
野村のETFシリーズNEXT FUNDSとは?NISAも使える低コストETFの主要銘柄と特徴を徹底解説
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公開:
2025.10.07
更新:
2025.10.07
ETFは少額から幅広い投資ができる便利な商品ですが、実際には見えにくいコストや仕組みを理解しないと「思ったほど増えない」と感じることがあります。国内で最も多く利用されている「NEXT FUNDS」は、低コスト水準の商品が揃い、初心者でも安心して選びやすいシリーズです。本記事では、新NISAを活用した組み合わせ方や、コアとなる商品とサテライトの違い、注意しておきたいレバレッジ商品の特徴まで、初めての方でも理解しやすく整理しています。
サクッとわかる!簡単要約
この文章を読むと、ETF選びで迷いやすい「コスト」「指数の違い」「為替ヘッジ」のポイントが整理でき、どの商品を軸にすれば良いかがわかります。NEXT FUNDSの強みである低コスト水準や幅広いラインナップを踏まえ、新NISAでのコア・サテライト戦略や配当重視の組み合わせ方も理解できます。さらに、思ったより増えない原因となる分配金落ちやトラッキングエラーといった仕組みも学べるので、投資初心者でも安心して自分に合ったETFを選べるようになります。
目次
NEXT FUNDSの4つの特徴|低コスト・多様な指数・リアルタイム売買・分配金
あなたはどっち?NEXT FUNDSが向いている人・いない人の特徴
NEXT FUNDSの全ラインナップ|資産クラス別に代表的なETFを紹介
新NISAでフル活用!NEXT FUNDS ETFの基本戦略(成長投資枠)
王道は「コア・サテライト戦略」|安定と成長を両立する組み合わせ術
配当生活を目指すなら|高配当株(1489)とJ-REIT(1343)の組み合わせ
投信積立との賢い使い分け|「自動おまかせ」と「裁量運用」の両立
利益を最大化するために把握しておくべきNEXT FUNDSのコスト|手数料・経費率・スプレッド
NEXT FUNDSの評判は?iシェアーズ・eMAXIS Slimと徹底比較
NEXT FUNDSとは?国内トップクラスのETFシリーズ
NEXT FUNDSは、野村アセットマネジメントが運用する国内最大級のETF(上場投資信託)シリーズです。1995年に日本初のETFとして誕生して以来、市場の成長を牽引してきました。株式や債券、REITなど多様な資産に連動し、取引時間中いつでも売買できる手軽さが魅力です。
野村アセットマネジメントが運用する日本初のETFブランド
NEXT FUNDSは、国内最大手の資産運用会社である野村アセットマネジメントが設定・運用するETFの統一ブランドです。その名称は「Nomura Exchange Traded FUNDS」の頭文字に由来し、次世代のファンドを展開する意図が込められています。
1995年5月、シリーズ第1号の「日経300指数連動型上場投信(1319)」が日本初のETFとして上場しました。以来、長年にわたり商品の拡充と市場育成に努め、国内のETF市場でトップクラスの純資産残高シェアを誇る、日本を代表するETFシリーズとなっています。
また、純資産総額に応じて信託報酬(運用管理費用)が下がる「段階料率」を導入した銘柄もあり、長期的なコスト低減が期待できます。公式サイトでは詳細な運用レポートが公開されており、運用会社の信頼性や情報開示の透明性の高さから、初心者でも安心して始めやすいシリーズと言えるでしょう。
NEXT FUNDSの4つの特徴|低コスト・多様な指数・リアルタイム売買・分配金
NEXT FUNDSが多くの投資家に選ばれる理由として、主に4つの特徴が挙げられます。投資対象の多様性から、取引のしやすさ、コストの低さまで、ETFならではのメリットが揃っています。ここでは、それぞれの特徴について具体的に解説します。
特徴1:多様な投資対象に連動
国内外の株式をはじめ、債券、REIT(不動産投資信託)、コモディティ(商品)など、あらゆる資産に連動するETFが揃っています。TOPIXや日経平均株価といった主要指数はもちろん、高配当株や特定業種、新興国市場など、幅広い投資家のニーズに応える多彩なラインナップが魅力です。
特徴2:取引時間中にリアルタイムで売買可能
東京証券取引所に上場しているため、株式と同じように取引時間中であればいつでも売買できます。希望の価格を指定して注文する「指値注文」も可能で、自分のタイミングで取引しやすい点がメリットです。市場価格は需要と供給で決まりますが、専門の金融機関が介在することで、価格がETFの純資産価値から大きく離れることは抑制されています。
インデックスファンドとETFの違いは以下Q&Aでも説明しています。
特徴3:定期的な分配金によるインカムゲイン
多くの銘柄で年に1回から4回の決算が設定されており、保有者は運用成果に応じた分配金を受け取れます。特に国内株やREITに連動するETFでは年4回が一般的です。分配金は現金収入となるため、再投資型の投資信託とは異なる魅力があります。ただし、分配金は純資産から支払われるため、その分ETFの価格が下がる点には注意が必要です。
特徴4:業界最低水準の運用コスト
運用にかかる信託報酬が低く設定されている点も大きな特徴です。例えば、米国株の代表的な指数に連動する「S&P500連動型ETF(2633)」の信託報酬は年0.066%と、業界でも特に低い水準です。長期保有するほどコストの差はリターンに影響するため、この点は重要なポイントです。近年はネット証券を中心に売買手数料が無料になる動きも広がっており、取引コスト全体を抑えやすくなっています。
NEXT FUNDSのETFは、基本的に対象指数への連動を目指すパッシブ運用です。多くは投資対象の現物を保有しますが、一部のETFでは先物などを活用して効率的な運用を行っています。いずれの場合も指数との誤差(トラッキングエラー)は小さく管理されており、低コストで手軽に分散投資ができるというETF本来のメリットを体現しています。
あなたはどっち?NEXT FUNDSが向いている人・いない人の特徴
NEXT FUNDSは多くの投資家にとって有用なツールですが、投資スタイルによっては他の選択肢が適している場合もあります。ここでは、ETF投資が向いている人の特徴と、投資信託などを検討した方が良い人の特徴を解説します。
