
保険の「契約者」「被保険者」「受取人」の違いや役割をわかりやすく整理。税金への影響も解説
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公開:
2025.09.03
更新:
2025.09.03
保険には、「契約者」「被保険者」「受取人」という3つの役割が必要です。これらの役割を正しく理解しないまま保険に入ると、税務面で大きな負担を背負うことになりかねません。
この記事では、保険の基礎知識から実践的な税務対策まで、中立的な立場でわかりやすく解説します。それぞれの立場がどのような役割を果たしているのか整理し、あなたに適した形で保険に加入しましょう。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むことで、契約者・被保険者・受取人の違いを正しく理解でき、税務面で損をしない保険設計の考え方がわかります。「誰のために、何の目的で保険に加入するのか」を整理し、最適な保険の加入をサポート。事例を通じて、典型的な家族構成や学資保険、単身者のケースに応じた最適な組み合わせを学び、将来のリスクに備える視点を得られます。
保険契約に登場する3つの当事者とは
保険契約には必ず3つの当事者が登場します。それぞれが異なる役割と責任を持ち、誰がどの立場になるかによって税務上の取り扱いが大きく変わります。
役割 | 定義 | 主な権利・義務 | 具体例 |
---|---|---|---|
契約者 | 保険会社と契約を結び保険料を支払う人 | ・保険料支払義務 ・契約解約権 ・内容変更権 ・告知義務 | 夫が自分の生命保険に加入する場合の「夫」 |
被保険者 | 保険の保障対象となる人 | ・告知義務 ・契約同意権 ・通知義務 | 夫の生命保険で保障を受ける「夫」 |
受取人 | 保険金・給付金を受け取る人 | ・保険金受取権 ・請求権 | 夫の死亡時に保険金を受け取る「妻」 |
「契約者」の役割と責任
契約者とは、保険会社と契約を結び保険料を支払う人のことです。保険法第2条では「保険料を支払う義務を負う者」と定義されています。
契約者は保険料の支払い義務だけでなく、契約の解約権や内容変更の権限も持ちます。また、解約返戻金を受け取る権利があるのも契約者です。つまり、保険契約における「オーナー」といえるでしょう。
契約者には告知義務も発生します。健康状態や職業など、保険会社が求める情報を正確に伝える責任があります。
「被保険者」の役割と権利
被保険者とは、保険の保障対象となる人のことです。生命保険では「保険をかけられている人」と表現されることもあります。被保険者に病気やケガ、死亡といった保険事故が発生すると、保険金が支払われます。
被保険者が契約者と異なる場合、契約締結には必ず被保険者の同意が必要です。これは保険法によって定められた重要なルールです。
被保険者も契約者同様に告知義務を負います。自身の健康状態や危険な趣味について、正確に申告する必要があります。
「受取人」の役割と範囲
受取人とは、保険金や給付金を受け取る人のことです。契約者が指定しますが、誰でも受取人にできるわけではありません。一般的には、配偶者や2親等以内の血族に限定されています。
受取人は複数人を指定することも可能です。その場合は受け取る割合を事前に決めておく必要があります。また、保険期間中であれば被保険者の同意を得て受取人を変更できます。
保険者とは
保険者とは、保険契約において保険金や給付金を支払う義務を負う会社のことです。一般的には「保険会社」と呼ばれており、契約者から保険料を受け取り、保険事故が発生した際に受取人に保険金を支払います。
保険者は金融庁の監督下にあり、厳格な財務基準や法的要件を満たす必要があります。生命保険会社、損害保険会社、共済組合などが保険者にあたり、それぞれ取り扱う保険商品や規制が異なります。
保険契約者と被保険者の違い・関係性を事例で整理
保険初心者が最も混同しやすいポイントを整理します。これらを正しく理解し、適切な形で契約を設計しましょう。
契約者と被保険者が異なるケース
