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企業年金は月額いくら?平均受給額と老後資金が不足する場合の対策を解説
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公開:
2026.10.20
更新:
2026.10.20
企業年金は老後の重要な収入源ですが、受取額は勤務先の制度や勤続期間、給与、運用成果によって異なるため、平均月額だけでは自分の生活を見通せません。企業年金と退職金を二重に数えたり、厚生年金との関係を誤解したりすると、老後資金を過大に見積もるおそれもあります。この記事では、DB・企業型DC・厚生年金基金ごとの仕組みや受取額の確認方法、受給期間、税金、一時金との違いまで具体的に解説します。
目次
企業年金には全員共通の平均月額がない
企業年金全体に共通する平均月額はありません。ただし、企業年金連合会の2024年度調査では、確定給付企業年金(DB)の老齢給付年金の平均額は年額61.8万円で、月換算すると約5.2万円です。
一方、企業型確定拠出年金(企業型DC)は、積み立てた資産の残高や運用成果、受取期間によって月額が変わるため、DBと同じ形で平均月額を示すことはできません。
- 自分が実際に受け取れる金額を知るには、制度の種類に加えて、勤務先の規約、加入期間、給与、掛金額、運用状況を確認する必要があります。
「月額いくら」という疑問に正しく答えるには、まず金額の決まり方が制度ごとに違うという前提を押さえる必要があります。
制度・規約・勤続期間等で金額が異なる
企業年金の金額は、加入している制度の種類と勤務先ごとのルールで決まります。主な企業年金には、確定給付企業年金(DB)・企業型確定拠出年金(企業型DC)・厚生年金基金の3つがあり、金額の決まり方自体が次のとおり違います。
| 制度 | 受取額の決まり方 |
|---|---|
| 確定給付企業年金(DB) | 勤務先の年金規約に定められた計算方法(勤続期間・給与・ポイントなど)で決まる |
| 企業型確定拠出年金(企業型DC) | 会社等が拠出した掛金と、本人の運用成果によって変わる |
| 厚生年金基金 | 国の厚生年金の一部を代行する部分と、基金独自の上乗せ部分で構成される |
同じDBに加入していても、勤務先の規約・勤続期間・給与水準・職位によって、受取額には大きな差が生じるのが実情です。企業型DCであれば、掛金額に加えて本人がどの商品でどう運用したかで結果が変わります。
平均額を見る際の注意点
企業年金の統計を見る際は、DBの年金額、企業型DCの資産残高、退職一時金、退職給付総額を区別する必要があります。たとえば、企業型DCの資産残高は口座に積み立てられた資産の時価評価額であり、そのまま毎月受け取れる年金額を示すものではありません。
- また、月額が同じでも、5年間受け取る有期年金と生涯受け取る終身年金とでは受取総額が異なります。平均額を見る際は、「何の金額か」「誰を対象とした数字か」「何年間受け取れるか」をセットで確認しましょう。
月額だけでなく受給期間も確認する
企業年金は、月額の大きさだけでなく「何年間受け取れるか」をセットで確認する必要があります。月額が同じでも、受給期間が5年の有期年金と、生きている限り受け取れる終身年金とでは、受取総額がまったく異なるためです。
たとえば月額5万円の年金でも、5年有期なら総額300万円、20年受け取れば総額1,200万円です。企業年金連合会「2024年度企業年金実態調査」では、DBの年金の種類として5年・10年・15年・20年の確定年金(有期年金)や保証期間付終身年金など、複数の形態が確認できます。
「月額いくら」と「何年間もらえるか」は、常に2つで1組の情報として確認しましょう。
出典:企業年金連合会「企業年金実態調査結果(2024年度概要版)」
DBの年金額と企業型DCの資産残高を混同しない
DB受給者の「年金額」と、企業型DC加入者の「資産残高」は別の概念であり、同じ「平均月額」として比較できません。DBの年金額は実際に支払われている給付額であるのに対し、企業型DCの資産残高は口座に積み上がっている時価評価額にすぎないからです。
- 企業型DCの資産残高は、受取開始までの運用成果で増減するうえ、何年かけて受け取るかによって月額が変わります。残高500万円を10年で受け取れば単純計算で年50万円ですが、受給中の運用や手数料でも実際の金額は変動します。
「DBの平均年金額」と「企業型DCの平均資産残高」を横並びのランキングにした情報を見かけても、性質の異なる数字だと理解する必要があります。
企業年金の種類によって受取額の決まり方は違う
自分の企業年金がいくらかを知る第一歩は、加入している制度の種類を特定することです。制度によって受取額の計算方法・受取方法の選択肢・確認先がすべて異なるため、制度が分からないままでは正確な金額にたどり着けません。
確定給付企業年金(DB)
確定給付企業年金(DB)は、あらかじめ給付額の計算方法が決まっているタイプの企業年金です。勤務先が定める「年金規約」に給付額の算定方法が記載されており、会社側が給付に必要な資産を積み立て、運用の責任も原則として会社側が負います。
給付額の算定には、勤続期間・給与・職位・付与されたポイントなどが影響する場合があります。企業年金連合会「2024年度企業年金実態調査」によると、同会会員DB(回答798制度、複数回答)で多い算定方法は、キャッシュバランスプラン(類似型を含む)45.7%とポイント制45.1%でした。
| 算定方法 | 仕組み | 採用割合 |
|---|---|---|
| キャッシュバランスプラン(類似型を含む) | 個人ごとの仮想的な口座に拠出額と利息相当額を積み上げる、DBと企業型DCの中間的な設計 | 45.7% |
| ポイント制 | 勤続や職能等級に応じたポイントの累計に単価を掛けて給付額を計算する | 45.1% |
| 給与比例 | 給与の水準に支給率を掛けて給付額を計算する | 27.8% |
| 定額 | 給与とは切り離し、勤続年数等に応じてあらかじめ定めた額を給付する | 12.3% |
