
学資保険とは?おすすめの商品や選び方、メリット・デメリットを解説
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公開:
2025.08.22
更新:
2025.08.24
学資保険は、子どもの教育資金を計画的に準備するための貯蓄型保険です。毎月決まった保険料を支払うことで、子どもの進学タイミングに合わせて学資金を受け取れます。
現在、日本の子育て世帯の約43.7%が学資保険を利用しています。学資保険は、教育資金準備の主要な選択肢といえるでしょう。
2025年8月現在、各保険会社では市場金利上昇を反映した商品改定が相次いでおり、返戻率が大幅に向上しています。返戻率とは、支払った保険料総額に対して受け取れる学資金総額の割合を示すもので、この数値が高いほど効率的に教育資金を準備できます。
サクッとわかる!簡単要約
読み終えると、学資保険の返戻率や受取時期を自分の進学プランに合わせて最適化し、無理のない保険料設定ができるようになります。例えば返戻率122.6%の高水準事例や、所得税4万円・住民税2.8万円の控除活用、令和5年度の学習費データを手掛かりに、学資保険と終身保険・NISA・預貯金・教育ローンの役割を整理できます。学資保険の長所と弱点を理解し、迷いなく商品比較へ進めます。
目次
学資保険とは何か?
学資保険は、子どもの将来の教育費に備えるための生命保険商品です。契約者(通常は親)が毎月保険料を支払い、子どもが一定の年齢に達した際に学資金を受け取れる仕組みになっています。
最大の特徴は、契約者に万が一のことがあった場合の保障機能です。契約者が死亡または高度障害状態になった場合、以後の保険料支払いが免除されるうえ、予定通りの学資金を受け取れます。これにより、親の収入が途絶えても子どもの教育費を確保できる安心感があります。
学資保険の基本的な仕組み
学資保険は「積立機能」と「保障機能」を併せ持つ商品です。毎月支払う保険料は保険会社によって運用され、契約時に設定した満期時に学資金として受け取れます。一般的には大学入学時期の18歳を満期とするケースが多く、高額な教育費が必要なタイミングで資金を活用できます。
また、教育費が段階的に必要になることを考慮して、分割して受け取るプランもあります。例えば、中学校入学時の12歳、高校入学時の15歳、大学入学時の18歳というように、進学のタイミングに合わせて祝い金として部分的に受け取るプランです。最終的に、22歳の大学卒業時に満期保険金を受け取るといった設計です。
さらに、大学在学中の教育費をサポートするため、18歳から21歳まで毎年一定額を受け取り続ける年金タイプの受け取り方法を選択できる商品もあります。
近年では、大学院進学や留学なども視野に入れて、22歳満期とする商品も増えています。子どもの進路や家庭の教育方針に応じて、最適な受け取りタイミングを選択することが重要にです。
なお、保険料は契約者と子どもの年齢・受取金額。保険料払込期間によって決まります。早期に加入するほど保険料は安くなり、返戻率も高くなる傾向があります。
学資保険の特徴
学資保険の最大の特徴は、元本保証による安全性です。銀行預金と同様に元本割れのリスクが低く、着実に教育資金を積み立てられます。また、途中で資金を引き出すことができないため、他の用途に使ってしまう心配がありません。
2025年の金利環境改善により、多くの保険会社で返戻率が100%を超える商品が登場しています。これは支払った保険料総額よりも多くの学資金を受け取れることを意味し、低金利時代の銀行預金よりも有利な条件で教育資金を準備できます。
学資保険の加入率と利用状況
ソニー生命保険株式会社の「子どもの教育資金に関する調査2024」によると、学資保険の加入率は43.7%となっています。
教育資金の準備方法として、銀行預金(57.2%)に次いで学資保険(49.7%)が選ばれており、約半数の家庭が学資保険を活用しています。平均的な月額保険料は15,026円で、20代の契約者が17,157円と最も高く、早期加入による長期積立志向が見て取れるでしょう。
おすすめの学資保険を紹介
2025年8月現在、市場金利上昇を背景に各保険会社が商品改定を実施し、返戻率が向上しています。
ここでは、返戻率の高さや受取方法の柔軟性、保障内容の充実度など、異なる特徴を持つ5つの商品を厳選して紹介します。それぞれの商品特性を理解して、ご家庭のニーズに最適な学資保険を選択してください。
ソニー生命「学資金準備スクエア」
項目 | 内容 |
---|---|
返戻率 | 最大121.5% |
受取パターン | I型:進学時分散、II型:大学集中、III型:大学在学中分割 |
保険料払込期間 | 10歳、15歳、17歳、18歳払済から選択 |
被保険者年齢制限 | 0~3歳(型によって異なる) |
契約者年齢制限 | 男性18~62歳、女性16~62歳 |
出生前加入 | 不可 |
ソニー生命の学資金準備スクエアは、最大の返戻率が121.5%です。
最大の特徴は、3つの受取パターンから選択できる柔軟性です。III型では大学在学中の4年間にわたって学資金を分割受取でき、毎年の授業料に充当できます。保険料払込期間も4つの選択肢があり、家計状況に合わせたオーダーメイド設計が可能です。
無配当タイプのため配当はありませんが、その分保険料が抑えられており、貯蓄性に特化した商品設計となっています。被保険者年齢制限が3歳までと厳しいため、早期の検討が必要です。
ソニー生命の「学資金準備スクエア」について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
明治安田生命「つみたて学資」
項目 | 内容 |
---|---|
返戻率 | 最大122.6% |
受取パターン | 18歳~21歳の4回に分けて受取 |
保険料払込期間 | 10歳、15歳払済から選択 |
被保険者年齢制限 | 0~6歳 |
契約者年齢制限 | 18~66歳(2025年4月改定で拡大) |
出生前加入 | 出産予定日140日前から可能 |
明治安田生命「つみたて学資」は、2025年4月の改定で予定利率を1.50%から1.75%へ引き上げ、業界最高水準の返戻率122.6%を実現しました。
シンプルな貯蓄特化型の商品設計で、余計な特約を付けずに返戻率の最大化を図っています。契約者年齢上限を66歳まで拡大したことで、祖父母が孫のために加入するケースにも対応しています。
