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【早見表付】相続税の計算方法は?具体的な流れと節税の方法まで解説

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【早見表付】相続税の計算方法は?具体的な流れと節税の方法まで解説

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執筆者:

公開:

2026.06.02

更新:

2026.06.02

相続税は、一部の資産家だけの問題と思われがちですが、預貯金や不動産、生命保険金などを合算すると、自分のケースでも課税対象になるのか判断に迷うことがあります。しかも、基礎控除や特例の理解があいまいなまま進めると、税額を見誤ったり、申告漏れや特例の適用漏れにつながるおそれがあります。この記事では、相続税がかかるかどうかの判定から、6つの計算ステップ、控除・節税策、申告手続きまでを具体例と早見表を交えて解説します。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読むことで、相続税の計算がどの順番で進むのか、課税対象財産・基礎控除・税率・各種控除がどのように税額へ影響するのかを体系的に理解できます。そのうえで、自分の相続でおおよその税額を試算し、納税資金の準備が必要か、使える控除や節税策はあるか、自分で進められる範囲と専門家に相談すべき場面はどこかを判断できるようになります。

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目次

相続税の課税割合と申告状況

10人中9人が対象外の理由

課税される人の3つの条件

相続税計算の全体像6ステップ

【STEP1】遺産総額を把握する

財産の「評価額」と時価は違う

【STEP2】正味の遺産額を出す

【STEP3】基礎控除を差し引く

【STEP4】相続税の総額を計算

相続税の速算表と税率

【STEP5】各人の税額を算出

【STEP6】税額控除を適用する

相続税額の目安を早見表で確認

配偶者あり(配偶者+子どもの場合)

配偶者なし(子どものみの場合)

早見表を使う際の2つの注意点

具体的な計算例で相続税額を確認

配偶者+子2人のケース

配偶者控除を使った場合・使わない場合を比較

相続税の代表的な節税手段

生前贈与で課税対象を減らす

生命保険の非課税枠を活用する

小規模宅地等の特例を最大限に活用する

相続税の計算でよくある7つのミスと対策

ミス①生命保険の非課税枠を忘れる

ミス②名義預金を遺産に入れない

ミス③相続放棄者を人数から除く

ミス④配偶者控除を過信して二次相続を無視する

ミス⑤土地の評価額を路線価で単純計算する

ミス⑥生前贈与の7年加算を見落とす

ミス⑦申告不要と判断して特例を受けられない

知っておきたい相続税の申告・納付手続き

申告期限は10か月以内

延納・物納の選択肢もある

申告後に税務調査が入るケースもある

相続税申告を税理士に頼むべきかの判断基準

自分で計算できるケース

専門家に依頼すべき3つのサイン

税理士費用の相場と選び方

相続税の課税割合と申告状況

相続税は「相続が発生したら必ず払うもの」と思われがちです。しかし基礎控除の仕組みにより、実際に課税されるのは全体の約1割にすぎません。

10人中9人が対象外の理由

国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によれば、令和6年分の相続税の課税割合は10.4%で、被相続人数160万5,378人のうち申告書の提出に係る被相続人数は16万6,730人でした。相続税は一部の資産家だけの問題ではなくなりつつありますが、それでもなお約9割は課税対象外です。

それでも約9割が対象外となる最大の理由は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除で、遺産総額がこの範囲に収まれば申告すら不要だからです。ただし東京都の課税割合は20.0%と5人に1人の水準に達しており、都市部に自宅を持つ方は要注意です。

課税される人の3つの条件

相続税が課税されるかどうかは、主に次の3点で決まります。

①遺産総額が基礎控除を超えているか

現金・預貯金・不動産・有価証券などを合算した遺産総額が、基礎控除額を上回るかどうかが第一の判断基準です。

②みなし相続財産を含めて計算しているか

生命保険金や死亡退職金は、民法上は相続財産ではありません。ただし相続税法上は「みなし相続財産」として課税対象に含まれます。これを見落とすと、実際には基礎控除を超えているにもかかわらず「対象外」と誤判断するおそれがあります。

③適用できる特例があるか

小規模宅地等の特例(居住用土地の評価額を最大80%減額)や配偶者の税額軽減など、特例を適用することで税額がゼロになるケースもあります。ただし、税額がゼロでも申告書の提出が必要な特例がある点には注意が必要です。

