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国民健康保険はいくらかかる?保険料の仕組み・年収別早見表と手続き・減免まで徹底解説

国民健康保険はいくらかかる?保険料の仕組み・年収別早見表と手続き・減免まで徹底解説

国民健康保険はいくらかかる?保険料の仕組み・年収別早見表と手続き・減免まで徹底解説

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公開:

2025.12.04

更新:

2025.12.04

退職や転職、フリーランスへの独立、パート収入の増加による扶養外れなど、働き方が変わるときには、国民健康保険への加入や切り替えが現実的な課題となります。「保険料が思った以上に高い」「いつまでに何を手続きすべきか分からない」「滞納したらどうなるのか不安」と感じる方も多いでしょう。

本記事では、国民健康保険の仕組みと社会保険との違い、保険料の計算方法と年収・世帯人数別の目安、加入・脱退や住所変更の手続き、退職・フリーランス・扶養外れといったケース別のポイントに加え、高額療養費制度や出産育児一時金、葬祭費、減免・軽減制度、税控除、滞納時のリスクまで解説します。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読むことで、国民健康保険の対象者・仕組み・社会保険との違いから、保険料の決まり方と年収・世帯人数別の負担イメージ、加入・脱退や住所変更の具体的な手続き、退職・独立・扶養外れといった場面での選択肢、高額療養費や出産育児一時金、葬祭費、減免・軽減制度、税控除、滞納リスクまでを一通り把握できます。

その結果、自分や家族のケースでどの保険を選ぶべきか、どのタイミングでどの手続きをすればよいか、どこまで保険料が増減し得るかを自力で見通せるようになり、手続き漏れや思わぬ高額負担・二重払いといったトラブルを防ぎやすくなります。

目次

国民健康保険とは?対象者と加入が必要なタイミング

対象者・加入条件|会社員以外は原則加入必須

社会保険との違い|扶養がなく世帯単位で加入

国民健康保険と国民年金の違い

誤解されがちな「国保は高い・損」の真相

国民健康保険料の決まり方|なぜ高くなる?仕組みを解説

計算方法|所得割・均等割など4つの構成要素

地域差と上限|住む場所で保険料が違う理由

高すぎると感じたら|前年所得による急増パターン

年収と世帯人数でわかる国民健康保険料の目安一覧

試算の前提となる世田谷区モデルと40歳未満という条件

年収100万円から1200万円までの保険料早見表

収入がない場合でも均等割などの最低負担が発生する仕組み

自治体サイト等で正確な金額を試算する方法

国民健康保険の手続きガイド|加入・脱退・住所変更

加入手続き|必要なものと窓口での流れ

やめる・変わる時|脱退・住所変更の手順

期限切れの対処法|14日を過ぎたらどうなる?

完了後の流れ|保険証と納付書の到着時期

ケース別対応|退職後・フリーランス・扶養外れの注意点

退職後の選択|任意継続と国保の比較ポイント

無職・フリーランス|収入不安定期の保険料負担

扶養の変更|外れる時・戻る時の損得と二重払い防止

安くなる可能性は?国保の減免・軽減制度まとめ

失業・退職時|会社都合・自己都合による軽減措置

所得基準|非課税世帯などの自動軽減(7・5・2割)

個別事情|障害・ひとり親・無職等の減免相談

申請方法|必要書類と認められやすいケース

あわせて知りたい関連制度|高額療養費と税控除

医療費が高額な時|高額療養費と限度額適用認定証

税金の控除|年末調整・確定申告での申告方法

支払いが厳しい時|滞納のリスクと相談窓口

国民健康保険とは?対象者と加入が必要なタイミング

日本の公的医療保険制度の仕組みと、その中で国民健康保険がどのような役割を担っているのかを解説します。会社員が加入する社会保険との違いや、加入対象となる具体的なケース、国保特有の「世帯単位」という考え方など、基礎的な知識を整理して、自分自身が加入対象になるかどうかを確認しましょう。

対象者・加入条件|会社員以外は原則加入必須

日本の公的医療保険制度では、国内に住所のある人は必ず何らかの保険に加入しなければならない「国民皆保険」の仕組みをとっています。

会社員であれば勤務先の健康保険(社会保険)に加入しますが、勤務先の被用者保険(健康保険組合や協会けんぽ等)に入らない人が加入するのが国民健康保険(国保)です。具体的には以下の人が対象となります。

  • 自営業者やフリーランス
  • 退職して次の就職まで無職の期間がある人
  • パート・アルバイトなどで勤務先の健康保険加入要件を満たさない人
  • 75歳未満の年金生活者

なお、特定の業種(医師、建設業、文芸美術など)に従事している場合、「国民健康保険組合」という同業種で組織された組合運営の国保に加入するケースもあります。

社会保険との違い|扶養がなく世帯単位で加入

国民健康保険の最大の特徴は、会社員の社会保険と違って「扶養」という概念がないことです。

社会保険では扶養家族の保険料はかかりませんが、国保では家族全員がそれぞれ被保険者となり、人数分の保険料が発生します。支払いは世帯主がまとめて行う仕組みですが、この構造の違いが家計負担に大きく影響します。

一方で、医療機関での窓口負担割合は原則3割(義務教育就学前は2割、70~74歳は2割または3割)であり、これは社会保険と同じです。「会社員でなくても同等の医療を受けられる」という安心感は変わりませんが、保険料や手当の面では異なるルールが適用されます。

これまでの説明を踏まえ、国保と社会保険の主な違いを整理します。

国民健康保険と社会保険の違いは以下Q&Aでも説明しています。

運営主体の違い:健保組合等か市区町村か

会社員の健康保険は「全国健康保険協会(協会けんぽ)」や「健康保険組合」が運営しますが、国民健康保険は「市区町村(または国保組合)」が運営します。

加入対象者の違い:会社員か自営業・無職か

会社員や公務員は社会保険に加入し、それ以外の自営業・フリーランス・無職等の人は国保に加入します。

保険料負担の違い:会社負担と扶養の有無

社会保険は会社と本人で折半しますが、国保は全額自己負担です。また、社会保険は扶養家族分がかかりませんが、国保は家族の人数に応じて保険料が増加します。

給付内容の違い:傷病・出産手当金の有無

医療費の自己負担割合や高額療養費制度は共通ですが、社会保険にある「傷病手当金(休業補償)」や「出産手当金」は、国保には原則としてありません。

こうした違いから、病気やケガで働けなくなった時の所得補償を重視するなら社会保険が有利であり、保険料の安さを重視するなら(家族構成にもよりますが)扶養に入るのが有利と言えます。働き方によって選択肢が限られる場合もありますが、両者の違いを理解しておくことは重要です。

