
不動産クラウドファンディングの仕組みとは?「怪しい」「やめとけ」と言われる理由、デメリットを把握しよう
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公開:
2025.10.07
更新:
2025.10.07
不動産クラウドファンディングは、1万円程度の少額から不動産投資を始められる新しい投資手法として注目を集めています。しかし、インターネット上では「怪しい」「やめとけ」といった否定的な意見も少なくありません。
実際に、国土交通省は架空業者による詐欺的勧誘について注意喚起を行っており、投資家保護の観点から慎重な判断が求められています。
本記事では、中立的な立場から、不動産クラウドファンディングの仕組みとメリット・デメリットを徹底解説します。投資を検討している方が適切な判断を下せるよう、必要な情報を包括的にお伝えします。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むことで、不動産クラウドファンディングが少額から始められる手軽な投資手法である一方、元本保証がなく流動性も低いなど、見落としがちなリスクを理解できます。不動産クラウドファンディングの背景や仕組みを知ることで、詐欺的勧誘や不透明な案件を避け、自分に合った投資判断を下すための知識を得られます。
不動産クラウドファンディングとは
不動産クラウドファンディングは、インターネットを通じて複数の投資家から資金を集め、その資金で不動産を取得・運用し、得られた利益を投資家に分配する投資手法です。従来の不動産投資では数百万円から数千万円の資金が必要でしたが、この仕組みにより1万円程度から投資が可能になりました。
2017年の不動産特定共同事業法の改正により、オンラインでの取引が可能となったことで市場が急拡大しています。
基本的な仕組み
不動産クラウドファンディングの基本的な流れは、まず事業者が投資対象となる不動産を選定し、ファンド(投資案件)を組成します。次に、インターネットを通じて投資家から出資を募り、目標金額に達したらファンドが成立します。
運用期間中は事業者が不動産の管理・運営を行い、賃料収入(インカムゲイン)や売却益(キャピタルゲイン)を得ます。これらの収益から必要経費を差し引いた利益を、出資比率に応じて投資家に分配する仕組みです。
投資家は物件の選定から管理まですべてを事業者に任せられるため、不動産投資の専門知識がなくても参加できる点が特徴的です。
法的根拠と規制
不動産クラウドファンディングは、不動産特定共同事業法(不特法)に基づいて運営されています。この法律は、投資家保護を目的として制定され、事業者には厳格な要件が課されているのが特徴です。
事業者になるためには、国土交通大臣または都道府県知事の許可が必要で、資本金要件も第一号事業者で1億円、第四号事業者でも1000万円と高く設定されています。さらに、純資産が資本金の90%以上を維持する必要があるなど、財務的な健全性も求められます。
2019年には電子取引業務ガイドラインが策定され、クーリング・オフ制度の導入や分別管理の徹底など、投資家保護がより強化されました。これらの規制により、適切に運営されている事業者であれば、一定の信頼性が担保されているといえるでしょう。
市場規模の推移
不動産クラウドファンディングの市場は急速に拡大しています。2018年には12.7億円だった市場規模が、2023年には1007.8億円まで成長し、約80倍もの規模になりました。
この急成長の背景には、低金利環境での資産運用ニーズの高まりや、デジタル化の進展による投資の手軽さが挙げられます。また、コロナ禍を経て、オンラインで完結する投資手法への関心が高まったことも要因のひとつです。
ただし、市場の急拡大に伴い、サービスの質にばらつきが生じている点には注意が必要です。
不動産クラウドファンディングの3つの投資タイプ
不動産クラウドファンディングには、主に「匿名組合型」「任意組合型」「賃貸型」の3つのタイプが存在します。それぞれ投資の仕組みや最低投資額、税制上の取り扱いが異なるため、自身の投資目的に合わせて選択することが重要です。
一般的なのは匿名組合型で、市場に出回っているファンドの大半がこのタイプに該当します。一方、任意組合型や賃貸型は、不動産の所有権を得られるという特徴がありますが、最低投資額が高く設定されているケースが多くなっています。
匿名組合型
匿名組合型は、投資家が事業者と匿名組合契約を締結し、事業者に出資する形式です。投資家は不動産の所有権を持たず、事業者が不動産を取得・運用して得た利益の分配を受け取ります。
このタイプのメリットは、1万円程度から投資できる手軽さにあります。運用期間は6ヶ月から2年程度と比較的短期で、利回りは年率3〜8%程度が一般的です。また、優先劣後方式を採用しているファンドが多く、一定の損失までは事業者が負担する仕組みになっています。
税制上は雑所得として扱われ、年間20万円を超える利益が出た場合は確定申告が必要です。ただし、不動産の所有権がないため、相続税対策や減価償却による節税効果は期待できません。
任意組合型
任意組合型は、複数の投資家が共同で不動産を所有する形式です。投資家は事業者と任意組合契約を締結し、不動産の共有持分(所有権)を取得できるのが特徴となっています。
最低投資額は100万円程度からと、匿名組合型に比べて高額ですが、それでも現物不動産投資と比較すれば少額から始められます。運用期間は10年以上の長期にわたることが多く、安定的な賃料収入を重視する投資家に適しているでしょう。
このタイプのメリットは、不動産の所有権を持てることで相続税の評価減を受けられる点です。現金で相続するよりも評価額を下げられるため、相続税対策として活用する投資家も少なくありません。
賃貸型
賃貸型は、投資家が不動産の持分を購入したあと、その持分を事業者に賃貸する形式です。投資家は所有権を保持しながら、事業者から定期的に賃料を受け取ることができます。
