身内がなくなったらしてはいけないこととはどんなことでしょうか?
身内がなくなったらしてはいけないこととはどんなことでしょうか?
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2025/09/22 09:25
男性
50代
親族が亡くなった際、深い悲しみの中でも相続や保険、年金などの手続きに関する判断を迫られる場面が多いと聞きます。そのときに感情的に行動してしまい、後から取り返しのつかない不利益を被ることは避けたいです。なにか具体的に「やってはいけないこと」にはどのようなものがあるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
身内が亡くなった直後には、感情的になってしまいがちですが、法律や税務のルールを誤ると後に大きな不利益を招きかねません。特に相続放棄や限定承認を検討している場合には注意が必要です。遺産を処分したり消費したりすると「単純承認」とみなされ、放棄ができなくなります。現金の引き出しや不動産の売却はもちろん、高価な家財を勝手に持ち帰ることも避けるべきです。ただし、雨漏りの修理や鍵の交換など、財産を保全するための最低限の行為は認められます。
葬儀費用については、社会通念上妥当な範囲であれば相続財産から支出しても単純承認にはあたりません。しかし、過度に高額な費用や儀礼的な支出は問題となる可能性があるため、領収書を保管し金額の根拠を残しておくことが大切です。
遺言書を見つけた場合も注意が必要です。封印のある自筆証書遺言を勝手に開封すると法律で過料の対象となります。必ずそのまま保管し、家庭裁判所で検認の手続きを経る必要があります。公正証書遺言や法務局保管制度を利用した遺言であれば検認は不要です。
また、遺産分割協議は法定相続人全員で行わなければ無効となります。一部の相続人だけで協議を進めることはトラブルの原因です。行方不明者がいる場合には家庭裁判所を通じて不在者財産管理人を選任するなどの対応が必要です。
相続手続きには期限も定められています。相続放棄や限定承認の判断は、原則として相続開始を知ったときから3か月以内に行う必要があります。判断が難しいときは家庭裁判所に期間延長を申し立てましょう。また、被相続人の準確定申告は4か月以内、相続税の申告と納付は10か月以内と期限が厳格に決められています。これを怠ると加算税や延滞税が課される恐れがあります。
故人名義の口座やカードの扱いにも注意が必要です。口座は死亡届が出されると凍結され、無断で引き出すことは違法やトラブルの原因になります。やむを得ず費用が必要な場合は相続人間で同意を得て記録を残すか、仮払い制度の利用を検討しましょう。
まとめると、やってはいけないことは大きく分けて、遺産の処分、遺言書の私的開封、相続人全員を欠いた協議、期限の放置、無断の口座引き出しなどです。逆に必ずしておくべきことは、財産と負債の洗い出し、相続人の確認、期限管理です。借金が多い場合や財産状況が不明な場合は、まず家庭裁判所に熟慮期間の延長を申し立てるのが安全です。
不安なときは専門家に早めに相談し、判断を誤らないように行動することが重要です。
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関連する専門用語
相続放棄
相続放棄とは、亡くなった人の財産を一切受け取らないという意思を家庭裁判所に申し立てて、正式に相続人の立場を放棄する手続きのことです。相続には、プラスの財産(預貯金や不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金や未払い金など)も含まれるため、全体を見て相続すると損になると判断した場合に選ばれることがあります。 相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとみなされるため、借金の返済義務も一切負わなくて済みます。ただし、相続があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があり、その期限を過ぎると原則として相続を受け入れたとみなされてしまいます。したがって、放棄を検討する場合は早めの判断と手続きが重要です。
限定承認
限定承認とは、相続人が引き継ぐ財産について、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産(借金など)を支払うことを条件に、相続を受ける方法のことです。つまり、相続によって得られる資産が借金を上回っている場合にはその差額を受け取ることができますが、もし借金が多くても、自分の財産を使ってまで返済する必要はありません。 この方法を使えば、相続することで損をするリスクを減らすことができます。ただし、限定承認を行うには、相続の開始を知ってから原則として3か月以内に、他の相続人全員と一緒に家庭裁判所に申立てをする必要があるため、手続きがやや複雑です。
単純承認
単純承認とは、相続が発生した際に、被相続人(亡くなった方)の財産をそのまま全て受け継ぐと決める手続きのことをいいます。この場合、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産もすべて引き継ぐことになります。単純承認は特別な手続きをしなくても、相続人が財産を使ったり処分したりすると自動的に成立することが多いため、慎重な判断が必要です。 たとえば、被相続人に多額の借金があった場合、それも自分が返済する責任を負うことになりますので、相続を受ける前には、財産の内容をよく調べることが大切です。
検認手続き
検認手続きとは、遺言書が見つかった際に家庭裁判所がその形状や日付、署名押印などの状態を確認し、改ざんや偽造の防止を図るための公的な手続きです。これは遺言の内容を有効と認める審査ではなく、あくまで遺言書の存在と原本の保全を目的とするものですが、検認を経ないまま遺言を執行すると過料の対象となるため注意が必要です。公正証書遺言では不要ですが、自筆証書遺言と秘密証書遺言では相続開始後に相続人が家庭裁判所へ申し立てを行い、開封の立ち会いや写しの作成を受けて初めて遺言内容を実行できる流れとなります。
準確定申告
準確定申告とは、納税者が死亡した場合に、その人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに行う確定申告のことを指します。通常の確定申告と同様に所得税の計算を行いますが、提出期限は「死亡の翌日から4か月以内」と定められており、期限内に申告・納付する必要があります。 たとえば、年金収入や不動産収入、事業収入があった場合などには、申告が必要です。相続人全員が連名で提出するのが原則で、医療費控除や扶養控除なども通常どおり適用されます。相続の手続きと並行して行うことになるため、早めの準備と専門家への相談が勧められます。
遺産分割協議
遺産分割協議とは、相続人が複数いる場合に、誰がどの財産をどのように受け取るかを話し合って決める手続きのことです。預貯金や不動産、有価証券などすべての遺産が対象になります。原則として相続人全員の合意が必要で、話し合いの結果を「遺産分割協議書」という文書にまとめて、全員が署名・押印します。遺言書がない場合や、遺言があっても一部の財産について分け方が指定されていないときに行われます。もし話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での調停手続きに進むことになります。




