年金の手取り額を増やす方法があれば、教えてください。
年金の手取り額を増やす方法があれば、教えてください。
回答受付中
0
2025/10/22 09:04
男性
60代
年金の手取り額を少しでも増やす方法を知りたいです。将来の生活資金に不安があり、できる限り受け取れる金額を多くしたいと思っています。年金の受け取り開始時期を遅らせると増えると聞いたことがありますが、具体的にどれくらい差が出るのかや、節税や社会保険料の面で工夫できる方法なども知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
年金の手取りを増やすには、年金額そのものを増やす方法と、同じ額面でも税や保険料を抑えて実際に残るお金を増やす方法の両面から考えることが重要です。最も効果的なのは、受給開始を遅らせて年金額を増やすこと、控除を活用して課税所得を減らすこと、社会保険料の階層を意識した受け取り方を設計することです。
まず、年金の受け取りを65歳から遅らせる「繰下げ受給」は、1か月ごとに0.7%増え、75歳まで遅らせると最大で84%増額されます。たとえば65歳時点の見込み額が年150万円なら、70歳開始で約213万円、75歳なら約276万円になります。長生きするほど有利ですが、増額された分は税金や社会保険料の負担も増えるため、控除の活用と併せて考える必要があります。
次に、確定申告で利用できる控除を最大限に活用することです。年金受給者には自動的に公的年金等控除が適用されますが、それに加えて医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、寄附金控除などは申告しないと反映されません。特にふるさと納税や医療費控除を適切に申告することで、所得税と住民税の負担を減らし、手取りを増やすことができます。また、配偶者控除や扶養控除を満たすように所得を調整することも有効です。
さらに、年金額が同じでも、翌年の介護保険料や後期高齢者医療保険料が上がると手取りが減るため、所得の平準化が大切です。大きな一時所得や退職金などは複数年に分けて受け取る、配当や譲渡益の課税方法を選択するなどして、保険料階層が上がらないよう調整しましょう。
また、企業年金やiDeCoの受け取り方も重要です。一時金として受け取る場合は退職所得控除が使え、税負担を大きく抑えられます。一方、年金として受け取ると公的年金等控除が適用されます。退職金と年金を組み合わせて受け取ることで、課税所得を分散させ、トータルの手取りを増やすことが可能です。
加えて、加給年金や振替加算、付加年金、任意加入制度など、受け取れる年金を見落とさないことも大切です。たとえば付加年金は月400円の追加で、将来毎年200円×加入月数分が上乗せされ、約2年で元が取れる仕組みです。60歳以降も任意加入して保険料を納めれば、基礎年金を増やすこともできます。
最後に、働きながら年金を受け取る人は、在職老齢年金の減額基準を意識しましょう。報酬と年金の合計が一定額を超えると年金が減額されますが、働き方や受給時期を調整すれば減額を避けることができます。
このように、繰下げによる増額、控除の最大化、所得の平準化、受け取り方の工夫、制度の取りこぼし防止を組み合わせることで、年金の手取りは確実に増やせます。特に、課税や保険料は年単位で影響するため、受給時期や金額を数年先まで見通して設計することが、実際に手元に残るお金を最大化する鍵です。
関連記事
関連する専門用語
繰下げ受給
繰下げ受給とは、本来65歳から支給される公的年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金など)の受け取り開始を自分の希望で後ろ倒しにする制度です。66歳以降、最大75歳まで1か月単位で繰り下げることができ、遅らせた月数に応じて年金額が恒久的に増えます。 増額率は1か月当たり0.7%で、10年(120か月)繰り下げた場合にはおよそ84%の上乗せとなるため、長生きするほどトータルの受取額が増えやすい仕組みです。ただし、繰下げた期間中は年金を受け取れないため、その間の生活資金や健康状態、就労収入の見通しを踏まえて慎重に検討することが大切です。
公的年金等控除
公的年金等控除とは、年金を受け取っている人の所得税や住民税を計算する際に、年金収入から一定額を差し引ける控除制度です。これにより課税対象となる金額が減り、税負担を軽減できます。 対象となるのは、国民年金・厚生年金・共済年金などの「公的年金」に限られます。これらは所得税法上の「公的年金等」に分類され、控除の対象となります。 一方で、iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC、個人年金保険などは、たとえ年金形式で受け取ったとしても税法上は「公的年金等」に該当せず、公的年金等控除の対象外です。これらは「雑所得(その他)」として課税されます。 控除額は受給者の年齢と年金収入の額に応じて異なり、特に65歳以上の高齢者には手厚い控除が設けられています。 | 年齢 | 公的年金等の収入額 | 控除額 | | --- | --- | --- | | 65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 | | | 130万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 37.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 78.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | | 65歳以上 | 330万円以下 | 110万円 | | | 330万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 27.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 68.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | たとえば、65歳以上で年金収入が250万円であれば、110万円の控除が適用され、課税対象となる所得は140万円に圧縮されます。
