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複利とは?長期投資で資産が増える仕組みとシミュレーション結果を解説
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公開:
2026.10.27
更新:
2026.10.27
資産形成について調べると、「長期投資では複利が重要」という説明をよく目にします。しかし、複利がどのような仕組みで資産形成に影響するのか、単利と何が違うのかを具体的に理解できていない人も少なくありません。また、投資では毎年一定の利益が得られるわけではないため、複利を過度に期待しないことも重要です。この記事では、複利の仕組みや計算方法、単利との違いを整理したうえで、積立額・運用期間・想定利回り別のシミュレーションや、長期投資で複利効果を活かすポイントを解説します。
目次
複利とは
複利とは、運用で得た利益を元本に組み入れ、その合計額に対して次の利益が生じる仕組みです。利益が新たな利益を生むため、運用期間が長くなるほど資産の増え方が加速していきます。
複利を理解する鍵は「利益にも利益がつく」という点です。ここでは基本的な仕組みから単利との違い、計算式、そして自分で試算するための「72の法則」まで順に解説します。
複利の基本的な仕組み
複利の本質は、利益を受け取らずに元本へ組み入れる「再投資」にあります。再投資によって次の運用の土台となる元本が増え、同じ利回りでも生まれる利益が大きくなるからです。
- たとえば100万円を年利5%で運用すると、1年目の利益は5万円です。この5万円を元本に加えると、2年目は105万円に対して5%の利益がつくため、利益は5万2,500円になります。3年目は110万2,500円が元本となり、利益は5万5,125円です。
利益そのものは小さな差に見えますが、この積み重ねが年を追うごとに大きくなっていきます。
単利との違い
単利は当初の元本に対してのみ利益がつく計算方法で、利益が利益を生む効果はありません。そのため、運用期間が伸びても資産の増加ペースは一定のままです。
100万円を年利5%で運用した場合の違いを、期間別に比較します。
| 運用期間 | 単利 | 複利 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 5年 | 125万円 | 約127.6万円 | 約2.6万円 |
| 10年 | 150万円 | 約162.9万円 | 約12.9万円 |
| 20年 | 200万円 | 約265.3万円 | 約65.3万円 |
| 30年 | 250万円 | 約432.2万円 | 約182.2万円 |
※税金・手数料は考慮していません。
5年時点の差は約2.6万円にすぎません。ところが30年後には約182万円まで広がります。短期では差が小さく、長期になるほど差が開くという性質が、複利を語るときに「長期」がセットになる理由です。
複利の計算式
複利で運用した将来の資産額は、次の式で求められます。

100万円を年利5%で10年運用する場合、計算は「100万円 × 1.05の10乗」となります。1.05を10回掛け合わせると約1.629になるため、将来の資産額は約162.9万円です。
なお、金融庁の「つみたてシミュレーター」を使えば同じ計算ができます。ただし、この式はあくまで「毎年同じ利回りで運用できた場合」の計算です。実際の投資信託や株式では利回りが毎年変動し、マイナスになる年もある点は留意しましょう。
72の法則とは
72の法則とは、「72 ÷ 年利回り(%)」で資産が2倍になるまでのおおよその年数がわかる目安の計算式です。複利の計算式を使わなくても、頭の中で概算できます。
年利回り別に、資産が2倍になる年数の目安は次のとおりです。
| 年利回り | 2倍になる年数の目安 |
|---|---|
| 1% | 約72年 |
| 3% | 約24年 |
| 5% | 約14.4年 |
| 6% | 約12年 |
| 8% | 約9年 |
年利3%なら約24年、年利6%なら約12年で資産が2倍になる計算です。利回りが2倍になると、必要な年数はおよそ半分になるとわかります。