任意組合型と同様に不動産の所有権を得られますが、運用・管理はすべて事業者に任せられるため、現物不動産投資のような手間はかかりません。最低投資額は数百万円からと高額になることが多く、ある程度まとまった資金を持つ投資家向けといえるでしょう。
ただし、賃貸型を提供している事業者は限られており、個人向けの商品は多くないのが現状です。法人や富裕層向けのサービスが中心となっているため、一般的な個人投資家にとっては選択肢が限定的といえます。
不動産クラウドファンディングで運用する流れ
不動産クラウドファンディングの運用は、募集開始から償還まで明確なプロセスに沿って進められます。投資家にとって重要なのは、各段階でどのような手続きが必要で、いつ利益を受け取れるかを理解しておくことです。
一般的な運用期間は6ヶ月から2年程度ですが、ファンドによっては3ヶ月の短期や10年以上の長期案件も存在します。運用期間中は基本的に「ほったらかし」で問題ありませんが、定期的に運用状況を確認することをおすすめします。
募集から運用開始
ファンドの募集は、先着順と抽選方式の2つのパターンがあります。先着順の場合、募集開始時刻と同時にアクセスが集中し、人気ファンドでは数分で募集終了となることも珍しくありません。
募集期間中に目標金額に達すると、ファンドが成立し契約締結となります。この際、不動産特定共同事業法により、契約成立時書面を受け取ってから8日以内であればクーリング・オフが可能です。無条件で契約解除できるため、冷静に判断する期間が設けられています。
運用開始後は、事業者が物件の取得手続きを進め、実際の不動産運用が始まります。投資家は特別な手続きは不要で、分配金の入金を待つだけという手軽さが大きな特徴となっています。
分配金の仕組み
分配金は、不動産から得られる賃料収入(インカムゲイン)と売却益(キャピタルゲイン)の2種類から構成されます。賃料収入型のファンドでは、毎月または四半期ごとに定期的な分配が行われるケースが一般的です。
分配金の計算方法は「出資金額×想定利回り×運用期間」が基本となります。たとえば、100万円を年利5%で1年間運用した場合、税引き前で5万円の分配金が得られる計算になります。
ただし、分配金からは源泉徴収税として20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)が自動的に差し引かれます。実際の手取り額は、5万円の場合で約3万9,790円となることを理解しておきましょう。
償還までの期間
償還とは、運用期間が終了して投資元本が返還されることを指します。不動産クラウドファンディングでは、あらかじめ定められた運用期間が終了すると、元本と最終分配金が投資家に返還される仕組みです。
運用期間は短期型(3ヶ月〜1年未満)と長期型(1年以上)に大別されます。短期型は主に物件の売却益を狙うファンドが多く、利回りが高めに設定される傾向があります。一方、長期型は安定的な賃料収入を重視し、利回りは3〜5%程度が一般的です。
注意すべき点として、早期償還される場合があることが挙げられます。物件が想定より早く売却できた場合、運用期間が短縮されることがあり、その分受け取れる分配金の総額も減少します。逆に、売却が遅れて償還が延期されるリスクもあるため、資金計画には余裕を持たせることが大切です。
不動産クラウドファンディングが「怪しい」と言われる理由
不動産クラウドファンディングが「怪しい」と言われる背景には、実際に発生した詐欺事例や、業界の構造的な問題が存在します。国土交通省が2024年に発表した注意喚起では、無登録業者による勧誘や自転車操業的な運営による被害が報告されています。
投資である以上、リスクがゼロということはありませんが、「怪しい」という評判の原因を正しく理解することで、詐欺被害を避けることができます。
詐欺事例の実態がある
不動産クラウドファンディングを装った詐欺事例は、残念ながら実際に発生しています。金融庁の発表によると、2023年には投資詐欺の相談件数が過去最高を記録し、なかでもSNSを通じた勧誘による被害が急増しているのが特徴です。
詐欺の典型的な手口として、「必ず儲かる」「元本保証」といった誇大広告で投資家を誘い込むケースが挙げられます。しかし、出資法では元本保証を謳うことは禁止されており、このような宣伝文句を使う業者は違法業者である可能性が極めて高いといえるでしょう。
また、実在しない物件への投資を募ったり、集めた資金を別の用途に流用したりする事例も報告されています。被害を防ぐためには、物件情報の詳細が開示されているか、事業者が適切な許可を得ているかを必ず確認することが重要です。
ポンジ・スキームの被害が出ている
ポンジ・スキームは、新規投資家から集めた資金を既存投資家への配当に充てる詐欺手法です。実際には運用を行わず、自転車操業的に資金を回すだけなので、最終的には破綻して投資家は大きな損失を被ることになります。
この手法の巧妙な点は、初期の投資家には約束通りの配当が支払われるため、「本当に利益が出ている」と信じ込ませることができる点です。満足した投資家が口コミで新たな投資家を呼び込み、被害が拡大していく構造となっています。
見分け方としては、相場を大きく上回る高利回り(年利15%以上)を謳っている場合や、物件情報が不透明な場合は要注意です。正規の不動産クラウドファンディングでは、利回りは3〜8%程度が一般的であることを覚えておきましょう。
ポンジ・スキームの被害にあわないためにも、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
無登録業者が存在する
不動産クラウドファンディングを運営するには、不動産特定共同事業者としての許可が必要ですが、この許可を得ずに営業する無登録業者が存在します。国土交通省のウェブサイトで許可業者一覧を確認できるため、投資前に必ずチェックすることが重要です。
無登録業者の特徴として、SNSやメールで個別に勧誘してくることが挙げられます。正規の事業者は不特定多数への情報発信は行いますが、個人を狙った勧誘は基本的に行いません。
また、「ここだけの話」「特別に案内」といった文言で秘密裏に投資を勧める場合も危険信号です。正規の事業者は公開された環境で透明性の高い募集を行うため、クローズドな勧誘には十分注意しましょう。