DBには、母体企業から独立した企業年金基金を設立する「基金型」と、労使合意の規約に基づき信託銀行・生命保険会社等と契約して運営する「規約型」の2形態があります。年金・一時金・併用のどれを選べるか、有期年金と終身年金のどちらを選択できるかも、すべて規約次第です。
なお、確定給付年金の受取額を知る方法は、こちらのFAQでも解説しています。
出典:企業年金連合会「企業年金実態調査結果(2024年度概要版)」
企業型確定拠出年金(企業型DC)
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、会社等が拠出した掛金を従業員本人が運用し、その成果で将来の受取額が決まる制度です。掛金額・運用期間・運用成果・手数料によって受取額が変わるため、加入時点では将来の金額が確定しません。
- 参考として、企業年金連合会の2024年度調査による事業主掛金の平均月額は、DB等の他制度を実施していない企業で16,336円、実施している企業で11,775円でした。これは会社が毎月拠出している掛金の平均であり、将来受け取る年金月額ではありません。
企業型DCの受取額は、会社と本人が拠出した掛金、運用期間、運用成果、手数料によって変わります。さらに、同じ資産残高でも、5年間で受け取るか20年間で受け取るかによって月額は大きく異なります。自分の見込額は、加入者サイトの資産残高と将来シミュレーションで確認しましょう。
出典:企業年金連合会「2024年度企業型確定拠出年金実態調査結果(概要版)」
厚生年金基金
厚生年金基金は、現在は新設できない旧来型の企業年金制度です。2014年の法改正以降は新設が認められておらず、多くの基金がすでに解散またはDB等へ移行しています。
厚生年金基金の給付には、国の厚生年金の一部を国に代わって支給する「代行部分」と、基金独自の「上乗せ部分(加算部分)」が含まれます。この構造のため、基金からの給付額の全額が厚生年金への純粋な上乗せになるとは限りません。
過去に厚生年金基金へ加入していた人は、給付の通知書で代行部分と上乗せ部分の内訳を確認しましょう。厚生年金と完全に独立した金額が丸ごと上乗せされる、という理解のままだと、老後収入を過大に見積もるおそれがあります。
退職一時金との併用
退職給付の設計は企業によって異なり、企業年金と退職一時金の組み合わせ方には複数のパターンがあります。自分の勤務先がどのパターンかによって、確認すべき金額の内訳が変わるため、最初に全体像を把握しておきましょう。
主なパターンは以下のとおりです。
退職金制度のパターン
- 退職一時金のみ(企業年金なし)
- 企業年金のみ(DB・企業型DCなど)
- 退職一時金と企業年金の併用
- 本人が一時金・年金のいずれかを選択できる
- 一部を一時金、残りを年金として受給する
なお、勤務先によっては、退職一時金と企業年金を併用している場合があります。「退職金」として案内される金額に企業年金の原資が含まれることもあるため、退職金規程と年金規約の両方で内訳を確認してください。退職給付の内訳は退職金規程や年金規約に定められているため、人事・総務への確認が確実です。
企業年金連合会の通算企業年金
転職経験がある人は、元勤務先のDBに受給権が残っていないか、企業年金連合会へ年金原資が移換されていないかを確認しましょう。中途退職時に年金原資が企業年金連合会へ移換されている場合は、同会から通算企業年金を受け取れる可能性があります。
また、企業型DCの資産については、現在の企業型DCやiDeCoへ移換済みか、自動移換になっていないかも確認が必要です。元勤務先、企業年金基金、企業年金連合会、現在の運営管理機関へ順に問い合わせると、記録の所在を確認できます。
「昔の会社に企業年金があった気がするが、どうなったか分からない」という人は、老後の収入源を取りこぼさないためにも早めに確認しておきましょう。
企業年金の平均額を確認する際の注意点
企業年金の統計を参照するときは、数字の定義を確認しないと誤った判断につながります。世の中で「企業年金の平均」として紹介される数字には、年金額・資産残高・一時金・退職給付額といった性質の異なるデータが混在しているためです。
ここでは、統計を正しく読むための4つのチェックポイントを解説します。
年金額・資産残高・一時金を分ける
企業年金に関する統計は、まず「何の金額か」で区別する必要があります。以下の4種類は別の概念であり、単純に比較できません。
| データ | 数字の意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| DBの平均年金額 | DB受給者が実際に受け取っている年金額 | 規約・勤続期間等で個人差が大きい |
| 企業型DCの平均資産残高 | 口座に積み上がった資産の時価評価額 | 月額年金そのものではない |
| 企業型DCの年金受給額 | 年金形式で受け取っている金額 | 受取期間や運用状況で変わる |
| 勤続年数別の退職給付額 | 退職一時金や年金原資等の合計 | 企業年金の月額とは別の数字 |
なお、DB受給者の平均年金額(年額)は、企業年金連合会が「企業年金に関する基本統計」として公表しています。参照する際は、調査年度と集計対象(同会会員のうち回答のあった制度)を確認したうえで活用してください。
調査対象と年度を確認する
統計の数字は、調査の設計によって水準が大きく変わります。平均額を参照するときは、最低限、次の項目をセットで確認しましょう。
確認すべき項目
- 調査名と調査年度
- 対象制度(DBか企業型DCか、厚生年金基金を含むか)
- 対象者(受給者か加入者か)
- 数字の種類(月額・年額・資産残高・一時金のどれか)
- 平均値か中央値か
- 対象企業の規模
- 一時金を選択した人を含むか
たとえば受給者の平均年金額は、一時金を選んだ人を含まないため、加入者全体の水準より高く見える場合があります。定義の異なる数字を同じ土俵で比較しないよう注意してください。
勤続年数別退職給付額は月額年金ではない
