年金の学生免除は追納しないともらえる年金額が減るデメリットがあると聞きましたが本当ですか?
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2025/09/22 09:25
女性
30代
学生時代に国民年金保険料の学生納付特例制度を利用すると、将来の年金額に影響があると聞きました。追納しなければ受給額が減るとも言われていますが、実際にはどの程度減るのか、追納する場合との違いはどのようになるのでしょうか。また、追納するべきかどうか判断するためのポイントがあれば教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
学生納付特例制度を利用して国民年金保険料を免除された期間を追納しないままにすると、その期間は老齢基礎年金の計算に反映されず、将来の受給額は減ってしまいます。学生納付特例や納付猶予の期間は、受給資格期間(10年)には算入され、障害年金や遺族年金の要件判定にも有利に働きますが、老齢基礎年金の金額についてはゼロカウントになります。追納することで初めて満額カウントとして反映されます。
老齢基礎年金は「満額 ×(保険料を納めた月数 ÷ 480)」で計算されます。免除にはいくつかの種類があり、たとえば全額免除なら1/2カウント、半額免除なら6/8カウントなど部分的に反映されます。しかし学生納付特例や納付猶予は0/8扱いとなるため、そのままにすると年金額にまったく反映されません。
具体的にどの程度減るかというと、2025年度の老齢基礎年金の満額は年額831,700円(月額約69,300円)です。1年間(12か月)追納しなかった場合、年金額は約20,800円減ります。毎月に換算すると約1,700円程度の減額です。逆に追納すれば、この分がそっくり増える計算になります。
追納には期限とルールがあります。原則として承認を受けた月から10年以内の期間に限り追納が可能で、基本的に古い月から順に納めていくことになります。3年度目以降に追納すると加算額が上乗せされる仕組みのため、できるだけ早めに追納する方が有利です。また、一度年金の受給が始まると追納はできなくなりますので注意が必要です。
追納の費用対効果を考えると、2025年度の国民年金保険料は月額17,510円、年間で約21万円です。これを1年分追納すると将来の年金は年額約2万円増えます。社会保険料控除の対象になるため、所得税や住民税の軽減効果も見込め、実際の負担額は課税率によって軽くなります。単純に計算すると、支払った追納額を年金増額分で回収するのに8〜10年程度かかるのが目安です。
追納するかどうかを判断するポイントは、老後の年金額をできるだけ増やしたいかどうか、現在の収入や税控除のメリットを活かせるかどうか、将来満額に到達できる見込みがあるかどうかなどです。もし他に借金の返済や、企業型確定拠出年金やiDeCoなど利回りの高い選択肢があれば、そちらを優先する考え方もあります。無理なく資金計画の中で追納できる範囲を検討するとよいでしょう。
追納の手続きは年金事務所で行い、承認後に納付書が発行されます。また「ねんきんネット」を利用すれば、追納可能な期間や必要な金額をオンラインで確認できます。早めに把握しておくことで、将来の受給額に安心感を持つことができます。
ご希望であれば、実際にあなたが学生納付特例を利用した期間の月数を教えていただければ、どの程度年金額が増えるか、また追納の回収年数がどのくらいになるかを試算することも可能です。
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学生納付特例制度とは、20歳以上の学生が国民年金の保険料を納めることが経済的に難しい場合に、申請することで在学中の保険料納付が猶予される制度です。この制度を利用すると、納付していない期間も年金の受給資格期間としてカウントされるため、将来の年金受給に不利にならず、卒業後に収入を得てから追納することも可能です。 対象となるのは、大学・大学院・短大・専門学校・高等専門学校などに在学している学生で、一定の所得以下であることが条件です。資産運用やライフプランの面では、学生時代から年金制度に関わる意識を持ち、将来の備えとして制度のしくみを理解しておくことが大切です。
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保険料納付猶予制度とは、国民年金の加入者が経済的な理由で保険料を納めるのが難しい場合に、一定の条件を満たせばその支払いを一定期間「猶予」できる制度です。特に20歳以上50歳未満の人が対象で、所得が一定以下であるなどの基準があります。 この制度を利用すると、その期間中の未納が将来の年金受給資格に悪影響を及ぼさず、後から追納することで将来の年金額に反映させることも可能です。学生向けの「学生納付特例制度」とは別で、社会人でも対象となる点が特徴です。資産運用やライフプラン設計の観点では、将来の年金を確保しながら、目先の生活を支える柔軟な制度として理解しておくと役立ちます。
追納
追納とは、過去に国民年金保険料の免除や納付猶予を受けた期間について、後からさかのぼって保険料を納めることをいいます。この制度を利用することで、将来受け取る老齢基礎年金の受給額を増やすことができ、年金の受給資格期間にも有利に働きます。 ただし、追納できるのは原則として免除・猶予を受けた期間に限られ、単なる未納期間には適用されません。また、追納には期限があり、原則として免除・猶予された年度の翌年度から起算して10年以内となっています。 追納することで本来の保険料負担に戻る形になりますが、2年以上前の期間については加算金が上乗せされることがあります。経済的に余裕があるときに計画的に追納を行うことで、将来の年金額をしっかり確保することができます。
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老齢基礎年金とは、日本の公的年金制度の一つで、老後の最低限の生活を支えることを目的とした年金です。一定の加入期間を満たした人が、原則として65歳から受給できます。 受給資格を得るためには、国民年金の保険料納付済期間、免除期間、合算対象期間(カラ期間)を合計して10年以上の加入期間が必要です。年金額は、20歳から60歳までの40年間(480月)にわたる国民年金の加入期間に応じて決まり、満額受給には480月分の保険料納付が必要です。納付期間が不足すると、その分減額されます。 また、年金額は毎年の物価や賃金水準に応じて見直しされます。繰上げ受給(60~64歳)を選択すると減額され、繰下げ受給(66~75歳)を選択すると増額される仕組みになっています。 老齢基礎年金は、自営業者、フリーランス、会社員、公務員を問わず、日本国内に住むすべての人が加入する仕組みとなっており、老後の基本的な生活を支える重要な制度の一つです。
年金受給資格期間
年金受給資格期間とは、公的年金を受け取るために必要とされる「加入期間の合計」のことを指します。つまり、年金制度に何年間加入していたかによって、将来年金を受け取れるかどうかが決まるということです。 以前は25年以上の加入が必要でしたが、制度改正により現在は10年以上の加入で受給資格が得られるようになりました。この期間には、実際に保険料を納めた期間だけでなく、免除や猶予を受けていた期間の一部も含まれるため、制度を正しく理解しておくことが大切です。投資初心者にとっては、「年金をもらえるかどうかが決まる加入期間の最低ライン」と考えるとわかりやすいでしょう。
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社会保険料控除とは、健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険などの社会保険料を支払った場合に、その金額を所得から差し引くことができる所得控除の一種です。これは、納税者の生活を守る公的制度に協力しているという前提で、税負担を軽くするための仕組みです。 本人が支払った分だけでなく、配偶者や親族の保険料を本人が負担している場合にも控除の対象になります。会社員であれば給与から自動的に天引きされた社会保険料も対象となっており、年末調整や確定申告の際に自動的に反映されるケースが多いです。税額を計算する際の重要な調整要素となるため、税制の基本知識として知っておくと役立ちます。