情報開示の不透明性になりやすい
不動産クラウドファンディングが「怪しい」と言われる理由のひとつに、情報開示の不透明性があります。事業者によって開示される情報の質と量に大きな差があり、投資判断に必要な情報が不足しているケースも少なくありません。
本来であれば、物件の所在地・築年数・構造・賃料相場・周辺環境などの詳細情報が開示されるべきです。しかし、一部の事業者では「都内の物件」といった曖昧な表現にとどまり、実態が見えにくい案件も存在します。
透明性の高い事業者では、物件の写真や図面、エンジニアリングレポート、不動産鑑定評価書なども公開しています。投資を検討する際は、このような詳細情報を開示している事業者を選ぶことで、リスクを軽減できるでしょう。
業界の歴史が浅い
不動産クラウドファンディングは、2017年の法改正により本格的に始まった比較的新しい投資手法です。わずか7年程度の歴史しかないため、長期的な実績やノウハウの蓄積が不十分な事業者も存在します。
新規参入が相次ぐなか、十分な経験や体制を持たない事業者が参入しているケースもあります。2024年時点で150以上のサービスが乱立しており、サービスの質にばらつきがあるのが現状です。
また、不動産市場の大きな下落局面を経験していないため、本当の意味でのストレステストができていない点も懸念材料といえます。リーマンショック級の不動産価格下落が起きた場合、どの程度の事業者が生き残れるかは未知数といえるでしょう。
不動産クラウドファンディングが「やめとけ」と言われる理由とデメリット
不動産クラウドファンディングに対して「やめとけ」という否定的な意見が出る背景には、投資家が直面する可能性のある具体的なリスクが存在します。これらのリスクを理解せずに投資すると、思わぬ損失を被る可能性があるため注意が必要です。
特に、元本保証がないことや流動性の低さは、他の金融商品と比較して大きなデメリットといえます。
元本割れリスクがある
不動産クラウドファンディングには元本保証がなく、投資した資金が減少または全額失われるリスクがあります。優先劣後方式により一定の保護はありますが、劣後出資比率を超える損失が発生した場合、投資家の元本も毀損します。
元本割れが発生する主な要因として、不動産価格の下落、空室率の上昇、自然災害による物件の損壊などが挙げられます。たとえば、劣後出資比率が20%の場合、物件価値が20%以上下落すると投資家の元本にも影響が及ぶことになります。
実際に、過去には運用がうまくいかず元本割れとなった事例も報告されています。「これまで元本割れゼロ」を謳う事業者も多いですが、これはあくまで過去の実績であり、将来を保証するものではないことを理解しておきましょう。
流動性が低い
不動産クラウドファンディングは、運用期間中の中途解約が原則できません。急に現金が必要になっても、運用期間が終了するまで資金を引き出せないため、流動性は極めて低いといえます。
株式や投資信託であれば、市場が開いている時間にいつでも売却して現金化できます。しかし、不動産クラウドファンディングでは6ヶ月から2年、長いものでは10年以上も資金が拘束されることになります。
一部の事業者では中途解約を認めていますが、手数料が発生したり、解約までに時間がかかったりすることがほとんどです。生活資金や緊急時の備えとなる資金は投資せず、当面使う予定のない余剰資金で運用することが重要でしょう。
事業者の倒産リスクがある
不動産クラウドファンディングでは、運営事業者が倒産すると投資資金が戻ってこない可能性があります。分別管理により投資家の資産は保護される仕組みになっていますが、完全にリスクがゼロになるわけではありません。
事業者の倒産リスクを見極めるポイントとして、財務状況の健全性、運営実績、親会社の有無などが挙げられます。上場企業や大手不動産会社が運営するサービスは相対的にリスクが低いといえるでしょう。
ただし、大手企業でも絶対に倒産しないという保証はありません。複数の事業者に分散投資することで、ひとつの事業者の倒産による影響を最小限に抑えることができます。
利回りが変動する
不動産クラウドファンディングで提示される利回りは「想定利回り」であり、確定したものではありません。運用状況によっては、当初の想定を下回る可能性があることを理解しておく必要があります。
賃料収入型のファンドでは、空室の発生や賃料の下落により、予定していた分配金が減少することがあります。また、売却益を狙うファンドでは、不動産市場の状況により売却価格が想定を下回るリスクも無視できません。
実際に、コロナ禍では商業施設やホテル系のファンドで、想定利回りを達成できなかった事例が報告されています。投資する際は、最悪のシナリオも想定したうえで、リスク許容度に応じた金額を投資することが大切です。
税制優遇がない
不動産クラウドファンディングの分配金は雑所得として扱われ、現物不動産投資のような税制上の優遇措置がありません。減価償却による節税効果や、損益通算による税金の軽減も期待できないのがデメリットです。
分配金からは20.42%の源泉徴収税が自動的に差し引かれます。さらに、年間の雑所得が20万円を超える場合は確定申告が必要となり、所得税率によっては追加納税が発生する可能性もあります。
現物不動産投資であれば、建物の減価償却費を経費計上することで所得税を軽減できます。しかし、不動産クラウドファンディングでは不動産の所有権がないため、このような節税メリットは享受できません。
不動産の所有権を持てない
匿名組合型の不動産クラウドファンディングでは、投資家は不動産の所有権を持つことができません。あくまで事業者に出資しているだけで、不動産そのものを所有しているわけではないためです。
所有権がないことによるデメリットとして、相続税の評価減が受けられない点が挙げられます。現物不動産であれば、相続時に時価の7〜8割程度で評価されるため、相続税の節税効果が期待できますが、クラウドファンディングではこのメリットがありません。