国民健康保険と国民年金の違い

よく混同されますが、「国民健康保険(医療)」と「国民年金(老後資金)」は別の制度です。会社員を退職すると、健康保険だけでなく年金も「厚生年金」から「国民年金」への切り替えが必要です。

国民年金保険料は月額1万6,980円(令和6年度)の定額で、原則自己負担となります。会社を辞めてフリーランスや無職になる場合は、医療保険と年金の両方で手続きと支払いが発生することを覚えておきましょう。なお、失業等で収入が少ない場合には、申請により保険料の免除や納付猶予を受けられる制度もあります。

誤解されがちな「国保は高い・損」の真相

「国民健康保険は高い」「会社員時代より損をする」といったイメージを持つ人は少なくありません。しかし、その背景には保険料の計算方法や負担の仕組みの違いが関係しています。ここでは、なぜそのように感じられやすいのか、制度の構造的な要因と、正しい捉え方のポイントについて概説します。

国民健康保険料の決まり方|なぜ高くなる?仕組みを解説

国民健康保険料は、地域や世帯構成、前年の所得によって金額が大きく異なります。「なぜこんなに高いのか」「どうやって計算されているのか」という疑問に対し、保険料を構成する要素や計算の仕組み、そして会社員の社会保険と比較して割高に感じやすい構造的な理由を詳しく解説します。

計算方法|所得割・均等割など4つの構成要素

国民健康保険の保険料(自治体によっては保険税)は、各市区町村が定める計算式に基づいて算出されます。

保険料は大きく分けて「医療給付分(医療費)」「後期高齢者支援分(高齢者医療の支援)」「介護分(40歳以上のみ)」の3つの区分で構成されており、それぞれについて以下の要素を組み合わせて計算します。

国民健康保険料の決まり方については以下Q&Aでも説明しています。

所得割

前年の所得に応じて課される金額です。前年の総所得金額等から基礎控除を差し引いた「賦課標準額(課税所得)」に、自治体が定める料率をかけて計算します。所得が高い人ほど負担が大きくなる部分です。

均等割

世帯の加入者数に応じて一律に課される金額です。所得に関係なく、加入者1人あたり定額で計算されます。「一人あたりいくら」という基本料金のような性質を持ちます。

平等割(世帯割)

1世帯あたり定額で課される金額です。加入人数や所得にかかわらず、1世帯につきいくらと設定されます。現在は所得割と均等割を中心とする自治体が多いですが、この平等割や、固定資産税額に応じた資産割を採用している自治体もあります。

これら3区分(医療・支援・介護)ごとに、所得割や均等割などを算出し、それらを合算したものが年間の決定保険料となります。なお、介護分は40歳から64歳の方のみに含まれ、40歳未満の方や65歳以上の方(介護保険料として別途徴収)にはかかりません。

地域差と上限|住む場所で保険料が違う理由

国民健康保険料は全国一律ではなく、お住まいの市区町村によって大きく異なります。これは、保険料率や計算方式(平等割の有無など)を各自治体が独自に設定しているためです。

地域によって差が出る主な理由は、その地域の医療費水準や、国保財政の状況が異なることにあります。高齢化が進んで医療費がかかる地域や、加入者の平均所得が低い地域では、財政を維持するために保険料率を高めに設定せざるを得ない場合があります。

また、保険料には「賦課限度額(これ以上は請求されない上限額)」が設けられていますが、この上限額や料率は毎年のように見直されています。引っ越しをすると、同じ年収や家族構成であっても保険料が上がったり下がったりする可能性があることを知っておきましょう。

高すぎると感じたら|前年所得による急増パターン

会社員から国民健康保険に切り替えた際、多くの人が保険料の高さに驚きます。これは単なる感覚の問題ではなく、制度の仕組み上、会社員時代よりも負担が増えやすい構造になっているためです。なぜ高く感じるのか、その主な理由を5つのポイントで解説します。

会社による半額負担がない(全額自己負担)

会社員の社会保険(健康保険)は、保険料の半分を勤務先が負担する「労使折半」という仕組みです。給与明細に記載されている保険料は、実は半額分に過ぎません。一方、国民健康保険には会社負担がないため、全額を自分で支払う必要があります。退職して国保に切り替えると、単純計算で保険料の請求額が倍近くになったように感じるのはこのためです。

扶養家族にも一人ひとり保険料がかかる

社会保険では、扶養家族が何人いても保険料は加入者本人の給与額のみで決まり、追加負担はありません。しかし、国民健康保険には「扶養」という概念がなく、家族全員が被保険者となります。収入のない子どもや配偶者であっても、人数分の「均等割」が加算されるため、家族が多い世帯ほど保険料が高くなります。

加入者の年齢層と所得構造の影響

国民健康保険は、無職の方や高齢者、自営業者など多様な人が加入する制度です。会社員の健康保険組合に比べて加入者の平均年齢が高く医療費がかさむ一方で、平均所得は低い傾向にあります。この構造的な要因により、現役世代で一定の所得がある加入者に対して、相対的に高い保険料負担を求めざるを得ない現状があります。

40歳以上は介護保険料が加算される

40歳から64歳までの人は、医療保険料に加えて「介護保険料(介護分)」を支払う義務があります。これは会社員でも同じですが、退職や独立のタイミングが40歳前後と重なると、国保への切り替えと同時に介護保険料の支払いがスタートすることになり、負担感が一気に増す原因となります。

「前年の所得」で計算されるタイムラグ

国民健康保険料は、前年1月から12月までの所得に基づいて計算されます。そのため、退職して現在は無収入であっても、保険料は「会社員として給与をもらっていた前年の所得」を基準に計算されます。収入は激減したのに、高額な保険料請求が届くという「タイムラグ」が発生するため、退職直後の1年目は特に負担が重く感じられます。

年収と世帯人数でわかる国民健康保険料の目安一覧

あなたの年収や家族構成で国民健康保険料がいくらになるのか、具体的な金額の目安を知りたい方に向けて試算を行いました。ここでは東京都世田谷区の料率をモデルケースとして計算しています。国民健康保険は前年の所得に基づいて決まるため、退職後や独立後の資金計画を立てる際の参考にしてください。