18歳から21歳までの4年間にわたって学資金を受け取るため、大学4年間の学費に継続的に活用できる点が魅力です。出生前加入も可能で、計画的な教育資金準備をサポートしています。
明治安田生命の「つみたて学資」に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
富国生命「みらいのつばさ」
項目 | 内容 |
---|---|
返戻率 | 約109.5% |
受取パターン | S型:段階受取、J型:大学重点受取 |
保険料払込期間 | 11歳、14歳、17歳払済から選択 |
被保険者年齢制限 | 0~7歳 |
契約者年齢制限 | 男性18~50歳、女性18~50歳 |
特典 | 兄弟割引制度あり |
富国生命「みらいのつばさ」は、2つのプランから受取方法を選択できる柔軟性が特徴です。
最大の魅力は兄弟割引制度で、2人目の子どもから保険料が割安になります。複数の子どもがいる家庭では、トータルでの保険料負担を軽減できる優れた制度です。
5年ごと利差配当付きの商品のため、運用実績が良好な場合は配当金を受け取れる可能性があります。返戻率は中程度ですが、配当金により実質的な返戻率向上が期待できます。
富国生命の「みらいのつばさ」の詳細について知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
アフラック生命「夢みるこどもの学資保険」
項目 | 内容 |
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返戻率 | 個別面談にて提示(公表値なし) |
受取パターン | 14歳10か月一時金+17歳または18歳から4年間年金 |
保険料払込期間 | 10歳、17歳、18歳払済から選択 |
被保険者年齢制限 | 0~7歳 |
契約者年齢制限 | 男性18~50歳、女性16~50歳 |
出生前加入 | 出産予定日140日前から可能 |
アフラック「夢みるこどもの学資保険」は、高校入学準備金と大学4年間の学費を重点的にカバーする独特の受取設計が特徴です。
14歳10か月での学資一時金により高校入学準備金を確保し、その後17歳または18歳から4年間にわたって学資年金を受け取れます。この設計により、最も費用負担が大きい高校・大学時期を手厚くサポートします。
返戻率は個別面談での提示となるため、具体的な数値は契約前に確認が必要です。保険料払込免除特約の範囲が広く、充実した保障内容を求める方に適しています。
アフラック生命の「夢みるこどもの学資保険」について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
三井住友海上あいおい生命「5年ごと利差配当付こども保険」
項目 | 内容 |
---|---|
返戻率 | 約76.0%(医療特約なし) |
受取パターン | 養育年金T型:契約者死亡時に毎年基本保険金額の60%支給 |
保険料払込期間 | 18歳払済 |
被保険者年齢制限 | 0~11歳 |
契約者年齢制限 | 男性18~60歳、女性18~60歳 |
特徴 | 配当金あり、元本保証なし |
三井住友海上あいおい生命の「5年ごと利差配当付こども保険」は、保障機能を重視した商品設計となっています。
返戻率は76.0%と他社比較で低いものの、養育年金T型では契約者死亡時に毎年基本保険金額の60%を受け取れる手厚い保障があります。5年ごとの利差配当により、運用実績に応じた配当金支払いの可能性があります。
ただし、元本保証がない点は要注意で、解約時期によっては元本割れリスクがあります。貯蓄性よりも保障機能を重視する場合に適した商品です。
三井住友海上あいおい生命「5年ごと利差配当付こども保険」は、以下の記事で詳しく解説しています。
学資保険はいつから始めるべき?
学資保険を始める最適なタイミングは、妊娠中から出産後6ヶ月以内が最も一般的とされており、子どもが0歳のうちに加入するのがベストです。早めに始めることで、払込期間が長くなるため月々の保険料が安くなり、返戻率も高くなる傾向があります。
また、親の年齢が若いほど保険料が安くなり、万が一の保障も早期から確保できるという利点があります。
学資保険を検討する際は、いくつかのポイントを考慮する必要があります。まず家計の安定性を確認し、長期間にわたって保険料を払い続けられるかどうかを慎重に判断することが重要です。
また、NISAなど他の貯蓄手段との比較検討も欠かせません。学資保険は固定金利のため将来のインフレリスクに弱いという特徴があり、途中解約すると元本割れのリスクもあるため流動性の面でも注意が必要です。
もし早期の加入を逃した場合でも、子どもが小学校入学前の6歳までには検討することをおすすめします。それ以降になると保険料が高くなったり、商品の選択肢が限られる可能性があるためです。
ただし、教育資金の準備は学資保険だけに頼るのではなく、つみたてNISAやジュニアNISAなどの投資商品も含めて、総合的に検討することが賢明でしょう。
学資保険のメリット
学資保険には教育資金準備において多くのメリットがあります。最大の利点は強制的な積立効果で、毎月自動的に保険料が引き落とされるため、確実に教育資金を準備できます。また、契約者の万が一に備えた保障機能により、家計リスクから子どもの教育機会を守れます。
確実に教育資金を準備できる
学資保険の最大のメリットは、確実に教育資金を準備できる点です。銀行預金と異なり、途中で資金を引き出すことができないため、他の用途に使ってしまう心配がありません。毎月自動的に保険料が引き落とされる仕組みにより、貯蓄が苦手な方でも着実に教育資金を積み立てられます。
子どもの進学タイミングに合わせて学資金を受け取れるため、まとまった教育費が必要な時期に確実に資金を確保できます。特に大学入学時は入学金、前期授業料、教材費などで数百万円の費用が一度に必要となるため、計画的な資金準備が不可欠です。
契約者の万が一の事態へ備えられる
学資保険には保険料払込免除特約が標準装備されており、契約者が死亡または高度障害状態になった場合、以後の保険料支払いが免除されます。それでも予定通りの学資金を受け取れるため、親の収入が途絶えても子どもの教育費を確保できます。
この保障機能は一般的な貯蓄にはない学資保険独自のメリットです。万が一の際も子どもの教育機会を守れるため、家計の大黒柱にとって安心感の大きい制度といえます。特に住宅ローンなどの負債がある家庭では、この保障機能の価値は非常に高いといえます。