また、不動産を担保にした融資も受けられず、将来的な資産形成の選択肢が限定されます。長期的な資産形成や相続対策を考えている場合は、現物不動産投資の方が適している可能性があるでしょう。
希望の案件に投資できるとは限らない
利回りが高い人気ファンドは、募集開始から数分で満額に達することが珍しくありません。
抽選方式を採用している事業者も増えていますが、人気案件では抽選倍率が10倍以上になることもあります。せっかく投資の準備をしても、実際に投資できる確率は低く、時間と労力が無駄になる可能性があるのです。
この問題を回避するには、複数の事業者に登録して投資機会を増やすか、競争率の低い案件を狙う必要があります。ただし、競争率が低い案件は利回りが低かったり、リスクが高かったりする可能性もあるため、慎重な判断が必要です。
レバレッジ効果がない
現物不動産投資では、銀行からの融資を活用することで、自己資金の何倍もの物件を購入できます。このレバレッジ効果により、少ない自己資金で大きなリターンを狙うことが可能です。
しかし、不動産クラウドファンディングでは融資を利用できないため、投資額は自己資金に限定されます。100万円の自己資金があっても、100万円分しか投資できず、資金効率の面では劣ってしまいます。
たとえば、現物不動産投資で100万円を頭金に1000万円の物件を購入し、年間家賃収入が100万円(利回り10%)だった場合、自己資金に対する利回りは100%になります。一方、クラウドファンディングで100万円投資して利回り5%の場合、年間収益は5万円にとどまります。
手数料が高い
不動産クラウドファンディングでは、表面的には手数料無料を謳っていても、実際にはさまざまな手数料が発生します。入金時の振込手数料や出金時の手数料、さらには運用報酬が利回りから差し引かれているケースもあります。
振込手数料は1回あたり数百円程度ですが、少額投資の場合は相対的に負担が大きくなります。1万円の投資で振込手数料が330円かかる場合、実質的に3.3%のコストが発生していることになります。
また、事業者によっては出金手数料として数百円から1000円程度を徴収することもあります。分配金が少額の場合、手数料負けしてしまう可能性もあるため、事前に手数料体系を確認しておくことが重要です。
不動産クラウドファンディングのメリット・注目される理由
不動産クラウドファンディングには多くのデメリットやリスクが存在しますが、市場規模は年々拡大し、投資家からの注目度は高まり続けています。以下で、具体的なメリットを見ていきましょう。
少額から投資が可能
不動産クラウドファンディング魅力は、1万円という少額から不動産投資を始められることです。現物不動産投資では最低でも数百万円、都心の物件なら数千万円の資金が必要ですが、クラウドファンディングならお小遣い程度の金額から始められます。
この少額投資のメリットは、リスクを限定できることにもあります。初めての不動産投資で大金を投じるのは勇気がいりますが、1万円であれば最悪失っても生活に影響はありません。まずは少額で試してみて、仕組みを理解してから投資額を増やすという段階的なアプローチが可能です。
また、少額投資により分散投資も容易になります。100万円の資金があれば、10万円ずつ10個のファンドに分散投資することで、リスクを軽減できるのです。
運用の手間がかからない
不動産クラウドファンディングは、投資後の運用をすべて事業者に任せられる「ほったらかし投資」が可能です。物件の管理、入居者募集、家賃回収、修繕対応など、現物不動産投資で必要なすべての業務を事業者が代行してくれます。
現物不動産投資では、管理会社に委託しても最終的な意思決定は所有者が行う必要があります。家賃の設定、リフォームの実施、入居者トラブルへの対応など、さまざまな判断を求められることになります。
一方、クラウドファンディングなら投資後は分配金の入金を待つだけです。本業が忙しいサラリーマンや、不動産投資の知識がない初心者でも、プロと同じような不動産投資を実現できるのが大きなメリットといえるでしょう。
ほったらかし投資に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
優先劣後方式が採用されている
多くの不動産クラウドファンディングで採用されている優先劣後方式は、投資家のリスクを軽減する重要な仕組みです。事業者も同じ物件に出資し、損失が発生した場合は事業者の出資分(劣後出資)から先に負担する構造になっています。
たとえば、劣後出資比率が30%のファンドの場合、物件価値が30%下落するまでは投資家の元本は保護されます。1億円の物件で3000万円の損失が出ても、投資家の7000万円は守られる計算です。
この仕組みにより、事業者も投資家と同じ船に乗ることになり、利益相反を防ぐ効果もあります。事業者にとっても損失を避けるインセンティブが働くため、より慎重な物件選定と運用が期待できるでしょう。
分散投資ができる
不動産クラウドファンディングは、個人では投資が困難な大型物件や特殊な不動産にも投資できる点が魅力です。ホテル・商業施設・物流倉庫・ヘルスケア施設など、さまざまな種類の不動産に少額から投資できます。
地域の分散も容易で、東京だけでなく大阪、名古屋、福岡など全国の物件に投資することが可能です。現物不動産投資では1つの物件に集中投資せざるを得ませんが、クラウドファンディングなら複数の地域、複数の用途の不動産に分散できます。
また、運用期間の分散も重要なポイントです。3ヶ月の短期から10年の長期まで、さまざまな期間のファンドを組み合わせることで、定期的に資金が戻ってくる仕組みを作ることができます。これにより、再投資の機会を確保しながら、流動性の問題も一定程度解決できるでしょう。
他の投資との比較
不動産クラウドファンディングを検討する際は、他の投資手法と比較して、自分に最適な選択をすることが重要です。それぞれの投資手法には独自の特徴があり、投資目的やリスク許容度によって適した方法は異なります。
ここでは、現物不動産投資、J-REIT(不動産投資信託)、ソーシャルレンディングという3つの代表的な投資手法と比較しながら、不動産クラウドファンディングの位置づけを明確にしていきましょう。
