
ソーシャルレンディングとは大損のリスクがある危ない投資?基本的な仕組みや「おすすめしない」と言われる理由を解説
難易度:
執筆者:
公開:
2025.10.03
更新:
2025.10.04
ソーシャルレンディングは、年利4〜7%という高い利回りが魅力的な投資方法として注目を集めています。しかし、2021年にはSBIソーシャルレンディングが行政処分を受けて事業撤退するなど、リスクの高さが浮き彫りになっているのも事実です。
実際に金融庁は2019年3月、ソーシャルレンディングへの投資について注意喚起を行い、貸し倒れリスクや情報開示の不透明性について警鐘を鳴らしています。
本記事では、中立的な立場から、ソーシャルレンディングの基本的な仕組みとリスク、「おすすめしない」と言われる理由を徹底解説します。投資を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むことで、ソーシャルレンディングの魅力と危うさを短時間で把握できます。高利回りに惹かれる一方で、2017年のみんなのクレジットによる約31億円の貸し倒れや、2021年のSBIソーシャルレンディング撤退といった実例が示すように、大損のリスクは現実的です。さらに、金融庁が指摘する「元本保証がない」「情報開示が不十分」といった問題を理解し、投資判断に必要なチェックポイントを学ぶことで、安易な選択を避け、より冷静な資産運用の視点を得られます。
目次
ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングは、インターネットを通じて投資家から集めた資金を、企業や個人事業主に融資する金融サービスです。「融資型クラウドファンディング」や「貸付型クラウドファンディング」とも呼ばれており、投資家は融資の利息から分配金を受け取ることができます。
日本では2008年頃からサービスが始まり、1万円という少額から投資できる手軽さと、定期預金を大きく上回る利回りの高さから注目を集めました。しかし、その後いくつかの事業者で貸し倒れや行政処分が発生し、投資家保護の観点から規制強化が進んでいるのが現状です。
融資型クラウドファンディングの仕組み
融資型クラウドファンディングは、複数の投資家から少額ずつ資金を集めて、それをまとめて企業に貸し付ける仕組みです。投資家は直接企業に融資するのではなく、ソーシャルレンディング事業者を通じて間接的に融資を行います。
たとえば、100人の投資家が各10万円を出資すれば、合計1,000万円の融資が可能になるわけです。融資を受けた企業は、事業資金として活用し、契約期間中は利息を支払い、満期になったら元本を返済します。
投資家への分配は、企業から支払われた利息から、運営会社の手数料を差し引いた金額が配当されます。年利10%の融資でも、手数料3%を引かれると投資家の実質利回りは7%程度になることが一般的です。
投資家と借手企業のマッチング
ソーシャルレンディング事業者は、資金を必要とする企業と、運用先を探している投資家をマッチングさせる役割を担います。事業者はまず、融資を希望する企業の審査を行い、信用力や返済能力を評価したうえでファンドを組成します。
投資家は、公開されたファンド情報(融資先の事業内容、利回り、運用期間、担保の有無など)を確認して投資判断を行います。ただし、2019年3月以前は融資先企業名が匿名化されていたため、投資家が十分な情報を得られないという問題がありました。
現在は金融庁の方針転換により、融資先の実名開示が可能となっています。それでも、財務諸表などの詳細情報までは開示されないケースが多く、投資判断の難しさは残っているのが実情です。
運営会社の役割と収益構造
ソーシャルレンディング運営会社は、ファンドの組成から融資実行、返済管理まで一連の業務を担当します。具体的には、融資先の発掘と審査・投資家への情報開示・資金の管理・返済金の分配などを行います。
運営会社の収益は、主に融資金利と投資家への分配利回りの差額(スプレッド)から得られます。たとえば、企業への融資金利が年12%で、投資家への分配利回りが年8%の場合、4%が運営会社の収益となるわけです。
このビジネスモデルでは、運営会社は融資額を増やすほど収益が増えるため、審査が甘くなりがちという構造的な問題があります。実際、過去には十分な審査を行わずに融資を実行し、大規模な貸し倒れを発生させた事例も報告されています。
必要な金融ライセンス
ソーシャルレンディング事業を行うには、「第二種金融商品取引業」と「貸金業」の2つの登録が必要です。第二種金融商品取引業は、不特定多数から出資を募る際に必要なライセンスで、金融庁への登録が義務付けられています。
貸金業登録は、集めた資金を企業に貸し付ける際に必要となります。この2つのライセンスを持たない事業者は違法営業となるため、投資前には必ず確認することが重要です。
金融庁のウェブサイトでは、登録業者の一覧を確認できます。登録番号が記載されていない、または検索しても出てこない事業者は避けるべきでしょう。過去には無登録で営業していた悪質な業者も存在したため、十分な注意が必要です。
金融庁が行っている注意喚起の内容
金融庁は2019年3月18日、ソーシャルレンディングへの投資について公式の注意喚起を発表しました。これは、投資家保護の観点から、ソーシャルレンディングに潜むリスクと確認すべきポイントを明確に示したものです。
まず、金融庁が最も強調しているのは、ソーシャルレンディングが「借手の返済遅延やデフォルトが生じた場合には、投資した資金が回収できなくなるおそれがある」という点です。つまり、元本保証がない高リスク商品であることを、投資家は十分に理解する必要があります。
高利回りに関する警告も重要です。金融庁は「高い利回りは高いリスクを伴うものであることを認識する」必要があると指摘しています。通常の金融機関から融資を受けられない企業が、高い金利でソーシャルレンディングを利用している可能性があり、その分、貸し倒れリスクも高くなるということです。
さらに、金融庁は「十分に理解できない商品への投資は行わない」という投資の基本原則を改めて強調しています。ソーシャルレンディングは比較的新しい投資商品であり、仕組みやリスクを完全に理解してから投資すべきだということです。理解できない部分がある場合は、無理に投資せず、より理解しやすい金融商品を選ぶことが賢明でしょう。
ソーシャルレンディングが「危ない」と言われる3つの理由
ソーシャルレンディングが「危ない投資」と言われる主な理由は、貸し倒れリスクの高さ、過去の行政処分事例、そして情報開示の不透明性にあります。実際に2017年から2021年にかけて、複数の事業者が行政処分を受け、なかには事業撤退に追い込まれたケースも発生しています。