向いている人:裁量を持って取引し、分配金を受け取りたい人
ETF投資が特に向いているのは、分配金を受け取りながら、自分の判断で売買のタイミングや価格を決めたい人です。市場価格を見ながら指値注文ができるため、計画的な取引が可能です。また、NISA口座で高配当株やREITのETFを保有すれば、分配金を非課税で受け取れるため、効率的に現金収入を得たい人にも適しています。ただし、受け取った分配金を再投資する場合は、自分で買い付けを行う手間がかかります。
慎重に検討したほうがいい人:手間なく全自動でコツコツ積み立てたい人
一方、毎月決まった額を完全に自動で積み立てたい人には、ETFより投資信託の方が便利な場合があります。ETFは自動積立に対応している証券会社が限られますが、投資信託は多くの金融機関で自動引落しによる積立設定が可能です。また、100円といった少額から購入できる点も投資信託の利点です。自身の投資スタイルに合わせて、手間なく運用したいか、裁量を持って運用したいかを基準に選ぶと良いでしょう。
最後に評判についてです。NEXT FUNDSは国内最大手であるため、ネット上には多くの口コミが見られます。「銘柄が豊富」「流動性が高い」といった肯定的な意見がある一方、「分配金の再投資が手動」「一部銘柄は取引が少ない」などの指摘もあります。口コミは参考になりますが、最終的には公式サイトで公開されている目論見書や運用レポートといった一次情報を確認し、自身で判断することが重要です。
NEXT FUNDSの全ラインナップ|資産クラス別に代表的なETFを紹介
NEXT FUNDSは、国内株式から海外の債券、REIT(不動産投資信託)まで、幅広い資産クラスと投資地域をカバーしています。この章では、各カテゴリの代表的なETFを表にまとめました。ご自身の投資戦略に合うETFを見つけるための参考にしてください。
国内株式:市場全体から高配-当株まで
日本の株式市場に投資するETFは、NEXT FUNDSの中核をなすラインナップです。市場全体の値動きを捉えるインデックス型から、配当金収入を重視するタイプまで、ポートフォリオの目的に応じて選べます。
商品名 | 信託報酬(目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
NF・TOPIX(1306) | 0.0586% | 成長枠 | コア | 日本株の広域分散。段階料率で実効コストが低下、流動性は国内屈指。 |
NF・日経225(1321) | 0.10527% | 成長枠 | コア/サブコア | 大型株225に連動。報道露出が多く指数理解が容易。 |
NF・日経平均高配当50(1489) | 0.308% | 成長枠 | サテライト | 予想配当利回り上位50銘柄。年4回分配、配当キャッシュフロー重視。 |
表で紹介したETFのほか、企業の収益性に着目した「JPX日経インデックス400」や、新興成長株中心の指数に連動するETFもあります。これらを組み合わせることで、より多角的な日本株ポートフォリオを構築することが可能です。
REIT(リート):不動産市場にも手軽にアクセス
ETFを通じて、個人では投資しにくい不動産市場にも手軽にアクセスできます。REITは、オフィスビルや商業施設などから得られる賃料収入を原資として投資家に分配するため、株式とは異なる値動きや高い分配金利回りが期待できます。
商品名 | 信託報酬(目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
NF・J-REIT(東証REIT指数)(1343) | 0.1705% | 成長枠 | サテライト | J-REIT全体に分散。年4回分配でインカム狙いに適合。 |
NF・外国REIT(S&P先進国REIT)(2515) | 0.187% | 成長枠 | サテライト | 先進国のREIT市場(日本除く)に広域分散。為替ヘッジなし。 |
REITは安定した分配金が魅力ですが、金利が上昇する局面では価格が下落しやすい傾向がある点に注意が必要です。国内のREIT(1343)だけでなく、海外のREIT(2515)も組み合わせることで、投資地域を分散させることも有効な戦略です。
REITについての基礎解説は、以下Q&Aをご参照ください。
海外株式:米国・先進国・新興国への投資
世界の経済成長を取り込むための海外株式ETFも充実しています。米国をはじめとする先進国全体、あるいは高い成長が期待される新興国など、幅広い選択肢から選べます。為替変動リスクを抑える「為替ヘッジあり」のタイプも用意されています。
商品名 | 信託報酬(目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
NF・NASDAQ-100(無ヘッジ)(1545) | 0.22% | 成長枠 | サテライト | 米ハイテク大型中心。成長性は高いが価格変動も大きい。 |
NF・S&P500(無ヘッジ)(2633) | 0.066% | 成長枠 | コア | 米国大型株500社。国内最低水準のコスト。 |
NF・外国株 MSCIコクサイ(無ヘッジ)(2513) | 0.187% | 成長枠 | コア | 日本除く先進国に広域分散。 |
NF・外国株 MSCIコクサイ(為替ヘッジあり)(2514) | 0.187% | 成長枠 | コア | 為替ヘッジで為替変動の影響を抑制(ヘッジコストあり)。 |
NF・新興国株式(無ヘッジ)(2520) | 0.209% | 成長枠 | サテライト | 新興国株の広域分散。成長性に期待、価格変動は大きめ。 |
NF・タイ株式(SET50)(1559) | 0.605% | 成長枠 | サテライト | タイ証券取引所の上位50銘柄(SET50)に連動。年1回分配(8/10)、円換算・無ヘッジで為替影響あり。単一国集中のため価格変動・流動性に注意。 |
NF・インド株(Nifty 50)(1678) | 1.045% | 成長枠 | サテライト | インド主要50社へ集中投資。国別・通貨リスクを伴う(年1回分配)。 |
ポートフォリオのコアには、S&P500やMSCIコクサイのような広域分散型が適しています。一方、NASDAQ-100や新興国株式は、より高いリターンを狙うためのサテライト(補完的)な位置づけとして活用すると良いでしょう。
債券:ポートフォリオの安定を支える外国債券