勤続年数別・学歴別の退職金統計は、企業年金の月額を示すものではありません。厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」における「退職給付額」は、退職一時金制度のみの場合は一時金額、退職年金制度のみの場合は年金現価額、併用の場合はその合計と定義されています。
年金現価額とは、将来にわたって受け取る年金を現在の価値に換算した金額のことです。同調査では、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者の平均退職給付額は1,896万円でした。
- この1,896万円は一時金と年金原資を合算した「退職給付の総額」であり、毎月受け取る企業年金の額ではありません。勤続年数だけで自分の受給額を推測せず、勤務先の規約で計算方法を確認しましょう。
なお、勤続年数別・企業規模別の退職金相場と手取り額の目安は、以下の記事で詳しく解説しています。
平均額と自分の見込額は異なる
統計の平均額は相場観の参考にとどめ、老後の計画は自分の見込額で立てるべきです。企業年金は規約・勤続期間・給与・運用成果によって個人差が大きく、平均額どおりに受け取れる保証はありません。
平均より多い人もいれば、制度への加入期間が短く平均を大きく下回る人もいる点は、必ず押さえておきましょう。
自分の企業年金はいくらか確認する方法
自分の企業年金の見込額は、勤務先への確認・規約の閲覧・通知書やマイページの確認という3つのルートで把握できます。企業年金は制度ごとに情報の管理先が異なるため、複数のルートを組み合わせるのが確実です。
実行しやすい順に確認手段について、転職経験がある人向けの確認方法もあわせて解説します。
勤務先の人事・総務へ確認する
最も手軽で確実なのは、勤務先の人事・総務部門への確認です。制度の全体像を把握している窓口に直接聞けば、自分で資料を読み解く手間を減らせます。
確認したい項目は以下のとおりです。
確認したい項目
- どの企業年金制度(DB・企業型DC・厚生年金基金)に加入しているか
- 退職一時金との併用の有無
- 年金規約や退職金規程の閲覧方法
- 現時点の受取見込額
- 受給開始年齢
- 年金・一時金の選択可否
- 選べる受取期間
- 退職前に必要な手続き
退職まで5〜10年の段階でこれらを確認しておくと、受取方法の検討や老後資金の計画に十分な時間を確保できます。
年金規約・退職金規程を見る
年金規約や退職金規程を直接読むと、給付額の計算式と受取方法の選択肢が正確に分かります。口頭の説明では伝わりにくい細部も、原文なら確認できるためです。
規約・規程では、主に次の項目に注目してください。
年金規約・退職金規程で確認したい項目
- 給付額の算定方法(給与比例・ポイント制・キャッシュバランスプランなど)
- 受給資格(必要な加入期間)
- 受給開始年齢と支給期間
- 年金・一時金・併用の選択肢
- 繰下げ(受給開始を遅らせる場合)の取り扱い
- 死亡時の遺族給付や保証期間
規約は社内イントラネットや人事部門で閲覧できる場合が多く、企業年金基金がある会社では基金の資料でも確認できます。
DBの通知書・受託機関の資料を確認する
DBの受取見込額は、制度の運営主体から届く通知書や資料で確認できます。確認先は制度の形態によって異なるため、「企業年金基金からの通知」だけを探すのは適切ではありません。
基金型DBでは企業年金基金が通知を発行しますが、規約型DBには独立した基金が存在せず、勤務先や受託機関(信託銀行・生命保険会社など)が情報の窓口になります。通知書や加入者向け資料では、以下を確認しましょう。
通知書や加入者向け資料で確認したい項目
- 受給見込額
- これまでの加入期間
- 受給開始年齢
- 選択可能な受取方法(年金・一時金・併用)
通知書が見当たらない場合は、勤務先の人事・総務を通じて受託機関に照会するのが近道です。
企業型DCのマイページを確認する
企業型DCの現状は、運営管理機関が提供するWebのマイページ(加入者サイト)でいつでも確認できます。運営管理機関とは、記録管理や商品提示を担う金融機関のことです。
マイページでは、次の項目をチェックしてください。
企業型DCのマイページで確認したい項目
- 個人別管理資産額(現在の資産残高)
- 会社掛金と本人掛金(マッチング拠出)の額
- 運用損益
- 保有商品と配分割合
- 差し引かれている手数料
- 想定利回り別の将来残高シミュレーション
- 受給可能年齢
- 選べる受取方法
ここで注意したいのは、現在の資産残高を受取年数で割った金額が、そのまま実際の年金月額になるわけではないという点です。受取開始までの運用成果で残高は変動し、受給中も運用と手数料の影響を受けます。シミュレーション機能を使い、複数の利回り前提で幅を持って見積もりましょう。
過去の勤務先の企業年金を確認する
転職経験がある人は、過去の勤務先の企業年金が残っていないかを必ず確認しましょう。放置された年金資産や受給権は、老後収入の取りこぼしに直結します。
確認すべきポイントは以下の4つです。
確認すべきポイント
- 元勤務先のDBに受給権(将来年金を受け取る権利)が残っていないか
- 年金資産が企業年金連合会へ移換され、通算企業年金になっていないか
- 過去の企業型DC資産を、現在の企業型DCやiDeCoへ移換済みか
- 移換手続きを忘れて「自動移換」になっていないか
元勤務先・企業年金基金・企業年金連合会に照会すれば、記録の有無を確認できます。姓が変わった人や住所変更を届け出ていない人は、通知が届いていない可能性もあるため、自分から問い合わせるのが確実です。
転職経験がある人は自動移換されていないか確認する
企業型DCの加入資格を失った後、所定の期間内に資産を移換しないと「自動移換」となり、大きな不利益が生じます。資格喪失後6カ月以内に他の企業型DC・iDeCo・DB等へ資産を移換せず、脱退一時金の請求もしない場合、資産は国民年金基金連合会へ自動的に移換されます。
自動移換のデメリットは、次のとおりです。
自動移換のデメリット
- 資産が現金化され、原則として運用されないまま置かれる
- 移換時の手数料に加え、毎月の管理手数料が資産から差し引かれ続ける
- 受給開始に必要な「通算加入者等期間」に算入されず、受け取り開始が遅れる場合がある