貸し倒れによる元本損失の可能性がある
貸し倒れは、融資先企業が経営破綻や資金繰りの悪化により、借入金を返済できなくなる状態を指します。ソーシャルレンディングでは、この貸し倒れが発生すると投資家の元本が毀損し、最悪の場合は全額を失う可能性があります。
実際に、2017年には「みんなのクレジット」で約31億円の貸し倒れが発生しました。同社は担保があると説明していましたが、実際には担保価値が融資額を大きく下回っており、投資家は元本の大部分を回収できませんでした。
特に不動産関連のファンドでは、物件の売却が計画通りに進まず、返済が滞るリスクが高い傾向にあります。
過去の行政処分を受けた業者がいる
ソーシャルレンディング業界では、2017年以降、複数の事業者が金融庁から行政処分を受けています。代表的な事例は、2021年のSBIソーシャルレンディングへの業務停止命令です。
SBIソーシャルレンディングは、太陽光発電事業への融資ファンドで、実際とは異なる資金使途で融資を実行していたことが発覚しました。金融庁は「投資者保護上重大な問題」として、業務停止命令を発出。同社はその後、事業から完全撤退することになりました。
その他にも、「ラッキーバンク」は2018年に、「クラウドバンク」は2015年と2017年に行政処分を受けています。これらの事例に共通するのは、投資家への虚偽説明や、ずさんな融資審査体制といった問題点です。
情報開示に不透明性がある
ソーシャルレンディングにおける最大の問題点のひとつが、情報開示の不透明性です。2019年3月まで、融資先企業の実名は原則非開示とされており、投資家は「不動産事業者A社」といった匿名情報だけで投資判断を迫られていました。
現在は実名開示が可能になりましたが、財務諸表や事業計画書などの詳細情報まで開示している事業者は限られています。上場企業であれば有価証券報告書で詳細な財務情報を確認できますが、ソーシャルレンディングの融資先の多くは非上場の中小企業です。
また、運用中の情報開示も十分とはいえません。返済遅延が発生しても、その理由や回収見込みについて具体的な説明がないケースも多く、投資家は不安を抱えたまま満期を待つしかない状況に置かれることがあります。
大損につながるリスク要因
ソーシャルレンディングで大損するリスクは、単純な貸し倒れだけではありません。融資先企業の倒産や担保価値の下落、運営会社の破綻など複合的な要因が絡み合い、投資家の損失を拡大させる可能性があります。
特に注意すべきは、これらのリスクが連鎖的に発生するケースです。たとえば、不動産市況の悪化により担保価値が下落し、融資先が返済困難になり、最終的に運営会社の経営にも影響を与えるといった負の連鎖が起こりえます。
融資先企業の倒産リスク
融資先企業の倒産は、投資家にとって最も深刻なリスクです。企業が倒産した場合、債権回収は極めて困難になり、投資元本の大部分または全額を失う可能性が高くなります。
特に、ソーシャルレンディングの融資先となりやすい中小企業やベンチャー企業は、大企業と比べて倒産リスクが高い傾向にあります。
問題なのは、投資家が融資先企業の経営状況を十分に把握できないことです。上場企業なら四半期ごとに決算を開示しますが、非上場企業の場合、経営悪化の兆候を事前に察知することは困難でしょう。気づいたときには、すでに手遅れというケースも少なくありません。
担保価値の下落リスク
不動産担保付きファンドは一見安全に見えますが、担保価値の下落リスクを軽視してはいけません。不動産価格は市況により大きく変動し、融資実行時の評価額を下回ることがあります。
たとえば、5,000万円の融資に対して7,000万円の不動産を担保にしていても、市況悪化で担保価値が4,000万円まで下落すれば、1,000万円の損失が発生します。このような場合、LTV(Loan to Value:担保掛目)が100%を超え、実質的に無担保融資と変わらない状態になってしまうのです。
さらに問題なのは、担保評価の妥当性です。運営会社が融資額を増やすために、意図的に担保を過大評価している可能性も否定できません。第三者機関による評価がない場合は、特に注意が必要でしょう。
運営会社の破綻リスク
ソーシャルレンディング運営会社自体が破綻するリスクも無視できません。運営会社が倒産した場合、投資家の資金がどう扱われるかは、その会社の管理体制によって大きく左右されます。
理想的には、投資家の資金は信託銀行などで分別管理されているべきですが、すべての事業者がそうした体制を整えているわけではありません。2019年に破綻した「エーアイトラスト」のケースでは、投資家資金の一部が運営資金に流用されていたことが判明しました。
運営会社の財務健全性を判断する指標として、資本金の額や親会社の有無、創業からの年数などがあります。しかし、これらの情報だけで破綻リスクを完全に回避することは困難というのが現実です。
早期償還と延滞リスク
早期償還は一見すると良いことのように思えますが、投資家にとってはデメリットもあります。予定より早く元本が返済されると、期待していた利息収入が減少し、再投資先を探す手間も発生します。
たとえば、年利8%で2年間の運用を予定していたファンドが、6か月で早期償還された場合、得られる利息は4分の1になってしまいます。しかも、同じ条件の投資先がすぐに見つかる保証はありません。
一方、返済延滞はより深刻な問題です。延滞が長期化すれば、最終的に貸し倒れにつながる可能性も高くなるでしょう。
ソーシャルレンディングのデメリット
ソーシャルレンディングの主なデメリットは、途中解約ができない流動性の低さや分散投資の困難さです。また、利益が出ても税法上不利になりやすい点は、デメリットとして押さえておくべきです。
途中解約ができない
ソーシャルレンディングのデメリットは、一度投資したら満期まで資金を引き出せないことです。株式や投資信託なら市場で売却できますが、ソーシャルレンディングにはそのような流通市場が存在しません。
たとえば、年利7%で3年間のファンドに100万円を投資した場合、その間に急な医療費が必要になっても、子どもの教育資金が必要になっても、資金を取り戻すことはできません。生活防衛資金を確保したうえで投資すべきですが、それでも予期せぬ出費は起こりえます。
この流動性の低さは、投資のリスク・リターンのバランスを大きく損ないます。定期預金なら中途解約のペナルティはあっても元本は戻ってきますが、ソーシャルレンディングではそれすらできないのです。
分散投資が難しい