この3点を順に確認することで、自分のケースが課税対象かどうかをおおまかに判定できます。

相続税計算の全体像6ステップ

相続税の計算は、遺産総額の把握から税額控除の適用まで6つのステップで進みます。全体の流れを先に把握しておくと、どの段階で何を確認すべきかが明確になります。

ステップ内容ポイント
STEP1遺産総額を把握する課税財産・非課税財産・みなし財産を整理
STEP2正味の遺産額を出す債務・葬儀費用を差し引き、生前贈与を加算
STEP3基礎控除を差し引く3,000万円+600万円×法定相続人数
STEP4相続税の総額を計算法定相続分で按分し、速算表で税額を算出
STEP5各人の税額を算出実際の取得割合で按分し、2割加算を確認
STEP6税額控除を適用する配偶者控除・未成年者控除などで最終税額を確定

【STEP1】遺産総額を把握する

計算の出発点は、課税対象となる財産の洗い出しです。何を含め、何を除くかを正確に把握しないと、以降の計算がすべてずれてしまいます。

課税対象になる財産

相続税の課税対象となる主な財産は以下のとおりです。

財産の種類主な内容
現金・預貯金銀行口座・タンス預金など
不動産土地・建物・借地権など
有価証券上場株式・投資信託・国債など
動産車・貴金属・美術品など
その他ゴルフ会員権・著作権・特許権など

これらは被相続人(亡くなった方)が所有していた財産が対象です。名義が誰であっても、実質的に被相続人が管理・支配していた財産は課税対象になる場合があります。これを「名義預金」といい、税務調査でも特に注目されるポイントです。

非課税財産の種類

一方、相続税がかからない財産も存在します。代表的なものは以下のとおりです。

非課税財産内容
墓地・仏壇・祭具日常礼拝に用いるもの(骨とう品・投資目的のものは除く)
国や公益法人への寄付相続後、一定期間内に寄付した財産
生命保険金の非課税枠500万円×法定相続人の数まで
死亡退職金の非課税枠500万円×法定相続人の数まで

墓地や仏壇は原則非課税ですが、骨とう的価値のある美術品として扱われるものは課税対象になります。購入価格や鑑定評価額によって判断が変わるため、高価なものは注意が必要です。

みなし相続財産とは

民法上は相続財産ではないものの、相続税法上は課税対象となる財産を「みなし相続財産」といいます。代表例は生命保険金と死亡退職金です。

  1. たとえば被相続人が契約者・被保険者で、相続人が受取人となっている生命保険の死亡保険金は、相続人が直接受け取る財産です。しかし「被相続人の死亡」を原因として受け取るため、相続税の対象に含まれます。

ただし「500万円×法定相続人の数」までは非課税です。相続人が3人であれば1,500万円まで非課税です。この非課税枠を差し引いた残額が課税対象になります。

死亡退職金にも同様の非課税枠があります。両方を受け取る場合、それぞれ別々に非課税枠を計算できます。

財産の「評価額」と時価は違う

相続税の計算に使う評価額は、市場で売買される時価とは異なります。財産ごとに国が定めた評価方法があり、多くの場合、時価より低く評価されます。

財産の種類評価方法特徴
土地路線価方式または倍率方式時価の約80%が目安
建物固定資産税評価額をそのまま使用時価の約50〜70%
上場株式相続開始日の終値など4つの価格のうち最低値市場価格が基準
非上場株式純資産価額方式・類似業種比準方式など計算が複雑
預貯金残高+既経過利子ほぼ時価と同額

たとえば時価1億円の土地でも、路線価で計算すると評価額は8,000万円程度になるケースがあります。さらに不整形地補正(形が歪な土地への減額)や奥行き価格補正を適用すると、評価額はさらに下がる場合があります。

この評価額の差が、不動産を活用した相続税対策の根拠にもなっています。ただし補正率の適用を誤ると過大申告につながるため、土地の評価は特に慎重な確認が必要です。

【STEP2】正味の遺産額を出す

STEP1で把握した遺産総額から、差し引ける項目を反映させて「正味の遺産額」を算出します。ここでの見落としがあると、課税額が実際より膨らんでしまいます。

債務・葬儀費用を差し引く

被相続人が残した債務と、一定範囲内の葬儀費用は遺産総額から控除できます。

控除できる債務の例

  1. 借入金・住宅ローンの残債
  2. 未払いの税金(所得税・住民税・固定資産税など)
  3. 未払いの医療費・介護費用
控除できる控除できない
葬式・葬儀費用香典返しの費用
火葬・納骨費用墓地・仏壇の購入費
遺体の搬送費用初七日・四十九日の法要費用
お布施・読経料医学上の解剖費用
葬儀費用の控除可否