債券は、一般的に株式とは異なる値動きをするため、ポートフォリオ全体のリスクを安定させる効果が期待できる資産です。NEXT FUNDSでは、主に海外の国債に投資するETFが提供されています。
商品名 | 信託報酬(目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
NF・世界国債(除く日本・無ヘッジ)(2511) | 0.132% | 成長枠 | サブコア | 先進国国債で価格変動を抑制。為替の影響を受ける。 |
NF・新興国債券(無ヘッジ)(2519) | 0.209% | 成長枠 | サテライト | 高い利回りが魅力。金利や信用リスク等の影響を受けやすい。 |
株式中心のポートフォリオに、先進国の国債(2511)を組み入れることで、市場の下落局面での緩衝材としての役割が期待できます。新興国債券(2519)は、より高い利回りを狙うサテライト資産として、リスク許容度に応じて組み入れることを検討しましょう。
債券型投資信託・ETFのメリットは以下Q&Aでも説明しています。
レバレッジ/インバース型:短期売買向けの特殊なETF
NEXT FUNDSには、指数の日々の値動きに対して、2倍(レバレッジ型)やマイナス2倍(ダブルインバース型)のリターンを目指す特殊なETFがあります。これらは短期的な市場予測に基づいて利益を狙うための金融商品であり、長期的な資産形成には適していません。
商品名 | 信託報酬(目安) | NISA対応 | 位置づけ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
NF・日経平均レバレッジ(1570) | 0.88% | 成長枠 | 戦術的利用 | 日経平均の「日々の騰落率×2倍」に連動。短期売買向き。 |
NF・日経平均ダブルインバース(1357) | 0.88% | 成長枠 | 戦術的利用 | 日経平均の「日々の騰落率×-2倍」に連動。下落相場の短期戦略向き。 |
これらのETFは、日次の値動きを目標に設計されており、ボラティリティ・ドラッグ(複利効果による乖離)により長期保有で指数と乖離・減価する可能性があります。短期戦術に限定し、目論見書で仕組みを十分に確認してください。
新NISAでフル活用!NEXT FUNDS ETFの基本戦略(成長投資枠)
NISAの「成長投資枠」を使えば、ETFの運用で得られた利益が非課税になります。この章では、非課税メリットを最大限に活かし、NEXT FUNDSのETFで資産を運用するための具体的な戦略を紹介します。ポートフォリオの組み方から、配当収入を重視した考え方、投資信託との使い分けまで、すぐに実践できる活用法を解説します。
王道は「コア・サテライト戦略」|安定と成長を両立する組み合わせ術
NISAの成長投資枠を効果的に使うには、ポートフォリオを安定した「コア(核)」と、特徴的な「サテライト(衛星)」に分けて運用する「コア・サテライト戦略」が有効です。
コア(主軸)資産の役割は、ポートフォリオの7〜9割を占める主軸です。長期的な資産成長の土台として、米国株式や全世界株式など、広範囲に分散されたインデックスに連動するETFが適しています。NEXT FUNDSでは「S&P500指数連動ETF (2633)」などが代表例です。
サテライト(補完)資産の役割は、ポートフォリオの1〜3割程度で、個性的な味付けを加える部分です。例えば、高配当株ETF(1489)やJ-REIT ETF(1343)を加えて配当利回りを高めたり、金ETF(1328)でインフレに備えたりします。あくまでコアを補完する位置づけで、全体の分散を崩さない範囲で組み合わせるのがポイントです。
年に1回程度、資産配分のバランスを確認し、必要に応じてリバランス(調整)すると良いでしょう。NISA枠内であれば、売却益に税金がかからずに調整できます。
コアサテライト戦略については以下Q&Aでも説明しています。
配当生活を目指すなら|高配当株(1489)とJ-REIT(1343)の組み合わせ
NISAの非課税メリットは、定期的な配当収入を最大化したい投資家にとって特に有効です。ここでは、NEXT FUNDSの「日経平均高配当株50 ETF(1489)」と「東証REIT指数 ETF(1343)」を組み合わせた、配当重視のポートフォリオを紹介します。
ポートフォリオ例と期待できる分配金
例えば、「日経平均高配当株50 (1489)」と「東証REIT指数 (1343)」を半分ずつ保有するポートフォリオを考えます。執筆時点(2025年9月)の分配金利回りを基にすると、ポートフォリオ全体では約4%の利回りが期待できます。仮に600万円を投資すれば、年間約24万円(毎月2万円相当)の分配金が非課税で得られる計算になり、生活費の足しにすることも可能です。
受け取った分配金は、そのまま使うことも、再投資に回して複利効果を狙うこともできます。ただし、ETFの分配金は自動で再投資されないため、再投資する場合は自身で買い付けを行う必要があります。
分配金が非課税になるNISAの大きなメリット
通常、ETFの分配金には約20%の税金がかかりますが、NISA口座で受け取る場合は全額非課税になります。税引前の利回りをそのまま享受できるため、課税口座に比べて効率的に資産を増やすことができます。特に、1489や1343のような高利回り商品をNISA枠で保有することは、節税効果を最大化する賢い戦略と言えます。
NISAが分配金で非課税になる仕組みは以下Q&Aでも説明しています。
運用上のリスクと注意点
このポートフォリオは、配当収入を重視する分、資産価値そのものの成長は比較的穏やかになる傾向があります。また、景気後退期には企業業績や不動産市況の悪化により、分配金が減少(減配)するリスクも念頭に置く必要があります。そのため、定期的に市況を確認し、必要であればポートフォリオを見直す柔軟さも大切です。
投信積立との賢い使い分け|「自動おまかせ」と「裁量運用」の両立
NISAの「成長投資枠」でETFを運用する一方、「つみたて投資枠」では投資信託を活用するという使い分けが、効率的な資産形成につながります。ETFと投資信託は特徴が異なるため、それぞれの長所を活かすことがポイントです。
