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成年後見制度がひどいと言われる7つの理由とは?

成年後見制度がひどいと言われる7つの理由とは?仕組みや費用・手続きを徹底解説

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公開:

2025.10.07

更新:

2025.10.07

基礎知識

成年後見制度は、認知症や障害などで判断能力が低下した人の財産や権利を守るために設けられた公的制度です。しかし、その仕組みは厳格で、家族の希望どおりに後見人を選べなかったり、不動産売却に裁判所の許可が必要であったりと「思ったより使いにくい」と感じる声も少なくありません。

本記事では、制度の目的や種類、よくある7つのつまずき、さらに申立てから開始までの流れや費用(収入印紙約3,400円、鑑定10〜20万円、後見人報酬月2〜6万円)を解説します。加えて、2026年度に向けて議論が進む民法改正の動きも取り上げ、利用を検討する際に押さえるべきポイントを整理します。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読むと、成年後見制度の仕組みや「ひどい」と言われる7つの理由を体系的に理解できます。法定後見と任意後見の違い、さらには家族信託や日常生活自立支援事業との比較から、自分の状況に最適な制度を選ぶ視点が得られます。

申立てから開始までの目安期間(最短1〜2ヶ月、鑑定や親族対立があると3〜6ヶ月)や、申立費用(収入印紙約3,400円、鑑定料10〜20万円)、後見人報酬(月2〜6万円)の実態も具体的に把握できます。また、意思決定メモの作成や情報共有ルールの工夫といった実践的な準備方法も解説されており、制度利用の不安を和らげ、後悔しない判断につなげられます。

目次

成年後見制度とは?目的・種類・後見人の役割をわかりやすく解説

制度の目的:判断能力が不十分な方の「財産と権利」を守るため

2つの種類:「法定後見」と「任意後見」の基本的な違い

誰が関わる?家庭裁判所・後見人・本人の関係性

後見人にできること・できないことの境界線|財産管理から医療同意まで

なぜ成年後見制度は「ひどい」と言われる?よくある7つの理由と構造

理由1:家族の希望通りに後見人が選ばれない【専門職が就くことも】

理由2:一度選ばれた後見人の解任・変更は原則として困難

理由3:財産管理が厳格すぎる【不動産売却や贈与は家庭裁判所の許可が必要】

理由4:本人のための支出なのに「贅沢」と判断され、家族と対立しやすい

理由5:後見人への報酬が継続的に発生し、経済的負担になる

理由6:財産状況の報告が不十分で、家族にとって不透明に見える

理由7:一部の後見人による不正事件が、制度全体の悪いイメージに繋がっている

あなたはどっち?成年後見制度が本当に必要なケース・不要なケースを5つの軸で判定

法定後見が向くケース1:不動産売却や遺産分割協議など、強い代理権が必要な場合

法定後見が向くケース2:身寄りがない、または親族間で対立がある場合

代替策が向くケース:日常的なお金の管理や見守りが中心の場合

後悔しないための活用設計|家族で実践すべき3つのポイント

ポイント1:本人の希望を「意思決定メモ」として書面に残し、共有する

ポイント2:誰を後見人候補にするか?親族・専門職の役割分担を事前に決める

ポイント3:情報共有のルールを決める(月次報告などで不信感をなくす)

成年後見の申し立て手続きの流れと必要書類

Step1:必要書類の準備【診断書・財産目録が最重要】

Step2:家庭裁判所への申立書の作成と提出

Step3:家庭裁判所での審理・調査

Step4:後見開始の審判と就任後の手続き

どれくらいの期間がかかる?申立てから開始までの目安

成年後見制度以外の選択肢は?任意後見・家族信託との違いを比較

法定後見・任意後見・家族信託のどれを選ぶべきか

任意後見制度とは?:本人の意思を最も尊重できる

家族信託(民事信託)とは?:柔軟な財産管理に特化した選択肢

日常生活自立支援事業とは?:月数千円で頼れる社協のサービス

成年後見制度の費用はいくら?申立てから後見人報酬までの総額

申立てにかかる初期費用【収入印紙・鑑定料など】

制度利用中にかかる継続費用【後見人への報酬の相場は月2〜6万円】

費用の負担が難しい場合の助成制度

もし後見人とトラブルになったら?相談から解任までの正規ルート

まずは証拠を集めて記録する

家庭裁判所への相談と意見申出

最終手段としての後見人解任申立て

どう変わる?成年後見制度の最新動向と法改正のポイント

成年後見制度利用促進法とは?国の基本方針を解説

2026年度目標の民法改正で「使いやすさ」は改善されるか

成年後見制度とは?目的・種類・後見人の役割をわかりやすく解説

成年後見制度は、判断能力が十分でない方の財産や権利を守るための公的な仕組みです。民法および後見登記等に関する法律に基づき、主に家庭裁判所の手続きによって運用されます。この章では、制度の基本的な目的から主要な種類、そして成年後見人の役割まで、その全体像を解説します。

制度の目的:判断能力が不十分な方の「財産と権利」を守るため

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などが原因で判断能力が十分でない方を法的に保護し、支えるための制度です。家庭裁判所が選任した成年後見人などが本人に代わって財産管理や福祉サービスの利用契約などを行い、その方の権利と財産を守ることを目指します。

後見人は、預貯金の管理や不動産の処分、施設入所契約や療養上の手続きなどを、必要な範囲で支援します。なお、医療行為の包括的同意権は法定されていません。個別の同意の要否や手続は、医療機関の運用や個別の合意に左右され、地域差があります。