試算の前提となる世田谷区モデルと40歳未満という条件

実際の保険料は自治体によって計算式が異なりますが、目安として以下の条件で試算を行いました。令和5年度(2023年度)の東京都世田谷区の料率に基づき、収入は給与所得のみ、加入者全員が40歳未満で介護保険料の対象外であると仮定しています。

40歳から64歳は介護保険料の上乗せにより負担が増える

上記の試算表は全員40歳未満として計算していますが、世帯の中に40歳から64歳の加入者がいる場合は介護分(介護保険料)が上乗せされます。例えば年収300万円の単身世帯の場合、40歳以上になると年間約5.3万円の負担が増えます。40歳前後で国保に加入する方は、この上乗せ分も考慮して資金計画を立てましょう。

年収100万円から1200万円までの保険料早見表

東京都世田谷区の料率をもとに試算した年間保険料の一例です。年収が上がるほど、また加入人数が増えるほど負担額は大きくなりますが、一定の金額を超えると賦課限度額(上限)に達し、それ以上の負担増はなくなります。

年収(給与収入)加入者1人(本人のみ)加入者2人世帯加入者3人世帯加入者4人世帯加入者5人世帯
100万円約6.6万円約12.0万円約16.0万円約20.0万円約24.0万円
200万円約15.7万円約22.0万円約27.0万円約32.0万円約37.0万円
300万円約22.9万円約29.3万円約35.8万円約42.1万円約48.6万円
400万円約30.6万円約37.0万円約43.5万円約49.9万円約56.3万円
500万円約39.0万円約45.4万円約51.8万円約58.2万円約64.6万円
600万円約47.3万円約53.7万円約60.1万円約66.5万円約72.9万円
700万円約56.0万円約62.4万円約68.8万円約75.2万円約81.6万円
800万円約65.0万円約71.4万円約77.8万円約84.2万円約87.0万円(上限)
900万円約75.0万円約81.4万円約87.0万円(上限)約87.0万円(上限)約87.0万円(上限)
1000万円約85.0万円約87.0万円(上限)約87.0万円(上限)約87.0万円(上限)約87.0万円(上限)
1100万円約87.0万円(上限)約87.0万円(上限)約87.0万円(上限)約87.0万円(上限)約87.0万円(上限)
1200万円約87.0万円(上限)約87.0万円(上限)約87.0万円(上限)約87.0万円(上限)約87.0万円(上限)
表1:年収と加入人数別の年間国民健康保険料シミュレーション(目安)

※金額は概算であり、実際の徴収額とは異なる場合があります。また、賦課限度額(上限)に達した場合はその金額で頭打ちとなります。

たとえば年収200万円で加入者1人の場合、年間保険料は約15.7万円ですが、年収500万円で加入者4人(夫婦+子2人)では年間約58万円にもなります。会社員時代は給与天引きで気づきにくい保険料ですが、国保では全額自己負担となるため、特に扶養家族が多い世帯では負担が倍増する感覚になるでしょう。

収入がない場合でも均等割などの最低負担が発生する仕組み

会社員の社会保険とは異なり、国民健康保険には「収入ゼロなら保険料も0円」というルールはありません。所得がまったくない場合でも、加入者一人ひとりに課される均等割や世帯ごとの平等割といった基本料金が必ず発生するため、最低でも年間数万円程度の負担が必要です。

所得ゼロでも基本料金がかかるが軽減措置もある

上記の表で年収100万円の場合、年間約6.6万円の保険料となっていますが、所得が一定以下の世帯については、均等割・平等割を7割・5割・2割減額する軽減措置があります。自治体の判定により軽減が適用されれば、表の金額よりも安くなる可能性があります。詳細は後述の軽減制度の項目で解説します。

自治体サイト等で正確な金額を試算する方法

ここで紹介した金額はあくまで目安であり、お住まいの地域や年度によって数万円単位で差が出ることがあります。より正確な金額を知りたい場合は、各自治体の公式サイトや、源泉徴収票の数値を入力して計算できるオンラインのシミュレーションツールを活用しましょう。「〇〇市 国民健康保険料 試算」などで検索すると、ご自身の状況に合わせた計算が可能です。

国民健康保険の手続きガイド|加入・脱退・住所変更

国民健康保険は、会社員の社会保険とは異なり、加入や脱退の際に自分自身で市区町村の窓口へ届け出る必要があります。退職して会社を離れた時や、就職して新しい保険に入った時など、ライフスタイルの変化に合わせて必要な手続きを解説します。期限や必要書類を事前に確認し、スムーズに進めましょう。

社会保険と国民健康保険を切り替える場合については以下記事で詳しく解説しています。

加入手続き|必要なものと窓口での流れ

会社を退職した時や扶養から外れた時、または他の市区町村から転入した際は、事由発生日から14日以内に国民健康保険への加入手続きが必要です。手続きが遅れると医療費が全額自己負担になるリスクがあります。ここでは、窓口での具体的な手続きの流れと、申請に必要な書類について詳しく解説します。

加入手続きに必要な書類と持ち物

加入手続きは、居住地の市区町村役所(国保担当窓口)で行います。一部自治体ではオンライン申請も始まっていますが、窓口での提出が一般的です。主な必要書類は以下の通りです。

  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)
  • マイナンバーがわかる書類(世帯主および加入者全員分)
  • 健康保険資格喪失証明書
  • 印鑑(認印 ※署名で可とする自治体もあり)
  • その他(転入時の転出証明書、外国籍の方の在留カード、出産時は母子手帳など)

特に重要な「資格喪失証明書」

会社を退職して国保に入る場合、前の職場の健康保険を脱退したことを証明する「資格喪失証明書」が必須です。これは勤務先や健康保険組合が発行するもので、退職後速やかに受け取る必要があります。会社側には発行義務がありますが、手元に届くのが遅れると国保の加入手続きも遅れてしまうため、退職時にいつ受け取れるか確認しておくと安心です。

やめる・変わる時|脱退・住所変更の手順

就職して会社の健康保険(社会保険)に入った場合や、家族の扶養に入った場合は、国民健康保険を脱退する手続きが必要です。国保は自動的には解約されないため、新しい保険証が届き次第、速やかに届け出ましょう。ここでは脱退が必要な主なケースと、住所変更時などの対応について整理します。