離婚時における学資保険の取り扱いに関しては、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
税制上の優遇措置を受けられる
学資保険の保険料は生命保険料控除の対象となり、年間8万円以上の保険料支払いで所得税4万円、住民税2.8万円の控除を受けられます。これにより、実質的な保険料負担を軽減しながら教育資金を準備できます。
控除効果は所得税率が高いほど大きくなるため、特に高所得者層にとってメリットが大きい制度です。他の生命保険と合算して控除上限まで活用することで、税負担を効率的に軽減できます。年末調整や確定申告での手続きも簡単で、控除証明書を提出するだけです。
生命保険料控除に関しては、以下の記事もあわせてご覧ください。
返戻率が高ければ元本以上に資金を得られる
2025年の金利環境改善により、多くの学資保険で返戻率が100%を超えるようになりました。これは支払った保険料総額よりも多くの学資金を受け取れることを意味し、低金利の銀行預金よりも有利な条件で教育資金を準備できます。
特に10歳払込などの短期払込を選択することで、返戻率120%超の商品も登場しています。長期にわたる複利効果により、元本を大きく上回る学資金を受け取ることが可能です。
ただし、中途解約時は元本割れのリスクがあるため、最後まで継続できる保険料設定が重要です。
学資保険のデメリット
学資保険にはメリットだけでなく、注意すべきデメリットも存在します。最も大きな問題は流動性の低さで、急にまとまった資金が必要になっても途中で引き出すことができません。
また、インフレリスクへの対応力が低く、将来の物価上昇により実質的な価値が目減りする可能性があります。
近年の低金利環境下では返戻率の低下が問題となっていましたが、2025年の金利上昇により状況は改善しています。ただし、投資商品と比較すると収益性は劣るため、より高いリターンを求める場合は他の選択肢も検討するとよいでしょう。
流動性の低さ
学資保険は、預貯金のように自由に資金を引き出せません。急な医療費や転居費用など、予期しない出費が発生しても学資保険から資金を調達することはできません。中途解約は可能ですが、早期解約時は解約返戻金が払込保険料を大幅に下回るリスクがあります。
この流動性の低さは、家計に余裕がない時期に大きな負担となる可能性があります。特に収入が不安定な職業の場合、保険料支払いの継続が困難になるリスクを十分に考慮しなければなりません。契約前には、緊急時の資金確保方法も含めた総合的な家計設計が重要です。
インフレリスクへの弱さ
学資保険は契約時に受取金額が確定する固定金利商品のため、インフレリスクに対する耐性が低い点がデメリットです。将来的に物価が上昇した場合、受け取る学資金の実質的な価値は目減りしてしまいます。特に長期契約となる学資保険では、このリスクが顕在化する可能性があります。
過去のデータを見ると、大学授業料は過去30年間で約2倍に上昇しており、今後も教育費の高騰が予想されます。学資保険だけでは将来の教育費増加に対応しきれない可能性があるため、他の資産運用方法との組み合わせを検討することが重要です。
返戻率の低下傾向
2025年までの長期間にわたり、低金利環境の影響で学資保険の返戻率は低迷していました。一部の商品では元本割れリスクもあり、貯蓄性の観点から魅力が低下していた時期があります。保障部分にコストがかかるため、純粋な貯蓄商品と比較すると効率性に劣る面がありました。
2025年の金利上昇により状況は大幅に改善していますが、将来的な金利変動により再び返戻率が低下するリスクは残ります。また、投資信託やNISAなどの金融商品と比較すると、依然として収益性は劣っています。
長期的な資産形成を考える場合、他の選択肢との比較検討が必要です。
保険会社の経営リスク
学資保険は長期契約となるため、保険会社の経営状況が悪化するリスクも考慮する必要があります。保険会社が破綻した場合、生命保険契約者保護機構により一定の保護はありますが、責任準備金の90%までしか保障されません。
また、経営状況の悪化により予定利率の引き下げが行われる可能性もあります。これにより当初予定していた返戻率を下回る学資金しか受け取れないリスクがあります。契約前には保険会社の格付けや財務状況を確認し、経営の安定性を評価することが重要です。
学資保険の選び方
学資保険を選ぶ際は、返戻率の高さを最重要視することが基本です。同じ保険料を支払うなら、より多くの学資金を受け取れる商品を選ぶべきです。
返戻率を最重要視する
学資保険選びで最も重要な指標は返戻率です。同じ保険料を支払うなら、できるだけ多くの学資金を受け取れる商品を選ぶべきです。2025年8月現在、明治安田生命「つみたて学資」の122.6%、ソニー生命「学資金準備スクエア」の121.5%が業界最高水準となっています。
返戻率は保険料払込方法や期間により大きく変わります。一般的に年払いの方が月払いより有利で、短期払込の方が長期払込より返戻率が高くなります。ただし、短期払込は月々の保険料負担が大きくなるため、家計とのバランスを考慮した選択が必要です。
受け取りタイミングの設定
子どもの教育プランに合わせて、最適な受取タイミングを設定することが重要です。大学進学時に一括で受け取るタイプと、小中高の進学時に分割で受け取るタイプがあります。
一般的に一括受取の方が返戻率は高くなりますが、私立学校への進学を予定している場合は分割受取が有効です。
据え置き制度を活用すれば、必要な時期まで学資金を保険会社に預けておき、所定の利率で運用してもらえます。進学時期が未定の場合や、より有利な運用を期待する場合に有効な制度です。受取方法の柔軟性も商品選択の重要なポイントといえます。
保険料の支払い能力確認
学資保険は長期間にわたる契約のため、最後まで保険料を支払い続けられるかの確認が重要です。家計に無理のない保険料設定を心がけ、収入の変動リスクも考慮する必要があります。一般的には、手取り収入の5%程度までが適正な保険料とされています。
保険料払込期間の選択も重要なポイントです。10歳払済のような短期払込は返戻率が高い反面、月々の負担が大きくなります。一方、18歳払済のような長期払込は月々の負担は軽いものの、返戻率は低くなります。家計状況に応じた最適な払込期間を選択しましょう。
保険会社の信頼性評価