- この法則は数学的な近似式であり、厳密な値ではありません。それでも「自分の想定利回りだと何年で倍になるか」を即座に把握できるため、運用計画を立てる際の物差しとして役立ちます。
出典:金融経済教育推進機構「72の法則:ななじゅうにのほうそく」
複利はなぜ長期投資で効果が大きくなるのか
複利の効果は、運用期間が長くなるほど大きくなる傾向があります。理由は、利益を再投資する回数が増え、元本が段階的に膨らんでいくためです。
長期投資とは
長期投資とは、短期的な値動きで売買を繰り返すのではなく、長い期間にわたって資産を保有し続ける投資手法です。「何年以上なら長期」という一律の定義はありませんが、一般には10年・20年といった期間を想定します。
短期売買は値動きを予測して売買益を狙うため、相場を読む知識や時間が必要です。一方、長期投資は経済や企業の成長に時間をかけて資産を委ねる考え方で、日々の値動きを追い続ける必要はありません。
| 比較項目 | 長期投資 | 短期売買 |
|---|---|---|
| 利益の源泉 | 経済・企業の成長と複利 | 価格変動による売買益 |
| 保有期間 | 10年・20年以上を想定 | 数日〜数か月 |
| 必要な知識・時間 | 商品選びと継続が中心 | 相場分析と日々の監視 |
| 売買回数・コスト | 少ない | 多い |
長期投資のメリットと注意点
長期投資には、複利効果を活かせる以外にも、初心者でも続けやすいというメリットがあります。一方で「長期なら安全」とは言い切れないため、注意点も併せて押さえておく必要があります。
主なメリットは次の4つです。
長期投資のメリット
- 複利効果を活かせる:保有期間が長いほど再投資の回数が増え、資産の成長が加速しやすくなります。
- 売買コストを抑えられる:頻繁な売買は手数料や税金を発生させ、実質的なリターンを削ります。保有し続けること自体がコスト削減になります。
- 感情的な判断を減らせる:日々の値動きを追わないため、値下がり時の慌てた売却や高値での買い増しを避けやすくなります。
- 新NISAと相性が良い:非課税保有期間が無期限のため、長期保有を前提とした制度設計と噛み合います。
注意点は、長期投資であっても元本割れの可能性がゼロにはならないことです。世界株式などの主要市場には長期的に成長してきた実績がありますが、将来も同様に上昇する保証はありません。投資期間が長いほど短期的な値動きの影響を受けにくくなる傾向はあるものの、それは「傾向」であって「法則」ではない点を前提に、複利との関係を見ていきましょう。
出典:金融庁「資産形成の基本」
出典:金融庁「NISAを知る」
利益を再投資すると元本が大きくなる
複利では、利益を再投資するたびに次の運用の元本が大きくなります。元本が大きければ、同じ利回りでも得られる利益の金額は増えます。
- 先ほどの例で言えば、100万円の1年目の利益は5万円ですが、運用を続けることで資産残高は次第に増えていきます。10年目の運用開始時点では約155万円となり、年利5%ならその年の利益は約7.8万円です。20年目の運用開始時点では約253万円となり、1年間の利益は約12.6万円になります。
つまり複利では、時間が経つほど「1年あたりの増え方」そのものが大きくなるのです。
運用期間が長いほど再投資回数が増える
複利の効果は、運用期間が長くなるほど大きくなりやすくなります。運用で得た利益を含む資産をそのまま運用し続けることで、その利益にも次の利益が生じるためです。運用期間が長いほど、この積み重ねが続く期間も長くなり、資産の増え方が次第に大きくなります。

グラフに描くと、複利の資産推移は直線ではなく、後半になるほど傾きが急になる曲線を描きます。前半は単利とほとんど変わらないように見えても、後半で一気に差が広がるのが複利曲線の特徴です。
早く始めるほど運用期間を確保しやすい
複利効果を活かすうえでは、できるだけ長い運用期間を確保することが重要です。 積立額は後から増やせますが、過ぎた時間を取り戻すことはできません。
たとえば、25歳から65歳まで運用すれば40年間の複利効果を得られます。35歳から始めた場合は30年、45歳からでは20年です。同じ積立額であっても、開始年齢の違いが最終的な資産額に大きな差を生みます。