2つの種類:「法定後見」と「任意後見」の基本的な違い

成年後見制度は、利用するタイミングや後見人の選び方によって、大きく「法定後見」と「任意後見」の2種類に分けられます。法定後見は判断能力が低下した後に利用し、任意後見は将来に備えて事前に準備しておく制度で、それぞれ特徴が異なります。

項目法定後見制度任意後見制度
使う場面すでに判断能力が低下将来の低下に備える
開始条件家裁申立→選任審判公正証書契約→判断能力低下→任意後見監督人選任
後見人の決まり方家裁が選任(親族/専門職)本人が選ぶ(契約)。開始後は監督人の下で運用
権限代理権が広い(ただし許可対象あり)契約で定めた範囲。強制力は法定より弱め

法定後見制度:すでに判断能力が低下している方向けの3類型(後見・保佐・補助)

法定後見制度は、すでに本人の判断能力が低下している場合に、家庭裁判所が後見人などを選ぶ制度です。本人の判断能力の程度に応じて、「後見(常に判断能力を欠く状態)」「保佐(判断能力が著しく不十分)」「補助(判断能力が不十分)」の3段階に分かれています。類型ごとに後見人が持つ権限の範囲は異なり、後見の場合「包括的代理・取消が中心」、保佐の場合「重要な法律行為に同意権・取消権」、補助の場合「特定の行為に限って同意権等を付与」と定められています。

また、本人の居住用不動産を売却する際などは、家庭裁判所の許可が必要になる場合があります。

任意後見制度:将来に備え、元気なうちに自分で後見人を決めておく契約

任意後見制度は、将来の判断能力の低下に備え、本人が元気なうちに信頼できる人と支援内容を公正証書で契約しておく制度です。任意後見は、公正証書契約を結んでいても、本人の判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて効力が生じます。

判断能力が少し低下した段階での支援には、「見守り契約」や「財産管理委任契約」を併用する設計が一般的です。

任意後見制度については以下記事で詳しく解説しています。

誰が関わる?家庭裁判所・後見人・本人の関係性

法定後見では、親族を候補者とすることはできますが、最終的に誰を後見人に選任するかは家庭裁判所が判断します。最近は、適切な親族の選任が考慮される場面もありますが、最終判断は個別事情を踏まえて家庭裁判所が行います。ただし、財産規模が大きい場合や親族間に対立がある場合は、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれやすい状況に変わりはありません。

後見人にできること・できないことの境界線|財産管理から医療同意まで

後見人の主な役割は、財産の維持管理を行う「財産管理」と、生活や医療・介護の手続きを支援する「身上監護(しんじょうかんご)」です。権限の具体的な内容は、法定後見の類型によって異なります。

後見(判断能力を常に欠く方)の場合

本人が行った契約などの法律行為は、日用品の購入などを除き、後から取り消すことができます。後見人は本人の代理人として、包括的な代理権を持ちます。

保佐・補助(判断能力が不十分な方)の場合

本人が不動産の売却など法律で定められた重要な行為をするには、保佐人・補助人の同意が必要です。もし同意なく行われた場合、その行為を後から取り消すことができます。

なぜ成年後見制度は「ひどい」と言われる?よくある7つの理由と構造

成年後見制度は本人を守るための重要な仕組みですが、本人保護を最優先する設計ゆえに運用が厳格になりやすく、「使いにくい」と感じる声も聞かれます。本章は制度が抱える課題の把握を目的としており、次章以降で具体的な回避策や代替手段を解説します。

理由1:家族の希望通りに後見人が選ばれない【専門職が就くことも】

家族が後見人になることを希望しても、必ずしもその通りになるとは限りません。申立て時に候補者を立てることはできますが、最終的な選任権は家庭裁判所にあります。本人の財産規模が大きい場合や親族間に争いがある場合などは、中立的な第三者である弁護士などの専門職が選任されやすくなります。

近年は適切な親族がいれば選任が望ましいという実務傾向もあるため、候補者の適格性(健康状態、会計能力など)を申立書で具体的に示すことが重要です。

理由2:一度選ばれた後見人の解任・変更は原則として困難

この制度は、本人が亡くなるか、判断能力が回復するまで続くのが原則であり、途中での自己都合による終了は限定的です。「後見人との相性が悪い」といった理由だけで簡単に解任や変更はできません。解任には、後見人による不正行為など、明確な法的理由とそれを証明する手続きが必要です。

申立て前に後見人候補者と十分に話し合い、長期的な関わりが可能か慎重に見極める必要があります。

理由3:財産管理が厳格すぎる【不動産売却や贈与は家庭裁判所の許可が必要】

後見が始まると、本人の財産を守るために管理が非常に厳格になります。特に、本人の居住用不動産を売却する際は家庭裁判所の許可が必須です。また、子や孫への生前贈与や相続税対策目的の資産移転は、本人の直接の利益と評価されにくく、家庭裁判所の許可が得られないのが一般的です。

本人の生活費や医療費確保のためなど、財産処分に「本人の利益」に繋がる明確な必要性があることを、資料と共に家庭裁判所に説明することが鍵となります。

理由4:本人のための支出なのに「贅沢」と判断され、家族と対立しやすい

後見人は、本人の財産が不当に減らないよう、客観的に見て本人の利益を超える支出は認めにくい傾向があります。そのため、本人の過去の生活水準から大きくかけ離れた高価な買い物や旅行などは、たとえ家族が良かれと思っても許可されないことがあり、対立の原因となり得ます。