- 通知を見落とすと、資産の所在自体が分からなくなる原因になる
運用されずに手数料だけが引かれるため、放置期間が長いほど資産は目減りします。転職や退職をしたら、6カ月の期限を待たずに早めに移換手続きを進めてください。
なお、転職・退職時の具体的な移換手続きの流れは、こちらの記事で詳しく解説しています。
公的年金はねんきんネット等で別途確認する
公的年金の見込額は、日本年金機構の「ねんきんネット」やねんきん定期便で確認します。ねんきんネットで確認できるのは原則として国民年金・厚生年金などの公的年金であり、勤務先独自のDBや企業型DCの金額が一律に表示されるわけではありません。
つまり、老後収入の全体像をつかむには「公的年金はねんきんネット、企業年金は勤務先・基金・運営管理機関」と、確認先を分けて調べる必要があります。両方の見込額がそろって初めて、老後の収入計画を立てられます。
企業年金はいつから何年間受け取れるか
企業年金の受給開始年齢と受給期間は、制度・規約によって決まっており、一律ではありません。「60〜65歳から」「5年・10年か終身」といった一般論をそのまま自分に当てはめるのは危険です。
また、受給開始を遅らせた場合の扱いも制度により異なります。公的年金の繰下げ受給のように必ず増額されるとは限らないため、繰下げを検討する際も規約の確認が欠かせません。
DBは勤務先の規約で確認する
DBの受給開始年齢・受給期間・受取方法は、すべて勤務先の年金規約に定められています。制度によっては、終身年金を選べないケースや、年金ではなく一時金しか選べないケースも存在するためです。
企業年金連合会「2024年度企業年金実態調査」でも、DBの年金の種類として5年・10年・15年・20年の確定年金や保証期間付終身年金など、複数の形態が確認されています。自分の制度でどれを選べるかは、規約と加入者向け資料で確かめましょう。
企業型DCは加入期間と受給可能年齢を確認する
企業型DCの老齢給付金は、通算加入者等期間の長さによって受給を開始できる年齢が変わります。通算加入者等期間とは、企業型DCやiDeCoの加入者・運用指図者であった期間を合算したものです。
- 60歳から受け取るには、原則として通算加入者等期間が10年以上必要で、期間が短い場合は受給開始可能年齢が段階的に遅くなります。50代で初めて企業型DCに加入した人や、自動移換の期間がある人は、60歳から受け取れない可能性があるため、マイページや運営管理機関で受給可能年齢を確認してください。
有期年金・終身年金・一時金の違い
受取方法は大きく分けて有期年金・終身年金・一時金の3つで、それぞれ性質が異なります。違いを整理すると以下のとおりです。
| 受取方法 | 特徴 | 主な留意点 |
|---|---|---|
| 有期年金 | 5年・10年・20年など決められた期間だけ受け取る | 期間終了後は収入が途切れる |
| 終身年金 | 生きている限り受け取れる | 選べない制度もある |
| 一時金 | 全額または一部をまとめて受け取る | 受け取り後の資金管理は自分で行う |
年金と一時金を組み合わせて受け取れるかどうかも、規約によって異なります。「半分を一時金で住宅ローン返済に充て、残りを年金で受け取る」といった使い方ができるかは、制度ごとの確認が必要です。
終身年金の仕組みや、老後の収入を生涯にわたって確保する考え方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
保証期間と死亡時の取扱い
保証期間や遺族給付の有無は制度によって異なり、家族の生活にも関わる重要な確認事項です。保証期間とは、本人の生死にかかわらず年金または一時金の支払いが保証される期間を指します。
たとえば「15年保証期間付終身年金」であれば、受給開始から15年以内に本人が亡くなった場合でも、残りの保証期間分は遺族に支払われます。一方、保証のない設計では、死亡時点で給付が終了する場合もあるでしょう。配偶者や家族の生活設計に影響するため、遺族給付の条件まで規約で確認しておきましょう。
選択後に変更できるか確認する
受取方法をいったん選択した後に変更できるかどうかは、制度によって異なります。多くの制度では、受給開始後に年金から一時金へ、あるいはその逆へ自由に変更できるとは限りません。
- 一部の制度には、年金受給中の残額を一時金として受け取れる仕組みがありますが、これも規約に定めがある場合に限られます。選択のやり直しがきかない前提で、受給開始前に税金・生活費・家族の状況を踏まえて慎重に検討してください。
企業年金と厚生年金は両方受け取れる
DBや企業型DCの企業年金は、原則として国民年金・厚生年金に上乗せして両方受け取れます。企業年金は公的年金とは別の財源・別の制度として運営されており、企業年金を受け取ることで厚生年金が減額される仕組みは原則ないためです。
ただし「完全に無関係に満額もらえる」と単純化はできません。厚生年金基金には注意点があり、税金や社会保険料の面では両者を合算して考える必要があります。
公的年金と私的年金の関係
会社員は、国民年金に相当する基礎年金と厚生年金に加入し、勤務先に制度がある場合はDBや企業型DCなどの企業年金にも加入します。DBと企業型DCは公的年金とは別の制度であるため、原則として老齢基礎年金・老齢厚生年金に上乗せして受け取れます。
| 階層 | 制度 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 3階部分 | 企業年金(DB・企業型DC・厚生年金基金)、iDeCoなど | 企業や個人が上乗せする私的年金 |
| 2階部分 | 厚生年金 | 会社員・公務員が加入する公的年金 |
| 1階部分 | 国民年金(基礎年金) | 20歳以上60歳未満の全員が加入する公的年金 |
会社員は1階・2階の公的年金に加入しつつ、勤務先に制度があれば3階の企業年金にも加入します。3階部分は1・2階の土台の上に乗る設計であり、置き換えではありません。
DB・企業型DCは上乗せが基本
DBと企業型DCの給付は、老齢基礎年金・老齢厚生年金に純粋に上乗せされる収入です。企業年金を受け取ったからといって、公的年金の受給額が調整・減額されることは原則ありません。
