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【2026年最新】年金分割で損しない方法。離婚で年金がいくら増えるのか、手続きと期限を解説
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公開:
2026.09.23
更新:
2026.09.23
離婚時の年金分割は、将来受け取る老齢年金に影響する重要な手続きです。しかし、分割できるのは厚生年金の記録だけで、国民年金は対象外であるなど、制度を誤解したまま進めると期待した金額を受け取れない可能性があります。この記事では、合意分割と3号分割の違い、年金がいくら増えるのか、手続きの流れ、必要書類、2026年以降の請求期限まで具体的に解説します。
目次
年金分割は厚生年金の納付記録を分ける制度
年金分割とは、離婚した夫婦が婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を分け合い、それぞれ自分の年金にできる制度です。分割できるのは厚生年金部分に限られ、国民年金(老齢基礎年金)は対象になりません。
出典:法務省「年金分割」
分割対象は厚生年金のみで国民年金は対象外
分割できるのは、原則として厚生年金の報酬比例部分です。国民年金の老齢基礎年金は対象外で、企業年金の独自の上乗せ部分も通常は年金分割の対象になりません。※
理由は、日本の公的年金が2階建ての構造になっているためです。1階部分は全国民が加入する国民年金、2階部分は会社員や公務員が上乗せで加入する厚生年金にあたり、夫婦で差がつくのは2階の厚生年金です。
- そのため、会社員や公務員の配偶者がいた場合に効果が大きくなります。反対に、相手が自営業者などで厚生年金に加入していなければ、分割する記録そのものが存在しません。
※ただし、厚生年金基金が国に代行して支給する部分など、厚生年金の報酬比例部分にあたるものは対象に含まれます。
分割されるのは年金額でなく標準報酬の記録
年金分割で分けるのは、受給している年金額そのものではなく、保険料の納付記録(標準報酬)です。保険料納付記録を分割する制度であり、将来受け取る年金額を単純に半分にするものではありません。
- 標準報酬とは、厚生年金の保険料や将来の年金額を計算する基礎になる報酬額のことです。離婚時の年金分割が行われると、婚姻期間中のこの記録が当事者間で改定され、改定後の記録をもとに各自の年金額が計算し直される仕組みになっています。
「相手の年金が半分こちらに移る」と誤解されがちですが、実際は記録の付け替えであり、最終的な増減は記録の改定結果に応じて決まります。
対象は婚姻期間中の記録に限られる
分割の対象は婚姻期間中の納付記録だけで、結婚前や離婚後の期間は含まれません。分割の対象となるのは、婚姻期間中の記録のみです。
婚姻期間が長いほど対象となる記録は厚くなり、分割で動く金額も大きくなります。逆に婚姻期間が短ければ、収入差が大きくても分割の効果は限定的にとどまります。
別居していた時期があっても、その分が機械的に除外されるわけではない点は押さえておきましょう。
出典:日本年金機構「離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)」
年金分割には合意分割と3号分割がある
離婚時の年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2つの方法があります。婚姻期間全体を対象に当事者で割合を決めるのが合意分割、専業主婦・主夫など第3号被保険者期間を相手の同意なく分けるのが3号分割です。
自分がどちらに該当するかは、対象期間と同意の要否で判断できます。下表で整理します。
| 項目 | 合意分割 | 3号分割 |
|---|---|---|
| 導入時期 | 2007年4月 | 2008年4月 |
| 対象期間 | 婚姻期間全体(2007年4月前も可) | 2008年4月以降の第3号被保険者期間 |
| 相手の同意 | 必要(不成立なら調停・審判) | 不要 |
| 分割割合 | 上限2分の1(協議・裁判で決定) | 一律2分の1 |
| 主な対象者 | 共働き含む夫婦全般 | 専業主婦・主夫など |
婚姻期間が2008年4月以降で、かつ婚姻期間中の分割対象期間がすべて国民年金の第3号被保険者期間だった人は、3号分割だけで手続きできる場合があります。2008年3月以前の婚姻期間がある方や、婚姻期間中に共働きで双方が厚生年金に加入していた期間がある方は、3号分割だけでは対象にできない期間があるため、合意分割も検討する必要があります。
