不動産投資において、5年以上保有していると節税になるというのはどういう仕組でしょうか?
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2024/09/24 21:48
男性
60代
不動産投資を検討しています。いい物件が割安で購入できたため、値上がりしたら利確のために売却することも視野に入れています。ただし、不動産売却をするなら節税のために少なくとも5年は保有しておくように知人に言われました。なぜ5年なのでしょうか?また、なぜ5年保有していると節税になるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
不動産を売却するときに「少なくとも5年保有したほうがよい」といわれるのは、譲渡益にかかる税率が5年を境にほぼ半分へ下がる仕組みがあるからです。取得日から売却した年の1月1日までの保有期間が5年以下なら「短期譲渡所得」として課税され、所得税30%・住民税9%・復興特別所得税0.63%を合わせた39.63%が適用されます。これに対し5年超であれば「長期譲渡所得」となり、税率は20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)に下がります。
課税額は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)」で算出される課税譲渡所得に上記税率を掛けて求めます。たとえば譲渡益が1,000万円の場合、5年以内に売却すると約396万円の税負担になりますが、5年超で売却すれば約203万円で済み、約193万円を節税できる計算です。
この優遇は短期売買を抑制し、市場の安定や長期的な資産形成を促す目的で導入されています。なお、自宅を売却する際の3,000万円特別控除や、10年超保有した居住用財産の軽減税率など、用途や保有年数によって追加の特例が適用されるケースもあります。
もっとも、節税効果だけで売却時期を決めるのは適切ではありません。賃料収入の推移、修繕・管理コスト、金利動向、地域の需給や将来の資金計画などを総合的に比較し、「5年以上保有するメリット」と「いま売却するメリット」を天秤にかけることが重要です。税務上の優遇を把握したうえで、市場環境と自身のキャッシュフローを踏まえた柔軟な判断を心掛けてください。
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申告分離課税
申告分離課税とは、特定の所得について他の所得と分離して税額を計算し、確定申告を通じて納税する方式です。 主な対象となる所得は以下の通りです: - 譲渡所得: 土地や建物、株式などの譲渡による所得。 - 山林所得: 山林の伐採や譲渡による所得。 - 先物取引による所得: FXや商品先物取引による所得。 例えば、株式の譲渡所得については、他の所得と合算せずに分離して課税されます。また、上場株式等の配当所得についても、申告分離課税を選択することができます。
分離課税
分離課税(ぶんりかぜい)とは、特定の所得について他の所得と合算せず、その所得単独で税額を計算し、課税する方式です。分離課税には「源泉分離課税」と「申告分離課税」の2種類があります。
譲渡益
譲渡益とは、株式や不動産などの資産を売却した際に得られる利益のことを指します。具体的には、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた金額が譲渡益となります。個人が株式を売却して利益を得た場合、通常は譲渡所得として申告分離課税(税率20.315%)の対象になります。不動産の場合、所有期間が5年以下の短期譲渡は税率39.63%、5年超の長期譲渡は20.315%の税率が適用されます。 また、投資信託の売却益も譲渡所得に分類されますが、分配金の一部は配当所得として課税される場合があります。税制上の優遇措置として、NISA(少額投資非課税制度)や居住用不動産の3000万円特別控除などがあり、適用条件を理解することが重要です。 資産運用においては、売却のタイミングや税制の影響を考慮し、適切な税対策を行うことが求められます。
法定耐用年数
法定耐用年数とは、税法上で資産の「使用可能な期間」として定められた年数のことです。これに基づいて、資産の購入費用を分割して経費として計上する「減価償却」を行います。たとえば、不動産や設備、車両などが対象となります。 資産ごとに耐用年数は異なり、建物なら数十年、機械や車両なら数年程度が一般的です。この法定耐用年数は税務上のルールであり、実際の使用期間や資産の寿命とは必ずしも一致しません。投資家として不動産や設備に投資する際、この耐用年数を理解しておくことで、減価償却を活用した節税や資産の収益性の計算に役立てることができます。