就職して職場の健康保険に加入した場合

新しい勤務先の健康保険証(または資格取得証明書)を持参して届け出ます。社会保険の資格取得日の翌日が、国保の資格喪失日となります。会社に入ったからといって役所が自動で国保をやめてくれるわけではないので、二重払いを防ぐためにも忘れずに手続きをしてください。

家族の扶養に入った場合

配偶者などの扶養家族になった場合も脱退手続きが必要です。扶養認定されたことがわかる書類(新しい保険証や扶養認定通知書など)を持参しましょう。

他の市区町村へ転出する場合

引っ越し前の市区町村で転出届を出す際に、あわせて国保の脱退手続きも行います。転入先の市区町村では、改めて加入手続きが必要です。なお、同じ市区町村内での転居(住所変更)の場合は、住所変更の届け出とともに保険証の書き換え(住所情報の更新)を行います。

75歳になり後期高齢者医療制度へ移行する場合

75歳の誕生日を迎えると、自動的に国民健康保険から「後期高齢者医療制度」へ移行します。この場合、脱退の届け出は原則不要です。誕生日の前日で国保の資格はなくなり、誕生日当日から後期高齢者医療の被保険者となります。新しい保険証は誕生日までに郵送で届きます。

加入者が死亡した場合

加入者が亡くなられた場合、その翌日に資格喪失となります。ご家族が死亡届を提出する際に、国保の脱退手続きもあわせて行います。後日、申請により葬祭費(多くの自治体で5万円程度)が支給されます。

任意継続との関係

退職後に会社の健康保険を「任意継続」する場合は、国保への加入手続きは不要です。退職時に国保にするか任意継続にするかを比較検討し、任意継続を選んだ場合は、その期間が終了するまで国保の手続きは行いません。

期限切れの対処法|14日を過ぎたらどうなる?

届け出は「事由発生から14日以内」が原則ですが、万が一遅れてしまった場合でも手続き自体は可能です。しかし、遅れた期間の医療費負担や保険料の遡及請求など、金銭的なデメリットが発生します。ここでは期限を過ぎてしまった場合の影響と、短期間の未加入期間についての考え方を解説します。

医療費がいったん全額自己負担になる

手続きが遅れている間に病気やケガをして医療機関にかかった場合、保険証がないため医療費を全額(10割)自己負担しなければなりません。後から手続きをすれば払い戻しを受けられますが、一時的に高額な出費が必要になります。

保険料は遡って請求される

「手続きが遅れれば、その分の保険料が浮く」ということはありません。保険料は加入すべき時(退職日の翌日など)まで遡って計算され、まとめて請求されます。数か月分を一気に支払うことになり家計への負担が大きくなるため、やはり早めの手続きが賢明です。

短期間でも未加入期間を作らない

転職の合間で「次の就職まで半月しかないから手続きしなくていいか」と考える方もいますが、おすすめできません。公的医療保険は空白期間を作らないのが原則です。わずか数日の未加入期間でも、その間に事故や急病があれば全額自己負担のリスクを負います。リスク管理として、短期間であっても加入手続きを行うことを推奨します。

完了後の流れ|保険証と納付書の到着時期

手続きが完了した後、保険証や納税通知書がいつ手元に届くのかは気になるところです。現在はマイナンバーカードとの一体化も進んでおり、従来の保険証との扱いの違いも理解しておく必要があります。ここでは保険証の交付タイミングと、保険料の支払いスケジュール、納付方法について解説します。

保険証の発行とマイナンバーカード

2024年秋以降、従来の健康保険証は廃止され、マイナンバーカードを健康保険証として利用する仕組み(マイナ保険証)へ移行が進んでいます。新規加入時には、原則として紙の保険証は発行されず、マイナンバーカードを利用することになります。カードを持っていない方などには、代わりに「資格確認書」が交付されます。

保険料の通知と支払い開始時期

国民健康保険料の決定通知書は、通常6月頃に届きます(年度の途中で加入した場合は、手続きの翌月頃)。支払いは「1年分を一括」ではなく、一般的に6月から翌年3月までの10回分割などで納めます。会社員のような給与天引きではないため、送られてくる納付書や口座振替を使って、自分で納期限までに支払う必要があります。払い忘れを防ぐためにも、口座振替の登録をしておくと便利です。

ケース別対応|退職後・フリーランス・扶養外れの注意点

会社を退職してフリーランスになる場合や、パート収入が増えて扶養から外れる場合など、ライフスタイルの変化は健康保険の手続きや負担額に直結します。それぞれのケースでどのような選択肢があり、何に気をつけるべきか。損をしないための判断基準と、知っておくべき制度のポイントを整理しました。

退職後の選択|任意継続と国保の比較ポイント

会社を退職した後の医療保険には、大きく分けて3つの選択肢があります。それぞれの特徴と保険料の決まり方を理解し、ご自身の状況で最も負担が少なくなるものを選びましょう。

  1. 会社の健康保険を任意継続する:退職前に加入していた健康保険に、個人の希望で引き続き加入する制度です。退職後20日以内の申請が必要で、最長2年間継続できます。
  2. 家族の健康保険の扶養に入る:配偶者や親などの被扶養者になります。保険料負担がないため、条件を満たすなら最も経済的です。
  3. 国民健康保険に加入する:お住まいの市区町村が運営する国保に切り替えます。

任意継続と国保、どちらが得か

任意継続の保険料は、会社負担分がなくなるため在職時の2倍(全額自己負担)になります。ただし、保険料には上限(例:協会けんぽでは標準報酬月額30万円)が設けられているのが特徴です。

一方、国民健康保険は前年の所得をもとに計算され、上限も高めに設定されています。

一般的な目安として、在職時の給与が高かった人や扶養家族がいる人は「任意継続」の方が安くなる傾向にあります。逆に、退職して収入が激減する場合や、単身者の場合は「国民健康保険」の方が安くなる可能性があります。

条件を満たすなら「扶養」が最優先

最も負担が少ないのは、家族の健康保険の「被扶養者」になることです。年収130万円未満(60歳以上などは180万円未満)等の要件を満たすなら、保険料ゼロで保険証を持つことができます。