投資の基本は分散投資ですが、ソーシャルレンディングでは効果的な分散が困難です。多くのファンドが不動産関連に集中しており、真の意味での分散投資ができていません。
さらに問題なのは、複数のファンドに投資するには、その都度まとまった資金が必要になることです。最低投資額が1万円だとしても、10のファンドに分散するには最低10万円が必要になります。しかも、各ファンドの募集時期はバラバラで、計画的な分散投資は現実的ではありません。
投資信託なら1本で数百銘柄に分散投資できますが、ソーシャルレンディングで同レベルの分散効果を得ることは、個人投資家には不可能に近いでしょう。
利益が出ても税法上不利
ソーシャルレンディングの分配金は「雑所得」として課税され、税務処理が複雑です。給与所得などと合算される総合課税のため、所得が多い人ほど税率が高くなります。
具体的には、年収700万円の会社員がソーシャルレンディングで年間50万円の利益を得た場合、所得税率は23%となり、住民税10%と合わせて約33%が税金として徴収されます。つまり、50万円の利益のうち約16.5万円は税金で消えてしまうわけです。
さらに厄介なのは、損失が出ても他の所得と損益通算できないことです。株式投資なら3年間の繰越控除が可能ですが、ソーシャルレンディングではそれもできません。つまり、税制面では株式投資や投資信託などと比較すると、不利な投資といえるでしょう。
利回りがリスクに見合わない
ソーシャルレンディングの平均利回りは4〜7%程度ですが、これはリスクに見合っているとはいえません。貸し倒れリスク、流動性リスク、運営会社の破綻リスクなどを考慮すると、むしろ割に合わない投資です。
東証プライム上場企業の配当利回りは平均2〜3%ですが、これらは財務基盤がしっかりしており、いつでも売却可能です。一方、ソーシャルレンディングは非上場の中小企業への融資が中心で、リスクは高くなります。
初心者には判断が難しい
ソーシャルレンディングは、投資初心者には難易度の高い投資です。融資先企業の信用力評価や担保価値の妥当性判断、運営会社の健全性チェックなど、専門知識なしには適切な投資判断ができません。
限られた情報しか与えられない個人投資家が、正確なリスク評価をすることはほぼ不可能でしょう。実際、過去の貸し倒れ事例の多くは、投資家が十分なリスク評価をできなかったケースです。
投資初心者が始めるなら、まずは投資信託やETFなど、プロが運用しており規制も整備された金融商品から始めるべきです。ソーシャルレンディングは、少なくとも5年以上の投資経験を積んでから検討しても遅くはありません。
ソーシャルレンディングのメリット
ソーシャルレンディングにもメリットはあり、特定の条件を満たす投資家には適している面もあります。ただし、これらのメリットを享受できるのは、リスクを十分に理解し、余裕資金で運用できる一部の投資家に限られます。
重要なのは、メリットだけでなくデメリットも含めて総合的に判断することです。以下で紹介するメリットが自分にとって本当に価値があるのか、冷静に検討する必要があるでしょう。
少額から始められる
ソーシャルレンディングのメリットは、1万円程度の少額から投資を始められることです。不動産投資なら数百万円、社債投資なら100万円単位の資金が必要ですが、ソーシャルレンディングなら少額から参加できます。
たとえば、Funds(ファンズ)では1円から、クラウドバンクでは1万円から投資可能です。毎月1万円ずつ異なるファンドに投資すれば、1年で12本のファンドに分散投資できる計算になります。
高利回りが期待できる
ソーシャルレンディングの平均利回りは4〜7%で、定期預金や国債と比べると魅力的に見えます。なかには10%を超える高利回りファンドも存在し、短期間で資産を増やしたい投資家の注目を集めています。
複利効果を考えると、年利7%で運用すれば約10年で資産は2倍になります。これは「72の法則」(72÷利回り=資産が2倍になる年数)で簡単に計算できる数値です。
しかし、高利回りには必ず高リスクが伴います。年利10%を超えるファンドは、融資先の信用力が低いか、担保が不十分である可能性が高いのです。過去の貸し倒れ事例を見ると、高利回りファンドほど損失率が高い傾向があることを忘れてはいけません。
価格変動リスクがない
ソーシャルレンディングは融資という性質上、株式のような日々の価格変動がありません。投資後は満期まで待つだけで、毎日の値動きを気にする必要がないのです。
株式投資では、1日で10%以上値下がりすることもあり、精神的なストレスは相当なものです。その点、ソーシャルレンディングは投資額が固定されているため、市場の変動に一喜一憂することがありません。
ただし、価格変動がないことは、値上がり益(キャピタルゲイン)が期待できないことも意味します。株式なら企業の成長とともに株価が上昇する可能性がありますが、ソーシャルレンディングでは契約時の利回り以上のリターンは得られません。
他の投資との比較
ソーシャルレンディングと他の投資商品を比較すると、その特殊性とリスクの高さが明確になります。不動産クラウドファンディング、株式投資、投資信託、定期預金など、それぞれに特徴がありますが、総合的に判断するとソーシャルレンディングの優位性は限定的です。
投資商品を選ぶ際は、利回りだけでなく、流動性、安全性、税制優遇、情報開示の透明性など、多角的な視点から評価することが重要です。
不動産クラウドファンディングとの違い
不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングは混同されがちですが、投資家保護の仕組みに大きな違いがあります。最も重要な違いは、優先劣後構造の有無でしょう。
不動産クラウドファンディングでは、運営会社も10〜30%程度を劣後出資することが一般的です。たとえば、1億円の物件に投資家が7,000万円、運営会社が3,000万円を出資した場合、30%までの損失は運営会社が負担します。これにより、投資家の元本毀損リスクは軽減されるのです。
一方、ソーシャルレンディングにはこうした仕組みがありません。国土交通省の「不動産特定共同事業法」により規制される不動産クラウドファンディングと比べ、ソーシャルレンディングの規制は緩く、投資家保護の観点では劣っているといえます。
不動産クラウドファンディングに関しては、こちらの記事で解説しています。あわせて参考にしてみてください。
株式投資との違い
株式投資とソーシャルレンディングの違いは、流動性と情報開示の透明性です。上場株式はいつでも売買可能で、緊急時の現金化が容易ですが、ソーシャルレンディングは満期まで資金が拘束されます。