現物不動産投資
現物不動産投資と不動産クラウドファンディングの最大の違いは、必要資金と運用の手間です。現物不動産投資では最低でも数百万円の自己資金が必要ですが、クラウドファンディングなら1万円から始められます。
項目 | 現物不動産投資 | 不動産クラウドファンディング |
---|---|---|
最低投資額 | 数百万円〜 | 1万円〜 |
レバレッジ | 可能(ローン利用) | 不可 |
運用の手間 | 多い | なし |
税制優遇 | あり(減価償却等) | なし |
流動性 | 低い(売却に時間) | 低い(中途解約不可) |
利回り | 3〜10%程度 | 3〜8%程度 |
現物不動産投資の大きなメリットは、不動産投資ローンを活用したレバレッジ効果です。自己資金100万円で1000万円の物件を購入し、年間家賃収入100万円を得れば、自己資金に対する利回りは100%になります。一方、クラウドファンディングでは融資を利用できないため、このような高い収益性は期待できません。
税制面でも大きな違いがあります。現物不動産投資では減価償却費を経費計上できるため、所得税の節税効果が期待できます。また、相続時には時価の7〜8割程度で評価されるため、相続税対策としても有効です。しかし、クラウドファンディングではこれらの税制メリットは享受できず、分配金は雑所得として課税されます。
現物の不動産投資に関しては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
J-REIT
J-REIT(不動産投資信託)は、証券取引所に上場している不動産投資商品で、株式と同様にリアルタイムで売買できます。流動性の高さが最大の特徴で、いつでも現金化できる点が不動産クラウドファンディングとの大きな違いです。
項目 | J-REIT | 不動産クラウドファンディング |
---|---|---|
最低投資額 | 数万円〜10万円程度 | 1万円〜 |
流動性 | 高い(即時売却可) | 低い(中途解約不可) |
価格変動 | あり(日々変動) | なし |
物件選択 | 不可 | 可能 |
分配金利回り | 3〜5%程度 | 3〜8%程度 |
元本割れ対策 | なし | 優先劣後方式あり |
投資対象の選択という点では、J-REITは複数の不動産をパッケージ化した商品のため、個別物件を選ぶことはできません。不動産クラウドファンディングなら、自分で投資したい物件を選択できるため、より主体的な投資が可能です。
REITに関して詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングは、資金を必要とする企業に融資する形式の投資で、不動産クラウドファンディングと似た仕組みを持っています。両者とも少額から投資でき、運用期間中は中途解約できないという共通点があります。
項目 | ソーシャルレンディング | 不動産クラウドファンディング |
---|---|---|
投資対象 | 企業への融資 | 実物不動産 |
担保 | あり/なし(案件による) | 実物不動産 |
情報開示 | 限定的 | 比較的透明 |
利回り | 3〜10%程度 | 3〜8%程度 |
リスク | 貸し倒れリスク | 不動産価値下落リスク |
投資家保護 | 限定的 | 優先劣後方式あり |
最大の違いは投資対象と担保の有無です。不動産クラウドファンディングは実物不動産が裏付け資産となりますが、ソーシャルレンディングは企業への融資のため、借り手企業の信用力に依存します。そのため、貸し倒れリスクが相対的に高くなる傾向があります。
情報開示の透明性でも差があります。不動産クラウドファンディングでは物件情報が詳細に開示されることが多いですが、ソーシャルレンディングでは融資先企業の詳細が不明なケースも少なくありません。実際、過去には融資先の不透明性が問題となり、行政処分を受けた事業者も存在します。
ソーシャルレンディングに関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
クラウドファンディングへ投資する前に必ず確認すべき事項
不動産クラウドファンディングで失敗を避けるためには、投資前の入念な確認が不可欠です。詐欺被害を防ぎ、適切なリスク管理を行うために、最低限確認すべき5つのポイントを押さえておきましょう。
事業者の登録状況
投資を検討している事業者が、正式な許可・登録を受けているかを確認することは最重要事項です。無登録業者への投資は、詐欺被害に遭う可能性が極めて高く、投資資金がすべて失われるリスクがあります。
確認方法は簡単で、国土交通省や金融庁のウェブサイトで登録業者リストを閲覧できます。事業者名で検索し、リストに掲載されていることを確認してから投資を検討しましょう。
また、登録番号や許可年月日も重要な情報です。設立から日が浅い事業者や、許可を取得したばかりの事業者は、運営実績が少ないため慎重な判断が必要となります。
不動産特定共同事業者
不動産特定共同事業者の許可は、国土交通省のウェブサイトで確認できます。この許可を持つ事業者は、厳格な審査をクリアしており、一定の信頼性が担保されています。
許可には第1号から第4号まで種類があり、それぞれ資本金要件が異なります。第1号事業者は資本金1億円以上、第4号でも1000万円以上が必要で、財務的な健全性が求められているのです。
事業者のウェブサイトに「不動産特定共同事業 第○号・第○号」といった表記があるか確認しましょう。この表記がない、または曖昧な表現になっている場合は、投資を控えることをおすすめします。
金融商品取引業者
一部の不動産クラウドファンディングは、金融商品取引業者として登録されています。金融庁のウェブサイトで登録状況を確認できるため、必ずチェックしておきましょう。
金融商品取引業者は、投資家保護のための厳しい規制を受けており、分別管理の徹底や適切な情報開示が義務付けられています。両方の登録を持つ事業者は、より高い信頼性があるといえるでしょう。