初七日の法要費用は控除できません。葬儀と同日に行う繰り上げ初七日でも同様に控除の対象外です。実務上よく見落とされるポイントなので注意しましょう。

生前贈与の加算ルール

亡くなる前の一定期間内に行われた贈与財産は、相続財産に加算して計算します。これを「生前贈与加算」といいます。2024年1月以降、この加算期間が改正されました。

相続発生時期加算対象となる贈与期間
〜2026年12月相続前3年以内
2027年1月〜2030年12月2024年1月1日から死亡日まで
2031年1月〜相続前7年以内(完全移行)

※ 延長された4年間分の贈与については、合計100万円まで加算対象外です。

延長された4〜7年分の贈与については、合計100万円までは加算対象から除外されます。また、生前贈与加算の対象は相続や遺贈で財産を取得した人に限られます。相続人でない孫への贈与(遺贈がない場合)は加算対象外です。

【STEP3】基礎控除を差し引く

正味の遺産額から基礎控除を差し引き、課税遺産総額を算出します。この金額がゼロ以下であれば相続税は発生せず、申告も原則不要です。

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。

法定相続人の数基礎控除額
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円
5人6,000万円
基礎控除額の速算表

法定相続人の数え方

法定相続人とは、民法で定められた相続の権利を持つ人を指します。優先順位は以下のとおりです。

法定相続人の順位

  1. 常に相続人:配偶者(存在する場合は必ず含まれる)
  2. 第1順位:子(子が死亡している場合は孫が代襲相続)
  3. 第2順位:直系尊属(父母・祖父母など)
  4. 第3順位:兄弟姉妹(死亡している場合は甥姪が代襲相続)

養子がいる場合は人数に上限があります。実子がいれば養子は1人まで、実子がいない場合は養子2人まで法定相続人に含められます。相続税対策として養子縁組を多用することへの歯止めとして設けられているルールです。

相続放棄しても人数に含める

相続を放棄した人がいても、基礎控除を計算する際の法定相続人の数には放棄した人も含めてカウントします。「放棄したから除く」と誤解されがちですが、民法上の相続放棄と基礎控除の計算ルールは別の話です。

たとえば子が3人いて、うち1人が相続放棄をした場合でも、法定相続人の数は3人として基礎控除を計算します。この誤解は計算結果に直接影響するため、特に注意が必要です。

【STEP4】相続税の総額を計算

課税遺産総額をいったん法定相続分で按分し、速算表を使って相続税の総額を算出します。実際の遺産分割の割合とは無関係に計算する点が、相続税の特徴的な仕組みです。

法定相続分で按分する

課税遺産総額を各相続人の法定相続分で割り振り、それぞれの「仮の取得額」を算出します。代表的な法定相続分は以下のとおりです。

相続人の構成配偶者その他の相続人(全員合計)
配偶者+子1/2子:1/2
配偶者+直系尊属2/3直系尊属:1/3
配偶者+兄弟姉妹3/4兄弟姉妹:1/4

子が複数いる場合は、子全体の取得分(1/2)を人数で等分します。

相続税の速算表と税率

相続税は累進課税(金額が大きいほど税率が高くなる仕組み)です。仮の取得額に応じた税率と控除額を速算表から読み取ります。

法定相続分に応じた取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

速算表の使い方は「仮の取得額×税率-控除額」です。たとえば仮の取得額が2,000万円であれば、2,000万円×15%-50万円=250万円となります。

相続税総額の算出方法

各人の仮取得額に速算表を適用して算出した税額を合算したものが「相続税の総額」です。実際の遺産分割内容にかかわらず、まずこの総額を確定させます。その後STEP5で実際の取得割合に基づいて各人に振り分けます。この順序が相続税計算の独特な構造です。

【STEP5】各人の税額を算出

相続税の総額を実際の遺産取得割合に応じて各相続人に按分し、それぞれの納税額を決定します。法定相続分と実際の取得割合が異なっていても、按分の計算方法は変わりません。

実際の取得割合で按分する

計算式は「相続税の総額×(各人の実際の取得財産額÷遺産総額)」です。

たとえば相続税の総額が600万円で、遺産総額1億円のうち配偶者が6,000万円・子2人がそれぞれ2,000万円を取得した場合、按分は以下のようになります。

相続人取得額取得割合按分税額
配偶者6,000万円60%360万円
子A2,000万円20%120万円
子B2,000万円20%120万円

2割加算の対象者

配偶者・子・直系尊属(父母・祖父母)以外の人が財産を取得した場合、算出税額の20%が加算されます。兄弟姉妹・甥・姪・友人への遺贈などが該当します。

  1. 注意が必要なのは孫を養子にしているケースです。子が生存している状態で孫を養子にした場合、代襲相続ではなく「養子として相続」する扱いになるため、2割加算の対象になります。一方、子が死亡していて孫が代襲相続人となる場合は対象外です。

