確定拠出年金と退職金制度の違いについて教えてください。
確定拠出年金と退職金制度の違いについて教えてください。
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2025/10/22 09:04
男性
30代
確定拠出年金と退職金制度の違いがよくわかりません。どちらも老後資金を準備する制度だと思いますが、仕組みやお金の出どころ、運用方法、受け取り方などにどんな違いがあるのでしょうか。会社員として働く中で、自分の勤め先がどちらの制度を採用しているかによって将来の資産形成に影響するのかも気になります。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
確定拠出年金と退職金制度はどちらも老後資金を準備する仕組みですが、最大の違いは「誰が運用責任を負うか」にあります。
確定拠出年金は、会社や本人が積み立てたお金を自分(従業員)で運用し、その成果によって将来の受け取り額が変わる制度です。一方の退職金制度は、会社が原資を準備しており、従業員は勤続年数や退職理由などに応じて決まった金額を受け取ります。
確定拠出年金では、拠出金が従業員名義の口座に積み立てられ、投資信託や定期預金など自ら運用先を選びます。運用益は非課税で複利効果を得やすい反面、運用の結果によっては元本割れのリスクがあります。資産は信託分離されており、会社が倒産しても守られるのが特徴です。また、転職時には新しい企業型DCやiDeCoへ資産を移すことができます。
退職金制度は、従業員に運用の裁量がなく、退職時に会社から一時金が支払われます。支給額は会社の規程により決まり、自己都合退職などでは減額されることもあります。企業年金のうち「確定給付型(DB)」では将来の支給額があらかじめ決められていますが、運用が不足した場合は会社が補填する必要があり、会社の財務状況に左右されやすい仕組みです。
確定拠出年金は、運用状況を定期的に確認でき、目標に合わせた資産配分を自分で調整できます。退職金制度は見えにくい部分が多く、支給テーブルに基づく計算でしか金額を把握できません。また、転職すると精算され、持ち運びはできません。
なお、どちらが有利かは一概に言えません。確定拠出年金は自分で運用を管理したい人に向き、退職金制度は会社に任せたい人に向いています。自分の会社がどの制度を採用しているかをまず確認し、不足する部分はiDeCoや新NISAなどの個人積立で補うことが重要です。退職時には受け取り方によって税負担が変わるため、控除を最大限活かす設計を事前に考えると良いでしょう。
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確定拠出年金(DC)
確定拠出年金(DC)は、毎月いくら掛金を拠出するかをあらかじめ決め、その掛金を自分で運用して増やし、将来の受取額が運用成績によって変わる年金制度です。会社が導入する企業型と、自分で加入する個人型(iDeCo)の二つがあり、掛金は所得控除の対象になるため節税効果があります。 運用対象は投資信託や定期預金などから選べ、運用益も非課税で再投資される仕組みです。60歳以降に年金や一時金として受け取れますが、途中で自由に引き出せない点に注意が必要です。老後資金を自ら準備し、運用の成果を自分の年金額として受け取る「自助努力型」の代表的な制度となっています。
確定給付企業年金 (DB)
確定給付型企業年金(DB)とは、企業が従業員の退職後に受け取る年金額を保証する企業年金制度です。あらかじめ決められた給付額が支払われるため、従業員にとっては将来の見通しが立てやすいのが特徴です。DBには規約型と基金型の2種類があります。規約型は、企業が生命保険会社や信託銀行などの受託機関と契約し、受託機関が年金資産の管理や給付を行う仕組みです。基金型は、企業が企業年金基金を設立し、その基金が資産を運用し、従業員に年金を給付する仕組みです。確定拠出年金(DC)との大きな違いは、DBでは企業が運用リスクを負担する点であり、運用成績にかかわらず従業員は決まった額の年金を受け取ることができます。一方、DCでは従業員自身が運用を行い、将来受け取る年金額は運用成績によって変動します。DBのメリットとして、従業員は退職後の給付額が確定しているため安心感があることが挙げられます。また、企業にとっては従業員の定着率向上につながる点も利点となります。しかし、企業側には年金資産の運用成績が悪化した場合に追加の負担が発生するリスクがあるため、財務的な影響を考慮する必要があります。
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iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。
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複利効果とは、投資で得られた利益を元本に組み入れて再び運用することにより、利益が利益を生むという仕組みのことを指します。たとえば、最初に100万円を年利5%で運用した場合、1年後には105万円になりますが、その翌年は105万円に対して5%の利息がつくため、さらに増えた金額に利息が上乗せされていきます。このように、運用期間が長くなるほど利益が加速度的に増えていくのが複利効果の特徴です。特に配当再投資や自動積立投資との組み合わせによって、この効果はより強く現れます。短期間では実感しにくいかもしれませんが、10年、20年といった長期で見ると、元本だけで運用する単利に比べて、はるかに大きな資産形成が可能になります。複利効果は「時間を味方につける」資産運用の基本的な考え方として、投資初心者にとっても非常に重要です。
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新NISAとは、2024年からスタートした日本の新しい少額投資非課税制度のことで、従来のNISA制度を見直して、より長期的で柔軟な資産形成を支援する目的で導入されました。この制度では、投資で得られた利益(配当や売却益)が一定の条件のもとで非課税になるため、税負担を気にせずに投資ができます。新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠が用意されており、年間の投資可能額や総額の上限も大幅に引き上げられました。 また、非課税期間が無期限となったことで、より長期的な運用が可能となっています。投資初心者にも利用しやすい仕組みとなっており、老後資金や将来の資産形成の手段として注目されています。
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信託分離とは、投資信託などの金融商品において、投資家から預かった資産を、販売会社や運用会社、管理会社といった金融機関の自己資産とは完全に区別して管理する仕組みのことです。この制度は、仮に金融機関のどこかが経営破綻しても、投資家の資産が失われたり、債権者に取り上げられたりしないようにするための重要なルールです。 信託銀行が投資家の資産を信託財産として厳格に管理・保管することで、投資家の財産の安全性を確保します。これにより、投資家は安心して資産運用を行うことができます。
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