ただし、退職直後に雇用保険の失業給付(基本手当)を受給する場合、日額によっては「収入あり」とみなされ、扶養に入れない期間が生じることがあります。扶養を検討する際は、配偶者の勤務先の担当部署へ詳細を確認しましょう。

無職・フリーランス|収入不安定期の保険料負担

会社を辞めてフリーランスや個人事業主として独立した場合、あるいは無職の期間中は、会社員時代とは異なる保険料の負担感に直面します。特に1年目の負担増と、万が一の保障不足には事前の対策が必要です。

1年目の保険料は「高すぎる」と感じやすい

国民健康保険料は前年の所得に基づいて計算されます。そのため、フリーランス1年目や無職になった直後は、会社員時代の給与所得をベースにした高額な保険料が請求されます。現在の収入が少なくても保険料は下がらない「タイムラグ」があるため、退職金や貯蓄から保険料分(年数十万円~)を確保しておくことが重要です。

確定申告や国保組合で負担を抑える

フリーランスの場合、確定申告で「青色申告特別控除(最大65万円)」を利用することで、保険料の計算元となる課税所得を減らし、国保料を抑える効果が期待できます。

また、業種によっては「文芸美術国保」や「建設国保」など、独自の国民健康保険組合に加入できる場合があります。所得にかかわらず保険料が定額であるなど、自治体の国保より有利になるケースもあるため、該当する組合がないか調べてみましょう。

傷病手当金がないリスクへの備え

会社員の社会保険には、病気やケガで休んだ際の所得補償である「傷病手当金」や、産休中の「出産手当金」がありますが、国民健康保険には原則としてこれらの給付がありません。働けなくなった時の収入減に備え、民間の就業不能保険に加入したり、生活防衛資金を厚めに用意したりといった自衛策が不可欠です。

扶養の変更|外れる時・戻る時の損得と二重払い防止

パートやアルバイトで働く人が「年収の壁」を超えたり、離婚や死別などの事情が生じたりして扶養から外れる場合も、国民健康保険への切り替え(または勤務先の社会保険への加入)が必要です。

扶養から外れる主なタイミング

以下のようなケースでは扶養を外れる手続きが必要です。

  • 年収が130万円(または106万円)を超えた
  • 勤務先で社会保険の加入要件(週20時間以上など)を満たした
  • 離婚や死別により扶養者がいなくなった
  • 配偶者が退職して、配偶者自身も国保に切り替わった

「働き損」を防ぐシミュレーション

扶養から外れると、自分で保険料(国保または社会保険)を支払うことになります。せっかく働く時間を増やして収入が増えても、保険料負担によって手取り額が減ってしまう「働き損」が起きる可能性があります。扶養範囲内で働くか、あるいは保険料負担を上回るくらいしっかり稼ぐか、世帯全体の収支をシミュレーションして働き方を決めることが大切です。

扶養内で働く場合の年収要件については以下記事で詳しく解説しています。

手続きの切り替えを忘れずに

結婚して扶養に入る場合や、逆に扶養から外れる場合は、その都度手続きが必要です。特に扶養から外れて国保に入る際は、前の健康保険の「資格喪失証明書」が必要です。

また、パート先で社会保険に加入できるなら、国保よりも保障の手厚い社会保険(厚生年金・健康保険)を選ぶのが一般的です。勤務先の条件を確認し、加入義務がある場合は速やかに手続きを行いましょう。

安くなる可能性は?国保の減免・軽減制度まとめ

国民健康保険料が高くて支払いが難しい場合、所得や事情に応じて保険料を安くする「軽減」や「減免」の制度を利用できる可能性があります。これらは大きく分けて、法律で決まっている「法定軽減」と、自治体が独自に行う「申請減免」の2種類です。適用される条件や手続き方法を知り、負担を減らせるか確認しましょう。

失業・退職時|会社都合・自己都合による軽減措置

倒産や解雇、雇い止めなど、会社都合(非自発的)な理由で失業した方には、保険料負担を大幅に抑える特例措置が用意されています。退職後の保険料は高額になりがちですが、この制度を使えば在職中と同程度、あるいはそれ以下に抑えられる可能性があります。

前年所得を30%とみなす「非自発的失業者」の特例

リストラや倒産などで職を失った場合、国民健康保険料の計算において、前年の給与所得を「30%」とみなして算定する軽減措置があります。

例えば、前年の給与所得が300万円だった場合、計算上は90万円として扱われるため、所得割額が大幅に安くなります。適用期間は、離職日の翌日が属する月から翌年度末まで(最大で約2年間)と長く、生活再建の大きな助けになります。

対象者と申請手続き

対象となるのは、ハローワークで発行される「雇用保険受給資格者証」の離職理由コードが「11,12,21,22,31,32」などに該当する「特定受給資格者」または「特定理由離職者」です。

この軽減措置を受けるには、市区町村の国保窓口への届け出が必須です(一部自治体を除く)。ハローワークで手続きをした後、離職票や受給資格者証を持って忘れずに役所で申請してください。なお、自己都合退職(正当な理由のないもの)の場合はこの特例の対象外ですが、後述する条例減免の対象になる可能性はあります。

所得基準|非課税世帯などの自動軽減(7・5・2割)

所得が一定以下の世帯に対しては、保険料のうち「均等割」と「平等割」を減額する法定軽減制度があります。これは特例軽減とは異なり、申請書の提出は原則不要で、役所が保有する所得情報に基づいて自動的に適用されます。

7割・5割・2割の段階的な軽減措置

世帯の所得水準に応じて、均等割額と平等割額が「7割」「5割」「2割」のいずれかの割合で減額されます。

判定基準は世帯の加入者数によって異なりますが、例えば「世帯の総所得金額(年金所得等も含む)が基礎控除額(43万円)以下」であれば7割軽減が適用されます。年収が少ない世帯では、この措置によって保険料が大幅に安くなり、ほぼ均等割のみの負担で済むケースもあります。

軽減を受けるには「所得申告」が必須

この制度の注意点は、軽減判定が「住民税の申告状況」に基づいていることです。収入がない(非課税)だからといって申告をしていないと、役所は所得状況を把握できず、軽減措置を適用できません。「収入が変わらないのに保険料が上がった」というケースの多くは、申告漏れが原因です。無収入であっても、毎年必ず住民税の申告(所得申告)を行いましょう。