「孫に財産を残したい」と考える際は、この違いを事前に把握したうえで対策を検討することが重要です。

【STEP6】税額控除を適用する

各人に按分された相続税額から、適用できる控除を差し引いて最終的な納税額を確定します。控除を適切に活用することで、納税額を大幅に減らせる場合があります。

配偶者の税額軽減

配偶者が相続した財産が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額以下であれば、相続税はかかりません。

ただし2点の注意があります。

1つ目は、税額がゼロになる場合でも申告書の提出が必要なことです。申告しなければ控除は適用されません。

2つ目は、二次相続(配偶者が亡くなったときの相続)への影響です。配偶者控除を最大限使うと一次相続の税額はゼロにできますが、配偶者の手元に残る財産が増えるぶん、二次相続時に子が支払う税額が増えます。一次・二次の合算税額を試算したうえで、最適な分割割合を検討することが大切です。

未成年者・障害者控除

相続人が18歳未満の場合、「(18歳-相続開始時の年齢)×10万円」が税額から控除されます。2022年の民法改正により成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたため、現行の基準年齢は18歳です。

たとえば相続開始時に10歳の子であれば、「(18-10)×10万円=80万円」が控除されます。控除しきれない場合は、扶養義務者(親など)の税額から差し引けます。

障害者控除の計算

相続人が障害者の場合、85歳までの残り年数に応じた税額控除が受けられます。

区分控除額の計算式
一般障害者(85歳-相続開始時の年齢)×10万円
特別障害者(85歳-相続開始時の年齢)×20万円

特別障害者とは、重度の知的障害者や身体障害者手帳1〜2級に該当する方などです。未成年者控除と同様に、控除しきれない分は扶養義務者の税額から差し引けます。

相次相続控除

10年以内に2回相続が発生した場合、前回の相続で支払った相続税の一部を今回の税額から控除できます。これを「相次相続控除」といいます。

控除割合は2回の相続の間隔によって異なり、1年ごとに10%ずつ減少します。たとえば前回の相続から3年以内なら70%、7年以内なら30%が控除の対象です。10年を超えると控除は受けられません。

見落とされやすい控除の一つですが、10年以内に両親を続けて亡くされた方などには大きな節税効果があります。前回の相続税の申告書を手元に用意したうえで、税理士に確認することをおすすめします。

相続税額の目安を早見表で確認

自分の相続税がいくらになるか、まずは早見表で概算を確認しましょう。以下は「配偶者あり」と「配偶者なし」の2パターンに分けた目安額です。

早見表の前提条件

  1. 子どもはいずれも成年(18歳以上)とし、孫との養子縁組はないものとします
  2. 課税価格は基礎控除を差し引く前の金額です(課税価格=相続財産-非課税財産-債務・葬式費用+一定の生前贈与財産)
  3. 2026年4月時点で公表されている税制・国税庁資料に基づいています

配偶者あり(配偶者+子どもの場合)

配偶者の税額軽減を法定相続分まで適用した場合の相続税額(子どもの負担分)の目安です。配偶者自身の納税額はゼロになります。

課税価格子1人子2人子3人
3,600万円以下000
4,000万円000
5,000万円40100
6,000万円906030
7,000万円16011380
8,000万円235175138
9,000万円310240200
1億円385315263
1億5,000万円920748665
2億円1,6701,3501,218
2億5,000万円2,4601,9851,800
3億円3,4602,8602,540
配偶者ありの相続税額(単位:万円)

子どもの人数が増えるほど基礎控除額が増えるため、相続税額は少なくなります。たとえば課税価格1億円の場合、子1人では385万円かかるのに対し、子3人では263万円と、約120万円の差が生じます。

配偶者なし(子どものみの場合)

配偶者がすでに亡くなっているケース(二次相続)や、独身の方が亡くなるケースの目安です。配偶者の税額軽減が使えないため、同じ課税価格でも税額は大幅に高くなります。

課税価格子1人子2人子3人
3,600万円以下000
4,000万円4000
5,000万円1608020
6,000万円310180120
7,000万円480320220
8,000万円680470330
9,000万円920620480
1億円1,220770630
1億5,000万円2,8601,8401,440
2億円4,8603,3402,460
2億5,000万円6,9304,9203,960
3億円9,1806,9205,460
配偶者なしの相続税額(単位:万円)

