円まで非課税 - 債務控除:被相続人に借入金などの債務があった場合、その金額を控除可能 - 葬式費用の控除:通夜・葬儀などにかかった費用は、相続財産から差し引くことができる また、配偶者には配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)が認められており、適切に遺産分割を行えば、税額を大幅に減らすことができます。 相続税は、財産の種類や分割の仕方、受け取る人の立場によって税額が大きく変動するため、生前からの対策が非常に重要です。生命保険や不動産の活用、資産の組み替えなどを通じて、相続税評価額をコントロールすることが、家族への負担を減らし、スムーズな資産承継を実現するための鍵となります。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、相続が発生した際に、被相続人が居住や事業に使用していた土地について、一定の条件を満たせば、その土地の相続税評価額を大幅に減額できる制度です。主な目的は、相続税負担によって自宅や事業用不動産を手放すことを防ぎ、円滑な資産承継を支援することにあります。 たとえば、亡くなった方の自宅に配偶者や同居していた親族が引き続き居住する場合、その宅地の評価額を最大で80%まで減額できる可能性があります。事業用地や貸付事業に用いられていた土地についても、50%〜80%の減額が認められるケースがあります。この減額によって相続税の課税対象となる財産の価額が抑えられるため、納税資金の負担が軽減され、不動産を売却せずに相続を完了できる事例も多く見られます。 ただし、この特例の適用には、居住や事業の継続に関する要件、土地の面積制限(最大330㎡まで)など、細かな条件を満たす必要があります。また、相続税申告期限内に適用を受ける旨を申告することが必須であり、準備不足や誤解によって適用を逃すケースもあるため注意が必要です。 自宅や事業用不動産を含む資産を次世代に円滑に引き継ぐ上で、この特例は極めて重要な制度のひとつです。早めに対策を講じ、制度の内容を正しく理解したうえで、税理士など専門家のサポートを受けながら計画的に進めることが求められます。
登録免許税
登録免許税(とうろくめんきょぜい)は、土地や建物などの不動産、あるいは会社などに関する「登記」や「登録」の手続きを行うときにかかる税金です。たとえば、不動産を購入したときには、その所有権を自分の名義にするための登記をしますが、このときに登録免許税を支払う必要があります。また、新しく会社を設立する際にも、設立登記をすることで正式な法人として認められますが、そのときにも税金が発生します。 この税金の金額は、登記や登録の内容によって異なります。たとえば、不動産の登記であれば、その不動産の評価額に一定の税率をかけて金額が決まります。不動産の価値が高ければ、それに応じて税金も高くなります。会社の設立登記の場合は、資本金の金額をもとに税額が計算されますが、たとえ資本金が少なくても、最低でも15万円の税金が必要とされています。 なお、登記や登録は、法律上の効力を持たせるために必要な手続きであり、それを行うにはこの税金の支払いが避けられません。ただし、登記の内容によっては、税率が軽減される「軽減措置」が適用されることもあります。これはたとえば、一定の条件を満たした住宅の購入や中小企業の設立などに当てはまることがあります。 このように、登録免許税は何かを「正式に記録する」ために必要な費用であり、不動産取引や会社の設立を考えている場合には、あらかじめかかる費用として意識しておくと安心です。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物といった不動産を取得したときに、一度だけかかる税金です。たとえば、自分で購入した場合だけでなく、親から贈与を受けたり、誰かと不動産を交換した場合なども対象になります。この税金は国ではなく都道府県に納める「地方税」であり、不動産を取得した後に自治体から納税通知書が送られてきます。 税額は、不動産の購入価格そのものではなく、「固定資産税評価額」と呼ばれる基準に基づいて決まります。評価額に一定の税率(原則4%)をかけて計算されますが、住宅用の建物などについては、軽減措置が適用されて税率が下がる場合もあります。 このように、不動産取得税は取得のたびに一度だけ発生する税金であり、不動産を買ったりもらったりした際には、登記とは別にこの税金の存在も意識しておくことが大切です。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫へ財産を贈与する場合に利用できる、特別な贈与税の制度です。この制度を使うと、贈与を受けた年に2,500万円までの金額については贈与税がかからず、それを超えた部分にも一律20%の税率が適用されます。そして、その後贈与者が亡くなったときに、過去の贈与分をすべてまとめて「相続財産」として扱い、最終的に相続税として精算します。 つまり、この制度は「贈与税を一時的に軽くし、あとで相続税の段階でまとめて精算する」という仕組みになっています。将来の相続を見据えて早めに資産を移転したい場合や、大きな金額を一括で贈与したい場合に活用されることが多いです。 ただし、一度この制度を選ぶと、同じ贈与者からの贈与については暦年課税(通常の贈与税制度)には戻せないという制限があるため、利用には慎重な判断が必要です。資産運用や相続対策を計画するうえで、制度の特徴とリスクをよく理解しておくことが大切です。