- 「まとまった資金ができてから始めよう」と考えるより、少額でも早く始めて運用期間を確保するほうが、複利の観点では合理的です。
長期投資の複利効果をシミュレーション
複利の効果を数字で確認すると、積立額・運用期間・利回りのどれが将来の資産額にどう影響するのかがはっきりします。ここでは「毎月3万円・年利5%・20年間」を基準として、条件を1つずつ変えながら比較します。
なお、以下はすべて一定の利回りで毎年運用できると仮定した試算です。実際の投資では価格変動によって運用結果が異なり、将来の運用成果を保証するものではありません。 税金・手数料は考慮しておらず、計算は月次複利(毎月の積立に対して年利÷12の利回りが毎月つく方式)で行っています。
月3万円を20年間積み立てた場合
毎月3万円を年利5%で20年間積み立てると、最終的な資産額は約1,233万円になります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 積立元本(3万円×12か月×20年) | 720万円 |
| 運用益 | 約513万円 |
| 最終資産額 | 約1,233万円 |
積立元本は720万円ですが、複利によって約513万円の運用益が上乗せされます。運用益が元本の7割を超える規模になる点に、20年という期間の重みが表れています。
10年・20年・30年ではどれくらい違うか
同じ「毎月3万円・年利5%」の条件で、運用期間だけを変えて比較します。
| 運用期間 | 積立元本 | 運用益 | 最終資産額 |
|---|---|---|---|
| 10年 | 360万円 | 約106万円 | 約466万円 |
| 20年 | 720万円 | 約513万円 | 約1,233万円 |
| 30年 | 1,080万円 | 約1,417万円 | 約2,497万円 |
10年から20年へ期間を2倍にすると、運用益は約106万円から約513万円へと約4.8倍に増えます。さらに30年では約1,417万円となり、30年時点では運用益が積立元本を上回ります。
- 運用期間が長くなるほど積立元本そのものが増えることに加え、早い時期に積み立てた資金を長期間運用できるため、運用益も大きくなります。特に後半になるほど、それまでに積み上がった資産全体に対して運用益が生じるため、資産額の増加幅が大きくなっていきます。
利回り3%・5%・7%で比較
次に「毎月3万円・20年間」の条件で、想定利回りだけを変えて比較します。
| 年利回り | 積立元本 | 運用益 | 最終資産額 |
|---|---|---|---|
| 3% | 720万円 | 約265万円 | 約985万円 |
| 5% | 720万円 | 約513万円 | 約1,233万円 |
| 7% | 720万円 | 約843万円 | 約1,563万円 |
利回りが3%から5%になると、運用益は約248万円増えます。わずか2%の差でも、20年という期間を通すと数百万円単位の違いに膨らみます。
ここで注意したいのは、将来の実現利回りを自分で決めることはできないという点です。期待リターンの高い資産を選ぶことはできますが、一般に高いリターンが期待される資産ほど価格変動も大きくなる傾向があります。
- 一方、後述する手数料は自分でコントロールできる要素であり、利回りに直接影響します。利回り1%の差が持つ重みを、手数料を選ぶときの判断材料にしてください。
積立開始が10年遅れるとどう変わるか
積立の開始時期が10年遅れると、同じ月額でも最終資産額に1,000万円以上の差が生じる場合があります。
65歳まで「毎月3万円・年利5%」で積み立てるケースを、開始年齢別に比較します。
| 開始年齢 | 運用期間 | 積立元本 | 最終資産額 |
|---|---|---|---|
| 35歳 | 30年 | 1,080万円 | 約2,497万円 |
| 45歳 | 20年 | 720万円 | 約1,233万円 |
積立元本の差は360万円ですが、最終資産額の差は約1,264万円に達します。10年早く始めたことによる「時間の価値」が、元本の差の3倍以上の金額として表れています。
なお、45歳開始で35歳開始に追いつこうとすると、毎月の積立額を約6万円に増やす必要があります。時間を後から積立額で埋め合わせるのは、家計にとって決して小さな負担ではありません。