合意分割は婚姻期間全体が対象になる
合意分割は、夫婦双方の請求により婚姻期間全体の厚生年金記録を分ける方法です。離婚時の厚生年金記録を分割できる「離婚時年金分割」(いわゆる「合意分割」)は2007年4月に施行されました。
対象期間が広いのが特徴で、制度導入前の期間もさかのぼって含められます。2007年4月以降に離婚した夫婦に適用され、対象となる年金期間は、2007年より前の婚姻期間も含むことができます。
- 按分割合は当事者の合意か家庭裁判所の手続きで決まり、上限は2分の1です。分割割合の上限は2分の1まで(50%以下)とされますが、ほとんどの場合は2分の1で合意されます。協議がまとまらなければ調停・審判に進み、裁判所が割合を定める流れになります。
3号分割は相手の同意なしで請求できる
3号分割は、第3号被保険者だった人からの請求で、対象期間を自動的に2分の1ずつ分ける方法です。第3号被保険者とは、会社員や公務員に扶養される配偶者のことで、専業主婦・主夫が典型例にあたります。
最大の特徴は、相手の同意が要らない点です。3号分割は、第3号被保険者であった期間の配偶者の厚生年金記録を2分の1ずつ夫婦間で分割できる制度で、請求者が単独で手続きできます。
- ただし対象は2008年4月以降に限られます。3号分割が適用されるのは2008年4月以降の年金積立分のみで、分割割合は0.5です。2008年4月より前の婚姻期間分は、すべて合意分割で行います。なお合意分割を請求すると、3号分割の対象期間も同時に請求したものとみなされ、別途の手続きは不要です。
出典:日本年金機構「離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)」
年金分割で年金額がいくら増えるのか
年金分割を受けた側の年金は、統計上、月額で平均3万円台の増加が確認されています。厚生労働省の最新の事業概況でも、分割を受ける側の年金月額が分割前後で約3.3万円増えています。ただし増額幅は収入差・婚姻期間・按分割合で大きく変わります。
受給側の増額は平均で月約3.3万円
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金分割で記録を受け取った側の年金月額は、平均で月6万0,934円から月9万4,509円へと、約3.3万円増えています。
たとえば国民年金中心で月6万円台だった人が、分割後は月9万円台に届く計算です。年間では約40万円、20年間受け取り続けると約800万円もの差になります。
なお、3号分割のみの場合は対象期間が限られるため、増額は月8,000円程度(月4万8,668円→月5万6,985円)にとどまります。
出典:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
増額は収入差・婚姻期間・割合で決まる
分割額は「夫婦の収入差」「婚姻期間の長さ」「按分割合」の3つで決まります。この3要素が大きいほど、移る記録も増えるためです。
按分割合の上限は2分の1です。按分割合の上限は50%で、分割を受ける側の持分が分割する側の持分を超えないように決めなければなりません。
そのため、相手の収入が高く、専業期間を含む婚姻期間が長いケースほど増額は大きくなります。逆に収入差が小さく婚姻期間が短ければ、上限まで分割しても効果は限定的にとどまります。
婚姻期間別の増額目安を確認
増額のイメージは婚姻期間でおおよそつかめます。下表は、夫が会社員で配偶者の年収が低い一般的なケースを想定した目安です。実際の額は標準報酬や割合で変動します。
| 婚姻期間 | 分割による増額の目安(月額) |
|---|---|
| 約10年 | おおむね1万円前後 |
| 約20年 | おおむね2〜3万円程度 |
| 約30年 | おおむね3〜4万円程度 |
統計上の平均(約3.3万円)は、比較的婚姻期間の長い層が中心です。
見込額は情報通知書で試算できる
正確な見込みを知るには「年金分割のための情報通知書」を取得します。これに分割の基礎となる数値が記載されているためです。
情報通知書には、対象期間標準報酬総額や按分割合の範囲(上限・下限)が記載され、分割後の年金額を試算する際の基礎資料になります。請求は離婚前でも可能です。
さらに50歳以上または障害年金の受給権者は、請求時に申し出れば分割後の年金見込額の試算を受けられます。具体的な金額を確認したうえで、請求の判断ができるしくみです。
年金受給額の基本的なデータは、こちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。