情報開示の面でも大きな差があります。上場企業は四半期ごとに決算を発表し、有価証券報告書で詳細な財務情報を開示します。投資家はこれらの情報を基に、合理的な投資判断ができるわけです。
NISA制度を活用すれば非課税で運用できるため、税引き後リターンでは株式投資が有利になるケースが多いでしょう。
NISAに関して詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
投資信託との違い
投資信託は、プロのファンドマネージャーが運用する金融商品で、少額から幅広い資産に分散投資できます。ソーシャルレンディングと比較すると、あらゆる面で優位性があります。
まず、分散効果の違いが顕著です。たとえば、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」なら、1本で世界約50カ国、約3,000銘柄に分散投資できます。信託報酬も年0.05775%と低コストで、ソーシャルレンディングの運営手数料(3〜4%)と比べると格段に安いのです。
さらに、NISAを活用すれば、年間360万円まで非課税で運用可能です。運用効率の面からみても、ソーシャルレンディングよりも優れています。
株式や投資信託のリスクに関しては、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
定期預金・個人向け国債との比較
定期預金は元本保証があり、預金保険制度により1,000万円まで保護されます。利回りは低いものの、安全性では圧倒的に優れています。
2025年10月現在、メガバンクの1年定期預金金利は0.2~0.5%程度です。ソーシャルレンディングの5〜7%と比べると見劣りしますが、リスクがほぼゼロであることを考慮すると、リスク調整後リターンでは定期預金も悪くありません。
特に注目すべきは、個人向け国債です。最低金利0.05%が保証され、「変動10年」なら金利上昇時には連動して利回りも上がります。中途換金も可能で、元本割れリスクもありません。安全性を重視する投資家には、ソーシャルレンディングより個人向け国債のほうが適しているでしょう。
投資の種類は、こちらの記事で網羅的に解説しています。あわせて参考にしてみてください。
ソーシャルレンディングを始める前のチェックポイント
ソーシャルレンディングを始める前に、確認すべき重要なポイントがあります。これらを怠ると、詐欺的な事業者に引っかかったり、想定外の損失を被ったりする可能性が高まります。
第二種金融商品取引業の登録を確認する
ソーシャルレンディング事業者が第二種金融商品取引業の登録を受けているかは、必ず確認すべき最重要事項です。無登録業者への投資は、詐欺被害に遭うリスクが極めて高く、絶対に避けなければなりません。
登録の確認は、金融庁の「金融商品取引業者登録一覧」で簡単にできます。事業者のウェブサイトに記載されている登録番号(例:関東財務局長(金商)第○○号)を検索し、実際に登録されているか確認しましょう。
また、登録業者であっても安心はできません。過去には、登録を受けていながら行政処分を受けた事業者が複数存在します。金融庁の「行政処分事例集」も併せて確認し、過去に問題を起こしていないかチェックすることが重要です。
過去の実績と貸し倒れ率を確認する
事業者の過去の運用実績、特に貸し倒れ率は投資判断の重要な指標です。優良な事業者は、累計融資額、返済実績、貸し倒れ件数などを公開しています。
たとえば、クラウドバンクは2024年12月時点で累計応募金額2,800億円超、融資元本回収率100%を維持しています。一方で、情報開示が不十分な事業者や、運営期間が1年未満の新規事業者は避けたほうが賢明でしょう。
ただし、過去の実績が将来を保証するわけではありません。SBIソーシャルレンディングも、行政処分を受けるまでは業界大手として信頼されていました。実績は参考程度に留め、常に最新の情報を確認する姿勢が必要です。
担保と保証の内容を確認する
担保付きファンドでも、その内容を詳しく確認することが不可欠です。担保の種類(不動産、有価証券、売掛債権など)や評価額、順位(第一順位か第二順位か)などを把握しましょう。
特に重要なのはLTV(Loan to Value)比率です。これは融資額を担保評価額で割った数値で、70%以下が理想的とされています。LTVが80%を超える場合、担保価値が20%下落しただけで実質無担保となるリスクがあります。
また、連帯保証の有無も確認ポイントです。ただし、保証人の資力が不明な場合、実効性は期待できません。上場企業の親会社保証があるファンドは比較的安全ですが、そうしたファンドは利回りも低めに設定されている傾向があります。
運用期間と資金計画を確認する
ソーシャルレンディングの運用期間は3か月から3年まで幅広く、自分の資金計画に合わせて選ぶ必要があります。初心者は、まず6か月以内の短期ファンドから始めることをおすすめします。
長期ファンドは利回りが高い傾向がありますが、その分リスクも増大します。3年間で経済情勢は大きく変わる可能性があり、融資先企業の経営環境も予測困難です。実際、コロナ禍では多くの長期ファンドで返済遅延が発生しました。
投資する際は、必ず生活防衛資金(生活費の6か月分以上)を確保したうえで、さらに3年以上使う予定のない余裕資金だけを充てるべきです。教育資金や老後資金など、使途が決まっている資金での投資は絶対に避けましょう。
融資先企業の財務状況を分析する
融資先企業の財務状況を分析することは、投資判断の基本中の基本です。売上高・営業利益・自己資本比率・流動比率などの財務指標を確認しましょう。
理想的には、自己資本比率が30%以上、流動比率が150%以上の企業が望ましいとされています。自己資本比率が低い企業は借入依存度が高く、金利上昇や業績悪化時に返済困難に陥りやすいのです。
適正な利回りを見極める
高すぎる利回りには必ず理由があり、多くの場合それは高リスクを意味します。適正な利回りを見極めるには、類似の金融商品と比較することが有効です。
たとえば、不動産担保付きファンドなら、J-REITの平均利回り(約4%)を基準に考えましょう。これより2%以上高い場合は、何らかのリスク要因があると考えるべきです。
日本銀行の統計によると、国内銀行の貸出約定平均金利は約1%です。 ソーシャルレンディングの融資先は銀行融資を受けられない企業が中心のため、リスクプレミアムを上乗せした5〜7%程度が適正範囲といえるでしょう。
運営会社の信頼性を確認する