課税価格1億円・子1人の場合、配偶者ありなら385万円なのに対し、配偶者なしでは1,220万円と約3倍以上の差になります。一次相続で配偶者控除を使いすぎると、二次相続でこの差がそのままのしかかる点に注意が必要です。

早見表を使う際の2つの注意点

早見表はあくまで概算の目安です。実際の税額とは異なる場合があるため、以下の2点を必ず確認してください。

①課税価格の計算を正確に行う

早見表の「課税価格」は、相続財産から非課税財産・債務・葬儀費用を差し引き、生前贈与加算を加えた金額です。預貯金だけでなく、不動産・株式・みなし相続財産(生命保険金・死亡退職金)を漏れなく含める必要があります。課税価格の算出を誤ると、早見表の数字が実態とかけ離れてしまいます。

②税額がゼロでも申告が必要なケースがある

早見表で相続税がゼロになっていても、申告書の提出が必要な場合があります。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、申告書を提出してはじめて適用されるためです。

「税金がかからないから申告不要」と判断すると、特例が受けられず後から多額の税金が発生するリスクがあります。

具体的な計算例で相続税額を確認

実際の計算の流れをイメージするために、典型的なケースを使ってSTEP1からSTEP6まで通しで計算してみましょう。

配偶者+子2人のケース

今回は以下の条件で計算を進めます。計算をシンプルにするため、生命保険金・債務・葬儀費用は発生しないものとします。

項目内容
遺産の内訳預貯金3,000万円・不動産(相続税評価額)7,000万円
相続人配偶者・子A・子B(計3名)
実際の遺産分割配偶者5,000万円、子A2,500万円、子B2,500万円
債務・葬儀費用なし
生命保険金なし

STEP1・2:遺産総額と正味の遺産額を把握する

遺産総額は、課税対象となる財産をすべて合算した金額です。このケースでは預貯金3,000万円と不動産7,000万円の合計、1億円が遺産総額になります。

債務や葬儀費用がある場合はここで差し引きますが、今回は該当項目がないため、正味の遺産額もそのまま1億円です。

STEP3:課税遺産総額を求める

正味の遺産額から基礎控除を差し引いて、実際に課税される金額(課税遺産総額)を算出します。

計算項目金額
正味の遺産額1億円
基礎控除額(3,000万円+600万円×3人)△4,800万円
課税遺産総額5,200万円

STEP4:相続税の総額を計算する

課税遺産総額5,200万円を、法定相続分(配偶者1/2・子各1/4)で仮に按分(比例配分)します。それぞれの仮の取得額に速算表を適用し、税額を合算します。

相続人法定相続分仮の取得額速算表の適用算出税額
配偶者1/22,600万円2,600万円×15%-50万円340万円
子A1/41,300万円1,300万円×15%-50万円145万円
子B1/41,300万円1,300万円×15%-50万円145万円
合計(相続税総額)630万円

ここで算出した630万円はあくまで計算上の中間値です。実際の遺産分割割合に関係なく、まずこの総額を確定させるのが相続税計算の特徴的な仕組みです。

STEP5:各人の税額を按分する

相続税総額630万円を、実際の取得割合に応じて各相続人に振り分けます。計算式は「相続税総額×(各人の取得額÷遺産総額)」です。

相続人実際の取得額取得割合按分税額
配偶者5,000万円50%315万円
子A2,500万円25%157.5万円
子B2,500万円25%157.5万円

STEP6:税額控除を適用して納税額を確定する

配偶者の取得額5,000万円は「1億6,000万円」「法定相続分相当額(5,000万円)」のいずれにも該当するため、配偶者の税額軽減が全額適用され、納税額はゼロになります。

相続人按分税額税額控除最終納税額
配偶者315万円△315万円(配偶者控除)0円
子A157.5万円なし157.5万円
子B157.5万円なし157.5万円
合計630万円315万円

この315万円は、前のセクションの早見表(課税価格1億円・配偶者あり・子2人)の数値と一致します。早見表は子どもが実際に支払う税額の合計を表しているため、相続人の構成を正確に把握したうえで参照することが大切です。