本人が元気なうちに希望する生活やお金の使い方を「意思メモ」として残しておき、後見人と支出方針について事前にすり合わせておくことが有効です。

理由5:後見人への報酬が継続的に発生し、経済的負担になる

弁護士などの専門職が後見人になると、本人が亡くなるまで報酬の支払いが発生します。報酬額は、家庭裁判所が本人の資産規模や後見業務の内容を考慮して決定し、目安は月額2〜6万円前後ですが、資産規模・事務量・地域の運用により変動します。この費用が長期にわたるため、経済的な負担は決して小さくありません。

申立て前に、後見が続く期間の報酬総額を試算し、本人の財産から継続的に支払いが可能かキャッシュフローを確認しておくことが重要です。

理由6:財産状況の報告が不十分で、家族にとって不透明に見える

後見人には家庭裁判所への定期的な報告義務はありますが、親族に対して報告することは法律上の義務ではありません。そのため、後見人とのコミュニケーションが不足すると、家族が「財産の状況が分からない」と不信感を抱くケースがあります。逆に、親族が後見人になった場合も、裁判所への煩雑な報告事務が大きな負担となります。

申立て時や後見開始後に、後見人と家族との間で情報共有のルール(報告の頻度や形式など)を文書で合意しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。

<月次報告テンプレ例>

  • 月末残高/当月入出金(内訳)
  • 特記事項(医療・介護・大口支出)
  • 翌月見込み支出
  • 領収書・明細の共有方法(クラウド/原本保管)

理由7:一部の後見人による不正事件が、制度全体の悪いイメージに繋がっている

数は少ないものの、後見人による財産の使い込みといった不正事件は実際に起きています。最高裁判所の統計(令和4年)によれば、この年の不正被害額が報告されており、制度への不信感を招く一因となっています。ただし、これは制度利用者全体から見ればごく一部であり、近年は不正防止策も強化されています。

<不正防止策の例>

  • 後見制度支援信託:多額資金を信託口座で管理し、払戻しに家裁関与を組み込む
  • 複数後見(共同):複数名でチェック機能を働かせる
  • 法人後見:法人の内部統制を活用する
  • 定期報告の強化:月次・四半期の収支報告を文書で共有

あなたはどっち?成年後見制度が本当に必要なケース・不要なケースを5つの軸で判定

成年後見制度にはメリット・デメリットがあり、すべての人にとって最適な選択とは限りません。ご自身の状況で法定後見が本当に必要か、それとも任意後見家族信託といった他の選択肢が適しているかを見極めるには、以下の5つの軸で判断するのが有効です。

  1. 強制力: 不動産登記など、対外的な法律行為を本人に代わって行う必要があるか。
  2. 緊急度: 支払いが滞るなど、すぐに対応が必要な状況か。
  3. 金額規模: 不動産や高額な預貯金、相続財産などが関わるか。
  4. 利害構造: 親族間に対立があるか、頼れる身寄りがいないか。
  5. 外部手続き: 金融機関の口座凍結解除など、法的な代理権が不可欠か。

法定後見が向くケース1:不動産売却や遺産分割協議など、強い代理権が必要な場合

本人の判断能力が低下すると、金融機関が口座を凍結したり、不動産の売買や遺産分割協議といった重要な法律行為が事実上できなくなります。このような場面では、後見人が本人に代わって法的な手続きを進める法定後見制度が有効です。例えば、介護費用を捻出するための自宅売却は典型例ですが、その際は家庭裁判所の許可を得た上で、売買契約から所有権移転登記まで後見人が進めます。

法定後見が向くケース2:身寄りがない、または親族間で対立がある場合

頼れる身寄りがいない方や、財産を巡って親族間の対立がある場合、家庭裁判所が選任した中立的な後見人(弁護士などの専門職、市民後見人、法人など)が財産を管理することで、トラブルを未然に防ぎます。後見人は家庭裁判所に定期的な収支報告を行う義務があり、公的な監督下で公平な財産管理が期待できます。必要に応じて、後見制度支援信託などを利用し、不正が起きにくい仕組みを構築することも可能です。

代替策が向くケース:日常的なお金の管理や見守りが中心の場合

不動産売却のような大きな法律行為は当面不要で、日常的な金銭管理や見守りが主な目的であれば、法定後見よりも柔軟な他の制度が適している場合があります。ただし、それぞれの制度には限界があるため、目的と合致するか慎重な検討が必要です。

  • 家族信託: 資産凍結の回避や柔軟な財産管理に有効ですが、介護契約の代理といった身上監護は行えません。
  • 任意後見: 事前契約で本人の意思を最も反映できますが、効力発生には家庭裁判所による監督人の選任が必要で、法定後見ほどの強制力はありません。
  • 日常生活自立支援事業: 社会福祉協議会によるサービスで、生活費の出し入れなど比較的少額の金銭管理に向いています。

後悔しないための活用設計|家族で実践すべき3つのポイント

成年後見制度を円滑に利用し、後のトラブルを防ぐには、申立て前の準備が何よりも重要です。この章では、「いつ(報告頻度など)」「誰が(後見人候補など)」「何を(支出方針など)」を事前に合意し、文書化するための3つのポイントを解説します。最終的に以下の3つの文書を作成することが目標です。