家族の保険契約では、契約者と被保険者が異なることがよくあります。例えば、夫が契約者となり妻を被保険者とする場合です。
項目 | 内容 |
---|---|
契約形態 | 契約者:夫、被保険者:妻、受取人:夫 |
契約時の条件 | 妻(被保険者)の同意が必要 |
契約の権利 | すべて夫(契約者)が保有 |
保険料支払い | 夫(契約者)が負担 |
解約・変更権限 | 夫(契約者)のみ可能 |
解約返戻金 | 夫(契約者)が受取 |
保険金支払条件 | 妻(被保険者)に保険事故が発生した場合 |
注意点 | 夫に万一があっても保険金は支払われない |
このケースでは、契約の権利はすべて契約者(夫)にあります。被保険者(妻)が契約内容を変更したり解約したりしたくても、直接保険会社に申し出ることはできません。すべて契約者を通して手続きを行う必要があります。
また、万が一契約者に何かあっても、被保険者には保険金は支払われません。保険金が支払われるのは、あくまで被保険者に保険事故が発生した場合のみです。
被保険者と受取人が同一人物になれない理由
死亡保険において、被保険者と受取人を同一人物にすることはできません。これは論理的に考えれば当然のことです。被保険者が亡くなったときに保険金が支払われるのに、亡くなった本人が受け取ることは不可能だからです。
保険の種類 | 被保険者と受取人の関係 | 理由・特徴 |
---|---|---|
死亡保険 | 同一人物になれない | 被保険者の死亡時に保険金支払い→本人受取不可 |
医療保険 | 同一人物が可能 | 被保険者本人が生存中に給付金を受取 |
がん保険 | 同一人物が可能 | 被保険者本人ががん治療費として受取 |
介護保険 | 同一人物が可能 | 被保険者本人が介護費用として受取 |
学資保険 | 通常は親が受取人 | 被保険者(子)ではなく契約者(親)が受取 |
契約者と被保険者が同一のケース
医療保険やがん保険などでは、契約者・被保険者・受取人がすべて同一人物になることが可能です。自分で保険料を支払い、自分が病気になったときに自分で給付金を受け取るという形になります。
つまり、生命保険(死亡保険)の場合、被保険者と受取人は必ず異なる人物でなければなりません。医療保険やがん保険などの第三分野の保険では、被保険者本人が受取人となるのが一般的です。
税務面から見る3者の関係性
保険契約において最も重要なのが税務上の取り扱いです。契約者・被保険者・受取人の関係によって、相続税・所得税・贈与税のいずれかが適用されます。
相続税が適用されるケース
契約者と被保険者が同一人物の場合、死亡保険金には相続税が適用されます。一般的なパターンで、自分で保険料を支払い自分に保険をかけるケースです。
項目 | 内容 |
---|---|
契約形態 | 契約者=被保険者:夫、受取人:妻 |
具体例 | 夫が自分の生命保険(3,000万円)に加入、夫死亡時に妻が受取 |
税金の種類 | 相続税 |
非課税枠 | 500万円×法定相続人の数 |
計算例 | 法定相続人3人(妻・子2人)の場合:1,500万円まで非課税 |
メリット | 大きな非課税枠により税負担を大幅軽減 |
相続税の場合、受取人が相続人であれば「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。
上記の例では、3,000万円の保険金から1,500万円の非課税枠を差し引いた1,500万円が相続税の対象となります。
相続税では、実際に財産を相続しない人が保険金を受け取っても、非課税枠の適用があります。ただし、相続放棄した人が受取人の場合は非課税枠は適用されません。
死亡保険金の税金については、以下のQ&Aも参考にしてみてください。
所得税が適用されるケース
契約者と受取人が同一人物の場合、死亡保険金には所得税が適用されます。例えば、夫が契約者となり妻を被保険者として保険に加入し、妻の死亡により夫が保険金を受け取るケースです。
項目 | 内容 |
---|---|
契約形態 | 契約者=受取人:夫、被保険者:妻 |
具体例 | 夫が妻の生命保険(1,000万円)に加入、妻死亡時に夫が受取 |