配偶者控除を使った場合・使わない場合を比較

配偶者控除は非常に強力な制度ですが、「使えば使うほど有利」とは限りません。一次相続と二次相続を合算した税額で判断する必要があります。

上記と同じ条件で、配偶者が全財産(1億円)を相続した場合(ケースB)と、法定相続分(5,000万円)を相続した場合(ケースA)を比較します。

一次相続の比較

ケースA:配偶者が5,000万円取得ケースB:配偶者が全額(1億円)取得
配偶者の納税額0円(配偶者控除)0円(配偶者控除)
子どもの納税額315万円0円
一次相続の合計315万円0円

ケースBでは一次相続の税額がゼロになります。しかし問題は二次相続です。配偶者が1億円を保有したまま亡くなると、相続人は子A・子Bの2人のみとなり、配偶者控除が使えなくなります。

計算項目金額
課税価格1億円
基礎控除額(3,000万円+600万円×2人)△4,200万円
課税遺産総額5,800万円
子A(2,900万円×15%-50万円)385万円
子B(2,900万円×15%-50万円)385万円
二次相続の合計770万円
二次相続のシミュレーション(ケースB)

一次・二次の合計比較

一次相続二次相続(推計)合計
ケースA(法定相続分)315万円別途試算が必要
ケースB(配偶者が全額)0円770万円770万円

ケースBは一次相続こそゼロですが、二次相続で770万円の税負担が子どもに集中します。一次・二次を合算すると、配偶者控除を最大限活用することが必ずしも有利とはいえません。

最適な分割割合は財産の種類・金額・家族構成によって異なります。遺産が高額な場合や不動産が含まれる場合は、一次・二次両方を試算したうえで税理士に相談することをおすすめします。

相続税の代表的な節税手段

相続税の計算構造を理解したうえで、合法的に税額を減らす手段を把握しておきましょう。いずれも適用条件があるため、自分のケースに当てはまるかを確認することが重要です。

生前贈与で課税対象を減らす

生前贈与は、相続財産そのものを減らす最も基本的な節税手段です。年間110万円までの贈与は贈与税がかからない「暦年贈与」の非課税枠を活用することで、毎年少しずつ財産を移転できます。

ただし、2024年1月以降は生前贈与加算の期間が最長7年に延長されました。亡くなる直前の贈与は相続財産に加算されるため、節税効果を得るには早期から計画的に始めることが重要です。

  1. 注意したいのが「定期贈与」とみなされるリスクです。毎年同額・同時期に贈与を続けると、税務署から「最初から一定額を贈与する約束があった」と判断され、まとめて課税される場合があります。金額や時期を意図的に変える、贈与契約書を毎年作成するなど、都度の贈与であることを記録で残しておくことが大切です。

生命保険の非課税枠を活用する

死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。たとえば相続人が3人いれば、1,500万円まで相続税がかかりません。現預金をそのまま残すよりも、生命保険を活用することで課税対象額を圧縮できます。

ただし、契約形態によって課税関係が変わる点に注意が必要です。節税効果が最も高いのは、契約者・被保険者が被相続人、受取人が相続人となるパターンです。契約者と受取人がどちらも相続人の場合は所得税の対象になり、非課税枠を活用できません。

  1. また、非課税枠の恩恵を受けられるのは法定相続人のみです。孫や内縁のパートナーを受取人にすると非課税枠が適用されないうえ、2割加算の対象になるケースもあるため、受取人の設定は慎重に行いましょう。

小規模宅地等の特例を最大限に活用する

被相続人が住んでいた土地や事業用の土地について、相続税評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」は、適用できるかどうかで税額が数百万〜数千万円単位で変わる強力な制度です。

主な区分と減額割合は以下のとおりです。

宅地の種類限度面積減額割合
特定居住用宅地(自宅)330㎡80%
特定事業用宅地400㎡80%
貸付事業用宅地200㎡50%

自宅を引き継ぐ場合、配偶者であれば原則として無条件で適用できます。一方、別居していた子が引き継ぐ「家なき子特例」は、2018年以降に要件が厳格化されました。「相続開始前3年以内に自分または配偶者の持ち家に住んでいないこと」などの条件を満たす必要があり、要件の確認を誤ると申告漏れにつながります。

土地評価の減額幅が大きいだけに、適用の可否や面積の按分計算は専門家への確認を強くおすすめします。

相続税の計算でよくある7つのミスと対策

正しい計算手順を理解していても、実務では見落としやすいポイントが数多くあります。ここでは特に影響が大きいミスを7つ取り上げ、対策とあわせて解説します。

ミス①生命保険の非課税枠を忘れる

生命保険金を受け取ったにもかかわらず、非課税枠(500万円×法定相続人数)を差し引かずに課税対象額を計算してしまうケースです。たとえば相続人が3人いる場合、1,500万円が非課税になるにもかかわらず、保険金全額を遺産に加えると税額が過大になります。