世帯全体の所得で判定される点に注意

軽減判定には、国保に加入していない世帯主(擬制世帯主)の所得も合算されます。

例えば、子ども2人が国保に加入していても、世帯主である親が会社の健康保険に入っていて高収入である場合、世帯全体としては「低所得」とみなされず、子どもたちの軽減措置は受けられません。あくまで「世帯単位」での判定になることを覚えておいてください。

子育て世帯への未就学児軽減

2022年度から、子育て世帯の負担軽減策として、未就学児(小学校入学前の子ども)にかかる均等割額を一律で「半額」にする制度が始まっています。上記の7・5・2割軽減が適用される世帯では、軽減後の額からさらに半額となるため、子どもの保険料負担は大きく抑えられています。

個別事情|障害・ひとり親・無職等の減免相談

法定軽減の対象でなくても、災害や病気、その他の事情で生活が著しく苦しくなった場合、自治体独自の条例に基づいて保険料が減免されることがあります。諦めずに窓口へ相談することで、解決の糸口が見つかるかもしれません。

災害や急激な収入減少による減免(条例減免)

震災や風水害で被災した場合や、主たる生計維持者が死亡・重度障害を負った場合、あるいは事業の廃業や失業で収入が激減した場合などに、保険料の全部または一部が免除される制度です。

減免の基準は自治体によって異なりますが、新型コロナウイルス流行時に実施されたような緊急的な措置だけでなく、個別の事情に応じた制度を持っている自治体は多くあります。

支払いが困難な場合の分納相談

減免の要件に当てはまらない場合でも、支払いが困難であれば「分割納付(分納)」の相談に応じてもらえることが一般的です。

何も連絡せずに滞納を続けると、延滞金が発生したり、財産の差し押さえなどの法的措置を取られたりするリスクがあります。支払いが厳しいと感じたら、督促状が届くのを待つのではなく、早めに役所の窓口で「払う意思はあるが、一括では難しい」と相談してください。

申請方法|必要書類と認められやすいケース

減免制度を利用するには、自動適用の法定軽減を除き、原則として自分から申請する必要があります。申請期限を過ぎると受け付けてもらえないこともあるため、早めの行動が大切です。必要な書類を準備して窓口へ行きましょう。

申請に必要な書類の例

必要書類は申請する減免の内容によって異なりますが、一般的には以下の書類が求められます。

  • 国民健康保険税(料)減免申請書(窓口にあります)
  • 本人確認書類およびマイナンバー確認書類
  • 失業の場合:雇用保険受給資格者証、離職票、解雇通知書など
  • 収入減少の場合:給与明細、源泉徴収票、確定申告書の控え、廃業届など
  • 災害の場合:り災証明書
  • その他:医師の診断書、障害者手帳など

どのような書類が必要かは自治体や個別の事情によりますので、まずは電話や窓口で「保険料の支払いが厳しいので相談したい」と問い合わせてみることをおすすめします。

あわせて知りたい関連制度|高額療養費と税控除

国民健康保険には、高額な医療費負担を抑える仕組みや、支払った保険料で税金を安くできる制度があります。これらを活用して家計を守りましょう。一方で、保険料を滞納した場合の深刻なリスクについても正しく理解しておくことが重要です。

医療費が高額な時|高額療養費と限度額適用認定証

公的保険には、医療費が高額になっても負担を一定額に抑える「自己負担限度額」があります。また、出産や死亡時に受け取れる給付金も用意されています。

高額療養費制度については以下記事で詳しく解説しています。

高額療養費制度と限度額適用認定証

1か月の医療費自己負担額が年齢や所得に応じた上限(一般的に約8~9万円)を超えた場合、申請により超過分が払い戻されます。

また、事前に「限度額適用認定証」を取得して窓口で提示すれば、支払いを上限額までに抑えられます(マイナ保険証対応の医療機関なら認定証なしでも適用可)。一時的な立替払いが不要になるため、入院時などは事前の手続きがおすすめです。

出産育児一時金と葬祭費

加入者が出産すると、原則50万円の「出産育児一時金」が支給されます。「直接支払制度」を使えば国保から病院へ直接支払われるため、多額の現金を用意する必要がありません。

また、加入者が亡くなった際は、葬儀を行った人に「葬祭費(3万~7万円程度)」が支給されます。いずれも申請が必要ですので忘れずに手続きしましょう。

出産育児一時金については以下記事で詳しく解説しています。

傷病手当金・出産手当金はない点に注意

会社員の社会保険と大きく異なるのが、病気やケガで休んだ際の「傷病手当金」や、産休中の「出産手当金」がない点です。働けない期間の収入減少は国保ではカバーされないため、貯蓄や民間の医療保険などで自ら備える必要があります。

傷病手当金については以下記事で詳しく解説しています。

税金の控除|年末調整・確定申告での申告方法

支払った国民健康保険料は、全額が「社会保険料控除」として所得から差し引かれます。正しく申告することで、所得税や住民税の負担を軽減できます。

全額が所得控除の対象になる

1月1日から12月31日までに納付した保険料の総額(家族分を支払った場合も含む)が控除対象です。支払額が多いほど課税所得が減り、節税効果が高まります。

申告時のポイントと証明書

年末調整や確定申告の際、社会保険料控除の欄に支払総額を記入します。国民年金と異なり「控除証明書」の添付は不要ですが、金額を正確に把握するため、領収書や納付済のお知らせ等は手元に用意しておきましょう。

支払いが厳しい時|滞納のリスクと相談窓口

保険料の滞納を放置すると、税金と同様に厳しい処分が課されます。どのようなペナルティがあるかを知り、困った時は早めに行動することが大切です。

医療費が全額自己負担になるリスク

滞納が続くと督促状が届き、延滞金が加算されます。さらに放置すると保険証が返還され、「被保険者資格証明書」が交付される場合があります。これになると医療機関での窓口負担がいったん「10割(全額)」となり、経済的負担が激増します。

財産の差押え処分

催告に応じないと、最終的には財産調査が行われ、預貯金や給与、不動産などが差し押さえられます。これは裁判所の判決なしに自治体の権限で執行されるため、生活や社会的信用に大きな影響を及ぼします。

放置せず早めに相談を

払えない事情がある場合は、滞納する前に必ず市区町村の窓口へ相談してください。失業や病気などの事情があれば、分割納付(分納)や減免が認められる可能性があります。役所は「放置する人」には厳しいですが、「相談する人」には柔軟に対応してくれます。