税金の種類 | 所得税・住民税 |
控除額 | 50万円(一時所得の特別控除) |
計算式 | (受取保険金-支払保険料-50万円)×1/2 |
計算例 | 保険料総額300万円の場合:(1,000万円-300万円-50万円)×1/2=325万円 |
メリット | 特別控除50万円+1/2課税で税負担軽減 |
所得税の場合、一時金で受け取ると一時所得として扱われます。一時所得は他の所得と比べて優遇されており、50万円の特別控除があるうえに、さらに1/2が課税対象となります。
年金形式で受け取る場合は雑所得として扱われ、受取時期に応じて毎年課税されます。一般的には、一時金受取の方が税務上有利です。
保険金の受け取りと税金に関しては、こちらも記事もあわせてご覧ください。
贈与税が適用されるケース
契約者・被保険者・受取人がすべて異なる場合、死亡保険金には贈与税が適用されます。
項目 | 内容 |
---|---|
契約形態 | 契約者:父、被保険者:母、受取人:子 |
具体例 | 父が母の生命保険(1,000万円)に加入、母死亡時に子が受取 |
税金の種類 | 贈与税 |
基礎控除 | 110万円(年間) |
計算式 | 受取保険金額-基礎控除110万円 |
計算例 | 1,000万円-110万円=890万円(課税価格) |
贈与税額 | 890万円×40%-125万円=231万円 |
デメリット | 高税率(最大55%)で税負担が最も重い |
贈与税の計算は「受取保険金額-基礎控除110万円」となります。
上記の例では、実質的に受け取れる金額は1,000万円-231万円=769万円となり、相続税適用の場合と比較して大幅に手取り額が減少します。
保険金が贈与税の対象になるケースに関しては、以下のQ&Aも参考にしてみてください。
実践的なケーススタディ
実際の家族構成を想定して、具体的なケースを見てみましょう。
夫婦と子どものパターン
最も一般的なのは、夫が契約者兼被保険者となり妻を受取人とするケースです。法定相続人が妻と子ども2人の3人の場合、1,500万円まで非課税となります。
このパターンのメリットは、相続税の非課税枠を最大限活用できることです。また、保険金は受取人の固有財産となるため、遺産分割協議の対象外となり、スムーズな資金確保が可能です。
注意点は、受取人である妻が先に亡くなった場合の対応です。受取人変更手続きを怠ると、意図しない人に保険金が支払われる可能性があります。
祖父母が関わる学資保険
祖父母が孫の教育資金として学資保険に加入するケースも、実務上は見られます。祖父母が契約者、孫が被保険者、親が受取人となる場合、贈与税の対象となります。
この場合、満期保険金から基礎控除110万円を差し引いた金額が贈与税の対象です。例えば200万円の満期保険金の場合、90万円が課税対象となり、約9万円の贈与税が発生します。
税負担を軽減するには、親を契約者とし祖父母から保険料相当額を毎年110万円以内で贈与してもらう方法が考えられます。
3者がすべて異なるケース
父が契約者、母が被保険者、子が受取人となるケースは最も税負担が重くなります。例えば1,000万円の死亡保険金の場合、以下の計算となります。
- 課税価格:1,000万円-110万円=890万円
- 贈与税額:890万円×40%-125万円=231万円
相続税の場合と比較すると、税負担は大幅に増加します。
保険の契約者・被保険者・受取人の設定次第で、税額は大きく変わります。詳しくは、こちらのQ&Aをご覧ください。
単身者の保険設計
独身の方の場合、契約者兼被保険者兼受取人とすることはできないため、両親などを受取人とするのが一般的です。この場合、相続税が適用されます。
将来結婚する可能性を考慮し、受取人変更の手続きを忘れずに行うことが重要です。また、両親が高齢の場合は、兄弟姉妹を受取人とすることも検討しましょう。
結婚時は配偶者を受取人に変更し、離婚時は元配偶者から別の人への変更が必要です。子どもが生まれた場合は、受取人を複数指定したうえで、割合を決めることも可能です。
受取人変更の手続きと注意点
保険期間中に受取人の変更が必要になるケースと、その手続き方法について解説します。