- たとえば老齢基礎年金と老齢厚生年金で月15万円、DBで月3万円を受け取る場合、額面の収入は単純合算で月18万円になります。老後のキャッシュフローを考えるときは、公的年金と企業年金を別々の収入源として、それぞれの受給開始年齢と受給期間を並べて整理しましょう。
厚生年金基金の代行部分に注意
厚生年金基金の給付だけは、「全額が厚生年金への上乗せ」とは限らない点に注意が必要です。厚生年金基金の給付には、本来は国が支給する厚生年金の一部を基金が代わりに支給する「代行部分」が含まれることがあるためです。
代行部分は、国の厚生年金として受け取るはずだった金額を基金経由で受け取っているにすぎません。純粋な上乗せは、代行部分を除いた基金独自の加算部分です。厚生年金基金からの給付見込みがある人は、通知書で代行部分と上乗せ部分の内訳を確認し、老後収入を二重に数えないようにしましょう。
税引後の収入で考える
企業年金と厚生年金を両方受け取れる場合でも、家計に使えるのは税金・社会保険料を差し引いた後の手取り額です。年金形式で受け取る企業年金は、公的年金と同じく原則として雑所得として課税され、所得の合計が増えるほど税・社会保険料の負担も増えるためです。
年金収入にかかる税金と手取り額の目安は、こちらの早見表つきの記事で解説しています。
退職一時金と企業年金の違い
退職一時金と企業年金は、どちらも「退職給付」という大きな枠組みに含まれる制度です。「退職金は一時金、企業年金は年金形式」という単純な分け方は正確ではなく、両者は受け取り方ではなく制度の設計で区別されます。
混同したまま老後資金を計算すると、同じお金を二重に数えたり、逆に数え漏らしたりする原因になります。
いずれも退職給付制度の一部
退職給付とは、退職を理由に企業が従業員へ支給する給付の総称で、その中に退職一時金と企業年金が含まれます。両者は対立する制度ではなく、退職給付という同じ枠組みの中の選択肢です。
退職一時金は企業が退職時にまとめて支払う制度で、企業年金はDBや企業型DCといった年金制度を通じて給付する仕組みを指します。厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」の退職給付統計で、一時金額と年金現価額を合算した「退職給付額」として集計されているのは、両者が一体の枠組みで扱われている表れです。
なお、企業年金と退職金は両方もらえるケースもあります。詳細は、こちらのFAQをご覧ください。
一時金と年金を併用する会社もある
企業によっては、退職一時金と企業年金の両方を組み合わせて退職給付を設計しています。たとえば「退職給付全体のうち6割を退職一時金、4割をDBで支給する」といった設計です。
- この場合、退職時には一時金を受け取り、加えて所定の年齢からDBの年金も受け取ることになります。自分の勤務先が単独型か併用型かによって、老後に入ってくるお金の時期と形が変わるため、退職金規程と年金規約の両方を確認しましょう。
DB・企業型DCも一時金受取が可能な場合がある
企業年金だからといって、必ず年金形式で受け取るわけではありません。DBも企業型DCも、規約に定めがあれば一時金としてまとめて受け取れます。
実際には、老齢給付を一時金で受け取る選択をする人も少なくありません。「企業年金=毎月の年金」という思い込みがあると、一時金受取という選択肢や、その際の税制(退職所得としての扱い)を検討しないまま受給を迎えてしまいます。受取方法の選択肢は、制度名のイメージではなく規約で確認してください。
一時金と年金はどちらで受け取るべきか
一時金と年金のどちらが有利かは、税金だけでなく、生活費・長生きリスク・資金管理・相続まで含めて総合的に判断すべきです。税負担の比較はあくまで判断材料の1つであり、税金が少ない選択が家計全体にとって最適とは限りません。
まず受取方法ごとの税制を整理し、そのうえで税金以外の判断軸を比較します。
年金形式で受け取る場合の税金
年金形式で受け取る企業年金は、原則として雑所得として所得税・住民税の課税対象になります。税法上の「公的年金等」に該当する企業年金は、公的年金等控除という所得控除の対象です。
- 重要なのは、所得の計算では老齢基礎年金・老齢厚生年金・企業年金などの公的年金等を合算するという点です。企業年金単体では少額でも、公的年金と合わせた所得が増えると、所得税・住民税に加えて国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料、医療費の自己負担割合にも影響が及ぶ場合があります。
年金形式を検討する際は、所得税だけでなく、住民税・社会保険料まで含めた毎年の負担を意識しましょう。
一時金で受け取る場合の税金
退職を給付事由とするDBの一時金や、企業型DC・iDeCoの老齢給付金を一時金で受け取る場合は、原則として退職所得に該当し、退職所得控除の対象になります。
課税対象となる退職所得の金額は、原則として「収入金額-退職所得控除額」の2分の1です。ただし、勤続年数が短い場合の退職金や役員退職金などには、2分の1課税が制限される例外があります。
ただし、会社の退職一時金・DBの一時金・iDeCoの一時金などを近い時期に受け取ると、退職所得控除の重複を調整するルールが適用され、控除を満額使えない場合があります。
- さらに、令和7年度税制改正により、確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)の一時金を先に受け取った後に退職金を受け取る場合の調整対象期間が、「前年以前4年以内」から「前年以前9年以内」へ延長されました。この改正は、2026年1月1日以後に支払われる退職一時金等から適用済みです。いわゆる「5年ルールの10年ルール化」と呼ばれる変更です。
受取時期の組み合わせによって税負担は大きく変わり、具体的な税額は退職金の額・勤続年数・加入期間によって個人差があります。最新の取り扱いとご自身の税額は、税理士や税務署に確認してください。
退職所得控除の計算手順や受取順序ごとのルールは、こちらの記事で詳しく解説しています。
税金以外の判断軸で比較する