この記事のまとめ

本記事では、国民健康保険の対象者や社会保険との違い、保険料の仕組みと年収・世帯人数別の目安、加入・脱退などの基本手続き、退職後の選択肢、高額療養費や軽減制度まで、必要なポイントを一通り整理しました。これらを把握しておくことで、退職・独立・扶養変更といった場面でも、どの制度を選ぶべきかを落ち着いて判断できるようになります。

国民健康保険を巡る疑問や不安は多いですが、仕組みと選択肢を理解しておけば、家計への影響も見通しやすくなります。この記事で基本は押さえられましたので、あとはご自身の状況にあわせて役所の試算や制度案内を確認すれば、必要な備えは十分に整えられます。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

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国民健康保険

国民健康保険とは、自営業者やフリーランス、退職して会社の健康保険を脱退した人、年金生活者などが加入する公的医療保険制度です。日本ではすべての国民が何らかの健康保険に加入する「国民皆保険制度」が採用されており、会社員や公務員が加入する「被用者保険」に対して、それ以外の人が加入するのがこの国民健康保険です。 市区町村が運営主体となっており、加入・脱退の手続きや保険料の納付、医療費の給付などは、住民票のある自治体で行います。保険料は前年の所得や世帯の構成に応じて決まり、原則として医療機関では医療費の3割を自己負担すれば診療を受けられます。病気やけが、出産などの際に医療費の支援を受けるための基本的な仕組みであり、フリーランスや非正規労働者にとっては重要な生活保障となる制度です。

社会保険

社会保険とは、国民の生活を支えるために設けられた公的な保険制度の総称で、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、介護保険などが含まれます。労働者や事業主が保険料を負担し、病気や高齢による収入減少、失業時の経済的支援を受けることができます。社会全体でリスクを分担し、生活の安定を図る仕組みです。 また、社会保険は万が一の備えとして機能し、資産運用においては「公的保障の不足分をどのように補うか」を考える前提となる存在です。

国民皆保険制度

国民皆保険制度とは、日本に住むすべての人が、公的な医療保険に必ず加入しなければならないという仕組みです。この制度のおかげで、誰でも収入や職業に関係なく、病気やけがをしたときに医療サービスを受けることができます。たとえば、病院での診察や治療にかかる費用の多くは保険でカバーされ、自己負担は原則として3割程度に抑えられています。 これは、安心して暮らすための社会的なセーフティネットであり、健康が損なわれたときでも経済的な負担を最小限に抑える役割を果たしています。資産運用を考える上でも、万が一の医療費がある程度予測できるという点で、家計管理における大切な前提のひとつとなります。

扶養

扶養とは、主に家族の生活を経済的に支えることを指し、税金や社会保険の制度においては特定の条件を満たした家族を「扶養親族」として扱う仕組みをいいます。税制上の扶養に該当すると、扶養する人の所得から一定額が控除され、結果として支払う税金が少なくなります。また健康保険における扶養では、収入の少ない配偶者や子ども、親などを被扶養者として登録することで、その人の医療費が保険でカバーされます。

被扶養者

被扶養者とは、健康保険に加入している人(被保険者)に生活の面で養われていて、自分では保険料を払う必要がない家族のことを指します。 一般的には、配偶者、子ども、親などが該当しますが、その人の年収が一定額以下であることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。たとえば、専業主婦(または主夫)や収入の少ない学生の子どもなどが典型的な例です。 被扶養者は、自分で健康保険に加入していなくても、扶養している被保険者の健康保険を通じて医療を受けることができ、医療費の一部負担で済みます。 この仕組みによって、家族全体の保険料負担が軽減されるメリットがあります。ただし、就職などで収入が増えた場合には扶養から外れ、自分自身で保険に加入する必要があります。

労使折半

労使折半とは、社会保険料などの負担を、労働者(労)と雇用主(使)が半分ずつ分担する仕組みのことを指します。たとえば、健康保険や厚生年金保険などでは、毎月発生する保険料の総額を、労働者と企業がそれぞれ同じ割合で支払っています。 この制度により、労働者が高額な保険料を一人で負担せずに済み、企業側も従業員の福利厚生を支える形になります。資産運用の観点では、将来受け取る年金や医療保障などの基盤となるため、長期的な生活設計やリスク管理に関わる重要な仕組みです。投資初心者にとっては、「保険料を会社と一緒に半分ずつ出し合って、将来の安心を支える制度」と考えると理解しやすいでしょう。

傷病手当金(しょうびょうてあてきん)

傷病手当金(しょうびょうてあてきん)とは、会社員など健康保険に加入している被保険者が、業務外の病気やけがによって働けなくなり、給与の支払いを受けられない場合に支給される所得補償制度です。 原則として、連続する3日間の待期期間のあと、4日目以降の働けなかった日から支給されます。支給期間は同一の傷病につき、支給開始日から通算して最長1年6か月です。支給額は、休業前の標準報酬日額の3分の2に相当する額で、収入減少を一定程度補う役割を果たします。 支給を受けるには、医師による「労務不能」の証明が必要です。また、会社から給与が一部支給される場合は、その分が差し引かれて調整されます。なお、退職後であっても在職中に支給要件を満たしていれば、継続して受給できる場合があります。 一方で、国民健康保険(自営業者やフリーランスなどが加入する制度)には原則として傷病手当金の仕組みがありません。 これは、国民健康保険が「個人単位」での医療費給付を目的とした制度であり、勤務先を持たない人には“給与の喪失”という概念が存在しないため、所得補償を行う仕組みが制度設計上含まれていないことが理由です。 ただし、一部の自治体では独自に「国民健康保険傷病手当金」を設けており、新型コロナウイルス感染症など特定の事由に限って給付されるケースがあります。とはいえ、全国的には例外的な措置にとどまります。 このように、傷病手当金は会社員や公務員など被用者保険に加入している人のための制度であり、自営業者など国民健康保険加入者は対象外となる点に注意が必要です。

出産手当金

出産手当金とは、働いている女性が出産のために仕事を休んだ期間中、給与の代わりとして健康保険から支給されるお金のことです。対象となるのは、会社などに勤めていて健康保険に加入している人で、産前42日(多胎妊娠の場合は98日)から産後56日までの間に仕事を休んだ日数分が支給されます。 支給額は日給のおおよそ3分の2程度で、休業中の収入減少を補う役割を持っています。なお、パートや契約社員でも条件を満たせば受け取ることができます。会社から給与が出ていないことが条件になるため、給与が支払われている場合には支給額が調整されることがあります。出産による経済的な不安を和らげるための重要な制度です。