  1. 意思決定メモ(本人の希望の記録)
  2. 役割分担の合意書(後見人候補と親族の役割)
  3. 情報共有のルール(報告の頻度や形式)

相続に関する相談をするべき専門家については以下記事で詳しく解説しています。

ポイント1:本人の希望を「意思決定メモ」として書面に残し、共有する

まず、本人が元気なうちに、希望する生活やお金の使い方を具体的に聞き取り、日付と署名入りの書面に残しましょう。このメモが、後見人が判断に迷った際の重要な指針となります。

<意思決定メモの記載推奨項目>

  • 支出の方針: 生活費、医療費、交際費などの目安。
  • 住まいの方針: 在宅介護と施設入所の希望や条件。
  • 医療・介護の方針: 延命治療に関する希望など(※後見人に医療行為の包括的な同意権はないため、あくまで本人の意思表明として重要です)。
  • 財産の方針: 不動産の処分や金融資産の運用に関する希望。

ポイント2:誰を後見人候補にするか?親族・専門職の役割分担を事前に決める

申立て前に必ず親族間で話し合い、誰が後見人候補として最も適任か、客観的な視点で評価し合意することが重要です。必要であれば、身上監護は親族が、複雑な財産管理や裁判所手続きは専門職が担うといった役割分担も検討しましょう。

<後見人候補の評価項目>

  • 健康状態、年齢、居住地
  • 会計や事務処理の能力
  • 本人との信頼関係、利害相反の有無
  • 不正を防ぐ姿勢(複数人でのチェック体制など)

ポイント3:情報共有のルールを決める(月次報告などで不信感をなくす)

後見人には家庭裁判所への定期報告(法定義務)がありますが、親族への報告は義務ではありません。だからこそ、後の不信感を防ぐために、情報共有の具体的なルールを事前に文書で合意しておくことが極めて重要です。

<情報共有ルールの設定例>

  • 報告対象者: 誰に報告するか(例:子全員など)。
  • 報告頻度: 月次、四半期ごとなど。
  • 報告形式: 月次レポート(月末残高、収支概要)、領収書の共有方法など。
  • 事前相談の基準: 〇万円以上の支出や契約の際は、事前に親族へ相談する。

成年後見の申し立て手続きの流れと必要書類

成年後見の申立ては、多くの書類準備が必要で、家庭裁判所での手続きも複雑です。申立てができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族などで、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。この章では、申立てから後見が開始されるまでの流れを4ステップに分け、各段階の注意点を解説します。

Step1:必要書類の準備【診断書・財産目録が最重要】

まず、申立てに必要な書類一式を収集・作成します。裁判所のウェブサイトなどで最新のリストを確認しましょう。

<主な必要書類と費用の目安>

  • 書類: 申立書、親族関係図、本人・候補者の戸籍謄本や住民票、財産目録と裏付け資料(預金通帳の写し、不動産登記事項証明書など)、収支状況報告書、医師の診断書(裁判所指定の様式)など。
  • 費用: 収入印紙(約3,400円)、郵便切手(数千円)、診断書作成料(数千円)。

特に注意が必要なのが「鑑定」です。これは、診断書だけでは判断が難しい場合に、裁判所が選任した医師が行うもので、費用は10〜20万円前後、期間は数週間〜数ヶ月が目安です。

※必要書類や費用は裁判所ごとに異なる場合があるため、必ず管轄の家庭裁判所に事前確認してください。

Step2:家庭裁判所への申立書の作成と提出

書類一式が揃ったら、申立書を作成し、管轄の家庭裁判所に提出(持参または郵送)します。審理を円滑に進めるため、申立書には候補者を希望する理由や、他の親族の同意状況などを具体的に記載すると良いでしょう。手続きが複雑で不安な場合は、弁護士や司法書士に依頼することも可能です(費用目安:10〜20万円前後)。

Step3:家庭裁判所での審理・調査

申立てが受理されると、家庭裁判所の調査官が申立人や後見人候補者と面談し、本人の生活状況や親族関係などを調査します。他の親族に書面で意向が確認されることもあり、もし反対意見が出た場合は、審理に時間を要することがあります。

保全処分(緊急時の一時的対応)

急な入院費支払い等、審判確定前に緊急の財産管理が必要な場合は、保全処分で一時的管理者の選任を求められます。必要資料(診断書、請求書、残高資料等)を添えて申立てます。

Step4:後見開始の審判と就任後の手続き

すべての調査が終わると、家庭裁判所が後見を開始するか、どの類型(後見/保佐/補助)にするかなどを決定(審判)します。審判が確定すると内容は法務局で登記され、「登記事項証明書」を取得できるようになります。この証明書を使って、銀行や役所での名義変更など、後見人としての具体的な職務を開始します。

どれくらいの期間がかかる?申立てから開始までの目安

申立てから審判までの期間は、事案によって大きく異なります。

  • スムーズな場合(鑑定なし・親族の同意あり): 約1〜2ヶ月
  • 時間がかかる場合(鑑定あり・親族の対立あり): 約3〜6ヶ月、またはそれ以上

書類の不備をなくし、事前に親族の意見をまとめておくことが、手続きを遅らせないためのポイントです。

成年後見制度以外の選択肢は?任意後見・家族信託との違いを比較

法定後見は強力な反面、制約も多いため、状況によっては他の制度が適している場合があります。この章では、代表的な代替策を強制力、柔軟性、費用、監督などの軸で比較し、ご自身の目的に合った制度を選ぶための判断材料を提供します。