ただし、登録があるからといって100%安全というわけではありません。過去には登録業者でも問題を起こした事例があるため、登録確認は最低限のチェック項目と考えてください。
物件情報の精査
投資対象となる物件の情報が適切に開示されているかは、投資判断の重要なポイントです。物件の所在地、築年数、構造、用途、賃料相場など、基本的な情報がすべて確認できるか注意深くチェックしましょう。
優良な事業者では、物件の写真や図面、エンジニアリングレポート、不動産鑑定評価書なども公開しています。これらの情報から、物件の実在性と収益性を検証することが可能です。
逆に「東京都内の物件」といった曖昧な表現や、物件写真が一切ない案件は要注意です。架空の物件である可能性や、実際の物件価値が低い可能性があるため、投資は避けるべきでしょう。
不動産投資に関する相談相手に関しては、こちらのQ&Aもご覧ください。
運用実績の確認
事業者の過去の運用実績は、将来のパフォーマンスを予測する重要な指標です。これまでに組成したファンド数、運用総額、償還実績、元本割れの有無などを確認しましょう。
特に注目すべきは、予定通りに償還されたファンドの割合です。早期償還や償還遅延が頻発している事業者は、物件選定や運用能力に問題がある可能性があります。
「元本割れゼロ」を謳う事業者も多いですが、運用期間が短い場合は参考になりません。少なくとも3年以上の運用実績があり、不動産市況の変動を経験している事業者の方が信頼性は高いといえるでしょう。
劣後出資比率
劣後出資比率は、投資家保護の観点から極めて重要な指標です。この比率が高いほど、元本割れリスクが低くなるため、必ず確認しておきましょう。
一般的な劣後出資比率は10〜30%程度ですが、5%未満の案件は避けた方が無難です。逆に、40%以上の高い比率を設定している案件は、投資家保護を重視している優良案件といえます。
ただし、劣後出資比率が高くても、物件自体のリスクが高い場合もあります。立地が悪い・築年数が古い・特殊な用途など、リスクの高い物件ほど劣後出資比率を高く設定する傾向があるため、総合的な判断が必要です。
詳細な契約内容
投資前に契約書面をしっかり読み込み、内容を理解することは投資家の責任です。特に、分配金の計算方法、償還時期、中途解約の可否、手数料などの重要事項は必ず確認しましょう。
不動産特定共同事業法では、契約前に重要事項説明が義務付けられています。この説明を軽視せず、不明な点があれば遠慮なく質問することが大切です。
また、リスク説明書も重要な書類です。どのようなリスクがあり、最悪の場合どの程度の損失が発生する可能性があるのか、具体的に理解したうえで投資判断を行いましょう。理解できない部分がある場合は、投資を見送ることも賢明な選択です。
リスク回避の対策
不動産クラウドファンディングのリスクを完全にゼロにすることはできませんが、適切な対策を講じることで、損失の可能性を減らすことができます。投資で成功するためには、リスクを理解したうえで、それを管理する方法を身につけることが重要です。
ここでは、実践的なリスク回避策を4つご紹介します。これらの対策を組み合わせることで、より安全な投資を実現できるでしょう。
分散投資を意識する
「卵をひとつのカゴに盛るな」という投資の格言があるように、分散投資はリスク管理の基本です。不動産クラウドファンディングでも、複数のファンドに分散することで、ひとつの案件で損失が出ても全体への影響を抑えられます。
分散の方法は大きく3つあります。まず事業者の分散で、複数の運営会社のファンドに投資することで、事業者の倒産リスクを軽減できます。次に地域の分散で、東京だけでなく大阪、名古屋、福岡など、異なる地域の物件に投資することで地域特有のリスクを回避できます。
さらに、物件タイプの分散も重要です。住宅、オフィス、商業施設、ホテルなど、異なる用途の不動産に投資することで、特定セクターの不況による影響を軽減できます。100万円の投資資金があれば、10万円ずつ10個のファンドに分散するといった戦略が効果的でしょう。
余剰資金で運用する
不動産クラウドファンディングは、生活に必要な資金や緊急時の備えを除いた、純粋な余剰資金で行うことが鉄則です。投資した資金は運用期間中引き出せないため、生活資金を投資してしまうと、急な出費に対応できなくなります。
まず、生活防衛資金として最低でも生活費の6ヶ月分は、いつでも引き出せる預貯金で確保しましょう。会社員なら6ヶ月分、自営業者なら1年分が目安となります。
投資金額の目安としては、最悪の場合すべて失っても生活に支障がない金額に留めることが重要です。年収500万円の方なら、投資額は50万円程度(年収の10%)までに抑えるなど、自分なりのルールを設定することをおすすめします。
情報収集を丁寧に行う
投資判断の質を高めるには、継続的な情報収集が不可欠です。事業者の公式サイトだけでなく、第三者の評価や口コミ、ニュース記事なども参考にしながら、多角的に情報を集めましょう。
SNSやブログでの投資家の体験談は貴重な情報源ですが、ステルスマーケティングの可能性もあるため、鵜呑みにせず批判的に読むことが大切です。特に「絶対儲かる」「リスクゼロ」といった極端な表現には注意が必要です。
また、不動産市況の動向も重要な情報です。国土交通省の地価公示、不動産経済研究所の市況レポートなど、公的機関や専門機関が発表するデータを定期的にチェックすることで、投資タイミングの判断材料になります。
資金計画を丁寧に立てる
投資に回せる余剰資金がどれだけあるのか、具体的な金額を把握することから始めましょう。
生活防衛資金として、最低でも生活費の6ヶ月分は確保できているでしょうか。月の生活費が30万円なら、180万円は普通預金などですぐに引き出せる状態にしておくべきです。自営業者の場合は、収入が不安定なため1年分(360万円)を目安にしましょう。
次に、今後5年以内に使う予定の資金を除外します。子どもの教育や住宅購入の頭金、車の買い替え費用など、使途が決まっている資金は投資に回してはいけません。これらを差し引いて残った金額が、真の余剰資金となります。
リスク許容度を把握する