年金分割額シミュレーション
実際の増額は働き方で大きく変わります。ここでは専業主婦20年・共働き15年・熟年離婚30年の3パターンを、標準報酬月額36万円の配偶者を想定して試算します。報酬比例部分は「標準報酬額×0.005481×加入月数」で計算します。
| ケース | 想定 | 分割方法 | 対象期間 | 受け取る側の増額(月額・概算) |
|---|---|---|---|---|
| 専業主婦20年 | 夫が会社員(標準報酬月額36万円)・妻はずっと専業主婦 | 3号分割 | 20年(240か月) | 約2万円弱(年約23万7,000円) |
| 共働き15年 | 夫36万円・妻28万円で収入差が小さい | 合意分割 | 15年(180か月) | 約3,300円(年約3万9,000円) |
| 熟年離婚30年 | 夫が会社員(標準報酬月額36万円)・妻が低収入 | 合意分割 | 30年(360か月) | 約3万円弱(年約35万5,000円) |
※標準報酬月額36万円・給付乗率0.005481・按分割合2分の1で計算した概算です。標準賞与や実際の標準報酬により金額は変動します。共働きは2人の記録の差額分のみが調整されるため、増額が小さくなります。
専業主婦20年は月2万円前後増える
夫が会社員、妻がずっと専業主婦という典型例では、妻側の年金が月2万円前後増えます。3号分割で夫の記録の半分が妻に移るためです。
夫の標準報酬月額を36万円、3号分割の対象期間を20年(240か月)と仮定します。妻に分割される額は「36万円×0.005481×240か月÷2」で、年約23万7,000円、月にして約2万円弱です。
なお、2008年4月1日以降の婚姻期間がすべて第3号被保険者期間であれば、その期間については3号分割により相手の厚生年金記録を2分の1ずつ分けられます。ただし、婚姻期間中に共働きで双方が厚生年金に加入していた期間がある場合や、2008年3月以前の婚姻期間がある場合は、3号分割だけでは対象にできない期間があるため、合意分割の検討が必要です。
専業主婦の年金分割に関しては、こちらのFAQでも解説しています。
共働き15年は増額が小さくなる
夫婦とも厚生年金に加入していた共働きでは、増額は限定的にとどまります。合意分割では2人の記録の差額部分だけが調整されるためです。
たとえば夫の標準報酬月額が36万円、妻が28万円なら、対象は差の8万円分です。これを15年(180か月)・割合2分の1で計算すると「8万円×0.005481×180か月÷2」で年約3万9,000円、月約3,300円の増加にとどまります。
共働きの夫婦の場合は合意分割を選択することになり、収入差が小さいほど効果は薄くなります。
熟年離婚30年は増額が最も大きい
婚姻期間が長い熟年離婚では、分割の効果が最も大きく出ます。対象となる記録が30年分と厚いためです。
夫の標準報酬月額36万円、対象30年(360か月)を割合2分の1で分けると「36万円×0.005481×360か月÷2」で年約35万5,000円、月約2万9,600円の増額になります。
- ただし上記は概算で、実額は標準賞与や時期で変わります。年金分割だけでは十分な生活費を確保できないため、財産分与で老後資金をしっかり分けることが大切です。
熟年離婚による年金分割の影響は、こちらのFAQでも解説しています。
高収入の人や自営業者は損する場合がある
年金分割は誰にでも得な制度ではありません。自分の収入が高い共働きでは逆に年金が減ることがあり、相手が国民年金のみなら分割対象がなく効果も得られません。請求前に自分がどちら側かを見極めることが重要です。
共働きで高収入の側は逆に減る
自分の方が収入の高い共働きでは、年金分割で逆に自分の年金が減ります。合意分割は記録の多い側から少ない側へ移す制度だからです。
専業主婦・主夫が、必ず受け取る側になるとは限りません。合意分割の対象期間について、自身の標準報酬額が相手より高いときは、自身の厚生年金記録を分割することになります。
そのため、自分の収入が明らかに高い場合、安易に請求すると不利になりかねません。請求前に情報通知書で立場を確認しましょう。
相手が国民年金のみなら効果はない
相手が自営業者などで厚生年金に加入していない場合、年金分割の効果は得られません。分割の対象は厚生年金部分に限られるためです。
対象となるのは厚生年金のみで、夫婦ともに厚生年金に加入していない場合は、年金分割は問題にならないことになります。
つまり相手がフリーランスや個人事業主で国民年金だけなら、分けるべき記録自体が存在しません。婚姻期間中の相手の働き方を確認しておくと判断しやすくなります。
分割する側は将来の年金が減る