具体的には、毎月の給与からコツコツ積み立てる部分は、手間のかからない投資信託を「つみたて投資枠」やiDeCoで自動設定します。一方で、ボーナスなどのまとまった資金は、自分の好きなタイミングで「成長投資枠」を使い、ETFをスポット購入する、といった使い分けが考えられます。
投資信託は1日1回の基準価額で取引されるため、日中の価格変動を気にせず機械的に積み立てやすいのが利点です。一方、ETFはリアルタイムで価格が動くため、自分の判断で機動的に取引したい場合に適しています。
例えるなら、投資信託は「自動運転」、ETFは「マニュアル運転」です。資産形成の土台は投資信託の自動積立に任せ、追加の投資や戦略的な運用をETFで行うというハイブリッドなアプローチが、新NISAでは可能になります。
利益を最大化するために把握しておくべきNEXT FUNDSのコスト|手数料・経費率・スプレッド
ETFへの投資では、リターンだけでなくコストを意識することが重要です。長期投資においては、わずかなコストの差が最終的な成果に大きく影響します。この章では、ETFの運用にかかる「保有コスト」と「取引コスト」の全体像を解説します。コストを正しく理解し、賢く商品を選ぶことが利益の最大化につながります。
「信託報酬」だけじゃない!“実質コスト”を確認する方法
ETFを保有している間、継続的に発生するのが「保有コスト」です。一般的に「信託報酬」が注目されますが、投資家が本当に負担するコストはそれだけではありません。ここでは、目に見えにくいコストを含めた「実質コスト」の確認方法を解説します。
目論見書に載っている「信託報酬」
信託報酬(または運用管理費用)は、ETFの運用会社に支払う手数料で、目論見書に「年率〇%」と記載されています。NEXT FUNDSのETFも、連動する指数によって年0.1%程度のものから0.5%を超えるものまで様々です。これはETFを保有している間、日割りで純資産から差し引かれます。
運用報告書でわかる「総経費率」
投資家が実際に負担するコストは、信託報酬に加えて、目論見書には記載されない費用も含まれます。これらは「隠れコスト」とも呼ばれ、ETF内での株式売買手数料や監査費用などが該当します。
これらの費用をすべて合計したものが「総経費率」であり、年に一度発行される運用報告書で確認できます。この総経費率こそが、投資家の実質的な負担コストです。近年は、目論見書に参考値として総経費率が記載されるケースも増えています。
コストを確認する際のポイント
ETFを選ぶ際は、信託報酬だけでなく、運用報告書で総経費率を確認することが重要です。NEXT FUNDSの主要なETFは、純資産規模が大きく運用効率も良いため、総経費率は業界でも低い水準にあります。
しかし、投資対象が同じであれば、よりコストの低い商品を選ぶのが投資の鉄則です。NEXT FUNDSのラインナップ内や、他社の類似商品と比較検討する姿勢を常に持つようにしましょう。
取引コストは2種類|売買手数料とスプレッド(売買価格差)
ETFの売買時には、保有コストとは別に「取引コスト」が発生します。主なものとして、証券会社に支払う「売買手数料」と、市場で発生する「スプレッド」があります。また、海外資産に投資するETFでは「為替のヘッジコスト」も考慮に入れる必要があります。
証券会社に支払う「売買手数料」
ETFを売買する際に、証券会社に支払う手数料です。しかし近年、ネット証券を中心に競争が進み、国内に上場するETFの売買手数料を無料としているところが増えました。特に新NISA制度の開始以降、この動きは加速しており、個人投資家にとっては取引コストを気にせず売買しやすい環境が整っています。
市場で発生する「スプレッド」
スプレッドとは、市場におけるETFの「買いたい値段(気配値)」と「売りたい値段(気配値)」の差のことです。この価格差が、売買時の実質的なコストとなります。
NEXT FUNDSの主要なETFのように取引が活発な銘柄では、スプレッドは非常に小さいため、ほとんど気にする必要はありません。しかし、取引量の少ない銘柄ではスプレッドが広がりやすいため、希望の価格で注文を出す「指値注文」を活用するのが基本です。
為替ヘッジありETFの「ヘッジコスト」
海外資産に投資するETFの中には、為替変動のリスクを抑える「為替ヘッジあり」のタイプがあります。この為替ヘッジを行う際には、2国間の金利差などに応じた「ヘッジコスト」が発生します。
例えば、現在の日本と米国のように金利差が大きい状況では、このコストも高くなる傾向があります。為替リスクを抑えるメリットと、ヘッジコストを負担するデメリットを比較して、どちらのタイプを選ぶか判断しましょう。
以上の通り、ETFのコストは多岐にわたります。信託報酬だけでなく、総経費率や取引コストを総合的に見て商品を選ぶことが、長期的なリターン向上につながります。
「思ったより儲からない?」を防ぐETFの連動性の仕組み
ETFの価格は、連動対象の指数と完全に一致するわけではありません。コストや分配金の仕組みが、ETFのリターンにどう影響するのか。ここでは「思ったように儲からない」という誤解を避けるための、価格の仕組みに関する3つの重要ポイントを解説します。
ポイント1:指数との間に「ズレ」が生じる理由
ETFは指数に連動しますが、完全に一致はせず、わずかなズレ(トラッキングエラー)が生じます。主な原因は、信託報酬などの運用コストや、受け取る配当金にかかる税金などです。これらの要因により、ETFのリターンは指数をわずかに下回るのが一般的です。
また、ETFには理論上の価格である「基準価額」と、実際に取引される「市場価格」の2つがありますが、専門の金融機関の働きにより、この2つの価格の差は通常ごくわずかに保たれています。
ポイント2:分配金とトータルリターンで評価する
ETFが分配金を支払うと、その金額分だけETFの価格は下落します(権利落ち)。これは利益が確定したのではなく、資産の一部が現金化されて戻ってきた形です。
そのため、ETFの成果を評価する際は、値上がり益だけでなく、受け取った分配金も合計した「トータルリターン」で見ることが重要です。
ポイント3:為替ヘッジの有無による違いを理解する
海外資産に投資するETFでは、為替の変動がリターンに影響します。
- 為替ヘッジあり:円高による資産価値の目減りを防ぎますが、そのためのコストがかかります。
- 為替ヘッジなし:円安の恩恵を受けてリターンが上乗せされますが、円高局面では資産価値が目減りします。