受取人変更が必要な場面
結婚や離婚による家族構成の変化、受取人が先に死亡した場合、税務最適化などが主な変更理由です。特に受取人が被保険者より先に亡くなった場合は、速やかに変更手続きを行わないと、受取人の法定相続人が保険金を受け取ることになります。
離婚の場合も注意が必要です。元配偶者を受取人から外さない限り、離婚後も保険金を受け取る権利は継続します。
変更手続きの流れ
受取人変更には、被保険者の同意が必要です。保険会社所定の書類に契約者と被保険者の署名・押印をして提出します。変更手続きが完了するまで、元の受取人の権利は継続するため、早めの手続きが重要です。
2010年4月以降は、遺言による受取人変更も可能になりました。ただし、被保険者の同意と法的に有効な遺言であることが条件です。
受取人変更を怠ると、意図しない人に保険金が支払われるリスクがあります。特に離婚後に元配偶者が保険金を受け取るケースや、亡くなった受取人の相続人が受け取るケースが問題となります。
生命保険を活用した相続税対策を検討している方は、以下の記事とQ&Aをご覧ください。
この記事のまとめ
保険は単なる保障ではなく、税務面でも大きな影響を与える金融商品です。契約者・被保険者・受取人の役割を正しく理解し、自身の状況に最適な契約設計を行うことで、保険の持つメリットを活用できます。
保険契約は、単に保障を得るだけでなく、税務面に直結する金融商品です。契約者・被保険者・受取人の関係性を誤ると、相続税や贈与税の負担が大きくなる恐れがあります。
理解が不十分なまま契約すると後悔につながりかねないため、不安がある場合は専門家に相談し、安心できる契約設計を行うことをおすすめします。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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関連する専門用語
契約者
契約者とは、保険や投資信託などの金融商品において契約を締結する当事者のことを指す。契約者は契約の内容を決定し、保険料や掛金の支払い義務を負う。生命保険では、契約者と被保険者が異なる場合もあり、この場合、契約者が保険金の受取人を指定できる。投資信託では、契約者が運用を委託し、受益者として利益を得る。契約内容によっては、解約や変更の権限を有するため、慎重な契約の選択が求められる。
被保険者
被保険者とは、保険の保障対象となる人物。生命保険では被保険者の生存・死亡に関して保険金が支払われる。医療保険では被保険者の入院や手術に対して給付金が支払われる。損害保険では、被保険者は保険の対象物(自動車など)の所有者や使用者となる。被保険者の同意(被保険者同意)は、第三者を被保険者とする生命保険契約において不可欠な要素で、モラルリスク防止の観点から法律で義務付けられている。
保険金受取人
保険金受取人とは、生命保険や医療保険などの契約において、被保険者が亡くなったり給付条件を満たしたときに、保険金を受け取る権利を持つ人のことをいいます。契約者があらかじめ指定しておき、原則として書面により自由に変更することも可能です。 たとえば、生命保険では、被保険者が死亡した場合に保険金受取人が保険会社から死亡保険金を受け取ります。この受取人の指定によって、相続人以外の人が保険金を受け取ることもでき、保険金は原則として相続財産ではなく「受取人固有の財産」として扱われるのが特徴です。 ただし、相続税の課税対象にはなるため、課税上は「みなし相続財産」として取り扱われます。資産運用や相続対策の場面では、誰を受取人に指定するかが、遺産分割の公平性や納税負担に大きな影響を与える重要なポイントとなります。
保険金受取事由
保険金受取事由とは、保険契約において保険金が支払われる具体的な理由や状況のことを指します。たとえば、死亡保険であれば被保険者が亡くなったことが受取事由となり、医療保険であれば入院や手術などが該当します。この事由が発生しなければ、保険金は基本的に支払われません。 つまり、受取事由は「保険が効く条件」と考えるとわかりやすいです。保険の種類によって受取事由は異なり、契約時に詳しく説明されるほか、約款(契約内容をまとめた文書)にも記載されています。 正確に理解していないと、いざというときに保険金を受け取れない可能性があるため、自分の保険の受取事由が何かを事前に確認しておくことが重要です。