運営会社の信頼性は、資本金・株主構成・運営実績など、多角的に評価する必要があります。上場企業や大手金融機関の子会社であれば、一定の信頼性は担保されるでしょう。
具体的なチェック項目として、資本金1億円以上、設立から3年以上経過、累計融資額100億円以上、といった基準を設けることをおすすめします。これらをすべて満たす事業者は限られますが、その分リスクは低減されます。
また、情報開示の姿勢も重要な判断材料です。月次レポートの発行、延滞発生時の迅速な報告、投資家向け説明会の開催など、透明性の高い運営を行っている事業者を選びましょう。反対に、都合の悪い情報を隠蔽したり、問い合わせに誠実に対応しない事業者は避けるべきです。
ソーシャルレンディングに関する税金と確定申告
ソーシャルレンディングで得られた分配金は「雑所得」として総合課税の対象となり、給与所得と合算されるため、高所得者ほど税負担が重くなります。
利益は雑所得として課税される
ソーシャルレンディングの分配金は、税法上「雑所得」に分類されます。これは給与所得や事業所得などと合算される総合課税で、所得税率は5%から最大45%まで段階的に上がります。
たとえば、年収600万円の会社員がソーシャルレンディングで年間100万円の分配金を得た場合、合計所得は700万円となり、所得税率は23%が適用されます。住民税10%と合わせると33%、つまり33万円が税金として徴収される計算です。
これに対して、上場株式の配当金や譲渡益は申告分離課税で、税率は一律20.315%です。NISA口座なら非課税となるため、税制面では株式投資が有利といえるでしょう。
所得が年間20万円を超えると確定申告が必要
給与所得者の場合、給与以外の所得が年間20万円以下なら、所得税の確定申告は不要です。これを「20万円ルール」と呼びますが、注意すべき点があります。
まず、この20万円は「所得」であって「収入」ではありません。ソーシャルレンディングの場合、分配金から源泉徴収された所得税を差し引いた金額が20万円以下という意味です。また、複数の雑所得がある場合は合算して判断します。
さらに重要なのは、住民税には20万円ルールが適用されないことです。所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は必要となります。多くの自治体では、所得があれば金額にかかわらず申告義務があるため、注意が必要です。
損益通算はできない
ソーシャルレンディングで不利な税制上の扱いは、損益通算ができないことです。貸し倒れで100万円の損失が出ても、給与所得や他の所得から差し引くことはできません。
株式投資なら、譲渡損失を配当所得と損益通算でき、さらに3年間の繰越控除も可能です(NISA口座では不可)。不動産投資でも、減価償却費などの経費を計上して所得を圧縮できます。しかし、ソーシャルレンディングにはこうした税制優遇がありません。
必要書類と手続き
ソーシャルレンディングの確定申告には、各事業者から送付される「支払調書」または「年間取引報告書」が必要です。これには、年間の分配金額、源泉徴収税額などが記載されています。
確定申告は、国税庁のe-Taxを使えばオンラインで完結します。マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマートフォン)があれば、自宅から申告可能です。
申告の際は、雑所得の「その他」欄に分配金の合計額を記入します。必要経費として、振込手数料や書籍代なども計上できますが、認められる範囲は限定的です。税務署から問い合わせがあった場合に備えて、すべての取引記録と領収書は5年間保管しておきましょう。
この記事のまとめ
ソーシャルレンディングは、年利4〜7%という魅力的な利回りを謳い文句にしていますが、その裏には貸し倒れリスク、流動性リスク、税制上の不利など、多くの問題が潜んでいます。
過去の行政処分事例や貸し倒れ実績を見ても、個人投資家にとってリスクが高すぎる投資といわざるをえません。これらのデメリットを考慮すると、表面利回りは高くても、リスク調整後のリターンは決して魅力的とはいえないでしょう。
金融庁も注意喚起を行っているとおり、ソーシャルレンディングへの投資は慎重に判断すべきです。もし投資を検討する場合は、専門家との相談を通じて、本当に適した方法かどうかを見極めましょう。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連記事
関連する専門用語
インカムゲイン(インカム)
インカムゲイン(インカム)とは、株式や債券、不動産などの資産を保有していることで定期的または継続的に得られる収益のことを指します。具体的には、株式の配当金、債券の利息、不動産の家賃収入などが代表的な例です。一方で、資産の売買差益から生まれるキャピタルゲインとは異なり、保有し続けることで一定のペースで収入を得る点が特徴です。 インカムゲインを重視する投資では、安定したキャッシュフローを得られることが大きな魅力となります。例えば、株式の配当金は企業の利益から支払われますが、企業の業績や配当方針に応じて増減があるため、定期的なチェックが必要です。債券の利息は発行体の信用力や金利情勢に大きく左右され、金利が上昇すると既存債券の価格が下落するリスクがあります。不動産投資では家賃収入がインカムゲインとなりますが、空室が続いたり修繕費がかさんだりするリスクがあるほか、売却時の価格も景気や立地に左右されるため、投資額の回収が遅れる可能性があります。 これらのリスクを考慮する一方で、インカムゲインには安定性というメリットがあります。資産を保有しているだけでも定期的に資金が手に入り、再投資や生活費に回すことで資産形成を円滑に進めやすい面があります。また、いざ急に資金が必要になった場合には、すぐに売却しなくても配当金や利息で一定の収入を得られる可能性があるため、心理的な安心感につながることもあります。 ただし、インカムゲインを得ようとするあまり、高配当や高利回りをうたう投資商品ばかりに偏ると、発行体の信用リスクや価格変動リスクが高まるケースも考えられます。特に、株式の配当は企業の業績が悪化すれば減配や無配となる恐れがあり、債券の場合でも発行体の破綻リスクや金利上昇リスクが存在します。不動産投資では物件管理の手間や費用が大きく、地方物件などでは買い手が少なく流動性リスクも高くなるため、分散投資の観点で他の資産とバランス良く組み合わせるのが望ましいでしょう。 総じて、インカムゲインは、投資から生まれる継続的な収益を得るための有力なアプローチです。特に、キャピタルゲインだけに頼らず、配当や利息、家賃収入などの定期的な収入源を得ることでリスクを分散しながら安定した資産運用を目指すことができます。ただし、投資対象の選定やリスク管理は欠かせないポイントであり、投資する資金やライフプラン、リスク許容度に応じて最適なバランスを見極める必要があります。