長期投資で複利効果を弱める4つの要因
複利は自動的に働く仕組みではなく、運用の方法によって効果が弱まる場合があります。利益の取り崩し、途中での運用停止、高いコスト、そして下落局面で継続できなくなることの4つが代表的な要因です。
いずれも「複利がまったく働かなくなる」わけではありませんが、再投資を前提にした場合と比べて効果は小さくなります。
利益や分配金を取り崩す
運用で得た利益や分配金を受け取って使ってしまうと、再投資した場合と比べて複利効果は小さくなります。元本に組み入れられない利益は、次の利益を生まないからです。
投資信託には、分配金を定期的に支払う「受取型」と、分配金を自動で再投資する「再投資型」があります。毎月分配型のように高い頻度で分配する商品を受取型で保有すると、利益が外へ流出し続けることになります。
- さらに注意したいのが「元本払戻金(特別分配金)」です。これは運用益ではなく、投資家自身が払い込んだ元本の一部を払い戻しているものです。分配金を受け取っているつもりでも、実態は元本を取り崩しているケースがある点は知っておいてください。
投資信託の受取型と再投資型の違い、特別分配金に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。
運用を途中でやめる
複利の効果は時間の経過とともに大きくなるため、途中で運用をやめると、最も効果が大きい後半部分を取り逃すことになります。
- 先ほどのシミュレーションでは、30年運用の運用益約1,417万円のうち、20年目以降の10年間で約904万円が生まれていました。20年で売却してしまうと、この最も実りの大きい期間を放棄することになります。
途中売却の多くは、急な出費や生活資金の不足が原因です。投資資金と生活資金を明確に分けておくことが、複利を途切れさせない前提条件になります。
手数料などのコストが高い
投資信託の信託報酬(保有中に毎日差し引かれる運用管理費用)は、利回りを直接押し下げるため、複利効果を弱めます。コストは1年だけでなく、毎年かかり続ける点が重要です。
年利5%の運用に対して、信託報酬が年0.1%の商品と年1.0%の商品を比較します。実質利回りはそれぞれ4.9%と4.0%です。
| 信託報酬 | 実質利回り | 20年後の資産額(毎月3万円) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 年0.1% | 4.9% | 約1,219万円 | ― |
| 年1.0% | 4.0% | 約1,100万円 | 約119万円 |
信託報酬0.9%の差が、20年後には約119万円の差になります。コストも複利で効くため、長期になるほど影響が拡大します。
- なお、新NISAのつみたて投資枠で選べるインデックス型投資信託は、信託報酬の上限が国内資産で年0.5%以下、海外資産で年0.75%以下(いずれも税抜)と定められています。実際には年0.1%前後の商品も多く、コストを抑えやすい環境が整っています。
大きな値下がりで運用を継続できなくなる
自分のリスク許容度を超えた商品を保有していると、大きな下落局面で運用を続けられなくなる場合があります。下落時に売却すると損失が確定し、その後の回復局面での複利効果も受けられません。
たとえば、株式100%の投資信託は長期的な成長が期待できる一方、1年で30%以上下落した年も過去にはありました。その値下がりに耐えられる資産配分かどうかを、購入前に確認しておく必要があります。
- 「下落時に売らなければよい」と頭でわかっていても、実際に資産が3割減った画面を見て平静でいられる人は多くありません。継続できる範囲でリスクを取ることが、結果として複利を活かす近道です。
暴落時に何をすべきかは、こちらの記事でも詳しく解説しています。
複利効果を活かす長期投資のポイント
複利効果を活かすには、「利益を再投資する」「運用期間を長く取る」「コストを抑える」という3つの基本に加え、制度と家計の両面から運用を続けやすくする工夫が欠かせません。
ここまでの内容を実践に落とし込むと、以下の6つのポイントに整理できます。
利益を再投資する