自分がどの程度のリスクを取れるのか、客観的に評価することが重要です。年齢や家族構成、収入の安定性、資産状況などを総合的に考慮して判断しましょう。
20〜30代の若い世代は、投資で失敗しても挽回する時間があるため、比較的高いリスクを取ることができます。一方、50代以降の方は、老後資金への影響を考慮して、慎重な投資判断が求められます。
また、精神的なリスク許容度も重要です。投資した10万円が8万円になった時、夜も眠れないほど心配になる方は、リスクの高い投資は避けるべきでしょう。自分の性格を理解し、ストレスにならない範囲で投資することが長期的な成功につながります。
投資目的を明確にする
なぜ不動産クラウドファンディングに投資するのか、目的を明確にしておくことが重要です。目的が曖昧なまま投資すると、途中で方針がぶれて失敗する可能性が高くなります。
老後資金の準備が目的なら、長期運用を前提とした安定型のファンドを選ぶべきです。一方、数年後の住宅購入資金を増やしたいなら、短期で利回りの高いファンドが適しているかもしれません。
また、分散投資の一環として組み入れる場合は、全体のポートフォリオとのバランスを考える必要があります。すでに株式投資を行っているなら、不動産クラウドファンディングは全資産の10〜20%程度に留めるなど、適切な配分を心がけましょう。
不動産クラウドファンディングが向いている人の特徴
不動産クラウドファンディングに向いている人には、共通する特徴があります。これらの条件を満たしている方は、この投資手法のメリットを活かせるでしょう。
少額から不動産投を始めたい人
不動産投資に興味はあるけれど、いきなり数千万円の借金をして物件を購入するのは怖いという方に適しています。1万円から始められるため、まずは少額で試して、仕組みを理解してから投資額を増やすことができます。
投資初心者の方にとっても、少額投資はリスクを限定しながら投資経験を積む良い機会となります。失敗しても損失が限定的なため、投資の勉強代と割り切ることも可能です。
さらに、複数の物件に少額ずつ投資することで、不動産投資のポートフォリオを構築できます。現物不動産投資では不可能な分散投資を、少額から実現できる点は大きな魅力です。
手間をかけたくない人
不動産投資には興味があるが、物件管理や入居者対応などの手間は避けたいという方に向いています。現物不動産投資では、管理会社に委託しても最終的な判断は所有者が行う必要がありますが、クラウドファンディングならすべて事業者任せです。
サラリーマンや公務員など、本業が忙しい方でも問題ありません。投資後は基本的に何もする必要がなく、定期的に送られてくる運用レポートを確認するだけで済みます。
また、不動産投資の専門知識がない方でも参加できます。物件選定から運用、売却まですべてプロが行うため、不動産の知識がなくても適切な投資判断が可能です。
不動産クラウドファンディングが向いていない人の特徴
一方で、不動産クラウドファンディングに向いていない人もいます。以下の特徴に該当する方は、他の投資手法を検討した方が良いかもしれません。
元本保証を求める人
投資において「絶対に損をしたくない」という方には向いていません。不動産クラウドファンディングには元本保証がなく、最悪の場合、投資資金がすべて失われる可能性があります。
優先劣後方式により一定の保護はありますが、完全なリスクヘッジにはなりません。不動産価格の大幅な下落や、事業者の倒産リスクは残るため、元本割れの可能性はゼロではないのです。
元本保証を重視する方は、銀行の定期預金や個人向け国債など、元本が保証された金融商品を選ぶべきでしょう。利回りは低くなりますが、確実に元本を守ることができます。
元本保証を求める人におすすめなのが、個人向け国債です。詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
短期で現金化する可能性がある人
資金の流動性を重視する方には不向きです。不動産クラウドファンディングは運用期間中の解約が原則できないため、急な資金需要に対応できません。
1年以内に使う予定のある資金や、緊急時の備えとなる資金を投資してはいけません。使途が決まっている資金での投資は避けるべきです。
流動性を重視する場合は、上場株式やJ-REITなど、いつでも売却可能な金融商品を選択しましょう。価格変動リスクはありますが、必要な時にすぐ現金化できる利点があります。
不動産クラウドファンディングにも、さまざまな投資の方法があります。詳しく、こちらの記事をご覧ください。
この記事のまとめ
不動産クラウドファンディングは、1万円という少額から不動産投資を始められる投資手法として注目されています。
しかし、実際に詐欺事例が発生していること、運用期間中の解約ができないこと、元本保証がないことなど、無視できないリスクやデメリットが存在します。国土交通省も架空業者による詐欺的勧誘について注意喚起を行っており、投資家は慎重な判断が求められています。
重要なのは、メリットとデメリットを正確に理解し、自身の投資目的やリスク許容度に照らして判断することです。投資を検討する際は、メリットとリスクを正しく理解し、自身の目的やリスク許容度に合わせて専門家への相談も視野に入れると安心です。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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キャピタルゲインとは、株式や不動産、投資信託などの資産を購入した価格よりも高く売却したことによって得られる利益のことです。一般的な経済用語としては「売却益」と呼ばれ、資産運用における収益のひとつとして広く使われています。日本の税法においては、このキャピタルゲインは「譲渡所得」として分類され、確定申告などで所得として扱われます。つまり、経済的な意味ではキャピタルゲインと譲渡所得は同様の概念を指しますが、前者が広義の利益、後者が課税対象としての所得という違いがあります。投資の成果を判断したり、税金を計算したりするうえで、両者の使われ方を正しく理解することが大切です。