キャピタルゲイン(売却益/譲渡所得)
キャピタルゲインとは、株式や不動産、投資信託などの資産を購入した価格よりも高く売却したことによって得られる利益のことです。一般的な経済用語としては「売却益」と呼ばれ、資産運用における収益のひとつとして広く使われています。日本の税法においては、このキャピタルゲインは「譲渡所得」として分類され、確定申告などで所得として扱われます。つまり、経済的な意味ではキャピタルゲインと譲渡所得は同様の概念を指しますが、前者が広義の利益、後者が課税対象としての所得という違いがあります。投資の成果を判断したり、税金を計算したりするうえで、両者の使われ方を正しく理解することが大切です。
分散投資
分散投資とは、資産を安全に増やすための代表的な方法で、株式や債券、不動産、コモディティ(原油や金など)、さらには地域や業種など、複数の異なる投資先に資金を分けて投資する戦略です。 例えば、特定の国の株式市場が大きく下落した場合でも、債券や他の地域の資産が値上がりする可能性があれば、全体としての損失を軽減できます。このように、資金を一カ所に集中させるよりも値動きの影響が分散されるため、長期的にはより安定したリターンが期待できます。 ただし、あらゆるリスクが消えるわけではなく、世界全体の経済状況が悪化すれば同時に下落するケースもあるため、投資を行う際は目標や投資期間、リスク許容度を考慮したうえで、計画的に実行することが大切です。
複利効果
複利効果とは、投資で得られた利益を元本に組み入れて再び運用することにより、利益が利益を生むという仕組みのことを指します。たとえば、最初に100万円を年利5%で運用した場合、1年後には105万円になりますが、その翌年は105万円に対して5%の利息がつくため、さらに増えた金額に利息が上乗せされていきます。このように、運用期間が長くなるほど利益が加速度的に増えていくのが複利効果の特徴です。特に配当再投資や自動積立投資との組み合わせによって、この効果はより強く現れます。短期間では実感しにくいかもしれませんが、10年、20年といった長期で見ると、元本だけで運用する単利に比べて、はるかに大きな資産形成が可能になります。複利効果は「時間を味方につける」資産運用の基本的な考え方として、投資初心者にとっても非常に重要です。
信託報酬
信託報酬とは、投資信託やETFの運用・管理にかかる費用として投資家が間接的に負担する手数料であり、運用会社・販売会社・受託銀行の三者に配分されます。 通常は年率〇%と表示され、その割合を基準価額にあたるNAV(Net Asset Value)に日割りで乗じる形で毎日控除されるため、投資家が口座から現金で支払う場面はありません。 したがって運用成績がマイナスでも信託報酬は必ず差し引かれ、長期にわたる複利効果を目減りさせる“見えないコスト”として意識されます。 販売時に一度だけ負担する販売手数料や、法定監査報酬などと異なり、信託報酬は保有期間中ずっと発生するランニングコストです。 実際には運用会社が3〜6割、販売会社が3〜5割、受託銀行が1〜2割前後を受け取る設計が一般的で、アクティブ型ファンドでは1%超、インデックス型では0.1%台まで低下するケースもあります。 同じファンドタイプなら総経費率 TER(Total Expense Ratio)や実質コストを比較し、長期保有ほど差が拡大する点に留意して商品選択を行うことが重要です。
貸し倒れ
貸し倒れとは、お金を貸した相手や売掛金の相手先が返済不能や倒産などにより、最終的に回収できなくなることを指します。金融機関にとっては融資が返ってこない状態であり、企業にとっては取引先から代金を受け取れない状態です。資産運用の観点では、投資信託や債券投資でも発生する可能性があり、発行元の企業や国が支払いを行えなくなった場合、投資元本が失われるリスクにつながります。そのため、貸し倒れを防ぐには信用調査や分散投資が重要となります。貸し倒れは投資初心者にとって聞き慣れない言葉ですが、実際には「貸したお金が戻ってこない」というシンプルな意味であり、資産を守るために意識しておくべきリスクの一つです。
LTV(Loan to Value)
LTV(ローン・トゥ・バリュー)とは、不動産価格に対する借入金の割合を示す指標で、資産価値に対する負債比率を測るものです。計算式は、LTV(%)= 負債 ÷ 総資産価値 × 100で表され、例えば、1億円の不動産に対して7,000万円の借入がある場合、LTVは70%となります。 LTVが低いほど借入依存度が低く、元本返済の安全性が高いと判断されます。そのため、金融機関が融資の際にリスクを評価する重要な指標として活用します。特に不動産投資やREIT(不動産投資信託)では、LTVの水準が運用の安定性を判断するポイントの一つになります。 一般的に、住宅ローンではLTVが70〜80%、不動産投資では50〜60%が適正とされます。ただし、LTVが高すぎる場合、資産価値の下落時に財務リスクが増大し、追加担保の提供や資産売却を迫られる可能性があります。また、LTV単独では返済能力を判断できないため、DSCR(債務返済倍率)と併せて評価することが重要です。
流動性
流動性とは、資産を「現金に変えやすいかどうか」を表す指標です。流動性が高い資産は、短時間で簡単に売買でき、現金化しやすいという特徴があります。例えば、上場株式や国債は市場で取引量が多く、いつでも売買できるため、流動性が高い資産とされています。 一方、不動産や未上場株式のように、売買相手を見つけるのが難しかったり、取引に時間がかかったりする資産は、流動性が低いといえます。 投資をする際には、自分が必要なときに資金を取り出せるかを考えることが重要です。特に初心者は、流動性が高い資産を選ぶことで、急な資金需要にも対応しやすく、リスクを抑えることができます。
元本
元本とは、投資や預金を始めるときに最初に出すお金、つまり「もともとのお金」のことを指します。たとえば、投資信託に10万円を入れた場合、その10万円が元本になります。 運用によって利益が出れば、元本に運用益が加わって資産は増えますが、損失が出れば元本を下回る「元本割れ」の状態になることもあります。 元本が保証されている商品(例:定期預金、個人向け国債など)もありますが、多くの投資商品では元本保証がないため、どれくらいのリスクを取るかを理解しておくことが大切です。
ポートフォリオ