法定後見・任意後見・家族信託のどれを選ぶべきか

3つの制度はそれぞれに一長一短があります。以下の比較表と選び方のフローを参考に、ご自身の目的に最も合った制度をご検討ください。

項目法定後見任意後見家族信託
強制力
柔軟性
監督家庭裁判所家庭裁判所(監督人必須)任意(監督人を推奨)
対象範囲法律行為全般契約で定めた範囲信託財産のみ(身上監護なし)
費用目安監督等の実費・報酬あり監督人報酬あり契約・登記・監督人等の費用
向く場面不動産売却・遺産分割本人の意思を反映したい資産凍結回避・柔軟な承継

<選び方のフロー>

  • 不動産売却や相続手続きが急務法定後見
  • 事前に本人の意思を反映したい任意後見
  • 資産凍結を回避し、柔軟に管理・承継したい家族信託
  • 日常の金銭管理の補助だけで十分日常生活自立支援事業

任意後見制度、法定後見制度、家族信託それぞれの特徴は以下Q&Aでも説明しています。

任意後見制度とは?:本人の意思を最も尊重できる

任意後見制度は、本人が元気なうちに、将来判断能力が低下した際に備えて、自ら後見人を選び、支援内容を公正証書で契約しておく制度です。誰に何を任せるかを本人の意思で決められる点が最大の利点と言えます。

ただし注意点として、契約を結んでも、実際に本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任して初めて効力が生じます。監督人には継続的な報酬が発生するほか、法定後見ほどの法的な強制力はありません。軽度の判断能力低下の段階では、「見守り契約」などを併用するとより安心です。

家族信託(民事信託)とは?:柔軟な財産管理に特化した選択肢

家族信託とは、自分の財産を信頼できる家族に託し、契約で定めた目的に従って管理・処分してもらう仕組みです。受託者である家族の名義で財産を管理するため、本人の判断能力が低下しても資産凍結のリスクを下げられるのが大きな長所です。

その一方で、効果が及ぶのは契約で定めた信託財産のみです。また、あくまで財産管理の制度であり、介護契約の代理といった「身上監護」は行えません。受託者には帳簿作成などの重い注意義務があり、不正を防ぐために信託監督人を置くことも推奨されます。

家族信託について詳しくは以下記事で詳しく解説しています。

日常生活自立支援事業とは?:月数千円で頼れる社協のサービス

日常生活自立支援事業とは、各地域の社会福祉協議会が主体となって提供する福祉サービスです。判断能力が少し不十分になった方に対し、専門の支援員が日常的な預金の出し入れや公共料金の支払いなどを手伝ってくれます。月数千円程度から利用できる、比較的軽微な支援と位置づけられています。

利用するには、本人にサービス内容を理解し契約する能力が残っている必要があります。不動産の売却といった法的な代理行為はできず、判断能力がさらに低下した場合は、成年後見制度への移行を検討することになります。

成年後見制度の費用はいくら?申立てから後見人報酬までの総額

成年後見制度の利用には、申立て時の初期費用と、後見が続く限り発生する継続費用の2種類があります。ただし、費用は地域の家庭裁判所の運用や事案の内容、例えば鑑定の有無や資産規模などで変動するため、本章で示す金額はあくまで目安としてください。

申立てにかかる初期費用【収入印紙・鑑定料など】

制度利用を開始するための申立て手続きでは、主に実費がかかります。収入印紙代として合計3,400円程度、裁判所からの連絡に使う郵便切手代として数千円、そして医師に作成してもらう診断書費用が数千円必要です。このほか、戸籍謄本や住民票、不動産の登記事項証明書といった添付書類の取得費用もかかります。

特に大きな費用となりうるのが、家庭裁判所が必要と判断した場合に行われる「鑑定」で、その相場は10万円から20万円程度です。これらの費用は申立人が一度立て替えますが、本人財産から支出できるかは、最終的に家庭裁判所の判断によります。

制度利用中にかかる継続費用【後見人への報酬の相場は月2〜6万円】

後見が開始されると、後見人への報酬が継続的に発生します。親族が後見人になる場合は無報酬のことも多いですが、弁護士などの専門職が就く場合の報酬は、月額2万円から6万円が相場です。この金額は、本人の資産規模や不動産管理の有無といった事務量などを家庭裁判所が総合的に判断し、報酬付与の審判によって決定されます。

また、親族後見人であっても、家庭裁判所が後見監督人を付けた場合は、その監督人への報酬が別途、月額1万円から2万円程度加算されます。これらの報酬は本人の財産から支出し、一定期間ごとに家庭裁判所へ申し立て、審判後に支払うのが一般的です。

費用の負担が難しい場合の助成制度

経済的に費用の支払いが困難な場合、自治体の「成年後見制度利用支援事業」により、申立て費用や後見人報酬の助成を受けられる場合があります。対象は生活保護受給者や住民税非課税世帯などが中心で、内容や上限額は自治体によって異なります。まずは市区町村の担当窓口や地域包括支援センターに相談し、社会福祉協議会などと連携しながら利用の可否を確認することになります。