どちらが良いかは一概には言えず、ご自身の為替相場に対する考え方や、リスク許容度に応じて選択することが大切です。
NEXT FUNDSの評判は?iシェアーズ・eMAXIS Slimと徹底比較
ETFを選ぶ際には、NEXT FUNDSだけでなく、iシェアーズなどの競合ETFや、eMAXIS Slimシリーズのような低コスト投資信託も比較対象となります。この章では、同じ投資対象の商品を「コスト」と「流動性(取引のしやすさ)」で比較する際のポイントを解説します。また、複数のETFを組み合わせる際の注意点についても触れていきます。
同じ指数ならコストと流動性で比較|主要ETFの横並びチェック
連動対象となる指数が同じETFは、基本的にどれを選んでも値動きはほぼ同じです。そのため、商品を選ぶ際は「より低コストか」「より取引しやすいか」という2つの視点が重要になります。ここでは、主要な指数に連動するNEXT FUNDSのETFと、競合する商品を具体的に比較します。
指数(テーマ) | NEXT FUNDS ETF(信託報酬) | 競合商品(信託報酬) |
---|---|---|
TOPIX (国内株式) | NF・TOPIX ETF (1306) 0.0586% | iシェアーズ・コア TOPIX ETF (1475):0.06%程度 |
日経平均 (国内株式) | NF・日経225 ETF (1321)実質0.10527% | 日興・日経225 ETF (1320):0.17%程度 |
S&P500 (米国株式) | NF・S&P500ヘッジ無ETF (2633)0.066% | eMAXIS Slim米国株式(投信) 0.0814% |
東証REIT指数 (J-REIT) | NF・J-REIT ETF (1343)0.1705% | iシェアーズ・コア JリートETF (1476)0.165% |
※上記信託報酬は税込、執筆時点(2025年9月)の情報です。
TOPIX連動型ETFの比較
信託報酬ではiシェアーズ(1475)に優位性があります。一方で、純資産残高や日々の取引量(流動性)ではNEXT FUNDS(1306)が大きく上回っています。コストを最優先するなら1475、取引のしやすさを重視するなら1306が一つの判断基準となります。
S&P500連動商品の比較
NEXT FUNDSのETF(2633)は信託報酬が極めて低い水準です。一方、競合となる投資信託のeMAXIS Slimも低コスト化が進んでおり、その差はわずかです。リアルタイムで取引したいならETF、自動積立などの利便性を重視するなら投資信託、というように投資スタイルに応じて選ぶと良いでしょう。
J-REIT指数連動型ETFの比較
NEXT FUNDS(1343)とiシェアーズ(1476)は、信託報酬、純資産規模ともに非常に近く、どちらも有力な選択肢です。このレベルになると、どちらを選んでも大きな差はないと言えます。
このように、同じ指数でも商品ごとに特徴があります。コストだけでなく、純資産の大きさや日々の取引量も確認し、ご自身の投資方針(コスト最優先か、取引のしやすさか等)に合わせて総合的に判断することが大切です。
組み合わせの注意点|資産の「ダブり」を防ぎ補完効果を高める
複数のETFを組み合わせてポートフォリオを作る際は、それぞれのETFがどのような役割を担うのかを意識することが重要です。特に、意図せず同じような資産に重複して投資してしまう「ダブり」には注意が必要です。
特定のインデックスに対する集中投資の注意点については以下Q&Aでも説明しています。
やってはいけない「意図しない重複(ダブり)」
例えば、「先進国株式ETF」と「S&P500 ETF」を両方保有すると、先進国株式ETFの約7割は米国株で構成されているため、結果的にポートフォリオが米国株に大きく偏ってしまいます。また、「TOPIX連動ETF」と「JPX日経400連動ETF」を両方持つのも、多くの銘柄が重複します。
これは、米国株への比重を高めたいなど、意図的に行うのであれば問題ありません。しかし、無自覚に似たようなETFを複数保有すると、分散効果が薄れたり、無駄なコストを払ったりすることになりかねません。
分散効果を高める「補完的な組み合わせ」
効果的なポートフォリオを組むには、値動きの異なる資産を組み合わせることが基本です。具体的には、以下のような補完関係にあるETFを組み合わせるのがおすすめです。
- 株式と債券:景気変動に対して異なる値動きをしやすい代表的な組み合わせです。
- 国内資産と海外資産:投資地域を分散させることで、特定の国の経済リスクを軽減します。
- 主軸指数とテーマ指数:S&P500などの主軸に、新興国や特定業種などのテーマ型を少量加えることで、リターンの上乗せを狙います。
ただし、組み合わせる際には資産間の相関関係にも注意が必要です。例えば、日本のREITと日本株は、同じ国内の経済要因で動くため、ある程度連動します。そのため、株式と債券の組み合わせほどにはリスク分散効果が高くない点も理解しておくと良いでしょう。
ポートフォリオ全体のコストも忘れずに
複数のETFを組み合わせる際は、ポートフォリオ全体のコストも意識しましょう。一般的に、株式ETFに比べて債券やコモディティのETFは信託報酬が高めに設定されています。これらの比率が高まると、ポートフォリオ全体の平均コストも上昇します。意図しない重複を避け、資産の役割分担を明確にすることが、コスト効率の良いポートフォリオ運用につながります。
この記事のまとめ
この文章のポイントは、ETFは「同じ指数ならコストと流動性を重視して選ぶ」こと、そして「コア商品を中心にサテライトで役割を補う」ことにあります。新NISAでは非課税の利点を活かしつつ、年に一度の見直しでバランスを保つのが安心です。為替ヘッジやレバレッジ型は特徴とリスクを理解して、必要なときだけ活用しましょう。迷ったときは公式資料を確認したり専門家に相談することで、不安を減らしながら自分に合った投資を続けられます。

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ETF(上場投資信託)
ETF(上場投資信託)とは、証券取引所で株式のように売買できる投資信託のことです。日経平均やS&P500といった株価指数、コモディティ(原油や金など)に連動するものが多く、1つのETFを買うだけで幅広い銘柄に分散投資できるのが特徴です。通常の投資信託に比べて手数料が低く、価格がリアルタイムで変動するため、売買のタイミングを柔軟に選べます。コストを抑えながら分散投資をしたい人や、長期運用を考えている投資家にとって便利な選択肢です。