受け取った保険金から、非課税枠を差し引いた残額のみを課税対象に含めるのが正しい手順です。複数の保険契約がある場合も、合算した保険金総額から非課税枠を差し引きます。

ミス②名義預金を遺産に入れない

子や孫名義の口座であっても、被相続人が実質的に管理・支配していた預金は「名義預金」として相続財産に含まれます。具体的には、口座の開設・入出金の管理を被相続人が行っていた場合や、子が通帳・印鑑を知らない場合などです。

税務調査では過去10年分の預金移動が調査対象になるケースもあり、名義預金の計上漏れは修正申告と加算税の対象になるリスクがあります。「名義が違うから関係ない」という判断は禁物です。

ミス③相続放棄者を人数から除く

基礎控除の計算に用いる法定相続人の数は、相続放棄をした人も含めてカウントします。「放棄した人は関係ない」と誤解して人数を減らすと、基礎控除額が少なく計算されてしまいます。

たとえば子が3人いて、うち1人が相続放棄をした場合でも、法定相続人の数は3人として基礎控除額4,800万円を適用するのが正しい計算です。相続放棄と基礎控除の計算ルールは別の話であることを覚えておきましょう。

ミス④配偶者控除を過信して二次相続を無視する

配偶者控除を最大限使うことで一次相続の税額をゼロにできても、その分配偶者の手元に残る財産が増え、二次相続時に子が支払う税額が跳ね上がるリスクがあります。

配偶者が全財産1億円を相続した場合、一次相続の税額はゼロになるものの、二次相続では770万円の負担が子どもに集中します。一次・二次の合算税額を試算して最適な分割を考えることが重要です。

ミス⑤土地の評価額を路線価で単純計算する

路線価(国税庁が定める土地の価格基準)に面積を掛けるだけで評価額を出すのは誤りです。実際には不整形地補正・奥行価格補正・間口狭小補正など、土地の形状や状況に応じた複数の補正率を加味する必要があります。

  1. これらの補正を無視すると評価額が実際より高くなり、過大申告につながるおそれがあります。逆に補正率の適用を誤ると過少申告になるリスクもあるため、不動産が含まれる相続では専門家への確認が不可欠です。

ミス⑥生前贈与の7年加算を見落とす

2024年1月以降の贈与から、加算期間が従来の3年から最長7年に延長されました。改正の経過措置により、加算対象となる期間は相続発生時期によって異なります。

相続発生時期加算対象となる贈与期間
〜2026年12月相続前3年以内
2027年1月〜2030年12月段階的に延長
2031年1月〜相続前7年以内(完全移行)

「贈与税を払い済みだから問題ない」と考える方も多いですが、贈与税を支払っていても生前贈与加算の対象になります。加算された贈与財産にかかる贈与税は相続税額から控除されますが、計算に含め忘れると課税漏れになるため注意が必要です。

なお、延長された4〜7年分の贈与については合計100万円まで加算対象から除外されます。この緩和措置も計算に含めるのを忘れずに確認しましょう。

ミス⑦申告不要と判断して特例を受けられない

「税金が発生しないから申告しなくてよい」と判断するのは危険です。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、税額がゼロになる場合でも相続税申告書の提出が必要です。申告をしなければ、これらの特例は一切適用されません。

申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)を過ぎてから気づいても、原則として特例の適用は認められません。「早見表でゼロだった」「税理士に相談するほどでもない」と判断する前に、特例の適用対象かどうかを必ず確認しましょう。

知っておきたい相続税の申告・納付手続き

計算が完了したら、次は申告・納付の実務手続きです。期限や納付方法を事前に把握しておくことで、ペナルティのリスクを避けられます。

申告期限は10か月以内

相続税の申告・納付は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署へ行う必要があります。期限を過ぎると延滞税や無申告加算税が発生し、納付が遅れた日数分だけ負担が積み上がっていきます。

種類区分税率
延滞税納期限の翌日から2か月以内年2.8%
延滞税2か月を経過した日以後年9.1%
無申告加算税50万円以下の部分15%
無申告加算税50万円超300万円以下の部分20%
無申告加算税300万円を超える部分30%
期限後申告・納付に課される税率

※延滞税はいずれも令和8年中の率で、特例基準割合に連動して毎年変動します。

10か月は長いように見えますが、遺産の調査・評価・遺産分割協議・申告書の作成と、やるべきことは多岐にわたります。相続発生後はできるだけ早く動き出すことが重要です。