学資保険は20年近い長期契約となるため、保険会社の経営安定性は重要な選択基準です。格付け機関による評価を確認し、AA格以上の高格付けを取得している会社を選ぶことが安全です。また、ソルベンシー・マージン比率(支払余力比率)も確認しましょう。
顧客サービスの質も重要な要素です。契約後のアフターサービス、請求手続きの簡便性、相談窓口の充実度なども比較検討すべきポイントです。口コミや評判も参考になりますが、最終的には自分自身で判断することが大切です。
学資保険が向いている・おすすめの人
学資保険が最も効果を発揮するのは、貯蓄が苦手で強制的な積立効果を求める人です。また、契約者の万が一に備えた保障機能を重視する人や、税制上の優遇措置を活用したい人にも適しています。
貯蓄が苦手な人
毎月の家計管理が苦手で、気がつくとお金を使い込んでしまう人には学資保険の強制積立効果が非常に有効です。
学資保険では口座からの自動引き落としにより、意識せずに教育資金を積み立てられます。途中で引き出すことができないため、他の用途に使ってしまう心配がありません。
「子どものためにお金を貯めたいけれど、なかなか続かない」という悩みを抱える親にとって、学資保険は確実な解決策となります。保険料という形で半強制的に積み立てることで、18年後には確実にまとまった教育資金を準備できます。
保障機能を重視する人
契約者に万が一のことがあった場合の保障を重視する人には、学資保険の保険料払込免除特約が大きな安心材料となります。特に住宅ローンの返済中や、配偶者が専業主婦(主夫)の家庭では、主たる収入源を失うリスクが深刻です。
自営業者や個人事業主など、収入が不安定になりやすい職業の人にとっても、学資保険の保障機能は重要です。万が一の際も子どもの教育機会を確保できるため、将来への不安を軽減できます。死亡保険と教育資金準備を同時に実現できる効率性も魅力です。
税制優遇を活用したい人
高所得者層で所得税率が高い人は、生命保険料控除による節税効果が大きくなります。年間8万円以上の保険料で最大4万円の所得税控除を受けられるため、実質的な保険料負担を軽減できます。所得税率20%の人なら年間8,000円、30%の人なら12,000円の節税効果があります。
他の生命保険に加入していない人や、控除枠に余裕がある人にとって、学資保険は税制メリットを最大化できる商品です。節税効果を考慮すると、実質的な返戻率はさらに向上し、より有利な教育資金準備が可能になります。
学資保険が向いていない・おすすめしない人
すでに十分な教育資金を確保している人や、より高いリターンを求めて投資商品を活用したい人には学資保険は適していません。また、資金の流動性を重視する人や、家計に余裕がなく保険料の継続支払いが困難な人も学資保険以外の方法を検討すべきです。
十分な資産がある人
既に子どもの教育費を十分に確保している家庭では、学資保険に加入する必要性は低いといえます。幼稚園から大学まで私立に通わせる場合でも約2,000万円程度の教育費があれば対応できるため、この金額以上の資産がある家庭は他の資産運用を検討した方が効率的です。
富裕層の場合、学資保険の返戻率では資産増加効果が限定的です。より高いリターンが期待できる投資商品や、相続税対策としての不動産投資などを優先すべきでしょう。ただし、税制上の優遇措置や相続対策として少額の学資保険を活用することは有効です。
投資知識が豊富な人
株式投資や投資信託などの金融商品に精通している人にとって、学資保険の返戻率120%程度は物足りないかもしれません。長期投資により年平均5~7%のリターンを狙える人なら、NISAを活用した投資信託の方が大きな資産形成が期待できます。
ただし、投資にはリスクが伴うことを十分に理解している必要があります。教育費が必要な時期に市場が大幅下落していれば、想定していた金額を確保できないリスクがあります。リスク許容度を慎重に判断し、安全資産との組み合わせを検討することが重要です。
流動性を重視する人
急な出費に備えて資金の流動性を重視する人には、学資保険の途中解約制限は大きなデメリットとなります。医療費や住宅の修繕費など、予期しない支出が発生しても学資保険から資金を調達することはできません。
自営業者や収入が不安定な職業の人、家計に余裕がない人は、まず緊急時に対応できる資金を銀行預金で確保することを優先すべきです。生活防衛資金として生活費の6か月分程度を確保してから、学資保険の検討を始めることをおすすめします。
学資保険以外の教育資金準備方法
学資保険以外にも教育資金を準備する方法は複数あります。それぞれメリット・デメリットがあるため、家庭の状況や投資方針に応じて最適な方法を選択することが重要です。
複数の方法を組み合わせることで、リスク分散を図りながら効率的な教育資金準備が可能です。学資保険で基本部分を確保し、余裕資金で投資商品を活用するなど、バランスの取れたポートフォリオを構築しましょう。
終身保険の活用
低解約返戻金型終身保険は、学資保険の代替手段として注目されています。保険料払込期間中の解約返戻金を低く抑える代わりに、払込完了後は通常の終身保険と同水準の解約返戻金を受け取れます。払込期間を10年や15年に設定し、子どもの進学時期に解約することで教育資金として活用できます。
学資保険と比較すると、用途の自由度が高い点がメリットです。教育費が予想より少なかった場合は解約せずに老後資金として活用できます。また、契約者を子どもに変更することで、将来的に子どもの生命保険として継続することも可能です。
NISA・投資信託の活用
NISA制度を活用した投資信託での教育資金準備は、高いリターンが期待できる方法です。年間投資枠内であれば運用益が非課税となるため、税制上の優遇を受けながら資産形成できます。長期間の積立投資により、複利効果で大きく資産を増やせる可能性があります。
ただし、元本割れのリスクがある点は十分に理解する必要があります。教育費が必要な時期に市場が下落していれば、想定していた金額を確保できない可能性があります。リスク許容度を慎重に判断し、安全資産との組み合わせを検討することが重要です。
NISAの活用法に関しては、こちらの記事でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
預貯金と定期預金
最も安全性の高い教育資金準備方法は銀行預金です。元本保証があり、必要な時に自由に引き出せるため、流動性の面では最も優れています。定期預金を活用すれば普通預金より高い金利を得られ、満期のタイミングを進学時期に合わせることで計画的な資金準備が可能です。
