「老後資金は必要ない」という意見は、何が根拠になっているのでしょうか?
「老後資金は必要ない」という意見は、何が根拠になっているのでしょうか?
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2025/10/30 09:14
男性
40代
老後資金は必ずしも用意しなくてよいという意見も耳にしますが、その根拠が具体的に何に基づくのか知りたいです。老後資金は2000万円程度必要という点も話題になりましたが、専門家の視点で教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
「老後資金は必ずしも用意しなくてよい」という意見は、特定の条件を満たす場合に限って成り立つ考え方です。たとえば、公的年金だけで生活費の大半を賄える世帯や、定年後も働いて収入を得られる人、持ち家で家賃がかからない世帯、退職金や企業年金が充実している人などが該当します。
また、自宅を売却したりリバースモーゲージを活用したりして、老後に資産を現金化できる場合も同様です。こうした条件がそろえば、生活費を年金などでカバーできるため、まとまった老後資金を事前に準備する必要が小さくなるという理屈です。
ただし、これは誰にでも当てはまる話ではありません。公的年金は現役時代の手取りの約5割を目安に設計されており、生活水準を維持するには多くの家庭で不足が生じます。さらに、インフレや医療費・介護費の上昇、長生きによる支出期間の延長といったリスクもあります。そのため、「老後資金をまったく準備しない」のは危険です。
「老後資金は不要」とされる主な根拠は、年金や退職金などの収入が十分で支出を上回ること、もしくは持ち家などの固定費が小さいことです。特に持ち家か賃貸かで必要な資産額は大きく違い、住居費がかからない世帯ほど老後資金の必要性は小さくなります。
また、リタイア後も仕事を続けることで年金以外の収入を得られれば、貯蓄を取り崩す速度を抑えられます。月に数万円でも継続的に収入があれば、生活の安定性は大きく変わります。
一方で、「準備不要論」には注意すべき落とし穴もあります。最大のリスクは長寿化とインフレ、そして介護費の増大です。平均寿命が延びる中で、想定より長く生活が続けば、資金は想定以上に必要になります。
さらに、近年のように物価上昇が続くと、固定的な年金や保険の実質価値が下がり、生活費の赤字が拡大する可能性があります。こうしたリスクを無視して資金準備を怠ると、将来の生活が不安定になる危険があります。
専門家の立場からは、まず自分の年金見込み額を「ねんきんネット」などで確認し、生活費との収支を試算することが出発点です。月々の支出と収入の差を算出し、その不足額に基づいて必要な貯蓄や運用額を見積もることが大切です。また、住宅費や医療・介護費などの固定費を整理し、インフレの影響を想定した上で資金計画を立てましょう。
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