インカムゲイン(インカム)
インカムゲイン(インカム)とは、株式や債券、不動産などの資産を保有していることで定期的または継続的に得られる収益のことを指します。具体的には、株式の配当金、債券の利息、不動産の家賃収入などが代表的な例です。一方で、資産の売買差益から生まれるキャピタルゲインとは異なり、保有し続けることで一定のペースで収入を得る点が特徴です。 インカムゲインを重視する投資では、安定したキャッシュフローを得られることが大きな魅力となります。例えば、株式の配当金は企業の利益から支払われますが、企業の業績や配当方針に応じて増減があるため、定期的なチェックが必要です。債券の利息は発行体の信用力や金利情勢に大きく左右され、金利が上昇すると既存債券の価格が下落するリスクがあります。不動産投資では家賃収入がインカムゲインとなりますが、空室が続いたり修繕費がかさんだりするリスクがあるほか、売却時の価格も景気や立地に左右されるため、投資額の回収が遅れる可能性があります。 これらのリスクを考慮する一方で、インカムゲインには安定性というメリットがあります。資産を保有しているだけでも定期的に資金が手に入り、再投資や生活費に回すことで資産形成を円滑に進めやすい面があります。また、いざ急に資金が必要になった場合には、すぐに売却しなくても配当金や利息で一定の収入を得られる可能性があるため、心理的な安心感につながることもあります。 ただし、インカムゲインを得ようとするあまり、高配当や高利回りをうたう投資商品ばかりに偏ると、発行体の信用リスクや価格変動リスクが高まるケースも考えられます。特に、株式の配当は企業の業績が悪化すれば減配や無配となる恐れがあり、債券の場合でも発行体の破綻リスクや金利上昇リスクが存在します。不動産投資では物件管理の手間や費用が大きく、地方物件などでは買い手が少なく流動性リスクも高くなるため、分散投資の観点で他の資産とバランス良く組み合わせるのが望ましいでしょう。 総じて、インカムゲインは、投資から生まれる継続的な収益を得るための有力なアプローチです。特に、キャピタルゲインだけに頼らず、配当や利息、家賃収入などの定期的な収入源を得ることでリスクを分散しながら安定した資産運用を目指すことができます。ただし、投資対象の選定やリスク管理は欠かせないポイントであり、投資する資金やライフプラン、リスク許容度に応じて最適なバランスを見極める必要があります。
優先劣後構造
優先劣後構造とは、投資商品や金融商品の中で、投資家の持つ権利やリスクの重さに応じて、優先的に扱われる部分(優先)と、後回しにされる部分(劣後)に分ける仕組みのことをいいます。例えば、不動産投資信託やファンドなどで使われ、投資家の中でも「損失が出た場合に誰がどこまで負担するか」をあらかじめ決めておくために用いられます。優先部分を持つ投資家は比較的安定したリターンを得やすい一方で、劣後部分を持つ投資家はリスクが高い分、利益が出たときにはその分だけ多くのリターンが期待できます。この構造により、リスクを分担しながら多様な投資ニーズに応える仕組みが可能になります。
雑所得
雑所得(ざつしょとく)とは、所得税法において定められた10種類の所得のうち、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得を指します。具体的には、公的年金や副業による収入、仮想通貨の売却益、FXの利益、非営業用貸金の利子などが該当します。 経費を差し引いた金額が課税対象となり、総合課税の対象となります。また、雑所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要になります。
J-REIT(Japan Real Estate Investment Trust)
J-REIT(ジェイリート)とは、「Japanese Real Estate Investment Trust」の略で、日本国内で設立・運用される不動産投資信託のことです。東京証券取引所を中心に上場しており、オフィスビル、商業施設、住宅、物流施設、ホテルなど、多様な不動産に投資します。投資家から集めた資金で不動産を取得・運用し、賃貸収入や売却益を原資として、利益の90%以上を分配することで法人税の軽減を受ける仕組みになっています。 J-REITは、税制優遇を受けられる点や比較的安定した分配金が期待できることから、国内投資家にとって魅力的な資産運用手段の一つです。ただし、日本経済や不動産市場の動向、金利変動、自然災害リスクなどの影響を受けるため、慎重な運用が求められます。もともとREITは米国で生まれた仕組みですが、日本の法律や市場環境に適応した制度が整備され、J-REITとして発展しています。
個人向け国債
個人向け国債とは、日本政府が個人投資家向けに発行する債券で、安全性が高く元本保証が特徴です。最低1万円から購入可能で、3年・5年の固定金利型と10年の変動金利型があります。変動金利型は半年ごとに金利が見直され、市場金利の上昇に伴い受取利息が増加するメリットがあります。 一方、株式投資ほどの高いリターンは期待できず、インフレ時には実質的な資産価値が目減りする可能性があります。また、購入後1年間は中途換金ができず、その後の換金時には直前2回分の利子相当額が差し引かれる点に注意が必要です。銀行預金より高い金利を求めるが、リスクを避けたい投資初心者や安全資産を確保したい方に適した商品です。
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劣後出資比率とは、不動産クラウドファンディングや小口不動産投資などにおいて、投資商品の中で運営会社などが劣後出資として負担している資金の割合を示す指標です。「劣後」とは「後回しになる」という意味で、万が一投資対象の不動産で損失が出た場合、まずは劣後出資部分から損失を引き受ける仕組みになっています。つまり、この比率が高いほど、一般投資家が出資した「優先出資」が損失を受けにくくなり、一定の安心材料となります。ただし、劣後出資があっても元本が保証されるわけではないため、リスクを正しく理解することが大切です。