デメリットは、低金利による収益性の低さです。現在の普通預金金利は0.02%程度、定期預金でも0.2~1.0%程度と低水準のため、インフレリスクに対抗できません。また、強制力がないため、他の用途に使ってしまうリスクもあります。
安全性を重視する場合や緊急時の資金確保を考慮する場合には有効な手段ですが、単独では十分な教育資金を準備することは困難です。他の方法と組み合わせた活用を検討しましょう。
個人向け国債の活用
個人向け国債は国が発行する債券で、元本保証かつ国の信用力により極めて安全性の高い金融商品です。固定3年、固定5年、変動10年の3つのタイプがあり、それぞれ異なる特徴を持ちます。最低購入金額は1万円からで、家計の状況に応じて無理のない範囲で購入できます。
2025年8月現在、変動10年の金利は0.33%程度と銀行預金を上回る水準です。変動金利タイプは半年ごとに金利が見直されるため、金利上昇局面では受け取り利息も増加します。満期前でも1年経過後は中途換金が可能で、流動性の面でも優れています。
教育資金準備においては、子どもの進学時期に合わせて満期を設定することで計画的な資金確保が可能です。税制面では利息に20.315%の源泉分離課税が適用されますが、元本保証により安心して長期保有できる点が大きなメリットです。
なお、個人向け国債に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
教育ローンとの比較
教育費が必要になった時点で借り入れる教育ローンは、事前準備が不要な点がメリットです。国の教育ローンや銀行の教育ローンがあり、比較的低金利で利用できます。
日本政策金融公庫の教育ローンは固定金利1.95%(2025年8月現在)で、最大350万円まで借り入れ可能です。
ただし、借入金には利息負担が発生するため、総コストは事前準備より高くなります。また、審査があるため必ず借り入れできるとは限りません。
収入や信用状況によっては希望額を借り入れできない可能性もあります。事前準備との組み合わせにより、リスクを分散することが賢明です。
必要な教育費用の目安を確認
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」を参考に、幼稚園から高校における、子ども1人あたりにかかる教育費の年間支出額を見てみましょう。
幼稚園 | 小学校 | 中学校 | 高校 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
公立 | 約18万5,000円 | 約33万6,000円 | 約54万2,000円 | 約59万8,000円 | 約166万1,000円 |
私立 | 約34万7,000円 | 約182万8,000円 | 約156万円 | 約103万円 | 約476万5,000円 |
高校以降に進学する場合の入学費用と年間の在学費用は、以下のとおりです。
高専・専修・各種学校 | 短大 | 大学 | |
---|---|---|---|
入学費用 | 50万2,000円 | 73万円 | 81万1,000円 |
在学費用(年間) | 116万9,000円 | 137万円 | 149万9,000円 |
上表はあくまでも平均的なデータであり、進学ルートによってかかる費用は異なります。
「どの程度の費用を用意すればよいのか」という目安を把握する際に役立つため、学資保険を含めて、どのような方法で必要なお金を用意すべきかを考えてみましょう。
親族から教育資金の援助を受ける可能性がある方は、以下のQ&Aもご覧ください。
ライフステージ別の学資保険活用法
子どもの年齢や家庭の状況により、最適な学資保険の活用方法は異なります。妊娠中からの早期検討により選択肢を広げ、より有利な条件で契約できます。子どもが成長するにつれて商品選択の幅は狭まるため、適切なタイミングでの加入が重要です。
家計状況の変化に応じて保険料や受取方法を調整し、ライフプランの変更に柔軟に対応することが長期契約を成功させるコツです。定期的な見直しにより、常に最適な状態を維持しましょう。
妊娠中からの早期加入
明治安田生命やアフラック生命では、出産予定日140日前から学資保険に加入できます。出生前加入により、生まれてすぐに保障が開始され、より早期からの積立が可能になります。
また、妊娠中は時間的余裕があるため、じっくりと商品比較・検討ができる点もメリットです。
出生前加入では契約者の年齢を基準に保険料が算出されるため、若い時期の低い保険料で契約できます。万が一子どもに先天性疾患などがあった場合でも、出生前契約であれば加入を拒否されることはありません。早期からの教育資金準備を考える場合、妊娠中からの検討をおすすめします。
子どもの年齢別加入戦略
子どもの年齢が上がるにつれて、選択できる学資保険商品は限定されます。0歳から3歳までが最も選択肢が多く、有利な条件で契約できる時期です。ソニー生命は3歳まで、明治安田生命は6歳まで、富国生命は7歳までと、各社で上限年齢が異なります。
4歳以降の加入では返戻率が低下し、保険料負担も重くなります。また、払込期間が短くなるため月々の保険料が高額になり、家計を圧迫するリスクが高まります。早期加入により長期間での分散負担を図ることが、無理のない教育資金準備の基本です。
家計状況に応じた保険料設定
共働き世帯では比較的高い保険料設定が可能ですが、将来的な働き方の変化も考慮する必要があります。育児休業や時短勤務により収入が減少するリスクを織り込んだ保険料設定が重要です。手取り収入の5%程度を上限の目安として、余裕のある保険料設定を心がけましょう。
単独収入世帯では契約者に万が一があった場合のリスクが大きいため、保険料払込免除特約の内容を重視すべきです。また、収入の安定性を考慮し、無理のない保険料設定により中途解約リスクを回避することが重要です。
年払いや一括払いを選択することで、返戻率の向上も期待できます。
この記事のまとめ
学資保険は子どもの教育資金を確実に準備するための有効な手段です。2025年の金利上昇により返戻率が改善し、保険商品としての魅力が復活しつつあります。
学資保険は「確実に貯める」と「万一に備える」に強みがある一方、途中解約の不利やインフレ耐性の弱さに注意が必要です。まず目標額と開始時期を決め、返戻率・受取設計・払込方法・会社の健全性を軸に2〜3商品を比較しましょう。