ポートフォリオとは、資産運用における投資対象の組み合わせを指します。分散投資を目的として、株式、債券、不動産、オルタナティブ資産などの異なる資産クラスを適切な比率で構成します。投資家のリスク許容度や目標に応じてポートフォリオを設計し、リスクとリターンのバランスを最適化します。また、運用期間中に市場状況が変化した場合には、リバランスを通じて当初の配分比率を維持します。ポートフォリオ管理は、リスク管理の重要な手法です。
運用利回り
運用利回りとは、投資したお金がどれくらいの利益を生み出しているかを示す指標で、投資成果を年単位の割合(パーセント)で表したものです。たとえば、100万円を1年間運用して5万円の利益が出た場合、運用利回りは5%になります。利回りには「表面利回り」「実質利回り」などいくつかの種類がありますが、いずれも投資判断の基準として重要な役割を果たします。 運用利回りは高いほど利益が大きいことを意味しますが、その分リスクも高くなる可能性があります。資産運用を行う際は、自分のリスク許容度や運用期間に合った利回りを目指すことが大切です。特に長期投資では、利回りの違いが将来の資産額に大きな影響を与えるため、よく理解しておくべき基本的な概念です。
総合課税
総合課税は、給与や年金、事業収入、不動産収入、利子、配当など、1年間に得たさまざまな所得を合算し、その合計額に累進税率を適用して所得税を計算する方式です。 所得が増えるほど税率が高くなるため、高所得者ほど税負担が大きくなる点が特徴です。一方、金融所得には総合課税以外の課税方法を選択できる場合があります。 たとえば、株式譲渡益や先物取引益などは「申告分離課税」を選ぶことで、ほかの所得と区分して一律20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)で申告できます。 また、預貯金利息や一部の公社債利子などは、支払元が税金を源泉徴収する「源泉分離課税」となり、原則として確定申告は不要です。配当や利子のように課税方式を選択できるケースでは、ご自身の所得水準や控除の有無、損益通算の可能性を踏まえ、総合課税・申告分離課税・源泉分離課税のどれを採用するかを検討することが、最終的な税負担を抑えるうえで重要になります。
雑所得
雑所得(ざつしょとく)とは、所得税法において定められた10種類の所得のうち、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得を指します。具体的には、公的年金や副業による収入、仮想通貨の売却益、FXの利益、非営業用貸金の利子などが該当します。 経費を差し引いた金額が課税対象となり、総合課税の対象となります。また、雑所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要になります。
損益通算
投資で発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる利益を減らす仕組みのことです。たとえば、株式投資で50万円の利益が出た一方、別の取引で30万円の損失が発生した場合、損益通算を行うことで、課税対象となる利益は50万円から30万円を引いた20万円になります。この仕組みにより、納める税金を減らすことが可能です。 損益通算が適用されるのは、同じ「所得区分」の中でのみです。たとえば、株式や投資信託の譲渡損益や配当金などは「株式等の譲渡所得等」に分類され、この範囲内で損益通算が可能です。ただし、不動産所得や給与所得など、異なる所得区分間では基本的に通算できません。 さらに、株式投資の損失は、損益通算後も控除しきれない場合、翌年以降最長3年間繰り越して他の利益と相殺できます。これを「繰越控除」と呼び、投資初心者にとっても節税に役立つ重要なポイントです。
源泉徴収課税
源泉徴収課税とは、所得を支払う側が、受け取る側にお金を渡す前にあらかじめ税金を差し引き、そのまま国に納める仕組みです。たとえば、会社が従業員に給料を支払う際や、銀行が預金の利息を払う際、証券会社が株の配当金を支払う際などに、この方法が使われます。受け取る人が自分で税金を納める手間を省くことができ、税務署側も確実に税金を回収できるというメリットがあります。 たとえば株の配当金では、20.315%(所得税+住民税)の税金が自動的に差し引かれてから口座に振り込まれます。これが「源泉徴収」です。金融商品によっては、これで納税が完了することもありますが、必ずしもすべてが「申告不要」になるわけではありません。制度や状況によっては、確定申告を行うことで税金が還付されたり、他の損失と通算して税負担を軽くできる場合もあります。 たとえば、上場株の配当は「申告不要制度」を使えば税金の手続きが完了しますが、もし同じ年に株を売って損が出ていたら、配当と損失を合算して税金を減らすことができます。そのためには、確定申告が必要です。また、外国株の配当などは海外と日本の両方で課税されるため、日本で申告して「外国税額控除」を受けたほうが有利なケースもあります。 このように、源泉徴収課税は便利な仕組みではありますが、「それだけで完結するのか」「申告すれば有利になるのか」を理解しておくことが大切です。手元に入ってきたお金がすでに税引後だからといって、税金の対応がすべて終わっているとは限らない点に注意しましょう。
申告分離課税
申告分離課税とは、特定の所得について他の所得と分離して税額を計算し、確定申告を通じて納税する方式です。 主な対象となる所得は以下の通りです: - 譲渡所得: 土地や建物、株式などの譲渡による所得。 - 山林所得: 山林の伐採や譲渡による所得。 - 先物取引による所得: FXや商品先物取引による所得。 例えば、株式の譲渡所得については、他の所得と合算せずに分離して課税されます。また、上場株式等の配当所得についても、申告分離課税を選択することができます。
第2種金融商品取引業
第2種金融商品取引業とは、金融商品取引法に基づく金融商品取引業の区分の一つで、主に未公開ファンド(私募ファンド)や信託受益権、集団投資スキーム持分などの、やや専門性の高い金融商品を扱う業者を指します。第1種金融商品取引業が株式や公社債といった一般的な有価証券を取り扱うのに対し、第2種はより限定された市場向けの商品を扱うことが特徴です。 この業務を行うには、金融庁や財務局への登録が義務づけられており、適切な情報開示、商品説明、リスクの通知、顧客との契約管理など、一定のルールに則って運営する必要があります。第2種の商品は複雑でリスクも高めであるため、金融庁は販売方法や対象顧客の適格性についても特に厳しく監督しています。 個人投資家にとっては馴染みが薄い場合もありますが、高利回りをうたう商品や限定販売型の金融商品などでこの業種の関与がある場合は、業者が第2種の登録を持っているかを確認することが、リスク管理の第一歩になります。