インデックス
インデックス(Index)は、市場の動きを把握するための重要な指標です。複数の銘柄を一定の基準で組み合わせることで、市場全体や特定分野の値動きを分かりやすく数値化しています。 代表的なものには、日本の株式市場を代表する日経平均株価やTOPIX、米国市場の代表格であるS&P500などがあります。これらのインデックスは、投資信託などの運用成果を評価する際の基準として広く活用されており、特にパッシブ運用(インデックス運用)では、この指標と同じような値動きを実現することを目標としています。
TOPIX
TOPIXとは、「東証株価指数(Tokyo Stock Price Index)」の略で、東京証券取引所に上場している日本企業の中で、プライム市場に属するすべての銘柄の株価をもとに算出される株価指数です。 この指数は、上場企業全体の株価の動きを表しているため、日本の株式市場全体の健康状態や傾向を知るための「ものさし」として使われます。投資信託やETF(上場投資信託)などでは、TOPIXに連動する商品も多く販売されており、個別の企業に投資しなくても、日本経済全体に分散して投資するような効果が得られます。投資初心者にとっては、日本市場の動きをざっくりとつかむために、まず注目しておきたい指数のひとつです。
日経平均株価
日経平均株価とは、東京証券取引所に上場している日本の代表的な企業225社の株価をもとに算出される、日本を代表する株価指数のひとつです。正式には「日経225」とも呼ばれ、日本経済新聞社が算出・公表しています。 この指数は、対象となる225銘柄の「株価の平均値」で構成されており、時価総額ではなく株価そのものの水準が影響を与える「株価単純平均型」の指数です。つまり、株価が高い銘柄の動きが、指数全体に与える影響が大きくなります。日経平均株価は、景気や市場全体の動向を知るうえで広く利用されており、ニュースや経済指標でも頻繁に登場するため、資産運用の初歩として知っておきたい重要な指標です。
REIT(Real Estate Investment Trust/不動産投資信託)
REIT(Real Estate Investment Trust/不動産投資信託)とは、多くの投資家から集めた資金を使って、オフィスビルや商業施設、マンション、物流施設などの不動産に投資し、そこで得られた賃貸収入や売却益を分配する金融商品です。 REITは証券取引所に上場されており、株式と同じように市場で売買できます。そのため、通常の不動産投資と比べて流動性が高く、少額から手軽に不動産投資を始められるのが大きな特徴です。 投資家は、REITを通じて間接的にさまざまな不動産の「オーナー」となり、不動産運用のプロによる安定した収益(インカムゲイン)を得ることができます。しかも、実物の不動産を所有するわけではないので、物件の管理や修繕といった手間がかからない点も魅力です。また、複数の物件に分散投資しているため、リスクを抑えながら収益を狙える点も人気の理由です。 一方で、REITの価格は、不動産市況や金利の動向、経済環境の変化などの影響を受けます。特に金利が上昇すると、REITの価格が下がる傾向があるため、市場環境を定期的にチェックしながら投資判断を行うことが重要です。 REITは、安定した収益を重視する人や、実物資産への投資に関心があるものの手間やコストを抑えたい人にとって、有力な選択肢となる資産運用手段の一つです。
コモディティ
コモディティは、世界で標準化された形で売買される原材料・一次産品の総称で、貴金属(金・銀・プラチナ)、エネルギー資源(原油・天然ガス)、農産物(小麦・トウモロコシ・大豆)、産業用金属(銅・アルミニウム)などに分類される。 投資経路は大きく四つある。①現物保有(地金やコイン)、②先物取引、③商品指数連動型ETF・ETN、④コモディティファンド。実務では先物を組み込んだETFが主流で、代表的な指数にブルームバーグ・コモディティ・インデックスや S\&P GSCI がある。 価格は需給バランス、在庫統計、OPEC政策、地政学リスク、天候、為替など多様な要因で変動する。先物運用では限月乗り換え時のロールコスト(コンタンゴ)や信託報酬がリターンを圧迫し、現物保有では保管・保険料、税制(例:金地金の譲渡益は総合課税)が影響するため、コスト構造の把握が欠かせない。 コモディティは株式・債券との相関が相対的に低く、インフレ率と連動しやすいことから、分散投資とインフレヘッジに有効とされる。一方で短期的な価格変動が大きく、資産配分比率や取引手段を目的に合わせて設計し、損失許容度に応じたリスク管理を徹底することが重要となる。
指値注文
指値注文とは、自分が売買したい価格をあらかじめ指定して出す注文方法のことをいいます。たとえば「この株を1,000円になったら買いたい」や「1,200円以上になったら売りたい」といったように、自分が希望する価格を指定して注文します。 指定した価格に達しない限り売買は成立しないため、思い通りの価格で取引できる一方で、注文が成立しないまま終わる可能性もあります。投資家が損失を抑えたり、利益をしっかり確保したりするために、計画的に使われる注文方法です。特に相場が急変したときに冷静に売買するための手段として、初心者にも役立つ仕組みです。
分配金
分配金とは、投資信託やREIT(不動産投資信託)などが運用によって得た収益の一部を、投資家に還元するお金のことです。これは株式でいう「配当金」に似ていますが、分配金には運用益だけでなく、元本の一部が含まれることもあります。そのため、分配金を受け取るたびに自分の投資元本が少しずつ減っている可能性もあるという点に注意が必要です。分配金の有無や頻度は投資信託の商品ごとに異なり、毎月、半年ごと、年に一度などさまざまです。投資初心者にとっては、「お金が戻ってくる」という安心感がありますが、長期的な資産形成を考えるうえでは、分配金の出し方やその内容をしっかり理解することが大切です。
信託報酬