もし後見人とトラブルになったら?相談から解任までの正規ルート

後見人との間で金銭トラブルや方針の対立が起きた場合、感情的な対立では解決が困難です。問題解決のためには、段階的な正規ルートを冷静に進める必要があります。

<解決手順>

  1. 事実と証拠の整理(通帳写し、明細、やり取りの記録)
  2. 家庭裁判所への意見申出(改善の指導を求める)
  3. 後見監督人の選任申立て(監督強化)
  4. 解任申立て・損害賠償請求(不正や重大な怠慢が明確な場合の最終手段)

家族信託や後見制度で不正があった場合の対応については以下Q&Aでも説明しています。

まずは証拠を集めて記録する

後見人の言動に疑問を感じたら、まずは具体的な証拠を集めて記録することが重要です。不正が疑われる場合は、通帳や取引明細の写し、不審な出金を示す領収書。方針に不満がある場合は、メールや書簡、面会の記録などが客観的な証拠となります。ただし、権限なく口座情報にアクセスすることは違法となる可能性があるため、証拠収集は適法な範囲で行う必要があります。

家庭裁判所への相談と意見申出

証拠が揃ったら、家庭裁判所に相談します。後見事務の改善を求める「意見申出」や、より強い監督を求める「後見監督人の選任申立て」といった具体的な手続きを取ることが可能です。家族への報告は後見人の法的な義務ではありませんが、裁判所からの指導によって情報共有の改善が図られる場合もあります。相談の際は、事実を時系列でまとめたメモと証拠、そして「何をしてほしいのか」という要望を簡潔に整理して臨むことが大切です。

最終手段としての後見人解任申立て

家庭裁判所からの指導があっても改善が見られない場合や、横領などの不正行為が明確な場合は、最終手段として「後見人解任の申立て」が可能です。解任が認められるには、不正行為、継続的な職務怠慢、利益相反の放置といった、職務の継続が著しく不適切であるという明確な法的理由が必要です。重大な金銭被害がある場合は、解任申立てと並行して、損害賠償請求などを検討することもあります。

どう変わる?成年後見制度の最新動向と法改正のポイント

成年後見制度が抱える課題を解決するため、現在、法務省の法制審議会などを中心に、国レベルでの見直しが進められています。この章では、すでに行われている利用促進の取り組みと、今後の使い勝手に影響する法改正の検討状況について解説します。

成年後見制度利用促進法とは?国の基本方針を解説

成年後見制度の利用率が低い現状を改善するため、2016年に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が施行されました。この法律に基づき、国は基本計画を策定し、自治体は相談窓口となる「中核機関」の整備や、申立て費用・後見人報酬を助成する「利用支援事業」などを進めています。

これらの取り組みも背景要因の一つと考えられ、最高裁判所の統計によれば、一時停滞していた申立て件数は2021年以降、再び増加傾向が見られます。費用助成や相談体制は自治体ごとに整備が進んでいるため、まずはお住まいの地域の窓口に相談することが有効です。

2026年度目標の民法改正で「使いやすさ」は改善されるか

現在最も注目されているのが、2026年度の国会提出が目指されている民法改正の検討状況です。この改正案では、現行制度の課題とされる点を改善するため、主に以下のような論点が議論されています。

まず、一度始まったら原則として生涯続く仕組みを見直し、利用期間を一定期間に限定する「有期化」や、定期的に必要性を見直す機会を設けることが検討されています。

また、後見人との相性が悪い場合や不適切な対応があった場合に、後見人の交代をより円滑に行えるようにする仕組みも議論の対象です。

これらの改正が実現すれば、「途中でやめられない」という大きな課題が緩和され、状況の変化に応じて柔軟な対応がしやすくなる可能性があります。ただし、現時点ではまだ法案化されておらず、具体的な内容や施行時期は今後の審議状況によります。

この記事のまとめ

成年後見制度は、判断能力が低下した人を守るための仕組みですが、厳格な運用ゆえに不便さや費用負担が課題となる場面があります。大切なのは「本人にとって何が最優先か」を明確にしたうえで、法定後見・任意後見・家族信託などの選択肢を比較検討することです。申立て前には、意思決定メモや役割分担、情報共有ルールを整えておくことで、制度利用後の不信感やトラブルを防げます。迷った際は家庭裁判所や専門家に早めに相談し、安心して進められる体制を整えることが重要です。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

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難易度:

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成年後見制度

成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な成人に対して、法律的な支援を行う制度です。本人の財産を守ったり、契約や手続きに関して適切な判断を代わりに行ったりすることで、不利益を被らないように保護します。 この制度は家庭裁判所の関与のもとで運用され、「後見」「保佐」「補助」という3つの類型に分かれており、本人の判断能力の程度に応じて支援のレベルが異なります。また、将来の備えとして判断能力があるうちに信頼できる人と契約を結んでおく「任意後見制度」もあります。成年後見制度は、高齢化が進む社会において、安心して生活し続けるための法的インフラとして重要な役割を果たしており、資産管理や相続、医療・福祉の現場でも広く活用されています。

法定後見制度

法定後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分になった人を保護・支援するために、家庭裁判所が選任する「後見人」が本人に代わって財産管理や契約行為などを行う制度です。本人の意思決定が難しくなった後でも、生活や財産を適切に守るための仕組みであり、民法に基づいて運用されています。法定後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」という3つの類型があり、それぞれに必要な支援の範囲や後見人の権限が異なります。 たとえば、銀行口座の管理、不動産の処分、介護サービスの契約などを後見人が代行します。制度を利用するには家庭裁判所への申立てが必要であり、親族や市区町村などが申し立て人になるケースも多く見られます。本人が元気なうちに備える「任意後見制度」との違いを理解することも大切です。