複利効果を活かしたい場合は、分配を抑えてファンド内で収益を運用し続ける投資信託や、受け取った分配金を再投資できる商品が選択肢になります。特に分配金を頻繁に支払わず、収益をファンド内に留保して運用する商品は、投資家自身が再投資する手間を抑えながら資産を運用できます。
証券会社の商品ページや目論見書(商品の内容を説明した書類)では、「分配金コース:再投資型」や「分配方針:分配を行わない場合がある」といった表記を確認できます。購入時にコースを選択する画面がある場合は、「再投資」を選んでください。
なお、NISA口座で受け取った分配金を使って同じ投資信託を再購入する場合、その買付額は新たな投資として年間投資枠を使用します。一方、ファンド内部で収益を再投資し、分配金を支払わない商品では、内部での再投資によってNISAの年間投資枠が追加で使われることはありません。
運用期間を長く確保する
複利効果を高めるうえで最も影響が大きいのは、運用期間の長さです。シミュレーションで示したとおり、同じ積立額でも10年の差が1,000万円以上の差につながる場合があります。
「まとまった資金ができてから」と先延ばしにするより、月1万円でも早く始めるほうが時間を味方につけられます。
運用コストを抑える
信託報酬などのコストは利回りを直接削り、複利で効いてくるため、可能な限り低い商品を選ぶのが基本です。
同じ指数への連動を目指すインデックス型投資信託では、信託報酬などのコストは長期的な運用成果に差を生む重要な要素です。ただし、実際の成績には指数との連動精度や運用方法なども影響します。同じ指数に連動する商品を比較する際は、信託報酬を重要な判断材料の一つとして確認しましょう。
投資信託の信託報酬が最終的なリターンに与える影響については、こちらのFAQも参考にしてみてください。
積立で購入時期を分散する
毎月一定額を購入する積立投資は、価格が高いときは少なく、安いときは多く買い付けるため、購入単価が平準化されます。この方法は「ドルコスト平均法」と呼ばれます。
- 積立による平準化効果は、厳密には複利とは別の仕組みです。ただし、相場を読んで買い時を探す必要がないため、心理的な負担が少なく運用を続けやすくなります。継続しやすいという点で、複利を活かすための実践的な土台になります。
積立投資やドルコスト平均法のメリットについては、こちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。
NISAを活用する
NISA(少額投資非課税制度)を使うと、運用益や分配金にかかる20.315%の税金が非課税になります。本来なら税金として差し引かれる分もそのまま再投資に回るため、複利効果が高まります。
2024年から始まった新NISAの主な内容は次のとおりです。
| 項目 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
| 非課税保有限度額 | 2つの枠の合計で1,800万円 | 1,800万円のうち1,200万円まで |
| 非課税保有期間 | 無期限 | 無期限 |
| 対象商品 | 金融庁の基準を満たす投資信託・ETF | 上場株式・投資信託など(一部除外あり) |
非課税保有期間が無期限になったため、長期保有を前提とした複利運用と制度の相性が良くなりました。初心者はまず、低コストの商品に絞られたつみたて投資枠から始めるのが現実的です。
2026年度税制改正ではNISA制度の拡充が盛り込まれており、2027年からは0〜17歳もつみたて投資枠を利用できるようになる予定です。制度は今後も変更される可能性があるため、利用する際は金融庁などの最新情報を確認しましょう。 NISA制度の詳細は、こちらの記事も参考にしてみてください。
出典:金融庁「NISAを知る」
出典:国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
生活防衛資金を投資資金と分ける
生活費の半年〜1年分を現金や預金で確保したうえで、それとは別の資金を投資に回すのが原則です。急な出費のたびに投資信託を売却していては、複利の連鎖が途切れてしまいます。
生活防衛資金の目安は、会社員なら生活費の半年分、自営業や収入が不安定な場合は1年分が一般的です。この資金があれば、相場が下落しているときに売却を迫られる事態を避けられます。生活防衛資金を確保しておくことは、相場下落時に生活費のための売却を迫られにくくする重要な対策です。