信託報酬とは、投資信託やETFの運用・管理にかかる費用として投資家が間接的に負担する手数料であり、運用会社・販売会社・受託銀行の三者に配分されます。 通常は年率〇%と表示され、その割合を基準価額にあたるNAV(Net Asset Value)に日割りで乗じる形で毎日控除されるため、投資家が口座から現金で支払う場面はありません。 したがって運用成績がマイナスでも信託報酬は必ず差し引かれ、長期にわたる複利効果を目減りさせる“見えないコスト”として意識されます。 販売時に一度だけ負担する販売手数料や、法定監査報酬などと異なり、信託報酬は保有期間中ずっと発生するランニングコストです。 実際には運用会社が3〜6割、販売会社が3〜5割、受託銀行が1〜2割前後を受け取る設計が一般的で、アクティブ型ファンドでは1%超、インデックス型では0.1%台まで低下するケースもあります。 同じファンドタイプなら総経費率 TER(Total Expense Ratio)や実質コストを比較し、長期保有ほど差が拡大する点に留意して商品選択を行うことが重要です。
段階料率
段階料率とは、取引や契約における手数料や報酬、税率などが、一定の金額や条件に応じて段階的に変わる仕組みのことです。たとえば、投資信託の運用報酬や、信託報酬、相続税などでは、預け入れ金額や評価額が大きくなるほど、料率が変化することがあります。 具体的には、金額が小さい部分には高めの料率が適用され、一定額を超える部分には低めの料率が適用されるといった形です。このような仕組みにすることで、利用者にとって過度な負担とならず、公平性や実用性を保つことができます。資産運用においては、段階料率が適用される手数料体系を理解しておくことで、実際に支払う金額の見通しを立てやすくなり、コスト面での判断にも役立ちます。
パッシブ運用
パッシブ運用とは、投資信託を選ぶ際の運用手法の一つ(対義語:アクティブ運用)。比較のために用いる指標であるベンチマーク(日経平均やNASDAQなど)と同様の動きを目標とする運用手法で、組み入れ銘柄数は多くなる傾向がある。パッシブ運用はアクティブ運用に比べて販売手数料や信託報酬などのコストは安くて済むが、リスクが分散される分、リターンも小さくなるという特徴がある。
トラッキングエラー
トラッキングエラーとは、主にインデックスファンドなどの運用成績が、目標とする指数(たとえば日経平均株価やS&P500など)とどれくらいズレているかを示す指標です。ファンドは基本的に指数に連動するように運用されますが、運用コストや売買のタイミングの違いなどにより、実際の成績が指数と完全に一致することはまれです。 この差が大きいほど、運用が指数とずれていると評価されます。トラッキングエラーが小さいほど、より正確に指数に連動しているとされ、インデックス投資においては重要な確認ポイントとなります。
流動性
流動性とは、資産を「現金に変えやすいかどうか」を表す指標です。流動性が高い資産は、短時間で簡単に売買でき、現金化しやすいという特徴があります。例えば、上場株式や国債は市場で取引量が多く、いつでも売買できるため、流動性が高い資産とされています。 一方、不動産や未上場株式のように、売買相手を見つけるのが難しかったり、取引に時間がかかったりする資産は、流動性が低いといえます。 投資をする際には、自分が必要なときに資金を取り出せるかを考えることが重要です。特に初心者は、流動性が高い資産を選ぶことで、急な資金需要にも対応しやすく、リスクを抑えることができます。
コア・サテライト戦略
コア・サテライト戦略とは、資産運用において「コア資産」と「サテライト資産」を組み合わせることで、リスクとリターンのバランスを最適化する投資手法のことを指す。ポートフォリオの大部分を安定したコア資産で構成し、長期的な市場の成長に連動するリターンを確保する一方で、残りの一部をサテライト資産として運用し、高いリターンの可能性を追求する。これにより、安定性を維持しながら市場環境の変化に柔軟に対応し、資産の成長を図ることができる。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。
成長投資枠
新NISAにおける成長投資枠とは、個別株や投資信託などの成長性の高い投資商品を購入できる非課税枠のことです。2024年に始まった新NISA制度では、年間最大240万円、累計1,200万円まで投資が可能で、売却しても枠が復活しない「一生涯の上限額」が設定されています。 成長投資枠では、主に上場株式やETF、アクティブ型の投資信託などが対象となり、比較的リスクを取りながら資産を増やしたい投資家向けの仕組みになっています。一方で、レバレッジ型や一部の毎月分配型投資信託など、一部のリスクが高い商品は対象外となるため注意が必要です。 つみたて投資枠と併用でき、両方を活用すれば年間最大360万円の投資が可能です。成長投資枠を活用することで、中長期的な資産形成を非課税で行うことができ、売却益や配当金に税金がかからないため、資産を効率的に増やす手段となります。
つみたて投資枠
つみたて投資枠とは、2024年から始まった新しいNISA制度の中で、少額から長期的に資産形成を行うことを目的として設けられた非課税投資の枠組みです。 この枠では、一定の条件を満たした投資信託などの商品に対して、年間最大120万円までの投資額が非課税の対象となります。毎月コツコツと積み立てるスタイルの投資に向いており、長期的な資産形成を支援することが狙いです。つみたて投資枠を活用することで、運用益や分配金にかかる税金がかからず、複利の効果を最大限に活かしながら資産を増やしていくことができます。特に投資初心者にとっては、少額から手軽に始められ、長く続けることで将来の資金づくりに役立つ有効な制度です。
リバランス
リバランスとは、ポートフォリオを構築した後、市場の変動によって変化した資産配分比率を当初設定した目標比率に戻す投資手法です。 具体的には、値上がりした資産や銘柄を売却し、値下がりした資産や銘柄を買い増すことで、ポートフォリオ全体の資産構成比率を維持します。これは過剰なリスクを回避し、ポートフォリオの安定性を保つためのリスク管理手法として、定期的に実施されます。 例えば、株式が上昇して目標比率を超えた場合、その一部を売却して債券や現金に再配分するといった調整を行います。なお、近年では自動リバランス機能を提供する投資サービスも登場しています。
基準価額