必要に応じて終身保険やNISA、預貯金と組み合わせるとリスク分散が図れます。不安があれば専門家に相談し、家計に合った計画を策定しましょう。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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学資保険
学資保険とは、子どもの教育資金を計画的に準備するための保険商品で、一定期間保険料を支払うことで、子どもの進学時期(中学・高校・大学入学など)に合わせて祝い金や満期保険金が受け取れる仕組みになっています。保険であるため、契約者(通常は親)に万が一のことがあった場合でも、以後の保険料の支払いが免除され、満期時には予定どおりの給付金が支払われる点が大きな特徴です。 貯蓄機能と保障機能が組み合わさっており、「教育費を積み立てながら万一に備えたい」と考える家庭に人気があります。ただし、途中解約すると元本割れするリスクがあるため、長期的な資金計画としての活用が前提となります。初心者の方にとっては、預貯金とは違う形で将来の教育資金を準備できる手段のひとつとして、選択肢に入れて検討する価値があります。
返戻率
返戻率とは、生命保険や学資保険などの貯蓄型保険において、支払った保険料の総額に対して、満期や解約時に受け取れる金額(解約返戻金や満期保険金)がどのくらいの割合で戻ってくるかを示す指標です。たとえば、200万円の保険料を支払って、満期時に220万円を受け取れる場合、返戻率は110%となります。 この数値が100%を上回れば「支払った保険料より多く戻る」、下回れば「元本割れ」ということになります。返戻率は商品選びの際の比較指標としてよく使われ、特に学資保険や個人年金保険など、将来の資金準備を目的とした保険において注目されます。 ただし、返戻率が高い商品は契約条件が厳しかったり、途中解約に弱かったりする場合もあるため、利率だけでなくライフプラン全体を見据えて判断することが大切です。保険を「貯蓄」としても考える初心者にとって、返戻率は理解しておくべき基本的な指標です。
貯蓄型保険(積立型)
貯蓄型保険(積立型)とは、万が一の保障に加えて、将来的にお金が戻ってくる仕組みを備えた保険商品のことです。保険料の一部が積み立てられ、契約満了時や途中解約時に「解約返戻金」や「満期保険金」として受け取れるようになっています。 代表的な商品には、終身保険、養老保険、学資保険などがあり、保険としての安心を持ちながら、同時に資産形成も行えるのが特徴です。特に、教育資金や老後資金の準備、相続対策など、目的を持った長期の計画に活用されます。 「掛け捨て型保険」と異なり、支払った保険料が将来的に戻ってくるため、保険と貯金の“ハイブリッド”として位置づけられる商品です。ただし、途中解約すると元本割れするリスクがあるほか、運用利回りが低めに抑えられていることが多いため、目的と期間をしっかり考えて加入することが大切です。 保障と貯蓄を1つの仕組みで両立させたい人にとって、計画的な資産形成の手段として有効な選択肢のひとつです。
払込免除
払込免除とは、生命保険や医療保険などの契約において、契約者や被保険者が高度障害状態になったり、所定の重い病気にかかったりした場合に、それ以降の保険料の支払いが免除される制度のことを指します。免除されたあとも、保険契約は有効に継続され、保障内容はそのまま維持されるのが特徴です。 たとえば、がんなどの重病を患い、働くことが困難になった場合でも、保障を失うことなく保険を続けられる仕組みとして、多くの保険商品に組み込まれています。払込免除はあくまで保険料の支払い義務を免除する制度であり、解約や満期金の支払いとは異なります。契約時にこの特約が付いているかどうか、また発動条件がどうなっているかを確認しておくことが大切です。経済的な負担が大きくなる場面で、保険契約の継続を支える安心の仕組みです。
元本保証
元本保証とは、投資や預金において、満期まで保有すれば最低でも投資した元本が保証される仕組みを指します。銀行預金や一部の保険商品などが該当し、元本が減るリスクを抑えられるため、安全性を重視する人に向いています。しかし、元本保証がある商品は一般的に利回りが低く、インフレによる実質的な購買力の低下を考慮する必要があります。
生命保険料控除
生命保険料控除とは、個人が支払った生命保険料に応じて、所得税や住民税の課税所得額を一定金額まで減らすことができる税制上の優遇制度です。この控除によって、納める税金が軽減されるため、実質的に保険料の一部が戻ってくる効果があります。 対象となる保険は、「一般生命保険」「介護医療保険」「個人年金保険」の3つの区分に分かれており、それぞれに控除限度額が設けられています。控除を受けるには、保険会社から発行される控除証明書を年末調整や確定申告の際に提出する必要があります。保険による万一への備えと、節税効果の両方を得られる制度として、多くの人に活用されています。初心者にとっても、生命保険を契約する際にはこの控除制度の存在を知っておくことで、より効果的な保険選びや家計管理につなげることができます。
流動性
流動性とは、資産を「現金に変えやすいかどうか」を表す指標です。流動性が高い資産は、短時間で簡単に売買でき、現金化しやすいという特徴があります。例えば、上場株式や国債は市場で取引量が多く、いつでも売買できるため、流動性が高い資産とされています。 一方、不動産や未上場株式のように、売買相手を見つけるのが難しかったり、取引に時間がかかったりする資産は、流動性が低いといえます。 投資をする際には、自分が必要なときに資金を取り出せるかを考えることが重要です。特に初心者は、流動性が高い資産を選ぶことで、急な資金需要にも対応しやすく、リスクを抑えることができます。
インフレリスク
インフレリスクとは、物価の上昇が投資の実質的な価値や収益を減少させるリスクを指します。インフレが進行すると、通貨の購買力が低下し、同じ金額で以前よりも少ない商品やサービスしか購入できなくなります。このリスクは特に固定収益をもたらす投資、例えば債券や定期預金に顕著に現れます。債券のクーポン支払いや元本返済の実質的価値が、インフレによって目減りするためです。 投資家はインフレリスクを考慮に入れてポートフォリオを構築する必要があります。たとえば、インフレに対抗するために不動産や株式などのリアルアセットに投資する方法があります。これらの資産は、インフレの環境下で価値が上昇する傾向にあるため、インフレリスクから保護する効果が期待できます。また、インフレに連動する形で利息が上昇するインフレ連動債(TIPSなど)に投資することも、インフレリスクを管理する一つの手段です。 インフレリスクは、特に長期投資の計画において重要であり、経済全体の物価水準の変動を考慮に入れながら、資産を適切に配置し、リバランスを行うことが必要です。 さらに、異なる国や地域でのインフレ率の違いにも注意を払い、グローバルな視点からポートフォリオを見直すことも有効です。このように、インフレリスクを適切に理解し、対策を講じることで、投資の目標達成に向けた戦略的な判断が可能となります。