生活防衛資金の考え方や置き場所については、こちらの記事をご覧ください。
長期投資で複利を活かしやすい商品の考え方
複利効果を活かしやすいのは、利益が自動または容易に再投資される仕組みを持つ商品です。ただし、複利は投資信託だけの話ではなく、預金や債券にも複利の考え方は存在します。
ここでは特定の商品を推奨するのではなく、商品カテゴリごとに「利益がどのように再投資されるか」という判断軸を整理します。
分配金を抑えて運用する投資信託
分配金を出さない、または再投資型を選べる投資信託は、複利効果を最も活かしやすい商品です。運用益がファンドの中で自動的に再投資され、基準価額(投資信託の値段)に反映されるため、投資家が手間をかける必要がありません。
- 特に、株価指数などに連動するインデックス型投資信託は、信託報酬が低く、長期の積立に向いています。つみたて投資枠の対象商品は「毎月分配型でないこと」が要件とされており、複利運用と親和性が高い設計です。
配当を再投資する株式投資
個別株の配当金も、自分で再投資すれば複利を作れます。ただし、投資信託のように自動では行われず、受け取った配当金で株式を買い増す手間がかかります。
株式には最低投資単位(通常は100株)があるため、配当金が少額のうちは再投資したくても買い付けられない場合もあります。NISA口座で配当金を非課税にするには、配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」に設定する必要がある点も見落としがちなポイントです。
預金や債券における複利との違い
預金や債券にも複利は存在しますが、投資信託や株式とは性質が異なります。
定期預金は利率があらかじめ決まっており、半年複利や1年複利で利息が元本に組み入れられます。利率が確定しているため元本割れはありませんが、利率が低い局面では複利の効果は限定的です。
債券は定期的に利息を受け取る「利付債」が一般的で、複利にするには受け取った利息を自分で再投資する必要があります。一方、「ゼロクーポン債」は保有期間中に利息を受け取らず、額面より低い価格で購入し、原則として満期に額面金額を受け取る債券です。途中で受け取った利息を再投資する仕組みではありませんが、購入価格と満期時の受取額から計算される利回りは、複利ベースで表示されることがあります。
- 投資信託や株式の複利は、利回りが変動するうえ、マイナスの年も複利的に影響する点が預金と大きく異なります。「複利=一定利率で増え続ける」というイメージは、預金には当てはまっても、値動きのある商品には当てはまりません。
具体的な投資の種類は、こちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。
出典:財務省「個人向け国債」
年代別に見る長期投資と複利効果
複利効果の大きさは、運用に使える期間によって変わります。同じ月額を積み立てても、20代と50代では確保できる運用期間が異なるため、期待できる複利の恩恵にも差があります。
ここでは資産配分の詳細には踏み込まず、「始める年代によって運用期間がどう変わるか」という視点で整理します。
20〜30代は運用期間を長く取れる
20〜30代は、65歳までに30〜40年以上の運用期間を確保できる世代です。複利の効果が最も表れやすい後半部分を丸ごと取り込めるため、少額でも早く始める意義が最も大きい年代と言えます。
シミュレーションで示したとおり、毎月3万円・年利5%で30年運用すると約2,497万円になり、運用益が積立元本を上回ります。収入が限られる時期は月1万円からでも構いません。無理のない金額で継続し、昇給に合わせて積立額を増やしていく方法が現実的です。
40代は期間と積立額のバランスを考える
40代は65歳まで20〜25年の運用期間があり、複利効果を十分に得られる年代です。ただし、教育費や住宅ローンなど大きな支出と重なりやすいため、積立額を無理に増やす必要はありません。
投資に回す資金と、数年内に使う予定の資金を分けて考えるのが優先です。生活防衛資金を確保したうえで、家計に余裕がある範囲で積立額を設定しましょう。運用期間20年でも、毎月3万円・年利5%なら約1,233万円という試算になります。