医療費控除
医療費控除とは、納税者が1年間に支払った医療費の一部を所得から控除できる税制上の制度を指す。自己や家族のために支払った医療費が一定額を超える場合に適用され、所得税や住民税の負担を軽減できる。対象となる費用には、病院での診療費や処方薬の費用のほか、一定の条件を満たす介護費用なども含まれる。確定申告が必要であり、領収書の保管が重要となる。
退職所得控除
退職所得控除とは、退職金を受け取る際に税金を軽くしてくれる制度です。長く働いた人ほど、退職金のうち税金がかからない金額が大きくなり、結果として納める税金が少なくなります。この制度は、長年の勤続に対する国からの優遇措置として設けられています。 控除額は勤続年数によって決まり、たとえば勤続年数が20年以下の場合は1年あたり40万円、20年を超える部分については1年あたり70万円が控除されます。最低でも80万円は控除される仕組みです。たとえば、30年間勤めた場合、最初の20年で800万円(20年×40万円)、残りの10年で700万円(10年×70万円)、合計で1,500万円が控除されます。この金額以下の退職金であれば、原則として税金がかかりません。 さらに、退職所得控除を差し引いた後の金額についても、全額が課税対象になるわけではありません。実際には、その半分の金額が所得とみなされて、そこに所得税や住民税がかかるため、税負担がさらに抑えられる仕組みになっています。 ただし、この退職所得控除の制度は、将来的に変更される可能性もあります。税制は社会情勢や政策の方向性に応じて見直されることがあるため、現在の内容が今後も続くとは限りません。退職金の受け取り方や老後の資産設計を考える際には、最新の制度を確認することが大切です。
付加年金
付加年金とは、国民年金に加入している人が、定額の保険料(月額400円)を上乗せして納めることで、将来の年金額を増やせる制度です。自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者が対象で、支払った付加保険料に応じて、老齢基礎年金に上乗せして受け取ることができます。 受け取り額は、付加保険料を納めた月数に200円をかけた金額が年金に加算される仕組みで、長生きするほどお得になるとされています。特に、iDeCoなどの他の自助努力型制度と併用することで、老後の年金対策に柔軟性を持たせることができます。資産運用の観点からは、少ない負担で将来の収入を増やす手段として、非常に効率的な選択肢の一つです。
在職老齢年金
在職老齢年金(ざいしょくろうれいねんきん)とは、年金を受け取りながら働く人の年金額を、賃金とのバランスをとるために一時的に減額または支給停止する制度です。高齢期の就労を促進しつつ、年金財政の公平性を保つことを目的としています。 対象となるのは、老齢厚生年金の受給権があり、厚生年金保険の適用事業所で報酬を受け取っている人です。具体的には、60歳以上で老齢厚生年金を受け取っている人が勤務を続けている場合に適用されます。70歳を超えると厚生年金保険料の支払い義務はなくなりますが、報酬を得ている限り、この在職老齢年金の支給停止の仕組みは引き続き適用されます。 支給停止の判定は、年金(月額)と給与・賞与の合計額が一定の基準を超えるかどうかで行われます。年金の支給額を算定する際に用いられる「基本月額」と、給与や賞与から算出される「総報酬月額相当額」を合計し、基準額(支給停止調整開始額)を上回る場合、超過分の2分の1が年金から差し引かれます。たとえば、年金10万円、給与50万円で合計60万円の場合、基準額51万円を9万円超えるため、その半分の4.5万円が支給停止となり、受け取れる年金は5.5万円になります。 基準額は制度改正により段階的に引き上げられています。2024年度までは47万円でしたが、2025年度(令和7年度)からは51万円に引き上げられました。さらに、2026年4月(令和8年4月)からは62万円に引き上げられる予定です。これにより、高齢になっても働き続ける人がより多くの年金を受け取れるようになります。 在職老齢年金には、60〜64歳を対象とする「低在老」と、65歳以上を対象とする「高在老」があります。60〜64歳の場合の基準額は28万円と低く設定されていますが、65歳以上は51万円(現行)と緩やかです。なお、雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けている場合などは、年金額が追加で調整されることもあります。 在職老齢年金は「働く高齢者の所得と年金の調整」という考え方に基づく仕組みであり、年金制度の公平性と持続可能性を保ちながら、就労意欲を支える制度として位置づけられています。今後も高齢者の就労促進と制度の簡素化を目的とした見直しが進む見通しです。