予定利率
予定利率は、生命保険会社が保険契約者に対してあらかじめ約束する運用利回りのことです。これは保険会社が保険料を計算する際に用いる重要な指標の一つで、契約者から払い込まれた保険料を運用して得られると予想される運用利回りを表します。 予定利率は保険料の設定に大きな影響を与えます。予定利率が高い場合は保険料が安くなり、低い場合は高くなります。これは、高い予定利率では将来の運用によるリターンを多く見込めるため、保険料を低く抑えることができるからです。 予定利率の決定方法は、まず金融庁が国債の利回りなどを参考に「標準利率」を設定し、その後各保険会社が標準利率を基準に自社の状況を反映して決定します。 予定利率には特徴があり、契約時点の率が適用され、基本的には支払い終了時や更新時まで同率で変わりません。バブル経済期には高い予定利率の保険が多く販売され、これらは「お宝保険」と呼ばれています。近年は低金利環境により、予定利率は低下傾向にあります。 保険料の計算には予定利率以外にも、予定死亡率(性別、年齢別に想定される死亡率)や予定事業費率(保険会社の運営に必要な経費の割合)も影響します。これら3つの要因を合わせて「予定基礎率」と呼びます。
ソルベンシー・マージン比率
ソルベンシー・マージン比率とは、保険会社がどれだけ予想外のリスクに耐えられるかを示す指標のことです。たとえば、大地震や大事故のような予測できない大きな支払いが必要になった場合に、その保険会社がしっかりと対応できるかどうかを判断するために使われます。 この比率が高ければ高いほど、経営の安定性があり、万が一のときでも契約者に対する保険金の支払い能力があると見なされます。保険会社の健全性をチェックする上でとても重要な数字です。
低解約返戻金型終身保険
低解約返戻金型終身保険とは、保険期間が一生涯続く終身保険の一種で、一定期間内に解約した場合の返戻金(契約を途中でやめた際に受け取れるお金)が通常の終身保険よりも低く設定されている保険です。主に保険料を安く抑えるための仕組みで、長期間継続することを前提に作られています。 保険会社にとっては途中解約による支出が少ないため、その分保険料を割安にすることができるというメリットがあります。短期間で解約すると大きく元本割れしてしまうため、長期的な保障や資産形成を目的とした人向けの商品です。終身保障がありながら、支払い負担を抑えたいという人に選ばれることがあります。
保険金
保険金とは、生命保険や損害保険などの保険契約に基づき、あらかじめ決められた事由が発生したときに保険会社から受取人へ支払われるお金を指します。 たとえば死亡や入院、事故による損害などが起こると、契約内容に応じた金額が支払われます。これは万一の経済的損失を補うために設計されており、受け取った人は生活費や治療費、修理費などに充てることができます。
保険料
保険料とは、保険契約者が保険会社に対して支払う対価のことで、保障を受けるために定期的または一括で支払う金額を指します。生命保険や医療保険、損害保険など、さまざまな保険商品に共通する基本的な要素です。保険料は、契約時の年齢・性別・保険金額・保障内容・加入期間・健康状態などに基づいて算出され、一般にリスクが高いほど保険料も高くなります。 また、主契約に加えて特約(オプション)を付加することで、保険料が増えることもあります。保険料は、契約を維持し続けるために必要な支出であり、未納が続くと保障が失効する場合もあるため、支払計画を立てることが大切です。資産運用の観点からも、保険料の支払いが家計に与える影響や、保障と費用のバランスを見極めることは、ライフプラン設計において重要な判断材料となります。
満期保険金
満期保険金とは、保険契約で定められた期間が終了したときに、契約者や被保険者に支払われるお金のことをいいます。たとえば、10年や20年などの一定期間保険料を払い続け、満期になったときにその保険が「満了」すると、あらかじめ決められた金額が支払われます。 このお金は、死亡や病気などのリスクに備えるだけでなく、貯蓄のように将来の資金づくりにも役立つという特徴があります。特に学資保険や養老保険などでよく使われる仕組みです。
解約返戻金
解約返戻金とは、生命保険などの保険契約を途中で解約したときに、契約者が受け取ることができる払い戻し金のことをいいます。これは、これまでに支払ってきた保険料の一部が積み立てられていたものから、保険会社の手数料や運用実績などを差し引いた金額です。 契約からの経過年数が短いうちに解約すると、解約返戻金が少なかったり、まったく戻らなかったりすることもあるため、注意が必要です。一方で、長期間契約を続けた場合には、返戻金が支払った保険料を上回ることもあり、貯蓄性のある保険商品として活用されることもあります。資産運用やライフプランを考えるうえで、保険の解約によって現金化できる金額がいくらになるかを把握しておくことはとても大切です。
保険期間
保険期間とは、保険契約が有効であり、保障が適用される期間のことを指します。この期間中に事故や病気などの保険事故が発生した場合に限り、保険会社から保険金や給付金が支払われます。保険期間には「定期型」と「終身型」があり、定期型は一定の期間で保障が終了するのに対し、終身型は一生涯にわたって保障が続きます。 また、医療保険や生命保険、就業不能保険など、それぞれの保険商品によって保険期間の長さや更新の有無が異なるため、自分のライフプランや必要な保障に応じて選ぶことが大切です。保険期間を正しく理解することで、保障が必要なときに備えが切れているといった事態を防ぐことができます。
保険金受取人