50代以降は取り崩し時期を踏まえてリスクを管理する
50代以降は運用期間が10〜15年程度と短くなるため、複利効果は若い世代ほど大きくありません。加えて、取り崩しが始まる時期が近いため、大きな下落から回復する時間も限られます。
50代以降は年齢だけで資産配分を決めるのではなく、その資金をいつ使う予定なのかを考えることが重要です。
- 数年以内に使う予定の資金は預金や債券など値動きの比較的小さい資産で確保し、長期間使う予定のない資金については、リスク許容度に応じて株式などを組み合わせる方法もあります。複利効果だけでなく、取り崩し時期を見据えた資産配分を考えましょう。
資産運用の出口戦略については、こちらの記事で解説しています。あわせて参考にしてみてください。
複利と長期投資に関するよくある誤解
複利と長期投資は正しく理解すれば強力な味方になりますが、誤解したまま運用を始めると期待と結果のズレに戸惑うことがあります。ここでは、資産運用の相談現場で特によく見られる4つの誤解を取り上げます。
複利なら毎年必ず資産が増える
複利は「利益を再投資する計算方法」であって、利益そのものを保証する仕組みではありません。投資信託や株式では利回りが毎年変動し、マイナスになる年もあります。
- たとえば1年目に20%下落し、2年目に20%上昇しても、資産は元に戻りません。100万円が80万円になり、その80万円が20%増えても96万円だからです。マイナスの年があれば、その影響も複利的に積み重なります。
「複利で毎年5%増える」というシミュレーションは、あくまで長期の平均利回りを一定と仮定した計算です。実際の資産推移は上下しながら進むという前提で、複利を捉えてください。
出典:金融庁「資産形成の基本」
高い利回りほど複利効果が高くて有利
計算上は利回りが高いほど複利効果は大きくなりますが、高い利回りを期待できる商品ほど値動きも大きくなります。値動きに耐えられずに途中で売却すれば、複利効果そのものを失います。
年利7%を狙って株式100%で運用しても、下落局面で売却してしまえば、年利3%で30年続けた人より結果が悪くなることもあり得ます。複利にとって最も重要なのは利回りの高さではなく、運用を続けられることです。自分が継続できる範囲のリスクで、時間を味方につけるほうが結果につながりやすいでしょう。
出典:金融庁「資産形成の基本」
分配金が多い商品ほど得をする
分配金の多さと運用成績の良さは、まったく別の問題です。分配金は運用益から支払われるとは限らず、元本を取り崩して支払われる「元本払戻金(特別分配金)」が含まれることがあります。
毎月分配型の投資信託は、分配金を受け取るたびにファンドの資産が減るため、基準価額が下がりやすい構造です。分配金を受け取っても、基準価額の値下がりでトータルの資産が減っていれば、得をしたとは言えません。
複利を活かす観点では、分配金の多さではなく、分配金を出さずに運用益を積み上げる商品を選ぶほうが合理的です。
毎月分配型の投資信託の問題点については、こちらの記事も参考にしてみてください。
長期投資なら元本割れしない
長期投資であっても、元本割れの可能性はゼロにはなりません。世界株式などの主要市場には長期的な成長実績がありますが、それは過去の結果であり、将来の上昇を保証するものではないからです。
- 投資期間が長いほど短期的な値動きの影響を受けにくくなる傾向は、過去のデータから確認されています。ただし「傾向」であって「法則」ではありません。運用終了の直前に大きな下落が起きれば、20年以上運用していても元本を下回ることはあり得ます。
だからこそ、取り崩しの時期が近づいたら値動きの小さい資産の比率を高めるなど、期間だけに頼らないリスク管理が必要です。複利と長期投資は「損をしない方法」ではなく、「時間を活かして資産を育てる方法」として理解しておきましょう。
この記事のまとめ
複利とは、運用で得た利益を再投資し、その利益にも次の利益が生じる仕組みです。短期では単利との差がわずかでも、運用期間が長くなるほど差が大きく開きます。複利は利益を保証する仕組みではなく、値動きのある商品では利回りがマイナスになる年もあります。再投資型の低コスト商品を選び、NISAを活用し、生活防衛資金を分けたうえで、自分が無理なく続けられる範囲で早めに運用を始め、長期間継続することが、複利効果を活かす基本的な考え方です。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
