エンジェル投資税制におけるプレシード・シード特例と起業特例の違いとはなんですか?
エンジェル投資税制におけるプレシード・シード特例と起業特例の違いとはなんですか?
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2025/04/07 11:04
男性
30代
最近、知人経由で紹介されたスタートアップにエンジェル投資を検討しています。エンジェル税制の「プレシード・シード特例」と「起業特例」の違いがいまいちピンときません。どちらも優遇されるようですが、どう使い分ければよいのか、投資判断の観点から具体的に知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
エンジェル税制には、
① 譲渡所得控除型(プレシード・シード特例)
② 総所得控除型(起業特例)
の2つがあります。いずれもスタートアップに出資した個人投資家の税負担を軽減する制度ですが、控除する対象所得が異なるため、効果が出るタイミングとインパクトが変わります。
プレシード・シード特例(譲渡所得控除型)
- その年に上場株式などを売却して譲渡益が出ている場合に有効。
- 出資額をその年の譲渡所得から控除できるため、キャピタルゲイン課税(20.315%)を直接圧縮できます。
- 例:IPO株の売却益が3,000万円出た年に1,000万円をスタートアップへ出資すれば、課税対象の譲渡益は2,000万円に圧縮されます。
起業特例(総所得控除型)
- その年に譲渡益がなくても、給与所得や事業所得など「総合課税」の所得から出資額を控除できます。
- 高収入で所得税・住民税の累進課税率が高い人ほど節税効果が大きく、キャピタルゲインが発生していない年でもメリットが得られます。
- 例:年収2,500万円の会社員が500万円を出資すると、課税所得が500万円下がるため、最高税率層なら約55%相当、275万円の税負担が軽減されます。
使い分けのポイントは三つあります。まず、今年の所得構造を把握することが重要で、譲渡益が多い年はプレシード・シード特例が、譲渡益がないものの給与や事業所得が多い年は起業特例が適しています。次に、控除上限と適用要件を確認する必要があります。両制度とも投資先が経済産業大臣の認定を受けた企業であることが前提となり、控除できる上限額や申請期限が異なるため、事前にチェックしておくことが欠かせません。最後に、長期的なポートフォリオの視点を持つことです。出資を複数年に分散し、その年ごとの所得状況に合わせて特例を選択すれば、節税効果を最大化しやすくなります。
制度適用の可否や申請書類は年度ごとに変わる場合があるため、契約前に企業側の認定状況と自身の所得見通しを確認し、税理士など専門家と連携して最適な特例を選択することをおすすめします。
関連する専門用語
エンジェル税制
エンジェル税制とは、個人投資家が投資時・株式売却時に受けることができる税制上の優遇措置を定めた税制。ベンチャー企業に対する投資の促進を図る観点から国税庁によって定められている。ベンチャー企業に投資した年、未上場ベンチャー企業株式を売却して売却損益が発生した年にそれぞれ優遇措置を受けることができる。
プレシード・シード特例
プレシード・シード特例とは、スタートアップ企業の創業初期段階(プレシード・シード期)に適用される税制優遇措置のことを指します。これにより、起業家や投資家が初期の資金調達をしやすくなり、新規事業の立ち上げを支援する狙いがあります。具体的には、エンジェル投資家による投資への所得控除や、法人設立時の税負担の軽減などが含まれます。創業初期は資金繰りが厳しくなるため、こうした特例を活用することで財務基盤を強化し、持続的な成長へとつなげることができます。
起業特例
起業特例とは、新規に事業を立ち上げる個人や法人を支援するために設けられた税制優遇措置や補助金制度のことを指します。具体的には、法人税や所得税の軽減、資金調達の際の優遇措置、雇用に関する助成金などが含まれます。これにより、起業時の資金負担を軽減し、成長を促進することが目的とされています。国や自治体によって制度の内容が異なるため、適用条件を確認しながら活用することが重要です。
所得控除
所得控除とは、個人の所得にかかる税金を計算する際に、特定の支出や条件に基づいて課税対象となる所得額を減らす仕組みである。日本では、医療費控除や生命保険料控除、扶養控除などがあり、納税者の生活状況に応じて税負担を軽減する役割を果たす。これにより、所得が同じでも控除を活用することで実際の税額が変わることがある。控除額が大きいほど課税所得が減少し、納税者の手取り額が増えるため、適切な活用が重要である。
IPO(Initial Public Offering/新規公開株式)
IPO(Initial Public Offering/新規公開株式)とは、未上場企業が証券取引所に株式を上場し、一般の投資家に向けて売り出すことを指します。これにより、それまでオーナーやベンチャーキャピタル(VC)など限られた株主のみが保有していた株式が、市場を通じて誰でも売買できるようになります。 企業にとってIPOは、成長資金を調達するだけでなく、知名度や信用力を向上させる手段の一つです。また、創業者やVCが投資を回収(エグジット)する機会にもなり、優秀な人材を確保するためのストックオプション制度の活用が可能になるといったメリットもあります。一方で、上場後は業績や経営方針が市場の厳しい評価を受けるため、ガバナンスの強化や継続的な成長が求められます。 IPOのプロセスは、主幹事証券の選定、証券取引所の審査、目論見書の作成、投資家向けのロードショー、仮条件の設定、公募・売出価格の決定などを経て進められます。公募価格は需要と供給をもとに決定され、上場初日に初値が形成されます。 投資家にとってIPOは、成長企業への投資機会となる一方、初値が公募価格を大きく上回ることもあれば、期待ほど上昇しない場合もあるため、市場の動向をよく見極める必要があります。また、ロックアップ期間(上場後一定期間、大株主が株を売れない規制)が解除された後に売却が増えることで、株価が下落するリスクもあるため注意が必要です。