保険金受取人とは、生命保険や医療保険などの契約において、被保険者が亡くなったり給付条件を満たしたときに、保険金を受け取る権利を持つ人のことをいいます。契約者があらかじめ指定しておき、原則として書面により自由に変更することも可能です。 たとえば、生命保険では、被保険者が死亡した場合に保険金受取人が保険会社から死亡保険金を受け取ります。この受取人の指定によって、相続人以外の人が保険金を受け取ることもでき、保険金は原則として相続財産ではなく「受取人固有の財産」として扱われるのが特徴です。 ただし、相続税の課税対象にはなるため、課税上は「みなし相続財産」として取り扱われます。資産運用や相続対策の場面では、誰を受取人に指定するかが、遺産分割の公平性や納税負担に大きな影響を与える重要なポイントとなります。
積立利率
積立利率とは、保険や年金型の金融商品などで、積み立てられたお金に対して適用される利率のことをいいます。契約者が支払った保険料や掛金のうち、将来の給付や解約返戻金の原資として積み立てられる部分に、この利率が使われて運用されます。 この利率が高ければ、同じ金額を積み立てた場合でも将来の受取額が多くなり、逆に低ければ受取額も少なくなります。積立利率には「予定利率」と呼ばれるあらかじめ定められた利率と、市場金利の動向に応じて変動する「変動利率型」のものがあります。保険商品を選ぶ際には、この利率がどのように決まるのか、固定か変動か、そして実際にどれくらいの利回りが期待できるかを確認することが、将来の受取額を正しく見積もるうえで重要です。
保険証券
保険証券とは、保険会社と契約者との間で締結された保険契約の内容を証明する正式な書面です。契約者名や被保険者、保険期間、保険金額、保険料、受取人などの基本情報が記載されており、いわば保険契約の「原本」に当たります。 保険金を請求する際や契約内容を確認する場面では欠かせない資料となるため、自宅での保管だけでなく、万一の紛失に備えて電子データやコピーを別途管理しておくと安心です。 なお、証券を紛失しても契約自体が無効になるわけではなく、保険会社に届け出れば再発行や証明書の発行を受けられますが、手続きに時間がかかることがあるため注意が必要です。
約款(やっかん)
約款(やっかん)とは、保険や金融商品などの契約において、契約内容やルール、権利義務などをまとめた文書のことを指します。特に保険契約では、商品ごとに「保険の対象」「支払われる条件」「支払われない場合(免責事項)」「保険料の払い方」などが詳細に定められており、契約者と保険会社双方のルールブックのような役割を果たします。 多くの場合、あらかじめ定型化された内容で構成されており、契約者はこれを個別に交渉することなく「合意する形」で契約を結びます。そのため、内容を理解せずに契約すると、「思っていた保障が受けられない」「請求条件を満たしていなかった」といったトラブルの原因になることもあります。契約前には約款を確認し、必要に応じて内容を理解することが重要です。
保険始期(ほけんしき)
保険始期(ほけんしき)とは、保険契約が正式に効力を持ち始める日のことで、契約書面や保険証券に明記されています。この日以降に発生した事故や病気が、約款に従って保障対象となり、保険金や給付金の請求が可能になります。 始期は「申込日」「告知日」「第1回保険料払込日」などとは異なり、保険会社が審査を終え承諾したうえで契約者に通知されるため、申込直後に万一の事態が起きても始期前であれば保障されません。 資産運用の観点では、リスクマネジメントの空白期間をなくすために、保険始期と実生活のイベント(転職や住宅購入など)のタイミングを合わせておくことで、想定外の自己負担による資産目減りを防ぎやすくなります。
転換
転換とは、現在加入している生命保険や医療保険などの契約を途中で見直し、貯まっている解約返戻金や積立金を原資として新しい保険へ切り替える手続きです。 例えば、子育て期に保障額の大きい定期保険特約を外して終身保険部分だけを残したり、予定利率が高かった古い契約を活かしつつ医療保障を追加したりするケースがあります。転換を使うと、既契約の資金をそのまま新契約の一部に充当できるため、解約して入り直すよりも手軽に保障内容を更新できるメリットがあります。 ただし、転換比率の設定や手数料の負担、以前より低い予定利率への変更などによって、将来の解約返戻金や保険料負担が不利になる場合もあります。契約書類で条件を確認し、ライフステージや家計の見通しに照らして本当に必要かを慎重に判断することが大切です。
クーリング・オフ
クーリング・オフとは、一定の契約について、契約後でも一定期間内であれば無条件で契約を取り消すことができる制度のことをいいます。主に訪問販売や電話勧誘販売など、消費者が冷静な判断をしにくい状況で契約してしまうことを防ぐために設けられています。 金融商品においても、保険や一部の投資信託などでこの制度が適用されることがあり、契約後に「やっぱりやめたい」と思ったときに一定の期間内であれば手数料なしで契約を解消できる仕組みです。この制度は、消費者の権利を保護し、不適切な勧誘から身を守るための重要な手段となっています。契約時には、クーリング・オフの対象かどうかや、適用できる期間をしっかり確認することが大切です。
復活
復活とは、保険料の払い忘れなどで失効した生命保険や医療保険などの契約を、所定の期間内に未払い保険料と利息をまとめて支払い、健康状態などの告知を行うことで、元の契約条件のまま効力を取り戻す手続きです。 復活が認められると、加入時の保険料や保障内容をそのまま維持でき、年齢が上がったことによる保険料の値上げや告知内容の悪化による加入拒否を避けられます。 ただし、復活可能期間は通常2〜3年程度と定められており、この期間を過ぎると復活はできず、新たに契約し直す必要があります。また、復活時に健康状態が悪化していると、特別条件が付く場合や復活が認められないこともあるため、早めの手続きが重要です。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。
元本割れ
元本割れとは、投資で使ったお金、つまり元本(がんぽん)よりも、最終的に戻ってきた金額が少なくなることをいいます。たとえば、100万円で投資信託を購入したのに、解約時に戻ってきたのが90万円だった場合、この差額10万円が損失であり、「元本割れした」という状態です。 特に、価格が変動する商品、たとえば株式や投資信託、債券などでは、将来の価格や分配金が保証されているわけではないため、元本割れのリスクがあります。「絶対に損をしたくない」と考える方にとっては、このリスクを正しく理解することがとても重要です。金融商品を選ぶときには、利回りだけでなく元本割れの可能性も十分に考慮しましょう。