行政処分
行政処分とは、法律や規則に違反した企業や個人に対して、国や自治体などの行政機関が行う公式な対応措置のことをいいます。資産運用の世界では、金融商品取引業者や投資運用会社、証券会社などが違法な勧誘行為をしたり、不正な取引を行ったりした場合に、金融庁などから行政処分を受けることがあります。 処分の内容には、業務の一部または全部の停止、業務改善命令、登録取り消しなどがあります。これらの処分は、金融市場の公正性と投資家保護を保つために行われます。投資初心者にとっては、どの業者が過去に行政処分を受けているかを調べることで、安全で信頼できる運用先を見極める手がかりになります。
金融商品取引法
金融商品取引法(FIEA:Financial Instruments and Exchange Act)は、日本の証券市場や金融商品の取引を規制し、投資家を保護するための法律です。2007年に「証券取引法」から改正・統合され、金融市場全体の健全性を確保する役割を担っています。 この法律は、株式、債券、投資信託、デリバティブ(先物・オプション取引)、暗号資産関連商品など、幅広い金融商品を対象としています。投資家保護の観点から、虚偽表示や詐欺的な勧誘を禁止し、投資家の知識や経験に応じた適切な商品を提供することが義務付けられています。また、市場の透明性を確保するため、金融機関や証券会社に対して取引情報の適切な開示を求め、公正な市場運営を実現しています。さらに、未公開の重要情報を利用したインサイダー取引や市場操作を禁止し、市場の公平性を維持することも重要な目的の一つです。 この法律によって、投資家が安心して金融市場に参加できる環境が整備されています。しかし、投資を行う際には規制の内容を理解し、適切な取引を行うことが求められます。
新NISA
新NISAとは、2024年からスタートした日本の新しい少額投資非課税制度のことで、従来のNISA制度を見直して、より長期的で柔軟な資産形成を支援する目的で導入されました。この制度では、投資で得られた利益(配当や売却益)が一定の条件のもとで非課税になるため、税負担を気にせずに投資ができます。新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠が用意されており、年間の投資可能額や総額の上限も大幅に引き上げられました。 また、非課税期間が無期限となったことで、より長期的な運用が可能となっています。投資初心者にも利用しやすい仕組みとなっており、老後資金や将来の資産形成の手段として注目されています。
流動比率
流動比率とは、企業が短期的な支払い義務(1年以内に支払う必要がある負債)にどの程度対応できるかを示す財務指標の一つです。具体的には、「流動資産(現金や売掛金、在庫など)」を「流動負債(買掛金や短期借入金など)」で割って算出され、数値が高いほど短期的な資金繰りに余裕があると判断されます。 たとえば、流動比率が200%であれば、1年以内に返済が必要な負債に対して、その2倍にあたる資産を持っていることを意味します。この指標は、企業の短期的な安全性や財務健全性を評価するうえで広く使われており、特に銀行や取引先が企業の信用力を判断する際の参考になります。 ただし、流動資産にはすぐに現金化しにくい在庫なども含まれるため、より慎重に評価したい場合には「当座比率」など、さらに厳しい基準の指標が使われることもあります。流動比率は、財務の健全性を図るうえでの「第一歩」として、基本中の基本ともいえる指標です。
自己資本比率
自己資本比率とは、会社が持っている全体の資産のうち、どれだけが借金ではなく自分自身の資本(=自己資本)でまかなわれているかを示す割合のことです。 この比率が高いほど、会社は外部からの借入れに頼らずに経営していることになり、財務的に安定していると判断されやすくなります。たとえば、自己資本比率が50%であれば、会社の資産の半分が自己資本、残り半分が借入金などの他人資本ということになります。 投資家にとっては、自己資本比率が高い企業ほど経営の安定性が高く、倒産のリスクが低いと考えられるため、企業の健全性を見極めるうえで重要な指標のひとつです。特に長期投資を考える際には、注目しておきたい数字です。
REIT(Real Estate Investment Trust/不動産投資信託)
REIT(Real Estate Investment Trust/不動産投資信託)とは、多くの投資家から集めた資金を使って、オフィスビルや商業施設、マンション、物流施設などの不動産に投資し、そこで得られた賃貸収入や売却益を分配する金融商品です。 REITは証券取引所に上場されており、株式と同じように市場で売買できます。そのため、通常の不動産投資と比べて流動性が高く、少額から手軽に不動産投資を始められるのが大きな特徴です。 投資家は、REITを通じて間接的にさまざまな不動産の「オーナー」となり、不動産運用のプロによる安定した収益(インカムゲイン)を得ることができます。しかも、実物の不動産を所有するわけではないので、物件の管理や修繕といった手間がかからない点も魅力です。また、複数の物件に分散投資しているため、リスクを抑えながら収益を狙える点も人気の理由です。 一方で、REITの価格は、不動産市況や金利の動向、経済環境の変化などの影響を受けます。特に金利が上昇すると、REITの価格が下がる傾向があるため、市場環境を定期的にチェックしながら投資判断を行うことが重要です。 REITは、安定した収益を重視する人や、実物資産への投資に関心があるものの手間やコストを抑えたい人にとって、有力な選択肢となる資産運用手段の一つです。
インデックス投資(指数投資)
インデックス投資(指数投資)とは、特定の株価指数(インデックス)と同じ動きを目指して投資する方法のことを指します。たとえば、日経平均株価やS&P500といった市場全体の動きを示す指数に連動するように、同じ銘柄を同じ比率で組み入れることで、指数全体の成績を再現しようとする投資手法です。個別の銘柄を選ぶのではなく、幅広い銘柄に分散して投資するため、リスクが抑えられやすく、長期的な資産形成に向いているとされています。運用コストも比較的低く、初心者にも始めやすいのが特徴です。近年では、ETFやインデックスファンドを通じて指数投資を行う投資家が増えており、資産運用の基本的な選択肢の一つとなっています。