一時金と年金は、税金以外にも複数の軸で性質が異なります。判断軸ごとの違いを表で整理すると、以下のとおりです。
| 判断軸 | 一時金 | 年金 |
|---|---|---|
| 税金 | 退職所得控除等の対象になる場合がある | 公的年金等控除等の対象になる場合がある |
| 生活費 | 自分で計画的に取り崩す | 定期収入として受け取れる |
| 長生きリスク | 長寿に備えた資金管理が必要 | 終身型なら対応しやすい |
| インフレ | 受取後の運用方法によって異なる | 定額型では購買力が低下し得る |
| 運用 | 自分で管理・運用する | 制度の条件に従って受給する |
| 相続 | 使い残した分を残しやすい | 保証期間や遺族給付の内容による |
| 大きな支出 | 住宅ローン返済等に対応しやすい | 月々の受取が中心で対応しにくい |
| 制度上の条件 | 選べない場合がある | 選べない場合がある |
たとえば、住宅ローンの残債がある人は一時金の使い道が明確ですが、資金管理に自信がない人は定期収入になる年金の安心感が勝るかもしれません。同じ税負担でも、家計の状況によって最適解は変わります。
老後の収支全体で判断する
受取方法は「税金が少ない方」ではなく、老後の収支全体で判断すべきです。判断の際は、次の4点を軸に検討しましょう。
受取方法の判断軸
- 老後の収支:年齢ごとの収入と支出のバランスに合う受け取り方か
- 長生きリスク:90歳・95歳まで生きた場合でも資金が持つか
- 資金管理能力:まとまった資金を計画的に管理・運用できるか
- 相続の意向:家族に資産を残したいか
税額シミュレーションで数十万円の差が出ても、取り崩しの失敗や使いすぎで数百万円を失えば本末転倒です。受取方法の選択は、老後資金全体の設計の中に位置づけて決めてください。
退職金・企業年金のもらい方については、こちらの記事でも解説しています。
企業年金を含めた老後資金を計算する
老後資金は、「月額いくら」ではなく「どの年齢で・どの収入が・いつまで続くか」という年齢別のキャッシュフローで計算すべきです。企業年金には有期の制度が多く、受給が終了した後に収入が減る時期が生じるため、平均的な月額だけでは不足額を正しく見積もれません。
収入の一覧化から不足額の算出、受け取りと取り崩しの設計(出口戦略)までの手順を解説します。
公的年金・企業年金・退職一時金を一覧化する
最初のステップは、老後収入の全体像を一枚に書き出すことです。情報が断片的なままでは、収入の重なりや空白期間を見落とします。
書き出す項目は以下のとおりです。
一覧化すべき項目
- 老齢基礎年金・老齢厚生年金の見込額と受給開始年齢(ねんきんネットで確認)
- DBの見込額・受給開始年齢・受給期間
- 企業型DCの資産残高と受給可能年齢
- 退職一時金の見込額と受取時期
- 通算企業年金など過去の勤務先分
- 個人で準備しているiDeCo・NISA・預貯金等
「収入源の名前・金額・開始年齢・終了年齢」の4点セットでそろえると、次のキャッシュフロー表にそのまま落とし込めます。
年齢帯別のキャッシュフローで見る
一覧化した収入は、年齢帯別のキャッシュフロー表に整理します。以下は記入イメージです。
| 年齢帯 | 就労収入 | 公的年金 | 企業年金 | 生活費 | 不足額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 60〜64歳 | あり・なし | 一部・なし | あり・なし | ○円 | ○円 |
| 65〜69歳 | あり・なし | あり | あり | ○円 | ○円 |
| 70〜74歳 | なし | あり | あり・終了 | ○円 | ○円 |
| 75歳以降 | なし | あり | 終了の場合あり | ○円 | ○円 |
この表で必ず確認したいのが、有期の企業年金が終了した後に収入が段差のように減る「年金の崖」です。たとえば65歳から10年有期のDBを受け取る人は、75歳以降に企業年金分の収入がなくなります。
崖の存在に気づかないまま生活水準を維持すると、後半の老後で急速に資産が減るおそれがあります。崖が来る年齢と減少額をあらかじめ把握し、その時期に向けた備えを計画に組み込みましょう。
年金の種類については、こちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。
税引後の収入で計算する
キャッシュフロー表の収入欄は、額面ではなく税・社会保険料を差し引いた手取りベースで記入してください。公的年金と企業年金による所得は、所得税・住民税のほか、加入する医療保険の保険料や介護保険料などに影響する場合があるためです。
額面で計算した収支がぎりぎり黒字でも、手取りベースでは赤字というケースは珍しくありません。正確な税額の見積もりが難しい場合は、税務署や税理士に確認しながら進めると安心です。
年齢別の不足額を算出する
キャッシュフロー表がそろったら、年齢ごとの不足額を次の式で計算します。
年齢ごとの不足額 = 生活費・臨時支出 −(就労収入+公的年金+企業年金等)
この不足額を期間ごとに積み上げた合計が、貯蓄や運用資産でまかなうべき老後資金の必要額です。たとえば「60〜64歳は年100万円不足×5年、75歳以降は年60万円不足×20年」であれば、合計1,700万円を資産で埋める計画になります。
全期間一律の平均で考えるのではなく、不足が大きい年齢帯を特定するのがポイントです。不足の時期が分かれば、対策の優先順位も明確になります。
医療・介護・住宅修繕等の臨時支出を加える
毎月の生活費に加えて、臨時支出を計画に織り込む必要があります。老後の家計を圧迫するのは、日常の生活費よりも、まとまって発生する一時的な支出であるケースが多いためです。
想定しておきたい臨時支出には、以下のようなものがあります。
想定しておきたい臨時支出
- 医療費(入院・手術・長期通院)
- 介護費用(在宅介護・施設入居の一時金と月額費用)
- 住宅の修繕・リフォーム(屋根・外壁・水回りなど)
- 自動車の買い替え
- 子どもの結婚支援や住宅取得の援助
- 葬儀関連の費用
金額を正確に予測するのは難しいため、まずは項目ごとに概算の予備費を確保する形で計画に加えましょう。