分割する側(収入が高い側)は、将来受け取る年金が確実に減ります。自分の標準報酬の記録が相手に移るためです。
既に老齢厚生年金を受給している場合は、分割請求をした月の翌月から支給額が減額されます。減額は一度確定すると元に戻りません。
そのため分割する側は、年金分割を財産分与全体の中で位置づけ、慰謝料や財産の配分とあわせて交渉することが大切です。目先の合意だけで判断しないようにしましょう。
年金分割の手続きの流れ
年金分割は、情報通知書の取得→分割方法の決定→年金事務所での請求という流れで進みます。請求しなければ年金は分割されません。手続き自体は無料ですが、書類取得や公正証書、調停に進むと付随費用が発生します。
まず情報通知書を取得する
最初に「年金分割のための情報提供請求書」を年金事務所に提出し、情報通知書を取得します。分割の前提となる数値がこの書類でわかるためです。
住所地を管轄する年金事務所に情報提供請求書を提出すれば、通常2〜3週間程度で情報通知書が送付されます。提出時には基礎年金番号通知書や戸籍謄本を添えます。請求は離婚前でも後でも可能です。
分割方法と割合を決める
次に合意分割か3号分割かを判断し、合意分割なら割合を確定させます。割合の決め方で必要な手続きが変わるためです。
協議で2分の1に合意できれば、合意書を作成します。話し合いで合意に至らない場合は、家庭裁判所に調停または審判を申し立て、分割割合を決定します。3号分割のみなら、この合意のステップは不要です。
年金事務所で請求する
割合が決まったら「標準報酬改定請求書」を年金事務所に提出し、分割を確定させます。請求して初めて記録が改定されるためです。
分割の割合が決まっていても、請求の手続をしないと年金は分割されません。合意分割は原則として当事者双方または代理人による手続きが必要です。手続き後、改定結果を記した標準報酬改定通知書が届きます。
出典:法務省「年金分割」
必要書類を確認する
必要書類は次のとおりです。事前に揃えておくと、手続きがスムーズに進みます。
年金分割の必要書類
- 戸籍謄本(全部事項証明書):婚姻日と離婚日が確認でき、請求日から6か月以内に交付されたもの
- 基礎年金番号がわかるもの:基礎年金番号通知書、または年金手帳など
- マイナンバーまたは本人確認書類:マイナンバーカードや運転免許証など
- 合意内容を示す書類:合意分割の場合に必要で、公正証書・公正証書の謄本・調停調書・審判書などが該当
これらを「標準報酬改定請求書」に添付し、管轄の年金事務所に提出すれば請求が完了します。標準報酬改定請求書に各書類と戸籍謄本を添付して管轄の年金事務所に提出すれば、請求が完了します。
なお3号分割のみを請求する場合は、相手の合意が不要なため、合意内容を示す書類は要りません。提出先や細かな添付書類はケースで異なるため、事前に年金事務所へ確認しておくと確実です。
費用は制度利用自体は無料
年金事務所での分割請求そのものに手数料はかかりません。ただし、周辺の手続きで実費が発生する場合があります。
主な費用を整理すると、次のとおりです。
| 費用の種類 | 金額の目安 | かかる場面 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本の取得 | 1通450円程度 | すべてのケース |
| 公証役場手数料(年金分割合意を公正証書にする場合) | 一律1万3,000円 | 合意内容を公正証書にする場合 |
| 公証役場手数料(合意書の認証) | 6,500円程度 | 年金分割の合意書に公証人の認証を受ける場合 |
| 家庭裁判所の収入印紙(調停) | 1,200円分 | 調停を申し立てる場合 |
| 確定証明申請手数料(審判) | 収入印紙150円分を追加 | 審判を申し立てる場合 |
| 連絡用の郵便切手 | 数百円〜程度 | 調停・審判を申し立てる場合 |
| 弁護士・社労士への報酬 | 事務所により異なる | 専門家に依頼する場合 |
年金分割の合意を公正証書にする場合の公証役場手数料は、原則として1万3,000円です。合意書に公証人の認証を受ける方法では、6,500円程度が目安になります。
調停・審判に進む場合は、家庭裁判所に収入印紙1,200円分を納め、審判申立てでは確定証明申請手数料として収入印紙150円分が追加で必要です。これに加えて、連絡用の郵便切手などの実費がかかります。
つまり「制度の利用自体は無料だが、もめた場合や専門家を使う場合にコストが発生する」という構造です。3号分割で円満に手続きできれば、戸籍謄本代程度で済みます。