複利
複利とは、利息などの運用成果を元本に加え、その合計額を新たな元本として収益拡大を図る効果。利息が利息を生むメリットがあり、運用成果をその都度受け取る単利に比べ、高い収益を期待できるのが特徴。短期間では両者の差は小さいものの、期間が長くなるほどその差は大きくなる。
単利
単利とは、元本に対してのみ利息が計算される利息の算出方法である。利息は一定期間ごとに支払われるが、その利息は再投資されず、元本にのみ適用され続ける。例えば、年利5%で100万円を単利で運用した場合、1年後の利息は5万円であり、2年後も元本100万円に対して同じ5万円の利息が発生する。これに対し、複利は利息が元本に組み込まれ、次の利息計算に影響を与えるため、長期運用では単利よりも大きな利益を生む傾向がある。
元本
元本とは、投資や預金を始めるときに最初に出すお金、つまり「もともとのお金」のことを指します。たとえば、投資信託に10万円を入れた場合、その10万円が元本になります。 運用によって利益が出れば、元本に運用益が加わって資産は増えますが、損失が出れば元本を下回る「元本割れ」の状態になることもあります。 元本が保証されている商品(例:定期預金、個人向け国債など)もありますが、多くの投資商品では元本保証がないため、どれくらいのリスクを取るかを理解しておくことが大切です。
再投資
再投資とは、株式や投資信託などの運用から得られた配当金・利息・分配金などを現金化せず、再び同じ資産や他の金融商品に振り向けることを指します。たとえば、受け取った配当金で同じ株式を買い増したり、投資信託の分配金を再度そのファンドに組み入れるような方法です。 この再投資によって、得られた収益が次の投資原資となり、元本が増加することでさらに多くの収益を生み出す「複利効果」が働きます。特に長期的な資産形成を目指す場合、複利の積み上げはリターンの差を大きく左右する重要な要素です。 また、再投資は相場のタイミングに依存しない「継続的・機械的な投資行動」でもあるため、長期的な投資規律を保ちやすく、感情的な売買を避ける上でも有効です。インデックス投資や積立投資においても再投資の活用は基本戦略のひとつであり、資産運用の効率性と安定性を高めるために欠かせない視点と言えるでしょう。
利回り
利回りとは、投資で得られた収益を投下元本に対する割合で示し、異なる商品や期間を比較するときの共通尺度になります。 計算式は「(期末評価額+分配金等-期首元本)÷期首元本」で、原則として年率に換算して示します。この“年率”をどの期間で切り取るかによって、利回りは年間リターンとトータルリターンの二つに大別されます。 年間リターンは「ある1年間だけの利回り」を示す瞬間値で、直近の運用成績や市場の勢いを把握するのに適しています。トータルリターンは「保有開始から売却・償還までの累積リターン」を示し、長期投資の成果を測る指標です。保有期間が異なる商品どうしを比べるときは、トータルリターンを年平均成長率(CAGR)に換算して年率をそろすことで、複利効果を含めた公平な比較ができます。 債券なら市場価格を反映した現在利回りや償還までの総収益を年率化した最終利回り(YTM)、株式なら株価に対する年間配当の割合である配当利回り、不動産投資なら純賃料収入を物件価格で割ったネット利回りと、対象資産ごとに計算対象は変わります。 また、名目利回りだけでは購買力の変化や税・手数料の影響を見落としやすいため、インフレ調整後や税控除後のネット利回りも確認することが重要です。複利運用では得た収益を再投資することでリターンが雪だるま式に増えますから、年間リターンとトータルリターンを意識しながら、複利効果・インフレ・コストを総合的に考慮すると、より適切なリスクとリターンのバランスを見極められます。
長期投資
長期投資とは、数年から数十年のスパンで資産を運用し、時間をかけて利益を得る投資手法です。株式や債券、不動産、投資信託などが主な対象で、短期的な市場変動に左右されず、複利の効果を活かして資産を増やすことを目指します。