受取方法と取り崩しまで設計する
老後資金の計画は、貯める計画だけでなく「どう受け取り、どう取り崩すか」という出口戦略まで設計して初めて完成します。同じ資産額でも、受け取りの順序と時期によって税負担と資産寿命が変わるためです。
出口戦略で具体的に決めるべき項目は以下のとおりです。
出口戦略で具体的に決めるべき項目
- 企業年金の受給開始年齢をいつにするか
- 一時金と年金をどう組み合わせるか
- 公的年金の受給開始(繰上げ・繰下げ)とどう組み合わせるか
- 退職一時金の使い道(住宅ローン返済、当面の生活予備資金など)
- 保有する運用資産のリスクをいつ・どこまで下げるか
- 税引後の年間収入をいくらに設計するか
- 有期年金終了後(年金の崖以降)の不足をどの資産で埋めるか
- 相続に残す資産をどれにするか
資産の取り崩し順については、「必ずこの順番が正解」という固定的なルールはありません。必要な現金の額、税金への影響、資産配分のバランス、そのときの相場環境を踏まえて、定期的に見直しながら判断していきましょう。
資産運用の出口戦略については、こちらの記事でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
老後資金が不足する場合の対策
老後資金の不足が判明した場合、対策は投資だけではありません。働き方・支出・受取方法の見直しを組み合わせる方が、退職まで期間の短い50〜60代にとって確実性の高い選択になる場合が多いためです。
不足額を埋めるための選択肢を、効果の確実なものから順に幅広く整理します。
退職時期や働き方を見直す
就労期間の延長は、老後資金の不足に対して最も直接的に効く対策です。働く期間が延びると「収入が増える」「資産の取り崩し開始が遅れる」「厚生年金の加入期間が延びて将来の年金額が増える場合がある」という3つの効果が同時に得られます。
- たとえば手取り月20万円で2年長く働けば、それだけで480万円分の不足を圧縮できます。フルタイムの継続だけでなく、再雇用・短時間勤務・嘱託など、体力や希望に合わせた働き方の調整も選択肢に入れましょう。
できるだけ長く働くことは、資産寿命を延ばすうえで効果的です。詳しくは、こちらの記事も参考にしてみてください。
支出を見直す
支出の見直しは、リスクを取らずに不足額を減らせる対策です。特に固定費の削減は、一度見直せば効果が毎月続くため、老後の長い期間で大きな差になります。
見直しの優先度が高い固定費は以下のとおりです。
見直しの優先度が高い固定費
- 生命保険・医療保険(子どもの独立後は必要保障額が下がる場合が多い)
- 住居費(住宅ローンの繰上げ返済や借り換え、住み替え)
- 通信費(料金プランの見直し)
- 自動車関連費(保有台数や車格の見直し)
- 使っていないサブスクリプションや会費
月3万円の固定費削減は、65歳から90歳までの25年間で900万円の効果に相当します。生活の満足度を大きく下げずに削れる項目から着手しましょう。
NISAを活用して老後資金の不足に備える
NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度で、老後資金の準備手段の1つになります。ただし、退職まで期間の短い人ほど、リスクの取り方に注意が必要です。
NISAを活用する際は、次の点を必ず押さえてください。
NISA利用前に押さえておきたいポイント
- NISAは利益を保証する制度ではない
- 運用次第で投資元本を下回る可能性がある
- 退職までの期間が短い場合は、株式等の値動きの大きい資産へ偏りすぎない
- 数年以内に使う予定の資金は、投資に回さず現預金等で確保する
- 必要額・運用期間・許容できる損失を踏まえて商品を選ぶ
「非課税だから」という理由だけで生活防衛資金まで投資に回すのは避けましょう。不足額のうち、10年以上使う予定のない部分をNISAでの運用候補とするのが基本の考え方です。
NISAの制度概要(つみたて投資枠・成長投資枠・非課税枠の再利用)は、こちらの記事で確認できます。
iDeCoを利用できるか確認する
企業年金に加入している会社員も、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用できる場合があります。iDeCoは掛金が全額所得控除の対象になるため、税負担を抑えながら老後資金を上積みできる制度です。
iDeCoの掛金上限は、勤務先の企業年金制度や掛金額によって異なります。2026年11月30日までは、企業年金に加入している会社員等のiDeCo掛金は原則として月額2万円が上限であり、企業型DCの事業主掛金やDB等の掛金相当額との合計を月額5万5,000円以内に収める必要があります。
2026年4月1日には、企業型DCのマッチング拠出について、加入者掛金が事業主掛金を超えてはならないという制限が撤廃されました。ただし、勤務先がマッチング拠出を導入していることや、拠出限度額の範囲内であることが前提です。
さらに、2026年12月1日からは、会社員等のiDeCoと企業年金に共通する拠出限度額が月額6万2,000円に引き上げられる予定です。企業年金の掛金と合計して月額6万2,000円が上限となるため、iDeCoだけで一律に月額6万2,000円を拠出できるわけではありません。
加入前に確認すべき項目は以下のとおりです。
iDeCo利用前に押さえておきたいポイント
- 勤務先にDB・企業型DCがあるか
- 企業型DCの会社掛金の額
- マッチング拠出(会社掛金に本人が上乗せする仕組み)の有無
- マッチング拠出とiDeCoのどちらを使うか
- 自分の掛金上限額
- 原則として60歳等の受給可能年齢まで引き出せないという制約
- 退職一時金等との受取時期の兼ね合い(退職所得控除の調整)
- 受取時の税制
このように、掛金の上限や加入可能年齢は段階的に変わっていくため、加入を検討する際は、iDeCo公式サイト等で最新の条件を確認してください。
なお、企業型DCとiDeCoの併用条件やマッチング拠出との使い分けは、以下の記事で詳しく解説しています。
運用期間に応じてリスクを調整する