任意後見

任意後見とは、自分の判断能力が低下する将来に備えて、あらかじめ信頼できる人を後見人として選び、公正証書で契約を結んでおく制度のことをいいます。これは「元気なうち」に本人の意思で準備できる後見制度であり、判断能力が実際に低下したときに、家庭裁判所の監督のもとで任意後見人が正式に活動を開始します。 任意後見人は、本人の財産管理や生活支援などを本人の希望に沿って行うことができるため、自分らしい生活を維持するための手段として注目されています。法定後見と違い、自分で「誰に、何を任せるか」を決めておける点が特徴です。高齢化や認知症のリスクが高まる中で、資産や生活の管理を将来にわたって安心して託すための、重要な準備の一つです。初心者にとっても、「自分の老後を自分で選ぶ」ための有効な制度として知っておく価値があります。

後見・保佐・補助

後見・保佐・補助とは、判断能力が不十分な方を法律的に支援する制度であり、成年後見制度の3つの類型を指します。これは主に高齢者や障がいを持つ方の財産管理や契約行為をサポートする仕組みです。「後見」は本人の判断能力がほとんどない場合に適用され、代理人(成年後見人)が広範囲にわたって本人の代わりに行動します。「保佐」はある程度判断能力はあるものの、不十分な方に対し、重要な契約などについて保佐人が同意や代理を行います。「補助」は判断能力が一部だけ不十分な方に対して適用され、必要に応じて特定の行為について補助人が関与します。これらは本人の意思を尊重しながら、財産の保護と適正な資産運用を実現するための制度です。

成年後見人 (等)

成年後見人とは、判断能力が不十分な人の生活や財産を法律的に支える人のことです。たとえば、高齢による認知症や知的障がい、精神障がいなどで、自分ひとりで契約やお金の管理が難しくなった人に対して、家庭裁判所が選任します。成年後見人には、本人の財産を管理したり、介護サービスの契約を結んだり、遺産分割の手続きに関与したりといった役割があります。「成年後見人等」と表記されることもあり、この「等」には、保佐人や補助人も含まれます。これらの支援者は、本人の権利を守り、安心して暮らせるようにサポートする大切な存在です。資産運用の面でも、必要な支出を管理し、本人にとって不利益にならないように配慮しながらお金を使う責任があります。

財産管理

財産管理とは、お金や不動産、株式、預貯金などの資産を、適切に保ち、使い、増やすために行う行為全般を指します。個人が自分で行うこともあれば、判断能力が不十分な人の場合は成年後見人などが代わって行うこともあります。日常の支払い管理から、資産の運用、相続の準備に至るまで、幅広い内容が含まれます。財産管理では、ただ資産を保有しているだけでなく、生活費に必要なお金を計画的に使ったり、余裕資金をどのように運用するかを考えたりすることが重要です。とくに高齢者や障がいのある方の場合、財産の使い道が不適切にならないように、法的な制度を利用して第三者が関わることもあります。資産運用と密接に関係しており、安心した暮らしや将来の備えを支える基本的な考え方です。

身上監護(しんじょうかんご)

身上監護(しんじょうかんご)とは、本人の生活や健康、福祉などに関わる事柄について、本人の意思を尊重しながら必要な支援や意思決定の代行を行うことを指します。これは成年後見制度において、後見人が担う重要な役割のひとつで、財産管理とは異なる側面の支援です。 たとえば、介護サービスの利用手続き、施設への入所契約、医療機関との対応、日常生活の環境整備などが含まれます。身上監護は、本人の人格と尊厳を守り、その人らしい生活を送れるよう支援することを目的としており、後見人には単なる「代行者」ではなく、本人の意思をくみ取り、必要な配慮をしながら行動することが求められます。高齢者や障がいのある方の生活を支えるうえで、身上監護は法的・実務的に非常に重要な概念です。

任意後見監督人

任意後見監督人とは、将来に備えてあらかじめ結んでおいた「任意後見契約」が実際に発効されたときに、任意後見人の業務が適正に行われているかを監督する立場として、家庭裁判所により選任される第三者のことです。本人の判断能力が低下し、任意後見契約の内容に基づいて後見が開始された場合、任意後見人だけでは不正やミスが起きるおそれがあるため、それをチェックする役割を担います。 任意後見監督人は通常、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれ、定期的に家庭裁判所へ報告を行いながら、任意後見人の活動を見守ります。資産管理や生活支援を本人に代わって行う制度を円滑かつ安全に機能させるための重要な存在であり、任意後見制度の信頼性を支える柱となります。

申立て

申立てとは、家庭裁判所などの公的な機関に対して、ある手続きを開始してほしいと正式にお願いする行為のことです。たとえば、成年後見人を選んでもらう場合や、遺言の検認、不在者財産管理人の選任など、法律に基づいた特定の手続きを始めるためには、必ず「申立て」を行う必要があります。書類や証拠をそろえ、所定の書式に沿って申立書を提出することで、裁判所がその内容を審査し、必要な対応を取ります。資産運用においては、判断能力の低下により本人が自分で資産管理ができなくなった場合などに、家族や関係者が成年後見制度の利用を申立てることがよくあります。法律的な保護を受けるための第一歩となる大切な手続きです。