本来であれば分割できるのに手続きをしないと、結果的に損をするかもしれません。詳しくは、こちらのFAQも参考にしてみてください。
2026年4月以降の離婚は請求期限が5年に
年金分割の請求期限は、2026年4月1日以降に離婚した場合、離婚翌日から5年以内に延長されました。期限を過ぎると原則として請求できなくなるため、早めの手続きが必要です。改正前に離婚した人は従来どおり2年以内のため、いつ離婚したかで期限が変わる点に注意しましょう。
この延長は、離婚後の財産分与請求権の期限が2年から5年に延びた民法改正に合わせたものです。相手方が死亡した日から起算して1か月を経過すると請求できなくなる点は据え置かれているため、相手の死亡後は特に急ぐ必要があります。
年金分割だけでは老後資金は足りない場合の対策
年金分割で増えるのは月数万円規模にとどまり、それだけで老後を支えるのは困難です。単身世帯では年金収入だけで毎月赤字になるのが実態で、就労継続・繰下げ受給・資産運用を組み合わせ、自助で不足を埋める発想が欠かせません。
単身世帯は毎月約3万円の赤字
年金収入だけでは、離婚後の単身生活は毎月赤字になりがちです。支出が年金額を上回るためです。
総務省「家計調査報告(家計収支編)2025年平均」によると、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の実収入は月13万1,456円です。
生命保険文化センターの整理でも、高齢単身無職世帯は可処分所得約11.8万円に対して消費支出が約14.8万円で、月約3.0万円の不足とされています。
仮にこの赤字が30年続けば、単純計算で1,000万円超の取り崩しが必要です。分割で月2〜3万円増えても、不足を完全には埋められません。
出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」
なお、必要な老後資金に関してはこちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。
できるだけ長く働く
不足を埋める最も確実な手段の一つが、就労期間を延ばすことです。働く間は収入が得られ、厚生年金も上乗せされるためです。
厚生年金に加入して働けば、その分の報酬比例部分が将来の年金に加算されます。離婚後に会社員や公務員として働けば、分割で増えた年金にさらに上乗せが期待できます。
できるだけ長く働くことは、資産寿命を延ばすうえでも有効です。詳しくは、こちらの記事も参考にしてみてください。
年金を繰下げ受給する
受給開始を遅らせる繰下げ受給も、年金額を増やす有効な方法です。繰り下げた月数に応じて年金が増額されるためです。
日本年金機構によると、増額率は0.7%×65歳から繰下げ申出月の前月までの月数で、最大84%です。たとえば70歳まで5年遅らせれば42%増えます。増額された年金を一生涯受け取れる点が強みですが、待機中は年金を受け取れず、税・社会保険料が増える点には注意が必要です。
年金を何歳から受け取るべきかは、人それぞれです。こちらの記事も、あわせて参考にしてみてください。
資産運用で不足を補う
公的年金・就労収入に加え、計画的な資産運用で不足を補う発想も重要です。長期の運用なら、物価上昇に負けにくい資産形成が見込めるためです。代表的な制度がNISAとiDeCoです。
NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。本来は運用益に約20%の税金がかかりますが、NISA口座ならこれがゼロになります。長期・積立・分散投資と相性がよく、離婚後の老後資金づくりの土台として活用できます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で積み立てて運用する私的年金です。掛金が全額所得控除になり、現役時代の所得税・住民税を抑えながら老後資金を準備できます。公的年金を補完する位置づけで、年金分割と併せて検討する価値があります。
NISAとiDeCoの特徴や活用法について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
年金分割の手続きは自分でできる
年金分割の手続きは、原則として当事者本人が年金事務所で完結できます。専門家に頼まないとできない制度ではありません。ただし相手がもめる場合や状況が複雑な場合は、専門家の力を借りた方がよい場面もあります。
自分でできるケース
3号分割や、2分の1で円満に合意できる合意分割なら、自分一人で問題なく手続きできます。複雑な交渉が不要なためです。