退職までの期間が短い人は、資産配分のリスクを意識的に調整する必要があります。運用期間が短いと、下落局面から回復を待つ時間が足りず、必要なタイミングで元本割れした資産を取り崩す事態になりかねないためです。
リスク調整の基本的な考え方は以下のとおりです。
リスク調整の基本的な考え方
- 生活防衛資金(生活費の1〜2年分など)は現預金で確保する
- 5年以内に使う資金は、値動きの大きい資産に置かない
- 株式等の比率は、下落しても生活設計が崩れない範囲に抑える
- 退職や受給開始が近づくにつれて、段階的に安定資産の比率を高める
企業型DCの商品配分も同じ考え方で見直せます。若い頃に設定した株式中心の配分のままになっていないか、マイページで確認しましょう。
退職が近い世代の運用の始め方や制度の使い分けは、こちらの記事で詳しく解説しています。
この記事のまとめ
企業年金には全員共通の月額があるわけではなく、DB・企業型DC・厚生年金基金で受取額の決まり方や確認先が異なります。老後資金を考える際は、企業年金だけでなく、厚生年金、退職一時金、預貯金や運用資産を含め、受給開始年齢や終了時期、税引後の金額まで整理することが重要です。まずは勤務先の人事・総務、規約、通知書やマイページで自分の見込額を確認し、年齢別の収支から不足額と必要な対策を検討しましょう。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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企業年金
企業年金とは、企業が従業員の退職後の生活資金を支援するために設ける年金制度のことです。代表的なものに確定給付企業年金(DB)と確定拠出年金(DC)があります。DBでは企業が給付額を保証し、DCでは従業員自身が運用リスクを負います。企業年金は、長期的な資産運用が求められるため、運用方針や市場環境の変化が大きな影響を与えます。
確定給付企業年金 (DB)
確定給付型企業年金(DB)とは、企業が従業員の退職後に受け取る年金額を保証する企業年金制度です。あらかじめ決められた給付額が支払われるため、従業員にとっては将来の見通しが立てやすいのが特徴です。DBには規約型と基金型の2種類があります。規約型は、企業が生命保険会社や信託銀行などの受託機関と契約し、受託機関が年金資産の管理や給付を行う仕組みです。基金型は、企業が企業年金基金を設立し、その基金が資産を運用し、従業員に年金を給付する仕組みです。確定拠出年金(DC)との大きな違いは、DBでは企業が運用リスクを負担する点であり、運用成績にかかわらず従業員は決まった額の年金を受け取ることができます。一方、DCでは従業員自身が運用を行い、将来受け取る年金額は運用成績によって変動します。DBのメリットとして、従業員は退職後の給付額が確定しているため安心感があることが挙げられます。また、企業にとっては従業員の定着率向上につながる点も利点となります。しかし、企業側には年金資産の運用成績が悪化した場合に追加の負担が発生するリスクがあるため、財務的な影響を考慮する必要があります。
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「企業型確定拠出年金(企業型DC:Corporate Defined Contribution Plan)」とは、企業が従業員のために設ける年金制度の一つです。企業が毎月一定額の掛金を拠出し、そのお金を従業員が自分で運用します。運用商品には、投資信託や定期預金などがあり、選び方によって将来の受取額が変わります。 この制度は、老後資金を準備するためのもので、掛金の拠出時に税制優遇があるというメリットがあります。ただし、運用によっては資産が増えることもあれば、減ることもあります。また、個人型確定拠出年金(iDeCo:Individual Defined Contribution Plan)と異なり、掛金は企業が負担します。企業にとっては福利厚生の一環となり、従業員の定着にも役立つ制度です。
退職一時金
退職一時金とは、従業員が会社を退職する際に一括で支給される退職金のことを指します。これは、勤続年数や退職時の給与、役職などに応じて計算され、長年の勤務に対する報酬や慰労の意味合いがあります。企業によっては退職年金制度と併用している場合もありますが、退職一時金は一度にまとまった金額を受け取れるため、老後資金や住宅ローンの返済、投資の原資などとして使われることが多いです。資産運用の観点では、この一時金をどのように管理し、活用するかが老後の生活設計に大きな影響を与えるため、受け取ったあとの運用プランをしっかり考えることが重要です。また、税制上は「退職所得」として扱われ、優遇措置を受けられる場合があります。
退職金規程
退職金規程とは、企業が従業員に支払う退職金について、その支給条件や計算方法、支給時期などを定めた社内ルールのことです。退職金は、従業員の勤続年数や退職理由(定年、自己都合、会社都合など)によって金額が変わる場合が多く、これらの基準が明文化されているのが退職金規程です。この規程は就業規則の一部として扱われることも多く、従業員にとっては退職後の生活資金を見通すうえで非常に重要な情報源となります。また、企業側にとっても公平で透明性の高い運用を行うための基礎となります。資産運用の視点からは、自身の退職金規程を理解しておくことで、老後資金の準備計画をより具体的に立てることができます。
ポイント制
ポイント制とは、退職金や報酬などを計算する際に、働いた年数や役職、成果などを点数(ポイント)に置き換えて管理・評価する仕組みのことを指します。特に企業年金や退職金制度などで使われることが多く、従業員が働いた実績に応じて一定のルールでポイントが加算され、将来の給付額に反映される仕組みです。 たとえば、毎年の勤務で一定のポイントが加算され、その合計ポイントに応じて退職金の金額が決まります。これにより、制度の透明性が高まり、従業員自身も自分の退職金がどのくらい積み上がっているかを把握しやすくなります。また、人事評価や貢献度も加味できるため、公平な報酬制度の一環として導入されることが多いです。