登記事項証明書

登記事項証明書とは、不動産登記簿に記載されている内容を証明するための公的な書類で、法務局が発行します。以前は「登記簿謄本」とも呼ばれていました。記載されている内容には、不動産の所在地や面積、所有者の氏名、抵当権などの権利関係が含まれており、不動産の法的な状態を確認するために不可欠な書類です。 不動産の売買、相続、担保設定などの取引において、権利関係が正確であるかどうかを確認するために提出が求められることが一般的です。オンラインでの取得も可能で、「全部事項証明書」と「現在事項証明書」の2種類があり、必要に応じて使い分けます。不動産の安全な取引や登記手続を行ううえで、信頼性の高い情報源として活用される非常に重要な書類です。

家族信託

家族信託とは、ご自身の財産を信頼できる家族に託し、その管理や運用を契約で定めた目的に沿って行ってもらう仕組みです。委託者さまは公正証書で信託契約を締結し、現金や不動産、株式などを信託財産として受託者名義に移転します。これにより、たとえ将来認知症を発症されても資産が凍結されず、受益者さまへ生活費や医療費を継続して届けられる点が大きなメリットです。相続発生後は受益権そのものが相続対象となるため、遺産分割協議を簡素化できる効果も期待できます。 もっとも、家族信託には手続きと費用が伴います。不動産を組み入れる場合は信託登記が必要となり、登録免許税や司法書士報酬、公証人手数料が発生いたします。また、受託者さまは信託口座の開設、収支報告書の作成、信託財産とご自身の財産の分別管理など、煩雑な事務を担う義務があります。税務面では契約締結時に贈与税が課税されることは原則ございませんが、信託財産を売却した際の譲渡所得税や信託終了時の相続税は避けられません。そのため、成年後見制度や遺言信託と比較しながら、費用対効果や家族の負担を総合的に検討することが大切です。

日常生活自立支援事業

日常生活自立支援事業とは、認知症の高齢者や知的・精神に障がいのある方など、判断能力に不安のある人が、地域で安心して暮らせるように、日常的な金銭管理や手続きの支援を行う公的なサービスです。社会福祉協議会などが主体となって実施しており、預貯金の出し入れ、福祉サービスの契約手続き、生活費の支払い管理など、日々の暮らしに密接に関わるサポートを提供します。この制度は成年後見制度よりも柔軟で、本人の意思を尊重しながら、専門職員(生活支援員)が訪問などを通じて継続的に支援を行います。資産運用の観点では、本格的な財産管理までは必要ないけれど、日常的な金銭管理が難しい方にとって、生活の安定を支える重要な役割を果たします。

後見制度支援信託

後見制度支援信託とは、成年後見制度を利用している方の財産を、より安全に管理するために活用される信託の仕組みです。具体的には、家庭裁判所の関与のもと、本人の財産の一部を信託銀行などに信託し、必要なときにだけ引き出せるようにすることで、不適切な使い込みや管理ミスを防ぎます。通常、日常生活に必要な資金は成年後見人が管理し、残りのまとまった金額は信託財産として信託銀行などで保管されます。引き出すには家庭裁判所の指示が必要となるため、本人の財産がしっかりと守られます。これは特に、親族などが成年後見人になるケースで、信頼性と透明性を高めるために利用されることが多く、資産保護の観点から非常に有効な仕組みです。

鑑定

鑑定とは、専門的な知識を持つ医師や専門家が、ある人の判断能力や精神状態について客観的に評価し、その結果を文書で示すことをいいます。成年後見制度を利用する際に、本人に後見・保佐・補助などの支援が必要かどうかを判断するため、家庭裁判所が医師による鑑定を求めることがあります。特に、本人の判断能力がどの程度かを正確に把握することは、適切な支援の種類を決める上でとても重要です。鑑定は、申立ての際に必ず必要というわけではありませんが、家庭裁判所が必要と判断した場合には実施されます。その結果をもとに、裁判所が後見人等の選任や支援内容の決定を行います。資産運用や財産管理の支援が必要なケースでは、本人の意思能力を明確にするための基礎資料となります。

保全処分

保全処分とは、将来の裁判や手続きの結果が出る前に、財産が勝手に処分されたり隠されたりしてしまうのを防ぐために、裁判所が一時的な命令を出して財産を守る手続きのことです。たとえば、成年後見制度の申立てを行っても、裁判所の決定が出るまでに時間がかかることがあります。その間に本人の財産が不適切に使われてしまうおそれがある場合、家庭裁判所は「保全処分」として、仮の後見人を選んで財産の管理を命じることがあります。これにより、支援が正式に始まる前でも、必要な保護が行える仕組みになっています。資産運用や財産管理の分野では、緊急時に財産を守る手段として重要な制度です。

中核機関

中核機関とは、高齢者や障がいのある方が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるように、成年後見制度の利用を地域全体で支えるための中核的な役割を担う組織です。市区町村が設置し、地域の関係機関と連携しながら、成年後見制度の利用促進、相談対応、専門職のネットワークづくり、後見人等の育成・支援などを行います。たとえば、制度を必要としている人がどこに相談すればよいか分からない場合、中核機関が窓口となって必要な情報提供や申立ての支援につなげます。 中核機関は、家庭裁判所や社会福祉協議会、地域包括支援センターなどと連携しながら、地域での支援体制を整えるハブ的な存在です。資産管理や身上監護の支援が必要な人を適切な制度へ導く橋渡し役を果たします。

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