3号分割は相手の同意が要らず、第3号被保険者だった人が単独で請求できます。分割割合の合意は必要なく、裁判所の関与もありません。合意分割でも、割合を2分の1で合意できていれば、必要書類を揃えて年金事務所に請求するだけで完了します。
日本年金機構で手続きを相談することも可能です。詳しくは、こちらの記事も参考にしてみてください。
専門家を頼るべきケース
相手が分割を拒否している、収入関係が複雑、調停・審判が必要、慰謝料や財産分与と一体で交渉したいといった場合は、専門家の関与が有効です。手続きや交渉の負担が大きいためです。
役割分担としては、社労士は年金額の試算や見込額の精査に強く、弁護士は相手との交渉・調停・審判の代理ができます。分割割合の合意がスムーズにいかない場合、弁護士に代理交渉や審判手続きを依頼することで、負担を軽減しつつ早期解決を図れます。自分の状況がどちらに当てはまるかで、相談先を選ぶとよいでしょう。
年金分割に関する留意点
年金分割には、知らないと不安になりやすい論点がいくつかあります。一度確定した分割は自分の年金記録になるため、再婚や相手の死亡では揺らぎません。相手が拒否する場合や手続きで相手に知られる点も、あらかじめ押さえておきましょう。
再婚しても受け取れる
一度確定した分割の効果は、自分自身の年金記録になります。そのため再婚しても受け取れます。記録が変わるわけではないため、その後の結婚や離婚に左右されません。
相手の死亡後も影響しない
分割後は自分の年金記録になっているため、元配偶者が死亡しても自分の受給権には影響しません。分割を行った元配偶者が死亡しても、自分自身の厚生年金の受給権には影響しません。安心して受け取り続けられます。
相手が拒否しても請求できる
合意分割で相手が応じない場合は、家庭裁判所の調停・審判で割合を決められます。3号分割なら、そもそも相手の同意は不要です。拒否されても、請求の道は残されています。
調停がまとまらない場合は審判に移る
合意分割で協議も調停も不成立なら、最終的に家庭裁判所の審判に移行し、裁判所が割合を決めます。調停や裁判になっても、基本的には50%の按分割合での年金分割が認められます。審判で割合が確定した後も、別途年金事務所での標準報酬改定請求が必要です。
手続きで相手に伝わることがある
情報提供請求や請求手続きの過程で、相手に分割請求が伝わる可能性があります。相手にも標準報酬改定通知書が届くためです。知られたくない情報は、調停書類でマスキングできる場合があります。
離婚すると加給年金は止まる
加給年金とは、厚生年金に20年以上加入した人が65歳になったとき、生計を維持している配偶者や子がいると老齢厚生年金に上乗せされる、扶養手当のような給付です。離婚すると、この加給年金は受け取れなくなります。配偶者を生計維持しているという前提が、離婚で失われるためです。
届け出が遅れると、過払いとなった加給年金は後日返還を求められます。受け取りすぎた分はあとで返すことになるため、離婚が成立したら早めに手続きしましょう。詳しくは、こちらのFAQもご覧ください。
この記事のまとめ
まとめ
この記事では、離婚時の年金分割について、分割対象となる厚生年金の範囲、合意分割と3号分割の違い、増額の目安、手続き方法、必要書類、請求期限を整理しました。年金分割は老後資金に関わる大切な権利ですが、婚姻期間や収入差、離婚時期によって結果が変わります。まずは情報通知書を取得し、自分のケースで請求すべきかを確認しましょう。不安がある場合は、年金事務所や専門家に早めに相談することが大切です。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
年金分割
年金分割とは、主に離婚時に夫婦の一方が受け取る厚生年金の記録(報酬比例部分)を、もう一方の配偶者と分け合う制度のことをいいます。専業主婦(または主夫)や収入の少なかった配偶者が、結婚中に働いていた配偶者の年金保険料に間接的に貢献していたことを考慮し、公平に将来の年金受給を調整する目的で設けられています。 この制度には主に2つのタイプがあります。 合意分割:夫婦双方の合意または裁判所の決定によって、婚姻期間中の厚生年金記録を最大で50%まで分割できる制度。 3号分割:2008年以降、配偶者が第3号被保険者(主に専業主婦・主夫)であった場合、自動的に50%を分割できる制度。 年金分割は「年金を現金で渡す」わけではなく、年金受給の基礎となる記録を分けるという制度です。そのため、実際に受け取れる金額は年金の受給開始時に反映されます。 老後の生活設計に大きく関わるため、離婚時の財産分与と並んで重要な話し合いの対象となります。特に長期間の婚姻関係があった場合、年金分割の有無が将来の生活に大きな差を生むことがあります。