保険金支払条件
保険金支払条件とは、保険会社が契約者に対して保険金を支払うために満たさなければならない条件のことです。これは保険商品ごとに明確に定められており、たとえば死亡、入院、手術、がんの診断など、どのような状態になったときに、どの種類の保険金が支払われるかが記載されています。 保険金を確実に受け取るためには、この条件を正確に理解し、必要な書類を提出することが求められます。また、契約時に告知義務を果たしていない場合や、免責事由に該当する場合には、支払いの対象外となることもあります。資産運用においては、万一の際の保障が確実に機能するよう、支払条件を十分に確認しておくことが大切です。
保険金
保険金とは、生命保険や損害保険などの保険契約に基づき、あらかじめ決められた事由が発生したときに保険会社から受取人へ支払われるお金を指します。 たとえば死亡や入院、事故による損害などが起こると、契約内容に応じた金額が支払われます。これは万一の経済的損失を補うために設計されており、受け取った人は生活費や治療費、修理費などに充てることができます。
相続税
相続税とは、人が亡くなった際に、その人の財産を配偶者や子どもなどの相続人が受け継いだときに課される税金です。対象となる財産には、預貯金や不動産、株式、貴金属、事業用資産などが含まれ、相続財産の合計額が一定の基準額を超えると課税対象となります。 相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除があり、この範囲内であれば原則として税金はかかりません。しかし、資産規模が大きい場合や相続人の数が少ない場合には、課税対象となり、10%〜55%の累進税率が適用されます。 さらに、相続税にはさまざまな非課税枠や控除制度が設けられており、これらを適切に活用することで税負担を抑えることが可能です。代表的な制度には以下のようなものがあります。 - 生命保険金の非課税枠:法定相続人1人あたり500万円まで非課税 - 死亡退職金の非課税枠:生命保険と同様に1人あたり500万円まで非課税 - 債務控除:被相続人に借入金などの債務があった場合、その金額を控除可能 - 葬式費用の控除:通夜・葬儀などにかかった費用は、相続財産から差し引くことができる また、配偶者には配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)が認められており、適切に遺産分割を行えば、税額を大幅に減らすことができます。 相続税は、財産の種類や分割の仕方、受け取る人の立場によって税額が大きく変動するため、生前からの対策が非常に重要です。生命保険や不動産の活用、資産の組み替えなどを通じて、相続税評価額をコントロールすることが、家族への負担を減らし、スムーズな資産承継を実現するための鍵となります。
所得税
所得税は、個人が1年間に得た所得に対して課される税金です。給与所得や事業所得、不動産所得、投資による利益などが対象となります。日本では累進課税制度が採用されており、所得が高いほど税率が上がります。給与所得者は源泉徴収により毎月の給与から所得税が差し引かれ、年末調整や確定申告で精算されます。控除制度もあり、基礎控除や扶養控除、医療費控除などを活用することで課税所得を減らし、税負担を軽減できます。
一時所得
一時所得とは、継続的な収入ではなく、偶発的または一時的に得た所得のことを指す。例えば、懸賞の賞金、生命保険の満期返戻金、競馬の払戻金などが該当する。50万円の特別控除が適用され、課税対象額は控除後の金額の1/2となる。
非課税枠