基準価額とは、主に投資信託の商品価格を表すもので、投資信託1口あたりの価値を示しています。毎営業日に一度計算され、投資信託が保有している株式や債券などの資産の時価総額から、運用にかかる費用を差し引いた金額を、発行済みの総口数で割って算出されます。 投資信託の購入や売却の際には、この基準価額が参考になりますので、価格の動きに注目することが大切です。ただし、基準価額は市場価格とは異なり、リアルタイムで変動するわけではないため、翌営業日の価格になることが多い点にもご注意ください。
市場価格
市場価格とは、金融商品や商品が市場で取引される際の実際の価格を指す。株式や債券、商品などの資産は、需要と供給のバランスによって日々価格が変動する。市場価格は、投資判断や企業の財務評価において重要な指標となる。特に金融市場では、リアルタイムで価格が更新され、経済情勢や投資家の心理によって変動するため、資産価値を把握する際の基準として活用される。
為替ヘッジ
為替ヘッジとは、為替取引をする際に、将来交換する為替レートをあらかじめ予約しておくことによって、為替変動のリスクを抑える仕組み。海外の株や債券に投資する際は、その株や債券の価値が下がるリスクだけでなく、為替の変動により円に換算した時の価値が下がるリスクも負うことになるので、後者のリスクを抑えるために為替ヘッジが行われる。
ヘッジコスト
ヘッジコストとは、為替や金利などの市場変動リスクを抑えるために先物取引やスワップ取引などでポジションを置き換える際に発生する費用の総称です。たとえば外貨建て資産を円で評価する投資家が為替リスクを避けるために為替ヘッジをかける場合、将来の円・外貨交換レートを予約する代わりに金利差や手数料に基づくコストが発生します。 このコストは通貨間の金利差が大きいほど高くなり、投資収益の差し引き後リターンに直接影響します。資産運用の成果を正しく評価するには、表面的な収益だけでなくヘッジコストを加味してネットリターンを把握することが大切です。
総経費率
総経費率とは、投資信託やETF(上場投資信託)などの運用商品にかかる年間のコストを、その商品の資産残高に対する割合で示したものです。投資家が知らないうちに支払っている運用管理費や監査費用、事務手数料など、日々の運用に必要な諸経費をすべて含んでおり、商品選びの際に「どれくらいコストがかかるのか」を判断するための大切な指標です。例えば、総経費率が1%であれば、その商品に100万円投資している場合、1年間でおよそ1万円の経費が差し引かれることになります。総経費率が低いほど、同じパフォーマンスであれば投資家にとって有利といえます。ただし、コストが低いからといって必ずしも良い商品とは限らず、運用実績や投資方針とのバランスも考慮することが大切です。
スプレッド(Spread)
スプレッド(Spread)とは、金融商品の売値(ビッド:Bid)と買値(アスク:Ask)の差のことをいいます。主に外国為替市場や債券市場、株式市場などで使われる用語です。 ビッド(Bid)は投資家がその商品を「売るときに受け取れる価格」、アスク(Ask)は「買うときに支払う価格」を指します。スプレッド(Spread)が広いほど、投資家にとっての取引コストが高くなるため、売買のタイミングには注意が必要です。 一般的に、流動性の低い市場や銘柄ではスプレッドが広がりやすく、反対に、取引が活発な市場ではスプレッドが狭くなる傾向があります。そのため、スプレッドの大きさは、市場の流動性や取引コストを判断する一つの指標となります。
レバレッジ型ETF
レバレッジ型ETFとは、ある株価指数や資産の値動きに対して、2倍や3倍といった倍率で連動するように設計された上場投資信託(ETF)のことです。たとえば、対象指数が1%上昇したときに2%上昇する「2倍型ETF」や、逆に下落時に2倍下がる「インバース型レバレッジETF」などが該当します。このような商品は、短期的な値動きを狙って大きなリターンを得たい投資家に向いており、日々の値動きに連動するよう設計されているため、長期保有には向かない場合が多いです。 注意点として、レバレッジ型ETFは日々の変動に対して倍率で連動するように調整されており、数日間にわたって保有すると複利効果やボラティリティの影響で、想定通りのパフォーマンスにならないことがあります。したがって、デイトレードや短期の相場判断に基づく運用に適している一方、初心者にはリスク管理が難しい側面もあります。投資前には仕組みやリスク特性を十分に理解することが大切です。
インバース型ETF
インバース型ETFとは、株価指数や商品価格などの基準となる指標が下落したときに、その下落幅と同じだけ上昇するように設計された上場投資信託(ETF)のことです。たとえば、対象指数が1日で2%下がれば、そのインバース型ETFは約2%上がるように運用されます。これにより、相場の下落局面でも利益を狙える手段として活用されます。 通常のETFは相場の上昇に連動して価値が上がりますが、インバース型はその逆を狙う仕組みで、特に短期のヘッジ目的や、下落トレンドにおける投機的な取引に向いています。ただし、この商品も日次での値動きに連動するよう設計されているため、長期保有では意図した成果が出にくい点に注意が必要です。ボラティリティが高い市場では、指数が元の水準に戻ってもETFの価格は回復しないことがあるため、理解と慎重な運用が求められます。
ダブルインバース
ダブルインバースとは、日経平均株価やTOPIXなどの株価指数が下がると、その2倍の値動きで上昇するように設計された金融商品です。主に上場投資信託(ETF)として提供されており、相場の下落局面で利益を得たいときに利用されます。たとえば、株価指数が1日で1%下がった場合、ダブルインバース型のETFはおおよそ2%上昇するように設計されています。ただし、これはあくまで「1日単位」での値動きを対象としており、長期保有すると価格変動のズレ(乖離)が生じやすくなります。そのため、短期的なトレードを目的とした上級者向けの商品とされており、初心者が長期の資産運用に利用するには注意が必要です。
トータルリターン
トータルリターンとは、株式や債券、投資信託などの資産から得られる利益を、値上がり益(キャピタルゲイン)と分配金・利息・配当金などのインカムゲインを合わせて総合的に捉えた指標です。配当や利息をその都度再投資すると仮定して計算するのが一般的であり、単に価格変動だけを追う「価格リターン」と比べ、投資の実質的な運用成果をより正確に示します。このため、長期投資のパフォーマンス評価や異なる資産クラスの比較を行う際には、トータルリターンで見ることが重要です。