合意分割
合意分割とは、離婚時に夫婦間で話し合いを行い、厚生年金や共済年金の記録をどのように分けるかを決める制度です。これは、結婚していた期間に一方が働いて得た年金記録の一部を、もう一方に移すことで、離婚後の生活資金を公平に分け合う仕組みとなっています。 合意分割は、対象となる期間の年金記録を最大で50%まで分割することができ、専業主婦(または主夫)やパートナーの収入が少なかった人の老後の年金受給額を補うために活用されます。実施するためには、当事者同士で分割割合について合意し、年金事務所に請求手続きを行う必要があります。裁判や調停で割合が決められることもありますが、基本的には話し合いに基づく制度であるため「合意分割」と呼ばれています。
3号分割
3号分割とは、離婚した場合に、第3号被保険者であった期間について、元配偶者の厚生年金の保険料納付記録の一部を分割し、自分の年金記録として反映させることができる制度を指します。 この用語が登場するのは、離婚後に将来の年金額を確認する場面や、年金分割制度について手続きを検討する文脈です。とくに、婚姻期間中に専業主婦・主夫として働き、厚生年金に直接加入していなかった人が、自身の年金記録を整理する際に使われます。 3号分割について誤解されやすいのは、「離婚すれば自動的に年金が分けられる」「婚姻期間すべての厚生年金が対象になる」と考えてしまう点です。実際には、3号分割の対象は第3号被保険者であった期間に限られ、分割を受けるためには所定の期限内に請求手続きを行う必要があります。自動的に反映される制度ではありません。 また、3号分割は年金額そのものを直接分ける仕組みではなく、将来の年金計算に用いられる厚生年金の記録を分割する制度です。そのため、分割を受けた結果として将来の受給額が変わりますが、離婚時点で金銭が支払われるわけではありません。この点を理解していないと、制度の効果を誤って捉えやすくなります。 たとえば、長期間第3号被保険者であった人が離婚後に3号分割の請求を行うことで、元配偶者の厚生年金記録の一部が自分の記録として加算され、将来受け取れる年金額が増えるケースがあります。一方で、請求期限を過ぎると分割を受けられないこともあります。 3号分割という言葉を見たときは、まず自分が第3号被保険者であった期間があるかを確認し、分割の対象となる期間や請求期限がどのように定められているかを整理することが重要です。
厚生年金
厚生年金とは、会社員や公務員などの給与所得者が加入する公的年金制度で、国民年金(基礎年金)に上乗せして支給される「2階建て構造」の年金制度の一部です。厚生年金に加入している人は、基礎年金に加えて、収入に応じた保険料を支払い、将来はその分に応じた年金額を受け取ることができます。 保険料は労使折半で、勤務先と本人がそれぞれ負担します。原則として70歳未満の従業員が対象で、加入・脱退や保険料の納付、記録管理は日本年金機構が行っています。老後の年金だけでなく、障害年金や遺族年金なども含む包括的な保障があり、給与収入がある人にとっては、生活保障の中心となる制度です。
国民年金
国民年金とは、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入しなければならない、公的な年金制度です。自営業の人や学生、専業主婦(夫)などが主に対象となり、将来の老後の生活を支える「老齢基礎年金」だけでなく、障害を負ったときの「障害基礎年金」や、死亡した際の遺族のための「遺族基礎年金」なども含まれています。毎月一定の保険料を支払うことで、将来必要となる生活の土台を作る仕組みであり、日本の年金制度の基本となる重要な制度です。
老齢基礎年金
老齢基礎年金とは、日本の公的年金制度の一つで、老後の最低限の生活を支えることを目的とした年金です。一定の加入期間を満たした人が、原則として65歳から受給できます。 受給資格を得るためには、国民年金の保険料納付済期間、免除期間、合算対象期間(カラ期間)を合計して10年以上の加入期間が必要です。年金額は、20歳から60歳までの40年間(480月)にわたる国民年金の加入期間に応じて決まり、満額受給には480月分の保険料納付が必要です。納付期間が不足すると、その分減額されます。 また、年金額は毎年の物価や賃金水準に応じて見直しされます。繰上げ受給(60~64歳)を選択すると減額され、繰下げ受給(66~75歳)を選択すると増額される仕組みになっています。 老齢基礎年金は、自営業者、フリーランス、会社員、公務員を問わず、日本国内に住むすべての人が加入する仕組みとなっており、老後の基本的な生活を支える重要な制度の一つです。