非課税枠とは、税金が課されない金額の上限を指し、様々な税制に適用される制度。 例えば相続税では基礎控除額として「3,000万円+600万円×法定相続人数」が非課税枠となる。贈与税では年間110万円までの贈与が非課税。また、NISA(少額投資非課税制度)では年間の投資上限額に対する運用益が非課税となる。 このような非課税枠は、税負担の軽減や特定の政策目的(資産形成促進など)のために設定されており、納税者にとって税金対策の重要な要素となっている。
解約返戻金
解約返戻金とは、生命保険などの保険契約を途中で解約したときに、契約者が受け取ることができる払い戻し金のことをいいます。これは、これまでに支払ってきた保険料の一部が積み立てられていたものから、保険会社の手数料や運用実績などを差し引いた金額です。 契約からの経過年数が短いうちに解約すると、解約返戻金が少なかったり、まったく戻らなかったりすることもあるため、注意が必要です。一方で、長期間契約を続けた場合には、返戻金が支払った保険料を上回ることもあり、貯蓄性のある保険商品として活用されることもあります。資産運用やライフプランを考えるうえで、保険の解約によって現金化できる金額がいくらになるかを把握しておくことはとても大切です。
贈与税
贈与税とは、個人が他の個人から金銭・不動産・株式などの財産を無償で受け取った際に、その受け取った側(受贈者)に課される税金です。通常、年間110万円の基礎控除を超える贈与に対して課税され、超過分に応じた累進税率が適用されます。 この制度は、資産の無税移転を防ぎ、相続税との整合性を保つことを目的として設けられています。特に、親から子へ計画的に資産を移転する際には活用されることが多く、教育資金や住宅取得資金などに関しては、一定の条件を満たすことで非課税となる特例もあります。 なお、現在は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2制度が併存していますが、政府は近年、相続税と贈与税の一体化を含めた制度改正を検討しており、将来的に制度の選択肢や非課税枠、課税タイミングが見直される可能性があります。 こうした背景からも、贈与税は単なる一時的な贈与の問題にとどまらず、長期的な資産承継や相続対策の設計に深く関わる重要な制度です。税制の動向を踏まえた上で、専門家と連携しながら最適な活用方法を検討することが求められます。
基礎控除
基礎控除とは、所得税の計算において、すべての納税者に一律で適用される控除のことを指す。一定額の所得については課税対象から除外されるため、納税者の負担を軽減する役割を持つ。所得に応じて控除額が変動する場合もあり、申告不要で自動適用される。
雑所得
雑所得(ざつしょとく)とは、所得税法において定められた10種類の所得のうち、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得を指します。具体的には、公的年金や副業による収入、仮想通貨の売却益、FXの利益、非営業用貸金の利子などが該当します。 経費を差し引いた金額が課税対象となり、総合課税の対象となります。また、雑所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要になります。
特別控除
特別控除とは、一定の条件を満たした場合に特別に認められる所得控除のことを指す。例えば、不動産譲渡所得に対する3,000万円特別控除や、住宅ローン控除などが含まれる。通常の控除とは異なり、特定の政策目的のために設けられており、適用を受けるには条件を満たす必要がある。
保険事故
保険事故とは、保険契約に基づいて保険金の支払い対象となる出来事のことを指します。たとえば、生命保険であれば被保険者が亡くなった場合、医療保険であれば入院や手術を受けた場合、自動車保険であれば事故を起こして損害が発生した場合などが該当します。 つまり「保険金が支払われる条件として、あらかじめ契約で定められている事態」のことを保険事故と呼ぶのです。保険会社は、この保険事故が発生したことを確認して、契約内容に応じた保険金を支払います。 逆に、契約で定められた保険事故に該当しなければ、保険金は支払われません。投資初心者にとっては、保険商品を選ぶ際に「どんなときに保険金が出るのか」を理解するうえで、この用語の意味をきちんと把握しておくことがとても重要です。