  1. なお、申告期限までに遺産分割が整わない場合は、法定相続分などで一旦申告・納付し、分割確定後に税額が増える場合は修正申告、減る場合は更正の請求で調整します。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用を見込む場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出も検討が必要です。

延納・物納の選択肢もある

相続税は原則として現金一括納付ですが、一定要件を満たせば以下の方法も選択できます。

納付方法概要主な要件
延納年賦払いで分割納付(最長20年)納税額が10万円超、担保提供が必要
物納不動産や株式などの現物で納付延納でも納付困難な場合に限る

延納には、利子税(年0.4〜6.0%程度)がかかります。物納は現金が用意できない場合の最終手段ですが、物納できる財産の種類や順位が法令で定められており、すべての財産が対象になるわけではありません。

現金の準備が難しい場合は、生前から生命保険を活用して納税資金を確保しておく方法が有効です。

申告後に税務調査が入るケースもある

相続税は、申告後に税務署の確認を受ける可能性がある税目です。国税庁の令和6事務年度の公表では、実地調査における非違割合は82.3%でした。名義預金や生前贈与、生命保険金の計上漏れなどは特に確認されやすいため、財産の根拠資料や通帳履歴、贈与契約書などを整理して保管しておくことが重要です。

調査官が特に注目するのは、名義預金・多額の現金引き出し・生命保険の計上漏れ・生前贈与の記録がないケースです。申告後も数年以内に調査が入る可能性があるため、財産の評価根拠や贈与の記録を申告書とあわせて保管しておくことをおすすめします。

相続税申告を税理士に頼むべきかの判断基準

相続税の計算手順を理解したとしても、自分で申告するか専門家に依頼するかは別の判断です。ここでは、その境界線を整理します。

自分で計算できるケース

相続財産が預貯金・上場株式のみで構成されており、法定相続人の数も少なく、特例の適用がないケースであれば、自分での申告も現実的な選択肢です。

国税庁が提供する「e-Tax」や「相続税の申告書作成コーナー」を使えば、画面の案内に沿って申告書を作成できます。財産の構成がシンプルで、遺産分割についても相続人間で争いがなければ、費用をかけずに対応できる可能性があります。

専門家に依頼すべき3つのサイン

以下のいずれかに当てはまる場合は、税理士への依頼を強くおすすめします。自分で対応することで申告漏れや過大申告が起きるリスクが急増するためです。

①不動産が含まれる

土地の評価には路線価・補正率・地目など専門的な判断が必要です。評価額の算出を誤ると、過大申告による納め過ぎや、過少申告による追徴課税につながります。特に複数の土地や借地権が含まれる場合は、専門家への依頼が不可欠です。

②生前贈与の履歴が複雑

暦年贈与・相続時精算課税・教育資金一括贈与など、複数の制度を組み合わせている場合、加算対象の判定や控除の計算が複雑になります。制度ごとに申告書への記載方法も異なるため、記載漏れが生じやすくなります。

③相続人間で争いがある

遺産分割が未確定のまま申告期限が迫っている場合や、相続人間で主張が食い違っている場合は、申告内容の調整も含めて専門家に一任するのが安全です。

税理士費用の相場と選び方

相続税申告を依頼する際の税理士費用は、遺産総額や土地の数、相続人の人数、未分割の有無などによって大きく異なります。実務上は遺産総額の一定割合を目安にする事務所もありますが、報酬体系は事務所ごとの差が大きいため、必ず見積書で確認しましょう。

相続税申告の実績が豊富な税理士を選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。

確認ポイント理由
相続税申告の年間件数実績が多いほど土地評価や特例適用に精通している
土地評価の対応可否外部の不動産鑑定士と連携しているかも重要
報酬体系の明確さ追加費用の有無を事前に確認する
二次相続のシミュレーション対応一次相続だけでなく長期視点で提案できるか

相続税は「申告すること」より「正確に申告すること」が重要です。費用対効果を考えたうえで、専門家の活用を検討しましょう。

この記事のまとめ

この記事では、相続税がかかる人の考え方、遺産評価から基礎控除・税率適用・税額控除までの計算手順、さらに申告時の注意点や代表的な節税策を整理しました。まずは財産の全体像と法定相続人の数を確認し、基礎控除に当てはめて課税対象かを見極めましょう。そのうえで、不動産評価や特例適用、生前贈与の扱いなど判断が難しい点がある場合は、早めに税理士などの専門家へ相談することが大切です。

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柴田充輝

金融系ライター

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。

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