高額療養費制度

高額療養費制度とは、1か月に医療機関で支払った自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超過分が払い戻される公的な医療費助成制度です。日本では公的医療保険により治療費の自己負担割合は原則3割(高齢者などは1〜2割)に抑えられていますが、手術や長期入院などで医療費が高額になると家計への影響は大きくなります。こうした経済的負担を軽減するために設けられているのが、この高額療養費制度です。 上限額は、70歳未満と70歳以上で異なり、さらに所得区分(年収の目安)によって細かく設定されています。たとえば、年収約370万〜770万円の方(一般的な所得層)では、1か月あたりの自己負担限度額は「約8万円+(総医療費−26.7万円)×1%」となります。これを超えた分は、後から申請によって保険者から払い戻しを受けることができます。 また、事前に健康保険の窓口で「限度額適用認定証」を取得し、医療機関に提示しておけば、病院の窓口で支払う金額そのものを最初から自己負担限度額までに抑えることも可能です。これにより、退院後の払い戻しを待たずに現金の一時的な負担を軽減できます。 同じ月に複数の医療機関を受診した場合や、同一世帯で同じ医療保険に加入している家族がいる場合には、世帯単位で医療費を合算して上限額を適用することもできます。さらに、直近12か月以内に3回以上この制度を利用して上限を超えた場合、4回目以降は「多数回該当」となり、上限額がさらに引き下げられる仕組みもあります。なお、払い戻し申請から実際の支給までには1〜2か月程度かかるのが一般的です。 資産運用の観点から見ると、この制度によって突発的な医療費リスクの一部を公的にカバーできるため、民間の医療保険や緊急時資金を過剰に積み上げる必要がない場合もあります。医療費リスクへの備えは、公的制度・民間保険・現金準備のバランスで考えることが大切です。特に高所得者や自営業者の場合は、上限額が比較的高めに設定されている点や支給までのタイムラグを踏まえ、制度と現金の両面から備えておくと安心です。

限度額適用認定証

限度額適用認定証とは、高額療養費制度を事前に活用するために保険者から発行される書類で、医療機関や薬局の窓口で健康保険証と一緒に提示すると、その月の自己負担額があらかじめ所得区分ごとの上限までに抑えられます。手術や長期入院などで多額の医療費が想定される場合でも、一時的な立て替え負担を防げるため、家計の資金繰りを安定させる役割があります。

所得割

所得割とは、住民税や社会保険料などの一部で用いられる仕組みで、個人の所得の大きさに応じて金額が決まる課税方法を指します。例えば、給与や事業収入、年金収入などの所得が多い人は負担する金額が大きくなり、所得が少ない人は負担が小さくなります。資産運用の場面では、投資から得られる利益も所得に含まれるため、所得割の対象になることがあります。投資による利益が増えると、所得割に基づいて課税額も増える仕組みとなっているため、自分の投資計画を考える際には税金面を意識することが大切です。

均等割

均等割とは、所得の多い少ないにかかわらず、住民税としてすべての納税者に一律で課される税額のことを指します。例えば、住んでいる市町村や都道府県に対して一定の金額を支払う形で、地域社会の行政サービスを維持するために使われます。金額は自治体ごとに定められていますが、全国的に大きな差はありません。所得に応じて課税される「所得割」と並び、住民税を構成する二つの柱の一つです。投資や資産運用を考える上では、均等割は収入に関係なく発生するため、最低限の税負担として家計管理に織り込んでおくことが大切です。

平等割

平等割とは、介護保険料や国民健康保険料などで用いられる算定方式の一つで、加入者一人ひとりに対して同じ金額を負担させる仕組みのことを指します。所得の多寡にかかわらず、人数に応じて一律に課されるため、家族の人数が多いほど負担が大きくなる特徴があります。均等割と似ていますが、平等割は「世帯単位」で一律に課されることが多く、制度ごとに使い分けられています。投資や資産運用を考える上では直接的な関わりは薄いですが、毎月の固定的な出費として家計管理に影響するため、把握しておくことが大切です。

賦課限度額(ふかげんどがく)

賦課限度額とは、特定の税金や保険料などを計算する際に、課税や賦課の対象となる金額に上限を設ける仕組みのことです。簡単に言うと、「これ以上の金額には税金をかけません」という上限ラインのことです。税金や社会保険料では、高所得者ほど負担が大きくなりやすい一方で、一定以上の所得に対しては公平性や制度の安定性を保つために、この限度額が設定されています。 たとえば、個人事業税や健康保険料、介護保険料などでは、それぞれ法律で賦課限度額が定められています。この仕組みによって、無制限に税金や保険料が増えることを防ぎ、国民の負担を一定範囲に抑える役割を果たしています。

任意継続

任意継続とは、会社を退職したあとも、一定の条件を満たせば引き続きその会社の健康保険(健康保険組合や協会けんぽ)に最長2年間まで加入し続けられる制度のことです。通常、退職すると会社の健康保険の資格を喪失しますが、任意継続を選べば、退職後も同じ健康保険証を使って医療を受けることができます。 この制度を利用するには、退職日の翌日から20日以内に申請する必要があり、保険料は全額自己負担(会社負担分も含む)となる点に注意が必要です。任意継続は、年齢や持病などの理由で国民健康保険よりも保険料が安くなる場合があるため、比較検討して選ぶことが大切です。

国民年金

国民年金とは、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入しなければならない、公的な年金制度です。自営業の人や学生、専業主婦(夫)などが主に対象となり、将来の老後の生活を支える「老齢基礎年金」だけでなく、障害を負ったときの「障害基礎年金」や、死亡した際の遺族のための「遺族基礎年金」なども含まれています。毎月一定の保険料を支払うことで、将来必要となる生活の土台を作る仕組みであり、日本の年金制度の基本となる重要な制度です。

基礎控除

基礎控除とは、所得税の計算において、すべての納税者に一律で適用される控除のことを指す。一定額の所得については課税対象から除外されるため、納税者の負担を軽減する役割を持つ。所得に応じて控除額が変動する場合もあり、申告不要で自動適用される。

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